以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.プリンタの構成:
2−1.全体の処理:
2−2.測定処理:
2−3.推定処理:
2−4.印刷処理:
2−5.ロール制御処理:
2−6.弛み取り処理:
2−7.変形例1:
2−8.変形例2:
1.プリンタの構成
以下、本発明の一実施の形態にかかる印刷装置(流体噴射装置)としてのプリンタ10およびその制御処理について説明する。なお、本実施形態のプリンタ10は、例えばJIS規格のA2以上の大判用紙を印刷するためのプリンタである。また、本実施形態におけるプリンタは、インクジェット式のプリンタである。インクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であればいかなる吐出方法を採用した装置でもよい。また、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、用紙Pが供給される側を供給側・後方側(後端側)とし、用紙Pが排出される側を排紙側・先頭側(手前側)として説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるプリンタ10の外観の構成例を示す斜視図である。図2は、図1のプリンタ10におけるDCモータを用いる駆動系と制御系の関係を示す図である。この例の場合、プリンタ10は、一対の脚部11と、当該脚部11に支持される本体部20とを有している。脚部11には、支柱12が設けられているとともに、回転自在なキャスタ13がキャスタ支持部14に取り付けられている。本体部20は、不図示のシャーシに支持される状態で、内部の各種機器が搭載されており、それらが外部ケース21によって覆われている。また、図2に示すように、本体部20には、DCモータを用いる駆動系として、ロール駆動機構30とキャリッジ駆動機構40と用紙搬送機構50とが設けられている。
ロール駆動機構30は、本体部20に存在するロール搭載部22に設けられている。ロール搭載部22は、図1に示すように、本体部20のうち、背面側かつ上方側に設けられており、上述の外部ケース21を構成する一要素である開閉蓋23を開くことにより、その内部にロール体RPを搭載し、ロール駆動機構30によってロール体RPを回転駆動させることが可能となっている。また、ロール体RPを回転させるためのロール駆動機構30は、図2および図3に示すように、回転ホルダ31とギヤ輪列32とRRモータ33と回転検出部34とを有している。なお図3は、回転ホルダ31とRRモータ33の外観の構成例を示す図である。回転ホルダ31は、ロール体RPに設けられている中空孔RP1の両端側から挿入されるものであり、ロール体RPを両端側から支持すべく、一対設けられている。
第1モータとしてのRRモータ33は、一対の回転ホルダ31のうち、一端側に位置する回転ホルダ31aに対して、ギヤ輪列32を介して駆動力(回転力)を与えるものである。回転検出部34は、本実施形態ではロータリエンコーダを用いている。そのため、回転検出部34は、円盤状スケール34aとロータリセンサ34bとを具備している。円盤状スケール34aは、その周方向に沿って一定の間隔毎に、光を透過させる透光部と、光の透過を遮断する遮光部とを有している。また、ロータリセンサ34bは、不図示の発光素子と、同じく不図示の受光素子と、同じく不図示の信号処理回路を主要な構成要素としている。
なお、本実施形態では、ロータリセンサ34bからの出力により、図4に示すような、互いに位相が90度異なるパルス信号(A相のENC信号,B相のENC信号)が制御部100に入力される。そのため、RRモータ33が正転状態にあるのか、または逆転状態にあるのかを、位相の進行/遅れによって検出可能となっている。また、本体部20には、キャリッジ駆動機構40が設けられている。キャリッジ駆動機構40は、インク供給/噴射機構の構成要素の一部ともなるキャリッジ41とキャリッジ軸42を具備し、その他不図示のキャリッジモータやベルト等を具備している。
キャリッジ41は、各色のインク(流体に対応)を貯留するためのインクタンク43を具備していて、このインクタンク43には、図示しないチューブを介して、本体部20の前面側に固定的に設けられているインクカートリッジ(図示省略)からインクが供給可能となっている。また、図2に示すように、キャリッジ41の下面には、インク滴を吐出可能な印刷ヘッド44(流体噴射ヘッドに対応)が設けられている。印刷ヘッド44には、各インクに対応づけられた不図示のノズル列が設けられていて、このノズル列を構成するノズルには、不図示のピエゾ素子が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。
なお、これらキャリッジ41、インクタンク43、不図示のチューブ、インクカートリッジ、印刷ヘッド44によって、インク供給/噴射機構が構成されている。また、印刷ヘッド44は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、ミストを電界で制御するミスト方式等を採用してもよい。また、インクカートリッジ/インクタンク43に充填されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、いずれの種類のインクを搭載してもよい。
図2、図5等に示すように、用紙搬送機構50は、搬送ローラ対51とギヤ輪列52とPFモータ53と回転検出部54とを有している。なお図5は、ロール体RPと搬送ロール対51と印刷ヘッド44の位置関係を示す図である。搬送ローラ対51は、搬送駆動ローラ51aと搬送従動ローラ51bとを具備していて、これらの間で、ロール体RPから引き出される用紙P(ロール紙に対応)を挟持可能となっている。また、第2モータとしてのPFモータ53は、搬送駆動ローラ51aに対して、ギヤ輪列52を介して駆動力(回転力)を与えるものである。さらに、本実施形態の回転検出部54は、ロータリエンコーダを用いており、上述の回転検出部34と同様に円盤状スケール54aとロータリセンサ54bとを具備し、図4に示すようなパルス信号を出力可能としている。
また、搬送ローラ対51よりも排紙側には、プラテン55が設けられていて、用紙Pは当該プラテン55上をガイドさせられる。また、プラテン55に対向するように印刷ヘッド44が配設されている。このプラテン55には、複数の吸引孔55aが形成された矩形状の吸引部55b(吸引力が実効的に作用する領域)が設けられている。一方、吸引孔55aは、吸引ファン56に連通可能に設けられていて、吸引ファン56が作動することによって、印刷ヘッド44側から吸引孔55aを介して空気が吸引される。それにより、プラテン55上に用紙Pが存在する場合には、当該用紙Pを吸引保持することが可能となっている。なお、プリンタ10は、その他、用紙Pの幅を検出する紙幅検出センサ57や用紙Pの印刷方向の先頭側の紙端を検出する紙端センサ58等、その他の各種センサを備えている。プラテン55よりも先頭側には用紙Pを先頭側から垂下させる排出部59が設けられている。
図6は、制御部100の機能的構成例を示すブロック図である。この制御部100には、ロータリセンサ34b,54bや不図示のリニアセンサや紙幅検出センサ57や不図示のギャップ検出センサやプリンタ10の操作パネル等の各出力信号が入力される。図2に示すように、制御部100は、CPU101とROM102とRAM103とNVRAM104とASIC105とモータドライバ106を具備していて、これらが例えばバス等の伝送路107を介して相互に接続されている。また、制御部100は、コンピュータCOMに接続されている。そして、これらのハードウエアと、ROM102や記憶されているソフトウエアおよび/またはデータの協働、または特有の処理を行う回路や構成要素の追加等によって、図6に示すような、主制御部110と、PFモータ制御部111とRRモータ制御部112とが実現される。
制御部100のPFモータ制御部111は、搬送駆動ローラ51aが回転して用紙Pが搬送方向に搬送されるように、PFモータ53の駆動を制御する。なお以下において、用紙Pを搬送方向に搬送する際のPFモータ53の回転の向きを、正転方向と称する。制御手段としてのRRモータ制御部112は、用紙Pの弛みが生じさせないように、RRモータ33の駆動を制御する。なお、用紙Pをロール体RPから巻き出す回転の向きを、RRモータ33の正転方向とし、反対に巻き取る回転の向きを逆転方向とする。主制御部110は、PFモータ制御部111およびRRモータ制御部112の動作を制御する。制御部100は、主制御部110とPFモータ制御部111とRRモータ制御部112と協働して後述する各処理を実行する。
2−1.全体の処理
図7は、本実施形態のプリンタ10が実行する全体の処理の概略的な流れを示している。ステップS100において、制御部100は、ロール体RPがロール搭載部22に装着(交換)されたことを検出する。例えば、不図示のセンサによってロール搭載部22に対するロール体RPの装着を検出してもよいし、不図示の操作パネルの操作に応じてロール体RPの装着を検出してもよい。本実施形態では、不図示の操作パネルにおいて、ロール体RPが装着されたこと、および、ロール体RPに巻回された用紙Pの種類(例えば、普通紙や光沢紙やマット紙)が受け付けられるものとする。受け付けられた用紙Pの種類を識別するための情報はNVRAM104に記憶される。次に、制御部100は、ステップS200において測定処理を実行する。この測定処理では、ロール体RPの装着直後におけるロール体RPの直径D、および、ロール体RPが回転する際のロール静負荷(トルク)を測定する。このロール静負荷は、ロール体RPの回転速度(用紙Pの搬送速度V)に応じて線形的に変動するため、高速搬送時のロール静負荷Nhiと低速搬送時のロール静負荷Nloとを測定しておく。測定処理が完了すると、ロール静負荷Nlo,Nhiおよび直径DとがNVRAM104に記憶される。
測定処理が完了すると、印刷可能な状態となり、ステップS300においてコンピュータCOMからの印刷ジョブの入力を受け付ける。ステップS400では、受け付けられた印刷ジョブに対する印刷処理を実行する。そして、印刷処理が完了すると、装着されたロール体RPの用紙Pが普通紙であるか否かを判断し(ステップS450)、普通紙である場合には、ステップS500において推定処理を実行する。この推定処理では、印刷処理直後におけるロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiが取得され、これらがNVRAM104において更新される。推定処理が完了するとステップS300に戻る。一方、装着されたロール体RPの用紙Pが普通紙でない場合には、ステップS200に戻り、測定処理を実行する。すなわち、測定処理によってロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを取得し、NVRAM104に更新する。
以上のように、本実施形態では、まずロール体RPが装着された段階で、測定処理を実行するとともに、印刷処理が完了するごとにNVRAM104に記憶されたロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを更新することとしている。ただし、装着されたロール体RPの用紙Pが普通紙である場合には、初回はロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを測定処理によって取得し、2回目以降はロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを推定処理によって取得することとしている。一方、装着されたロール体RPの用紙Pが普通紙でない場合には、毎回、ロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを測定処理によって取得することとしている。なお、破線で示すように弛み取り処理(ステップS700)を測定処理と印刷処理の前に予め実行しておくことが望ましい。なお、プリンタ10は印刷処理以外でも用紙Pを搬送する場合がある。例えば、メンテナンス時に用紙Pを搬送する場合も考えられる。このような動作を行った場合にも、ロール静負荷Nlo,Nhiと直径Dを更新すべく、測定処理または推定処理を実行するのが望ましい。次に、測定処理について説明する。
2−2.測定処理
図8は、測定処理の流れを示している。ステップS205では、PFモータ制御部111がPFモータ53を正転方向に駆動させつつ、制御部100はロータリセンサ34b,54bからの出力を取得する。PFモータ53のみが正転方向に駆動させられるが、ロール体RPの用紙PがPFモータ53の駆動に応じて搬送されるため、ロール体RPおよびRRモータ33も従動的に正転方向に回転することとなる。
図9は、ステップS205におけるロータリセンサ34b,54bの出力の一例を示している。同図において、破線はPFモータ53の回転量に対応するロータリセンサ54bの出力を示し、実線はRRモータ33の回転量に対応するロータリセンサ34bの出力を示している。横軸は時間を示し、縦軸はステップS205におけるロータリセンサ34b,54bのカウント数Err,Epfを示している。このカウント数Err,Epfは、上述したENC信号のエッジのカウント数であり、ステップS205におけるロータリセンサ34b,54bの回転量を意味する。図9に示すように、駆動の初期から中期にかけて加速し、その後、徐々に減速していき、最終的に停止するようにPFモータ53を駆動させる。RRモータ33は従動するため、ロータリセンサ34bの出力も同様となる。
ステップS210においては、ステップS205の駆動から所定の時間経過後、ロータリセンサ34b,54bのカウント数Err,Epfを取得し、当該カウント数に基づいてロール体RPの直径Dを算出する。ここで、用紙Pの延びやスリップはほぼ無視できるため、ステップS205においてPFモータ53の回転によって搬送される用紙Pの搬送量ΔLpfと、RRモータ33の回転によって搬送される用紙Pの搬送量ΔLrrとは同じになると考えることができる。さらに、用紙Pの搬送量ΔLpf,ΔLrrはロータリセンサ34b,54bによるそれぞれのカウント数Err,Epfに比例する。これらの比例係数をそれぞれk1,k2とすると、下記の(1)式が成り立つ。
PFモータ53に関する比例定数k1はギヤ輪列52の減速比や搬送駆動ローラ51aの直径や円周率等に対応する定数である。一方、ロール体RPの直径Dは用紙Pの搬送に応じて減少するため、RRモータ33に関する比例係数k2はロール体RPの直径Dに比例した係数となる。比例係数k2を定数k3(ギヤ輪列32の減速比や円周率等に対応する定数)と直径Dに分解すると、前記の(1)式は、下記の(2)式のように表すことができ、直径Dを算出することができる。
k1,k3は既知の定数であるため、前記の(2)式を直径Dに関して解けば、カウント数Err,Epfから直径Dを算出することができる。ステップS215においては、算出された直径Dが正常な値であるかを判定し、正常である場合にはステップS220にて直径DをNVRAM104に記憶する。正常でない場合には、再度、ステップS205をやり直す。また、正常でない場合には、エラーを通知しつつ終了してもよい。
ステップS225においては、RRモータ制御部112がRRモータ33を正転方向に駆動させ、一定の搬送速度Vloで用紙Pを送り出す。さらにステップS225において制御部100は、用紙Pの搬送速度Vが搬送速度Vloで安定している期間に、RRモータ制御部112がRRモータ33に出力しているPWM信号のDutyをトルクに換算することによりロール静負荷Nloを取得する。本実施形態では、搬送速度Vloを目標としたPID制御が行われており、PID制御値の積分成分の平均値をトルクに換算することにより、ロール静負荷Nloを取得する。なお、用紙Pの搬送速度Vは上述した搬送量ΔLrrを時間で除算することによって得ることができるため、搬送速度Vloを目標としたPID制御を行うことができる。測定処理(および推定処理)を行うためにRRモータ33を駆動する際には、PFモータ53は停止させておく(停止維持するための電流を出力しておく)。
ステップS230においては、RRモータ制御部112がRRモータ33を正転方向に駆動させ、一定の搬送速度Vhi(>Vlo)で用紙Pを送り出す。そして、用紙Pの搬送速度Vが搬送速度Vhiで安定している期間に、RRモータ制御部112がRRモータ33に出力しているPWM信号のデューティ値をロール静負荷NhiとしてステップS225と同様に取得する。ここで、ロール静負荷Nlo,Nhiは、回転抵抗(主に摩擦抵抗)に抗して搬送速度Vlo,Vhiに対応する回転速度でロール体RPを回転させるために必要な負荷に対応する値であると考えることができる。
図10は、任意の搬送速度Vとロール静負荷Nとの関係の一例を示している。同図に示すように、ロール静負荷Nは搬送速度Vの線形関数で表すことができ、最低限、搬送速度Vlo,Vhiにおけるデューティ値Nlo,Nhiが分かれば、任意の搬送速度Vに対応するロール静負荷Nを下記の(3)式によって算出することができる。
ステップS235においてはロール静負荷Nlo,Nhiの値が正常であるか否かを判断し、正常である場合にはステップS240においてロール静負荷Nlo,NhiをNVRAM104に記憶し、測定処理を完了させる。正常でない場合には、再度、ステップS230からやり直す。以上説明した測定処理によれば、ロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiを測定し、NVRAM104に記憶することができる。なお、上述したとおり、ロール体RPの用紙Pが普通紙でない場合には、印刷処理を実行するごとに測定処理が実行され、直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiは逐次更新されていくこととなる。次に、推定処理について説明する。
2−3.推定処理
図11は、推定処理の流れを示している。ステップS305では、現在、NVRAM104に記憶されているロール体RPの直径Dを取得する。現在、NVRAM104に記憶されているロール体RPの直径Dとは、直前の印刷処理を実行する前のロール体RPの直径D(以下、基準直径D0と表記する。)を意味する。なお、図7に示したように推定処理が実行される条件として、ロール体RPの用紙Pが普通紙であることが前提となる。ステップS310においては、直前の印刷処理において搬送された用紙Pの搬送量ΔL(ΔLpf)を取得する。各印刷ジョブにおいては、搬送方向の印刷サイズが指定されるため、印刷処理において実際に搬送された搬送量ΔLを取得することができる。むろん、印刷処理におけるロータリセンサ54bのカウント数の累計値を前記の(1)式によって搬送量ΔLpfに換算してもよい。ステップS315においては、ロール体RPの直径Dとロール体RPに巻かれている用紙Pの残量Lとの対応関係(第1対応関係CR1)に基づいて、現在のロール体RPの直径Dを推定する。
図12は、上述した第1対応関係CR1の例を示している。同図において、縦軸はロール体RPに巻かれている用紙Pの残量Lを示し、横軸はロール体RPの直径Dを示している。同図に示すように、第1対応関係CR1はロール体RPの直径Dの放物線(2次関数)によって表すことができる。現在のロール体RPの直径Dを推定するにあたっては、まずステップS305にて取得した直前の印刷処理を実行する前のロール体RPの基準直径D0に対応する用紙Pの残量L(以下、基準残量L1と表記する。)を第1対応関係CR1に基づいて算出する。そして、基準残量L1からステップS310にて取得した搬送量ΔLを減算することにより、現在の用紙Pの残量L(以下、残量L2と表記する。)を算出する。さらに、現在の用紙Pの残量L2に対応する直径Dを第1対応関係に基づいて算出する。
これにより、現在のロール体RPの直径Dを推定することができる。なお、第1対応関係(2次関数)CR1を規定する関数パラメータはROM102に予め記憶されており、当該パラメータがステップS315にて読み出されて使用される。ステップS320においては、推定した直径DをNVRAM104に更新記憶する。次のステップS325においては、制御部100が紙幅検出センサ57による紙幅の測定値wを取得する。そして、ステップS330では、ロール体RPの直径Dとロール静負荷Nlo,Nhiとの対応関係(第2対応関係CR2a,CR2b)に基づいて、現在のロール体RPを搬送速度Vlo,Vhiに対応する回転速度で回転させた場合のロール静負荷Nlo,Nhiを推定する。
図13は、第2対応関係CR2a,CR2bを示している。同図において、縦軸はロール静負荷Nlo,Nhiを示し、横軸はロール体RPの直径Dを示している。第2対応関係CR2a,CR2b(実線で図示。)は、基準紙幅w0の用紙Pが巻かれたロール体RPをそれぞれ搬送速度Vlo,Vhiで駆動した場合のロール静負荷Nlo,Nhiを示している。同図に示すように、第2対応関係CR2a,CR2bはそれぞれロール体RPの直径Dの放物線(2次関数)によって表すことができる。ロール体RPの直径Dの減少ともに、ロール体RPの重量が軽くなり、摩擦抵抗が軽減されるからである。
また、ロール静負荷Nlo,Nhiは紙幅wに比例すると考えることができる。例えば、基準紙幅w0の2倍の紙幅wの場合、ロール静負荷Nloにおいて破線で示すように2倍の大きさのロール静負荷Nlo,Nhiを有することとなる。任意の紙幅wのロール静負荷Nlo,Nhiを求める場合には、紙幅比w/w0を実線で示すロール静負荷Nlo,Nhiに乗算すればよい。ステップS315において現在のロール体RPの直径Dが取得されているため、ステップS330では第2対応関係CR2a,CR2bにおいて当該直径Dに対応するロール静負荷Nlo,Nhi(実線)をそれぞれ算出する。さらに、上述した紙幅比w/w0を乗算することにより、実際の紙幅wについてのロール静負荷Nlo,Nhiを推定することができる。ステップS335においては、以上のように推定したロール静負荷Nlo,NhiをNVRAM104に更新記憶する。
以上の第1対応関係CR1および第2対応関係CR2a,CR2bは、理論式や予備実験に基づいて準備されるが、本実施形態においては普通紙についてのみ準備されている。そのため、装着されたロール体RPの用紙Pが普通紙である場合にのみ、推定処理による推定が可能となっている。普通紙に印刷を行う場合、印刷に要する時間を短縮する要請が大きいため、本実施形態では普通紙については推定処理を行うこととし、印刷に要する時間の短縮を図っている。むろん、光沢紙やマット紙ついても、第1対応関係CR1および第2対応関係CR2a,CR2bを用意しておき、装着された用紙Pの種類に応じた第1対応関係CR1および第2対応関係CR2a,CR2bを使用して推定処理を行うようにしてもよい。測定処理を行った場合でも、推定処理を行った場合でも、印刷処理実行後における現在のロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiを得ることができ、現在(最新)のロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,NhiをNVRAM104に記憶させることができ、これを使用して後述する印刷処理を実行することができる。次に、印刷処理について説明する。
2−4.印刷処理
図14は、印刷処理の流れを示している。同図に示すように、印刷処理は、まず紙端位置初期化処理(ステップS405)を行い、その後、用紙搬送処理(ステップS410)とヘッド駆動処理(ステップS420)を交互に繰り返すことにより行われる。紙端位置初期化処理(ステップS405)においては、制御部100のPFモータ制御部111が、搬送駆動ローラ51aを回転させて用紙Pを所定量搬送しつつ、紙端センサ58にて用紙Pの搬送先頭側の紙端を検出する。紙端が検出できると、紙端が印刷開始位置となるまで用紙Pを搬送させる。このような紙端位置初期化処理を行っておくことにより、用紙Pの紙端に対し常に一定の位置から印刷を開始させることができる。また、主制御部110は、紙端センサ58が紙端を検出する位置を基準位置(x=0)とし、紙端センサ58が紙端を検出してから搬送させた用紙Pの搬送量ΔLをNVRAM104に紙端の位置xとして記憶する。
用紙搬送処理においては(ステップS410)、制御部100のPFモータ制御部111が、搬送駆動ローラ51aを回転させ用紙Pが搬送方向に搬送されるように、PFモータ53の駆動を制御する。各用紙搬送処理においては、単位時間あたりに搬送すべき用紙Pの長さ(上述した搬送量ΔLに対応。目標搬送量ΔLtと表記。)が指定され、当該目標搬送量ΔLtだけ搬送するための駆動制御がPFモータ53に対して行われる。本実施形態では、必要な目標搬送量ΔLtが印刷データ(印刷ジョブ)に基づいて指定されると、当該目標搬送量ΔLtの搬送に適した搬送速度Vの速度モードが選択される。本実施形態では、速度モードVM1〜VM4が選択可能であり、それぞれ5ips,3ips,1ips,0.15ipsを最大の搬送速度VとしたPID制御が行われる。基本的には、目標搬送量ΔLtが大きいほど、高速な速度モードVM1〜VM4が選択される。各用紙搬送処理において、目標搬送量ΔLtの搬送が完了すると、上述した紙端の位置xに直前に搬送した目標搬送量ΔLtを加算することにより、NVRAM104にて紙端の位置xを更新する。
一方、ヘッド駆動処理(ステップS420)においては、用紙Pを静止させた状態で、印刷ヘッド44を用紙Pの搬送方向に直交する方向に走査させつつ、印刷ヘッド44に多数設けられたノズルからインク滴を吐出する。これにより、用紙Pにインクドットを形成することができる。以上の用紙搬送処理とヘッド駆動処理を交互に行うことにより、インクドットを2次元方向に配置することができ、用紙P上に平面画像を形成することができる。すべての用紙搬送処理とヘッド駆動処理が完了すると、図7に示したメインフローに戻り、測定処理(普通紙以外の場合)または推定処理(普通紙の場合)を実行する。ところで、本実施形態では、各副走査(ステップS410)と並行して、ロール制御処理が実行されている。以下、ロール制御処理(ステップS500)の詳細について説明する。
2−5.ロール制御処理
図15〜図17はロール制御処理の流れを示している。上述したとおり、用紙搬送処理はヘッド駆動処理と交互に行われるため、PFモータ53の駆動は間欠的となる。ロール制御処理は、PFモータ53の各駆動(停止〜駆動〜停止)に同期して実行される。ロール制御処理の開始タイミングは、前回の用紙搬送処理においてPFモータ53の駆動が停止した後であり、今回の用紙搬送処理においてPFモータ53が駆動を開始する前であればよい。ロール制御処理の終了タイミングは処理内容によって異なってくるが、ロール制御処理の終了時にはRRモータ制御部112がRRモータ33の出力トルクMを0に設定するとともに、RRモータ33にショートブレーキをかける。従って、PFモータ53が駆動しない期間においては基本的にRRモータ33が停止し、所定の制動力を生じさせている。すなわち、RRモータ33もPFモータ53と同様に間欠的に駆動することとなる。なお、ショートブレーキにおいては、モータのコイルを短絡させることにより、駆動力を誘導電流に変換し、当該駆動力を消失させる。ロール制御処理においてRRモータ33に出力するPWM信号のDutyが更新され、当該Dutyに応じた出力トルクM(駆動力)でRRモータ33が駆動することとなる。
ロール制御処理が開始すると、ステップS505において、同期して行われる(今回の)用紙搬送処理(ステップS410)における目標搬送量ΔLtをRRモータ制御部112が取得し、用紙搬送処理と同一の選択手法で速度モードVM1〜VM4を選択する。すなわち、並行して行われる用紙搬送処理(ステップS410)と同一の速度モードVM1〜VM4が選択される。ステップS510においては、RRモータ制御部112がNVRAM104からロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiおよび用紙Pの種類を読み出す。すなわち、現在実行中の印刷処理の直前のロール体RPの直径Dおよびロール静負荷Nlo,Nhiおよび用紙Pの種類を取得する。ステップS512においては、用紙Pの紙端の位置xをNVRAM104から取得する。ステップS515においては、ステップS510で取得した用紙Pの種類に対応する指定張力Fを取得する。厳密には、単位幅あたりの単位指定張力fが取得され、この単位指定張力fに紙幅wを乗算することにより、指定張力F=f×wを取得する。
図18は、指定張力Fの概念を模式的に説明している。同図において、ロール体RPと搬送ロール対51と用紙Pとの関係が示されている。用紙搬送処理においてPFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aを駆動させる(RRモータ33は駆動させない)ことにより、用紙Pが所定の搬送速度Vで搬送されることとなる。すると、用紙Pに引っ張られるようにロール体RPが従動的に正転することとなるが、ロール体RPが回転するためのロール静負荷NのトルクがRRモータ33の駆動軸(ロール体RPの回転軸)周りに発生する。このトルクがロール体RPの表面に位置する用紙Pに生じさせる力を抵抗力T1とすると、抵抗力T1はロール体RPの回転軸周りのモーメントの釣り合いより、下記の(4)式で求めることができる。
なお、k4は比例定数であり、ロール体RPの回転軸の径等に基づいて特定できる。ところで、搬送速度Vと、当該搬送速度Vにてロール体RPを回転さする際に生じるロール静負荷Nとの関係は、予め実行した測定処理または推定処理で得られたロール静負荷Nlo,Nhiと前記の(3)式によって特定することができる。従って、各搬送速度VでRRモータ33を駆動させることなく、任意の搬送速度Vで用紙Pを搬送する場合に生じる抵抗力T1を特定することができる。
さらに、ロール体RPの回転抵抗だけでなく、プラテン55と用紙Pとの間に生じる摩擦抵抗も、搬送駆動ローラ51aが用紙Pを搬送する際に生じることとなる。プラテン55と用紙Pとの間に生じる摩擦抵抗により生じる抵抗力T2は、下記の(5)式によって表すことができる。
図19は、吸引部55bと用紙Pとの関係を模式的に示している。図19に示すように、前記の(5)式のxは、紙端センサ58の紙端検出位置を基準(0)とした用紙Pの紙端の位置を示している。x
0,x
1は、それぞれ紙端センサ58の紙端検出位置を基準とした吸引部55bの搬送方向両端の位置を示している。また、前記の(5)式において、吸引ファン56が作動することにより吸引部55bの単位面積あたりに生じる吸引力をnとし、吸引部55bと用紙Pとの間の摩擦係数をμ
1としている。摩擦係数μ
1は、ROM102において各用紙Pの種類ごとに異なる値が記憶されている。
x0>xの場合、吸引部55bと用紙Pとが接触する吸引面積は0となり、当然、これらの間に抵抗力T2は生じない。x1>x>x0のとき、吸引部55bと用紙Pとが接触する吸引面積(ハッチング)はw×(x−x0)となり、当該吸引面積に単位面積あたりの吸引力nを乗算した垂直抗力が生じることとなる。さらに、当該垂直効力に摩擦係数μ1を乗算することにより、抵抗力T2が求められる。紙端の位置がx1>x>x0であるときには、紙端が搬送方向下流に進行するほど、吸引部55bと用紙Pとが接触する吸引面積が線形的に増加し、抵抗力T2も増加していくこととなる。さらに、x>x1となると、吸引部55bと用紙Pとが接触する吸引面積はwx1で一定となり、抵抗力T2も一定となる。
次に、RRモータ33を駆動させた場合を考える。RRモータ制御部112がRRモータ33にPWM出力を行って、RRモータ33が正転方向に出力トルクMを発生させた場合、ロール体RPの回転軸周りにはロール静負荷Nから出力トルクMを減算したトルクが作用することとなる。この場合、前記の(4)式に基づいて下記の(6)式を得ることができる。
前記の(6)式が示すように、用紙Pを搬送する間にRRモータ33を正転(M>0)させることにより、用紙Pに作用する抵抗力T1を軽減することができる。なお、出力トルクMにより軽減され抵抗力T1の大きさ(調整量)は、k4×M/Dとなる。反対に、RRモータ33に負の出力トルクM(逆転方向)を与えた場合には、抵抗力T1を増大させることができる。
搬送駆動ローラ51aが用紙Pを搬送する場合には、上述した抵抗力T1,T2の合力が用紙Pの搬送の抵抗となり、当該合力に抗して搬送駆動ローラ51aが用紙Pを搬送することとなる。すなわち、搬送駆動ローラ51aが用紙Pを搬送する際には、抵抗力T1,T2の合力(T1+T2)が用紙Pに張力T(=T1+T2)として作用することとなる。ここで、張力Tが大き過ぎると搬送駆動ローラ51aと用紙Pとの間のスリップ量が増大し、意図した搬送量ΔLを実現することができない。なお、スリップ量は張力Tに比例する。また、張力Tが小さすぎる場合には、ロール体RPが意図せず正転することにより、用紙Pの弛みを生じさせる。そのため、張力Tを適度な大きさに管理する必要がある。
そこで、本実施形態では、目標とする張力Tの値を指定張力F(=T1+T2)として設定することとする。前記の(5),(6)式で得られる各抵抗力T1,T2の合計が指定張力Fとなるため、下記の(7)式の関係を得ることができる。
前記の(7)式により、指定張力Fを実現するために必要なRRモータ33の出力トルクMを算出することができる。図18において、抵抗力T2の大きさを矢印で模式的に示しているが、x
0>xの場合は抵抗力T2が0となる。x
1>x>x
0の場合は、抵抗力T2の大きさが(x−x
0)に比例して変動することとなる。さらに、x>x
1の場合は、抵抗力T2は一定の大きさとなる。このように、抵抗力T2が紙端の位置xに応じて変動することとなるが、前記の(7)式によれば紙端の位置xに依存することなく、指定張力Fを実現するための出力トルクMを得ることができる。なお、前記の(5)で使用されるロール体RPの直径Dとロール静負荷Nlo,Nhiは各印刷処理の後に更新されているため、出力トルクMを正確に計算することができる。
また、前記の(8)式のように、出力トルクMを生じさせるためのPWM信号のデューティ値(Duty)は、出力トルクMに比例するため、指定張力Fを実現するための制御をRRモータ制御部112が行うことができる。なお、k5はDutyを正規化するための比例定数に相当する。なお、用紙Pの機械特性は用紙Pの種類によって異なるため、指定張力Fは用紙Pの種類ごとに用意されており、予めROM102に記憶されている。そのため、ステップS515では、ステップS510にて取得した用紙Pの種類に対応する指定張力Fを得ることができる。用紙Pの種類に応じて摩擦係数が異なるため、張力Tに対応するスリップ量も異なることとなる。従って、適切なスリップ量を実現するための指定張力Fが各用紙Pの摩擦係数に応じて設定されている。さらに、厚手の用紙Pの場合には、巻回された状態から平面上に巻き出すための変形に大きい力が必要となり、指定張力Fを薄手の用紙Pよりも大きめに設定しておくのが望ましい。
図20A〜20Dは、指定張力Fとロール静負荷Nと出力トルクMの関係の例を示している。図20Dに示すように、ロール静負荷Nが小さく、指定張力Fが大きい場合には、指定張力Fを実現するための出力トルクMが負となる場合もある。この場合、逆転方向の出力トルクM(M<0)を出力することにより、ロール体RPの回転軸周りの負荷を増大させることとなる。ステップS520においては、ステップS505において特定した速度モードVM1〜VM4に対応する制御パラメータセットをROM102から取得する。なお、ROM102には制御パラメータセットを各速度モードVM1〜VM4について記憶したパラメータテーブルPTが記憶されている。
図21は、パラメータテーブルPTの一例を示している。同図において、パラメータテーブルPTには制御パラメータとして、各速度モードVM1〜VM4について搬送速度上限Vuと搬送量制限値αと自走時制動比bと制御移行搬送速度Vsと制御終了搬送速度Vfと初期張力Tsとが記憶されている。速度モードVM1〜VM4に対応する制御パラメータセットが取得できると、ロール制御処理に必要なパラメータがひととおり取得できたこととなる。
ステップS525においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)でPFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aの駆動を開始するタイミングの所定時間前(例えば、数msec前、taとして図示。)であるか否かを判断し、所定時間ta前となるまで待機する。なお、この間もRRモータ制御部112がRRモータ33の出力トルクM(Duty)を0に設定するとともに、RRモータ33にショートブレーキをかけている。所定時間前になると、ステップS530において、搬送速度V=0において指定張力Fを実現するための出力トルクMが正であるか否かを判定する。具体的には、前記の(3)式に搬送速度V=0を代入して、搬送速度V=0におけるロール静負荷Nを算出する。そして、前記の(5)式にロール静負荷Nおよび指定張力Fを代入することにより、RRモータ33の出力トルクMを算出する。そして、この出力トルクMが正であるか否かを判定する。
ステップS530において、搬送速度V=0にて指定張力Fを実現するための出力トルクMが正であると判定された場合、すなわち張力Tを指定張力Fまで緩和するためにロール体RPを正転方向に駆動させる場合の処理(ステップS535〜S645:以下、正転制御処理と表記する。)について説明する。正転制御処理は、所定のクロック信号に同期した微小時間Δtが経過するごとに、次の微小時間Δtの間にRRモータ制御部112がRRモータ33に出力するDutyを更新するループ処理である。また、正転制御処理は、処理の段階に応じて初期制御状態と中期制御状態と後期制御状態の3つの制御状態に分けられ、それぞれ異なる手法でDutyを更新していく。また、正転制御処理の開始タイミングは、PFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aの駆動を開始する所定時間前である。
ステップS535においては、制御状態を初期制御状態とする。ステップS540において所定の微小時間Δtの経過を待つ。次のステップS545においては、直前の微小時間Δtの間におけるロール体RPによる用紙Pの搬送速度Vを算出する。この搬送速度Vは、前記の(2)式によって当該微小時間Δtにおける搬送量ΔLrrを算出し、さらに当該搬送量ΔLrrを微小時間Δtで除算することにより得ることができる。ステップS550においては、正転制御処理を開始してからロール体RPが搬送した用紙Pの搬送量ΔLrrを算出する。ここでは正転制御処理を開始してから現在までのロータリセンサ34bのカウント数Errを前記の(2)式に代入することにより搬送量ΔLrrを計算する。
ステップS555においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)における目標搬送量ΔLtに、パラメータテーブルPTから取得した搬送量制限値αに現在の搬送速度Vとエンコーダ周期(時間)を乗算した値を加算することにより搬送量上限値を算出する。そして、当該搬送量上限値が搬送量ΔLrrよりも大きいか否かが判定される。そして、搬送量ΔLrrの方が大きければステップS560においてRRモータ33にショートブレーキをかけ、ロール制御処理(正転制御処理)を終了させる。これにより、次のロール制御処理が開始するまで、RRモータ33はショートブレーキがかけられた状態となる。すなわち、搬送駆動ローラ51aが搬送すると予定していた目標搬送量ΔLtよりも、ロール体RPによる搬送量ΔLrrが大きい場合、搬送駆動ローラ51aとロール体RPとの間の用紙Pにおいて弛みが発生すると考えられる。従って、このような場合には、RRモータ33にショートブレーキをかけ、それ以上弛みが発生させないようにする。また、各速度モードVM1〜VM4に応じて異なる搬送量制限値αを設定することができ、速度モードVM1〜VM4に適した搬送量ΔLrrの上限値を設定することができる。なお、本実施形態では各速度モードVM1〜VM4に対して同じ値の搬送量制限値αが設定されているが、異なる値に設定するようにしてもよい。
ステップS565においては、ステップS545において算出した搬送速度VがパラメータテーブルPTから取得した制御終了搬送速度Vfより小さく、かつ、制御状態が中期制御状態または後期制御状態であるか否かを判定する。そして、搬送速度Vが制御終了搬送速度Vfより小さく、かつ、制御状態が中期制御状態または後期制御状態である場合には、ステップS560においてRRモータ33にショートブレーキをかけ、ロール制御処理(正転制御処理)を終了させる。搬送駆動ローラ51aの駆動前または駆動初期に対応する初期制御状態以外の中期制御状態または後期制御状態において、搬送速度Vが制御終了搬送速度Vfより小さい場合には、搬送駆動ローラ51aの駆動が減速の終期にあるか、すでに停止していると考えることができる。
このような場合に、ロール体RRが正転するような出力トルクMをRRモータ33に出力させると、RRモータ33が単独で正転し、用紙Pが搬送駆動ローラ51aとロール体RPとの間において弛みが発生することとなる。そのため、搬送速度Vが制御終了搬送速度Vfより小さい場合には、ショートブレーキをかけ、ロール制御処理を終了させることとしている。図21に示すように制御終了搬送速度Vfは、最大の搬送速度Vが小さい速度モードVM4について小さい値が設定されている。速度モードVM4においては、搬送駆動ローラ51aの駆動が停止しようとする以外の期間でも搬送速度Vが小さくなり得るため、制御終了搬送速度Vfを小さくすることにより意図しないタイミングでのロール制御処理の終了を防止することができる。
ステップS570においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)でPFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aの駆動タイミング(駆動開始または駆動終了)から所定の閾値時間経過したか否かを判定し、所定の閾値時間以上経過している場合にはステップS560にてショートブレーキをかけ、ロール制御処理を終了させることとしている。これにより、ロール体RPが異常なタイミングで駆動することを防止することができる。例えば、ヘッド駆動処理中にユーザが用紙Pに触れたことにより、ロール体RPが従動しようとすることを防止することができる。以上のように、本実施形態のステップS555,S565,S570においては各微小時間Δtが経過するごとにロール制御処理(正転制御処理)の停止条件を判定し、該当する場合には、RRモータ33にショートブレーキをかけるようにしている。
ステップS575においては、ステップS545で算出した搬送速度Vが搬送速度上限Vuを超えているか否かを判定する。なお、図21に示すように搬送速度上限Vuは、各速度モードVM1〜VM4における最大の搬送速度Vの110%とされている。これにより、予定している搬送駆動ローラ51aによる用紙Pの最大の搬送速度Vよりも、ロール体RPによる用紙Pの搬送速度Vの方が速いか否かを判定することができる。ロール体RPによる用紙Pの搬送速度Vの方が速い場合には、搬送駆動ローラ51aとロール体RPとの間の用紙Pにおいて弛みが発生するおそれがあるため、ロール体RPを制動すべく、RRモータ33が出力すべき出力トルクMを0に設定する(ステップS580)。すなわち、次の微小時間Δtの間にRRモータ33に出力するPWM信号のDuty(以下、設定Dutyと表記する。)を0とする。
ステップS585では、現在の制御状態が初期制御状態と中期制御状態と後期制御状態のいずれかであるかを判定し、その結果に応じて移行の処理を分岐させる。最初の段階では、初期制御状態とされているため、初期制御状態に対応するステップS605に進む。以下、初期制御状態における処理を説明する。ステップS605では、初期張力Tsを指定張力Fとして設定し、初期張力Tsを用紙Pに作用させるための出力トルクMおよびDutyを算出する。具体的には、前記の(3)式に搬送速度Vを代入して、搬送速度Vにおけるロール静負荷Nを算出する。そして、前記の(5)式にロール静負荷Nおよび初期張力Tsを代入することにより、RRモータ33の出力トルクMを算出する。
さらに、前記の(6)式により、出力トルクMを得るためのDutyを算出し、当該Dutyを次の微小時間Δtの間にRRモータ33に出力するPWM信号の設定Dutyとする。図21に示すように初期張力Tsは、最も遅い速度モードVM4について大きな値とし、それ以外の速度モードVM1〜VM3については小さな値としている。前記の(5)式の関係から初期張力Tsが小さい速度モードVM1〜VM3においては、大きめの出力トルクMが出力されることとなる。ステップS610においては、ステップS545で算出した搬送速度VがパラメータテーブルPTから取得した制御移行搬送速度Vsを超えているか否かを判定する。そして、搬送速度Vが制御移行搬送速度Vsを超えている場合には、制御状態を中期制御状態に移行させる(ステップS615)。ステップS620においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)における搬送駆動ローラ51aの駆動が終了したか否かを判定する。そして、搬送駆動ローラ51aの駆動が終了している場合には、制御状態を後期制御状態に移行させる(S625)。以上により初期制御状態固有の処理が終了する。
ステップS630においては、設定Dutyが所定の下限値と上限値の間に入っているか否かを判定する。設定Dutyが下限値よりも小さい場合には、設定Dutyを下限値に修正する(ステップS635)。同様に、設定Dutyが上限値よりも大きい場合には、設定Dutyを上限値に修正する(ステップS640)。このようにすることにより、絶対値の異常に大きい設定Dutyとなることを防止することができ、RRモータ33の暴走を防止することができる。ステップS645においては、RRモータ制御部112が設定DutyのPWM信号をRRモータ33に出力し、ステップS540に戻る。ステップS540では、再度、微小時間Δtの経過を待ち、当該微小時間Δtにおける搬送速度V等に応じて以降の処理を実行させる。
次に、中期制御状態における処理を説明する。ステップS585において、現在の制御状態が中期制御状態であると判定されると、ステップS650において、ステップS545において算出した搬送速度Vにおいて指定張力Fを実現する出力トルクMおよびDutyを算出する。具体的には、ステップS545において算出した搬送速度Vを前記の(3)式に代入することによりロール静負荷Nを算出し、さらに前記の(7)式にロール静負荷Nおよび指定張力Fを代入することによりRRモータ33の出力トルクMを算出する。さらに、当該出力トルクを前記の(8)式に代入することにより、Dutyを算出することができる。算出されたDutyを設定Dutyとする。なお、前記(7)式によって出力トルクMを算出するにあたり、ステップS512にてNVRAM104から取得した紙端の位置xが使用される。従って、現在の紙端Pの位置に応じた用紙Pとプラテン55との摩擦抵抗力T2が作用する条件で、指定張力Fを実現する出力トルクMを算出することができる。
以上により中期制御状態固有の処理が終了し、ステップS620以降の処理を実行する。すなわち、設定Dutyが設定できると、ステップS620において、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)における搬送駆動ローラ51aの駆動が終了したか否かを判定する。そして、搬送駆動ローラ51aの駆動が終了している場合には、制御状態を後期制御状態に移行させる(ステップS625)。さらに、必要がある場合にはステップS635,S640で設定Dutyを修正し、最終的な設定DutyのPWM信号をステップS645にてRRモータ33に出力する。
次に、後期制御状態における処理を説明する。ステップS585において、現在の制御状態が後期制御状態であると判定されると、ステップS655において、ステップS545において算出した搬送速度Vにおいて指定張力Fを実現する出力トルクMおよびDutyを算出する。具体的には、ステップS545において算出した搬送速度Vを前記の(3)式に代入することによりロール静負荷Nを算出し、さらに前記の(7)式にロール静負荷Nおよび指定張力Fを代入することによりRRモータ33の出力トルクMを算出する。ここでもステップS512にてNVRAM104から取得した紙端の位置xが使用される。従って、現在の紙端Pの位置に応じた用紙Pとプラテン55との摩擦抵抗力T2が作用する条件で、指定張力Fを実現する出力トルクMを算出することができる。さらに、当該出力トルクを下記の(9)式に代入することにより、Dutyを算出する。そして、算出されたDutyを設定Dutyとする。
前記の(9)式においては、前記の(8)式で得られるDutyからパラメータテーブルPTから取得した自走時制動比bの割合だけ減少したDutyが算出されることとなる。このようにすることにより、自走時制動比bに応じた制動を行うことができる。以上により、後期制御状態固有の処理が完了し、ステップS630以降の処理を実行する。すなわち、必要がある場合にはステップS635,S640で設定Dutyを修正し、最終的な設定DutyをステップS645にてRRモータ33に出力する。
一方、ステップS530において、搬送速度V=0にて指定張力Fを実現するための出力トルクMが負であると判定された場合、すなわち張力Tを指定張力Fまで補うためにロール体RPを逆転方向に駆動させる場合の処理(以下、逆転制御処理と表記する。)について説明する。逆転制御処理も、所定のクロック信号に同期した微小時間Δtが経過するごとに、次の微小時間Δtの間にRRモータ制御部112がRRモータ33に出力するDutyを更新するループ処理である。ステップS660においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)によってPFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aを駆動させるまで待機する。そして、搬送駆動ローラ51aが駆動を開始すると同時にステップS665にて微小時間Δtの計測を開始し、当該微小時間Δtだけ待機する。なお、この間もRRモータ33のショートブレーキを継続する。正転制御処理では搬送駆動ローラ51aが駆動を開始の所定時間前から微小時間Δtを計測し当該微小時間Δtごとに設定Dutyを出力していたのに対して、逆転制御処理では搬送駆動ローラ51aが駆動を開始まで待機し、駆動開始と同時に微小時間Δtの計測を開始する点で相違している。
ステップS670においては、同期して行われる用紙搬送処理(ステップS410)においてPFモータ制御部111が搬送駆動ローラ51aの駆動を停止させたか否かを判定する。そして、停止させている場合には、逆転制御処理(ロール制御処理)を終了させ、RRモータ33にショートブレーキをかける(ステップS675)。一方、搬送駆動ローラ51aが駆動を継続している場合には、ステップS680において、ステップS545と同様に直前の微小時間Δtの間におけるロール体RPによる用紙Pの搬送速度Vを算出する。ステップS685では、ステップS680において算出した搬送速度Vにおいて指定張力Fを実現する出力トルクMおよびDutyをステップS605と同様の手順で算出する。そして、算出されたDutyを設定Dutyとし、当該設定DutyのPWM信号をRRモータ33に出力させる(ステップS690)。以上の処理が完了とすると、ステップS665に戻り、再度、微小時間Δtを経過させ、同様の処理を繰り返す。次に、以上説明したロール制御処理による動作について説明する。
図22A,22Bは、ロール制御処理によるRRモータ33の駆動速度の推移を、PFモータ53の駆動速度(駆動パターン)と対比して示している。図22Aは正転制御処理の動作例を示し、図22Bは逆転制御処理の動作例を示している。まず、正転制御処理の初期制御状態においては、PFモータ53の駆動よりも所定時間ta前から、初期張力Tsを実現するための設定DutyのPWM信号がRRモータ33に出力されることとなる。従って、PFモータ53よりも先にRRモータ33が正転方向に駆動することとなる。このように、RRモータ33をPFモータ53に先んじて駆動させておくことにより、前回、RRモータ33を停止させた際にギヤ輪列32(駆動部材)等に生じたバックラッシュ(遊び)を解消し、PFモータ53が駆動を開始する段階で適切な張力制御を実現させることができる。
例えば、各速度モードVM1〜VM3で駆動した場合のバックラッシュの量(解消させるために必要な搬送量)を調査しておき、PFモータ53が駆動を開始するときに、バックラッシュの量が解消されるだけの搬送量ΔLrr(図のハッチング面積相当。)となるように、初期張力Tsや制御移行搬送速度Vsを設定するのが望ましい。本実施形態では、最も遅い速度モードVM4について大きな初期張力Tsを設定し、それ以外の速度モードVM1〜VM3については小さな初期張力Tsを設定としている。前記の(5)式の関係から初期張力Tsが小さい速度モードVM1〜VM3においては、強い出力トルクM(第2駆動力,初期駆動力)が最初に出力されることとなる。これにより、速度モードVM1〜VM3においては素早くバックラッシュを解消しておくことができる。強い出力トルクMによりロール体RPの正転が促されるため、速度モードVM1〜VM3における急加速に対応(従動)することができる。
初期制御状態において、時間が経過していくと、RRモータ33の出力トルクMの大きさによってはロール体RPが能動的に正転を開始する場合もある。また、初期制御状態(搬送速度Vが制御移行搬送速度Vsに到達する前)において搬送駆動ローラ51aの駆動が開始した場合には、初期制御状態においてロール体RPが能動的に正転を開始することも考えられる。いずれにしても、時間が経過していくと、RRモータ33の正転方向の駆動速度が増加していき、ある段階で搬送速度Vが制御移行搬送速度Vsを超え、中期制御状態に移行することとなる。中期制御状態においては、指定張力Fを用紙Pに作用させるための出力トルクM(第1駆動力)がRRモータ33によって出力されるため、用紙Pに作用する張力Tを指定張力Fとすることができ、異常なスリップを防止することができる。また、紙端の位置xに応じて変動する抵抗力T2も考慮して、出力トルクM(第1駆動力)がRRモータ33によって出力されるため、紙端の位置xに応じた摩擦抵抗の変動に拘わらず、高精度の用紙Pの搬送を実現することができる。
なお、RRモータ33の駆動速度に基づいてRRモータ33の出力トルクMを設定しているわけではないため、ロール体RPによる搬送速度Vが速度モードVM1〜VM3において想定される最大の搬送速度上限Vuを超える場合もある。本実施形態では、中期制御状態および後期制御状態において、各速度モードVM1〜VM3に対応した搬送速度上限Vuの110%を超える搬送速度Vとなった場合には、強制的に設定Dutyを0とし、一時的に制動するようにしている。これにより、ロール体RPによる搬送が過剰となることにより、用紙Pに弛みが生じることが防止できる。中期制御状態をしばらく継続する間に、PFモータ53の駆動が停止し、後期制御状態に移行する。この後期制御状態においては、PFモータ53の駆動による用紙Pが引っ張られることはないため、ロール体RPが慣性により自走していると考えることができる。PFモータ53が駆動を停止しているにもかかわらず、ロール体RPが正転を継続すると、用紙Pに弛みが生じることとなる。本実施形態では、後期制御状態において前記の(7)式により設定Dutyを算出することにより、ロール体RPの自走を防止し、用紙Pの弛みを防止するようにしている。
前記の(9)式によれば、自走時制動比bの割合だけ軽減した正転方向の出力トルクM(第3駆動力)を設定することができる。すなわち、中期制御状態よりも正転方向の出力トルクMを控え目にすることにより、制動力を生じさせ、早期にロール体RPの自走を停止させることを図っている。この自走時制動比bは、速度モードVM1〜VM4に応じて異なる値が設定でき、本実施形態では高速なほど自走時制動比bが大きくなっている。高速なほど制動距離が大きくなるが、高速なほど自走時制動比bを大きくすることにより、高速な速度モードVM1,VM2での制動距離を抑えることができる。従って、RRモータ33の回転によって搬送される用紙Pの搬送量ΔLrrが、PFモータ53の回転によって搬送される用紙Pの搬送量ΔLpfに対して過剰となることが防止でき、用紙Pの弛みを防止することができる。
PFモータ53の駆動も停止し、RRモータ33の回転が制動されると、RRモータ33は次第に減速していき、次第にロール体RPによる搬送速度Vが制御終了搬送速度Vfを下回ることとなる。その段階で、正転制御処理を終了させ、RRモータ33にショートブレーキをかける。このショートブレーキは、次回のロール制御処理にて設定Dutyが出力されるまで維持されることとなる。ところで、初期制御状態や中期制御状態での搬送量ΔLrrが大きかった場合等には、後期制御状態における自走時制動比bによる制動では搬送量ΔLrrを十分に抑えることができないことも考えられる。そのため、本実施形態においては、ロール体RPによるロール制御処理開始からの搬送量ΔLrrが、同期して行われる用紙搬送処理の目標搬送量ΔLtに搬送量制限値αを前記(2)式に代入して得られた搬送量を加えた搬送量閾値よりも大きい場合にも、その時点でRRモータ33にショートブレーキをかけ、正転制御処理を終了させるようにしている。このようにすることにより、ロール体RPが減速する前の段階でも、RRモータ33の駆動を停止させ、過剰な搬送量ΔLrrを防止し、用紙Pの弛みを防止することができる。
一方、逆転制御処理においては、PFモータ53の駆動開始とともにRRモータ33により出力トルクMの逆転方向の出力が行われ、PFモータ53の駆動停止とともにRRモータ33により出力トルクMの逆転方向の出力が停止する。逆転制御処理の間においては、常時、指定張力Fを用紙Pに作用させるための出力トルクMがRRモータ33によって出力される。逆転制御処理においては、PFモータ53の駆動前にRRモータ33の駆動を行わないため、基本的にロール体RPの駆動は従動的となる。逆転制御処理は、搬送速度V=0にて指定張力Fを実現するための出力トルクMが負であると判定された場合に実行されるものであり、不足する張力Tを補うためにロール体RPを逆転方向に駆動させる出力トルクMを付与するための処理である。ロール体RPを逆転方向に駆動させる出力トルクMを与えた場合には、正転制御処理のように用紙Pの弛みが生じることはない。また、もともと低張力状態であるため、PFモータ53の駆動開始n先んじて、ロール体RPを駆動させ、バックラッシュを解消したり、ロール体RPが自走することによりPFモータ53の駆動をアシストする必要性も少ない。そのため、簡易な処理とすることができる。
以上説明したように、PFモータ53の駆動中と駆動直前と駆動直後においてのみロール制御処理を実行し、RRモータ33に0でない出力トルクMを出力させるようにしている。それ以外の期間においては、RRモータ33にはショートブレーキがかけられている。RRモータ33の駆動は、用紙Pの張力Tを調整し、搬送時のスリップ量を適正化させるために行っているが、PFモータ53が駆動せず用紙Pを搬送しない期間においては、そもそもスリップが発生することはなく、用紙Pの張力Tを調整する必要性がないと考えることができる。従って、PFモータ53の駆動中と駆動直前と駆動直後においてのみロール制御処理を実行することにより、適正な張力Tの調整を行いつつ、無駄な電力消費を抑えることができる。また、ロール制御処理非実行時にCPU101等のリソースを確保することも可能となる。
2−6.弛み取り処理
図23は、弛み取り処理(ステップS700)の流れを示している。ステップS705においては、RRモータ制御部112がRRモータ33をPID制御により逆転方向に所定時間駆動させ、所定の搬送速度Vで用紙Pを巻き取る動作を開始する。ステップS710では、制御部100は、RRモータ制御部112がRRモータ33に出力しているPWM信号のDuty(PID制御値の積分成分)を所定の時間周期で取得し、Dutyが所定の閾値を連続して超えた時間(周期×回数)が所定の閾値時間を超えた場合には、弛みが取れたと判断する。一方、RRモータ33を所定時間駆動させても、Dutyが所定の閾値を連続して超えた時間が閾値時間を上回ることがなかった場合には、弛み取り失敗であると判断する。例えば、ロール体RPが巻き方向が反対に取り付けられている場合や、誤って単票紙がセットされている場合には、RRモータ33を逆転方向に駆動させると、弛みが増大していくこととなり、Dutyが所定の閾値を超えず、弛み取り失敗であると判断することができる。弛み取り処理は、上述した印刷処理や測定処理の前に実行しておき、弛み取りが成功した場合にのみ印刷処理や測定処理が実行できるようにするのが望ましい。また、Dutyが異常に大きい場合に、例えば用紙Pが斜行していると判定してもよい。
2−7.変形例1
以上においては、用紙Pの搬送方向先頭側の紙端の位置xに応じて変動するプラテン55(吸引部55b)との摩擦抵抗を考慮してRRモータ33の出力トルクMを調整するものを例示したが、紙端の位置xに応じた他の調整を行うようにしてもよい。例えば、搬送された用紙Pの自重を考慮してRRモータ33の出力トルクMを調整するようにしてもよい。
図24は、排出部59から排出される用紙Pの様子を模式的に示している。同図に示すように、用紙Pの搬送方向先頭側の紙端の位置xが排出部59の下端の位置に達するまでは、用紙Pが排出部59の下面BPに支持される。ここで、排出部59の下面BPの水平面に対する角度をθとし、用紙Pの単位面積あたりの重さをρとし、重力加速度をgとすると、自重によって用紙Pの搬送方向に引っ張る力T3の大きさは、下記の(10)式によって表すことができる。
なお、用紙Pの単位面積あたりの重さρは用紙の種類ごとに用意される。また、用紙Pと下面BPとの間の摩擦係数をμ2とすると、用紙Pの自重によって用紙Pと下面BPとの間に作用する摩擦抵抗力T4は、下記の(11)式によって表すことができる。
用紙Pの搬送方向先頭側の紙端の位置xが排出部59の下端の位置x
2に達すると、前記の(10),(11)式のxにx
2を代入した力T3,T4が搬送方向に作用することとなる。さらに、用紙Pの搬送方向先頭側の紙端の位置xが排出部59の下端の位置
x 2 を超えると、超えた分の自重に起因する張力T5がそのまま用紙Pに作用することとなる。位置x
2を超えた分の自重に起因する張力T5は下記の(12)式によって表すことができる。
さらに、用紙Pの搬送方向先頭側の紙端が地面に達するときの位置をx3とすると、用紙Pの搬送方向先頭側の紙端が位置x3を超えた場合には、張力T5は下記の(13)式によって表すことができる。
紙端が地面に到達した場合には、位置x3を超えた分の自重については地面が支持するため、長さ(x3−x2)についての自重のみを考慮すればよい。以上説明したように用紙Pの搬送方向には上述した実施形態のものを含め力T1〜T5が作用することとなる。指定張力Fと各力T1〜T5との釣り合いにより、位置xに応じた下記の(14)式を得ることができる。
上述した実施形態における前記の(7)式の代わりに前記の(14)式を用いてRRモータ33の出力トルクMを算出するようにすれば、用紙Pの自重に応じた張力Tの調整を行うことができる。
2−8.変形例2
以上においては、RRモータ33の出力トルクMを調整し、用紙Pに作用する張力Tを指定張力Fとすることにより、適正なスリップ量を維持することとした。しかしながら、用紙Pの後方側の紙端がロール体RPから離脱した場合には、もはやRRモータ33の出力トルクMによって張力Tを調整することが不可能となる。同時に、ロール体RPの回転抵抗に起因する抵抗力T1も作用しなくなる(T1=0)。従って、用紙Pに作用する張力Tは下記の(15)式によって表されることとなる。
前記の(15)式が示すように、用紙PにはRRモータ33の出力トルクMとは無関係の張力Tが作用することとなる。基本的には、ロール体RPの回転抵抗T1から解放されるため、低張力状態で用紙Pが搬送されることとなり、搬送駆動ローラ51aと用紙Pとの間のスリップ量が減少することとなる。上述したとおり、搬送駆動ローラ51aと用紙Pとの間のスリップ量は用紙Pに作用する張力Tに比例すると考えることができるため、理想的な指定張力Fに調整された状態では、指定張力Fに比例するスリップ量が生じた上で目標搬送量ΔLtだけ用紙Pが搬送されるように、PFモータ53の駆動パターンが設定される。一方、指定張力Fへの調整ができず前記の(15)式の張力Tが作用する場合には、張力Tに比例するスリップ量が生じた上で目標搬送量ΔLtだけ用紙Pが搬送されるように、PFモータ53の駆動パターンを設定する必要がある。具体的には、図22A,22Bに示すPFモータ53の駆動パターンのハッチング面積(スリップがない場合の搬送量相当値)が、張力Tに対応する大きさとなるような駆動パターンを設定すればよい。
なお、用紙Pの後方側の紙端がロール体RPから離脱した状態では、ロール体RPが用紙Pに従動しなくなるため、PFモータ53が駆動するにも拘わらずRRモータ33についてのエンコーダカウンタ34bのカウント数Errが増加しない状態となる。したがって、用紙Pの後方側の紙端がロール体RPから離脱した状態を検知し、その後においては、指定張力Fではなく前記の(15)式の張力Tを前提としたPFモータ53の駆動パターンに変えることができる。
また、上述の実施の形態におけるプリンタ10は、スキャナ装置やコピー装置のような、複合的な機器の一部であってもよい。さらに、上述の実施の形態においては、インクジェット方式のプリンタ10に関して説明している。しかしながら、プリンタ10としては、流体を噴射可能なものであれば、インクジェット方式のプリンタには限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンタ、トナー方式のプリンタ、ドットインパクト方式のプリンタ等、種々のプリンタに対して、本発明を適用することが可能である。