JP5629481B2 - 損傷診断システム - Google Patents
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Description
このような複合材料の損傷、欠陥等の探知を行う装置として、特許文献1,2には、FBG(Fiber Bragg Grating)光ファイバセンサを用いた損傷探知装置が記載されている。光ファィバは、昨今では細径化(例えば、直径52[μm])が進んでおり、構造物に埋め込んでも、当該構造物の強度の低下をあまり生じないため、その設置に関して自由度が高いという利点を備えている。
また、ラム波には多重モード性と速度分散性(周波数依存性)という二つの特徴があり、板厚と周波数に依存して、速度の異なる複数のモードが存在する。この複雑な特徴のため、従来では、ラム波の特定の周波数の情報のみを利用して、損傷検知が行われてきた。
前記被検体から伝達される広帯域ラム波を検知する振動検知センサと、
前記加振装置の発振動作を制御し、前記振動検知センサの出力値を処理して計測結果を出力する処理装置とを備え、
前記処理装置は、
前記加振装置による加振時に得られる前記振動検知センサの出力値の出力値を変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得て、ラム波の非対称モードを同定し、同定したラム波の非対称モードの中から選ばれる1つ又は2つ以上の特定の非対称モードについて、周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し、当該最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定し、
特定した前記周波数及び伝播時間の関係と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め特定した前記周波数及び伝播時間の関係と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示する損傷診断システムである。
前記処理装置は、前記表裏の前記加振装置に逆位相の波を発振させることにより非対称に発振させ、表裏の前記振動検知センサの出力値同士を加算して算出したデータを変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した前記伝播強度分布データを得る請求項1に記載の損傷診断システムである。
前記伝播強度分布データの最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定する代わりに、
前記周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し特定した周波数及び伝播時間の関係を示すデータを、横軸が周波数、縦軸が伝播時間で表示されるグラフ上にプロットし、ある周波数範囲における当該データの傾きを変化率として算出し、
算出した前記変化率と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め算出した前記変化率と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示する請求項1又は請求項2に記載の損傷診断システムである。
前記変化率を算出する代わりに、
前記伝播強度分布データの最大値における伝播時間の、前記被検体に損傷がない場合に対する減少量を算出し、
算出した前記減少量に基づいて、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示する請求項3に記載の損傷診断システムである。
前記被検体から伝達される広帯域ラム波を検知する振動検知センサと、
前記加振装置の発振動作を制御し、前記振動検知センサの出力値を処理して計測結果を出力する処理装置とを備え、
前記処理装置は、
前記加振装置による加振時に得られる前記振動検知センサの出力値の出力値を変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得て、ラム波の対称モードを同定し、同定したラム波の対称モードの中から選ばれる1つ又は2つ以上の特定の対称モードについて、周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し、当該最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定し、
特定した前記周波数及び伝播時間の関係と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め特定した前記周波数及び伝播時間の関係と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示する損傷診断システムである。
前記処理装置は、前記表裏の前記加振装置に同位相の波を発振させることにより対称に発振させ、表裏の前記振動検知センサの出力値同士を加算して算出したデータを変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得る請求項5に記載の損傷診断システムである。
前記伝播強度分布データの最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定する代わりに、
前記伝播強度分布データの最大値における伝播時間の、前記被検体に損傷がない場合に対する増加量を算出し、
算出した前記増加量に基づいて、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示する請求項5又は請求項6に記載の損傷診断システムである。
本発明者らの研究において、広帯域ラム波を発振、受振することにより、対称/非対称モードを分離する手法が構成され、これを利用して各モードについて分析した結果、S1モードが層間剥離部においてS0モード及びA1モードに変換されて伝播し、層間剥離部を通過すると再びS1モードに戻って伝播することが分かった。
また、A1モードが層間剥離部においてA1モードより伝播速度の速いS0モードに変換されて伝播し、層間剥離部を通過すると再びA1モードに戻って伝播することが分かった。
すなわち、層間剥離部における速度変化が到達時間の変化となり、層間剥離部の振動伝播方向の長さにより、各モードの到達時間はそれぞれ独自の変化を示すことがわかった。
したがって、本発明によれば、周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得、特定のモードについて前記データから損傷の影響による本モードの到達時間の変化を顕示する所定の特徴値(損傷規模の指標)を得ることで、損傷の有無や規模を診断することが可能となるという効果がある。
まず、本実施形態の損傷探知システムの基本構成につき説明する。
図1は、構造用複合材料Zの損傷探知を行う損傷探知システム10の概略構成図である。本実施形態では、構造用複合材料を被検体とする。
本実施形態では、被検体にラム波の超音波振動を加える加振装置として、MFC(Macro Fiber Composite)アクチュエータを用いる。MFCアクチュエータは、極細の角柱状の圧電セラミックスを一方向に並べてエポキシ樹脂に埋め、その上下面に電極を接着したものであり、面内の一方向に比較的大きなひずみを発生させることが出来る。その特性から超音波発振素子としても使用可能であることが知られている。加振装置としてピエゾ素子などの他の発振アクチュエータを適用してもよい。
光ファイバ34は、その一端部においてスペクトラムアナライザ42に接続されており、当該スペクトラムアナライザ42が有する光源により、所定範囲の波長帯域を網羅する照射光がコア部32に入射される。このスペクトラムアナライザ42から入射する光は、コア部32を伝搬してグレーティング部33でその一部の波長光のみが反射される。
囲Lがグレーティング部33における屈折率を示している。
かかる図に示すように、グレーティング部33は、コア部32の屈折率を一定の周期で変化するように構成されている。グレーティング部33は、かかる屈折率の変化している境界部分で特定の波長の光のみ選択的に反射する。このグレーティング部33に振動によりひずみ等の外乱が加えられると格子間隔の変化(伸縮)に伴って反射光の波長が変化する。
ここで、FBG光ファイバセンサの反射光の波長変化ΔλBは、コアの実効屈折率をn、グレーティング間隔をΛ、ポッケルス係数をP11,P12、ポアソン比をν、印加歪をε、ファ
イバ材の温度係数をα、温度変化をΔTとすると次式(1)で表される(Alan D. Kersey, Fiber Grating Sensors”JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol. 15, No. 8, 1997)。
い場合は、グレーティング部33は小さく歪みを生じ、波長の変化量ΔλBは小さく変動
することとなる。
示す。図3(a)に示すように、スペクトラムアナライザ42は、光源61と、光サーキュ
レータ62と、AWGモジュール63と、光電変換器60とを備える。本構成例では、反射波長の異なる4つの光ファイバセンサ30a〜dが直列に設けられた光ファイバ34をスペクトラムアナライザ42に接続する。最少構成としては、光ファイバセンサ30は一つでよい。
光サーキュレータ62は、光源61からの光を光ファイバセンサ30a〜d側へ進行させ、返ってきた光ファイバセンサ30a〜dからの反射光を光ファイバ69へ導出する。光ファイバ69に導出された反射光はAWGモジュール63の入力ポートP0に導入される。
ル図に示す。例えば図3(b)で、中心波長λ2の反射波長を有する光学ファイバセンサ3
0bの反射光入力分布70が通過域71に重なる部分に相当する反射光をある一つの光学フィルタが通過させ出力ポートP3へ出力すると共に、これに並行して通過域72に重なる部分に相当する反射光を他の光学フィルタが通過させ出力ポートP4へ出力する。同様にして反射中心波長λ1の光学ファイバセンサ30aには出力ポートP1,P2が、反射中心波長λ3の光学ファイバセンサ30cには出力ポートP5,P6が、反射中心波長λ4の光学ファイバセンサ30dには出力ポートP7,P8がそれぞれ対応し、同様の原理で波長分離が可能である。上述したように最少構成としては、光ファイバセンサ30は一つでよく、この場合、光学フィルタは2つで足りる。
図4(b)に示すように、光ファイバセンサ30からの反射光の入力分布73Tが現れる
。MFCアクチュエータ21による加振時には、MFCアクチュエータ21を発振源とするラム波が構造用複合材料Zを伝搬し、光ファイバセンサ30は構造用複合材料Zから伝達されるラム波に応じて出力する反射光の波長を振動させる。この波長の振動を図示すると図4(a)の入力波73Wとなる。
この波長の振動により、図4(b)に示す反射光入力分布73Tは、上位、下位に交互に
シフトして微小に振動し、波長の値は増減を繰り返す。
このような波長振動において、図中73Cは、反射光入力分布73Tの中心波長の振動中心である。一方の光学フィルタの通過域75Tの中心波長75Cは振動中心73Cの上域に固定されている。また、他方の光学フィルタの通過域74Tの中心波長74Cは振動中心73Cの下域に固定されている。
また、中心波長75C及び中心波長74Cは、振動中心73Cから反射光の波長振動の振幅以上に離れた位置に固定されている。
さらに、反射光入力分布73Tの静止時において、上位の通過域75Tの下位側のスロープ75T−1は、反射光入力分布73Tの上位側のスロープ73T−1に交わり、上位の通過域75Tと反射光入力分布73Tとは波長振動の振幅以上の幅で重なる。
同様に、反射光入力分布73Tの静止時において、下位の通過域74Tの上位側のスロープ74T−1は、反射光入力分布73Tの下位側のスロープ73T−2に交わり、下位の通過域74Tと反射光入力分布73Tとは波長振動の振幅以上の幅で重なる。
反射光入力分布73Tに対し以上の位置関係に通過域75T及び通過域74Tを固定することにより、反射光の波長振動を高感度に検出することができる。
上位の光学フィルタは反射光入力分布73Tが通過域75Tに重なる部分に相当する反射光を通過させて出力する。同様に、下位の光学フィルタは反射光入力分布73Tが通過域74Tに重なる部分に相当する反射光を通過させて出力する。
そのため、反射光の中心波長の変化が図4(a)に示す入力波73Wにより振動する時、
通過域75Tを有する上位の光学フィルタの出力値は、図4(c)に示す出力波75Wを生
成し、通過域74Tを有する下位の光学フィルタの出力値は、図4(c)に示す出力波74
Wを生成する。図4(c)に示すように、出力波74Wと出力波75Wは逆位相の波動とな
る。
そしてCPU51は、次式(2)によりf(t)データにウェーブレット変換を施す。これによりf(t)データは、周波数及び伝播時間の2次元に展開された伝播強度分布データに変換される。本データが、ラム波の光ファイバセンサ30への伝播強度分布に相当し、図示すると例えば図7(c)のごとくとなる。
以上説明した基本構成を用い、さらに図19又は図21に示すようにMFCアクチュエータ21,21及び光ファイバセンサ30,30をそれぞれ構造用複合材料Zの表裏同位置に設置して、以下の損傷探知動作を実行する。
CPU51は、これを図23に示すごとく表示装置56に表示する。CPU51は、損傷状態が未知の被検体に対する計測結果と同一で損傷状態が既知の構造体に対する計測結果とともに表示する。これを検査者が参照し、それらの比較により損傷の有無や規模を推定することができる。
又は、S0モード及びS1モードの伝播時間は、層間剥離長さの増加により増加するので、CPU51は、例えば図26に示すように損傷の無い場合に対する伝播時間の増加量の形態で表示する。これを検査者が参照し、損傷の有無や規模を推定することができる。
またCPU51がさらに進んで、ROM52等に多数蓄積した損傷状態が既知の構造体に対する計測結果と、損傷状態が未知の被検体に対する計測結果とに基づき、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行い、その結果を表示装置56に表示する形態ととってもよい。
なお、対称モード(Sモード)のデータを取得するために、上記方法に代えて、表裏の光ファイバセンサ30,30の出力値同士を加算することにより非対称モードを相殺して対称モードを強調した2次元展開データ(伝播強度分布データ)を得てもよい。
CPU51は、これを図22に示すごとく表示装置56に表示する。CPU51は、損傷状態が未知の被検体に対する計測結果と同一で損傷状態が既知の構造体に対する計測結果とともに表示する。これを検査者が参照し、それらの比較により損傷の有無や規模を推定することができる。
又は、A1モードの伝播時間は損傷部でのA1モードより伝播速度の速いS0モードへの変換により減少するので、CPU51は、例えば図25に示すように損傷の無い場合に対する伝播時間の減少量の形態で表示する。これを検査者が参照し、損傷の有無や規模を推定することができる。
またCPU51は、A1モードに関し、周波数対伝播時間の変化率を算出する。この変化率は、例えば、図22の250〜400(kHz)の範囲の各試験片の計測データ群に近似直線を計算し、この近似直線の傾きが相当する。これも2次元展開データから抽出した一つの特徴値であって一つの計測結果である。CPU51は、この変化率(傾き)を例えば図24に示すように数値やグラフで表示する。ここでも、CPU51は、損傷状態が未知の被検体に対する計測結果と同一で損傷状態が既知の構造体に対する計測結果とともに表示する。これを検査者が参照し、それらの比較により損傷の有無や規模を推定することができる。
またCPU51がさらに進んで、ROM52等に多数蓄積した損傷状態が既知の構造体に対する計測結果と、損傷状態が未知の被検体に対する計測結果とに基づき、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行い、その結果を表示装置56に表示する形態をとってもよい。推定演算の基礎データは、以上のS0モード及びS1モードの伝播時間の増加量、A1モードの伝播時間の減少量、及び変化率(傾き)のうちいずれか1又は2以上とされる。
なお、非対称モード(Aモード)のデータを取得するために、上記方法に代えて、表裏の光ファイバセンサ30,30の出力値同士を減算することにより対称モードを相殺して非対称モードを強調した2次元展開データ(伝播強度分布データ)を得てもよい。
次に、本発明の理論説明及び本発明の実施に当たっての参考とするために、以下の実験・解析による検証内容を開示する。
まず始めに、擬似等方性CFRP積層板(T700S/2500、東レ(株)、[45/0/-45/90]3s、厚さ3.4mm)を対象として計測を行った。MFC(M-2814-P2, Smart material Co., Ltd.)は長さ6mm、幅14mm、厚さ0.3mm、FBGセンサ(フジクラ(株))はセンサ長1.5mm、ポリイミド被覆付きで直径150μmである。両者を100mm離してCFRP積層板表面に貼り付け、計測を行った。貼りつけにはシアノアクリレート系接着剤であるアロンアルファ(コニシ(株))を用いた。MFCへの入力信号は、図6に示すようなfc=400kHzのサイン波1周期分にハミング窓を掛けた広帯域な信号を用いた。そしてMFCで発振され、積層板を伝播してFBGセンサで受振されたラム波の受振波形は、ノイズを除去するために32768回の計測波形の平均化を行った。その後、得られた受振波形に対して信号解析を行い、受振波に含まれるモード分散性を時間−周波数領域で表わした。信号解析には、窓関数として複素モルレ関数を用い、1次元複素連続ウェーブレット解析を行った。FBGセンサで受振した受振波形とそのフーリエスペクトル、およびウェーブレット変換結果を図7に示す。この結果より、特定の周波数で大きなピークが現れずに広帯域に渡る成分を受振していることが確認できる。また、ウェーブレット変換結果より、速度や周波数の異なる複数のモードが観察され、モード分散性があることが分かる。次に、この受振波形に現れる各モードを同定するために理論分散曲線を導出する。
これらの重なり合うモードを分離する必要がある。
そこで、これらのモードの分離手法として、MFCとFBGセンサを積層板上下面の同じ位置にそれぞれ貼り付ける方法を用いた。図9に示すように、MFCを上下表面の同じ位置に貼り付け、お互いに同位相の波を発振すると、対称モードのみを発振することが出来る。反対に逆位相の波を発振すれば、非対称モードのみを発振することが出来る。
また、図10に示すように、FBGセンサを上下表面の同じ位置に貼り付け、板の上下面での受振波形の和を取れば対称モードを、差を取れば非対称モードをそれぞれ分離することが出来る。
この二つの手法を用いて、受振ラム波に含まれるS(対称)モードとA(非対称)モードを分離し、それぞれウェーブレット変換を行った後に、先ほどの理論分散曲線と比較しモード同定を行った結果を図11に示す。結果、モード分離をおこなうことによって複数モードの重なりが解消され、正確にモード同定をおこなうことが出来た。そして、受振波形にはA0,S0,A1,S1,S2モードが存在することが確認された。
以上の結果より、上記のモード分離手法を用いれば、受振ラム波に含まれる各モードの同定が可能である。
前節において各モードの同定を行い、計測結果に含まれるモード分散性を理解することが出来るようになった。次に、このモード分散性の変化から生じるモード変換挙動を実験
と解析によって解明する。
ラム波の伝播速度は周波数と板厚の積に依存するため、板厚が変化するとラム波のモード分散性も変化する。よって、図12に示すように、積層板内部に層間剥離が発生すると、剥離部における伝播経路の板厚は健全部よりも減少するため、健全部と剥離部ではモード分散性が異なる。このモード分散性の変化によって、健全部を伝播してきたラム波にはモード変換が生じ、健全部とは異なるモード形態で剥離部を伝播すると考えられる。
例えば、板厚3.4mmの積層板では周波数300kHzのラム波の伝播形態としてA0,S0,A1モードの三つが存在するが、積層板の中央に層間剥離が発生し、剥離部での板厚が1.7mmに変化すると、A0,S0モードの二つしか伝播形態が存在しない。
よって、健全部をA1モードとして伝播してきたラム波は剥離部でモード変換し、A0,S0モードとして伝播していくこととなる。しかし、どちらのモードとして剥離部を伝播するかは理論分散曲線からは求められない。そこで、実際の層間剥離部で生じるモード変換挙動の解明を、実験と有限要素解析から行う。
実際の層間剥離の開始端部で生じるモード変換挙動の解明を行うために、擬似等方性CFRP積層板(T700S/2500、東レ(株)、[45/0/-45/90]3s、厚さ3.4mm)の板厚方向の中央に層間剥離が存在する場合を模擬した。なお、モード分離によって受振ラム波のモード同定を行うため、剥離部のモード分散性を計測するためには、模擬した層間剥離の内表面にFBGセンサを貼り付ける必要がある。そこで、厚さ1.7mmのCFRP積層板を二枚用意し、一方にFBGセンサを接着したのち、FBGセンサを接着した面が内側に来るように、板の片端から長さ60mm範囲をエポキシ系接着剤Araldite Standard(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル(株))で接着した。二枚のCFRP積層板は、積層構成[45/0/-45/90]3sを模擬するために、積層構成[45/0/-45/90]3で作製し、接着面で対称になるように接着した。試験片の寸法を図13に示す。また、板の幅は90mmである。
MFC(M-2814-P2)は長さ6mm、幅14mm、厚さ0.3mmのものを用い、積層板の上下表面に一つずつ貼り付けた。また、MFC先端から距離30mm,板厚3.4mmの地点(健全部)、および距離70mm,板厚1.7mmの地点(剥離部)の二点でFBGセンサを積層板の上下表面に貼り付けラム波を受振する。実験に用いたFBGセンサ(フジクラ(株))はセンサ長1.5mm、ポリイミド被覆付きで直径150μm。素子の貼り付けにはアロンアルファ(コニシ(株))を用いた。入力信号はfc=400kHzのサイン波1周期分にハミング窓を掛けた信号であり、受振波形はノイズを除去するため、32768回の計測波形の平均化を行う。上下面のMFCを用いて、S(対称)モードのみの発振を行うことによって求めたSモードのモード変換挙動を図14に、A(非対称)モードのみの発振を行うことによって求めたAモードのモード変換挙動を図15にそれぞれ示す。
図15の結果より、Aモードのみの発振を行った場合、健全部ではA0モードとA1モードのみが観察される。図12(c)に示す板厚1.7mmの場合の理論分散曲線より、剥離部ではA1モードは500kHz以上にしか存在しないことが分かっているため、健全部で観察されたA1モードは剥離部においてモード変換し他のモードとして伝播していると考えられる。そこで、剥離部に存在するモードを観察すると、S0モードとA1モードの二つが観察される(A0モードは到達時間が遅いためモード変換の対象としては考慮しない)。この剥離部で観察されたA1モードはモード変換ではなく、500kHz以上のA1モードがそのまま伝播したものと考えられる。よって、この結果より、層間剥離の開始部では、「A1モード→S0モード」のモード変換が生じていることが確認された。
上記(2)の実験から求めたモード変換挙動を検証するために、二次元の有限要素解析を行った。図16に有限要素モデルとその寸法を示す。モデルの構築および解析にはLS-DYNA 971を使用した。解析モデルの要素は2Dshell要素(平面ひずみ)を用いた。Meshサイズは、波長の短い高周波も計算できるように十分小さく0.125mmとした。MFCとCFRP積層板の接触部はNode結合を行い、MFCへの入力波形は実験と同様、周波数400kHzのサイン波1周期分にハミング窓を掛けたものを用いた。また、LS-DYNAでは圧電効果を計算できないため、圧電効果をMFCの伸縮方向の熱膨張率として付与して模擬した。以上のような条件のもと、図16に示す三つの受振点(健全部:伝播距離20mm,板厚3.4mm、剥離部:伝播距離60mm,板厚1.7mm、健全部(剥離通過後):伝播距離100mm,板厚3.4mm)において、x方向ひずみの時間履歴を計算し受振波形とした。上下面のMFCを用いて、S(対称)モードのみの発振を行うことによって求めたSモードのモード変換挙動を図17に、A(非対称)モードのみの発振を行うことによって求めたAモードのモード変換挙動を図18にそれぞれ示す。
次に、図18の結果より、層間剥離の開始部では、実験と同様「A1モード→S0モード」のモード変換が生じていることが確認された。また、層間剥離通過後の健全部では、
剥離通過前の健全部と同様の分散性が観察され、A0モードとA1モードが観察された。
このA1モードは剥離部を伝播して健全部に戻る際に、剥離部のS0モードが健全部において再びA1モードにモード変換したものと考えられる。
以上より、実験によって求めたモード変換挙動の妥当性を示し、さらに層間剥離が終了する地点でのモード変換挙動に関しても解明した。結果、層間剥離部を通過する際に、以下の二つのモード変換挙動が存在することが確認された。
・「S1モード→S0モード,A1モード→S1モード」
・ 「A1モード→S0モード→A1モード」
(1)検証実験
剥離部を通過した後の波に、実際に到達時間の変化が生じているかどうかを実験から検証し、本件発明の有効性を示す。
そこで、CFRP擬似等方性積層板の成形中に、板厚方向中央の隣り合う90°層の間に、厚さ50μmのテフロン(登録商標)フィルムを二枚重ねて埋め込むことで、板厚方向の中央に、剥離長さL=20,40,60mmの層間剥離を人工的に導入した3種類の積層板を作製した。そして、それらの剥離領域を通過するように広帯域なラム波を伝播させ、受振波形を計測した。その実験構成を図21に示す。MFCとFBGセンサはそれぞれ板の上下表面の同じ場所に接着し、前節でモード変換挙動を解明した場合と同様にモード分離を行う。
この実験構成を用いて、L=20,40,60mmの人工剥離を導入した積層板を用いて人工層間剥離の検知実験を行った。それらの結果と、健全な積層板(L=0mm)を対象にして計測を行った場合の結果を比較し、到達時間の変化について評価する。
そのために、受振波形をウェーブレット変換した後、各周波数のウェーブレット係数の最大値を抽出した。層間剥離が存在する場合の、このウェーブレット係数最大値の時刻の健全状態からの変化量が、到達時間の変化量に対応する。
上下面MFCを用いてAモードを発振した場合に、FBGセンサで計測されるAモードの「周波数ごとのウェーブレット係数最大値が現れる時間」を、L=0,20,40,60mmの場合について、到達時間に比較的大きな変化が生じている200〜700kHzのA1モードに関して、図22に示す。
次に、上下面MFCを用いてSモードを発振した場合に、FBGセンサで計測されるSモードの「周波数ごとのウェーブレット係数最大値が現れる時間」を、L=0,20,40,60mmの場合について、到達時間に変化が生じている400〜600kHzのS0,S1モードに関して、図23に示す。
図22より、剥離の長さが長くなるにつれてA1モードの到達時間が早くなる様子が観察される。また、200〜500kHzの周波数領域のモード分散性の傾きが変化する様子も観察
される。これは、図20に示されるように、A1モードのカットオフ周波数に近くなる(周波数が低くなる)ほどS0モードとA1モードの伝播速度の差が大きくなるからである。
また、図23からは、剥離の長さが長くなるにつれてS0,S1モードの到達時間が遅くなる様子が観察される。
以上の結果より、層間剥離が発生すると確かに到達時間に変化が生じており、本発明が有効であることが示された。
上記2.(3)で用いた二次元有限要素解析モデルの層間剥離長さをL=20, 40, 60mmで変化させ、上記実験と同様の実験構成で解析を行った。その後、実験と同様に、振幅最大値をA1モードとS0,S1モードに関して求め、到達時間の変化を観察すると、実験(図22,図23)の結果とよく一致し、同様の変化が観察された。
さらに、上記(1)の実験結果と上記(2)の解析結果から観察された到達時間の変化やモード分散性の傾きを指標として、剥離長さの定量評価の可能性を示す。
到達時間に変化が生じている周波数領域の振幅最大値のプロットから線形近似直線を算出し、その近似直線を用いて以下の指標を求めた。指標は実験結果と解析結果からそれぞれ求めた。各指標を剥離長さごとにプロットした結果を図24,図25,図26に示す。
図24は、250〜400kHzのA1モードのモード分散性の傾きを、図25は300kHzにおけるA1モードの到達時間の減少量を、図26は400kHz(解析は350kHz)におけるS0,S1モードの到達時間の増加量を示す。
図24の結果より、剥離長さが大きくなるにつれ、モード分散性の傾きが小さくなっていく様子が観察される。また、図25,図26の結果より、剥離長さが大きくなるにつれ、A1モードの到達時間の減少量と、S0,S1モードの到達時間の増加量が大きくなっていく様子が観察される。しかも、これらの指標は剥離長さにほぼ比例して変化している。よって、これらの指標を用いることで剥離長さの定量評価が可能である。
以上のように、まず始めに、広帯域超音波送受振システムで計測される広帯域ラム波の各モードの同定を行った。そのための手法として、対称/非対称モードを分離する手法を提案し、この分離手法を用いればモード同定が可能なことを示した。
次に、層間剥離部におけるモード変換挙動を実験と解析から解明し、「S1モード→S0モード,A1モード→S1モード」、「A1モード→S0モード→A1モード」の二つのモード変換挙動の存在を確認した。
その後、モード変換によるラム波の速度変化を利用した本発明に係る剥離検知手法の有効性を実験と解析から検証した。結果、剥離部における速度変化が到達時間の変化として観察されることを確認した。
最後に、A1モードのモード分散性の傾きと、A1モードの到達時間の減少量、S0,S1モードの到達時間の増加量の三つの指標のそれぞれにより、剥離長さの定量評価が可能であることを示した。
21 MFCアクチュエータ
30 光ファイバセンサ
32 コア部
33 グレーティング部
42 スペクトラムアナライザ
50 演算処理装置
63 AWGモジュール
64 AWG基板
65,66 入出力スラブ導波路
67 アレイ導波路
68 出力導波路
P0 入力ポート
P1〜P8 出力ポート
70,73T 反射光入力分布
71,72,74T,75T 通過域
73C 振動中心
101 剥離
102 ラム波
103 モード変換挙動
104 リフレクション
105 接着層
Claims (8)
- 被検体に広帯域ラム波の超音波振動を加える加振装置と、
前記被検体から伝達される広帯域ラム波を検知する振動検知センサと、
前記加振装置の発振動作を制御し、前記振動検知センサの出力値を処理して計測結果を出力する処理装置とを備え、
前記処理装置は、
前記加振装置による加振時に得られる前記振動検知センサの出力値の出力値を変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得て、ラム波の非対称モードを同定し、同定したラム波の非対称モードの中から選ばれる1つ又は2つ以上の特定の非対称モードについて、周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し、当該最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定し、
特定した前記周波数及び伝播時間の関係と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め特定した前記周波数及び伝播時間の関係と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示することを特徴とする損傷診断システム。 - 前記加振装置および前記振動検知センサは、前記被検体の表裏の同位置にそれぞれ設置され、
前記処理装置は、前記表裏の前記加振装置に逆位相の波を発振させることにより非対称に発振させ、表裏の前記振動検知センサの出力値同士を加算して算出したデータを変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した前記伝播強度分布データを得ることを特徴とする請求項1に記載の損傷診断システム。 - 前記処理装置は、
前記伝播強度分布データの最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定する代わりに、
前記周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し特定した周波数及び伝播時間の関係を示すデータを、横軸が周波数、縦軸が伝播時間で表示されるグラフ上にプロットし、ある周波数範囲における当該データの傾きを変化率として算出し、
算出した前記変化率と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め算出した前記変化率と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の損傷診断システム。 - 前記処理装置は、
前記変化率を算出する代わりに、
前記伝播強度分布データの最大値における伝播時間の、前記被検体に損傷がない場合に対する減少量を算出し、
算出した前記減少量に基づいて、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示することを特徴とする請求項3に記載の損傷診断システム。 - 被検体に広帯域ラム波の超音波振動を加える加振装置と、
前記被検体から伝達される広帯域ラム波を検知する振動検知センサと、
前記加振装置の発振動作を制御し、前記振動検知センサの出力値を処理して計測結果を出力する処理装置とを備え、
前記処理装置は、
前記加振装置による加振時に得られる前記振動検知センサの出力値の出力値を変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得て、ラム波の対称モードを同定し、同定したラム波の対称モードの中から選ばれる1つ又は2つ以上の特定の対称モードについて、周波数ごとに伝播強度の最大値が生じる伝播時間を算出し、当該最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定し、
特定した前記周波数及び伝播時間の関係と、記憶手段に蓄積されている、損傷状態が既知の被検体において予め特定した前記周波数及び伝播時間の関係と対比して、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示することを特徴とする損傷診断システム。 - 前記加振装置および前記振動検知センサは、前記被検体の表裏の同位置にそれぞれ設置され、
前記処理装置は、前記表裏の前記加振装置に同位相の波を発振させることにより対称に発振させ、表裏の前記振動検知センサの出力値同士を加算して算出したデータを変換して周波数及び伝播時間の2次元に展開した伝播強度分布データを得ることを特徴とする請求項5に記載の損傷診断システム。 - 前記処理装置は、
前記伝播強度分布データの最大値が生じる周波数及び伝播時間の関係を特定する代わりに、
前記伝播強度分布データの最大値における伝播時間の、前記被検体に損傷がない場合に対する増加量を算出し、
算出した前記増加量に基づいて、当該被検体に対する損傷規模の推定演算を行って表示することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の損傷診断システム。 - 前記処理装置は、前記推定演算を行って得られた前記被検体に対する損傷規模を表示する代わりに、特定した非対称モードまたは対称モードにおける前記周波数及び伝播時間の関係、算出した前記伝播時間の変化率、算出した前記減少量、または算出した前記増加量を表示することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の損傷診断システム。
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