本発明において、好適には、前記ハイブリッド車両は、前記電動機に動力伝達可能に連結されて前記走行用駆動力源からの動力を駆動輪側へ伝達する変速機を更に備えている。この変速機は、手動変速機、トルクコンバータ等の流体式伝動装置を有する自動変速機、或いは副変速機を有する自動変速機などにより構成される。この自動変速機は、複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段が択一的に達成される公知の遊星歯車式自動変速機、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備える同期噛合型平行2軸式変速機ではあるが油圧アクチュエータによりギヤ段が自動的に切換られる同期噛合型平行2軸式自動変速機、同期噛合型平行2軸式自動変速機であるが入力軸を2系統備える型式の所謂DCT(Dual Clutch Transmission)、変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機や所謂トロイダル式無段変速機などにより構成される。
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両10(以下、車両10という)を構成するエンジン14から駆動輪34までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、走行用駆動力源として機能するエンジン14の出力制御、自動変速機18の変速制御、走行用駆動力源として機能する電動機MGの駆動制御などの為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明する図である。
図1において、車両用動力伝達装置12(以下、動力伝達装置12という)は、非回転部材としてのトランスミッションケース20(以下、ケース20という)内において、エンジン14側から順番に、エンジン断接用クラッチK0、電動機MG、トルクコンバータ16、オイルポンプ22、及び自動変速機18等を備えている。また、動力伝達装置12は、自動変速機18の出力回転部材である変速機出力軸24に連結されたプロペラシャフト26、そのプロペラシャフト26に連結された差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)28、その差動歯車装置28に連結された1対の車軸30等を備えている。このように構成された動力伝達装置12は、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の車両10に好適に用いられるものである。動力伝達装置12において、エンジン14の動力は、エンジン断接用クラッチK0が係合された場合に、エンジン14とエンジン断接用クラッチK0とを連結するエンジン連結軸32から、エンジン断接用クラッチK0、トルクコンバータ16、自動変速機18、プロペラシャフト26、差動歯車装置28、及び1対の車軸30等を順次介して1対の駆動輪34へ伝達される。
トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16aに入力された駆動力(特に区別しない場合には駆動トルクも同義)を変速機入力軸36に連結されたタービン翼車16bから自動変速機18側へ流体を介して伝達する流体式伝動装置である。また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16aとタービン翼車16bとの間を直結するロックアップクラッチ38を備えている。また、ポンプ翼車16aにはオイルポンプ22が連結されている。このオイルポンプ22は、自動変速機18を変速制御したり、エンジン断接用クラッチK0の係合・解放を制御したりする為の作動油圧をエンジン14(或いは電動機MG)により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプである。
電動機MGは、電気エネルギから機械的な駆動力を発生させる発動機としての機能及び機械的なエネルギーから電気エネルギを発生させる発電機としての機能を有する所謂モータジェネレータである。換言すれば、電動機MGは、動力源であるエンジン14の代替として、或いはそのエンジン14と共に走行用の駆動力を発生させる走行用駆動力源として機能し得る。また、エンジン14により発生させられた駆動力や駆動輪34側から入力される被駆動力(機械的エネルギー)から回生により電気エネルギを発生させ、その電気エネルギをインバータ52を介して蓄電装置54に蓄積する等の作動を行う。電動機MGは、エンジン断接用クラッチK0とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されており(すなわち作動的にポンプ翼車16aに連結されており)、電動機MGとポンプ翼車16aとの間では、相互に動力が伝達される。従って、電動機MGは、エンジン14と同様に、自動変速機18の入力回転部材である変速機入力軸36に動力伝達可能に連結されている。
エンジン断接用クラッチK0は、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、オイルポンプ22が発生する油圧を元圧とし動力伝達装置12に設けられた油圧制御回路50によって係合解放制御される。そして、その係合解放制御においてはエンジン断接用クラッチK0のトルク容量が、油圧制御回路50内のリニヤソレノイドバルブ等の調圧により例えば連続的に変化させられる。エンジン断接用クラッチK0は、それの解放状態において相対回転可能な1対のクラッチ回転部材(クラッチハブ及びクラッチドラム)を備えており、そのクラッチ回転部材の一方(クラッチハブ)はエンジン連結軸32に相対回転不能に連結されている一方で、そのクラッチ回転部材の他方(クラッチドラム)はトルクコンバータ16のポンプ翼車16aに相対回転不能に連結されている。このような構成から、エンジン断接用クラッチK0は、係合状態では、エンジン連結軸32を介してポンプ翼車16aをエンジン14と一体的に回転させる。すなわち、エンジン断接用クラッチK0の係合状態では、エンジン14からの駆動力がポンプ翼車16aに入力される。一方で、エンジン断接用クラッチK0の解放状態では、ポンプ翼車16aとエンジン14との間の動力伝達が遮断される。また、前述したように、電動機MGは作動的にポンプ翼車16aに連結されているので、エンジン断接用クラッチK0は、エンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を断接するクラッチとして機能することはもちろんであるが、エンジン14と電動機MGとの間の動力伝達経路を断接するクラッチとしても機能する。
自動変速機18は、エンジン断接用クラッチK0を介することなく電動機MGに動力伝達可能に連結されて、エンジン14から駆動輪34までの動力伝達経路の一部を構成し、走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)からの動力を駆動輪34側へ伝達する。自動変速機18は、例えばクラッチCやブレーキB等の複数の油圧式摩擦係合装置の係合と解放とにより変速が実行されて複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる公知の遊星歯車式多段変速機である。そして、自動変速機18では、クラッチC及びブレーキBが油圧制御回路50によってそれぞれ係合解放制御されることにより、運転者のアクセル操作や車速V等に応じて所定のギヤ段(変速段)が成立させられる。
尚、エンジン断接用クラッチK0、クラッチC、ブレーキB等のトルク容量は、例えば油圧式摩擦係合装置の摩擦材の摩擦係数や摩擦板を押圧する係合油圧によって決まるものであり、係合装置が動力伝達することが可能な伝達トルクに相当する。また、摩擦材の摩擦係数は、一定の値ではなく作動油温や係合装置自身の差回転速度で変化するものである。その為、係合油圧の立ち上がりに対して、摩擦係数の立ち上がりが遅れる場合があるなど、係合装置のトルク容量と係合油圧とは必ずしも1対1に対応するものではないが、本実施例では、便宜上、係合装置のトルク容量と係合油圧とを同義に取り扱うこともある。
また、車両10には、例えばハイブリッド駆動制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置80が備えられている。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置80は、エンジン14の出力制御、電動機MGの回生制御を含む電動機MGの駆動制御、自動変速機18の変速制御、エンジン断接用クラッチK0のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や電動機制御用や油圧制御用等に分けて構成される。また、電子制御装置80には、各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ56、タービン回転速度センサ58、出力軸回転速度センサ60、電動機回転速度センサ62、アクセル開度センサ64、バッテリセンサ66など)により検出された各種信号(例えばエンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Ne、タービン回転速度Ntすなわち変速機入力軸36の回転速度である変速機入力回転速度Nin、車速Vに対応する変速機出力軸24の回転速度である変速機出力回転速度Nout、電動機MGの回転速度である電動機回転速度Nm、運転者による車両10に対する駆動要求量に対応するアクセル開度Acc、蓄電装置54のバッテリ温度THbatやバッテリ入出力電流(バッテリ充放電電流)Ibatやバッテリ電圧Vbatなど)が、それぞれ供給される。また、電子制御装置80からは、例えばエンジン14の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、電動機MGの作動を制御する為の電動機制御指令信号SM、エンジン断接用クラッチK0や自動変速機18のクラッチC及びブレーキBの油圧アクチュエータを制御する為に油圧制御回路50に含まれる電磁弁(ソレノイドバルブ)等を作動させる為の油圧指令信号SPなどが、スロットルアクチュエータや燃料供給装置等のエンジン制御装置、インバータ52、油圧制御回路50などへそれぞれ出力される。尚、電子制御装置80は、例えば上記バッテリ温度THbat、バッテリ充放電電流Ibat、及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて蓄電装置54の充電状態(充電容量)SOCを逐次算出する。
図2は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図2において、変速制御手段すなわち変速制御部82は、例えば車速Vとアクセル開度Acc(或いは変速機出力トルクTout等)とを変数として予め記憶された公知の関係(変速線図、変速マップ)から車両状態(例えば実際の車速V及びアクセル開度Acc等)に基づいて、自動変速機18の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速機18の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速機18の自動変速制御を実行する。
ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部84は、エンジン14の駆動を制御するエンジン駆動制御部としての機能と、インバータ52を介して電動機MGによる駆動力源又は発電機としての作動を制御する電動機作動制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。例えば、ハイブリッド制御部84は、アクセル開度Accや車速Vに基づいて車両10に対する駆動要求量(すなわちドライバ要求量)としての要求駆動力を算出し、伝達損失、補機負荷、自動変速機18の変速段、蓄電装置54の充電容量SOC等を考慮して、その要求駆動力が得られる走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)の出力トルクとなるようにその走行用駆動力源を制御する。
より具体的には、ハイブリッド制御部84は、例えば上記要求駆動力が電動機MGの出力トルク(電動機トルク)Tmのみで賄える範囲の場合、車速Vがモータ走行を実行可能な上限の車速として予め定められたEV上限車速以下である場合、及び充電容量SOCがモータ走行を実行可能な下限の充電容量として予め定められたEV許可容量以上である場合には、走行モードをモータ走行モード(以下、EVモード)とし、電動機MGのみを走行用の駆動力源として走行するモータ走行(EV走行)を行う。一方で、ハイブリッド制御部84は、例えば上記要求駆動力が少なくともエンジン14の出力トルク(エンジントルク)Teを用いないと賄えない範囲の場合、車速Vが上記EV上限車速を超えている場合、或いは充電容量SOCが上記EV許可容量未満である場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行モード(以下、EHVモード)とし、少なくともエンジン14を走行用の駆動力源として走行するエンジン走行すなわちハイブリッド走行(EHV走行)を行う。
尚、前記駆動要求量としては、駆動輪34における要求駆動力の他に、駆動輪34における要求駆動トルク、駆動輪34における要求駆動パワー、変速機出力軸24における要求変速機出力トルク、及び変速機入力軸36における要求変速機入力トルク、走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)の目標トルク等を用いることもできる。また、駆動要求量として、単にアクセル開度Accやスロットル弁開度や吸入空気量等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部84は、EV走行を行う場合には、エンジン断接用クラッチK0を解放させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を遮断すると共に、電動機MGにEV走行に必要な電動機トルクTmを出力させる。一方で、ハイブリッド制御部84は、EHV走行を行う場合には、エンジン断接用クラッチK0を係合させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を接続すると共に、エンジン14にEHV走行に必要なエンジントルクTeを出力させつつ必要に応じて電動機MGにアシストトルクを出力させる。
また、ハイブリッド制御部84は、EV走行中に、例えば駆動要求量の増大、車速Vの増大、或いは充電容量SOCの減少によって車両状態がEV領域からEHV領域へと遷移した場合には、エンジン14の始動が要求されたと判定して、走行モードをEVモードからEHVモードへ切り換え、エンジン14を始動させてEHV走行を行う。エンジン14の始動方法としては、例えばエンジン断接用クラッチK0を係合に向けて制御しつつ(見方を換えれば電動機MGによりエンジン14を回転駆動しつつ)エンジン始動する。そして、この始動方法では、エンジン始動に必要なトルクであるエンジン始動トルクTmsが必要となる。
具体的には、ハイブリッド制御部84は、車両状態がEV領域からEHV領域へと遷移したことでエンジン14の始動開始を判断すると、エンジン断接用クラッチK0のトルク容量に対応するK0伝達トルクTkを、エンジン始動トルクTmsがエンジン14側へ伝達される為のトルクに制御することで、エンジン回転速度Neを引き上げる。そして、ハイブリッド制御部84は、エンジン回転速度Neが完爆可能な所定回転速度まで引き上げられたと判断すると、エンジン点火や燃料供給などを開始してエンジン14を始動する。更に、ハイブリッド制御部84は、エンジン始動後、エンジン14の自立運転でエンジン回転速度Neが電動機回転速度Nmまで上昇して同期したと判断すると、K0伝達トルクTkをエンジントルクTeが駆動輪34側へ適切に伝達される為のトルクに制御する。
上記エンジン始動トルクTmsとしては、例えばエンジン14のフリクショントルク(ポンピングロスに相当するコンプレッショントルク+摺動抵抗に相当するメカニカルフリクショントルク)とエンジンイナーシャとの合計トルクが必要になる。この合計トルクは、同一機種のエンジンであれば個体ばらつきを除けば略一律である。よって、エンジン始動の際には、上記一律の合計トルクに対応するエンジン始動トルクTmsが確実に伝達可能となる範囲でできるだけ小さくなるK0伝達トルクTkが得られる為の予め実験的に求められて設定されたエンジン断接用クラッチK0の係合油圧(K0クラッチ圧)の指令値(以下、ベースのK0クラッチ圧指令値と称す)を、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが同期するまで出力することが考えられる。
ここで、エンジン14は回転駆動が継続すれば、エンジン始動トルクTmsとしては、専らメカニカルフリクショントルク分が必要になるだけである。従って、エンジン始動時のエネルギ低減(燃費向上)の為に、K0クラッチ圧の指令値(K0クラッチ圧指令値)の設定(設計値)において、上記一律の合計トルクに対応するエンジン始動トルクTmsに合わせることに替えて、小さくされるエンジン始動トルクTmsに合わせることが考えられる。一方で、エンジン14の始動開始の判断としては、EV走行中における駆動要求量の増大、車速Vの増大、或いは充電容量SOCの減少などに基づくものである。特に、駆動要求量の増大に伴ってエンジン14の始動開始が判断される場合、ドライバの加速志向が強いと考えられる為、比較的大きくされるエンジン14の目標トルクまで応答遅れなくエンジントルクTeを立ち上げることが望ましい。他方で、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとの同期後には、エンジン断接用クラッチK0を完全係合する為の最終的なK0伝達トルクTkが得られるK0クラッチ圧指令値(例えばK0クラッチ圧の最大値に対応する最大K0クラッチ圧指令値)とされて、K0伝達トルクTkがその最終的なK0伝達トルクTkに向けて増大させられる。この際、エンジン14の目標トルクに向けて増大させられるエンジントルクTeよりも最終的なK0伝達トルクTkに向けて増大させられるK0伝達トルクTkの方が小さくなってしまうと、上記同期時に一旦係合したエンジン断接用クラッチK0がスリップし、その後に再度係合することで再係合ショックが発生する可能性がある(後述する図5の破線参照)。このような現象は、小さくされるエンジン始動トルクTmsに合わせてK0クラッチ圧指令値を予め設定した場合に発生し易いと考えられるが、前記ベースのK0クラッチ圧指令値を上記同期前まで用いる場合であっても駆動要求量の増大に伴ってエンジン14が始動される場合には発生し易いと考えられる。
そこで、本実施例の電子制御装置80は、EV走行からEHV走行への切替えに際して、車両10に対する駆動要求量の増大に伴うエンジン14の始動時は、その駆動要求量の増大を伴わないエンジン14の始動時と比較して、エンジン断接用クラッチK0の入力回転速度(すなわちエンジン回転速度Ne)と出力回転速度(すなわち電動機回転速度Nm)とが同期する前のK0伝達トルクTkを大きくする。例えば、電子制御装置80は、駆動要求量の増大に伴うエンジン14の始動時は、上記同期する前のK0伝達トルクTkを、上記一律の合計トルクに応じたK0伝達トルクTkよりも大きくする。
また、電子制御装置80は、駆動要求量の増大を伴わないエンジン14の始動時は、エンジン断接用クラッチK0の入力回転速度と出力回転速度とが同期する前のK0伝達トルクTkを、エンジン14のフリクショントルク(コンプレッショントルク+メカニカルフリクショントルク)に応じたK0伝達トルクTkとする。すなわち、電子制御装置80は、駆動要求量の増大を伴わないエンジン14の始動時は、上記同期する前のK0伝達トルクTkを、回転駆動の開始当初から小さくされていくエンジン14のフリクショントルクに合わせたトルク容量とする。ここで、エンジン始動時にエンジン14のフリクショントルクが専らメカニカルフリクショントルクだけとなる過程では、エンジン回転速度Neは回転駆動により一律に上昇するのではなく、上昇過程で一旦下降して再度上昇することを見出した。そこで、電子制御装置80は、上記同期する前のK0伝達トルクTkを、上昇過程にあるエンジン回転速度Neが一旦下降して再度上昇したときに、上記一律の合計トルクに応じたK0伝達トルクTkよりも低下させることで、エンジン14のフリクショントルクに応じたK0伝達トルクTkとする。
図2に戻り、ハイブリッド制御部84は、EV走行中に、エンジン14の始動が要求されたと判定した場合には、すなわちエンジン14の始動開始を判断した場合には、前記予め設定されたベースのK0クラッチ圧指令値を出力する。
エンジン回転変化判定手段すなわちエンジン回転変化判定部86は、エンジン始動時に上昇過程にあるエンジン回転速度Neが一旦下降して再度上昇したか否かに基づいて、エンジン回転速度Neの変化過程において1山目を乗り越したか否かを判定する。
駆動要求量増大判定手段すなわち駆動要求量増大判定部88は、ハイブリッド制御部84によるエンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大(例えばアクセル開度Accの増大、要求駆動力の増大等)によるものか否かを判定する。
ハイブリッド制御部84は、エンジン14の始動開始後に、エンジン回転変化判定部86により1山目を乗り越したと判定され且つ駆動要求量増大判定部88によりエンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものであると判定された場合には、前記ベースのK0クラッチ圧指令値よりも大きなK0クラッチ圧指令値を出力する。例えば、ハイブリッド制御部84は、駆動要求量が大きい程、前記同期前のK0伝達トルクTkを大きくするように、駆動要求量に応じてK0クラッチ圧指令値を補正する。より具体的には、図3は、駆動要求量と前記ベースのK0クラッチ圧指令値に対して加算する補正量との予め求められて記憶された関係(補正量マップ)である。図3において、要求駆動力が大きい程、前記ベースのK0クラッチ圧指令値に対して加算する補正量が大きくされる。ハイブリッド制御部84は、図3に示すような補正量マップから要求駆動力に基づいて補正量を算出し、前記ベースのK0クラッチ圧指令値にその補正量を加算して設定した新たなK0クラッチ圧指令値を出力する。
ハイブリッド制御部84は、エンジン14の始動開始後に、エンジン回転変化判定部86により1山目を乗り越したと判定され且つ駆動要求量増大判定部88によりエンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものでないと判定された場合には、前記ベースのK0クラッチ圧指令値よりも小さなK0クラッチ圧指令値を出力する。この小さなK0クラッチ圧指令値は、例えば専らメカニカルフリクショントルクだけとなるエンジン14のフリクショントルクに応じたK0伝達トルクTkが得られる為の予め実験的に求められて設定されたK0クラッチ圧指令値である。前記ベースのK0クラッチ圧指令値をこの小さなK0クラッチ圧指令値へ変更することは、エンジン14のクランキングトルクに応じたK0クラッチ圧指令値を出力すると言うことである。
同期判定手段すなわち同期判定部90は、エンジン14の始動開始後に、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが同期したか否かを、例えばエンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとの差回転速度が予め求められた同期判定値以内となったか否かに基づいて判定する。
ハイブリッド制御部84は、同期判定部90によりエンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが同期したと判定された場合には、前記最大K0クラッチ圧指令値を出力する。
図4は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちEV走行からEHV走行への切替えに際して、エンジン始動に伴うエンジン断接用クラッチK0係合後のスリップを発生し難くする為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。図5は、図4のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートである。
図4において、先ず、ハイブリッド制御部84に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えばEV走行中に、駆動要求量の増大、車速Vの増大、或いは充電容量SOCの減少によって車両状態がEV領域からEHV領域へと遷移したか否かに基づいて、エンジン14の始動が要求されたか否かが判定される(すなわちエンジン14の始動開始が判断される)。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合はハイブリッド制御部84に対応するS20において、エンジン始動の為に前記ベースのK0クラッチ圧指令値が出力される(図5のt1時点乃至t2時点)。次いで、エンジン回転変化判定部86に対応するS30において、エンジン回転速度Neの変化過程において1山目を乗り越したか否かが例えば上昇過程にあるエンジン回転速度Neが一旦下降して再度上昇したか否かに基づいて判定される。このS30の判断が否定される場合は上記S20に戻るが肯定される場合は駆動要求量増大判定部88に対応するS40において、上記S10におけるエンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合はハイブリッド制御部84に対応するS50において、例えば図3に示すような補正量マップから要求駆動力に基づいて算出された補正量が前記ベースのK0クラッチ圧指令値に加算されて、K0クラッチ圧指令値が要求駆動力に応じたK0クラッチ圧指令値に補正されて出力される(図5のt2時点乃至t3時点の実線)。一方、上記S40の判断が否定される場合はハイブリッド制御部84に対応するS60において、例えば前記ベースのK0クラッチ圧指令値よりも小さなK0クラッチ圧指令値として予め求められて設定されたエンジン14のクランキングトルクに応じたK0クラッチ圧指令値が出力される(図5のt2時点乃至t3時点の二点鎖線)。上記S50或いは上記S60に次いで、同期判定部90に対応するS70において、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが同期したか否かが判定される。このS70の判断が否定される場合はこのS70が繰り返し実行されるが肯定される場合はハイブリッド制御部84に対応するS80において、前記最大K0クラッチ圧指令値が出力される(図5のt3時点以降)。
図5において、エンジン14の点火は例えばt2時点乃至t3時点にて実行される。また、実線に示すように、要求駆動力の増大に伴うエンジン始動の際には、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとの同期判定(すなわちエンジン断接用クラッチK0の係合判定)前のK0クラッチ圧指令値がベース値よりも大きくされるので、係合判定後に増大させられるK0伝達トルクTkの応答性が向上させられる。従って、係合判定後に速やかにエンジントルクTeを立ち上げたとしても、K0伝達トルクTkの方が大きくされ、係合判定後のエンジン断接用クラッチK0のスリップが発生し難くなる。また、二点鎖線に示すように、要求駆動力の増大を伴わないエンジン始動の際には、エンジン断接用クラッチK0の係合判定前のK0クラッチ圧指令値がベース値よりも小さくされるので、エンジン始動トルクTmsを低減することによりエンジン始動時の消費エネルギを低減できたり、係合判定前のK0伝達トルクTkが低減されることによりエンジン断接用クラッチK0の係合ショックが抑制される。尚、要求駆動力の増大に伴うエンジン始動の際に、エンジン断接用クラッチK0の係合判定前のK0クラッチ圧指令値がベース値よりも小さくされると、係合判定後に速やかにエンジントルクTeを立ち上げることができない。或いは、係合判定後に速やかにエンジントルクTeを立ち上げる場合には、係合判定後にK0伝達トルクTkよりもエンジントルクTeの方が大きくなり易く、係合判定後のエンジン断接用クラッチK0のスリップが発生し易くなる。
上述のように、本実施例によれば、EV走行からEHV走行への切替えに際して、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、その駆動要求量の増大を伴わないエンジン始動時と比較して、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが同期する前のK0伝達トルクTkが大きくされる。このようにすれば、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、K0伝達トルクTkの応答性が向上されるので、エンジン始動に伴うエンジン断接用クラッチK0係合後のスリップを回避乃至発生し難くすることができる。よって、駆動要求量の増大を伴わないエンジン始動時は元々エンジン始動に伴うエンジン断接用クラッチK0係合後のスリップが回避乃至発生し難いことと併せ、EV走行からEHV走行への切替えに際して、エンジン断接用クラッチK0の再係合ショックを回避乃至発生し難くすることができる。また、EV走行からEHV走行への切替えに際して、K0伝達トルクTkの応答性が向上されるので、エンジントルクTeをいち早く立ち上げることができ、レスポンスが向上する。また、駆動要求量の増大を伴わないエンジン始動時は、K0伝達トルクTkを小さく抑えることができるので、電動機MGにより発生すべき出力トルクのうちでエンジン断接用クラッチK0を介してエンジン14側へ流れる電動機MGの出力トルク分を低減することができ、エンジン始動時の消費エネルギを低減することができる。
また、本実施例によれば、駆動要求量の増大を伴わないエンジン始動時は、前記同期する前のK0伝達トルクTkを、エンジン14のフリクショントルクに応じたK0伝達トルクTkとするので、K0伝達トルクTkを適切に小さくすることができ、エンジン始動時の消費エネルギを確実に低減することができる。
また、本実施例によれば、上昇過程にあるエンジン回転速度Neが一旦下降して再度上昇したときに、K0伝達トルクTkを低下させることで、エンジン14のフリクショントルクに応じたK0伝達トルクTkとするので、K0伝達トルクTkを一層小さくすることができ、エンジン始動時の消費エネルギを一層低減することができる。
また、本実施例によれば、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、その駆動要求量が大きい程、前記同期する前のK0伝達トルクTkを大きくするので、K0伝達トルクTkの応答性が適切に向上され、エンジン始動に伴うエンジン断接用クラッチK0係合後のスリップを確実に回避乃至発生し難くすることができる。また、EV走行からEHV走行への切替えに際して、K0伝達トルクTkの応答性が適切に向上されるので、エンジントルクTeを確実にいち早く立ち上げることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、エンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものか否かに拘わらず、エンジン回転速度Neの変化過程における1山目の乗り越し判定後に、前記ベースのK0クラッチ圧指令値を増大補正するか、或いは前記ベースのK0クラッチ圧指令値よりも小さなK0クラッチ圧指令値を設定したが、これに限らない。例えば、上記乗り越し判定後にK0クラッチ圧指令値をベース値から変更する態様は、少なくともエンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものでない場合に行われれば良い。つまり、エンジン14の始動開始の判断が駆動要求量の増大によるものである場合には、乗り越し判定に拘わらず、前記ベースのK0クラッチ圧指令値を増大補正しても良い。具体的には、ハイブリッド制御部84は、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、前記同期する前のK0伝達トルクTkを前記ベースのK0クラッチ圧指令値に対して増大補正する。従って、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、油圧供給開始当初の所謂ファーストフィル(急速充填)分を除きエンジン14の始動開始が判断された当初から前記同期する前のK0伝達トルクTkが前記ベースのK0クラッチ圧指令値に対して増大補正されても差し支えない。また、ハイブリッド制御部84は、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、駆動要求量が大きい程、前記同期する前のK0伝達トルクTkを早い時点から大きくしても良い。例えば、ハイブリッド制御部84は、駆動要求量が大きい程エンジン14の始動開始を判断した時点からの経過時間が短くされるように予め求められて記憶された関係(補正開始時点マップ)から要求駆動力に基づいて経過時間を算出し、始動開始を判断した時点からその算出した経過時間が経過したときに、前記ベースのK0クラッチ圧指令値を増大補正して設定した新たなK0クラッチ圧指令値を出力する。このようにすれば、駆動要求量の増大に伴うエンジン始動時は、K0伝達トルクTkの応答性が適切に向上されるので、エンジン始動に伴うエンジン断接用クラッチK0係合後のスリップを確実に回避乃至発生し難くすることができる。また、EV走行からEHV走行への切替えに際して、K0伝達トルクTkの応答性が適切に向上されるので、エンジントルクTeを確実にいち早く立ち上げることができる。
また、前述の実施例では、エンジン始動時に上昇過程にあるエンジン回転速度Neが一旦下降して再度上昇したときに、エンジン回転速度Neの変化過程において1山目を乗り越したと判定したが、これに限らない。例えば、エンジン始動時にエンジン14のフリクショントルクが専らメカニカルフリクショントルクだけとなっていることが判断できる為の予め求められて記憶された所定回転以上にエンジン回転速度Neが上昇した時にその1山目を乗り越したと判定しても良い。
また、前述の実施例では、電動機MGによりエンジン14を回転駆動して点火することでエンジン始動を行ったが、これに限らない。例えば、回転停止中の又は非作動中のエンジン14の複数の気筒のうちの所定の気筒内(例えば膨張行程にある気筒内)に燃料を噴射し且つ爆発(着火)させることでエンジン14を始動する着火始動によってエンジン始動を行っても良い。この始動方法では、エンジン始動トルクTMGsが不要である為、エンジン始動が着火始動となる場合には、前記予め設定されたベースのK0クラッチ圧指令値として、例えば駆動要求量の増大を伴わないエンジン始動時に用いた小さなK0クラッチ圧指令値と同程度のK0クラッチ圧指令値を用いても良い。例えば、着火始動の実行有無で、ベースのK0クラッチ圧指令値を変更しても良い。
また、前述の実施例において、流体式伝動装置としてトルクコンバータ16が用いられていたが、トルクコンバータ16は必ずしも設けられなくても良く、またトルクコンバータ16に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。また、ロックアップクラッチ38は必ずしも設けられなくても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。