細胞が癌化する過程で核の大きさや核・細胞質比(N/C比)やクロマチンパターンなどに関して様々な細胞の形態の変化が見られる。しかし、これまで用いられている方法では、細胞以外の組織内の構成要素などによるノイズの影響を排除できず、癌細胞であるかどうかを正確に判定することが困難な場合がある。
しかも癌細胞の集塊または癌細胞を含む癌組織の形態は多様であるため、組織の形状のパターン認識から癌組織を特定することは困難である。また、組織を染色した場合、癌組織も正常な組織と同様に染まるため、染色の度合いによって癌組織を特定することも困難である。例えば、HE(Hematoxylin Eosin)染色の場合には、原理的に癌細胞の核は正常な細胞の核と同様に染まる。
また、非特許文献7および8に記載の解析手法では、癌組織の画像から三次元像を再構築し、その後、ベッチ数を用いて癌組織の三次元構造を類推している。それゆえ、画像処理の量が非常に多くなり、大量にしかも短時間で癌の判定を行うという目的のために利用することは困難である。すなわち、非特許文献7および8に記載の解析手法は、癌判定の手法としては実用的ではない。
また、非特許文献7および8に記載の解析手法は、癌組織、特に腺癌の構造物としての形態を解析するものであり、組織が癌化した結果生じる比較的大きな変化を解析するものである。そのため、当該解析手法では、癌の本質的な特徴を捉えることは困難であり、癌の判定を精度高く行うことは困難である。特に、当該解析手法では、軽度な異型性の癌を見逃す可能性が高いと考えられる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、組織の画像を解析することにより、当該画像に癌組織の像が含まれているかどうかを精度高く判定することができる画像解析装置を提供することにある。
また、本発明は、生体組織における癌の判定のみならず、他の組織における構成の判定にも適用できる。そもそも組織とは、複数種類の所定の構成要素が、一定のパターンで集合した構造単位を意味している。例えば、組織の例として、同一の形態・機能をもつ細胞の集まりで構成される生体組織や、含まれる結晶粒の大きさ・形・配列などにより、その構成が決まる鉱物組織、などを挙げることができる。
組織は、その構成のあり方により全体が持つ性質が大きく異なる。組織の構成のあり方は、顕微鏡などを用いた目視により区別される。しかし、この手法では、病理診断と同様に、観察者の主観が結果に強く反映されるため、その技量・経験によって判定が異なる場合がありうる。そのため、組織のあり方を客観的な数値に置き換え判断することができれば、応用上非常に有用である。
本発明の目的は、上位概念的に捉えれば、組織の画像を解析することにより、当該画像に写った組織の構成を判定することができる画像解析装置を提供することにあると言える。
本発明に係る画像解析装置は、上記の課題を解決するために、組織を撮像した撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される、1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、上記構成成分の外縁によって囲まれた空間の数とを算出する成分・空間数算出手段と、上記成分・空間数算出手段が算出した連結成分の数と空間の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する比較値算出手段と、上記比較値算出手段が算出した比較値と所定の基準値とを比較することにより、上記撮像画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴としている。
本発明に係る画像解析方法は、上記の課題を解決するために、組織を撮像した撮像画像を解析する画像解析装置における画像解析方法であって、上記撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに接触することによって形成される、1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、上記構成成分の外縁によって囲まれた空間の数とを算出する成分・空間数算出工程と、上記成分・空間数算出工程において算出された連結成分の数と空間の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する比較値算出工程と、上記比較値算出工程において算出された比較値が所定の基準値よりも大きい場合に、上記撮像画像に癌組織の像が含まれていると判定する判定工程とを含むことを特徴としている。
組織が癌化する過程において、組織を構成する細胞群が無秩序に増殖することにより、他の細胞群と接触する可能性が高まる。本発明の発明者らは、このような変化を、上記空間の数と上記連結成分の数との違いを示す比較値を用いて数値化することにより癌組織の判定ができることを見出した。なお、上記空間とは、二次元平面である撮像画像における空間である。
上記の構成によれば、成分・空間数算出手段は、組織を撮像した撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される、1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、上記構成成分の外縁によって囲まれた空間(穴)の数とを算出する。数学的に説明すれば、この処理には、撮像画像についてのベッチ数を求める処理が含まれる。連結成分の数が0次元のベッチ数に対応し、空間の数が1次元のベッチ数に対応している。それゆえ、成分・空間数算出手段は、例えば、組織を撮像した撮像画像についての0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する手段であると言える。
画像からベッチ数を算出するためのプログラムは公知であり、そのプログラムを実行する装置を成分・空間数算出手段として用いればよい。
比較値算出手段は、成分・空間数算出手段が算出した連結成分の数と空間(穴)の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する。この比較値は、例えば、空間の数と連結成分の数との比または両者の差である。また、比較値は、空間の数と連結成分の数との関数が示す値であってもよい。
そして、判定手段は、比較値算出手段が算出した比較値と所定の基準値とを比較することにより、組織の撮像画像に癌組織(悪性腫瘍)の像が含まれているかどうかを判定する。例えば、判定手段は、比較値算出手段が算出した比較値が所定の基準値よりも大きい場合に、上記撮像画像に癌組織の像が含まれていると判定する。この所定の基準値は、正常な組織における比較値と、癌細胞を含む組織における比較値とを統計的に区別するための基準値であり、当業者によって適宜設定される値である。
連結成分の数に対して空間の数が増加するという現象は、分化型の癌組織が発生する過程に特有の現象であるため、上記の構成により、組織の画像を用いて当該組織に分化型の癌組織が存在しているかどうかを精度高く判定することができる。
本発明に係る画像解析装置は、上記の課題を解決するために、組織を撮像した撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分を外縁とする空間の数を算出する空間数算出手段と、上記空間数算出手段が算出した空間の数と所定の基準値とを比較することにより、上記撮像画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴としている。
本発明に係る画像解析方法は、上記の課題を解決するために、組織を撮像した撮像画像を解析する画像解析装置における画像解析方法であって、上記撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁によって囲まれた空間の数を算出する空間数算出工程と、上記空間数算出工程において算出された空間の数と所定の基準値とを比較することにより、上記撮像画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する判定工程とを含むことを特徴としている。
組織が癌化する過程において、組織を構成する細胞群が無秩序に増殖することにより、他の細胞群と接触する可能性が高まる。本発明の発明者らは、このような変化を、上記空間の数の変化を捉えることにより癌組織の判定ができることを見出した。なお、上記空間とは、二次元平面である撮像画像における空間である。
空間の数が増加するのは、分化型の癌組織の場合であり、空間の数が減少するのは、低分化型の癌組織の場合である。なお、上記空間とは、二次元平面である撮像画像における空間である。
上記の構成によれば、空間数算出手段は、組織を撮像した撮像画像を所定の基準値を境として二値化した撮像画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁によって囲まれた空間(穴)の数を算出する。数学的に説明すれば、この処理には、撮像画像についての二次元のベッチ数を求める処理が含まれる。それゆえ、空間数算出手段は、例えば、組織を撮像した撮像画像についての二次元のベッチ数を算出する手段であると言える。
判定手段は、空間数算出手段が算出した空間の数と所定の基準値とを比較した結果に基づいて、組織の撮像画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。この所定の基準値は、正常な組織における空間の数と、癌細胞を含む組織における空間の数とを統計的に区別するための基準値であり、当業者によって適宜設定される値である。
空間の数が顕著に増加するという現象は、分化型の癌化の過程に特有の現象であり、空間の数が顕著に減少するという現象は、低分化型の癌化の過程に特有の現象であるため、上記の構成により、組織の画像を用いて当該組織に癌組織が存在しているかどうかを精度高く判定することができる。
本発明に係る画像解析装置は、組織を撮像した撮像画像を粗視化した粗視化画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される、1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、上記構成成分の外縁によって囲まれた空間の数とを算出する成分・空間数算出手段と、上記成分・空間数算出手段が算出した連結成分の数と空間の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する比較値算出手段と、上記比較値算出手段が算出した比較値と所定の基準値とを比較することにより、上記撮像画像に写った組織の構成を判定する判定手段とを備えることを特徴としている。
上記組織とは、複数種類の構成要素が、一定のパターンで集合した構造単位を意味している。組織の構成は、構成要素の大きさ・形・配列などにより決まる。例えば、鉱物組織では、構成要素としての結晶粒の大きさ・形・配列などにより、当該鉱物組織の構成が決まる。組織の構成により組織全体が持つ性質が大きく異なるため、組織の構成を判定することで、当該組織の性質を判定することができる。
本発明の発明者らは、組織の構成を、上記空間の数と上記連結成分の数との違いを示す比較値を用いて数値化することにより判定ができることを見出した。なお、上記空間とは、二次元平面である撮像画像における空間である。
上記の構成によれば、成分・空間数算出手段は、組織を撮像した撮像画像を粗視化した粗視化画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される、1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、上記構成成分の外縁によって囲まれた空間(穴)の数とを算出する。数学的に説明すれば、この処理には、粗視化画像についてのベッチ数を求める処理が含まれる。連結成分の数が0次元のベッチ数に対応し、空間の数が1次元のベッチ数に対応している。それゆえ、成分・空間数算出手段は、例えば、粗視化画像についての0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する手段であると言える。
画像からベッチ数を算出するためのプログラムは公知であり、そのプログラムを実行する装置を成分・空間数算出手段として用いればよい。
比較値算出手段は、成分・空間数算出手段が算出した連結成分の数と空間(穴)の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する。この比較値は、例えば、空間の数と連結成分の数との比または両者の差である。また、比較値は、空間の数と連結成分の数との関数が示す値であってもよい。
そして、判定手段は、比較値算出手段が算出した比較値と所定の基準値とを比較することにより、撮像画像に写った組織の構成を判定する。
それゆえ、物理学的または化学的な解析を行わなくとも、組織の画像を用いて当該組織の構成を判定することができる。
本発明の実施の一形態について図1〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
(本発明の技術思想)
組織(tissue)を撮像した撮像画像を解析することにより、当該組織が癌化しているかどうかを判定することが本発明の目的である。そのために、組織の癌化に伴う細胞の大きさ、形状または位置関係に基づいて組織が癌化しているかどうかを判定できるかどうかについて本発明の発明者らは検討を重ねた。なお、生物学における組織とは、何種類かの決まった細胞が一定のパターンとして集合した構造の単位を意味し、この組織は全体としてひとつのまとまった役割を有している。
<癌化の過程における形態変化>
ここで、正常な組織が癌化する過程について説明する。正常な細胞は、組織が新しい細胞を必要とするときにのみ成長および分裂するよう遺伝子レベルで制御されている。すなわち、通常、細胞が死んだり欠損した場合に、当該細胞に置き換わる新しい細胞が発生する。
ところが、特定の遺伝子に突然変異が生じると、上述の成長・分裂のプロセスの秩序が乱れ、細胞が過剰に成長および分裂するようになる。このようにして生じた過剰な細胞は組織の塊を形成し、腫瘍または新生物と呼ばれるものになる。この中で悪性のものを癌と呼ぶ。
形態観察の立場から見た場合、正常な組織は、複数の段階を経て癌組織に変化する。まず、細胞分裂が促進され、細胞が増殖することにより、通常よりも細胞数が増える過形成が起こる。次に、形態が正常な組織では見られない異常な状態になる異形成が起こる。この異形成には、軽度の異形成と高度の異形成とに分類される。高度の異形成がさらに進行して最終的に癌組織になる。
ところで生物は、1個の受精卵から発生を開始し、当初は形態的機能的な違いが見られない。その後、それぞれの細胞はその組織固有の形態および機能を有するものへと変化していく。この形態的、機能的な細胞の変化を分化という。癌細胞は、幼若化/脱分化するという性質がある。癌はその分化度の違いによって、近辺の組織と形態的に似た部分を残している高分化型とそうでない低分化型癌と大きく二つに分類できる。
<形態変化の数学的表現>
このような癌化の過程における組織の形態の変化を、ホモロジーの概念をより広く考える事で、数学的に捉えることを、本発明の発明者らは試みた。ホモロジーとは、図形の性質を代数に置き換えて、図形の結合などを計算しやすくする数学の一分野である。本発明の発明者らは、ホモロジーの中でも特にベッチ数に着目した。
ベッチ数とは、図形の形状には関係しないで、図形の接触と分離とにだけ関係するトポロジカルな示唆数である。q次特異ホモロジー群が有限生成のとき、このq次特異ホモロジー群は、自由アーベル群と有限アーベル群との直和に分けられる。この自由アーベル群の階数をベッチ数という。
ベッチ数は、二次元の場合、連結成分の数(0次元のベッチ数)と、当該連結成分が外縁となる空間、すなわち連結成分中に存在する“穴”の数(1次元のベッチ数)との数字の組を意味する。ここで連結成分とは、その任意の異なる二点を連続な線で結べる図形を意味する。
図2の(a)において、符号21a〜24aで示す4つの構成成分が示されている。これらの構成成分21a〜24aは、生理学的な役割をそれぞれ持った細胞の集合であり、境界で仕切られた領域内に存在している。なお、構成成分21a〜23aは、1つの細胞である場合もある。
これら構成成分21a〜24aは、他の構成成分と機能的に異なっているため、互いに離れて存在している。またお互いの役割が均一であるので、画像として二値化した場合それぞれ1つの構成成分からなる連結成分となる。また、その機能を果たすために外部との接触口である“穴”は一つ程度存在すると考えられる。それゆえ、構成成分21a〜24aは、それぞれベッチ数(1,1)であると考えられる。従って、同図の(a)に示す組織の場合、連結成分の数(一次元のベッチ数)は(最外縁もひとつの連結成分であるので)4であり、構成成分の外縁によって囲まれる穴(符号25〜28で示す)の数(二次元のベッチ数)は4である。ゆえに、穴の数と連結成分の数との比は1となる。
なお、図2の(a)に示す構成成分21a〜23aは、その内部に穴25〜27を有する環状である。この環を形成する部分が「構成成分の外縁」に相当する。穴25〜27が存在しない場合、構成成分21a〜23aの二次元のベッチ数は0である。図2の(a)では、構成成分21a〜23aの内部に、穴25〜27を形成する円が描かれているが、面を線のように細くする、いわゆる連続変形を行えば、構成成分21a〜23aは、それぞれ1つの円と見なすことができる。
同図の(b)には、4つの構成成分21b〜24bが示されている。これは、過形成が起きたため、構成成分同士で結合および圧迫し、異形成が起きている事を模式的に示している。構成成分21b〜24bは、その外縁が互いに接触しており、一連の外縁を有する1つの連結成分として存在している。従って、同図の(b)に示す組織の場合、連結成分の数(0次元のベッチ数)は1であり、構成成分の外縁によって囲まれる穴(符号29〜35で示す)の数(1次元のベッチ数)は7+αである。αは、構成成分内において背景の汚れ(腫瘍性背景(tumor diathesis))が生じることにより穴の数の増加分である。ゆえに、穴の数と連結成分の数との比は7+αとなる。
ベッチ数を算出する場合には、背景の汚れに由来する境界線によって形成される像も構成成分のひとつとして認識される。この像は、通常、当該像を含む構成成分の外縁と接しているため、当該像が存在していても連結成分の数が増える可能性は少ない。
また、背景の汚れに由来する像が存在する場合も、画像を二値化しているので当該像は構成成分のひとつ(または連結成分の一部)として認識されるため、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を算出するという処理を行うことには変わりはない。
このように分化型の癌組織の場合には、組織の画像から算出された1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を予め設定された基準値と比較することにより当該画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定することができる。
一方、図3に示す低分化型の癌組織の場合には、細胞群を区切る境界線は見られず、細胞核(符号51〜53で示す)のみが散在するような画像になる。これらの細胞核は一つの連結成分と考えられる。これらは互いに離れているため、連結成分の数(0次元のベッチ数)は3である。細胞核は染色すれば単一に染まるため、それを外縁とする空間はない。すなわち穴の数(1次元のベッチ数)は0である。
この場合、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比は0になる。当該比が0になることは、正常な組織ではまず起こらないため、当該比が0または非常に小さくなった場合には、撮像画像に低分化型癌組織の像が含まれていると判定してもよい。
上述の説明では、組織が癌化する過程において、0次元のベッチ数と1次元のベッチ数との違いが大きくなることを数値化するために1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を用いているが、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との差、あるいはその特徴を示す関数の値を指標として癌の判定を行ってもよい。
また、実施の形態2において詳細に説明するが、1次元のベッチ数(穴の数)のみを、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比の値とは独立の判定基準として使用し、癌の判定を行うこともできる。
さらに、上記比(または差に代表される関数の値)による判定と上記1次元のベッチ数の大小による判定とを組み合わせてもよい。この場合、いずれかの判定において癌が含まれているとの結果が出た場合に癌が含まれているとの判定結果を出力すればよい。
このように本発明は、結局、組み合わせ的不変計量法を用いて、組織構成の分類を試みたという事になる。組み合わせ的不変計量法とは、組み合わせ的不変量を算出する数学的手法である。換言すれば、組み合わせ的不変計量法とは、組織の構成要素の隣接部同士の関係を網羅的に調べ、その関係を代数的操作により整理した上で不変量を定義し、組織の分類を行うことである。
本発明では、組み合わせ的不変量として、ベッチ数・その比などのホモロジー的な指標(不変量)を計量し、その視点から組織を分類している。ホモロジーは「組み合わせ的(位相幾何)不変量」のひとつとして位置付けることができる。
(癌判定装置1の構成)
図1は、癌判定装置(画像解析装置)1の構成を示す概略図である。同図に示すように、癌判定装置1は、画像取得部2、記憶部3、画像解析部(画像解析装置)4、表示制御部5、表示部6および一次記憶部7を備えている。
画像取得部2は、外部の装置(例えば、撮像装置)から組織を撮像した撮像画像(以下、組織画像と称する)を取得し、取得した組織画像を記憶部3に格納する。上記組織画像は、染色された組織を適当な倍率で撮像した画像である。なお、後述する倍率は、全て対物レンズの倍率であり、接眼レンズの倍率は10倍である。それゆえ、対物レンズの倍率を10倍したものが実際の倍率である。
組織の染色方法は、特に限定されず、例えば、HE(Hematoxylin-Eosin)染色を行えばよい。HE染色では、細胞核および細胞質が染色され、細胞および細胞構造の全体像を把握することができる。染色の状態と管理が適切であれば、標本を永久保存することができる。
記憶部3は、画像取得部2が取得した組織画像とともに、画像解析部4が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。記憶部3は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。
一次記憶部7は、上述の各種プログラムを実行する過程でデータを一時的に保持するための作業領域として使用されるものであり、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置によって構成される。
表示制御部5は、表示部6を制御することにより、画像解析部4の判定結果等を表示部6に表示する。
表示部6は、画像解析部4の判定結果等を表示する表示装置であり、例えば液晶ディスプレイである。
なお、癌判定装置1は、ユーザの操作を受け付ける操作部(例えば、マウス、キーボード)を備えているが、本発明の特徴点とは直接関係ないため操作部は図示していない。
(画像解析部4の構成)
画像解析部4は、画像取得部2が取得した組織画像を解析することにより、当該組織画像に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。この画像解析部4は、画像分割部(画像分割手段)41、ベッチ数算出部(成分・空間数算出手段)42、比較値算出部(比較値算出手段)43および判定部(判定手段)44を備えている。
画像分割部41は、画像取得部2が取得した組織画像を所定の大きさの分割領域に分割する。
ベッチ数算出部42は、上記組織画像を所定の基準値を境として二値化し、二値化した組織画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される1つ以上の構成成分の集合である連結成分の数と、連結成分に含まれている構成成分の外縁によって囲まれた穴の数(空間の数)とを、画像分割部41が生成した分割領域ごとに算出する。上記穴は、1つ以上の構成成分の外縁の少なくとも一部(構成成分が1つの場合には、その構成成分の外縁の全部)をその外縁として有している開口部である。換言すれば、構成成分の外縁によって囲まれた穴には、1つの構成成分がその内部に有する穴と、互いに連結した複数の構成成分(すなわち、連結成分に含まれる複数の構成成分)がそれぞれ有する外縁によって囲まれた穴とが含まれる。
数学的に説明すれば、ベッチ数算出部42は、上記組織画像についての0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する。連結成分の数が0次元のベッチ数に相当し、穴の数が1次元のベッチ数に相当する。
また、ベッチ数算出部42は、粗視化した撮像画像を、ホモロジーの概念を含む数理手法の一つである組み合わせ的不変計量法を用いて処理することにより、上記連結成分の数および上記空間の数を算出するとも表現できる。
ベッチ数算出部42として、既存のプログラムを用いることができ、そのプログラムの1つとしてCHomPを挙げることができる。CHomPは、GNU(General Public License)に準拠したフリーウェアであり、ホームページ(http://chomp.rutgers.edu/)からダウンロードできる。画像に関する0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出できるプログラムであれば、CHomP以外のプログラムを用いてもよい。
また、組織画像を二値化するための所定の基準値(以下、二値化基準値と称する)は、予め記憶部3に格納されていればよい。
この二値化基準値は、組織画像に含まれる構成成分の外縁を検出する上で重要である。二値化基準値より大きい輝度値を有する画素は白になり、二値化基準値より小さい輝度値を有する画素は黒になるため、二値化基準値を大きく設定し過ぎると、二値化された組織画像は境界線が強調され過ぎた多い黒っぽい画像になる。一方、二値化基準値を小さく設定し過ぎると、二値化された組織画像は、境界線の少ない白っぽい画像になる。
それゆえ、構成成分の外縁が適切に検出できるように二値化基準値を設定することが望まれる。この二値化基準値は、組織の染色の程度に応じて変更してもよい。すなわち、解析対象の標本に関するインターナル・スタンダードを設定し、そのインターナル・スタンダードをもとに二値化基準値を設定してもよい。
比較値算出部43は、ベッチ数算出部42が算出した連結成分の数と空間の数とがどの程度異なるのかを示す比較値を算出する。具体的には、比較値算出部43は、比較値として、上記空間の数と上記連結成分の数との比を算出する。
判定部44は、比較値算出部43が算出した比較値と所定の基準値(以下、判定基準値と称する)とを比較することにより、上記組織画像に癌組織の像が含まれているかどうかを分割領域ごとに判定する。上記判定基準値は、正常な組織における比較値と、癌細胞を含む組織における比較値とを統計的に区別するための基準値であり、当業者によって適宜設定される値である。なお、判定基準値を複数段階設け、判定部44に、組織画像に癌組織の像が含まれているかどうかの判定を段階的に行わせてもよい。
(癌判定装置1における処理の流れ)
次に、癌判定装置1における処理の流れの一例について図4を参照しつつ説明する。図4は、癌判定装置1における処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、組織画像は既に記憶部3に格納されているものとして説明する。
まず、画像分割部41は、記憶部3から組織画像を取得し、取得した組織画像を所定の大きさの領域に分割することにより分割領域を生成する(S1)。
図5は、組織画像の一例を示す図であり、図6は、その組織画像を5×5個の分割領域に分割した状態を示す図である。組織画像は、図5に示すように、例えば、10倍(対物レンズ)の倍率で撮像されたものである。分割領域は、例えば、250×200μmの区画であり、組織画像が10倍の倍率で撮像されたものならば、5×5個の分割領域が生成される。なお、図6において、癌組織が含まれていると判定された分割領域には×が示されている。
組織画像の撮像倍率は10倍に限定されず、当業者によって適宜設定されればよい。図7の(a)〜(c)は、異なる撮像倍率で撮像された組織画像を示す図である。同図の(a)は10倍、同図の(b)は20倍、同図の(c)は40倍(対物)の組織画像を示している。20倍の組織画像の場合、分割領域は125×100μmであり、40倍の組織画像の場合、分割領域は62.5×50μmである。図7の(a)〜(c)には、100μm、100μm、50μmの縮尺を示すバー71・72・73がそれぞれ示されている。
組織画像の撮像倍率を上げ過ぎたり下げ過ぎたりすると、正常な組織をも癌と判断する場合もあり、判断が適切に行なわれるか明らかではない。それゆえ、組織画像の撮像倍率を適切に選択することが好ましく、当該撮像倍率は対物10〜20倍程度が好ましい。すなわち、組織画像は、組織に含まれる複数の細胞の形状を視認できる倍率で撮像されたものである。
画像分割部41は、生成した分割領域を示す領域情報を、組織画像と対応付けてベッチ数算出部42へ出力する。
ベッチ数算出部42は、まず、組織画像を二値化する。図8は、二値化された組織画像の一例を示す図である。画像データは画素(ピクセル:pixel)と呼ばれる微小な正方形を多数用いて、その正方形上の光強度を決めることで各種図形を表現している(ビットマップ形式)。二値化するとは、この光強度がある値以上であれば黒(計算機では1と認識)、以下であるならば白(計算機では0と認識)することである。これを方眼紙上(座標平面上)に移してみると、各正方形の頂点に座標が定まる。隣接している正方形が同じ数(1か0)であるか否かにより結合・分離を判定することにすれば、二値化された画像において、連結している図形を座標の組みとして表現できる。この表現が得られれば、ホモロジーの分野で一般的に行なわれる手法により、ベッチ数は計算できる。
ベッチ数算出部42は、受け取った領域情報が示す分割領域ごとに0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する(S2)。ベッチ数算出部42は、算出した0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを比較値算出部43へ出力する。
比較値算出部43は、ベッチ数算出部42から出力された1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を分割領域ごとに算出し、算出した比の値を分割領域を特定する情報と対応付けて判定部44へ出力する(S3)。
判定部44は、比較値算出部43から出力された分割領域ごとの比の値と判定基準値とを比較する。この判定基準値は、正常な組織が示す比の値の上限または下限を示すひとつの数値であってもよいし、正常な組織が示す比の値の範囲を示す上限値と下限値との組であってもよい。
高分化型の癌組織を判定する場合には、判定基準値として、正常な組織が示す比の値の上限値を用いればよい。低分化型の癌組織を判定する場合には、判定基準値として、正常な組織が示す比の値の下限値を用いればよい。高分化型であるか低分化型であるかを予め区別することなく判定する場合には、判定基準値として、正常な組織が示す比の値の範囲を示すものを用いればよい。
判定部44は、比較値算出部43から出力された比の値が上記上限値よりも大きい場合、または、上記比の値が上記下限値よりも小さい場合、当該比の値と対応付けられた分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する(S4)。判定部44は、判定結果を表示制御部5へ出力する。
表示制御部5は、判定部44から出力された判定結果を表示部6に表示する(S5)。判定結果の表示方法として、図6に示すように、組織画像の各分割領域に対して、当該分割領域に癌組織の像が含まれていることを示す図形(例えば、×)を表示してもよいし、癌組織の像が含まれている分割領域を正常な分割領域とは異なる色で示してもよい。
また、表示部6に表示された各分割領域をクリックすることにより、当該分割領域のベッチ数およびその比が表示されるようにしてもよい。また、組織画像全体に対する、癌を含むと判定された分割領域の割合を表示してもよい。
(癌判定装置1の効果)
<病理医の負担の軽減>
現状では病理医の絶対数は診断に必要な症例数と比較して不足している。この為、多数の診断を短時間で行わなければならない。癌判定装置1では、組織画像を用いて癌の診断を簡便に行うことができるため、現在の医療現場で病理医が診断に要する時間および労力を相当程度削減できる。よって、少数の病理医に作業が集中する際に生ずるヒューマンエラーを防止することができる。
<判断の標準化>
本発明では、ベッチ数という数学的に与えられる客観的数値を基に、判断を行なっている。現状では病理医の熟練度により病院間に診断結果の格差が生じ問題にもなっているが、本発明により判断基準に対する標準化を図ることが可能である。
<判定速度および判定精度>
癌判定装置1では、1つの組織画像を用いた癌の判定を約0.5秒(CPUは、Intel Dual-Core 1.90GHzを使用)で行うことができる。従来の癌判定装置では、多数の画像を用いて3次元的に解析を行い、典型例とのパターン認識を行っているため、非常に時間(例えば、5〜6時間)がかかるが、本発明は、この問題を解決できる。
また、本発明では、癌の見逃しが非常に少ない。これは、本発明が癌の本質的な特徴を捉えているからである。すなわち、本発明では、生体組織内の構成要素の個性を、組織画像を粗視化(例えば、二値化)することにより消去し、各構成要素間の接触・離散の状態、特に、細胞の無秩序な増殖に伴う、周囲の細胞との圧迫状態を数値として抽出している。このような細胞間の圧迫こそが癌の本質的な特徴であり、本発明は、この特徴を捉えているのである。
それゆえ、本発明では、従来の手法に比べて判定精度が高い。実際に、80件について判定を行った結果、偽陰性(見逃し)は、1件もなかった。
(変更例)
比較値算出部43は、二次元のベッチ数と一次元のベッチ数との差を算出し、判定部44は、算出された差の値と判定基準値とを比較し、差の値が判定基準値よりも大きい場合に当該差の値と対応付けられた分割領域に癌組織の像が含まれていると判定してもよい。ただし、上述したように比の値を用いる方が、癌の判定精度は高まる。
また、ベッチ数算出部42は、組織画像全体からベッチ数を算出してもよい。この場合、画像分割部41における処理は不要である。組織画像全体にわたって均等に癌組織の像が分散している場合には、組織画像全体からベッチ数を算出しても精度の高い判定を行うことができる。
また、判定部44は、0次元のベッチ数と1次元のベッチ数との比が0または非常に小さくなった場合(すなわち、上記比の値が所定の基準値よりも小さくなった場合)に、当該比が算出された分割領域に低分化型の癌組織の像が含まれていると判定してもよい。
本発明の他の実施形態について図9〜図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、上述の実施形態と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
(本発明の技術思想)
上述したように、細胞が癌化する過程において、0次元のベッチ数と1次元のベッチ数との違いが大きくなる。この現象は、1次元のベッチ数の顕著な増加または減少を伴うものであるため、1次元のベッチ数の変化を捉えることで癌の判定ができることを、本発明の発明者らは見出した。本実施形態は、このような技術思想に基づくものである。
図9は、本実施形態の癌判定装置(画像解析装置)10の構成を示す概略図である。同図に示すように、癌判定装置10は、画像解析部(画像解析装置)11を備えている点において癌判定装置1と異なっている。この画像解析部11では、1次元のベッチ数である穴の数と判定基準値との比較結果に基づいて癌の判定が行われる。
(画像解析部11の構成)
画像解析部11は、画像分割部(画像分割手段)41、ベッチ数算出部(成分・空間数算出手段)12および判定部(判定手段)13を備えている。
ベッチ数算出部12は、画像取得部2が取得した組織画像を所定の基準値を境として二値化し、二値化した組織画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分を外縁とする空間(穴)の数を、画像分割部41が生成した分割領域ごとに算出する。数学的に説明すれば、ベッチ数算出部12は、上記組織画像についての1次元のベッチ数を分割領域ごとに算出する。
また、ベッチ数算出部12は、粗視化した撮像画像を、ホモロジーの概念を含む数理手法の一つである組み合わせ的不変計量法を用いて処理することにより、上記空間の数を算出するとも表現できる。
判定部13は、ベッチ数算出部12が算出した1次元のベッチ数と所定の基準値(以下、判定基準値と称する)とを比較することにより、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。上記判定基準値は、正常な組織における1次元のベッチ数と、癌細胞を含む組織における1次元のベッチ数とを統計的に区別するための基準値であり、当業者によって適宜設定される値である。ここでは、判定基準値として、正常な組織が示す1次元のベッチ数の範囲を示すものを用いる。
つまり判定部13は、ベッチ数算出部12が算出した1次元のベッチ数が、判定基準値が示す範囲から外れている場合に、当該1次元のベッチ数が算出された分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する。
なお、判定基準値を複数段階設け、判定部13に、組織画像に癌組織の像が含まれているかどうかの判定を段階的に行わせてもよい。
(癌判定装置10における処理の流れ)
次に、癌判定装置10における処理の流れの一例について図10を参照しつつ説明する。図10は、癌判定装置10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、組織画像は既に記憶部3に格納されているものとして説明する。
まず、画像分割部41は、記憶部3から組織画像を取得し、取得した組織画像を所定の大きさの分割領域に分割することにより分割領域を生成する(S11)。画像分割部41は、生成した分割領域を示す領域情報を、組織画像と対応付けてベッチ数算出部12へ出力する。
ベッチ数算出部12は、受け取った領域情報が示す分割領域ごとに1次元のベッチ数を算出する(S12)。より具体的には、ベッチ数算出部42は、まず、二値化基準値を境として組織画像を二値化し、二値化した組織画像の分割領域ごとに1次元のベッチ数を算出する。ベッチ数算出部12は、算出した1次元のベッチ数を判定部13へ出力する。
判定部13は、ベッチ数算出部12から出力された1次元のベッチ数が判定基準値が示す範囲から外れている場合、当該1次元のベッチ数と対応付けられた分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する(S13)。判定部13は、判定結果を表示制御部5へ出力する。
表示制御部5は、判定部44から出力された判定結果を表示部6に表示する(S14)。
なお、分化型の癌組織の場合、1次元のベッチ数は、判定基準値よりも大きくなり、低分化型の癌組織の場合、1次元のベッチ数は、判定基準値よりも小さくなる。換言すれば、分化型の癌組織の場合に、1次元のベッチ数が判定基準値よりも大きくなり、低分化型の癌組織の場合に、1次元のベッチ数が判定基準値よりも小さくなるように当該判定基準を設定する。この性質を利用して、画像内に分化型の癌組織が含まれているか、低分化型の癌組織が含まれているかを示す判定結果を表示してもよい。
(癌判定装置10の効果)
以上のように、癌判定装置10では、組織画像から算出した1次元のベッチ数(穴の数)に基づいて癌の判定を行う。それゆえ、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を算出する癌判定装置1よりも少ない処理量で癌の判定を行うことができる。
また、分化型の癌組織が含まれているか、低分化型の癌組織が含まれているかを精度高く判定することができる。
〔解析結果例1〕
ここでは、癌判定装置1を用いて癌の判定を行った結果の一例を示す。試料として、癌細胞を含む大腸組織を、患者の承諾を得たうえで取得した。この大腸組織をHE染色し、顕微鏡標本を作製した。HE染色のための試薬は市販の物を使用した。HE染色は、一般的なプロトコルに従って行った。
作製した顕微鏡標本を、顕微鏡によって10倍の倍率で撮像することにより組織画像を取得した。このように取得した組織画像の例が図5に示されている。
このような組織画像を用いて、癌判定装置1により癌の判定を行った。組織画像を二値化するための二値化基準値は、100に設定されている。判定結果の一例を図11に示す。同図に示す表では、最も左の列から、組織画像の番号、当該組織画像の連結成分の数(0次元のベッチ数)、当該組織画像の穴の数(1次元のベッチ数)、穴の数と連結成分の数との比(比較値)を示している。なお、この例では組織画像を分割する処理を行わずに、組織画像全体を用いてベッチ数を算出している。
図11に示す表において、第一グループは正常な組織を撮影したもの、第二グループは画像の殆どが癌組織であるもの、第三グループは癌と正常な組織とが混在したものである。
第一グループにおいては、比の値が1.5以下であり、かつ穴の数が2000以下であることが分かる。また第二グループでは両方またはどちらかがこれらの値を超えている。
これらの結果から、癌と正常な組織とが混在していない組織画像を用いれば、組織画像を分割しなくても、1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比、または1次元のベッチ数を指標として癌の判定を適切に行えることが理解されるであろう。
〔解析結果例2〕
第三グループに付いては癌組織と正常組織とが混在している例である。ここでは、画像分割部41によって組織画像を分割した後に癌判定装置1および癌判定装置10によりそれぞれ癌の判定を行った結果の例を示す。
図12は、本解析結果例で用いた組織画像を示す図である。この組織画像には分化型の癌組織の像が含まれている。また、同図に示すように、画像分割部41により組織画像は、5×5の分割領域に分割されている。
図13の(a)〜(c)は、図12に示す組織画像を癌判定装置1・10によって解析した結果を示す図である。同図の(a)は、各分割領域の連結成分の数(0次元のベッチ数)を示し、図12に示す各分割領域と対応するように配置されている。同図の(b)は、各分割領域の穴の数(1次元のベッチ数)を示し、図12に示す各分割領域と対応するように配置されている。ただし、同図の(b)に示す値は、実際の値に25(画面分割数に相当)をかけた値である。同図の(c)は、各分割領域についての、穴の数と連結成分の数との比を示している。すなわち、同図の(b)に示す値を25分の1にした値を同図の(a)に示す値で除した値が同図の(c)に示す値である。
癌判定装置1の判定部44は、同図の(c)に示す比の値が、0.5より大きく1.4以下の範囲にある場合に正常組織であると判定し、1.4より大きく1.7より小さい範囲にある場合に正常組織と癌組織との中間の状態であると判定し、1.7以上の範囲にある場合に癌の像が含まれていると判定する。なお、組織画像を二値化するための二値化基準値は、105(7009は100)に設定されている。
また、癌判定装置10の判定部13は、同図の(b)に示す穴の数を25分の1にした値が、2000以下の範囲にある場合に正常組織であると判定し、2000より大きく2400より小さい範囲にある場合に正常組織と癌組織との中間の状態であると判定し、2400以上の範囲にある場合に癌の像が含まれていると判定する。
これらの判定結果を、図12に示す各分割領域に○(正常)、△(▽)(中間)または×(癌)で示した。△(▽)は、正常組織と癌組織との中間の状態であることを示している。これらのうち、△は判定部44による判定結果(ベッチ数の比を用いた判定結果)を示し、▽は判定部13による判定結果(穴の数を用いた判定結果)を示している。
このように、組織画像を分割することにより、癌組織が含まれている領域と含まれていない領域とに分けて判定を行うことができ、癌の判定の精度をより高めることができる。
また、別の組織画像を用いた同様の判定結果を図14および図15の(a)〜(c)に示す。図14に示す組織画像にも分化型の癌組織の像が含まれており、図15の(a)〜(c)は、図14の組織画像における各分割領域から算出した連結成分の数(0次元のベッチ数)、穴の数(1次元のベッチ数)、穴の数と連結成分の数との比を示している。図15の(b)においても、穴の数は25倍されている。
また、同様の判定を行った結果が示された組織画像を図16および図17に示す。
これらの解析結果から、組織画像を分割領域に分割することにより、癌の判定の精度を高められることが理解されるであろう。
〔解析結果例3〕
ここでは、低分化型の癌組織の象が含まれる組織画像を用いて、癌判定装置10による判定を行った結果について説明する。
図18および図19の(a)〜(c)に示す。図18に示す組織画像には低分化型の癌組織の像が含まれており、当該組織画像は25個の分割領域に分割されている。図19の(a)〜(c)は、図18の組織画像における各分割領域から算出した連結成分の数(0次元のベッチ数)、穴の数(1次元のベッチ数)、穴の数と連結成分の数との比を示している。図19の(b)においても、穴の数は25倍されている。なお、組織画像を二値化するための二値化基準値は、105に設定されている。
癌判定装置10の判定部13は、図19の(b)に示す穴の数を25分の1にした値が5より小さい分割領域に癌の像が含まれていると判定するように、その判定基準が設定されている。
癌判定装置10は、全ての分割領域に低分化型の癌組織が含まれているとの判定結果を出力した。この判定結果は、図18の組織画像と比較して妥当なものである。
本発明のさらに別の実施形態について図20〜図23に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、上述の実施形態と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
図20は、本実施形態の癌判定装置(画像解析装置)60の構成を示す概略図である。同図に示すように、癌判定装置60は、癌判定装置1・10とは異なり、画像解析部(画像解析装置)61および操作部68を備えている。
画像解析部61は、組織画像から二値化画像を生成するために、二値化画像生成部62、二値化基準値算出部63、画像パラメータ算出部64およびサンプルパラメータ取得部65を備えている。また、画像解析部61は、画像分割部41、ベッチ数算出部42、比較値算出部43、判定部13、判定部44、最終判定部66および再検査部67を備えている。
本実施形態では、判定部13は、ベッチ数算出部42が算出した1次元のベッチ数と所定の基準値(判定基準値)とを比較することにより、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。
サンプルパラメータ取得部65は、ユーザが操作部68を用いて入力したサンプルパラメータを取得し、取得したサンプルパラメータを二値化基準値算出部63へ出力する。サンプルパラメータとは、サンプルごとの色彩の違いを反映した組織画像の色彩の違いを補正するためのパラメータである。例えば、サンプルパラメータとは、個別に染色された複数の組織の染色度合いおよび当該組織の厚みの差を補正するために、染色された組織の組織画像ごとに算出される値である。このサンプルパラメータの算出方法については後述する。
画像パラメータ算出部64は、組織画像を画像処理することにより、画像パラメータを算出する。組織画像ごとに、当該組織画像に含まれる組織の構成要素のバランス(空白が多い、間質層が多いなど)は異なる。画像パラメータは、このような組織画像に含まれる組織の組成の違いを、複数の組織画像間で補正するための値である。この画像パラメータは、組織画像ごとに算出される値であり、組織画像に含まれる画素の画素値(光度値)のうち、最も存在比率が高い画素値を示す値である。
より詳細には、画像パラメータは、組織画像に含まれる複数の画素を、同じ画素値を有する画素ごとに画素集合として分類した場合に、最も数の多い画素を含む画素集合に属する画素の画素値である。つまり、画像パラメータとは、組織画像の画素値の強度分布において、最も数の多い画素の画素値である。この画像パラメータの算出方法については後述する。
二値化基準値算出部63は、サンプルパラメータ取得部65が取得したサンプルパラメータと画像パラメータ算出部64が算出した画像パラメータとを乗算することにより、二値化基準値(二値化パラメータ)を算出する。この二値化基準値算出部63は、算出した二値化基準値を二値化画像生成部62へ出力する。
二値化画像生成部62は、二値化基準値算出部63が算出した二値化基準値を用いて、記憶部3に格納された組織画像を二値化し、二値化した組織画像を画像分割部41に出力する。
画像分割部41、ベッチ数算出部42、比較値算出部43および判定部44は、基本的に癌判定装置1が有するものと同じである。また、ベッチ数算出部12および判定部13は、基本的に癌判定装置10が有するものと同じである。
ただし、本実施形態では、画像分割部41は、二値化画像生成部62が生成した二値化画像を所定の大きさの分割領域に分割する。また、本実施形態では、ベッチ数算出部42およびベッチ数算出部12は、組織画像の二値化処理は行わない。また、判定部44および判定部13は、複数段階の判定結果を最終判定部66へ出力するものとする。
最終判定部66は、判定部44から出力された判定結果と判定部13から出力された判定結果とを用いて、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかについての最終的な判定を、少なくとも1つの判定基準(例えば、後述する第1〜2判定基準)に基づいて行う。
また、最終判定部66は、低分化型の癌細胞の像が含まれている可能性が高い分割領域が存在するかどうかを判定し、存在すると判定した場合に、再検査を命じる再検査命令を再検査部67へ出力する。
再検査部67は、最終判定部66から再検査を命じる命令を受け取った場合に、組織画像に癌組織の像が含まれているかどうかの再検査を行う。図21は、再検査部67の構成を示すブロック図である。同図に示すように、再検査部67は、連結成分計測部81および再判定部82を備えている。
連結成分計測部81は、二値化画像生成部62が生成した二値化画像を用いて、この二値化画像に含まれる分割領域(画像分割部41が規定した分割領域)ごとに、当該分割領域に含まれる連結成分の大きさを測定し、その大きさの統計値(例えば、平均値、中央値または最大値)を分割領域ごとに算出する。連結成分(すなわち、特定の形状を有する図形)を検出し、その大きさを測定する方法は、画像処理における公知の測定方法(例えば、画像解析ソフトであるImageJ、GIMP)を用いればよい。
再判定部82は、上記統計値を所定の基準値(例えば、20μm)と比較し、その統計値が所定の基準値以下である場合には、注目する分割領域に低分化型の癌組織の像は含まれていないと判定し、統計値が所定の基準値より大きい場合には、注目する分割領域に低分化型の癌組織の像は含まれていると判定する。
再検査に要する時間は、装置の性能にもよるが、1.0秒程度である。標本全体を俯瞰した場合、間質層がかなりの部分を占める。そのため、再検査部67における再検査は、癌組織のスクリーニングには本質的である。
最終判定部66および再検査部67の判定結果は、表示制御部5によって表示部6に表示される。
操作部68は、ユーザが各種の情報を癌判定装置60に入力するための入力装置であり、例えば、操作ボタン、マウスまたはキーボードである。
(最終判定部66の詳細)
最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果と判定部13の判定結果との両方が陽性(癌組織の像が含まれている)の場合に、その分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する(第1判定基準による判定)。
または、最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果または判定部13の判定結果のいずれか一方が陰性であっても、他方の判定結果が、複数段階の判定結果のうちの、癌組織の像が含まれている可能性が最も高いことを示す判定結果である場合には、その分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する(第2判定基準による判定)。
また、最終判定部66は、比較値算出部43が算出した1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比(穴の数/連結成分の数)およびベッチ数算出部42が算出した1次元のベッチ数(穴の数)が、それぞれの数に対して予め設定された基準値以下であるかどうかを分割領域ごとに判定し、少なくともいずれか一方が対応する基準値以下である場合に、再検査部67へ当該分割領域の再検査を命じる。
すなわち、最終判定部66は、低分化型の癌細胞の像が含まれている可能性が高い分割領域が存在すると判定した場合に、再検査部67へ当該分割領域の再検査を命じる。この判定は、当該分割領域に含まれる組織の像が、低分化型の癌の像か、間質層の像かを弁別するためのものである。
最終判定部66が再検査の要否の判定に用いる上記ベッチ数の比の基準値は、例えば、「0.1」であり、1次元のベッチ数の基準値は、例えば、「3」である。上記ベッチ数の比または1次元のベッチ数がこれらの基準値以下である場合には、注目する分割領域に低分化型の癌の像が含まれている可能性が高い。これらの基準値は、低分化型の癌と間質層とを区別できるものであればよく、当業者によって適宜設定されればよい。
(サンプルパラメータの算出方法)
生体組織診断をする際には、組織(例えば、人体組織)を摘出した後、これをスライスして染色し、染色した組織をプレパラートに載せて標本が作製される。このとき、スライスしたときに厚みの差が出る、染色液の組成が一定とは限らない、室温等の変化により染色における化学反応が一様ではない、染色してからの時間経過により染色状態が変化する、などの原因により、標本ごとに染色の度合いは変化する。この標本ごとの色彩の違いを反映した値をサンプルパラメータと称する。
例えば、スライスされた組織の厚みについての条件の違いは、適切な測定器により正確な厚みを計測することで得ることができる。
染色状態についての条件の違いは、白血球など、診断対象となる生体のどのような組織にも共通に存在する細胞または組織をインターナル・スタンダード(内部基準)とし、このインターナル・スタンダードの染色の度合いを比較することで得ることができる。
この場合、染色した組織を撮像した組織画像を用いて、ユーザが公知の画像処理ソフトを用いて、複数の組織画像におけるインターナル・スタンダードの染色度合い(染色度)をそれぞれ測定し、測定した組織画像ごとの染色度の相対値(例えば、各組織画像についての染色度を基準となる染色度で割った値)をサンプルパラメータとして用いればよい。
また、使用する複数の組織画像をユーザが見比べ、その染色度合いの違いからサンプルパラメータを決定してもよい。
(画像パラメータの算出方法)
画像パラメータ算出部64は、記憶部3に格納された組織画像を取得し、その組織画像に含まれる画素の画素値の強度分布を算出する。図22は、画素値の強度分布から第1ピークの画素値を算出する例を示す図である。同図に示すように、上記強度分布は、横軸に画素値、縦軸に、横軸に示す画素値を有する画素の数を示すグラフとして表現できる。
より詳細には、画像パラメータ算出部64は、横軸に画素値、縦軸に、横軸に示す画素値を有する画素の数を示すヒストグラムを作成し、このヒストグラムを滑らかな関数で近似することにより上記強度分布を算出する。ここで用いる関数は公知のものを採用すればよい。
そして、画像パラメータ算出部64は、上記強度分布を示すグラフのピークのうち、最も高いピークである第1ピークを特定し、その第1ピークに対応する画素値を画像パラメータとして採用する。このとき、強度分布を示すグラフを微分して、傾きが0になるところを第1ピークとすればよい。この第1ピークの画素値は、組織画像に含まれる構成要素のうちの最も特徴的な構成要素の画素値を現していると考えられる。
なお、組織画像は、カラーであってもよいし、グレースケールであってもよい。
(二値化基準値算出の意義)
次に、サンプルパラメータと画像パラメータとを乗算することにより、二値化基準値を算出することの意義について説明する。
各組織画像について、画像パラメータ(第1ピークの画素値)に対してサンプルパラメータを乗ずることで、二値化パラメータを算出する。画像パラメータは、組織画像の組成の違いを、複数の組織画像間で補正するための指標であり、サンプルパラメータは、染色度合いの違いや厚みの違いに起因する組織の色彩の違いを複数の組織画像間で補正するための指標である。それゆえ、両者を乗ずることにより、組織の組成の違いおよび組織の色彩の違いを反映した二値化基準値を得ることができる。
(二値化基準値算出の具体例)
図23は、二値化基準値を算出する計算例を示す図である。同図に示す「画像番号」は、「サンプル番号」に対応する組織を撮像した組織画像の番号である。組織画像を撮像するために用いた組織は、サンプル番号が1〜3の3種類であり、画像番号1〜4の画像は、サンプル番号が1の組織を撮像したものである。同様に画像番号5〜8の画像は、サンプル番号が2の組織を撮像したものであり、画像番号9〜13の画像は、サンプル番号が3の組織を撮像したものである。
図23に示すように、画像パラメータとサンプルパラメータとを乗算することにより二値化基準値が算出されている。
(癌判定装置60における処理の流れ)
次に、癌判定装置60における処理の一例について説明する。図24は、癌判定装置60における処理の一例を示すフローチャートである。
まず、画像パラメータ算出部64は、記憶部3から複数の組織画像を取得し、これらの組織画像ごとに、上述のように画像パラメータ(第1ピークの画素値)を算出する(S21)。画像パラメータ算出部64は、算出した画像パラメータを、組織画像と対応付けて二値化基準値算出部63へ出力する。
一方、サンプルパラメータ取得部65は、ユーザが操作部68を用いて入力したサンプルパラメータを取得し、取得したサンプルパラメータを二値化基準値算出部63へ出力する(S22)。
二値化基準値算出部63は、サンプルパラメータ取得部65から出力されたサンプルパラメータと画像パラメータ算出部64から出力された画像パラメータとを乗算することにより、二値化基準値(二値化パラメータ)を算出する(S23)。二値化基準値算出部63は、算出した二値化基準値を二値化画像生成部62へ出力する。
二値化画像生成部62は、記憶部3から組織画像を取得し、二値化基準値算出部63が算出した二値化基準値を用いて、各組織画像を二値化し、二値化した組織画像(二値化画像)を画像分割部41に出力するとともに記憶部3に格納する(S24)。
画像分割部41は、二値化画像生成部62が生成した二値化画像のそれぞれを所定の大きさの分割領域に分割することにより分割領域を生成する(S25)。画像分割部41は、生成した分割領域を二値化画像ごとに特定する領域情報を、二値化画像と対応付けてベッチ数算出部42へ出力するとともに、領域情報を記憶部3に格納する。
ベッチ数算出部42は、受け取った領域情報が示す分割領域ごとに0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する処理を二値化画像ごとに行う(S26)。ベッチ数算出部42は、算出した0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを、二値化画像ごとに分割領域と対応付けて比較値算出部43へ出力するとともに、算出した1次元のベッチ数を二値化画像ごとに分割領域と対応付けて判定部13へ出力する。
比較値算出部43は、ベッチ数算出部42から出力された1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を分割領域ごとに算出する処理を二値化画像ごとに行い、算出した比の値を分割領域を特定する領域情報と対応付けて判定部44へ出力する(S27)。
判定部44は、比較値算出部43から出力された分割領域ごとのベッチ数の比の値と第1判定基準値とを比較する。この第1判定基準値は、ベッチ数の比に関する判定基準値であり、高分化型の癌組織が存在する可能性を段階的に(例えば、6段階で)判定するための複数の値である。この第1判定基準値は、予め記憶部3に格納されていればよい。
つまり判定部44は、比較値算出部43から出力された比の値が、複数の第1判定基準値のいずれ以上であり、いずれ未満であるかを判定することで、当該比の値に対応する分割領域に高分化型の癌組織の像が存在する可能性を段階的に判定する(S28)。判定部44は、判定結果を各二値化画像の分割領域ごとに最終判定部66へ出力する。
一方、判定部13は、ベッチ数算出部42から出力された分割領域ごとの1次元のベッチ数と第2判定基準値とを比較する。この第2判定基準値は、1次元のベッチ数(穴の数)に関する判定基準値であり、高分化型の癌組織が存在する可能性を段階的に(例えば、6段階で)判定するための複数の値である。この第2判定基準値は、予め記憶部3に格納されていればよい。
判定部13は、比較値算出部43から出力された1次元のベッチ数が、複数の第2判定基準値のいずれ以上であり、いずれ未満であるかを判定することで、当該1次元のベッチ数に対応する分割領域に高分化型の癌組織の像が存在する可能性を段階的に判定する(S29)。判定部13は、判定結果を各二値化画像の分割領域ごとに最終判定部66へ出力する。
最終判定部66は、判定部44から出力された判定結果と判定部13から出力された判定結果とを用いて、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかについての最終的な判定を行う(S30)。
例えば、最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果と判定部13の判定結果との両方が、6段階(L0〜L5)中、癌組織の像が含まれている可能性が最も高いレベル(L5)またはその次のレベル(L4)またはさらにその次のレベル(L3)の場合に、その分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する。
または、最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果または判定部13の判定結果のいずれか一方が陰性(L0〜L2)であっても、他方の判定結果が、L5またはL4である場合には、その分割領域に癌組織の像が含まれていると判定する。
次に、最終判定部66は、再検査が必要であるかどうかを判定する(S31)。具体的には、最終判定部66は、比較値算出部43が算出したベッチ数の比およびベッチ数算出部42が算出した1次元のベッチ数(穴の数)が、それぞれの数に対して予め設定された基準値以下であるかどうかを分割領域ごとに判定し、少なくともいずれか一方が対応する基準値以下である場合に(S31にて、YES)、再検査部67へ当該分割領域(または、当該分割領域を含む組織画像)の再検査を命じる。
再検査部67は、最終判定部66からの命令を受け取ると、再検査部67が指定した分割領域(または、当該分割領域を含む組織画像)に癌組織の像が含まれているかどうかの再検査を行う(S32)。
表示制御部5は、最終判定部66の判定結果および再検査部67の判定結果を表示部6に表示する(S33)。
(再検査部67における処理の流れ)
次に、再検査部67における処理の一例について説明する。図25は、再検査部67における処理の一例を示すフローチャートである。
まず、連結成分計測部81は、再検査部67が指定した分割領域を含む二値化画像および画像分割部41が生成した領域情報を記憶部3から取得し、再検査部67が指定した分割領域ごとに、その分割領域に含まれる連結成分の大きさを測定する(S41)。
そして、連結成分計測部81は、測定した連結成分の大きさを分割領域ごとに平均し、得られた平均値を再判定部82へ出力する(S42)。
再判定部82は、再判定部82から出力された分割領域ごとの平均値を所定の基準値(例えば、20μm)とそれぞれ比較する(S43)。そして、再判定部82は、その平均値が所定の基準値以下である場合には、当該平均値が得られた分割領域に低分化型の癌組織の像は含まれていないと判定し、平均値が所定の基準値より大きい場合には、当該分割領域に低分化型の癌組織の像は含まれていると判定する。
再判定部82は、判定結果を表示制御部5へ出力する(S44)。
〔解析結果例4〕
ここでは、癌判定装置60を用いて癌の判定を行った結果の一例を示す。図26〜32は、癌判定装置60による癌の判定結果の一例を示す図である。図26〜32には、判定に用いられた組織画像の下に、当該組織画像に含まれる各分割領域における組織の像についての穴の数(1次元のベッチ数)と、穴の数と連結成分の数(0次元のベッチ数)との比が示されている。各数値の配置と分割領域の配置とは対応している。組織画像は、7×7の分割領域に分割されている。組織の染色方法および組織画像の撮像方法は、上述の解析結果例1〜3と同様である。
なお、穴の数については、各数値に標準化のために分割領域の数(49)がかけてある。それゆえ、実際の穴の数は、各図に示す穴の数を49分の1にした値である。
癌判定装置60の判定部44は、上記比の値に関して6段階の判定を行っている。また、癌判定装置60の判定部13は、穴の数に関して6段階の判定を行っている。図26〜32に示す結果では、穴の数および比の値に異なるハッチングを行うことで、最も癌組織の像が含まれている可能性の高いレベル(L5)から、当該可能性の最も低いレベル(L0)までを区別している。
ベッチ数の比の値については、L5は3.5以上、L4は2.4以上3.5未満、L3は2.0以上2.4未満、L2は1.7以上2.0未満、L1は1.4以上1.7未満、L0は0以上1.4未満として分類している。
穴の数については、L5は4000以上、L4は3500以上4000未満、L3は3000以上3500未満、L2は2400以上3000未満、L1は2000以上2400未満、L0は0以上2000未満として分類している。なお、これら穴の数についての実際の基準値は、これらの値を49分の1にした値である。
また、最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果と判定部13の判定結果とのいずれか一方が、L5〜L2の場合に、その分割領域に癌組織の像が含まれている可能性が高い(陽性)と判定している。判定部44による判定結果(ベッチ数の比を用いた判定結果)が陽性を示す場合は、各分割領域に×を付し、判定部13による判定結果(穴の数を用いた判定結果)が陽性を示す場合は、各分割領域に○を付している。
また、最終判定部66は、注目する分割領域に関する判定部44の判定結果または判定部13の判定結果のいずれか一方がL1である場合には、その分割領域に癌組織の像が含まれている可能性がわずかにある(中間判定)と判定している。判定部44による判定結果(ベッチ数の比を用いた判定結果)が中間判定結果を示す場合は、各分割領域に△を付し、判定部13による判定結果(穴の数を用いた判定結果)が中間判定結果を示す場合は、各分割領域に▽を付している。
このように、ベッチ数の比を用いた判定結果と穴の数を用いた判定結果との両方を用いることで、より精度の高い判定を行うことができる。
図26に示す組織画像は、正常な組織の画像である。この組織画像に関して、組織が密集している部分においてL1〜3の判定がなされているものの、分割領域のほとんどは正常(L0)であると判定されている。
図27に示す組織画像は、軽度の異型を示す組織の画像である。この組織画像に関して、分割領域の約1/8は正常(L0)であると判定され、残りの分割領域の多くについては、癌が含まれている可能性が低度にある(L1〜L2)と判定されている。
図28に示す組織画像は、高度の異型を示す組織の画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果では、分割領域の多くに癌が含まれている可能性が高い(L5〜L3)と判定されている。穴の数を用いた判定結果では、一部の分割領域にL1〜L2の判定がなされている。
図29に示す組織画像は、癌化した組織を示す画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果および穴の数を用いた判定結果の両方において、約1/4〜1/3の分割領域についてL5〜L4の判定がなされた。
図30に示す組織画像は、高分化型の癌組織を示す画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果および穴の数を用いた判定結果の両方において、約30〜40%の分割領域についてL5〜L4の判定がなされた。
図31に示す組織画像は、別の高分化型の癌組織を示す画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果および穴の数を用いた判定結果の両方において、約15〜20%の分割領域についてL5〜L4の判定がなされた。また、穴の数を用いた判定結果において、約35%の分割領域についてL3〜L2の判定がなされた。
図32に示す組織画像は、高分化型の癌組織と正常組織とが混在している画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果および穴の数を用いた判定結果の両方において、高分化型の癌組織が偏在している箇所について、L5〜L3の判定がなされた。
以上の癌判定装置60による判定結果は、医師による判定結果とほぼ一致しており、癌判定装置60によって高分化型の癌組織を高い精度で判定できることが確認された。
〔解析結果例5〕
ここでは、癌判定装置60を用いて癌の判定を行った結果の別の例を示す。図33〜34は、癌判定装置60による癌の判定結果の一例を示す図である。
図33〜図34に示す組織画像は、低分化型の癌組織を示す画像である。この組織画像に関して、ベッチ数の比を用いた判定結果および穴の数を用いた判定結果では、全ての分割領域に正常(L0)の判定がなされている。
これらの組織画像に対して、最終判定部66は、ベッチ数の比(穴の数/連結成分の数)が0.1以下であるか、または穴の数(1次元のベッチ数)が3以下であるかどうかを判定した。なお、図33〜図34に示された穴の数は、実際の値を49倍したものである。図33〜図34に示された穴の数を基準にすれば、穴の数が147以下であるかどうかを最終判定部66が判定したことになる。
そして、ベッチ数の比が0.1以下または穴の数が3以下の分割領域について、再検査部67が再検査を行った。
再検査が必要であると最終判定部66が判定した各分割領域について、再検査部67の連結成分計測部81は、その分割領域に含まれる連結成分の大きさを測定し、その平均値を算出した。
再判定部82は、連結成分計測部81から出力された分割領域ごとの平均値を20μmとそれぞれ比較し、平均値が20μmより大きい場合に、当該分割領域に低分化型の癌組織の像が含まれていると判定した。
組織画像またはその分割領域に含まれる連結成分の大きさを測定した結果の一例を図35に示す。同図に示す例では、20個の画像のそれぞれについて、当該画像に含まれる連結成分の大きさを測定し、その平均値を算出している。No.3の画像は、図31に示す左端の一列分の分割領域に相当する。No.7の画像は、図32に示す組織画像の左上の隅に位置する分割領域の座標を(1,1)とした場合に、(5,3)の座標の分割領域に相当する。No.8の画像は、図32に示す組織画像における(7,1)の座標の分割領域に相当する。No.17の画像は、図33に示す組織画像の全体に相当する。No.18の画像は、図34に示す組織画像の全体に相当する。
No.1〜15の分割領域に含まれる連結成分の大きさの平均値は、20μm以下であり、これらの分割領域に含まれる組織は、正常な間質層であると判定された。
一方、No.16〜20の分割領域に含まれる連結成分の大きさの平均値は、20μmよりも大きく、これらの分割領域に含まれる組織は、低分化型の癌組織であると判定された。この判定結果は、病理医の判定結果と一致していた。
このように、癌判定装置60によれば、組織画像に低分化型の癌組織が含まれている場合でも、高い精度で癌の判定を行うことができる。
本発明は、生体組織における癌の判定に限らず、他の組織における組成の判定に適用できる。その一例として、本実施形態では、鉄組織におけるマルテンサイト等の構成成分の含有状態(特に含有率)を判定する判定装置90について説明する。
金属は組織の構成の様子により、強靭性・耐摩耗性など、その工学的な性質が大きく異なる。金属組織は顕微鏡像により観察が可能であるので、顕微鏡による組織観察で全体の性質を判定することができれば、応用上得ることは大きい。しかし、このような顕微鏡による判定は、癌組織と同様、観察者の技量・経験により結果が異なる場合もあり、客観的数値により判定することは重要なことである。
Fe−C系炭素鋼は、加熱・冷却処理を適切に施すことにより、強靭性・耐摩耗性が向上する。マルテンサイト(martensite, α'鋼)と呼ばれる鋼は、Fe−C系炭素鋼を、安定なオーステナイトから急冷する事によって得られる組織のことである。オーステナイトの様な組織を持つ鋼では、高靱性が要求される用途には使用できないが、焼入れ・焼き戻しなどの工程を経てマルテンサイトにする事で、鋼をより強くすることができる。
本実施形態では、Fe−C系炭素鋼におけるマルテンサイトの含有率を算出する処理について説明するが、他の鉄組織(例えば、パーライト、フェライト)の含有率を算出してもよいし、複数の鉄組織の割合を算出してもよい。
(判定装置90の構成)
図36は、本発明の実施例4に係る判定装置90の構成を示す概略図である。同図に示すように、判定装置(画像解析装置)90は、癌判定装置60とは異なり、画像解析部(画像解析装置)91を備えている。画像解析部91は、二値化画像生成部62、二値化基準値算出部92、画像パラメータ算出部64、ベッチ数算出部42、比較値算出部43および含有率算出部(判定手段)93を備えている。
判定装置90は、画像分割部41を備えておらず、ベッチ数算出部42の処理対象は、二値化画像生成部62が生成した複数の二値化画像である。癌組織の判定を行う場合には、組織画像の一部であっても癌組織の像が存在していれば、陽性の判定をする必要があるため、組織画像を分割することにより判定精度を高めることが好ましい。これに対して、鉄組織の組成の判定を行う場合には、使用する組織全体の組成が判定できればよいため、組織画像を分割する必要は必ずしもない。ただし、判定装置90は、癌判定装置1・10・60と同様に画像分割部41を備えていてもよい。
ベッチ数算出部42は、二値化画像生成部62が生成した複数の二値化画像について0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを、二値化画像ごとに算出する。ベッチ数算出部42は、算出した0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを、二値化画像と対応付けて比較値算出部43へ出力する。
比較値算出部43は、ベッチ数算出部42から出力された1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比であるベッチ数の比(上記空間の数と上記連結成分の数との比)を算出する処理を二値化画像ごとに行い、算出したベッチ数の比を二値化画像と対応付けて含有率算出部93へ出力する。
なお、判定装置90は、癌判定装置10と同様に、ベッチ数算出部42および比較値算出部43の代わりにベッチ数算出部12を備えていてもよい。
この場合、ベッチ数算出部12は、組織を撮像した撮像画像を粗視化した粗視化画像に含まれる、閉じた外縁を有する図形である構成成分の外縁が互いに連結することによって形成される、1つ以上の構成成分の外縁によって囲まれた空間(穴)の数を算出する空間数算出手段として機能する。
また、含有率算出部93は、ベッチ数算出部12が算出した空間の数と所定の基準値とを比較することにより、撮像画像に写った組織の構成を判定する判定手段として機能する。含有率算出部93は、検出対象となる鉄組織(例えば、マルテンサイト)の含有率を算出してもよいし、当該鉄組織が所定の割合以上含まれているかどうかを判定してもよい。
(二値化基準値算出部92の詳細)
二値化基準値算出部92は、画像パラメータ算出部64が算出した画像パラメータと複数の補正用パラメータとをそれぞれ乗算することにより、複数の二値化基準値(二値化基準値のセットと称する)を算出する。補正用パラメータとは、二値化基準値を補正するためのパラメータであり、所定の定数である。
生体組織の場合には、染色の度合いおよび組織の厚さによってサンプルの色彩が変化するため、その色彩の違いを補正するためにサンプルパラメータを設けている。鉱物組織の場合には、撮像条件を一定にして組織を撮像すれば、サンプルパラメータを設ける必要がなくなる。
しかし、画像パラメータそのものを二値化基準値として採用した場合には、鉱物の組成を正確に判定できない場合がある。そのため、判定装置90では、二値化基準値を補正するための補正用パラメータを設け、画像パラメータに補正用パラメータを乗算することで二値化基準値を算出している。
特定の鉱物組織の組成を判定するために最適な補正用パラメータを1つ予め設定できる場合には、複数の二値化基準値を算出する必要は必ずしもないが、判定の精度を高めるために複数の二値化基準値を用いて複数の二値化画像を生成し、生成した二値化画像ごとに判定を行うことが好ましい。
補正用パラメータの集合は、例えば、0.9、0.8、0.7、0.6という1より小さい複数の値の集合である。この場合、画像パラメータの値をaとすると、算出される二値化基準値は、0.9a、0.8a、0.7a、0.6aの4つである。ただし、補正用パラメータの個数および各値は、上述のものに限定されず、当業者によって適宜設定されればよい。
このように、判定装置90は、組織画像から二値化基準値を算出する二値化基準値算出手段(64)と、算出された二値化基準値を補正する補正手段(二値化基準値算出部92)とを備えている。
二値化画像生成部62は、二値化基準値算出部92が算出した複数の二値化基準値をそれぞれ用いて、複数の二値化画像を生成する。
(含有率算出部93の詳細)
含有率算出部93は、比較値算出部43が算出したベッチ数の比(比較値)と所定の基準値とを比較することにより、組織画像に写った組織の構成を判定する。具体的には、含有率算出部93は、比較値算出部43が算出した各二値化画像についてのベッチ数の比と、当該二値化画像と同じ補正用パラメータを用いてそれぞれ二値化された複数の基準組織画像について算出されたベッチ数の比とを互いに比較することによって、各二値化画像に写った鉄組織におけるマルテンサイトの含有率を算出する。
基準組織画像とは、マルテンサイトの含有率が例えば50%の鉄組織の画像である。このような基準組織画像から得られるベッチ数の比は、マルテンサイトの含有率が50%の場合に得られるベッチ数である。
予め定められている補正用パラメータが、0.9、0.8、0.7、0.6であり、基準組織画像用の所定の画像パラメータの値をbとすると、基準組織画像は、0.9b、0.8b、0.7b、0.6bの4つの二値化基準値によって二値化される。そして、二値化された基準組織画像のそれぞれについてベッチ数の比が算出される。
そして、基準組織画像の二値化に用いられた補正用パラメータと、当該補正用パラメータを用いて二値化された基準組織画像についてのベッチ数(基準ベッチ数比と称する)とが対応付けられて、予め記憶部3に格納されている。
また、基準組織画像用の画像パラメータの値bは、含有率の算出精度が高まるように、測定対象となる鉱物組織に応じて当業者によって適宜設定されればよい。
含有率算出部93は、4つの基準ベッチ数比と、比較値算出部43が算出した4つのベッチ数の比との差を、同じ補正パラメータと対応付けられたものどうしについて算出する。例えば、含有率算出部93は、二値化基準値として0.9aを用いて二値化された組織画像から算出されたベッチ数の比と、二値化基準値として0.9bを用いて二値化された基準組織画像から算出された基準ベッチ数比との差を算出する。
そして、含有率算出部93は、算出した4つの差のうち、最大の差を採用し、当該最大の差からマルテンサイトの含有率を算出する。比較値算出部43が算出したベッチ数の比が基準ベッチ数比よりも大きい場合には、マルテンサイトの含有率は50%よりも大きいといえる。逆に、比較値算出部43が算出したベッチ数の比が基準ベッチ数比よりも小さい場合には、マルテンサイトの含有率は50%よりも小さいといえる。このように比較値算出部43が算出したベッチ数の比と基準ベッチ数比との差によってマルテンサイトの含有率を算出できる。
具体的には、ベッチ数の比と基準ベッチ数比との差と、マルテンサイトの含有率との関係を示す数式を予め記憶部3に格納しておき、含有率算出部93は、その数式に上記最大の差を代入することによりマルテンサイトの含有率を算出する。上記数式は一次関数であってもよいし、2次関数であってもよい。
また、含有率算出部93は、算出した4つの差の平均値を算出し、この平均値を用いてマルテンサイトの含有率を算出してもよい。つまり、含有率算出部93は、算出した複数の差を統計処理した値を用いてマルテンサイトの含有率を算出すればよい。
また、含有率算出部93は、単一の数値として含有率を算出せずに、含有率が所定の範囲内のものかどうかを判定してもよい。例えば、含有率算出部93は、マルテンサイトの含有率が50%よりも大きいかどうかを判定してもよい。
なお、判定装置90がベッチ数算出部42および比較値算出部43の代わりにベッチ数算出部12を備えている場合には、含有率算出部93は、比較値算出部43が算出した各二値化画像についての穴の数と、当該二値化画像と同じ補正用パラメータを用いてそれぞれ二値化された複数の基準組織画像から算出された穴の数とを互いに比較することによって、各二値化画像に写った鉄組織におけるマルテンサイトの含有率を算出する。
(判定装置90における処理の流れ)
次に、判定装置90における処理の一例について説明する。図37は、判定装置90における処理の一例を示すフローチャートである。
まず、画像パラメータ算出部64は、記憶部3から組織画像を取得し、取得した組織画像について、上述のように画像パラメータ(第1ピークの画素値)を算出する(S51)。画像パラメータ算出部64は、算出した画像パラメータを二値化基準値算出部92へ出力する。
二値化基準値算出部92は、画像パラメータ算出部64から出力された画像パラメータと記憶部3に格納されている複数の補正用パラメータとをそれぞれ乗算することにより、複数の二値化基準値(二値化パラメータ)を算出する(S52)。二値化基準値算出部92は、算出した複数の二値化基準値を、二値化基準値の算出に用いた補正用パラメータと対応付けて二値化画像生成部62へ出力する。
二値化画像生成部62は、記憶部3から組織画像を取得し、二値化基準値算出部92が算出した複数の二値化基準値をそれぞれ用いて、組織画像を二値化する。そして、二値化画像生成部62は、複数の二値化した組織画像(二値化画像)を、上記補正用パラメータと対応付けてベッチ数算出部42へ出力する(S53)。
ベッチ数算出部42は、二値化画像生成部62が生成した複数の二値化画像のそれぞれについて0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを算出する(S54)。ベッチ数算出部42は、算出した0次元のベッチ数と1次元のベッチ数とを、上記補正用パラメータと対応付けて比較値算出部43へ出力する。
比較値算出部43は、ベッチ数算出部42から出力された1次元のベッチ数と0次元のベッチ数との比を二値化画像ごとに算出し、算出したベッチ数の比を上記補正用パラメータと対応付けて含有率算出部93へ出力する(S55)。
含有率算出部93は、比較値算出部43が算出した各二値化画像についてのベッチ数の比と、当該二値化画像と同じ補正用パラメータを用いてそれぞれ二値化された複数の基準組織画像から算出された基準ベッチ数比との差を、同じ補正パラメータと対応付けられたものどうしについてそれぞれ算出する(S56)。
そして、含有率算出部93は、算出した複数の上記差のうちの最大の差を、含有率算出用の数式に代入することによりマルテンサイトの含有率を算出する(S57)。
含有率算出部93が算出した含有率は、表示制御部5によって表示部6に表示される(S58)。
(ベッチ数の比の算出例)
図38は、マルテンサイト(martensite)組織を撮像した画像の一例を示す図である。マルテンサイト組織(α'鋼)は、Fe−C系炭素鋼を安定な状態から、焼入れ・焼き戻しなどの工程を経ることで出現させることができる。マルテンサイト組織の鋼は高靱性が要求される用途に使用される。
図39は、パーライト(pearlite)組織を撮像した画像の一例を示す図である。パーライト組織は、Fe−C系炭素鋼を安定な状態から徐冷した時に生ずる組織である。光沢が真珠(パール)に似ているため、パーライトと称される。組織全てがパーライトのみで出来た鋼を共析鋼(きょうせきこう)という。パーライトは対磨耗性に優れる。
図40は、フェライト(ferrite)組織を撮像した画像の一例を示す図である。フェライト組織は、やわらかく、延性が大きく、強磁性体である。
図38〜図40に示す組織画像は、同一の撮像条件で撮像されている。画像パラメータは、マルテンサイト(図38)が161であり、パーライト(図39)が221、フェライト(図40)が225である。
これらの画像パラメータに、補正用パラメータとして0.9、0.8、0.7、0.6をそれぞれ乗算することによって得られる4つの二値化基準値を用いて、図38〜図40に示す組織画像を二値化した。そして、生成した二値化画像のそれぞれからベッチ数の比(穴の数/連結成分の数)を算出した。その結果を図41に示す。
図41では上段の表において個々の数値を示すとともに、その数値をグラフ化したものを下段に示している。同図に示すように、補正用パラメータを小さくすることで、ベッチ数の比が変化するが、その変化の様式は、マルテンサイト、パーライト、フェライトで異なっている。また、補正用パラメータが0.8〜0.6の場合には、ベッチ数の比は、パーライト、フェライト、マルテンサイトの順に大きい。
同様に、上記二値化画像のそれぞれから穴の数を算出した結果を図42に示す。同図に示すように、補正用パラメータを小さくすることで穴の数も減少する。また、補正用パラメータが0.9〜0.6の場合には、穴の数は、パーライト、フェライト、マルテンサイトの順に大きい。
それゆえ、補正用パラメータを適切に設定することにより、パーライト、フェライトおよびマルテンサイトのうちのどの組織が、判定対象となる鉄組織に多く含まれているかを、ベッチ数の比または穴の数もしくはその両方を用いて判定することができる。
(その他の変更例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、判定部13・44から出力される判定結果を3段階以上の判定結果としてもよい。例えば、「正常組織」、「要観察」、「癌組織」の3段階の結果を出力してもよいし、正常組織から癌組織までの段階を5段階に区切り、組織がどの段階であるのかを判定した結果を出力してもよい。このような構成を実現するために、判定部13・44が用いる判定基準値を3段階または5段階の数値範囲を示すものにすればよい。
また、上述の説明では、組織画像を二値化した後にベッチ数を算出しているが、組織画像に対して三値化以上の画像処理を施してもよい。つまり、組織画像を粗視化した画像から0次元および1次元のベッチ数を算出すればよい。
また、本発明を、組織を切り出す装置(例えば、レーザマイクロダイセクション)に適用し、癌細胞が含まれていると判定された組織の一部を切り出す構成にしてもよい。また、本発明を、組織を切り出す装置、組織を染色する装置、組織を撮像する装置および癌判定装置1・10・60を含む癌診断システムとして実現してもよい。
また、本発明を、細胞診(クロマチンパターンの判定)のための画像解析装置として実現してもよい。
また、複数の補正用パラメータを用いて二値化のレベルが異なる複数の二値化画像を生成するという実施例4に記載した技術的思想を、実施例1〜3の癌判定装置に適用してもよい。
また、上述した癌判定装置1・10・60の各ブロック、特に画像解析部4・11・61および判定装置90の各ブロック、特に画像解析部91は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、癌判定装置1・10・60および判定装置90は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである癌判定装置1・10・60または判定装置90の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記癌判定装置1・10・60または判定装置90に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、癌判定装置1・10・60または判定装置90を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
以上のように、本発明では、上記比較値算出手段は、上記比較値として、上記空間の数と上記連結成分の数との比を算出することが好ましい。
連結成分の数と空間の数との違いを示す比較値として比を用いた場合には、差を用いる場合よりも、連結成分の数に対する空間の数の増加をより確実に数値的に差別化する事が可能になる。それゆえ、上記の構成により、癌の判定をより精度高く行うことができる。
また、上記画像解析装置は、上記撮像画像を所定の大きさの分割領域に分割する分割手段をさらに備え、上記成分・空間数算出手段は、上記分割手段が生成した分割領域ごとに上記連結成分の数と上記空間の数とを算出し、上記比較値算出手段は、上記分割領域ごとに上記比較値を算出し、上記判定手段は、上記分割領域ごとに算出された比較値を用いて、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかを判定することが好ましい。
上記の構成によれば、分割手段は、組織の撮像画像を所定の大きさの分割領域に分割し、成分・空間数算出手段は、分割手段が生成した分割領域ごとに連結成分の数と空間(穴)の数とを算出する。そして、比較値算出手段は、各分割領域に関して成分・空間数算出手段が算出した連結成分の数と空間(穴)の数とから分割領域ごとの比較値を算出し、判定手段は、分割領域ごとに算出された比較値と所定の基準値とをそれぞれ比較することにより、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。
それゆえ、組織の撮像画像全体を解析する場合よりも癌の判定の精度を高めることができるとともに、画像のどの部分に癌組織があるのかを特定することができる。
また、上記所定の基準値は、正常な組織における空間の数の範囲を示すものであり、上記判定手段は、上記空間数算出手段が算出した上記空間の数が、上記所定の基準値が示す範囲から外れている場合に、上記撮像画像に癌組織の像が含まれていると判定することが好ましい。
上記の構成により、空間数算出手段が算出した空間の数が、正常な組織における空間の数の範囲から外れている場合に、組織の撮像画像に癌組織の像が含まれていると判定される。例えば、判定手段は、空間の数が、所定の基準値が示す範囲よりも大きい場合に分化型の癌組織が存在すると判定し、空間の数が、所定の基準値が示す範囲よりも小さい場合に低分化型の癌組織が存在すると判定する。
それゆえ、組織の撮像画像に分化型の癌組織と低分化型の癌組織とのいずれが含まれているか不明な場合でも、癌組織の有無の判定を適切に行うことができる。
上記画像解析装置は、上記撮像画像を所定の大きさの分割領域に分割する分割手段をさらに備え、上記空間数算出手段は、上記分割手段が生成した分割領域ごとに上記空間の数を算出し、上記判定手段は、上記分割領域ごとに上記判定を行うことが好ましい。
上記の構成によれば、分割手段は、組織の撮像画像を所定の大きさの分割領域に分割し、空間数算出手段は、分割手段が生成した分割領域ごとに空間の数を算出する。そして、判定手段は、分割領域ごとに空間数算出手段が算出した空間の数と所定の基準値とをそれぞれ比較することにより、各分割領域に癌組織の像が含まれているかどうかを判定する。
それゆえ、組織の撮像画像全体を解析する場合よりも癌の判定の精度を高めることができるとともに、撮影画像のどの部分に癌組織があるのかを特定することができる。
また、画像解析装置を動作させるための画像解析プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための画像解析プログラムおよび当該画像解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。