ところで、運転者が警告を受けてから運転操作を開始するまでにはある程度の時間がかかる(反応遅れ)とともに、手動又は自動による運転操作が車両の挙動に反映されるまでにもある程度の時間がかかる(応答遅れ)。そのため、警告を受けた運転者が運転操作を開始する前に自動による運転操作が開始されたり、或いは自車両と立体物の接触を回避しきれなかったりする可能性がある。
本発明は、上記したような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運転支援システムにおいて、運転者の反応遅れやシステムの応答遅れが発生した場合に運転者の感覚に適した運転支援を行うことができる技術の提供にある。
本発明は、上記した課題を解決するために、自車両が所定期間の空走をした後に到達する位置である到達点を求めるとともに、該到達点を起点として、運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内において自車両が走行し得る経路の範囲を求め、その範囲内に立体物を回避可能な経路が存在しないことを条件に運転支援を実施する車両の運転支援テムにおいて、運転者が運転操作を行った場合は行わない場合に比べ、前記所定期間(自車両が空走する距離)を短く設定するようにした。
詳細には、本発明に係わる車両の運転支援システムは、
自車両の周囲に存在する立体物を認識する認識手段と、
自車両の現在の運動量を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された運動量をパラメータとして、自車両が現時点から所定期間の空走をした後に到達する位置である到達点を求めるとともに、該到達点を起点として、前記取得手段により取得された運動量と運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内で発生する運動量の変化分とを加算した場合に自車両が走行し得る経路の範囲である走行範囲を求め、前記認識手段により認識された立体物との衝突を回避可能な経路である回避ラインが前記走行範囲内に存在しないことを条件に、前記立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する支援手段と、
自車両の運転者によって行われる運転操作を検出する検出手段と、
前記検出手段により運転操作が検出されたときは検出されないときに比べ、前記所定期間を短く設定する設定手段と、を備えるようにした。
本発明によれば、運転者が通常に行い得る運転操作によって増減する自車両の運動量の変化分(以下、「通常変化分」と称する)と現在の自車両の運動量とに基づいて、自車両が将来的に走行し得る経路の範囲(走行範囲)が求められる。このような走行範囲は、運転者の運転操作状態が現状のままであると仮定した場合(車両の運動量が現状のままであると仮定した場合)に自車両が走行する経路に加え、運転者が通常の運転操作を行うと仮定した場合(運転者が通常の運転操作を行うことによって自車両の運動量が変化すると仮定した場合)に自車両が走行する経路を含むことになる。なお、ここでいう「通常の運転操作」には、制動操作に加え、旋回操作(たとえば、車輪の舵角を変更する操作)も含まれるものとする。
前記走行範囲内に回避ラインが存在する場合は、運転者が通常の運転操作を行うことにより、自車両と立体物の衝突を回避することができる。そのため、運転者が将来的に通常通りの運転操作を行う意志を持っているにもかかわらず、運転支援が実施されると、運転者が煩わしさを覚える可能性がある。
これに対し、本発明の運転支援システムは、走行範囲内に回避ラインが存在する場合、すなわち、運転者が通常の運転操作を行うことにより自車両と立体物との衝突を回避可能な場合は、運転支援を実施しない。その結果、運転者が通常の運転操作を行う意志を持っているにもかかわらず、運転支援が実施される事態を回避することができる。
なお、支援手段による運転支援が実施されなかった場合に、運転者が通常通りの運転操作を行わない可能性もある。たとえば、運転者の意識レベルが低い場合は、運転者が通常の運転操作を行わない可能性がある。ただし、運転者が通常の運転操作を行わない場合は、車両が立体物に近づくにつれ、回避ラインの選択肢が少なくなっていく。そして、走行範囲内に回避ラインが存在しなくなった時点で、運転支援が実行されることになる。その結果、運転者が通常の運転操作を行わなかった場合であっても、自車両と立体物との衝突を回避することが可能になる。
上記した通常変化分は、予め実験などを利用した適合処理によって求められていてもよく、或いは運転者の運転操作履歴に基づいて学習されるようにしてもよい。その際、通常変化分は、固定値であってもよく、或いは自車両の走行速度に応じて増減される可変値であってもよい。通常変化分が走行速度に応じて増減される場合は、車速が低いときは高いときに比して通常変化分が大きくされてもよい。これは、車速が低いときは高いときに比べ、運転者が通常に行い得る運転操作の範囲が拡大する傾向があり、それによって通常変化分も大きくなるからである。
本発明における自車両の「運動量」としては、自車両に作用するヨーレート、車両前後方向に作用する加速度(前後加速度)、車両左右方向に作用する加速度(横加速度)、車両前後方向に作用するG(前後G)、車両左右方向に作用するG(左右G)、コーナリングフォースなどを用いることができる。
なお、本発明における自車両の「運動量」として用いられるパラメータは、横加速度や左右Gのように、自車両の走行速度が高いときは低いときに比べ、前記した走行範囲が狭くなるパラメータであることが望ましい。このようなパラメータが運動量として用いられると、車速が高いときは低いときに比べ、走行範囲が狭くなる。その結果、車速が高いときは低いときに比べ、走行範囲内に回避ラインが存在しなくなるタイミング(言い換えれ
ば、運転支援が実施されるタイミング)が早くなる。よって、自車両の走行速度が高い場合であっても、自車両と立体物との衝突を回避することが可能になる。
次に、本発明の車両の運転支援システムにおいて、前記走行範囲内に回避ラインが存在しない場合に、支援手段は、直ちに運転支援を実施してもよく、若しくは走行範囲に含まれる経路のうち最長の経路の長さが閾値以下となった時点で運転支援を実施してもよい。
前記走行範囲内に回避ラインが存在しない場合に、直ちに運転支援が実施されると、より確実に衝突を回避し易くなる。ただし、運転者によっては比較的遅い時期に運転操作を開始する場合もあるため、前記走行範囲内に回避ラインが存在しないときに直ちに運転支援が実施されると、運転者が煩わしさを覚える可能性もある。これに対し、前記走行範囲に含まれる経路のうち、最長の経路の長さが閾値以下となった時点で運転支援が実施されると、上記したような運転者に煩わしさを覚えさせることなく、運転支援を実施することができる。なお、ここでいう「閾値」は、運転支援を実施することにより、自車両と立体物の衝突を回避することができる最短の長さにマージンを加算した値である。
本発明における運転支援は、運転者に対して警告する処理、又は自車両と立体物の衝突を回避するための運転操作を自動的に実行する処理の少なくとも一方である。運転者に対して警告する方法としては、たとえば、警告音、警告灯、或いはメッセージの少なくとも1つをスピーカやディスプレイに出力する方法を用いることができる。自車両と立体物の衝突を回避するために自動的に実行される運転操作としては、車輪の舵角を変更する操作(操舵)、或いは左右の車輪に作用する制動力を相異させる操作などのような旋回操作を用いることができる。
なお、旋回操作と制動操作を組み合わせた運転支援が実施される場合は、旋回操作或いは制動操作の何れか一方のみによる運転支援が実施される場合に比べ、前記した閾値を小さくすることができるため、運転支援の実施タイミングを可及的に遅らせつつ、自車両と立体物の衝突を回避することができる。
ところで、運転支援が開始されてから該運転支援が車両の挙動に反映されるまでには、ある程度の時間がかかる。たとえば、運転支援として運転者に対する警告が実施される場合は、運転者が警告を受けてから運転操作を開始するまでに反応遅れが発生する。また、運転支援として、制動操作や旋回操作が自動的に実施される場合は、制動操作や旋回操作が開始されてからそれらの操作が車両の挙動に反映されるまでに応答遅れが発生する。
上記したような反応遅れや応答遅れが発生すると、自車両が現在の運動量と略同等の運動量を維持したまま走行(空走)すると考えられる。そのため、自車両の現時点における位置を起点として走行範囲が求められると、運転支援の実施タイミングが遅くなる可能性や、立体物を実際に回避可能な経路と想定された回避ラインとが相異する可能性がある。
これに対し、本発明の車両の運転支援システムは、自車両が所定期間の空走をした後に到達する位置を起点として走行範囲を求めるため、運転支援の実施タイミングが遅くなる事態を防ぐことができるとともに、当該システムによって求められた回避ラインと立体物を実際に回避可能な経路との乖離を少なくすることができる。
ここでいう「所定期間」は、運転者の反応遅れとシステムの応答遅れのうち、少なくとも運転者の反応遅れを考慮して決定される期間である。たとえば、運転支援として運転者に対する警告が実施される場合は、運転者の反応遅れ期間とシステムの応答遅れ期間との和にマージンを加算した期間を所定期間とすればよい。
なお、上記した運転者の反応遅れ期間の長さは、予め統計的に求められた最大の反応遅れ期間に応じて決定される固定値であってもよい。また、上記したシステムの応答遅れ期間の長さは、車輪の舵角を変更するためのアクチュエータの応答遅れ、左右輪に作用するブレーキ油圧を調整するアクチュエータなどの応答遅れ、若しくはブレーキフルードの輸送遅れなどの長さに応じて決定される固定値であってもよく、又はシステムの通信負荷に応じて変更される可変値であってもよい。
ただし、運転者の反応遅れ期間の長さは、運転操作に対する運転者の意識レベルが低いときより高いときの方が短くなり易い。そのため、予め統計的に求められた最大の反応遅れに基づいて前記所定期間の長さ(空走距離の長さ)が決定されると、運転者の意識レベルが高いにもかかわらず運転支援が実施される可能性がある。言い換えると、運転者が障害物の存在を認識し、且つ障害物を回避するための運転操作を行う意志があるにもかかわらず、運転支援(たとえば、運転者に対する警告)が実施される可能性がある。その場合、運転者が煩わしさを覚える可能性がある。
これに対し、本発明の車両の運転支援システムは、運転者によって行われる運転操作が検出された場合は検出されない場合に比べ、所定期間(空走距離)を短く設定するようにした。ここでいう「運転操作」は、自車両を走行させるために必要な操作であり、たとえば、舵角の操作、ウィンカーレバーの操作、シフトレバー(シフトボタン)の操作、前照灯などの照明機器のスイッチ操作、ワイパースイッチの操作、ブレーキペダルの操作、アクセルペダルの操作、或いはクラッチペダルの操作などである。
運転者が運転操作を行う場合は行わない場合に比べ、運転操作に対する運転者の意識レベルが高いと言える。よって、運転者による運転操作が検出された場合に検出されない場合より短い所定期間(空走距離)が設定されると、運転者の意志に反した運転支援が実施され難くなる。言い換えると、運転者の感覚に見合った運転支援を行うことが可能になる。
なお、アクセルペダルやブレーキペダルの操作のように運転者の足操作によって行われる運転操作については、運転者が意図的に操作していない場合であっても、その操作量が変化する場合がある。たとえば、運転者の意識レベルが低い場合であっても、自車両の振動などによってアクセルペダルやブレーキペダルの操作量が変化する可能性がある。これに対し、ウィンカーレバー、シフトレバー(シフトボタン)、照明機器のスイッチ、ワイパースイッチなどの操作のように、運転者の手操作によって行われる運転操作は、運転者の意識レベルが低いときに行われ難い。言い換えると、運転者の手操作によって行われる運転操作が検出された場合は、その運転操作が運転者の意志によって行われた可能性が高いと言える。
そこで、本発明に係わる車両の運転支援システムは、運転者の手操作によって行われる運転操作が検出された場合は運転者の足操作によって行われる運転操作が検出された場合に比べ、所定期間(空走距離)を短く設定してもよい。
このように所定期間が設定されると、運転操作に対する運転者の意識レベルが低い場合に所定期間(空走距離)が過剰に短くされたり、運転操作に対する運転者の意識レベルが高い場合に所定期間(空走距離)が不要に長くされたりする事態を回避することができる。その結果、運転操作に対する運転者の意識レベルが低いときに運転支援の実施タイミングが遅れる事態や、運転操作に対する運転者の意識レベルが高いときに運転支援の実施タイミングが早くなる事態を回避することができる。
なお、アクセルペダルとブレーキペダルの何れか一方から他方へ踏み替える操作のよう
な、ペダルの踏み替え操作については、運転者の明確な意志によって行われる可能性が高い。そこで、本発明に係わる車両の運転支援システムは、運転者の足操作によって行われる運転操作としてペダルの踏み替え操作が検出手段によって検出された場合は、運転者の手操作によって行われる運転操作が検出手段によって検出された場合に比べ、所定期間を短く設定してもよい。
また、運転者の足操作によるクラッチペダルの操作と運転者の手操作によるシフトレバー(または、シフトスイッチなど)の操作とを組み合わせた変速操作についても、運転者の明確な意志によって行われる可能性が高い。そこで、本発明に係わる車両の運転支援システムは、運転者の足操作と手操作との組み合わせによる運転操作が検出手段によって検出された場合は、運転者の手操作によって行われる運転操作が検出手段によって検出された場合に比べ、所定期間を短く設定してもよい。
ここで、本発明に係わる車両の運転支援システムは、運転者の足操作によって行われる運転操作が検出された場合において、該運転操作の操作速度が大きいときは小さいときに比べ、所定期間(空走距離)を短く設定してもよい。
前述したように、運転者の足操作によって行われる運転操作(アクセルペダルやブレーキペダルの操作)については、自車両の振動などによって操作量が変化する可能性がある。自車両の振動などによって操作量が変化する場合は、その変化速度(操作速度)や変化量(操作量)が小さくなる傾向がある。
したがって、運転者の足操作によって行われる運転操作の操作速度(操作量)が大きいときは小さいときに比べ、所定期間(空走距離)が短く設定されると、運転操作に対する運転者の意識レベルが低いときに所定期間(空走距離)が過剰に短くされたり、運転操作に対する運転者の意識レベルが高いときに所定期間(空走距離)が不要に長くされたりする事態を回避することができる。
また、運転者の手操作によって行われる運転操作のうち、舵角操作(ステアリング操作)については、走行路のカントや凹凸などによって操作量が変化する場合がある。つまり、運転者の意識レベルが低い場合(運転者が意図的に舵角操作を行っていない場合)であっても、操作量(操舵角)が変化する場合がある。ただし、走行路のカントや凹凸などによって操舵角が変化する場合は、運転者が意図的に操舵する場合に比べ、操舵トルクが小さくなる傾向がある。
そこで、本発明に係わる車両の運転支援システムは、操舵トルクを測定する測定手段をさらに備え、運転者の手操作によって行われる舵角操作が検出手段によって検出された場合において、測定手段により測定された操舵トルクが基準値より大きいときは基準値以下であるときに比べ、前記所定期間を短く設定するようにしてもよい。
ここでいう「基準値」は、走行路のカントや凹凸などによって操舵角が変化する場合に操舵トルクが取り得る最大値にマージンを加算した値であり、予め実験などを利用した適合処理によって求められた値である。
このように操舵トルクの大きさに応じて所定期間(空走距離)が設定されると、運転者の意識レベルが低い場合、言い換えると、運転者の意志にかかわらず操舵角が変化した場合に、所定期間(空走距離)が過剰に短くされる事態を回避することができる。また、運転者の意図的な操作によって操舵角が変化した場合に、所定期間(空走距離)が不要に長くなる事態を回避することもできる。
次に、本発明に係わる車両の運転支援システムは、立体物との衝突を回避するための運転支援として制動操作及び旋回操作を自動的に実行する必要がある場合は、設定手段による所定期間の短縮を禁止する禁止手段をさらに備えてもよい。言い換えると、制動操作のみによって立体物との衝突を回避することができない場合は、設定手段による所定時間の短縮が禁止されてもよい。
このような構成によれば、制動操作のみによって立体物との衝突を回避することができない場合は、より早期に運転支援を実施することが可能になる。その結果、自車両と立体物との衝突をより確実に回避することが可能になる。
本発明に係わる車両の運転支援システムによれば、運転者の反応遅れやシステムの応答遅れが発生した場合に、運転者の感覚に適した運転支援を行うことができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ここでは、自車両の走路や障害物を判定し、判定された走路からの逸脱や障害物との衝突を回避するための運転支援を行うシステムに本発明を適用する例について説明する。なお、ここでいう「運転支援」は、自車両が障害物たる立体物を回避可能なタイミングで実行される処理であり、車両と障害物との衝突が不可避な場合に実行される衝突被害軽減処理より早い時期に実行される。また、以下の実施例において説明する構成は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。
図1は、本発明を適用する車両の運転支援システムの構成を機能別に示すブロック図である。図1に示すように、車両には、運転支援用の制御ユニット(ECU)1が搭載されている。
ECU1は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/Oインターフェイスなどを備えた電子制御ユニットである。ECU1には、外界認識装置2、ヨーレートセン
サ3、車輪速センサ4、加速度センサ5、ブレーキセンサ6、アクセルセンサ7、舵角センサ8、操舵トルクセンサ9、ウィンカースイッチ14などの各種センサが電気的に接続され、それらセンサの出力信号がECU1へ入力されるようになっている。
外界認識装置2は、たとえば、LIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)
、LRF(Laser Range Finder)、ミリ波レーダ、ステレオカメラなどの測定装置のうち、少なくとも1つを含み、車両の周囲に存在する立体物と自車両との相対位置に関する情報(たとえば、相対距離や相対角度)を検出する。
ヨーレートセンサ3は、たとえば、自車両の車体に取り付けられ、自車両に作用しているヨーレートと相関する電気信号を出力する。車輪速センサ4は、自車両の車輪に取り付けられ、車両の走行速度(車速)に相関する電気信号を出力するセンサである。加速度センサ5は、自車両の前後方向に作用している加速度(前後加速度)、並びに自車両の左右方向に作用している加速度(横加速度)に相関する電気信号を出力する。
ブレーキセンサ6は、たとえば、車室内のブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量)に相関する電気信号を出力する。アクセルセンサ7は、たとえば、車室内のアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作量(アクセル操作量)に相関する電気信号を出力する。舵角センサ8は、たとえば、車室内のステアリングホイールに接続されたステアリングロッドに取り付けられ、ステアリングホイールの中立位置からの回転角度(操舵角)に相関する電気信号を出力する。操舵トルクセンサ9は、ステアリングロッドに取り付けられ、ステアリングホイールに入力されるトルク(操舵トルク)に相関する電気信号を出力する。ウィンカースイッチ14は、たとえば、車室内のウィンカーレバーに取り付けられ、ウィンカーレバーが操作されたときにウィンカー(方向指示器)が示す方向に相関する電気信号を出力する。
また、ECU1には、ブザー10、表示装置11、電動パワーステアリング(EPS)12、電子制御式ブレーキ(ECB)13などの各種機器が接続され、それら各種機器がECU1によって電気的に制御されるようになっている。
ブザー10は、たとえば、車室内に取り付けられ、警告音などを出力する装置である。表示装置11は、たとえば、車室内に取り付けられ、各種メッセージや警告灯を表示する装置である。電動パワーステアリング(EPS)12は、電動モータが発生するトルクを利用して、ステアリングホイールの操舵トルクを助勢する装置である。電子制御式ブレーキ(ECB)13は、各車輪に設けられた摩擦ブレーキの作動油圧(ブレーキ油圧)を電気的に調整する装置である。
ECU1は、上記した各種センサの出力信号を利用して各種機器を制御するために、以下のような機能を有している。すなわち、ECU1は、走路認識部100、走行範囲予測部101、支援判定部102、警報判定部103、制御判定部104、及び制御量演算部105を備えている。
走路認識部100は、前記外界認識装置2から出力される情報に基づいて、自車両がこれから走行する道路(走路)に関する情報を生成する。たとえば、走路認識部100は、自車両を原点とする座標系において、自車両の障害物となり得る立体物や車線境界を示す指標(たとえば、車線境界を示す白線や黄色線などの道路標示や、車線脇に延在する縁石、ガードレール、溝、壁、ポールなどの立体物など)の位置や、それら立体物や車線境界に対する自車両の姿勢(距離やヨー角など)に関する情報を生成する。なお、走路認識部100は、本発明に係わる認識手段に相当する。
走行範囲予測部101は、前記走路認識部100により生成された座標系において、自車両がこれから通ると予測される経路を特定する。その際、走行範囲予測部101は、運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内において自車両が将来的に走行し得る経路の範囲(走行範囲)を予測する。
具体的には、走行範囲予測部101は、図2に示すように、加速度センサ5の出力信号から自車両Aの現在の横加速度Gy0を取得し、自車両Aが現在の横加速度Gy0を維持したまま走行した場合に通ると予測される経路aを特定する。
続いて、走行範囲予測部101は、自車両Aの現在の横加速度Gy0に通常変化分ΔGyを加算した場合に自車両Aが通ると予測される経路b1を特定するとともに、自車両Aの現在の横加速度Gy0から通常変化分ΔGyを減算した場合に自車両Aが通ると予測される経路b2を特定する。
その際、走行範囲予測部101は、現在の横加速度Gy0に通常変化分ΔGyを加算又は減算した値から自車両Aの旋回半径Rを演算し、算出された旋回半径Rと自車両の幅にしたがって経路b1,b2を特定すればよい。なお、旋回半径Rは、車速Vをヨーレートγで除算することにより求めることができるとともに(R=V/γ)、ヨーレートγは横加速度Gyを車速Vで除算することにより求めることができる(γ=Gy/V)。次に、走行範囲予測部101は、前記した経路b1からb2までの範囲(走行範囲)において、操舵角又は横加速度を一定量ずつ変化させた場合の経路b0を特定する。
ここで、前記通常変化分ΔGyは、運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内における横加速度の最大変化量に相当する量であり、予め実験的に求められている量である。その際、通常変化分ΔGyは、車速に応じて補正されてもよい。たとえば、車速が低いときは高いときに比べ、通常変化分ΔGyが大きくされてもよい。その場合、自車両が低速走行しているときに、運転者の意志に反して運転支援が実施される機会を減少させることができるとともに、運転支援の実施タイミングを可及的に遅らせることができる。さらに、自車両が高速走行しているときに、運転支援の実施タイミングが遅くなる事態を回避することもできる。
なお、自車両Aが現時点において既に旋回状態にある場合(|Gy0|>0)は、現在の横加速度Gy0に通常変化分ΔGyを加減した値の絶対値(|Gy0±ΔGy|)が運転者の通常の運転操作によって発生し得る最大横加速度(たとえば、0.2Gから0.3G)より大きくなる可能性がある。よって、通常変化分ΔGyの大きさは、現在の横加速度Gy0に通常変化分ΔGyを加減した値の絶対値が前記最大横加速度以下となるように制限されてもよい。
また、走行範囲予測部101は、走行範囲を特定する際に、自車両が前記最大横加速度で走行した場合に通ると予測される経路を経路b1,b2に設定してもよい。たとえば、走行範囲予測部101は、図3に示すように、自車両が最大横加速度で右旋回しながら走行した場合に通ると予測される経路を経路b1に設定するとともに、自車両が最大横加速度で左旋回しながら走行した場合に通る経路を経路b2に設定してもよい。
次に、支援判定部102は、走路認識部100により生成された情報と走行範囲予測部101により予測された走行範囲とに基づいて、運転支援を実施するか否かを判別する。具体的には、支援判定部102は、図4に示すように、立体物Bを回避可能な経路(回避ライン)Eが前記走行範囲内に存在する場合は、運転支援の実行を禁止する。一方、支援判定部102は、図5に示すように、回避ラインが存在しない場合は、運転支援の実施を許可する。
警報判定部103は、前記支援判定部102により運転支援の実施が許可された場合に、ブザー10の鳴動や、表示装置11による警告メッセージ若しくは警告灯の表示などを行うことにより、運転者に警告を促す。たとえば、警報判定部103は、前記支援判定部102により運転支援の実施が許可されたとき(前記走行範囲内に回避ラインが存在しなくなったとき)に直ちにブザー10を鳴動させ、又は表示装置11に警告メッセージ若しくは警告灯を表示させてもよい。
また、警報判定部103は、前記走行範囲に含まれる経路のうち、自車両と立体物との距離が最も長い経路について、自車両と立体物との距離が所定距離以下になった時点でブザー10を鳴動させ、又は表示装置11に警告メッセージ若しくは警告灯を表示させてもよい。さらに、警報判定部103は、自車両と立体物との距離が最も長い経路について、自車両Aが立体物Bに到達するまでの時間を演算し、その演算結果が所定時間以下となった時点でブザー10を鳴動させ、又は表示装置11に警告メッセージ若しくは警告灯を表示させるようにしてもよい。このように、自車両と立体物との距離が最も長い経路を基準にして、ブザー10の鳴動タイミングや表示装置11による警告メッセージ若しくは警告灯の表示タイミングが決定されると、それらのタイミングを可及的に遅くすることができる。その結果、運転者に対して煩わしさを覚えさせることなく、運転支援を実施することができる。
ここで、前記した所定距離や所定時間は、ヨーレートセンサ3の出力信号や車輪速センサ4の出力信号に応じて変更されてもよい。たとえば、車速が高いときは低いときに比べ、所定距離や所定時間が長く設定されてもよい。また、ヨーレートが大きいときは小さいときに比べ、所定距離や所定時間が長く設定されてもよい。
なお、走行範囲に含まれる各経路の長さを前記所定距離に設定し、走行範囲内の全ての経路が立体物と干渉した時点でブザー10を鳴動させ、又は表示装置11に警告メッセージ若しくは警告灯を表示させるようにしてもよい。また、運転者に対する警告の方法は、ブザー10を鳴動させる方法や、表示装置11に警告メッセージ若しくは警告灯を表示させる方法に限られず、たとえば、シートベルトの締め付けトルクを断続的に変化させる方法を採用してもよい。
制御判定部104は、前記支援判定部102により運転支援処理の実行が許可された場合に、自車両と立体物との衝突を回避するために必要な運転操作(以下、「回避操作」と称する)を自動的に実施するタイミングを決定する。
具体的には、制御判定部104は、前記走行範囲に含まれる経路のうち、自車両と立体物との距離が最も長い経路について、自車両と立体物との距離が所定距離以下になるタイミングを、回避操作の実施タイミングに設定してもよい。また、制御判定部104は、前記走行範囲に含まれる経路のうち、自車両と立体物との距離が最も長い経路について、自車両が立体物に到達する時間を演算し、その演算結果が所定時間以下となるタイミングを、回避操作の実施タイミングとしてもよい。なお、走行範囲に含まれる各経路の長さを前記所定距離に設定し、走行範囲内の全ての経路が立体物と干渉するタイミングを、回避操作の実施タイミングとしてもよい。
このように、自車両と立体物との距離が最も長い経路を基準にして、回避操作の実施タイミングが決定されると、それらのタイミングを可及的に遅くすることができる。その結果、運転者に対して煩わしさを覚えさせることなく、運転支援を実施することができる。なお、ここでいう「回避操作」は、電動パワーステアリング(EPS)12を利用して車輪の舵角を変更する操作や、電子制御式ブレーキ(ECB)13を利用して車輪に作用す
る制動力を変更する操作などを含む。
ここで、制御判定部104が使用する所定距離や所定時間は、前記警報判定部103が使用する所定距離や所定時間と同様に車速やヨーレートに応じて変更されてもよいが、前記警報判定部103が使用する所定距離や所定時間と同等以下に設定されるものとする。
制御量演算部105は、前記制御判定部104により回避操作の実施タイミングが決定されたときに、電動パワーステアリング(EPS)12や電子制御式ブレーキ(ECB)13の制御量を演算するとともに、算出された制御量と前記制御判定部104により決定された回避操作実施タイミングとにしたがって電動パワーステアリング(EPS)12や電子制御式ブレーキ(ECB)13を制御する。
具体的には、制御量演算部105は、自車両と立体物との衝突を回避可能な回避ラインを決定し、決定された回避ラインに沿って自車両を走行させるために必要な目標ヨーレートを演算する。次いで、制御量演算部105は、自車両の実際のヨーレート(ヨーレートセンサ3の出力信号)が目標ヨーレートと一致するように、電動パワーステアリング(EPS)12の制御量(操舵トルク)や電子制御式ブレーキ(ECB)13の制御量(ブレーキ油圧)を決定する。その際、目標ヨーレートと操舵トルクとの関係、及び目標ヨーレートとブレーキ油圧との関係は、予めマップ化されていてもよい。
なお、車両を減速させる方法は、電子制御式ブレーキ(ECB)13により摩擦ブレーキを作動させる方法に限られず、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換(回生)させる方法や、変速機の変速比を変更させてエンジンブレーキを増大させる方法を用いてもよい。また、車両のヨーレートを変更する方法は、電動パワーステアリング(EPS)12により舵角を変化させる方法に限られず、自車両の左右輪に対して異なるブレーキ油圧を印加する方法を用いてもよい。
ここで、前記した走行範囲予測部101、支援判定部102、警報判定部103、制御判定部104、及び制御量演算部105は、本発明に係わる支援手段に相当する。
上記したように構成されたECU1によれば、走行範囲予測部101により予測された走行範囲内に回避ラインが存在する場合、すなわち、運転者が通常の運転操作を行うことにより自車両と立体物との衝突を回避可能な場合は、運転支援が実施されなくなる。その結果、運転者が通常の運転操作を行う意志を持っているにもかかわらず、運転支援が実施される事態を回避することができる。
また、運転支援が実行されない場合において、運転者が通常通りの運転操作を行わない可能性もある。たとえば、運転者の意識レベルが低い場合(脇見をしている場合や、居眠りしている場合など)は、運転者が通常の運転操作を行わない可能性がある。ただし、運転者が通常の運転操作を行わない場合は、自車両が立体物に近づくにつれ、回避ラインの選択肢が少なくなっていく。そして、走行範囲内に回避ラインが存在しなくなった時点で、警告や回避操作などの運転支援が実行される。つまり、運転者が通常の運転操作を行わなかった場合であっても、走行範囲内に回避ラインが存在しなくなった時点で運転支援が実施されることになる。
ところで、運転者が警告を受けてから運転操作を開始するまでには反応遅れが発生する。たとえば、図6に示すように、現時点における自車両Aの位置を起点とした走行範囲(図6中の実線で示す走行範囲Ra1)が予測された場合は、自車両Aが立体物Bを回避可能な回避ラインLeが走行範囲に含まれるため、上記したような運転支援は実施されないことになる。
しかしながら、現時点において運転者に対する警告がなされたと仮定した場合に、警告を受けた運転者が立体物Bを回避するための運転操作を開始するまでにはある程度の時間(反応遅れ)がかかる。反応遅れ期間中は、自車両Aが現時点の運動量と略同等の運動量で空走すると考えられるため、空走後に自車両Aの運動量が変化し始めることになる。その場合の回避ラインLe’は、運転者の通常の運転操作の範囲内で自車両Aが走行し得る範囲(図6中の走行範囲Ra2)から逸脱する可能性がある。
よって、現時点における自車両の位置を起点として走行範囲が予測されると、警告の実施タイミングが遅くなったり、立体物を実際に回避可能な回避ラインと予測された回避ラインとが乖離したりする可能性がある。
また、制御量演算部105が回避操作を開始してから実際のヨーレートが変化し始めるまでには応答遅れが発生する。たとえば、図7に示すように、自車両Aの現在位置を起点として予測された走行範囲Raに回避ラインが存在しない場合に、制御量演算部105は、立体物Bを回避可能な回避ラインLeを決定し、決定された走行経路Lに基づいて電動パワーステアリング(EPS)12や電子制御式ブレーキ(ECB)13を制御することになる。
しかしながら、制御量演算部105が電動パワーステアリング(EPS)12や電子制御式ブレーキ(ECB)13の制御を開始してから車輪の舵角やブレーキ油圧が変化し始めるまでにはある程度の時間(応答遅れ)がかかる。応答遅れ期間中は、自車両Aが現時点の運動量と略同等の運動量で空走すると考えられるため、空走後に自車両Aの運動量が変化し始めることになる。つまり、自車両Aは、空走後に前記回避ラインLeと同形状の経路Le’を辿ることになる。
よって、現時点における自車両の位置を起点として走行範囲が予測されると、回避操作の実施タイミングが遅くなったり、制御量演算部105により決定される回避ラインと立体物を実際に回避可能な回避ラインとが乖離したりする可能性がある。
そこで、本実施例の車両の運転支援システムでは、走行範囲予測部101は、図8に示すように、自車両Aが現時点の位置P0から所定期間の空走をした後に到達する位置P1を起点として、走行範囲Raを予測するようにした。
ただし、運転者の反応遅れ期間の長さとシステムの応答遅れ期間の長さは相異する。よって、前記所定期間の長さは、警告の実施タイミングを決定する場合と回避操作の実施タイミングを決定する場合とにおいて異なる長さに設定されることが望ましい。
そこで、走行範囲予測部101は、運転者の反応遅れ期間に基づく走行範囲(以下、「第1走行範囲」と称する)と、システムの応答遅れ期間に基づく走行範囲(以下、「第2走行範囲」と称する)とをそれぞれ個別に予測する。
ここで、運転者の反応遅れ期間の長さは、運転操作に対する運転者の意識レベルの高さによって変化する。たとえば、運転操作に対する運転者の意識レベルが高いときは低いときに比べ、反応遅れ期間は短くなる。そこで、走行範囲予測部101は、運転者の意識レベルの高さに応じて、反応遅れ期間の長さを変更するようにした。
詳細には、走行範囲予測部101は、運転者が行う運転操作が検出された場合は検出されない場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定するようにした。ここでいう運転操作としては、舵角の操作(ステアリング操作)、ウィンカーレバーの操作、シフトレバー(シフト
ボタン)の操作、前照灯などの照明機器のスイッチ操作、ワイパースイッチの操作、ブレーキペダルの操作、アクセルペダルの操作、或いはクラッチペダルの操作などのように、自車両を走行させるために必要な操作である。
たとえば、走行範囲予測部101は、図9に示すように、ウィンカーレバーの操作が検出された場合は検出されない場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定してもよい。すなわち、ウィンカーを作動させるべくウィンカーレバーが操作されたとき(ウィンカースイッチ14がOFFからONへ切り換わったとき)は、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を最小値T1minに短縮する(図9中のt1)。その後の一定期間においてウィンカーレバーが操作されなければ、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を初期値T1vに戻す(図9中のt2)。そして、ウィンカーの作動を停止させるべくウィンカーレバーが操作されたとき(ウィンカースイッチ14がONからOFFへ切り換わったとき)は、走行範囲予測部101は、再び反応遅れ期間を最小値T1minに短縮する(図9中のt3)。ここでいう「初期値T1v」は、たとえば、予め統計的に求められた反応遅れ期間の最大値にマージンを加算した値であり、「最小値T1min」は、たとえば、予め統計的に求められた反応遅れ期間の最小値にマージンを加算した値である。走行範囲予測部101は、ワイパーレバー、シフトレバー(シフトスイッチ)、又は照明機器のスイッチ操作が検出された場合においても、ウィンカーレバーの操作が検出された場合と同様の手順にしたがって、反応遅れ期間を短縮してもよい。
走行範囲予測部101は、図10に示すように、アクセルペダルの操作が検出された場合は検出されない場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定してもよい。すなわち、アクセルペダルの操作量が急激に減少したときは、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を最小値T1minに短縮する(図10中のt1)。その後の一定期間においてアクセルペダルの操作量が急激に変化しなければ、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を初期値T1vに戻す(図10中のt2)。なお、図10中のt2において、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を一気に初期値T1vへ戻さずに、徐々に増加させるようにしてもよい。次に、アクセルペダルの操作量が穏やかに増加すると、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を最小値T1minまで短縮させずに、徐々に短縮させる(図10中のt3)。これは、運転操作に対する運転者の意識レベルが低い場合(運転者が意図的にアクセルペダルを操作していない場合)であっても、自車両の振動などによってアクセルペダルの操作量が穏やかに変化する可能性があり、運転者の意志に因る変化であるか否かを判別することができないためである。そして、アクセルペダルの操作量が急激に増加すると、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を最小値T1minに短縮する(図10中のt4)。その後の一定期間においてアクセルペダルの操作量が急激に変化しなければ、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を増加させることになるが、その時点でアクセルペダルの操作量が穏やかに変化していれば、反応遅れ期間を徐々に増加させる(図10中のt5)。なお、ここでいう「アクセルペダルの操作量の急激な変化」は、アクセルペダルの操作速度(単位時間あたりの操作量)が予め定められた閾値以上となる変化であり、その際の「閾値」は運転者の意志に因らずに起こり得る変化量の最大値にマージンを加算した値である。走行範囲予測部101は、ブレーキペダルの操作が検出された場合においても、アクセルペダルの操作が検出された場合と同様の手順にしたがって、反応遅れ期間を短縮してもよい。
走行範囲予測部101は、図11に示すように、ステアリング操作が検出された場合は検出されない場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定してもよい。すなわち、操舵角及び操舵トルクが増加したときに、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を最小値T1minに短縮する(図11中のt1)。そして、操舵角及び操舵トルクが零になった時点(図11中のt2)から一定期間において操舵角及び操舵トルクが変化しなければ、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を徐々に増加させる(図11中のt3)。その際、走行範囲
予測部101は、反応遅れ期間を一気に初期値T1vまで増加させてもよい。ところで、操舵角のみが変化する場合、言い換えると、操舵角が変化したときに操舵トルクが増加しない場合は、走行範囲予測部101は、反応遅れ期間を短縮させない(図11中のt4)。これは、操舵角の変化が走行路のカントや凹凸に因るものであって、運転者の意図的な操作に因るものではないと考えられるためである。
図9乃至図11に示した方法によって反応遅れ期間が設定されると、運転操作に対する運転者の意識レベルが低い場合(運転者の意志によって運転操作が行われていない場合)に反応遅れ期間が過剰に短くされたたり、運転操作に対する運転者の意識レベルが高い場合(運転者の意志によって運転操作が行われた場合)に反応遅れ期間が過剰に長くされたりする事態を回避することができる。
なお、走行範囲予測部101は、ステアリング操作のように運転者の手操作によって行われる運転操作が検出された場合は、アクセルペダルの操作のように運転者の足操作によって行われる運転操作が検出された場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定してもよい。また、走行範囲予測部101は、運転者の足操作によって行われる運転操作としてアクセルペダルとブレーキペダルの踏み替え操作が検出された場合は、ステアリング操作のように運転者の手操作によって行われる運転操作が検出された場合に比べ、反応遅れ期間を短く設定してもよい。このように反応遅れ期間が設定されると、運転者の明確な意志によって運転操作が行われた場合は、反応遅れ期間をより確実に短く設定することができる。
次に、システムの応答遅れ期間の長さは、予め実験などを利用した適合作業により求めておくものとする。その際、応答遅れ期間の長さは、ECU1と各種機器を接続する車内ネットワークの通信負荷に応じて補正されてもよい。たとえば、走行範囲予測部101は、車内ネットワークの通信負荷が高いときは低いときに比して、応答遅れ期間が長くなるような補正を行ってもよい。
以上述べたように、運転者の反応遅れやシステムの応答遅れを考慮して空走期間が設定されると、運転操作に対する運転者の意識レベルが低い場合に空走期間が過剰に短くされたり、運転操作に対する運転者の意識レベルが高い場合に空走期間が不要に長くされたりする事態を回避することができる。その結果、運転操作に対する運転者の意識レベルが低いときに運転支援の実施タイミングが遅れる事態や、運転操作に対する運転者の意識レベルが高いときに運転支援の実施タイミングが早くなる事態を回避することができる。
したがって、運転者の意志に反した運転支援が実施され難くなる。言い換えると、運転者の感覚に見合った運転支援を行うことが可能になる。
以下、本実施例における運転支援の実行手順について図12に沿って説明する。図12は、ECU1によって繰り返し実行される処理ルーチンであり、ECU1のROMなどに予め記憶されている。
図12の処理ルーチンでは、ECU1は、先ずS101において、外界認識装置2の出力信号に基づいて、自車両が将来走行する走路に関する情報(走路情報)を生成する。すなわち、ECU1は、自車両を原点とする座標系において、自車両の障害物となり得る立体物や車線境界を示す指標の位置座標や大きさに関する情報を生成するとともに、それら立体物や車線境界に対する自車両の姿勢に関する情報を生成する。
S102では、ECU1は、前記S101で生成された走路情報に基づいて、自車両の進路上に障害物となる立体物が存在するか否かを判別する。ここでいう「進路」は、自車両が現在の横加速度Gy0を維持したまま走行した場合に通ると予測される経路である。
S102において否定判定された場合は、ECU1は、本ルーチンの実行を一旦終了する。一方、S102において肯定判定された場合は、ECU1は、S103へ進む。
S103では、ECU1は、前述の図9乃至図11の説明で述べた方法により反応遅れ期間の長さT1を設定するとともに、車内ネットワークの通信負荷などに応じてシステムの応答遅れ期間の長さT2を設定する。なお、制動操作のみによって立体物と自車両の衝突を回避することができない場合、言い換えると、制動操作と旋回操作の双方を行う必要がある場合においては、前述した図9乃至図11の説明で述べたような反応遅れ期間の短縮処理が行われないようにしてもよい。つまり、制動操作のみによって立体物と自車両の衝突を回避することができない場合は、反応遅れ期間が初期値T1vに固定されてもよい。これは、制動操作のみによって立体物との衝突を回避することができない場合は、より早期に運転支援を実施する必要があるためである。
S104では、ECU1は、ヨーレートセンサ3の出力信号(ヨーレート)γ、車輪速センサ4の出力信号(車速)V、及び加速度センサ5の出力信号(横加速度)Gy0などの各種データを読み込む。
S105では、ECU1は、自車両が反応遅れ期間及び応答遅れ期間の空走をした後に到達する位置(到達点)P1,P2を演算する。詳細には、ECU1は、前記S104で読み込まれたヨーレートγと車速Vとをパラメータとして、現時点における自車両の旋回半径R(=V/γ)を演算する。ECU1は、前記S103で算出された反応遅れ期間の長さT1と前記S104で読み込まれた車速Vとをパラメータとして、反応遅れ期間中に自車両が空走する距離(以下、「第1空走距離」と称する)L1を演算する(L1=T1×V)。ECU1は、前記旋回半径Rと第1空走距離L1をパラメータとして、前記S101で生成された座標系における到達点P1の座標を演算する。また、ECU1は、前記S103で算出された応答遅れ期間の長さT2と前記S104で読み込まれた車速Vとをパラメータとして、応答遅れ期間中に自車両が空走する距離(以下、「第2空走距離」と称する)L2を演算する(L2=T2×V)。ECU1は、前記旋回半径Rと第2空走距離L2をパラメータとして、前記S101で生成された座標系における到達点P2の座標を演算する。
S106では、ECU1は、前記S105で算出された到達点P1,P2の座標を起点として、第1走行範囲及び第2走行範囲の座標を演算する。詳細には、ECU1は、前記S104で読み込まれた横加速度(自車両の現時点における横加速度)Gy0に通常変化分ΔGyを加算及び減算することにより、到達点P1,P2を起点とする経路b1,b2を特定する。次いで、ECU1は、経路b1からb2までの範囲において舵角又は横加速度を一定量ずつ変化させた場合の経路b0を特定する。
S107では、ECU1は、前記S101で生成された座標系における立体物の位置と前記S106で予測された第2走行範囲とを比較し、自車両が立体物を回避可能な回避ラインが前記第2走行範囲内に存在するか否かを判別する。
前記S107において肯定判定された場合は、ECU1は、回避操作による運転支援を実施せずに、S108へ進む。S108では、ECU1は、前記S101で生成された立体物の位置座標と前記S106で予測された第1走行範囲とを比較し、自車両が立体物を回避可能な回避ラインが前記第1走行範囲内に存在するか否かを判別する。
前記S108において肯定判定された場合は、ECU1は、警告による運転支援を実施せずに、本ルーチンの実行を終了する。
また、前記S107において否定判定された場合は、ECU1は、S109へ進み、電動パワーステアリング(EPS)12およびまたは電子制御式ブレーキ(ECB)13を利用した回避操作を実行する。詳細には、ECU1は、到達点P2を起点として、自車両が立体物を回避することができる走行経路(回避ライン)Leを決定し、決定された回避ラインLeに沿って自車両を走行させるために必要な目標ヨーレートを演算する。次いで、ECU1は、自車両の実際のヨーレートが目標ヨーレートと一致するように、電動パワーステアリング(EPS)12およびまたは電子制御式ブレーキ(ECB)13を制御する。
その場合、自車両は現在位置から到達点P2まで空走する可能性があるが、回避ラインLeが到達点P2を起点として設定されているため、自車両と立体物との衝突をより確実に回避することができる。また、自車両が回避ラインLeを走行する際の横加速度を小さく抑えることもできる。
前記S108において否定判定された場合は、ECU1は、S110へ進み、ブザー10若しくは表示装置11を利用した警告を実施する。その場合、警告を受けた運転者が立体物を回避するための運転操作を開始するまでに反応遅れが発生し、その反応遅れ期間中に自車両が到達点P1まで空走する可能性があるが、第1走行範囲が到達点P1を起点として設定されているため、警告の実施タイミングが遅くなったり、立体物を実際に回避可能な回避ラインと予測された回避ラインとが乖離したりする事態を回避することができる。
以上述べた実施例によれば、運転者が通常の運転操作を行うことにより自車両と立体地物との衝突を回避することができる場合は、運転支援が実施されないことになる。そのため、運転者が通常の運転操作を行う意志を持っているにもかかわらず、運転支援が実施されることがなくなる。
さらに、本実施例の運転支援システムによれば、運転者の反応遅れやシステムの応答遅れに起因した空走期間を含めて走行範囲が予測されるため、運転支援の実施タイミングが遅くなる事態を防ぐことができるとともに、立体物を実際に回避可能な経路と予測された回避ラインとの乖離を少なくすることができる。その結果、運転者の感覚に見合った運転支援を実施することが可能になる。
なお、本実施例においては、自車両の運動量を示すパラメータとして、横加速度を用いたが、ヨーレート、左右G、コーナリングフォースなどを用いることもできる。ただし、横加速度や左右Gのように、ヨーレートと車速に相関するパラメータを用いることが好ましい。
横加速度や左右Gは、ヨーレートが大きくなるほど大きくなるとともに、車速が高くなるほど大きくなる。よって、自車両の運動量を示すパラメータとして横加速度又は左右Gが用いられる場合は、前記走行範囲予測部101により予測される走行範囲は、車速が低いときより高いときの方が狭くなる。その結果、車速が高いときは低いときに比べ、走行範囲内に回避ラインが存在しなくなるタイミング(運転支援が実施されるタイミング)が早くなる。よって、自車両の走行速度が高い場合であっても、自車両と立体物との衝突をより確実に回避することが可能になる。
また、走行範囲予測部101は、自車両が空走する際に、該自車両が左右方向へ移動すると仮定して到達点を特定してもよい。自車両が空走するときは、ステアリング機構のあそび、路面のカントや凹凸、或いは車輪のスリップ角度などの要因によって自車両が左右方向へふらつく場合がある。
これ対し、走行範囲予測部101は、図13に示すように、自車両が空走する際に左右方向へふらつくと仮定して複数の到達点Pを特定するようにしてもよい。その際、左右方向のふらつき量は、予め実験などを用いた適合作業により求めておくようにしてもよい。
上記したように複数の到達点Pが特定された場合に、走行範囲予測部101は、複数の到達点Pのそれぞれについて第1走行範囲又は第2走行範囲を予測してもよく、若しくは現時点のヨーレートから左右方向の何れにふらつくかを予測するとともに、予測された方向の到達点Pについてのみ第1走行範囲又は第2走行範囲を予測してもよい。また、走行範囲予測部101は、現時点のヨーレートからふらつき方向に加えて、ふらつき量も予測し、ふらつき方向及びふらつき量から特定される到達点Pについてのみ第1走行範囲又は第2走行範囲を予測してもよい。
なお、走行範囲予測部101が複数の到達点Pのそれぞれについて第1走行範囲又は第2走行範囲を予測した場合は、支援判定部102は、全ての第1走行範囲に回避ラインが存在しないことを条件に警告による運転支援を許可するとともに、全ての第2走行範囲に回避ラインが存在しないことを条件に回避操作による運転支援を許可するようにしてもよい。
このように、空走期間中のふらつきを考慮して到達点の特定や走行範囲の予測が行われると、運転支援の実施タイミングが遅くなる事態をより確実に防ぐことができるとともに、立体物を実際に回避可能な経路と予測された回避ラインとの乖離を一層少なくすることができる。