以下、基材のシリコーンゴム層の少なくとも一方の面に、該基材のシリコーンゴム層とは組成の異なる第二のシリコーンゴム層が設けられた複層のシリコーンゴム層からなる、本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートについて詳述する。
本発明で使用する基材のシリコーンゴム層は、下記(A)成分と、(B),(C)及び(D)成分の少なくとも1種、並びに(E)成分とを含有するシリコーンゴム組成物の硬化物からなるものである。
(A)平均重合度が100以上のオルガノポリシロキサン
(B)水分を除いた揮発分が0.5質量%以下であるカーボンブラック
(C)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ
(D)金属、シリカ以外の無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物から選択される少なくとも一種
(E)硬化剤
上記(A)成分である平均重合度が100以上のオルガノポリシロキサンは、R1aSiO(4-a)/2の平均組成式(1)で表されるものであることが好ましい。ここで(1)式中のR1は、炭素数1〜12好ましくは1〜8の、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基等のハロゲン置換、シアノ基置換炭化水素基等が挙げられる。
なお、各置換基はそれぞれ異なっていても同一でもよいが、アルケニル基の含有量は、全有機基中の1.0×10-5モル%以上、好ましくは1.0×10-4モル%以上、更に好ましくは1.0×10-2モル%以上であって、20モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましく、また一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有していることが必要である。
上記(A)成分であるオルガノポリシロキサンとしては、主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、或いはこのオルガノポリシロキサンの主鎖に、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等を導入したものが好ましい。また、分子鎖末端がトリオルガノシリル基又は水酸基で封鎖されたものであることが必要であり、このトリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基などが例示される。aは1.5〜2.8の正数、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.98〜2.02の正数である。
前記平均組成式(1)のオルガノポリシロキサンは、その分子構造が直鎖状であっても、R1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状であってもよいが、通常は、主鎖部分が基本的にR1 2SiO2/2のジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がR1 3SiO1/2のトリオルガノシロキシ単位で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的である。また、分子中のアルケニル基は、分子鎖末端或いは分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合したものであっても、また両方に結合したものであってもよいが、硬化性、硬化物の物性等の点から、少なくとも、分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するものであることが好ましい。
また、平均重合度が100以上である上記オルガノポリシロキサンの平均重合度は、2,000〜100,000であることが好ましい。重合度が100未満では、硬化後の機械的強度が劣り、脆くなる。
(B)成分である、水分を除いた揮発分が0.5質量%以下であるカーボンブラックは、前記第一のシリコーンゴム層の耐熱性及び熱伝導性を向上させるばかりでなく、機械的強度を向上させると共に、シリコーンゴムシートを導電化して帯電防止性を付与するものである。一般に、シリコーンゴムの耐熱性は、組成物中のpH、水分あるいは不純物の影響を受けるために、添加剤の選定には十分注意する必要がある。
カーボンブラックはシリコーンゴムの耐熱性を向上させることができるが、それに含有される不純物及び揮発分を考慮する必要がある。カーボンブラックの揮発分は、表面に化学的に吸着している酸素化合物(カルボキシル、キノン、ラクトン、ヒドロキシル等の酸性成分)の重量に該当するが、加熱することによりこの酸素化合物が表面から気化するため、カーボンブラックに含有される揮発分はシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与える。そこで、揮発分が0.5質量%以下、特に0.4質量%以下のカーボンブラックを用いた場合には、300℃以上の高温下でも使用することが可能な耐熱性を実現することができる。
なお、本発明における揮発分の測定方法としては、JIS K 6221の、“ゴム用カーボンブラック試験方法”に記載されている方法を用いる。具体的には、るつぼの中にカーボンブラックを規定量入れ、950℃で7分間加熱した後の揮発減量を測定するものである。
カーボンブラックは、その製造方法により、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等に分類されるが、本発明で使用する、揮発分が0.5質量%以下のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックや導電性カーボンブラック等が好適である。このようなカーボンブラックとしては、例えば特開平1−272667号公報の第3頁、第36〜40行目に記載されたものを挙げることができる。
一般に、比表面積が大きいカーボンブラックほどシリコーンゴムの耐熱性を向上させ、高温時の機械的強度の低下を抑制する効果が大きいため、本発明においては、BET比表面積が30m2/g以上のカーボンブラックを使用することが好ましく、特に50m2/g以上のカーボンブラックを使用することが好ましく、100m2/g以上のカーボンブラックを使用することことが最も好ましい。なお、BET比表面積の上限値は、500m2/g以下、特に300m2/g以下であることが好ましい。
本発明で使用する(C)成分である、BET比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカは、シリコーンゴムの補強成分として使われる補強性シリカ微粉末である。この微粉末シリカは、その種類が特に限定されることはなく、通常ゴムの補強材として使用されるシリカの中から適宜選択することができるが、本発明においては特に、50〜800m2/gの沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカなどが好適に使用される。ゴム強度を向上させるには、ヒュームドシリカが特に好適である。微粉末シリカの比表面積が50m2/g未満では、補強効果を十分に得ることはできない。
また、上記補強性シリカ微粉末は、表面処理されたシリカ微粉末であってもよい。その場合、これらのシリカ微粉末は、粉体の状態のまま、予め周知の技術によって直接処埋されてもよい。例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に、上記未処理のシリカ微粉末と処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下で、室温或いは熱処理しながら混合処理する。場合により、触媒を使用して処理を促進してもよい。混練後乾燥することによって、処理シリカ微粉末が得られる。
処理剤の配合量は、シリカ微粉末の表面積から計算される量以上であればよい。処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられるが、本発明においては、特に、シラン系カップリング剤又はシラザン類を処理剤として使用することが好ましい。
本発明で使用する(B)成分及び(C)成分は、共にシリコーンゴムを補強する役割を有するので、どちらか一方を使用しなくても良い。一般的には、(B)成分である、水分を除いた揮発分が0.5質量%以下であるカーボンブラックの方が、(C)成分であるBET比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカよりも耐熱性向上への寄与はより大きいものの、室温では、(B)成分は(C)成分より、強度への寄与が小さい。したがって本発明においては、これら2種類の補強成分の使用量を、本発明の熱圧着シリコーンゴムシートの使用温度に応じて、(B)成分と(C)成分の合計の配合量が、(A)成分100質量部に対して0〜150質量部となるように適宜調整する。本発明における(B)成分と(C)成分の上記合計の配合量は、10〜120質量部であることが好ましく、20〜100質量部の範囲で使用することが最も好ましい。150質量部より多いと配合が困難になる上、成形加工性が悪くなる。
本発明で使用する(D)成分は、金属、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物からなる群の中から選択される少なくとも1種の微粉末であり、本発明のシリコーンゴムシートに熱伝導性を付与するものである。上記金属の具体例としては、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムなど、無機酸化物の具体例としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、珪素、鉄等の酸化物、無機窒化物の具体例としてはホウ素、アルミニウム、珪素等の窒化物、無機炭化物の具体例としては珪素、ホウ素等の炭化物等が例示されるが、特に、ゴム強度と熱伝導性、及び良好な電気特性を付与する観点から、本発明においては(D)成分としてケイ素を使用することが好ましい。
本発明における(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜1,600質量部であり、特に2〜1,000質量部の範囲で使用することが好ましい。1,600質量部より多いと配合が困難になる上成形加工性が悪くなる。また、本発明で使用する(B)成分、(C)成分及び(D)成分の作用効果は重複する場合があるため、本発明で使用するそれらの合計配合量は、(A)成分100質量部に対して10〜1,600質量部であり、20〜1,200質量部であることが好ましく、特に30〜1,000質量部の範囲で使用することが好ましい。
(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計配合量が10質量部未満であると、基材のシリコーンゴム層の熱伝導率が低下するので十分な性能が得られず、1,600質量部を超えると配合・混練が困難になる上、加工性も悪くなる。また、本発明の熱圧着用シリコーンゴムシートのゴム強度や耐熱性を重視する場合には、例えば、(A)成分100質量部に対し、(B)成分と(C)成分の合計の配合量を5〜100質量部とするというように、(B)成分や(C)成分の配合部数を相対的に多くすることが好ましい。一方、熱伝導性や電気特性を付与することを重視する場合には、例えば、(A)成分100質量部に対し、(B)成分と(C)成分の合計の配合量を5〜50質量部、(D)成分を5〜1,000質量部とするというように、(D)成分である熱伝導付与剤の配合部数を(B)成分や(C)成分に対して相対的に多くすることが好ましい。
本発明で使用する(E)成分の硬化剤は、通常シリコーンゴムの硬化に使用されている公知の硬化剤の中から適宜選択することができる。これらの硬化剤の例としては、ラジカル反応に使用されるジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;(A)成分のオルガノポリシロキサンが1分子中にアルケニル基を2個以上有する場合に使用される付加反応硬化剤として、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒;及び、(A)成分のオルガノポリシロキサンがシラノール基を2個以上含有する場合に対して使用される縮合反応硬化剤として、アルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、プロペノキシ基等の、加水分解性の基を2個以上有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。本発明においては、ラジカル反応及び/又は付加反応によって硬化させることが好ましい。
これら硬化剤の添加量は、通常のシリコーンゴムを硬化させる場合と同様にすれば良く、硬化有効量であれば良いが、ラジカル反応の場合には、(A)成分100質量部に対して有機過酸化物を0.1〜10質量部使用することが好ましく、付加反応の場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基が(A)成分のアルケニル基に対して0.5〜5モルとなる量、及び、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の触媒を、触媒金属として1〜2,000ppmとなる量使用することが好ましい。
本発明で使用する基材のシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、非反応性のオルガノポリシロキサン、末端がヒドロキシシリルジメチル基で封鎖されたオルガノポリシロキサン等の、粘度及び硬さを調節するための希釈剤、クレイ、炭酸カルシウム、けいそう土等の充填剤、コバルトブルー等の無機顔料、有機染料等の着色剤、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、ベンガラ、酸化チタン、酸化セリウム等の耐熱性及び難燃性向上剤、白金族金属系触媒等の難燃性向上剤、低分子シロキサンエステルやシラノール等の分散剤、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等の接着付与剤、ゴムコンパウンドのグリーン強度を上げるためのテトラフルオロポリエチレン粒子、ゴム強度を上げるためのガラス繊維、アラミド繊維、アミド繊維、炭素繊維等の繊維や粉末等を、その他の成分として添加してもよい。
次に、主として基材のシリコーンゴム層表面の非接着性を改善し、導電性接着剤との接着防止を目的として、本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートに設けられる、第二のシリコーンゴム層について説明する。
本発明で基材のシリコーンゴム層表面に設ける上記第二のシリコーンゴム層は、下記(F)成分、(G)成分、(H)成分、(J)成分、及び、必要に応じて(I)成分を含有するシリコーンゴム組成物の硬化物からなる。この第二のシリコーンゴム層は、導電性接着剤に対する非接着性を維持すると共に積層された層が基材の熱伝導性を阻害することを防ぐために使用する一定粒径の金属ケイ素粉末(H成分)、及び、粒径をコントロールした球状溶融シリカ(G成分)並びに、必要に応じて、BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ(I成分)を、上記(G)、(H)、(I)の各成分の合計配合量が2〜150質量部となるように含有する、表面の平滑性に優れた硬化シートである点に特に特徴がある。
(F)平均重合度が10〜2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(G)平均粒子径が1〜30μmの球状溶融シリカ 1〜50質量部
(H)平均粒子径が1〜20μmの粉砕したケイ素粉末 1〜50質量部
(I)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ、0〜50質量部
(J)硬化剤:硬化有効量
上記(F)成分であるオルガノポリシロキサンとしては、例えば一般式R2 bSiO(4-b)/2で表されるものが挙げられる。ここでR2は、炭素原子数が1〜12、好ましくは炭素原子数が1〜8の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。このようなR2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基等のハロゲン置換又はシアノ基置換炭化水素基等が挙げられる。
なお、各置換基はそれぞれ異なっていても同一でも良いが、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有していることが必要である。アルケニル基の含有量は、全有機基中の1.0×10-5モル%以上であることが好ましく、特に1.0×10-4モル%以上であることが好ましく、0.01モル%以上であることが最も好ましい。また、アルケニル基の含有量の上限は20モル%であり、特に10モル%以下であることが好ましい。
上記オルガノポリシロキサンとしては、主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、或いは、このオルガノポリシロキサンの主鎖に、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等を導入したものが好ましい。また、分子鎖末端はトリオルガノシリル基又は水酸基で封鎖されていることが必要である。上記トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基等が例示される。bは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.98〜2.02の範囲の正数である。
前記アルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の置換基としてはメチル基又はフェニル基が好ましい。特に耐溶剤性が必要な場合にはトリフルオロプロピル基が好ましい。
前記オルガノポリシロキサンは、その分子構造が直鎖状であっても、或いはR1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状であっても良いが、通常は、主鎖部分が基本的にR1 2SiO2/2であるジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がR1 3SiO1/2のトリオルガノシロキシ単位で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的である。また、分子中のアルケニル基は分子鎖末端或いは分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合していても、また両方に結合していても良いが、硬化性及び硬化物の物性等の観点から、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
上記オルガノポリシロキサンの平均重合度は、10〜2,000であることが好ましい。平均重合度が10未満では、硬化物の機械的強度が、使用上十分に満足することのできるものとならない場合があり、2,000を超えると流動性が悪くなり、溶剤を使用して基材ゴム上に積層する必要が出てくるため、無溶剤で塗布することが困難となる。
本発明のシリコーンゴム積層シートにおいては、第二のシリコーンゴム層の機械的強度を向上させるために、上記(F)成分であるオルガノポリシロキサン成分として、主鎖が直鎖状のジオルガノポリシロキサンに加えてシリコーンレジンを使用しても良い。上記シリコーンレジンとしては、R2 3SiO0.5単位(M単位)とSiO2単位(Q単位)、あるいは、M単位とQ単位及びR2SiO1.5単位(T単位)及び/又はR2 2SiO単位(D単位)(ここでR2は上記と同様)とからなる、MQレジン、MTQレジン、MDQレジン又はMDTQレジンがあり、本発明においてはどれを使用してもよいが、基本的にはM単位とQ単位を主成分とするものが好ましい。
また、必要に応じて(CH2=CH)(CH3)2SiO0.5単位や(CH2=CH)(CH3)SiO単位を含むビニル基含有シリコーンレジンを使用することもできる。具体的には、(CH3)3SiO0.5単位、(CH2=CH)(CH3)2SiO0.5単位及びSiO2単位からなるレジンや、(CH3)3SiO0.5単位、(CH2=CH)(CH3)SiO単位及びSiO2単位からなるレジンを使用することが好ましい。
この(F)成分中のシリコーンレジンの含有量は、第二のシリコーンゴム組成物全体の20質量%以下、特に0〜10質量%であることが好ましい。20質量%を超えると導電性接着剤に対する非接着性が悪くなる場合がある。また上記レジンの他に、(CH2=CH)(CH3)2SiO0.5単位と、M及びD単位からなる、ビニル基を側鎖に有する直鎖状のオイルを使用しても良い。この直鎖状ビニルシリコーンオイルの含有量は、第二のシリコーンゴム組成物全体の70質量%以下であることが好ましく、特に0〜50質量%であることが好ましい。70質量%を超えるとゴム強度が悪くなる場合がある。
(G)成分である球状溶融シリカ粉末は、第二のシリコーンゴム層の表面が平滑になることにより引き起こされる、密着性が増大するという欠点を防ぐと共に、第二のシリコーンゴム層の熱伝導率を高めるために使用される。即ち、球状溶融シリカ粉末を充填することにより、第二のシリコーンゴム層の表面に簡便に凹凸形状を付けて粗面化することができるので、マイカやタルクなどを打粉するまでもなく、上記密着性が増大するという問題を回避することができる。
球状溶融シリカ粉末の平均粒子径は、1〜30μmのものが好適であるが、特に1〜25μmのものが好ましい。平均粒子径が1μm未満であるとシリコーンゴム層表面が平滑面に近くなるので、密着性が増大するとい問題を引き起こす。一方、平均粒子径が30μmより大きいと、表面の凹凸形状が大きくなりすぎるので、シート全体として均一に圧力の伝達ができなくなる。なお、本明細書における平均粒径は、レーザー光回折散乱法により測定することができる。
球状溶融シリカ粉末の配合量は、(F)成分であるオルガノポリシロキサン100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部であり、特に7〜25質量部であることが好ましい。50質量部を超えると、導電性接着剤への非接着性が不十分となる。
(H)成分である粉砕したケイ素粉末は、本発明の第二のシリコーンゴム層に熱伝導性を付与するためのものである。ケイ素は良好な熱伝導性を有すると共にモース硬度が低く、金属の特性の一つである展性が低いため、高剪断を与えても、粉末自体が凝集しにくいという特性を有する。したがって、粉砕による微粒子化が容易であると共に、ポリオルガノシロキサンヘの分散性に優れるという特性を有し、球状溶融シリカや粉砕石英、及びアルミナ等より沈降が起こりにくいという特性を有する。
ケイ素粉末の粉砕方法は特に限定されるものではないが、珪石を還元してケイ素とした後、ボールミル等の既存の破砕機や粉砕器を用いて粉砕する方法、半導体製造工程等から発生するケイ素(ウエハー)や切削くず等を粉末化する方法等が挙げられる。本発明で使用するケイ素の結晶構造も特に限定されず、単結晶であっても多結晶であっても良い。
ケイ素粉末の表面は、粉砕直後から空気中の酸素によって酸化され、ごく薄い自然酸化膜が形成される。形成された膜はガラスと同じであり、熱や酸や汚れに強く、電気が流れ難いだけでなく、熱に対して安定である。しかしながら本発明で使用するケイ素粉末は、隣り合う粒子の影響や圧縮される影響を受けて酸素に触れる事が出来ない場合があり、このような場合には表面酸化膜の形成は不充分となる。本発明に用いられる粉砕したケイ素粉末は、熱量計測定装置(TGA)を用いた測定により得られた、300℃時における重量(W300)を110℃時の重量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下であるものがよく、特に1.06以下であることが好ましく、1.04以下であることが最も好ましい。
上記の粉砕したケイ素粉末に関する条件は、粉砕したケイ素粉末の表面酸化膜の形成度合いを評価するために本発明者等が考案した指数であり、粉砕したケイ素粉末の表面酸化膜の形成度合いが、シリコーンポリマーの架橋特性及びゴム物性に影響される事実、即ち、粉砕したケイ素粉末の金属面が、シリコーンゴム架橋時に架橋阻害(未硬化)やゴム硬さの低下をもたらすという事実を利用して得られた評価指数である。
上記の指数によって粉砕したケイ素粉末の表面酸化膜の形成度合いを評価する原理は、TGA測定時にケイ素表面(Metal−Si)が空気中の酸素(O2)によって酸化されてシリカ化(SiO2)することによって観測される重量増加を測定すると言うものである。具体的な測定方法は、空気を流入気体として粉砕したケイ素粉末のTGA測定を行い、充分に酸化膜が生成したと考えられる300℃時における重量を、ケイ素粉体に付着した水分(付着水や湿度)による影響を排除するのみで、酸化を進行させないと考えられる110℃時の重量で割ることにより、強制酸化による重量増を評価し、この指数からもとの自然酸化状態を評価するものである。
上記測定方法の具体的な操作は、常圧空気(酸素を含む)を50ml/分の流量で流入させながら、分速5℃(5℃/分)の条件で、25℃から600℃になるまでのTGA測定を行えば良い。W300/W110が1.08以上であると粉体表面に金属光沢面が出ている割合が多く、この場合にはシリコーンゴム架橋時に架橋阻害(未硬化)やゴム硬さの低下が発生する。また本測定の原理からすると、自然酸化状態でケイ素表面に酸化膜が既に100%形成されている場合には、W300/W110は1.00となる。しかし、実際の測定ではケイ素に微量に含まれる不純物(有機物やほこり等)によりW300/W110が0.98程度に低下することがある。
W300/W110が1.08以下の粉砕したケイ素粉末を作成する方法は特に限定されるものではないが、上記条件を満たす粉末を常温で得るためには、充分に空気に触れた状態を保持した状態で、少なくとも1ヶ月以上の長期にわたり放置することが必要である。しかしながら、下記の3つの方法によれば、短時間で上記条件を満たす粉砕したケイ素粉末を得ることができる。
i)粉砕後、60℃以上800℃以下で乾式熱処理を行う。
ii)湿度30%以上の雰囲気で、40℃以上100℃以下で熱処理を行う。
iii)粉砕して水洗又は水スラリー化した後、水分を除去する。
上記i)の方法は、大気中で加熱して、表面に酸化膜を形成させる方法である。処理温度は60℃〜800℃以下の範囲であるが、好ましくは80℃〜600℃以下、より好ましくは80℃〜300℃である。処理温度が60℃以下であると、表面酸化膜の形成に時間がかかるので生産性が低く、800℃以上であると、粉塵爆発等が発生しやすいので危険である。粉体処理時間はそれぞれの温度によって異なるが、5分〜168時間程度の範囲で適宜設定すればよい。
ii)の方法は、空気雰囲気を高温多湿にすることにより、粉体の酸化をより促進させる方法である。この方法によれば、上記i)の方法の場合よりも低温/短時間で、効率よく酸化膜を形成させることが可能である。本処理方法においては、湿度30%〜80%の雰囲気、40℃〜100℃、好ましくは40℃〜90℃で処理すれば良いが、特に湿度35%〜60%の雰囲気下、50℃〜80℃で処理することが好ましい。処理温度が40℃以下だと表面酸化膜の形成に時間がかかるので生産性が低下する。また、100℃以上であると高温やけどや水蒸気爆発等が発生しやすい状況となるので危険である。また湿度条件については、30%以下であると表面酸化膜形成促進の効果が薄く、湿度が高すぎると酸素濃度が相対的に薄くなるので、酸化膜の形成に時間がかかる。粉体処理時間はi)の方法の場合よりも短時間であり、それぞれの温度/湿度によって時間は異なるものの、5分〜72時間程度の範囲で適宜設定することが可能である。
尚、上記i)又はii)の方法で熱処理する場合には、粉体を粉体流動槽中で空気流動させながら加熱処理してもよい。
iii)の方法は、一度粉砕したケイ素粉末を水洗又は水スラリーとして湿化処理することによって、表面に酸化膜を作成させる方法である。湿化することにより、酸素とケイ素を効率よく結合させて粉体表面に酸化膜を作成させることが出来る。この場合、ケイ素を粉砕した直後に水洗又は水スラリー化すると、金属表面と水が直接反応して脱水素反応が起こるので、これを防止するために、粉砕後少なくとも12時間程度常温で放置した後に、40℃以下、好ましくは30℃以下の水温で処理することが好ましい。処理時間が特に限定されるということはないが、通常は5分〜12時間程度、好ましくは30分〜8時間である。本方法においては、水洗、又は水スラリー処理を行った後に、水分を除去する必要がある。水分の除去方法は特に限定されるものではないが、例えば、遠心脱水処理した後に、乾燥器中で80℃〜150℃程度に昇温したり、乾式遠心乾燥器や粉体流動槽等によって乾燥させてもよい。また、前記の方法i)又はii)の条件と同じ条件で乾燥させてもよい。乾燥後の粉砕ケイ素粉体の含有水分量は、少なくとも0.5%以下であることが好ましい。
本発明で使用する微粒子化したケイ素粉末の純度は、特に限定されるものではないが、熱伝導性付与の観点から50%以上(即ち、50〜100%)であることが好適であり、好ましくは80%以上(80〜100%)、特に95%以上(95〜100%)であることが好ましい。純度の高いケイ素粉末を使用した場合には、形成された表面の自然酸化膜に欠陥がないので高温熱安定性が良好となる。
本発明で使用するケイ素粉末の粒子径は、0.5μm〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満の粒子は、製造が困難であるだけでなく多量に配合することが困難となる場合がある。また、平均粒子径が20μmを超えると100μmを超える粗粒が混入し易くなるので、第二のシリコーンゴム層を薄層とした際におけるコート層としての表面性能に問題が生じるおそれがある。100μm以上の粗粒が混入すると、本発明において第二のシリコーンゴム層を作製した場合に、表面が50μm以上の凹凸を有する場合があり、この場合には、導電性接着剤との非接着性が不十分となる。また第二のシリコーンゴム層を、肉厚が50μm以下の薄層タイプとした場合には、粗粒の粒子径が肉厚を上回る場合があるので、顕著な凹凸が発生して、圧着シート全体として、均一に圧力を伝達することができなくなる。したがってそのような場合には、例えばメッシュフィルターを用いて、適宜ケイ素粉末の粗粒をカットすることが好ましい。ケイ素粉末の粗粒の定義は、第二のシリコーンゴム層を薄膜化する観点から、本明細書においては、直径45μm以上の粒子と定義することが好ましい。
本発明で使用するケイ素粉末の粒子径は、粉体の分級により適宜調整することができる。また、その粒度分布は平均粒子径の異なる2種類以上のケイ素粉末をブレンドすることによって、適宜調整可能である。なお、粒度分布測定における平均粒子径及び標準偏差は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)等として求めることができる。
本発明で使用する(H)成分のケイ素粉末は、上記した熱処理、湿式処理後によって欠陥の少ない自然酸化膜を形成した後に、シリコーンゴム組成物の熱安定性や粉体の配合性の向上を目的として、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により、適宜、更に表面処理して使用することもできる。
上記(H)成分であるケイ素粉末の配合量は、(F)成分100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは3〜40質量部である。1質量部未満とした場合には、シリコーンポリマーに対するケイ素粉末の充填量が少ないのでシリコーン組成物に対する架橋阻害や硬度低下の影響は軽微であるが、第二のシリコーンゴム層に十分に熱伝導性を付与する事ができない。一方、50質量部を超えると流動性が無くなるので、無溶剤で塗布することが困難となり、また第二のシリコーンゴム層の導電接着剤との非接着性も不十分となる。
本発明においては、上記ケイ素粉末と共に他の熱伝導性物質を併用しても良い。上記他の熱伝導性物質は、アルミナ、アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、グラファイト等の、公知の物質の中から適宜選択することができる。これらの熱伝導性物質の平均粒子径は0.5〜20μmであることが好ましい。また直径1〜10μm、繊維長3〜2000μmの繊維状グラファイト、繊維長1μm以下のカーボンナノファイバー等も使用することができる。
本発明で使用する(I)成分である、BET比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカは、第二のシリコーンゴム層の補強成分として機能する。このような微粉末シリカの具体例としては、親水性又は疎水性のヒュームドシリカ(乾式シリカ)や沈降シリカ(湿式シリカ)、結晶性シリカ、石英などが挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明に用いられる微粉末シリカは、補強性の点からBET比表面積が50m2/g以上であることが必要であるが、通常は、50〜800m2/gであり、本発明においては特に、100〜500m2/g程度のものを使用することが好ましい。比表面積が50m2/g未満では、補強効果を十分に得ることができない。このようなシリカのうち、市販されている親水性のシリカとしては、Aerosil130,200,300(日本アエロジル社又はDegussa社製の商品名)、CabosilMS−5,MS−7(Cabot社製の商品名)、RheorosilQS−102,103(トクヤマ(株)製の商品名)、NipsilLP(日本シリカ製の商品名)等が挙げられ、また、疎水性シリカとしては、AerosilR−812,R−812S,R−972,R−974(Degussa社製の商品名)、RheorosilMT−10(トクヤマ(株)製の商品名)、NipsilSSシリーズ(日本シリカ製の商品名)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明においては、第二のシリコーンゴム層の機械的強度と異方導電性接着剤に対しての非接着性を両立させるために、予め表面処理された疎水性シリカを使用するか、材料混練時にオルガノシラザン化合物からなる表面処理剤を添加して、親水性のシリカ粒子表面を疎水化処理することが好ましい。
上記疎水性シリカは、本質的にはジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン又はその混合物等の表面処理剤で、或いはこれらの表面処理剤と水とを用いて親水性の微粉末シリカを熱処理して得た、その表面が(CH3)3SiO1/2基、(CH3)2SiO2/2基、CH3SiO3/2基、好ましくは(CH3)2SiO2/2基とCH3SiO3/2基で処理され、疎水化されたシリカであれば良いが、特にCH3SiO3/2基で処理されたものであることが好ましい。このようにして表面処理された疎水性シリカは、通常、表面処理後のシリカ全体に対して0.5質量%以上の炭素原子を含有する。
前記オルガノシラザン化合物からなる表面処理剤としては、例えば、(CH3)3SiNHSi(CH3)3、(CH3)3SiNHSi(CH3)2NHSi(CH3)3、(CH3)2(CF3CH2CH2)SiNHSi(CF3CH2CH2)(CH3)2等のアルキル基、アリール基、置換アルキル基等を有するヘキサオルガノシラザン、オクタオルガノトリシラザン等の炭素官能性基(例えば、アルケニル基)を有しないオルガノシラザン化合物、(CH3)2(CH2=CH)SiNHSi(CH3)2NHSi(CH=CH2)(CH3)2 、(CH3)3SiNHSi(CH3)(CH2=CH)[OSi(CH3)2]nNHSi(CH3)3 、CH2=CHSi[NHSi(CH3)3]3等の、ビニル基等のアルケニル基含有オルガノシラザン化合物等を挙げることができる。これらのオルガノシラザン化合物は、炭素官能性基を有しないオルガノシラザン化合物のみを用いても、アルケニル基含有オルガノシラザン化合物のみを用いてもよいし、両者を併用してもよい。特に、最も汎用であるヘキサメチルジシラザン(CH3)3SiNHSi(CH3)3を使用することで、安価且つ簡便に効果を得ることができる。
材料混練時に表面処理を行う方法の場合には、上記した(F)成分としてのオルガノポリシロキサンに(I)成分としての親水性シリカを添加した混合物を混合機中で加熱混練するときに、表面処理剤であるオルガノシラザン化合物を加えると共に、必要に応じて少量の水を加えて加熱処理すれば良い。このように操作することによってシリカ表面のシラノールが処理されるので、この組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、強度の優れたものになる。
本発明においては、疎水性の微粉末シリカを、更にオルガノシラザン化合物で表面処理してもよい。この場合の処理方法は、前記親水性シリカを混練時に表面処理した方法と同様であり、これによってシリカ表面に存在するシラノールの処理度が更に上がるので、この組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、導電性接着剤との非接着性に更に優れたものになる。
本発明で使用する(H)成分及び(I)成分は、共に第二のシリコーンゴム層を補強する役割を有する。これら2種類の補強成分の配合量は、本発明のシリコーンゴム積層シートの使用温度に応じて、適宜調整して使用することができる。任意成分である(I)成分の微粉末シリカの配合量は、(F)成分であるオルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜50質量部となる範囲で、本発明のシリコーンゴム積層シートの使用条件によって適宜調整することができるが、0〜30質量部配合することが好ましく、特に0〜20質量部配合することが好ましい。50質量部を超えると導電性接着剤との非接着性が十分でなくなり、導電性接着剤と接着し易くなるだけでなく塗工も困難となる。但し、(G)、(H)及び(I)成分の合計配合量は、(F)成分であるオルガノポリシロキサン100質量部に対して2〜150質量部である。
(J)成分の硬化剤は、通常シリコーンゴムの硬化に使用されている公知の硬化剤の中から適宜選択することができる。これらの硬化剤の例としては、ラジカル反応に使用されるジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;(F)成分のオルガノポリシロキサンが1分子中にアルケニル基を2個以上有する場合に、付加反応硬化剤として使用される、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の触媒を挙げることができる。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(F)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化付加反応により、組成物を硬化させる架橋剤として作用するものであり、下記平均組成式(1)で表される。
R2 bHcSiO(4-b-c)/2 (1)
但し、上式中のR2は、炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、好ましくは0.8〜2.0であり、cは0.001〜1.0であって、b+cは0.8〜3.0、好ましくは1.0〜2.5を満足する正数である。
本発明において使用する上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、特に、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上200個程度迄、より好ましくは3〜100個の珪素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適であるが、3〜50個の珪素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが最も好ましい。この珪素原子結合水素原子は、分子鎖末端の珪素原子に結合したものであっても、分子鎖途中(分子鎖非末端)の珪素原子に結合したものであっても良く、これらの両方に結合していてもよい。
上記平均組成式(1)においてR2で表される珪素素原子に結合した置換又は非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;これらの基における水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。本発明においては、全R2の90モル%以上がメチル基であることが好ましく、特にアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体などやこれらの例示化合物において、メチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などで置換したもの等が挙げられる。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであっても良いが、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜1,000であることが好ましく、特に3〜500であることが好ましく、3〜300であることがより好ましく、約4〜150のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが最も好ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(F)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、特に0.1〜30質量部であることが好ましく、0.3〜30質量部であることが更に好ましく、0.3〜20質量部であることが最も好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(F)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基に対する、このオルガノハイドロジェンポリシロキサン成分中の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が、0.5〜5モル/モルとなる量、好ましくは0.8〜4モル/モルとなる量、より好ましくは1〜3モル/モルとなる量である。
(F)成分のオルガノポリシロキサンがシラノール基を2個以上含有する場合の縮合反応硬化剤としては、アルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、プロペノキシ基等の、加水分解性の基を2個以上有する有機ケイ素化合物等が例示される。
本発明で使用する硬化剤の添加量は通常のシリコーンゴムの場合と同様に、硬化有効量であれば良い。ラジカル反応の場合には、(F)成分100質量部に対して有機過酸化物を0.1〜10質量部使用することが好ましく、付加反応の場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基が(F)成分のアルケニル基に対して0.4〜4モルとなる量、及び、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の触媒が1〜2,000ppmとなる量使用することが好ましい。
第二のシリコーンゴム組成物の、混合後の粘度(23℃)は0.1〜100Pa・sであることが好ましく、特に0.2〜50Pa・sであることが好ましく、0.3〜10Pa・sであることが最も好ましい。混合後の粘度が0.1Pa・s未満であると、塗布する装置の性能から、膜厚をコントロールして積層することが困難となるだけでなく、配合した粉末が沈降して分散不良となり易い上ゴム強度も低下して脆くなる。100Pa・sを超えると粘度が高すぎて泡を巻き込み易くなるだけでなく、レベリング性も悪くなって第二のシリコーン層の表面に波打ちが発生するので、表面の平坦性が得られなくなる。
第二のシリコーンゴム層を形成する上記したシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、非反応性オルガノポリシロキサン、末端がヒドロキシシリルジメチル基で封鎖されたオルガノポリシロキサン等の、粘度及び硬さを調節するための希釈剤;コバルトブルー等の無機顔料;有機染料等の着色剤;炭酸亜鉛、炭酸マンガン、ベンガラ、酸化チタン、酸化セリウム等の耐熱性、難燃性向上剤;白金族金属系触媒等の難燃性向上剤;低分子シロキサンエステル、シラノール等の分散剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の接着付与剤;ゴムコンパウンドのグリーン強度を上げるテトラフルオロポリエチレン粒子などを、第二のシリコーンゴム組成物中に、その他の成分として添加しても良い。
また、第二のシリコーンゴム層中における、前記(G)成分、(H)成分及び(I)成分を含めた充填材の配合量は、導電性接着剤に対して第二のシリコーンゴム層を非接着性にする観点から少なくした方が良い。したがって、上記充填剤の配合量を、第二のシリコーンゴム層を形成する組成物全体の50質量%以下とすることが好ましく、特に30質量%以下とすることが好ましい。
本発明で使用する、基材としてのシリコーンゴム組成物及び第二のシリコーンゴム層用組成物の調製は、上記各成分をプラネタリーミキサー、ニーダー、二本ロール、三本ロール、バンバリーミキサー等の混合機を用いて混練りすればよいが、硬化剤は、使用する直前に添加することが好ましい。
本発明における、基材としてのシリコーンゴム組成物及び第二のシリコーンゴム層用組成物の塗工は、一般的な、ナイフコート、コンマコート、バーコート、ディップコート、ダイコート、リバースコート、グラビアコート、ロータリースクリーンコート、ローラバインドコート等の、公知の方法の中から適宜選択することができる。この場合、使用する機器によって塗工しやすい粘度範囲があるので、装置にあった好適な粘度の組成物とすることが必要である。
上記基材のシリコーンゴム組成物及び第二のシリコーンゴム組成物を硬化する際の硬化条件は適宜設定することができるが、加熱硬化条件は、60〜200℃とすることが好ましく、特に80〜150℃とすることが好ましい。また、加熱硬化時間は、30秒〜4時間とすることが好ましく、特に1分〜60分間とすることが好ましい。
硬化後の第二のシリコーンゴム層における、JIS K 6253 デュロメーター硬さ試験に準拠したタイプA硬度は、20以上であることが好ましく、特に30〜95であることが好ましい。上記硬度が20未満であると、圧着時に、シリコーンゴム積層シートが各被圧着部材に密着しやすくなるので好ましくない。一方、上記硬度が95以上では、各被圧着部材に均一な接合圧力を与えにくいだけでなく、強度においても脆くなるので好ましくない。
本発明に係る硬化後の熱圧着用シリコーンゴム積層シートにおける、基材と第二のシリコーンゴム層の熱伝導率値比(第二のシリコーン/基材ゴムの数値)は、本発明のシリコーンゴム積層シートに十分な熱伝導性能と共に、該熱伝導性と相反する非接着性能を付与する観点から、0.2〜0.5であることが好ましい。もし単純に熱伝導性を上げれば、熱の伝わりが良いシートとなるが、この場合には熱伝導性粉末等を高充填しなくてはならないので、非接着性に不利となる。このように、熱伝導性と非接着性能という相反する性質を得るためには、前記したように、熱伝導率値比(第二のシリコーン/基材ゴムの数値)を、前記0.2〜0.5範囲とすることが必要となる。該熱伝導率比が0.2未満であると、基材シートの性能を発揮することができなくなる。また、上記熱伝導率値比が0.5を超えると言う場合は、第二層のシートの熱伝導性フィラーを相当量入れる場合であるので、導電性接着剤との非接着能が低下する。本発明においては、前記熱伝導率値比(第二のシリコーン/基材ゴムの数値)を、0.25〜0.4の範囲とすることが好ましい。
また第二のシリコーンゴムシートは、電極接続用に必要な圧着性能と非接着性能を有すると共に、使用される雰囲気下において、装置上でロール状に巻き取りながら使用されるため、金属表面に接触した際には表面平滑性も必要である。したがって金属との摩擦抵抗が、静摩擦抵抗値で0.4μs以下であることが必要である。静摩擦抵抗値が0.4μsを超えると、滑りが悪いため、巻き取ることが不可能となる。
本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートにおいては、基材のシリコーンゴムシートの厚さが50〜1000μであることが必要であり、第二のシリコーンゴム層の厚さは1〜50μmであることが好ましく、特に5〜40μmであることが好ましい。第二のシリコーンゴム層が1μm以下であると、得られた積層シート表面の非接着性の効果が不十分となり、50μmを超えると基材の特性が十分に発揮されなくなる上コスト的にも不利となる。
本発明のシリコーンゴム積層シートを成形する方法としては、以下のような方法があるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)一般的には、エンボス加工されたキャリアフィルム上に、ナイフコート、コンマコート、バーコート、ディップコート、スクリーン、グラビアコート等の公知の方法で組成物を塗布し、そのまま大気中で加熱硬化する方法であり、コーティング成形やカレンダー成型等が可能である。基材のシリコーンゴム組成物の粘度が高い場合には、カレンダー成型等の他、トルエン等の溶剤に溶解して液状組成物とし、エンボス加工されたキャリアフィルム上にコーティング成形し、溶剤を除去して加熱硬化させた後、その上に、第二のシリコーンゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解した塗液を、ナイフコート、コンマコート、バーコート、ディップコート、ダイコート、リバースコート、グラビアコート等の方法でコーティング成形してそのまま大気中で溶剤を除去し、次いで加熱硬化すれば良い。この場合、第二のシリコーンゴム組成物については、そのままコーティング成形しても良い。
(2)基材のシリコーンゴム組成物を、エンボス加工されたキャリアフィルム上に、カレンダー等によって成形して未硬化のままとし、又は、トルエン等の溶剤に溶解した塗液をエンボス加工されたキャリアフィルム上に塗布し、溶剤を除去して未硬化のままとしておき、その上に、第二のシリコーンゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解した塗液を、ナイフコート、コンマコート、バーコート、ダイコート、リバースコートなどの方法で塗布し、そのまま大気中で溶剤を除去した後、両層を加熱硬化させる方法。尚、第二のシリコーンゴム組成物の粘度が低い場合には、トルエン等の溶剤に溶解せずにそのままコーティング成形してもよい。
本発明においては、第一のシリコーンゴム層と第二のシリコーンゴム層間の接着を強固にするために、適宜プライマー処理等の方法を用いてもよい。また、基材のシリコーンゴム層の両面に第二のシリコーンゴム層を設け、3層構造とすることもできるが、この場合、2層ある第二のシリコーンゴム層の材質は異なるものであっても、同じものであってもよい。本発明においては特に、キャリアフィルム上に基材のシリコーンゴム層をカンレンダー成型し、ある程度の架橋が進む程度にキャリアフィルム上で硬化させた後、第二のシリコーンゴム層を、膜厚を平均化することが可能な、ナイフコート、コンマコート、バーコート、ディップコート、ダイコート、リバースコート、グラビアコート、ロータリースクリーンコート、ローラバインドコートによって塗布することが好ましい。
本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートは、ガラス転移温度が200℃以上である樹脂からなる繊維、ガラス繊維、カーボン繊維からなる補強材、または耐熱性フッ素樹脂等を用いて補強してもよい。
本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートは、150℃で3時間加熱した時の揮発分が0.2質量%以下であることが好ましく、特に、0.1質量%以下であることが好ましい。このようにするために、本発明においては、高温でシリコーンゴム積層シートを乾燥機や連続加熱炉の中で、150℃以上の温度で熱処理することが好ましい。揮発分が0.2質量%を超えると、揮発した成分が電極端子などの上に凝集して導通不良等を引き起こす場合がある。
本発明の熱圧着用シリコーンゴム積層シートは、第2のシリコーンゴム層を無溶剤で製造することができるだけでなく、フッ素樹脂フィルムを重ねて使用する必要も打粉の必要もないので、環境上、製造工程上、及びコスト上極めて有利である。
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。尚、下記において、比表面積はBET法(N2ガス吸着)によって測定した値、平均粒径はレーザー回折・散乱法により測定した値、粘度は、回転粘度計により測定した23℃における絶対粘度の値、熱伝導率はASTMC1530に準拠して定常法熱伝導率計(アルバックリコー製GHI)で測定した値、揮発分は150℃で3時間加熱し、室温に戻してから測定した際に減少した質量の値を表す。