JP5386961B2 - 析出強化型複相熱延鋼板 - Google Patents
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そのため、自動車部品用鋼板は優れた強度と加工性とを兼備することが不可欠となるが、両者は一般に相反する関係にあるため、強度と加工性を両立させることは容易ではない。
例えば、複相鋼(DP鋼)ではフェライトを含有することにより高い伸び(高延性)を達成できるものの、複相組織であるために自動車足回り部品の成形時に必要となる伸びフランジ性に乏しい。
一方、フェライトを含有しないベイナイト単相鋼は、伸びフランジ性は良好であるが延性に乏しい。
しかしながら、これらの複相鋼板においては、TRIP効果による優れた均一伸びと、数10%以上の伸びフランジ性が安定して得られるものの、引張り強度は高々800MPa程度に留まっている。
また、ベイナイト単相では、1180MPa以上の引張り強度を達成することが困難であることも判明した。
熱延鋼板の組織をフェライト+ベイナイト二相組織とするための従来方法においては、例えば、オーステナイト温度域(A3変態点以上)で仕上げ圧延を終了した後、特定の冷却速度でMs点(マルテンサイト変態開始温度)以上Bs点(ベイナイト変態開始温度)以下に冷却して巻き取る工程を経る。更に、特開2003−171736号公報には、上記ベイナイトを焼戻す方法として、連続焼鈍やめっき工程においてA1変態点以上に加熱する方法が開示されているが、この方法では、焼戻し処理によって第二相であるベイナイト相にセメンタイトの析出およびその粗大化、並びに、転位密度減少による硬度低下(強度低下)が危惧される。
なお、本発明の組成を有する鋼についても同様の現象が確認されている。
(1) 質量%で、C:0.10%以上0.16%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以上1.8%以下、Al:0.5%以下およびN:0.001%以上0.005%以下を含有し、更に、Ti:0.14%以上0.2%以下およびNb:0.25%以上0.40%以下の少なくとも一種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、体積分率で30%以上45%以下の焼戻しベイナイト相と、フェライト相とを含む複相組織を有し、フェライト相および焼戻しベイナイト相は共に外径が10nm未満のMX析出物(但し、Mは金属元素、Xは炭素または窒素を意味する)を含有することを特徴とする熱延鋼板。
C:0.10%以上0.16%以下
CはMX析出強化を実現する上で必須の元素である。特に、同時に含有するMX析出物形成元素を全量析出させるためには、これらMX析出物形成元素の合計と原子比で等量以上のCを含有する必要がある。また、フェライトを主相、ベイナイト相を第二相とする本発明においては、広いオーステナイト+フェライト二相域を確保し得るC含有量が必要である。但し、過剰な含有はスラブ再加熱温度域での未固溶MX析出物が増加するとともに、二相域でのMX析出物の粗大化を促進するため、C含有量の上限を0.16%とする。一方、C含有量の下限は、フェライト域においてMXの析出を確保する観点から0.10%とした。
SiおよびAlは製鋼時の脱酸元素として有効である上、フェライト中に固溶して鋼強度を向上させるため、含有することが望ましい。しかしながら、SiおよびAlの含有量がそれぞれ0.5%を超えると、変態温度が上昇し、圧延後の二相域温度を確保することが困難となるため、SiおよびAlの含有量の上限を0.5%とする。
Mnは、固溶強化による母相の強度向上に有効である上、オーステナイト安定化元素として鋼の変態点制御に欠かせない元素である。また、本発明においてMnは、オーステナイト相とフェライト相の二相域を確保する上で極めて重要な元素である。しかしながら、1.8%超の含有はA3変態点の低下を招き、オーステナイトからフェライトへの変態時におけるMXの相界面析出が抑制され、フェライト相の析出強化が不十分となるため、Mn含有量の上限を1.8%とした。
NもMX析出強化を実現する上で有効な元素であるが、一般にオーステナイト域で安定なMN析出物を形成する傾向が強く、この安定なMN析出物はスラブ加熱温度域でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する重要な役割を果たす。これらの効果は、TiやNbなどのMX形成元素を含有する限りにおいてはNを0.001%以上含有すれば十分に得られる。一方、過剰なNの含有は多量のMX形成元素を窒化物として固着してしまい、本発明で活用する極微細MX析出物の析出量を相対的に低下させてしまう。このため、N含有量の上限は一般的な製鋼プロセスで達成可能な0.005%以下程度に抑制する。
TiはMXの微細析出物により析出強化を達成するのに必須の元素であり、特にオーステナイト域で非常に安定なTiNを形成し、オーステナイト結晶粒の粗大化抑制に有効に働く。Ti含有量の下限は、N含有量に応じて原子比でNと同等以上とすることが必須である。このため、N含有量の上限を0.005%とする本発明鋼種では0.02%程度は必須となる。更に、熱延後の炭化物を主体とするMXを効果的に析出させる場合においては、TiやNbは他のMX形成元素に比して圧倒的に有効な元素であり、特にTiはコスト的にも最も優位な元素である。しかしながら、Cに対して原子比で等量のTiを含有した場合、その非常に強い炭化物形成能のためにスラブ製造段階で粗大なTiCを形成し、スラブ再加熱時の溶体化が困難になる。特に本発明鋼種のように変態組織を利用するC含有量が高い鋼種においては、C含有量の30%程度を固定する程度の原子比でTiを含有することが望ましい。以上の理由により、微細MX析出促進効果が得られる範囲として0.14%以上0.20%以下とした。また、Tiの代わりに、或いは、Tiと共にNbを含有することも可能であり、この場合には上記Tiと同様の理由によりNbの含有量を0.25%以上0.40%以下とする。なお、TiとNbを共に含有する場合には、TiとNbの合計含有量をTi+Nb:0.2%以上0.3%以下とすることが好ましい。
V:0.12%以上0.20%以下、Mo:0.25%以上0.40%以下およびW:0.50%以上0.80%以下の中から選択される少なくとも一種
MX析出物の形成を促進し、本発明鋼の必須元素であるTiまたはNbに加えて、V、Mo、Wを含有することも、MXの微細析出物による析出強化を図る上で有効である。これらの元素はTiやNbが含有されていない鋼において、単独でのMX析出物形成能は小さいものの、MXの微細析出物の析出総量を高める元素としては極めて有効である。これらの元素もC含有量の30%を固定するのに必要な程度の原子比で含有することが望ましく、各々の含有量は、例えばVの場合0.12%以上0.20%以下、Moの場合0.25%以上0.40%以下およびWの場合0.50%以上0.80%以下である。
次に、フェライトに対する焼戻しベイナイト相の体積分率を30%以上45%以下に限定した理由について説明する。0.15質量%C-0.3Si質量%-1.5Mn質量%-0.12Ti質量%-0.18V質量%を主要成分とする鋼を、熱間圧延後の中間保持温度を675℃〜780℃の間で変化させ、最終巻き取り温度:880℃、焼戻し条件:600℃×2hで二相組織熱延鋼板とし、この熱延鋼板からL方向(圧延方向)の試験片を作製して機械的特性TSおよび破断伸びELを測定した。焼戻し後ベイナイト相の体積分率については、L断面(試料を圧延方向に平行に切断した断面)の研磨試料を3%硝酸−メタノール溶液でエッチングし、3000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)組織写真5視野について焼戻しベイナイト相の面積率の平均値を求め、この面積率から換算した。その結果、図2に示すように、焼戻しベイナイト相の体積分率が高くなると共にTSは上昇し、ELは減少しており、TS≧1180MPa、EL≧15%を満足する熱延鋼板における焼戻しベイナイト相の体積分率は、30%以上45%以下であることが明らかになった。したがって、本発明における熱延鋼板の焼戻しベイナイト組織分率を、体積分率で30%以上45%以下に限定した。
本発明においては、フェライト相と焼戻しベイナイト相の双方に、外径10nm未満のMX析出物をともに析出させることが重要である。前述のように、主相はフェライト相であり、フェライト相強化のためには炭化物を主体とするMX析出物の微細分散が好ましいのは従前のとおりであり、本発明においてはプロセス上、熱間仕上げ圧延終了後の冷却工程におけるγ→α変態に伴う相界面析出現象によってこの状態を実現することができる。一方、第2相のベイナイト相はそのままでは、M3Cを含有しており、このままでは十分な強度と伸びを達成できない。しかしながら、ベイナイト相を低温域で適切に焼戻すことにより、既析出のM3Cの全量もしくは一部がより微細なMX析出物に変化し、強度と伸びの向上が初めて図られる。また、TS≧1180MPa、EL≧15%を満足する図2の熱延鋼板について、焼戻しベイナイト相に含まれる析出物をTEM観察したところ、外径が10nm未満のMX析出物が確認された。このため、本発明では鋼を構成する主相フェライト並びに第2相ベイナイト双方に外径10nm未満のMX析出物を存在させることが重要である。
鋼スラブなどの鋼片は、一旦冷却後に所定温度(スラブ加熱温度)に再加熱してから熱間圧延を施す場合、或いは、鋼片が前記所定温度より低温となる前に直ちに熱間圧延を施す場合の何れであってもよい。また、鋼片が完全に冷却する前に前記所定温度まで短時間加熱して熱間圧延を施してもよい。スラブ加熱温度は炭化物を再固溶させるため(或いは析出成長させないため)、1100〜1200℃程度が好適である。また、未固溶Ti系炭化物を残存させないためには、この温度での保持時間は30分以上とすることが望ましい。
仕上げ圧延終了温度の最適化は、伸びおよび伸びフランジ性の確保と圧延荷重を低減する上で重要であり、本発明においては700℃〜900℃とすることが望ましい。700℃未満では実質的にフェライト単相となり、第二相による組織強化を活用することができない。また、熱延中においてMXの歪誘起析出によってMXが粗大化し易く、フェライト粒の析出強化も不十分となる。一方、圧延温度の上昇に伴い圧延時の荷重が低下して加工性は安定化する。また、オーステナイト単相域またはオーステナイト+フェライト二相域で熱延を終了することで、オーステナイト相からフェライト相への変態時の相界面析出によってMX析出物の微細分散が実現する。更に、仕上げ圧延終了後、速やかにベイナイト変態温度域に過冷することにより未変態オーステナイト領域がベイナイト変態する。但し、一般的な製造ラインで高温の仕上げ圧延温度を確保することは容易でないことから、上限温度をオーステナイト単相域でも低めの900℃とすることが望ましい。
本発明では、主相フェライト組織中にMX析出物を微細分散させると共に、本発明の第二相を得るためのベイナイト相を確保することが必須である。そのため、オーステナイト単相域で圧延を終了した場合には、オーステナイト+フェライト二相域まで空冷して極短時間保持後、十分な冷却速度でMs点以上Bs点以下に冷却して未変態オーステナイト領域をベイナイト相とする必要がある。一方、オーステナイト+フェライト二相域で圧延を終了した場合には、速やかに冷却してベイナイト相とすることが重要である。なお、実際の製造性を考慮すると、オーステナイト単相域で熱間仕上げ圧延を終了した後、水量制御によって冷却速度を変化させて所望の二相組織を得ることが望ましい。
主相フェライト+焼戻しベイナイト相の複相組織を実現するためには、仕上げ圧延終了後Bs点以下に過冷された鋼板に適切な条件で焼戻し処理を施す必要があるが、その条件は600〜650℃×3h以内とすることが望ましい。焼戻し温度が600℃未満ではベイナイト組織中でセメンタイトの析出が優先し、本発明の効果を奏するための必須要件、すなわち、焼戻しベイナイト相中に整合析出させるべきMX析出物の形成が困難となる。一方、焼戻し温度が650℃を超えると、フェライト相内の微細なMX析出物が粗大化して強度低下を招く。また、焼戻し時間は焼戻し温度に依存するが、焼戻し温度が下限温度600℃である場合においても、焼戻し温度に3h以上保持することは生産効率の著しい低下を招く。なお、焼戻し処理は、オンラインでの巻き取り処理、または巻き取り後のバッチ焼鈍の何れかで実施すればよい。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.10%以上0.16%以下、
Si:0.5%以下、
Mn:0.5%以上1.8%以下、
Al:0.5%以下および
N:0.001%以上0.005%以下
を含有し、更に、
Ti:0.14%以上0.2%以下およびNb:0.25%以上0.40%以下の少なくとも一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、体積分率で30%以上45%以下の焼戻しベイナイト相と、フェライト相とを含む複相組織を有し、フェライト相および焼戻しベイナイト相は共に外径が10nm未満のMX析出物(但し、Mは金属元素、Xは炭素または窒素を意味する)を含有することを特徴とする熱延鋼板。 - 請求項1に記載の熱延鋼板において、更に
V:0.12%以上0.20%以下、
Mo:0.25%以上0.40%以下および
W:0.50%以上0.80%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする熱延鋼板。
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