JP5638416B2 - 電動工具 - Google Patents
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Description
通常、放射されるノイズは、コモンモードノイズ(図3参照)が支配的なため、一般的な電動工具にはコモンモードノイズ低減用のラインフィルタ101のみが設けられている。コモンモードノイズ低減用のラインフィルタ101は、図17に示すように、円筒形の磁性体(フェライト)であり、そのラインフィルタ101の内側に電源線32の往路32fと帰路32bとが通されている。これにより、ノイズ電流Icに起因する磁界が電源線32を囲むように配置されたラインフィルタ101に集中する。そして、ラインフィルタ101の磁気損失によりノイズエネルギー(磁気エネルギー)が熱に変換されてコモンモードノイズが抑制される。
ディファレンシャルモードノイズの場合、前述のように、ノイズ電流Idは電源線32の往路32fと帰路32bとを逆向きに流れるため(図2参照)、ラインフィルタ101の内側に往路32fと帰路32bとをそのまま通した状態では、ノイズ電流Idに起因する磁界が打ち消し合って磁気損失が発生せずノイズを低減させることはできない。
このため、図17に示すように、電源線32の往路32fと帰路32bを個々に通すラインフィルタ102,103を追加する必要がある。したがって、コモンモードノイズ、ディファレンシャルモードノイズを低減させなければならない電動工具では、コモンモードノイズ低減用のラインフィルタ101と、ディファレンシャルモードノイズ低減用のラインフィルタ102,103とを個別に設ける必要がある。
さらに、電動工具に対するラインフィルタ101,102,103の組付けも面倒になる。
請求項1の発明は、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを低減させるラインフィルタを備える電動工具であって、前記ラインフィルタは、磁性体により構成された単一の軸状体を備えており、前記軸状体には、その軸状体の軸方向における一端面から他端面に至るまで軸方向に延びる少なくとも二本の貫通孔が形成されており、前記軸状体の少なくとも二本の貫通孔には、少なくとも二本の電線が個々に通されていることを特徴とする。
また、ディファレンシャルモードノイズのノイズ電流は二本の電線を逆方向に流れるため、前記ノイズ電流により発生する磁界は各々の電線を囲むようにラインフィルタの各貫通孔近傍に発生する。なお、前記二本の電線を囲むようにラインフィルタの外周面近傍に発生する磁界は互いに打ち消される。そして、ラインフィルタの各貫通孔近傍の磁界により、そのラインフィルタで磁気損失に起因する熱が発生し、ディファレンシャルモードノイズが抑制される。
このように、ラインフィルタの外周面近傍でコモンモードノイズを低減させ、ラインフィルタの個々の貫通孔近傍でディファレンシャルモードノイズを低減させる構成のため、一個のラインフィルタで電動工具のコモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを低減させることができる。したがって、従来のように、複数のラインフィルタを使用する構成と比較してラインフィルタがコンパクトになる。さらに、電動工具に対するラインフィルタの組付け性も向上する。
請求項3の発明によると、駆動源として整流子とブラシとを備えるモータを使用していることを特徴とする。
即ち、整流子とブラシとの摺動時に大きなノイズを発生させるモータのノイズ対策に請求項1に係るラインフィルタが有効に作用する。
請求項4の発明によると、ラインフィルタの貫通孔には、モータと、そのモータを起動させるスイッチとをつなぐ電線が通されていることを特徴とする。
請求項5の発明によると、ラインフィルタの貫通孔には、モータと、そのモータを起動させるコントローラとをつなぐ電線が通されていることを特徴とする。
これにより、ノイズ源であるモータからのノイズを有効に低減できる。
請求項6の発明によると、ラインフィルタの貫通孔には、コントローラと操作部、及び/又は、表示部とをつなぐ電線が通されていることを特徴とする。
このため、ノイズ源であるコントローラやモータからのノイズを有効に低減できる。
このように、ラインフィルタの貫通孔と貫通孔との間をそれらの貫通孔の軸心方向両側から爪により押さえる構成のため、それらの貫通孔に電線を通す際に爪が邪魔にならない。
請求項8の発明によると、ハウジングの内壁面は、ラインフィルタを囲む部位が弾性体によって覆われていることを特徴とする。
このため、電動工具の振動や外部からの衝撃等でラインフィルタが損傷し難くなる。
以下、図1から図16に基づいて、本発明の実施形態1に係る電動工具、及びその電動工具に使用されるラインフィルタについて説明する。
<電動工具10の概要について>
電動工具10は、モータ20を駆動源とするハンディタイプの回転工具であり、図1に示すように、筒状のハウジング本体部12と、そのハウジング本体部12の後部下面から突出するように形成されたハンドル部15とからなるハウジングを備えている。
ハウジング本体部12にはモータ20が収納されており、そのモータ20の前方にモータ20の回転力を増幅する歯車機構27が収納されている。そして、歯車機構27の出力軸27pがハウジング本体部12の先端位置に装着された工具装着部29に連結されている。
モータ20は、固定子巻き線21と電機子巻き線22とが直列に接続された直巻電動機であり、整流子23とブラシ24とを備えている。そして、図2、図3の電気回路図に示すように、電源線32の往路32fに変速スイッチ18と、モータ20の固定子巻き線21、ブラシ24、整流子23、及び電機子巻き線22の一端側が直列に接続されている。また、電源線32の帰路32bにモータ20の固定子巻き線21、ブラシ24、整流子23、及び電機子巻き線22の他端側が直列に接続されている。
さらに、前記電気回路において変速スイッチ18とモータ20との間には、図1、図4等に示すように、電動工具10のブラシ24と整流子23間で発生するノイズを低減させるためのラインフィルタ40が設けられている。
なお、図2、図3では、ラインフィルタ40は省略されている。
ラインフィルタ40は、図5等に示すように、フェライト等の磁性体により構成された断面略楕円形をした軸状体であり、軸方向に延びる二本の貫通孔43を備えている。そして、ラインフィルタ40の二本の貫通孔43に電源線32の往路32fと帰路32bとがそれぞれ通されている。二個の貫通孔43は、図6に示すように、略楕円状のラインフィルタ40の長軸J上であって、その長軸Jをほぼ3等分する位置に形成されている。
電動工具10のモータ20が駆動されてブラシ24と整流子23間でノイズが発生すると、そのノイズ(ディファレンシャルモードノイズ+コモンモードノイズ)が電源線32等を経由して外部に放射される。
先ず、図2、図5、図6に基づいて、ディファレンシャルモードノイズに対するラインフィルタ40の働きを説明する。ディファレンシャルモードノイズの場合、ノイズ電流Idは、図2に示すように、電源線32の往路32fから帰路32bの方向に流れる。このため、図5、図6において、電源線32の往路32fと帰路32bとを流れるノイズ電流Idの向きは逆向きとなる。
なお、ノイズ電流Idは交流であるため、そのノイズ電流Idの向きは当然図とは逆向きになることもある。
即ち、ノイズ電流Idによりラインフィルタ40の各貫通孔43近傍に磁界B11と磁界B21とが発生するため、ラインフィルタ40で磁気損失に起因する熱が発生してノイズエネルギーが消費され、ディファレンシャルモードノイズが低減される。
なお、ノイズ電流Icは交流であるため、そのノイズ電流Icの向きは当然図とは逆向きになることもある。
即ち、ノイズ電流Icによりラインフィルタ40の外周面近傍で磁界B32と磁界B42とが発生するため、ラインフィルタ40で磁気損失に起因する熱が発生してノイズエネルギーが消費され、コモンモードノイズが低減される。
このように、ラインフィルタ40の外周面近傍でコモンモードノイズが低減され、ラインフィルタ40の各貫通孔43の近傍でディファレンシャルモードノイズが低減されるようになる。
即ち、電源線32の往路32fと帰路32bとが本発明の供給電流の向きが逆向きになる二本の電線に相当する。
本実施形態に係る電動工具10によると、ラインフィルタ40の外周面近傍でコモンモードノイズを低減させ、ラインフィルタ40の個々の貫通孔43近傍でディファレンシャルモードノイズを低減させる構成のため、一個のラインフィルタ40で電動工具10のコモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを低減させることができる。したがって、従来のように、複数のラインフィルタ101,102,103を使用する構成と比較してラインフィルタ40がコンパクトになる。さらに、電動工具10に対するラインフィルタ40の組付け性も向上する。
また、ラインフィルタ40の貫通孔43には、モータ20と変速スイッチ18とをつなぐ電源線32が通されているため、ノイズ源であるモータ20からのノイズを有効に低減できる。
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る電動工具10では、図4に示すように、電気回路において変速スイッチ18とモータ20との間にラインフィルタ40を設ける例を示した。しかし、図9に示すように、モータ20をコントローラ19により制御する電動工具10の場合、モータ20とコントローラ19間にラインフィルタ40を設けることも可能である。また、図10に示すように、電動工具10のコントローラ19と表示部・操作部19wとの間にラインフィルタ40を設けることも可能である。
また、本実施形態では、図5等に示すように、軸方向に二本の貫通孔43を備える断面略楕円形のラインフィルタ40を例示したが、図11、図12に示すように、ラインフィルタ40に補助部を付加することも可能である。
図12に示すラインフィルタ50は、前記ラインフィルタ本体部40と、ラインフィルタ本体部40の貫通孔43と同径の貫通孔55hを備える円筒形フィルタ補助部55とから構成されている。そして、図12の下図に示すように、ラインフィルタ本体部40と円筒形フィルタ補助部55とが互いの貫通孔43,55hの位置で接着剤等により接続されている。そして、円筒形フィルタ補助部55の貫通孔55hとラインフィルタ本体部40の貫通孔43とからなる上下二本の貫通孔43,55hに電源線32の往路32fと帰路32bとがそれぞれ通されるようになっている。このように、円筒形フィルタ補助部55を追加した分だけ電動工具10のディファレンシャルモードノイズをさらに低減させることができる。
また、本実施形態では、ラインフィルタ40の二本の貫通孔43に電源線32の往路32fと帰路32bとをそれぞれ通す例を示したが、図14に示すように、例えば、電源線32の往路32fのみを一方の貫通孔43から他方の貫通孔43に通すことも可能である。これにより、二本の貫通孔43を備えるラインフィルタ40をディファレンシャルモードノイズの低減用のラインフィルタとして使用できるようになる。
ここで、ラインフィルタ40を衝撃等から保護するため、ラインフィルタ40を囲むようにハンドル部15の内壁面を発泡ゴム等からなるエラストマ15eで覆うようにするのが好ましい。
また、本実施形態では、ラインフィルタ40の断面形状を略楕円形、あるいは角形に形成する例を示したが、ラインフィルタ40の断面形状を円形にする等、適宜変更することが可能である。
また、本実施形態では、ハンディタイプの電動工具10のラインフィルタ40,50について説明したが、前記ラインフィルタ40,50をハンディタイプ以外の定置式や可搬式の電動工具に使用することも可能である。また、バッテリを電源としたコードレス電動工具に、前記ラインフィルタ40,50を使用することも可能である。さらに、交流電源から直流電源を作り、その直流電源を利用する電動工具に前記ラインフィルタ40,50を使用することも可能である。また、刈り込み機等の園芸電動工具に前記ラインフィルタ40,50を使用することも可能である。
15k・・・爪
15e・・・エラストマ(弾性体)
18・・・・変速スイッチ
19・・・・コントローラ
19w・・・表示部・操作部
20・・・・モータ
23・・・・整流子
24・・・・ブラシ
32b・・・帰路(電線)
32f・・・往路(電線)
32・・・・電源線(電線)
40・・・・ラインフィルタ
43・・・・貫通孔
Claims (8)
- コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを低減させるラインフィルタを備える電動工具であって、
前記ラインフィルタは、磁性体により構成された単一の軸状体を備えており、
前記軸状体には、その軸状体の軸方向における一端面から他端面に至るまで軸方向に延びる少なくとも二本の貫通孔が形成されており、
前記軸状体の少なくとも二本の貫通孔には、少なくとも二本の電線が個々に通されていることを特徴とする電動工具。 - 請求項1に記載された電動工具であって、
前記ラインフィルタの一方の貫通孔と他方の貫通孔には、供給電流の向きが逆向きになる電線がそれぞれ通されることを特徴とする電動工具。 - 請求項1又は請求項2のいずれかに記載された電動工具であって、
駆動源として整流子とブラシとを備えるモータを使用していることを特徴とする電動工具。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載された電動工具であって、
前記ラインフィルタの貫通孔には、前記モータと、そのモータを起動させるスイッチとをつなぐ電線が通されていることを特徴とする電動工具。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載された電動工具であって、
前記ラインフィルタの貫通孔には、前記モータと、そのモータを起動させるコントローラとをつなぐ電線が通されていることを特徴とする電動工具。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載された電動工具であって、
前記ラインフィルタの貫通孔には、前記コントローラと操作部、及び/又は、表示部とをつなぐ電線が通されていることを特徴とする電動工具。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載された電動工具であって、
電動工具のハウジングの内壁面には、前記ラインフィルタの貫通孔と貫通孔との間をそれらの貫通孔の軸心方向両側から押さえる位置決め用の爪が形成されていることを特徴とする電動工具。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載された電動工具であって、
前記ハウジングの内壁面は、前記ラインフィルタを囲む部位が弾性体によって覆われていることを特徴とする電動工具。
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