図1は、本発明が適用されるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。
ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。また、上部旋回体3の後部には、カウンタウェイト3aが設けられている。カウンタウェイト3aは、掘削アタッチメントを前方に伸長させたときにハイブリッド式ショベルが前方に倒れるのを防止する。
なお、本発明が適用可能なショベルは、ハイブリッド式ショベルに限られず、電動旋回を採用したショベルであれば、例えば外部電源から充電電力が供給される電気駆動式ショベルにも本発明を適用することができる。
図2は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線(太線)、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線(細線)でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。ここで、旋回用電動機21が上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23が上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくブレーキ装置に相当する。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
電力検出部SR1は、インバータ20と旋回用電動機21との間でやり取りされる電力を検出する検出手段であり、電圧検出部SR11及び電流検出部SR12を含む。すなわち、電力検出部SR1は、旋回用電動機21が力行運転により消費する電力の値(電圧値及び電流値)、又は、旋回用電動機21が回生運転により生成する電力の値(電圧値及び電流値)を検出する。
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータとDCバス110とを含む。第2の蓄電器としてのDCバス110は、第1の蓄電器としてのキャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、図3には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り換える制御を行う。DCバス110は、インバータ18A及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
図2に戻り、コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り換え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切換制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切換制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
上述のような構成のハイブリッド式ショベルによる作業では、上部旋回体3を一定の旋回位置に保持しながらブーム4、アーム5、バケット6を駆動して掘削作業等を行なうことがある。このときは、上部旋回体3が外力により旋回してしまわないように、メカニカルブレーキ23によりブレーキがかけられる。メカニカルブレーキ23は、操作装置26の旋回用操作レバー(例えば、レバー26A)が一定時間操作されないと、自動的に作動され、旋回用操作レバーが操作されると直ちに解除される。
本実施形態では、メカニカルブレーキ23によりブレーキをかけながらブーム4、アーム5、バケット6による作業を行なう状態とならないようにする。すなわち、上部旋回体3を停止しながら作業を行なうときにはメカニカルブレーキ23を解除し、その代わりに油圧を利用してブレーキ力を発生して上部旋回体3にブレーキをかけて停止した状態にする。油圧によるブレーキ力を発生させるための油圧機器として、本実施形態では、例えば油圧モータが用いられる。
このような油圧モータを利用した上部旋回体3のブレーキ制御のために、コントローラ30は、旋回制御装置として機能する。
図4は油圧によるブレーキ力を発生させるための旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。図4において、図2に示す構成部品と同等の部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態では、旋回用電動機21の出力軸に旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が機械的に連結される。旋回ブレーキ用油圧モータ40は、ポート40aとポート40bとを有する油圧モータである。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が一方向に回転駆動されると、ポート40aが吸入ポートとなりポート40bが吐出ポートとなって、作動油をポート40aからポート40bの方向に流そうとする。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が反対方向に回転駆動されると、ポート40bが吸入ポートとなりポート40aが吐出ポートとなって、作動油をポート40bからポート40aの方向に流そうとする。
ここで、ポート40aとポート40bを閉鎖して作動油が流れないようにしておくと、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸は回転することができない。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸は旋回用電動機21の出力軸に機械的に連結されているので、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が回転できなくなると、旋回用電動機21の出力軸も回転できなくなり、上部旋回体3も旋回できなくなる。したがって、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bを閉鎖して作動油が流れないようにすることで、上部旋回体3にブレーキがかけられた状態となり、上部旋回体3を停止状態に維持することができる。
旋回ブレーキ用油圧モータ40には油圧回路50が接続されており、油圧回路50により作動油の流れが制御される。油圧回路50は切換弁60を有している。切換弁60は、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに繋がる油路50aとポート40bに繋がる油路50bとを接続した状態と、油路50aと油路50bとを遮断した状態のいずれかに切換える弁である。切換弁60の動作は、コントローラ30からの切換信号により制御される。図4には、切換弁60により油路50aと油路50bとを遮断した状態が示されている。油路50aと油路50bとを遮断することは、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bを閉鎖することに相当する。したがって、切換弁60により油路50aと油路50bとを遮断することで、上部旋回体3にブレーキをかけて停止状態に保持することができる。
一方、切換弁60により油路50aと油路50bとを接続した状態にすると、油路50aから旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに流れた作動油は、旋回ブレーキ用油圧モータ40に吸い込まれ、ポート40bから吐出される。ポート40bから吐出された作動油は油路50bを流れて再び切換弁60に戻り、油路50aを流れて旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに吸い込まれる。このように、切換弁60により油路50aと油路50bとを接続して閉回路を形成することで、旋回ブレーキ用油圧モータ40を空回りさせた状態で駆動することができる。この状態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除された状態であり、上部旋回体3を旋回駆動することができる。すなわち、上部旋回体3を旋回させるときには、切換弁60を作動して、油路50aと油路50bとを接続した状態にする。
油圧回路50は、リリーフ弁52A、52B及び逆止弁54A、54Bを有する。リリーフ弁52A、52B及び逆止弁54A、54Bは、油路50a及び油路50b内の油圧が高くなり過ぎないように、油圧を逃がすために設けられる。例えば、上部旋回体3に作用する外力(トルク)が非常に大きくなり、油路50b内の油圧が過度に上昇してリリーフ弁52Bのリリーフ圧を超えると、高圧の作動油はリリーフ弁52Bから流れ出て、逆止弁54Aを通り、油路50aに流れる。これにより、油路50b内の油圧は低下し、リリーフ弁52Bのリリーフ圧以下に保たれる。油路50a内の油圧が過度に上昇した場合も、同様に、リリーフ弁52Aのリリーフ圧以下に保たれる。このため、旋回駆動系を構成する部品の損傷を防止することができる。
また、油路50aには、圧力センサ62Aが接続され、油路50bには、圧力センサ62Bが接続される。圧力センサ62Aは、油路50a内の油圧を検出し、その検出値PRをコントローラ30に対して出力する。圧力センサ62Bは、油路50b内の油圧を検出し、その検出値PLをコントローラ30に対して出力する。
次に、斜面に位置するハイブリッド式ショベルが上部旋回体3の自重によるトルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させているときに、上部旋回体3を旋回させるために旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除する処理(以下、「ブレーキ解除処理」とする。)について説明する。図5は、コントローラ30によるブレーキ解除処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、旋回用操作レバーが操作されたか否かが判定される。旋回用操作レバーが操作されていないと判定されると(ステップS11のNO)、今回のブレーキ解除処理は終了される。一方、旋回用操作レバーが操作されたと判定されると(ステップS11のYES)、処理はステップS12に進み、圧力センサ62Aの検出値PRと圧力センサ62Bの検出値PLとの間の圧力差から保持トルクが算出される。このとき、メカニカルブレーキ23によるブレーキがかけられている場合、そのブレーキは解除される。
「保持トルク」とは、上部旋回体3の自重によるトルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させるために必要なトルクである。また、保持トルクは、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキがかけられている場合に、上部旋回体3の自重によるトルクに対抗して自然に発生するトルクである。そのため、保持トルクは、上部旋回体3の自重によるトルクとは逆向きで大きさが等しい。また、保持トルクは、掘削アタッチメントを伸長させた状態と短縮させた状態とでその向きが異なる場合がある。掘削アタッチメントを伸長させた状態では、ハイブリッド式ショベルの重心が旋回中心から見て上部旋回体3の前部に位置するのに対し、掘削アタッチメントを短縮させた状態では、ハイブリッド式ショベルの重心が旋回中心から見て上部旋回体3の後部に位置する場合があるためである。また、保持トルクは、掘削アタッチメントの伸長度合いが大きくなるにつれて大きくなる。ハイブリッド式ショベルの重心が旋回中心から遠ざかるためである。
また、保持トルクτは、油路50a内の油圧PRと油路50b内の油圧PLとの間の圧力差に比例し、例えば、以下の式で表される。
ここで、q[cc/rev]は、旋回ブレーキ用油圧モータ40のモータ容積を表し、P
R[MPa]は、圧力センサ62Aの検出値を表し、P
L[MPa]は、圧力センサ62Bの検出値を表す。また、図4における旋回ブレーキ用油圧モータ40の時計回りの回転方向を正方向とする。
ステップS12において保持トルクτが算出されると、処理はステップS13に進み、旋回用電動機21による旋回トルクの出力が開始される。
続いて、ステップS14において、旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上となったか否かが判定される。なお、旋回トルクの向きと保持トルクの向きとは互いに正反対である。
具体的には、コントローラ30は、例えば、電流検出部SR12が検出した旋回用電動機21に供給される入力電流値[A]を所定の定格電流値[A]で除した値をトルクモニタ値[%]として算出する。そして、コントローラ30は、旋回用電動機21の所定の定格トルク[N・m]とトルクモニタ値[%]とを乗算して入力電流値[A]のトルク換算値[N・m]を旋回トルクとして算出する。また、コントローラ30は、速度制御及びトルク制御を用いて旋回用電動機21を制御する場合、トルク制御の際に用いるトルク指令値に基づいて旋回トルクを算出してもよい。その後、コントローラ30は、算出した保持トルクの大きさと算出した旋回トルクの大きさとを比較して、旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上となった否かを判定する。
また、コントローラ30は、圧力センサ62Aの検出値PRと圧力センサ62Bの検出値PLとの間の圧力差に基づいて旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上となった否かを判定してもよい。具体的には、コントローラ30は、その圧力差が減少してゼロになったときに、或いは、その圧力差の正負が反転したときに旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上になったと判定する。この場合、コントローラ30は、保持トルク及び旋回トルクの何れをも算出する必要はない。その圧力差の推移を監視することによって旋回トルクの大きさと保持トルクの大きさとの間の関係を認識できるためである。
ステップS14において旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上でないと判定されると、旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上となるまでステップS14が繰り返される。一方、ステップS14において旋回トルクの大きさが保持トルクの大きさ以上となったと判定されると、処理はステップS15に進み、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される。
次に、図6〜図9を参照しながら、旋回ブレーキを解除する際の旋回用操作レバーのレバー操作量、上部旋回体3に作用するトルク、及び上部旋回体3の旋回角度の推移について説明する。
なお、図6〜図8は、斜面に位置するハイブリッド式ショベルが上部旋回体3の自重によるトルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させているときに、上部旋回体3を斜面上方に時計回りに旋回させる際(以下、「正方向の昇り旋回を開始する際」とする。)の推移を示す。
また、図9は、斜面に位置するハイブリッド式ショベルが上部旋回体3の自重によるトルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させているときに、上部旋回体3を斜面下方に反時計回りに旋回させる際(以下、「負方向の降り旋回を開始する際」とする。)の推移を示す。
図6は、上述のブレーキ解除処理が実行されることなく、旋回用操作レバーが操作されると同時に旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除された場合を比較例として示す。
なお、図6(A)は、旋回用操作レバーのレバー操作量の推移を示し、図6(B)は、上部旋回体3に作用する各種トルクの推移を示し、図6(C)は、上部旋回体3の旋回角度の推移を示す。
また、図6(B)において、破線は、上部旋回体3の自重による自重トルクの推移を示し、一点鎖線は、旋回用電動機21による旋回トルクを示す。また、二点鎖線は、旋回ブレーキ用油圧モータ40による保持トルクを示し、実線は、自重トルク、旋回トルク、及び保持トルクの合計トルクを示す。図7〜図9においても同様である。
また、レバー操作量、各種トルク、及び旋回角度は何れも、図4の旋回ブレーキ用油圧モータ40を時計回りに回転させる場合を正値とし、反時計回りに回転させる場合を負値とする。図7〜図9においても同様である。
図6(B)で示すように、合計トルクは、当初、互いに向きが正反対で大きさが同じである自重トルクと保持トルクとにより大きさがゼロとなっている。
その後、図6(A)で示すように、時刻t1において、旋回用操作レバーが正方向に操作されると、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される。その結果、保持トルクがゼロとなり、合計トルクは、自重トルクに等しい負値となる。これは、操作方向とは反対の方向に上部旋回体3が旋回することを意味する。
その後、図6(B)で示すように、旋回トルクが正方向に徐々に増大することによって、合計トルクはゼロに近づき、時刻t2においてゼロに至る。なお、図6(C)における時刻t1と時刻t2との間の旋回角度の推移は、上部旋回体3が時刻t1において操作方向とは逆の方向に降り旋回し始め、時刻t2に至るまで降り旋回を継続する状態を示す。
その後、上部旋回体3は、合計トルクが正値となるため、旋回方向を反転させて正方向への昇り旋回を開始する。このように、時刻t1から時刻t2の間は、旋回トルクが自重トルクを下回るので、上部旋回体3が逆方向に旋回してしまう。
このように、旋回用操作レバーが正方向に操作されたときに旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除し、旋回用電動機21により旋回トルクをゼロから徐々に増大させるのみの制御では、上部旋回体3を操作方向とは逆の方向に降り旋回させてしまう。
次に、図7を参照しながら、上述のブレーキ解除処理が実行され、旋回用操作レバーが正方向に操作された後で、自重トルクとは逆向きの旋回トルクの大きさが自重トルクの大きさに等しくなったときに旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される場合について説明する。
図7(B)で示すように、合計トルクは、当初、互いに向きが正反対で大きさが同じである自重トルクと保持トルクとにより大きさがゼロとなっている。
その後、図7(A)で示すように、時刻t1において、旋回用操作レバーが正方向に操作されると、旋回トルクが正方向への増大を開始する。なお、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキはそのまま維持される。その結果、保持トルクは、旋回トルクの増大に比例するように減少を開始し、旋回トルクと保持トルクの合計の大きさが、逆向きの自重トルクの大きさと等しくなるので、合計トルクはゼロのまま維持される。これは、上部旋回体3が静止したままであることを意味する。しかしながら、時刻t1において、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除することはできない。保持トルクの逓減は、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが作用しているために実現されるからであり、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除すると、保持トルクは瞬時にゼロとなってしまうからである。
その後、図7(B)で示すように、旋回トルクが正方向に徐々に増大することによって、保持トルクはゼロに近づき、時刻t2においてゼロに至る。このとき、旋回トルクの大きさが自重トルクの大きさと等しくなり、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される。なお、図7(C)における時刻t1と時刻t2との間の旋回角度の推移は、上部旋回体3が時刻t2に至るまで旋回しない状態を示す。
その後、上部旋回体3は、旋回トルクが正方向に更に増大することによって合計トルクが正値となるため、正方向への昇り旋回を開始する。
このように、旋回用操作レバーが正方向に操作されたときに旋回トルクの増大を開始させ、旋回トルクの大きさが自重トルクの大きさに等しくなったときに旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除するこのブレーキ解除処理では、上部旋回体3が操作方向とは逆向きに降り旋回するのを防止できる。
次に、図8を参照しながら、上述のブレーキ解除処理が実行され、旋回用操作レバーが正方向に操作されたときに、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルクを瞬時に発生させる場合について説明する。
図8(B)で示すように、合計トルクは、当初、互いに向きが正反対で大きさが同じである自重トルクと保持トルクとにより大きさがゼロとなっている。
その後、図8(A)で示すように、時刻t1において、旋回用操作レバーが正方向に操作されると、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルクが瞬時に生成される。そして、旋回トルクは、正方向への更なる増大を開始する。このとき、旋回トルクの大きさが自重トルクの大きさと等しくなり、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される。その結果、合計トルクは時刻t1において増大を開始する。これは、上部旋回体3が時刻t1において正方向への昇り旋回を開始することを意味する。
このように、旋回用操作レバーが正方向に操作されたときに、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルクを瞬時に発生させ、合計トルクがゼロであることを確認した後、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除する。このブレーキ解除処理では、上部旋回体3が操作方向とは逆向きに降り旋回するのを防止しながら、上部旋回体3の昇り旋回を迅速且つ円滑に開始させることができる。
次に、図9を参照しながら、旋回用操作レバーが負方向(自重トルクの方向に対応する方向)に操作されたときに上述のブレーキ解除処理が実行される場合について説明する。
この場合、旋回用電動機21は、最初に、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルク、すなわち、レバー操作方向に対応する方向とは逆向きの旋回トルクを発生させる。その後、旋回用電動機21は、その逆向きの旋回トルクをゼロまで減少させた後、自重トルクと同じ方向、すなわちレバー操作方向に対応する方向に旋回トルクを増大させる。
図9(B)で示すように、合計トルクは、当初、互いに向きが正反対で大きさが同じである自重トルクと保持トルクとにより大きさがゼロとなっている。
その後、図9(A)で示すように、時刻t1において、旋回用操作レバーが負方向に操作されると、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルクが瞬時に生成される。すなわち、レバー操作方向に対応する方向とは逆向きの旋回トルクが生成される。このとき、旋回トルクの大きさが自重トルクの大きさと等しくなり、合計トルクがゼロであることが確認された後、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除される。その結果、合計トルクは時刻t1において負方向への増大を滑らかに開始する。レバー操作方向に対応する方向とは逆向きの旋回トルクが生成されることで、合計トルクの負方向への急激な増加が回避されるためである。
また、レバー操作方向とは逆向きの旋回トルクがゼロになるまでは、合計トルクの大きさが自重トルクの大きさより小さいためである。これは、上部旋回体3が時刻t1において負方向への降り旋回を滑らかに開始することを意味する。なお、旋回トルクは、ゼロに至った後、負方向への増大を継続する。このとき、合計トルクの大きさは、自重トルクの大きさと、同じ向きの旋回トルクの大きさとの合計となる。
このように、コントローラ30は、上部旋回体3を降り旋回させるために旋回用操作レバーが負方向に操作されたときに、自重トルクとは逆向きで自重トルクと同じ大きさの旋回トルク、すなわち、レバー操作方向とは逆向きの旋回トルクを発生させる。その結果、コントローラ30は、上部旋回体3がレバー操作方向である方向に急激に降り旋回するのを防止しながら、上部旋回体3の降り旋回を迅速且つ円滑に開始させることができる。
以上の構成により、旋回制御装置としてのコントローラ30は、上部旋回体3の旋回を開始する際のブレーキの解除をより適切に制御することができる。
また、コントローラ30は、圧力センサ62Aの検出値PRと圧力センサ62Bの検出値PLとの間の圧力差に基づいて保持トルクの大きさを検出する。そのため、コントローラ30は、傾斜センサや角度センサ等を用いて掘削アタッチメントの姿勢や上部旋回体3の重心位置等を検出した上で保持トルクの大きさを算出する場合に比べ、保持トルクをより正確に且つより安定的に検出することができる。
なお、上述の実施形態では、ブレーキ解除処理は、斜面に位置するハイブリッド式ショベルが上部旋回体3の自重トルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させているときに、上部旋回体3を旋回させるために旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除する場合に実行される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。ブレーキ解除処理は、例えば、掘削アタッチメントが受ける横風等の横力による旋回トルクに対抗しながら上部旋回体3を静止させているときに上部旋回体3を旋回させるために旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキを解除する場合に実行されてもよい。
次に、第2実施形態について説明する。図10は、本発明の第2実施形態による旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。図10において、図4に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態では、油圧回路50は切換弁60を有していない。したがって、図10に示す油圧回路50では、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bから作動油を吐出することができず、常に閉鎖状態となっている。すなわち、旋回ブレーキ用油圧モータ40は常にブレーキをかけた状態となっており、このままでは、上部旋回体3を旋回駆動することができない。そこで、本実施形態では、切換弁60の代わりに、旋回ブレーキ用油圧モータ40と旋回用電動機21との間に断続機70が設けられている。
断続機70は、例えばクラッチのように、二つの部材を互いに係合させて回転力を伝達する状態と、二つの部材の係合を解除して回転力を伝達できない状態とを切り換える。すなわち、断続機70は、コントローラ30からの信号により、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを連結した状態と、切り離した状態とを切り換えることができる。したがって、旋回ブレーキ用油圧モータ40でブレーキをかけるときには、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを断続機70により連結した状態とする。一方、旋回用電動機21を駆動して上部旋回体3を旋回駆動するときには、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを断続機70により切り離した状態とする。
以上のように、本実施形態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40を常にブレーキをかけた状態としておき、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが不要のときは、旋回ブレーキ用油圧モータ40を旋回用電動機21から切り離すことで対応している。
上述の第1及び第2の実施形態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40を旋回用電動機21に連結することで、旋回用電動機21にブレーキをかけ、結果として上部旋回体3にブレーキをかけているが、旋回ブレーキ用油圧モータ40を上部旋回体3又は旋回機構2に直接連結してもよい。
また、上述の実施形態では、エンジン11と電動発電機12とを油圧ポンプであるメインポンプ14に接続してメインポンプを駆動する、いわゆるパラレル型のハイブリッド式ショベルに本発明を適用した例について説明した。しかしながら、本発明は、図11に示すようにエンジン11で電動発電機12を駆動し、電動発電機12が生成した電力を蓄電系120に蓄積してから蓄積した電力のみによりメインポンプ14を駆動する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド式ショベルにも適用することもできる。この場合、電動発電機12は、エンジン11によって駆動させることによる発電運転のみを行なう発電機としての機能を備えている。
また、エンジンが搭載されずに電動機のみで油圧ポンプを駆動する電気式ショベルにも本発明を適用することができる。図12は電気式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。電動機として機能する電動発電機120はメインポンプ14に接続され、メインポンプ14は電動発電機12のみにより駆動される。蓄電系120には、コンバータ410を介して外部電源500が接続され、蓄電系120の蓄電部(キャパシタ19)には、外部電源500から電力が供給されて充電される。
また、上述の実施形態では、コントローラ30は、停止状態の際には、旋回ブレーキ用油圧モータ40の油路50a、50bを遮断して上部旋回体3の自重トルクに対抗する保持トルクを発生させている。しかしながら、コントローラ30は、保持トルクよりも小さい旋回トルクを旋回用電動機21に出力させた状態で、上部旋回体3を停止状態に維持するようにしてもよい。この場合、コントローラ30は、停止状態の間に既に旋回用電動機21により旋回トルクを出力させているので、上部旋回体3の旋回を迅速且つ円滑に開始させることができる。