JP5269353B2 - カーボンナノチューブ含有構造体及び複合体 - Google Patents
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Description
ところで、ナノ物質は、高度に分散させることによって、バルク状態とは異なる性質を示すため、複合体中に分散させる技術が求められる。しかしながら、一般にナノ物質はその表面状態が不安定であるため、複合化の際に凝集しやすく、ナノ物質特有の機能を発揮できないという問題がある。
この検出方法では、1本で単分散したカーボンナノチューブは検出下限以下となり、塗膜全体の分散状態を把握しているとは言い切れない。また、5.0×101μm2以上の粒子も除外されており、単分散したカーボンナノチューブの微凝集により形成される導電性ネットワークは含まれていない。したがって、特許文献3に記載の炭素繊維含有成形体が、高い導電性を有するとは限らなかった。
しかし、特許文献4には、凝集体と炭素繊維の体積比は小さいほど均一分散となり、好ましいと記載されているが、炭素繊維の微凝集により形成される導電性ネットワークに関する記載はない。
したがって、特許文献3,4に記載の樹脂成形体においても、カーボンナノチューブの分散状態と導電性との関係が明らかでなく、カーボンナノチューブによる導電性付与効果が充分に発揮されていなかった。
また、本発明の目的は、カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブの分散状態を定量化し、分散状態と導電性との関係を明らかにできるカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法を提供することにある。
[1] カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体であって、
前記樹脂(b)が、ウレタン(メタ)アクリレート化合物単位を有する重合体からなり、
下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体。
式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
ただし、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。
[2] 膜状である[1]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
[3] 厚さ方向に三等分にした際のいずれか部分にカーボンナノチューブ(a)が45面積%以上含有されている[2]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
[4] 基材の片面または両面上に、[2]または[3]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体を有する複合体。
[5] 透明導電性フィルムまたは透明導電性シートである[4]に記載の複合体。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法によれば、カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブの分散状態を定量化し、分散状態と導電性との関係を明らかにできる。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、カーボンナノチューブ(a)と樹脂(b)とを含有するものである。
カーボンナノチューブ(a)は、2〜数十層のグラファイト状炭素が積み重なってできた外径がnmオーダーのチューブである。
カーボンナノチューブ(a)としては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、単層のカーボンナノチューブが同心円状に多層に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったものが挙げられる。
さらには、カーボンナノチューブ(a)には、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、その頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質、カーボンナノチューブ(a)の類縁体であるフラーレン、カーボンナノファイバーも含まれる。
これらの中でも、導電性がより高くなる点では、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブが好ましい。
樹脂(b)としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれもが使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン、ポリウレタン、メラミンフェノール樹脂、ケイ素樹脂、ポリアミドイミド、シリコーン樹脂等が挙げられる。
本発明では、水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。水溶性導電性ポリマーは、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、酸性基、あるいは酸性基で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーである。これらの中でも特に、カーボンナノチューブの分散性、構造体の導電性の点で、スルホン酸及び/またはカルボキシ基を有する水溶性導電性ポリマーが好適に用いられる。
さらに、導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートも用いられる。この水溶性導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付与されている構造を有している。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体には、その導電性をより向上させるために導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、例えば、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、銀、ニッケル、銅等の金属、対称型または非対称型のインドール誘導体三量体などが挙げられる。これらの導電性物質の中でも、インドール誘導体三量体またはこれらのドーピング物が好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上である。また、好ましくは、 下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が15%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が35%以上である。
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
「全観察面積」は、顕微鏡での観察面積であり、例えば、1000倍で観察した場合には10000μm2である。
「長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計」は、後述する画像処理において二値化処理する際に抽出された単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体のうち、その最大長が30μm以上であるカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計である。
カーボンナノチューブ微凝集体とは、少なくとも1本以上の単分散カーボンナノチューブが少なくとも一部分以上の箇所で接触することにより形成されるカーボンナノチューブ集合体である。したがって、分散できずに絡まっているカーボンナノチューブとは異なる。本発明におけるカーボンナノチューブ微凝集体はカーボンナノチューブ含有構造体中で、導電性ネットワーク形成に寄与している部分であるため、面積率[A2]とカーボンナノチューブ含有構造体の導電性との相関性は大きい。
観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。
また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。
屈折率調整液は、レンズ及びカーボンナノチューブ含有構造体を侵さないものであれば特に限定されないが、カーボンナノチューブ含有構造体の屈折率に近い屈折率を持つ屈折率調整液を使用することが好ましい。例えば、樹脂(b)がアクリル樹脂である場合、屈折率調整液の屈折率は1.518程度の市販の液浸対物レンズ用屈折率調整液が好適に使用される。
共焦点レーザー顕微鏡で用いられるレーザーの波長は、可視光レーザーであれば特に限定されないが、解像度の観点から、400〜550nmであることが好ましい。また、樹脂(b)として導電性ポリマーを使用する場合には、導電性ポリマーの吸収波長を考慮してレーザーの波長を選択することが好ましい。例えば、樹脂(b)として、ポリアニリンスルホン酸を使用する場合、レーザーの波長を540〜650nmとすることが好ましい。
また、共焦点光学系を有する顕微鏡を用いることにより、カーボンナノチューブ含有構造体の観察平面に対して、垂直方向(すなわち、厚さ方向)の走査を行って、構造体内部に存在するカーボンナノチューブ(a)を観察することができる。垂直方向の走査範囲(深さ)は、測定対象物の厚さやカーボンナノチューブ含有量によって異なるが、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.1〜30μmである。カーボンナノチューブ含有構造体が膜状である場合、厚さ方向の全範囲を測定することが好ましい。
厚さ方向における観察ピッチは、測定対象物の厚さやカーボンナノチューブ含有量によって異なるが、共焦点レーザー顕微鏡で観察されるスライス画像一枚の光学的厚さを考慮して、上下のスライス画像が半分以上重なるように画像取得することが好ましく、具体的には、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
なお、面積率[A1]及び面積率[A2]は、各カーボンナノチューブ含有構造体固有の値であり、観察条件によって大幅に変わるものではない。
前記拡張フォーカス画像を市販の画像処理ソフトで処理し、面積率[A1]及び面積率[A2]を求める。具体的には、拡張フォーカス像を二値化し、画像内のカーボンナノチューブを抽出し、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値及び長さを計測する。そして、画像解析により得られた、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積、及び、式(1)、式(2)によって、面積率[A1]及び面積率[A2]を求める。
なお、一つのサンプルに付き3箇所以上、好ましくは5箇所以上観察して、面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値を算出する。
本発明におけるカーボンナノチューブ含有構造体の形状としては特に限定されないが、例えば、シート状、フィルム状、膜状、ペレット状、ロッド状、繊維状などが挙げられる。これらの形状の中でも、カーボンナノチューブ含有構造体の透明性及び導電性を容易に活用できることから、シート状、フィルム状、膜状が好ましく、膜状がより好ましい。
本発明におけるカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法としては、例えば、(1)カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)からなるカーボンナノチューブ含有組成物を成形する方法、(2)カーボンナノチューブ(a)、樹脂(b)及び溶剤(c)からなるカーボンナノチューブ含有組成物を塗工する方法、(3)カーボンナノチューブ(a)、樹脂(b)の前駆体である重合性単量体(d)からなるカーボンナノチューブ組成物を用い、重合性単量体(d)を重合させる方法などが挙げられる。
(2)の製造方法で使用される溶剤(c)は、樹脂(b)を溶解または分散させることができる溶剤であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、セルソルブアセテート、メトキシアセテート、乳酸エチル、メトキシブタノール、ブチルセルソルブ、メチルメトキシブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤及び、含水有機溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては具体例としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩などのアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルホリニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどの非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、界面活性剤は2種以上用いても何ら差し支えない。
ここで使用される重合性単量体(d)は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、得られるカーボンナノチューブ含有構造体の透明性、耐衝撃性、耐擦傷性、易成形性の観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
これら水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類との組み合わせ等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の複合体は、基材の片面または両面に、膜状のカーボンナノチューブ含有構造体を有するものである。
基材としては、例えば、合成樹脂のフィルム、シート、発泡体、多孔質膜、エラストマー、各種成形体;木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、ガラス板、ステンレス板等が挙げられる。
複合体の製造方法としては、例えば、(i)基材の表面にカーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させる方法;(ii)型の内面に、カーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成した後、型内に重合性原料または溶融樹脂を流し込み、固化させて基材を形成し、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法;(iii)型と基材との間にカーボンナノチューブ含有組成物を流し込んで硬化させて硬化膜を形成した後、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法等が適用される。
(ii)の方法で用いられる型としては、注型重合用の鋳型、成形用型等が挙げられる。鋳型が2枚の表面平滑な板状物からなる場合、表面平滑な板状積層体を得ることができる。この際、硬化膜を一方の鋳型のみで形成してもよいし、両方の鋳型で形成してもよい。
キャスト重合法としては、例えば、カーボンナノチューブ(a)、重合性単量体(d)、光重合開始剤を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物をガラス板からなる注型重合用のガラス型の内面に塗布し、光硬化させた後、ガラス型内に重合性原料を流し込んで重合させる方法が挙げられる。ガラス型は、例えば、2枚のガラス板の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等からなるガスケットを挟み込み、これらをクランプ等で固定することにより、組み立てられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
単量体成分の一部が重合した重合体と単量体成分との混合物における、単量体成分の重合率は35質量%以下が好ましい。
ウレタン化合物1:
ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなるトリイソシアネート1モルに対して、3モルのジメタクリル酸2−ヒドロキシトリメチレンを反応させてウレタン化合物1を得た。
カーボンナノチューブ含有組成物1
製造例1のウレタン化合物1を32質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)58質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート4質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート6質量部を混合した重合性単量体に多層カーボンナノチューブ0.05質量部を室温にて混合した。この混合物を、氷冷下、1時間、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)した後、光重合開始剤としてベンゾインエチルエーテル1.5質量部を添加して、カーボンナノチューブ含有組成物1を調製した。
カーボンナノチューブ含有構造体1〜3
カーボンナノチューブ含有組成物1を、アクリル樹脂板(厚さ3mm)上に滴下し、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製)を配置し、JIS硬度30°のゴムロームにてしごき、該組成物の厚さを10μmに調整した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ((株)東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.8m/分のスピードで通過させ、該組成物を予備硬化させた後、PETフィルムを剥離した。ついで、出力30W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を、塗膜を上にして0.8m/cmのスピードで通過させ、該組成物を本硬化させることにより、表面にカーボンナノチューブ含有構造体からなる硬化膜を有する複合体を得た。ゴムロールによる塗膜形成後から予備硬化開始までの時間は、実施例1では1分、実施例2では3分、実施例3では15分とした。
カーボンナノチューブ含有構造体4
ゴムロールによる塗膜形成後から予備硬化開始までの時間を30秒(0.5分)にした以外は実施例1〜3と同様にしてカーボンナノチューブ含有構造体4を得た。
実施例1〜3及び比較例1のカーボンナノチューブ含有構造体4について、表面抵抗値、全光線透過率を以下のように測定した。また、共焦点レーザー顕微鏡により観察し、面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値を算出し、さらに厚さ方向のカーボンナノチューブの分散状態を解析した。それらの結果を表1に示す。
(表面抵抗値)
表面抵抗値は、温度25℃、相対湿度50%の条件下、ハイレスタUP(三菱化学製)により、リング状プローブを用いて印加電圧500Vで測定した。
(全光線透過率)
全光線透過率(%)は日本電色製ヘイズメーターNDH2000により測定した。
カーボンナノチューブ含有構造体の観察は、共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 PASCAL Axioplan2 imaging:カールツァイス社製)で、100倍油浸レンズ(開口数1.4、Plan−APOCHROMAT)を用いて、1000倍の画像を取得した。画像取得の際のレーザーとしては、波長458nmアルゴンレーザーを使用した。また、画像取得の際には、屈折率1.518の屈折率調整液(Immersol 518F:カールツァイス社製)を使用した。
カーボンナノチューブ含有構造体の厚さ方向の走査は、表面から基材との界面まで行い、約11μmの画像を0.1μmのピッチでスライス画像を取得した。この条件での1画像あたりの光学厚さは300nm程度であった。
(面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値の算出)
前記方法により取得したスライス画像から拡張フォーカス画像を作成し、画像処理ソフト(Image−Pro PLUS ver4.5.0:Media Cybernetics社製)を用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値及び長さを計測した。これにより、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積を求めた。そして、式(1)により面積率[A1]を求め、式(2)により面積率[A2]を求めた。一つのサンプルに付き5箇所解析を行い、これら5箇所の面積率[A1]及び面積率[A2]の平均値を算出した。
前記方法により取得したスライス画像から、表面から0.5μmピッチの深さでの画像を選択し、画像処理ソフト(Image−Pro PLUS ver4.5.0:Media Cybernetics社製)を用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値を計測した。得られた計測値から、厚さ方向に三等分にした際に形成される3つの層(表面層、中間層、底面層)に存在するカーボンナノチューブの面積割合を算出した。結果を表1に示す。
しかし、同じ含有量のカーボンナノチューブ含有組成物を使用して製造したにもかかわらず、面積率[A1]の平均値が25%未満であった比較例1のカーボンナノチューブ含有構造体は導電性が低かった。これは、面積率[A2]がカーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブにより形成された導電性ネットワーク構造に由来する成分であり、導電性ネットワーク構造が少なかったためと思われる。
また、本発明の複合体は、半導体、電器電子部品などの工業用包装材料、半導体製造のクリーンルームなどで使用される透明導電性樹脂板、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルムなどの電子写真記録材料等の帯電防止フィルム、透明導電性フィルム、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フレキシブルディスクなどの磁気記録用テープの帯電防止、電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)及び電極、水素貯蔵剤、更に透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの入力及び表示デバイス表面のディスプレイ保護板、前面板、帯電防止や透明電極、透明電極フィルム、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及び蛍光材料、熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シートとして利用できる。
Claims (5)
- カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体であって、
前記樹脂(b)が、ウレタン(メタ)アクリレート化合物単位を有する重合体からなり、
下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体。
式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
ただし、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。 - 膜状である請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
- 厚さ方向に三等分にした際のいずれか部分にカーボンナノチューブ(a)が45面積%以上含有されている請求項2に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
- 基材の片面または両面上に、請求項2または3に記載のカーボンナノチューブ含有構造体を有する複合体。
- 透明導電性フィルムまたは透明導電性シートである請求項4に記載の複合体。
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