JP5669090B2 - 細胞の状態を評価する方法 - Google Patents
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Description
以下一例を挙げる。幹細胞(例えば、iPS細胞、ES細胞等として知られている)や前駆細胞の分化誘導についての研究は、1970年代より行われてきた。1990年代までは主に、特異的抗体を用いた組織染色やフローサイトメトリーにより発現タンパク質を検出することでその細胞の分化のレベルを議論していた。そのため、半定量的な情報しか得られなかった。しかし、2000年以降、定量的RT-PCR法が一般的に使用されるようになり、分化に特異的な遺伝子の転写を絶対定量的に検出することが可能となった (非特許文献1)。しかし、細胞分化に際して、転写はされても翻訳に至らない遺伝子も存在しており、遺伝子の転写レベルがそのまま分化レベルを反映しているわけではないことが示唆されている(非特許文献2)。
本発明の第1の態様は、細胞の状態を評価するために用いる糖鎖のカテゴリーの決定方法である。この方法は、以下の工程を含む。
(1-1)状態変化前の細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
(1-2)状態変化後の細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
(1-3)前記2つの定量的プロファイル中の存在量の間に変動がある糖鎖群の少なくとも一部を抽出すること、
(1-4)抽出した糖鎖群に含まれる各糖鎖を糖鎖タイプに基づいて、ハイマンノース型とノンハイマンノース型のカテゴリーに分け、かつノンハイマンノース型をさらに(1)バイセクトの有無、(2)フコースの数(0、1または2以上)、(3)シアル酸の有無、及び(4)分岐度(2または3以上)のカテゴリーに分けること、
(1-5)前記5つのカテゴリーの中から、細胞の状態を評価するのに適した糖鎖のカテゴリーを少なくとも1つ決定すること
本発明の第2の態様は、細胞の状態を評価する方法である。この方法は、上記本発明の第1の態様である糖鎖カテゴリーの決定方法において決定された糖鎖のカテゴリーの少なくとも1つを用いて、細胞の状態を評価する方法である。
(2-1)状態変化の前後における細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
(2-2)前記定量的プロファイル中から請求項1に記載の方法で決定された糖鎖のカテゴリーの少なくとも1つについて、該カテゴリーに含まれる糖鎖(群)の存在量または存在割合の状態変化の前後における変化を求めること
を含む。
本発明の第3の態様は、分化を誘導した幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価するために用いる糖鎖のカテゴリーの決定方法である。この方法は、以下の工程を含む。
(3-1)分化誘導剤の非存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
(3-2)分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
(3-3)前記2つの定量的プロファイル中の存在量に変動がある糖鎖群の少なくとも一部を抽出すること、
(3-4)抽出した糖鎖群に含まれる各糖鎖を糖鎖タイプに基づいて、ハイマンノース型とノンハイマンノース型のカテゴリーに分け、かつノンハイマンノース型をさらに(1)バイセクトの有無、(2)フコースの数(0、1または2以上)、(3)シアル酸の有無、及び(4)分岐度(2または3以上)のカテゴリーに分けること、
(3-5)前記5つのカテゴリーの中から、幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価するのに適した糖鎖のカテゴリーを少なくとも1つ決定すること
工程(3-1)では、分化誘導剤の非存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得する。工程(3-2)では、分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得する。工程(3-1)及び(3-2)は、逐次で行っても、同時並行して行ってもよい。逐次で行う場合、どちらの工程を先に実施しても構わない。
工程(3-3)では、前記工程(3-1)及び(3-2)でそれぞれ得られた2つの定量的プロファイル中の存在量の間に変動がある糖鎖群の少なくとも一部を抽出する。さらに工程(3-4)では、工程(3-3)で抽出した糖鎖群に含まれる各糖鎖を糖鎖タイプに基づいて、ハイマンノース型とノンハイマンノース型のカテゴリーに分け、かつノンハイマンノース型をさらに(1)バイセクトの有無、(2)フコースの数(0、1または2以上)、(3)シアル酸の有無、及び(4)分岐度(2または3以上)のカテゴリーに分ける。
工程(3-5)では、前記5つのカテゴリーの中から、細胞の状態を評価するのに適した糖鎖のカテゴリーを少なくとも1つ決定する。細胞の状態を評価するのに適した糖鎖のカテゴリーは、例えば、分化誘導剤の非存在下で培養した幹細胞または前駆細胞においては、存在量または存在割合の経時的変動が有意ではないが、分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞においては、存在量または存在割合の経時的変動が有意である糖鎖が分類されるカテゴリーであることができる。
ここで選択、決定された糖鎖のカテゴリーは、後述する分化を誘導した幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価する方法において、分化レベルの評価指標として使用できる。
本発明の第4の態様は、分化を誘導した幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価する方法である。この方法は以下の工程を含む。
(4-1)分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
(4-2)前記定量的プロファイル中から、本発明の第3の態様の方法で決定された糖鎖のカテゴリーの少なくとも1つについて、該カテゴリーに含まれる糖鎖(群)の存在量または存在割合の経時的変化を求めること。
工程(4-1)における、分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖についての定量的プロファイルの取得は、上記工程(3-2)と同様に実施することができる。但し、工程(4-1)においては、定量的プロファイルは経時的に取得される。具体的には、培養時間の経過にともない、培養物をサンプリングし、サンプリングした培養物から分離、精製されたN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得する。定量的プロファイルの経時的な取得は、培養開始後少なくとも1回は行われ、好ましくは、2回以上、例えば、2回、3回または4回であることができる。但し、4回を超えて行うこともできる。
工程(4-2)においては、本発明の第3の態様の方法で決定された糖鎖のカテゴリーの少なくとも1つについて、定量的プロファイル中の、前記カテゴリーに含まれる糖鎖(群)の存在量または存在割合の経時的変化を求める。
本発明の第5の態様は、幹細胞または前駆細胞の心筋分化レベルを評価する方法である。
この方法は
(5-1)心筋分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
(5-2)前記定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、フコースを2つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つを求めること、
を含む。
心筋分化誘導剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシトシン等を挙げることができる。N-結合型糖鎖についての定量的プロファイルの経時的取得は、上記第3の態様の工程(3-2)と同様に行うことができる。但し、用いる分化誘導剤は、心筋分化誘導剤である。
定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、フコースを2つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つを求める。本発明では、これらのいずれかの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、心筋分化レベルを評価することができるが、好ましくはこれら3つの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、総合的に評価する。
フコースを2つ有するタイプの糖鎖群とは、例えば、表1中の化20、化28、化34である。
ハイマンノース型の糖鎖群とは、例えば、表1中の化5、化8、化14である。
本発明の第6の態様は、マウス由来の幹細胞または前駆細胞の神経細胞への分化レベルを評価する方法である。
この方法は、
(6-1)神経細胞への分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
(6-2)前記定量的プロファイル中のバイセクト構造を有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つを求めること、
を含む。
神経細胞への分化誘導剤としては、例えば、レチノイン酸、DMSO等を挙げることができる。N-結合型糖鎖についての定量的プロファイルの経時的取得は、上記第1の態様の工程(3-2)と同様に行うことができる。但し、用いる分化誘導剤は、神経細胞への分化誘導剤である。
定量的プロファイル中のバイセクト構造を有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つを求める。本発明では、これらのいずれかの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、神経細胞への分化レベルを評価することができるが、好ましくはこれら3つの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、総合的に評価する。
バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群とは、例えば、表2中の化17、化21、化68である。
ハイマンノース型の糖鎖群は、前述の第5の態様で説明したものと同様である。
本発明の第7の態様は、ヒト由来の幹細胞または前駆細胞の神経細胞への分化レベルを評価する方法である。
この方法は、
(7-1)神経細胞への分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
(7-2)前記定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、シアル酸を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つの経時的変化を求めること、
を含む。
神経細胞への分化誘導剤としては、工程(6-1)と同様に、例えば、レチノイン酸、DMSO等を挙げることができる。N-結合型糖鎖についての定量的プロファイルの経時的取得は、上記第1の態様の工程(3-2)と同様に行うことができる。但し、用いる分化誘導剤は、神経細胞への分化誘導剤である。
定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、シアル酸を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つの経時的変化を求める。本発明では、これらのいずれかの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、神経細胞への分化レベルを評価することができるが、好ましくはこれら3つの糖鎖群の存在量または存在割合に基づいて、総合的に評価する。
実施例において用いられた細胞グライコミクス(glycomics)は、以下のプロトコールに従って実施した。
<セルライセートの作製とN-Glycanの遊離>
・ 10mM EDTA/PBS中、セルスクレイパーを用いて細胞をディッシュより回収、PBSにて洗浄を行う
・ 1%(終濃度)TritonX-100を加え、氷上にて1時間インキュベートし、細胞を可溶化する。
・ 80%(終濃度)acetoneを加え、-20℃にて一晩インキュベートし、タンパク質画分を沈殿させる。
・ 遠心後、沈殿をacetonitrileにて洗浄し、acetoneを完全に除去する。
・ 沈殿を風乾後、0.2% PHM (1-propanesulfonic acid, 2-hydroxyl-3-myristamido)を含む80mM ammonium bicarbonateを50μL加え、60℃にて10分間インキュベートし、可溶化する。
・ 可溶化後のタンパク質画分に、終濃度10mM DTTを加え、60℃にて30分間還元反応を行う。
・ 20mM iodoacetamideを加え、室温にて30分間、遮光下でインキュベートを行うことで、6.により還元されたアミノ酸残基をアルキル化する。
・ 800 U Trypsinを加え、37℃で一晩インキュベートする。
・ 90℃にて10分間Trypsinを失活させ、Peptide N-Glycanase Fを2 U加え、N-結合型糖鎖を遊離させる。
・ 遊離させた糖鎖は、内部標準として15pmolのA2 amide Glycanを加えた後、SpeedVacにて濃縮し、終容量20μLとした。
上記10.で得られたN-結合型糖鎖を、BlotGlyco(R)H(住友ベークライト株式会社)を用いたグライコブロッティング法によりエンリッチした。この方法は、下記の文献に記載の方法に従って実施した。具体的な方法は以下の文献に示す。以下の4つの文献の全記載は、ここに特に開示として援用される。
・Furukawa J-i., et al., Anal. Chem., 4: 1094-1101 (2008)
・Baudino L., et al., J. Immunol., 181: 4107-4112 (2008)
・Baudino L., et al., J. Immunol., 181: 6664-6669 (2008)
・ Uematsu R., et al., Mol. Cell. Proteom., in press (2008)
・ Peptide N-Glycanase Fにより遊離させ、内部標準として15pmolのA2 amide Glycanを加えた後、SpeedVacにて濃縮し、終容量20μLとしたN-結合型糖鎖をBlotGlyco(R) Hビーズ5mgに加える。
・ 2% 酢酸を含むアセトニトリル180μLを1.に加える。
・ 80℃にて45分間静置する。
・ 2M グアニジン-塩酸を含む16.6mM 重炭酸アンモニウム溶液、純水、1% トリエチルアミンを含むメタノール溶液 各200μLで2回ずつビーズを洗浄する。
・ 10% 無水酢酸を含むメタノール溶液100μLを加え、室温にて30分間静置する。
・ 溶液を除いた後、10mM 塩酸、メタノール、ジオキサン 各200μLで2回ずつビーズを洗浄する。
・ 100mM 3-メチル1-p-トリルトリアゼンを含むジオキサン溶液100μLを加え、60℃にて1時間〜1時間半静置する。
・ ジオキサン、純水、メタノール、純水の順にそれぞれ200μLずつで洗浄を行う。
・ 20mMアミノオキシ-WRを20μLと2% 酢酸を含むアセトニトリル180μLを加える。
・ 80℃にて45分間静置する。
・ 100μLの純水で溶出する。
マウス胎児性ガン細胞由来細胞P19CL6を心筋細胞へ分化誘導させ、未分化及び分化後の細胞のグライコミクスを行った。
1次抗体: MF20 (mouse monoclonal anti-sarcomere myosin)
2次抗体 : HRP-polymer conjugated anti-IgG
発色基質: Diaminobenzidine (DAB)
フコースを1つ有するタイプの糖鎖群とは、表1中 化2、化3、化6、化10、化12、化15、化16、化19、化24、化25、化27、化30、化31、化33、化36、化37、化39、化40、化41、化42である。
フコースを2つ有するタイプの糖鎖群とは、表1中 化20、化22、化28、化29、化34、化35、化38である。
ハイマンノース型の糖鎖とは、化5、化8、化14、化17である。
マウス胚性腫瘍細胞P19C6を神経細胞へ分化誘導させ、以下に示す3つの各ステップ、つまり未分化、分化中間体、分化後の細胞のグライコミクスを行った。
P19C6細胞を細胞培養皿(cell culture dish)で15%FBS/DMEMを培地として、数日間接着培養を行った。80〜90%コンフルエントになったところで、細胞を回収しグライコミクスへ、あるいは分化誘導するためにステップ2へと進めた。
ステップ1で80〜90%コンフルエントになった細胞をトリプシン処理により細胞懸濁液を調製し、バクテリアグレードのペトリ皿(dish)で懸滴培養(Hanging drop culture)を行った。この時、10cm皿(dish) の蓋に10μLの細胞懸濁液(105 cells/mL)を100spotsアプライし、浮遊培養を行い細胞の凝集塊を形成させた。培地には分化を誘導するために1μMのレチノイン酸を添加した10%FBS/αMEMを用いた。4日後に細胞の凝集塊を回収し、グライコミクスへ、あるいはさらに分化誘導するためにステップ3へと進めた。
回収した細胞の凝集塊をトリプシン処理により細胞懸濁液を調製し、ポリリジンコートした6cm皿(dish)に5 x 104cells/cm2になるように細胞を播種し、接着培養を行った。培地には、N-2サプリメント及びフィブロネクチンを添加したDMEM/F12を用いた。5日後に、細胞を回収し、グライコミクスを行った。
回収した細胞のペレットを1%Triton/PBSでタンパク質を可溶化した後、200μg相当のタンパク質をアセトン沈殿させ、還元アルキル化、トリプシン消化した。その後、PNGaseFによりN-結合型糖鎖を遊離させ、グライコブロッティング(Glycoblotting)法により糖鎖補足・精製を行い、MALDI-TOF/MSにより定量的プロファイルを取得した。未分化、分化中間体、分化後細胞の各スペクトルについて、内部標準として加えた濃度既知のオリゴ糖由来のシグナルの面積と細胞が発現している糖鎖由来シグナルの面積を比較することで、糖鎖発現量を定量的に解析した(図2-1)。その結果、分化に伴い有意に糖鎖構造が変化していることがわかった。この結果をもとに、バイセクトGlcNAcを有すると考えられる構造と、そうでないタイプの糖鎖でサブグループ化を行うと、図2-2のようになり、細胞分化を定量的にモニタリングできることが明らかになった。
1次抗体: mouse monoclonal anti-neurofilament 160
2次抗体: HRP-polymer conjugated IgG
発色基質: Diaminobenzidine (DAB)
バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群とは、表2中 化6、化8〜化10、化12〜14、化17〜化21、化25〜化29、化32〜化35、化40〜化43、化47、化50〜化52、化54、化57〜化59、化62、化63、化65、化66である。
ハイマンノース型の糖鎖群とは、表2中 化5、化7、化11、化16、化24、化31、化39である。
マウスのES細胞をレチノイン酸で分化誘導させ、未分化、及び分化後の細胞のグライコミクスを行った。分化誘導方法及び糖鎖発現量の定量的な解析は、実施例2と同様に行った。糖鎖発現量の定量的に解析した結果を図3-1及び3-2(図3-1の縦軸拡大)に示した。さらに、この結果をもとに、バイセクトGlcNAcを有すると考えられる構造と、そうでないタイプの糖鎖でサブグループ化を行い、結果を図3-3に示す。この結果は、この方法により細胞分化を定量的にモニタリングできることを示す。
バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群とは、表3中 化4、化7、化8、化11、化13、化16、化18、化19、化20、化26、化27、化31、化32、化33、化34、化35、化36、化40、化41、化42、化43、化44、化45、化46、化47、化52、化53、化54、化55、化56、化57、化62、化63、化64、化65、化69、化70、化71、化72である。
ハイマンノース型の糖鎖群とは、表3中 化12、化17、化22、化30、化39、化51、化61である。
ヒトのES細胞をレチノイン酸添加により分化誘導させ、レチノイン酸添加前を未分化、添加後を分化後として細胞のグライコミクスを行った。分化誘導方法及び糖鎖発現量の定量的に解析は、実施例2と同様とした。糖鎖発現量の定量的に解析した結果を図4-1及び4-2(図4-1の縦軸拡大)に示した。さらに、この結果をもとに、フコースを1つ有するタイプと、そうでないタイプの糖鎖でサブグループ化を行い、結果を図4-3に示す。さらに、シアル酸を有さないタイプと、そうでないタイプの糖鎖でサブグループ化を行い、結果を図4-4に示す。これらの結果は、この方法により細胞分化を定量的にモニタリングできることを示す。
シアル酸を有さないタイプの糖鎖群とは、表4中 化6、化7、化8、化11、化13、化14、化17、化19、化20、化34、化35、化36、化37、化38、化39、化42、化44、化46、化47、化49、化52である。
ハイマンノース型の糖鎖群とは、表4中 化12、化18、化22、化26、化31、化40、化48である。
Claims (17)
- 分化を誘導した幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価する方法であって、
(A)分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
(B)前記定量的プロファイル中から下記(C)の糖鎖カテゴリーの決定方法で決定された糖鎖のカテゴリーの少なくとも1つについて、該カテゴリーに含まれる糖鎖(群)の存在量または存在割合の経時的変化を求めること
を特徴とする、前記分化レベル評価方法。
(C)分化誘導剤の非存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを取得すること、
前記2つの定量的プロファイル中の存在量に変動がある糖鎖群の少なくとも一部を抽出すること、
抽出した糖鎖群に含まれる各糖鎖を糖鎖タイプに基づいて、ハイマンノース型とノンハイマンノース型のカテゴリーに分け、かつノンハイマンノース型をさらに(1)バイセクトの有無、(2)フコースの数(0、1、2以上)、(3)シアル酸の有無、及び(4)分岐度(2、3以上)のカテゴリーに分けること、並びに
前記5つのカテゴリーの中から、幹細胞または前駆細胞の分化レベルを評価するのに適した糖鎖のカテゴリーを少なくとも1つ決定することを含む糖鎖カテゴリーの決定方法。 - 幹細胞または前駆細胞の心筋分化レベルを評価する方法であって、
心筋分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
前記定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、フコースを2つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つの経時的変化を求めること、
を含む心筋分化レベルを評価する方法。 - 前記フコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって増大した細胞は、心筋分化レベルが高まったものである請求項2に記載の方法。
- 前記フコースを2つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって減少した細胞は、心筋分化レベルが高まったものである請求項2に記載の方法。
- 前記ハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって減少した細胞は、心筋分化レベルが高まったものである請求項2に記載の方法。
- マウス由来の幹細胞または前駆細胞の神経細胞への分化レベルを評価する方法であって、
神経細胞への分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
前記定量的プロファイル中のバイセクト構造を有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つの経時的変化を求めること、
を含む神経細胞への分化レベルを評価する方法。 - 前記バイセクト構造を有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって増大した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項6に記載の方法。
- 前記バイセクト構造を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって減少した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項6に記載の方法。
- 前記ハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって減少した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項6に記載の方法。
- ヒト由来の幹細胞または前駆細胞の神経細胞への分化レベルを評価する方法であって、
神経細胞への分化誘導剤の存在下で培養した幹細胞または前駆細胞に含まれるN-結合型糖鎖について定量的プロファイルを経時的に取得すること、
前記定量的プロファイル中のフコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合、シアル酸を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合及びハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合から成る群から選ばれる少なくとも1つの経時的変化を求めること、
を含む神経細胞への分化レベルを評価する方法。 - 前記フコースを1つ有するタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって増大した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項10に記載の方法。
- 前記シアル酸を有さないタイプの糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって増加した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項10に記載の方法。
- 前記ハイマンノース型の糖鎖群の存在量または存在割合が前記培養によって減少した細胞は、神経細胞への分化レベルが高まったものである請求項10に記載の方法。
- 前記N-結合型糖鎖は、グライコブロッティング法により分離及び精製されたものである請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
- 前記定量的プロファイルは、MALDI-TOF/MSまたはLC-ESI/SSI-TOF/MSにより得られたものである請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
- 幹細胞が、胚性幹細胞、組織幹細胞、生体幹細胞、または人工多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
- 前駆細胞は、幹細胞を分化誘導した細胞であり、かつ多能性を有する細胞である請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
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