本発明の強化繊維基材は、強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群で構成される布帛と、少なくともその片側表面に布帛の2〜20重量%の範囲内で樹脂材料が間隙を有する形態で配置されている強化繊維基材であって、前記樹脂材料の個々のものは、前記強化繊維糸条の内の複数の単糸が前記樹脂材料を貫通する埋設部と、布帛の表面に厚みを有して存在する露出部とを有する形態で固定され、前記樹脂材料の埋設部厚みは強化繊維基材を構成する布帛の厚みより薄く、かつ、樹脂材料の全投影面積の50〜100%が上記態様にて布帛の表面に結合していることを特徴とするものである。
本発明の強化繊維基材に用いられる布帛は、強化繊維糸条を並行するように引き揃えてなる強化繊維糸条群を含むものである。ここで、並行に引き揃えるとは、隣接する強化繊維糸条同士が、実質的に交差または交錯しない様に並べて配置することをいう。好ましくは隣接する強化繊維糸条同士が連続的に強化繊維糸条幅の20〜200%一定の間隔を隔てて配置し、または、強化繊維糸条幅を超えない範囲で一定の幅重複して配置することを指す。ここで、実質的に交差または交錯していないとは、繊維糸条に蛇行があって幅方向に重なっている部分が生じても、隣接する繊維糸条のいずれか細い方の繊維糸条幅を超えて重なっていない場合はこれに含まないということをいうものである。また、ここでの一定とは、幅や間隔が、その平均値から±50%の範囲に在ることをいう。さらに好ましくは、隣接する2本の強化繊維糸条を100mmの長さの範囲で直線に近似したとき、近似した直線が形成する角度が5°以下となるよう配置することであり、さらに好ましくは2°以下となるよう配置することである。ここで、糸条を直線に近似するとは、100mmの起点と終点とを結んで直線を形成することをいう。
布帛の形態としては、布帛として取扱が可能なものであれば、任意の形態のものを適用することができ、織物、編物、シート、等の種々の形態が挙げられる。例えば、強化繊維糸条が並行に引き揃えられた状態において、補助繊維糸条を強化繊維糸条の配列方向と直交または斜め方向に交錯するよう挿入された織組織でもよいし、補助繊維糸条がたて編(例えば、1/1トリコット編組織等)またはよこ編で配置している編組織であってもよいし、支持体(粒子、メッシュ、不織布、織布、編物、など)により形態保持された不織組織であってもよいし、またその組合せでもよい(詳細は後述)。
本発明の強化繊維基材は、樹脂材料が少なくとも布帛の片側表面に、2〜20重量%の範囲で配置されているものをいう。好ましい範囲は3〜17重量%、より好ましい範囲は4〜14重量%である。樹脂材料が、前記範囲で配置されていることにより、強化繊維糸条および補助繊維糸条の変形が抑制され、布帛の形態安定性がもたらされる。更に、後述する強化繊維基材を積層する際の加熱時に、それら同士のタック性(接着性)が得られる。その結果、取扱性に優れた強化繊維基材を得ることが可能となる。なお、かかる取扱性は、樹脂材料が2重量%未満では得ることができない。一方、樹脂材料が20重量%を越えると、繊維強化樹脂にした場合の強化繊維体積含有率が低くなり過ぎる問題があり、さらには力学特性が低下する場合もある。また、樹脂材料が20重量%を越えると、加熱して強化繊維基材同士を接着する場合、樹脂材料が変形することによりマトリックス樹脂の流路を塞ぎ、含浸を妨げるという問題もある。
ここで、前記樹脂材料は間隙を有する形態で布帛の表面に配置されていることが必要である。樹脂材料が間隙を有する形態で布帛の表面に配置されているとは、強化繊維基材に占める樹脂材料の投影面積の割合が5〜80%となる様に樹脂材料による被覆部と非被覆部が混在している態様で、樹脂材料が配置されていることを指す。なお、樹脂材料の投影面積は、強化繊維基材の面に対して略垂直な方向から見た場合に、強化繊維基材の単位面積内において樹脂材料が被覆する面積率を云うものである。ここで強化繊維基材の面に対して略垂直とは、強化繊維基材を平面状におき、該平面に垂直な方向を言うものとする。かかる投影面積の測定方法として、例えば、CCDカメラなどで撮像した強化繊維基材の画像を輝度分布から画像処理にて樹脂材料と布帛とに分離することで、画素数から算出する。ここで、撮像倍率は、50倍とし、後述する測定範囲の画像を解像度10ドット/1mm以上で取得し、該画像上で0.5mm以上の径のものを樹脂材料として測定する(または同等の操作をコンピュータ上でデータ処理により実行しても良い)。樹脂材料と布帛の境界が不鮮明な場合は、光源として励起光を利用すれば、樹脂材料から発される蛍光を受光することで境界を強調できるため好ましい。また、画像処理からの測定が難しい場合は、スキャナやデジタルカメラなどで取得した画像を拡大し、目視にて樹脂材料の輪郭をトレースしたものを手計算にて測定してもよいし、トレースしたものを画像処理にて算出させてもよい。いずれの測定方法においても、強化繊維基材の任意の10箇所から抽出した300mm×300mmの範囲内で算出した値の平均値を投影面積とし、測定方法については強化繊維基材に応じて適宜選択する。
かかる形態で前記樹脂材料が配置される被覆面積の割合は、5〜50%の範囲内が好ましく、また、間隙(非被覆部)がより均一に分散された状態であることが好ましい。かかる樹脂材料の形態としては、例えば、多孔性フィルム、短繊維不織布、カットファイバーもしくは粉粒体、等があるが、これらの中でも、粉粒体が好ましい。かかる形態をとることにより、上記の量の樹脂材料が布帛の表面に配置された場合、厚み方向に隣接する強化繊維基材の層間にスペースを形成する、いわゆるスペーサーとして機能し、後述する樹脂注入成形により繊維強化樹脂が成形される際、マトリックス樹脂の流路の役目を果たすので、マトリックス樹脂の含浸が容易になるだけでなく、その含浸速度も速くなり、繊維強化樹脂の優れた生産性をもたらす(これを、層間流路形成効果と呼ぶ)。樹脂材料が間隙を有しない形態で布帛の表面に配置されると(すなわち、布帛全面を覆うように樹脂材料が付着されていると)、マトリックス樹脂の流路を塞ぐバリケードにもなるため、マトリックス樹脂の含浸を阻害するという問題がある。かかる場合、層間の樹脂流路を形成しないのみならず、厚み方向の樹脂の流れまでも遮断する結果、繊維強化樹脂において未含浸部が形成されこととなる。
また、上記の量および形態の樹脂材料が、少なくとも片側表面に配置されていることにより、強化繊維基材を積層、成形して得られる繊維強化樹脂に、衝撃等が加わった場合、前記樹脂材料が、繊維強化樹脂内、特に積層層間部におけるクラックの進展を阻害することで、衝撃を受けた際に繊維強化樹脂の損傷を最小限に留める、いわゆるクラックストッパーのとしての機能をも発現する。特に、強化繊維基材を積層、成形して得られた繊維強化樹脂においては、衝撃後の残存圧縮強度の大幅な低下が問題とされており、かかる問題において上記樹脂材料が、少なくとも片表面に配置されていることにより、高い効果を発現するものである。つまり、繊維強化樹脂が衝撃を受けた際に、損傷の拡大を抑制することにより、衝撃を受けた後の繊維強化樹脂においても力学特性(特に圧縮強度)の低下が小さいという効果がある(これを、層間強化効果と呼ぶ)。
また、本発明の強化繊維基材における樹脂材料の固定の態様は、樹脂材料の個々のものが、前記強化繊維糸条の内の複数の単糸が少なくとも前記樹脂材料を貫通する埋設部と、布帛の表面に厚みを有して存在する露出部とを有する態様で固定されていることが必要である。埋設部および、露出部の形態については後述するが、かかる態様で固定されていることにより、繊維強化樹脂において樹脂材料の層間強化効果を格段に高い効率で発現させることができるのである。一方、かかる態様外(露出部のみ、埋設部のみが形成されている場合)では、繊維強化樹脂において樹脂材料が効果的には機能できず、繊維強化樹脂においてクラックストッパーとしての機能を充分に発現できない。
また、本発明の強化繊維基材における樹脂材料の埋設部の厚みは強化繊維基材を構成する布帛の厚みより薄いことが必要である。かかる埋設部の厚みを有することにより、樹脂材料の層間強化効果を損なうことなく、強化繊維基材の優れた取扱性および樹脂含浸性をも両立するものである。一方、かかる埋設部の厚みが強化繊維基材を構成する布帛の厚みと同じ場合、埋設部が強化繊維糸条を厚み方向に貫通するため、繊維強化樹脂を成形する際にマトリックス樹脂の含浸を阻害し、強化繊維基材の樹脂含浸性を低下させてしまう。
また、本発明の強化繊維基材においては、樹脂材料の全投影面積の50〜100%が上記態様にて布帛の表面に固定されていることが必要である。樹脂材料の全投影面積の50〜100%が上記態様で固定されていることにより、樹脂材料による効果(特に層間強化効果)を、強化繊維基材の全面にわたってより確実かつ広域に作用させることができる(本要件の効果については、詳細を後述する)。一方、上記態様で固定されている樹脂材料が、樹脂材料の全投影面積の50%に満たない場合、樹脂材料の効果(特に層間強化効果)が局所的ににしか働かず、バラツキが大きくなる。
以下、本発明の強化繊維基材について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の強化繊維基材の一実施態様を模式的に示す斜視図である。
図1において、強化繊維基材1は、布帛2と、布帛2に固定されている樹脂材料3とから構成されている。布帛2は、強化繊維糸条4と補助繊維糸条5とから構成され、強化繊維糸条4と補助繊維糸条5とは不織組織にて布帛2を形成している。この布帛2は、強化繊維糸条4が主体をなしており、いわゆる一方向性不織布帛と呼ばれる布帛の一種である。本例において、樹脂材料3は、短繊維不織布の形態を取り、布帛2の表面に間隙を有して配置され、強化繊維糸条4と補助繊維糸条5とを固定している。また、図示していないが、布帛2の裏面にも樹脂材料が間隙を有して配置され、同様に補助繊維糸条を強化繊維糸条に固定している。
図2は、本発明の強化繊維基材において、樹脂材料が布帛中の強化繊維糸条へ固定される態様を模式的に示した断面模式図である。
図9は、本発明の範囲外の強化繊維基材において樹脂材料が布帛中の強化繊維糸条へ固定される態様を模式的に示した断面模式図である。
図2は、強化繊維基材6を構成する布帛中の強化繊維糸条7への樹脂材料8の固定の態様を示したものである。図2において、樹脂材料8は、強化繊維糸条7を構成する複数の単糸9が樹脂材料8を貫通してなる埋設部(樹脂材料8の内、符号13および14の破線の間の領域)と、強化繊維糸条7の表面に厚みを有して存在する露出部(樹脂材料8の内、符号12および13の破線の間の領域)とを有する態様で布帛の表面に固定されている。ここで、各破線の示す位置(各領域の境界)に関して詳述する。図2に示す破線12は、樹脂材料8のうち布帛表面に対し略垂直な軸を含む断面において樹脂材料が布帛から最も突出した位置を示したもの、破線13は、樹脂材料8中を貫通する強化繊維糸条7を構成する複数の単糸9のうち、後述する布帛表面を形成する単糸の位置を示したもの、破線14は、樹脂材料8のうち布帛表面に対し略垂直な軸を含む断面において樹脂材料が布帛内に最も浸入した位置を示したものである。
かかるそれぞれの位置は、強化繊維糸条と直交する方向に切り出した強化繊維基材を切り出し面が後の観測面に位置する様に包埋サンプルを作製し、サンプル研磨後、研磨面(観測面)において、樹脂材料の態様を光学顕微鏡にて観測することにより確認できる。強化繊維糸条と直交する方向に切り出した断面における布帛表面を形成する単糸の位置は、樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、樹脂材料の露出部側の最外部に位置する単糸の断面の重心を10本間隔でプロットし、該プロットを直線近似して得られる直線の位置と定義する。また、破線12,14は、前記破線13と平行に引くものとする。布帛の厚み方向とは破線13に直交する方向である。
一方、図9において、破線21、22、23のそれぞれは、図2のそれぞれに対応したものである。すなわち、図9の破線21は図2の破線12に、同様に、破線22は破線13に、破線23は破線14に対応する。図9に示す強化繊維基材16において、樹脂材料17は、強化繊維糸条18を構成する複数の単糸19の表面にのみ結合している。すなわち、強化繊維糸条18を構成する単糸19には樹脂材料17中を貫通する図2の単糸9に対応する単糸が存在しないことから本発明における埋設部を形成していない。
本発明の強化繊維基材において、樹脂材料が繊維強化樹脂に層間強化効果を付与することは、上述した通りである。かかる層間強化効果は、強化繊維基材を積層し、レジン・トランスファー・モールディング成形法(RTM)等の注入成形により得られる繊維強化樹脂の層間破壊靭性を向上させ、これにより、衝撃を受けた際に生じる積層層間部のクラックの進展を抑制する効果が発現する。これによってレジン・トランスファー・モールディング成形法(RTM)等の注入成形により得られた繊維強化樹脂の衝撃後の残存圧縮強度を飛躍的に向上させる。レジン・トランスファー・モールディング成形法(RTM)等の注入成形により得られた繊維強化樹脂において、この樹脂材料による層間強化の効果が本発明の図2の態様と、本発明の範囲外の図9の態様とでは、その向上効果が大きく異なることを見出したところに本発明の特徴がある。背景技術において述べたように、前記の層間強化効果に関しては、プリプレグと呼ばれる予め熱硬化性樹脂を強化繊維に含浸させた成形材料において、層間に熱可塑性粒子等の熱可塑性樹脂材料を配置する技術が知られていたが、本発明は、レジン・トランスファー・モールディング成形法(RTM)等の樹脂注入成形法に適用する強化繊維基材の形態を検討することにより、従来の樹脂注入成形法により得られた繊維強化樹脂に比べて格段に高い層間強化効果を有する繊維強化樹脂が得られることを明らかにしたものである。すなわち、本発明の強化繊維基材は、強化繊維糸条を構成する複数の単糸が少なくとも樹脂材料を貫通する埋設部を形成していることにより、樹脂材料と強化繊維糸条との接着性・耐衝撃性を飛躍的に向上させ、格段に優れる層間破壊靭性、ひいては衝撃を受けた後の残存圧縮強度の低下を抑制する効果を奏するものである。
図2に示される本発明の強化繊維基材における樹脂材料8の埋設部は、樹脂材料を強化繊維糸条のうちの複数の単糸が貫通している部分であるので、かかる埋設部は、樹脂材料と強化繊維の単糸が混在した領域となっている。かかる埋設部を布帛の表面に有する強化繊維基材を積層、成形して得られる繊維強化樹脂では、樹脂材料による層間強化効果をより効率的に作用させることが可能となる。具体的には、本発明の強化繊維基材を積層、成形した繊維強化樹脂においては、積層層間だけでなく強化繊維基材の表面領域(布帛の層間側の表面から樹脂材料8の埋設部の厚さ分の深さの領域:図2の破線13,14の間の領域)での、クラックの進展を抑制することができる。特に、強化繊維糸条と繊維強化樹脂のマトリックス樹脂との接着性が低い場合には、衝撃付与時のクラックは強化繊維基材と層間のマトリックス樹脂との境界近傍を進行する。また、埋設部が形成されていない強化繊維基材を用いた繊維強化樹脂では、クラックが進展する経路が樹脂材料と強化繊維基材との接着面となることから、クラックが容易に進展してしまい、十分な層間強化効果を発現しない。これに対して、本発明の強化繊維基材の場合、埋設部を有するため、強化繊維基材と層間のマトリックス樹脂との境界近傍をクラックが進展する際に必ず樹脂材料を横切る経路となり、樹脂材料を強化繊維基材表面に固定した効果を最大限に発現させることができる。仮に樹脂材料を横切らない経路をとった場合でも、埋設部の内部を進展、もしくは、埋設部を避ける様にして進展させることができるため、いずれにせよクラックの進展のための抵抗を大きくすることができる。すなわち、樹脂材料のクラックストッパーとしての機能を最大限に発現させることできるのである。さらにいえば、強化繊維基材を厚み方向に進展するクラック(トランスバースクラック)に対しても、かかる埋設部は有効に機能する。
また、前記埋設部は、強化繊維糸条を構成する複数の単糸が、前記樹脂材料を少なくとも貫通していることで、埋設部を形成するため、繊維強化樹脂とした場合に、樹脂材料とマトリックス樹脂との接着を向上させる。かかる形態の埋設部を有することによりマトリックス樹脂層(層間)と強化繊維層(層内)との間に強固な結合が形成されることをアンカー効果という。
本発明の強化繊維基材において、樹脂材料の全投影面積の50〜100%が前記態様にて布帛の表面に固定されていることが必要である。ここで樹脂材料の全投影面積とは、強化繊維基材に対し、略垂直な方向から強化繊維基材を捉えた場合に樹脂材料の被覆部の面積の総和を示すものであり、そのうちの、50〜100%が前記態様により固定されていることで、強化繊維基材または積層体において優れた取扱性をもたらす、ほか、繊維強化樹脂において上述した樹脂材料の層間強化効果およびアンカー効果をより効率的に作用させることができる。全投影面積に対する前記態様により固定されている面積の比率は、好ましくは70〜100%であり、より好ましくは90〜100%である。すなわち、前記埋設部がより広域に形成されているほど、上述した効果もより広域に作用されるのである。50%未満であると、強化繊維基材または積層体における取扱性に劣るだけでなく、繊維強化樹脂における埋設部の未形成部において損傷が選択的に進展してしまい、前記層間強化効果が効率的に発現しない。すなわち、繊維強化樹脂におけるクラック(損傷)の拡大を抑制出来るだけの埋設部が配置されていない場合には、繊維強化樹脂に優れた力学特性(特に衝撃付与後の圧縮強度)をもたらす(層間強化効果)を得られないのである。
ここで、本発明の強化繊維基材において、埋設部を形成する手段としては、例えば、樹脂材料を布帛の少なくとも表面に配置し、熱または熱と圧力を併用して固定する処理が挙げられる。かかる処理は、遠赤外線ヒーター、ホットプレスロール、オートクレーブ、プレス機、等の既知の設備を用いて実施できるが、中でも、遠赤外線ヒーター、ホットプレスロールであれば、連続的に処理することで、強化繊維基材を効率良く製造できることから好ましい。また、前述した理由から、前記処理が、樹脂材料が表面に配置された布帛に、より広域に施すことが好ましく、全面に施すことがより好ましい。このように、前記処理を施す処理面積により、所望の態様の強化繊維基材を取得することができる。
本発明では、埋設部の厚みが15μm以上97μm以下であることを必須とし、前記布帛の厚みが70〜400μmであり、かつ、強化繊維基材を構成する布帛の厚みの50%以下の範囲内であることが好ましい。より好ましい埋設部の厚みは強化繊維基材を構成する布帛の厚みの40%以下、更に好ましい埋設部の厚みは強化繊維基材を構成する布帛の厚みの30%以下の範囲内である。ここで、強化繊維基材を構成する布帛の厚みとは、強化繊維基材の任意の位置において、おもて面の布帛表面を形成する単糸の位置から、うら面の布帛表面を形成する単糸の位置までの距離をいい、具体的にはおもて面・うら面両面の前述の図2における破線13の位置間の距離をいうものとする。
かかる布帛の厚みについて、好ましくは87〜290μmであり、さらに好ましくは94〜220μmである。一般に布帛の厚みは、布帛の目付(単位面積当たりの重量:g/m2)が増加するに伴い、厚みも増す傾向にある。布帛の厚みが大きいと、強化繊維基材の複数枚を積層して繊維強化樹脂を得るにおいて、所定の積層構成を満足させる場合、単層当たりの目付が大きくなるため、FRPの軽量化効果を満足に発揮できない場合があり、反対に所定の厚みに積層する場合、所定の積層構成とできない場合がある等、何れにしても設計の自由度が制限される。一方、布帛の厚みが小さいと、所定の厚みを満足させる場合、必然的に強化繊維基材の積層数が多くなることから、積層工程における生産性が低下し、コストが増加する。
かかる強化繊維基材を構成する布帛の厚みの測定は、強化繊維基材における任意の10箇所から、強化繊維糸条と直交する方向に切り出した強化繊維基材を切り出し面が後の観測面に位置する様に包埋サンプルを作製し、サンプル研磨後、研磨面(観測面)の樹脂材料の態様を光学顕微鏡で500倍以上の倍率にて観測することにより確認できる。かかる観測面から、観測視野が重複しないよう、上述定義に従って3箇所の厚みを計測し、これを各断面について実施し、全ての平均を本発明の強化繊維基材を構成する布帛の厚みとして算出する。なお、樹脂材料の埋設部の厚みおよび露出部の平均厚みについても同様の測定方法を適用する。
本発明の強化繊維基材において、樹脂材料の露出部は、強化繊維基材を積層した場合に、スペーサーとして機能するが、樹脂材料の埋設部の厚みが強化繊維基材の厚みの50%を越えると、スペーサーやクラックストッパーとして機能する露出部の樹脂材料が相対的に不足するため、その機能を十分に発揮できない場合がある。すなわち、布帛に固定される樹脂材料は、強化繊維糸条の内部および外部に分配されるが、前述の通りその量に制約があるため、樹脂材料の埋設部の厚みが深くなるということは、露出部の樹脂材料の量が減少することにつながり、これに伴い露出部の厚みが低下する。露出部の厚みが低下する結果、樹脂材料がスペーサーやクラックストッパーとして十分に機能せず、強化繊維基材を積層した層間に十分なスペースが確保できず、樹脂流路の形成が不十分となる場合がある。
一方、樹脂材料の埋設部の厚みが15μm未満であると、上述とは反対に、強化繊維糸条の外部に突出する樹脂材料が相対的に多くなるため、樹脂材料のスペーサーとしての機能は高くなるが、樹脂材料の露出部の厚みもしくは投影面積が大きくなり、繊維強化樹脂の強化繊維含有率を低下させる懸念がある。樹脂材料と強化繊維糸条との接着性や、マトリックス樹脂とのアンカー効果などを最大限に発現させるためには、15μm以上であると良い。かかる観点から、樹脂材料の埋設部の厚みが15μm以上としたうえで、強化繊維基材の厚みの50%以下の範囲内とすると、樹脂材料の層間強化効果および層間流路形性効果を、より効率的に発現させることができる。
なお、強化繊維基材を複数枚積層する場合、布帛の表面に接着している樹脂材料の布帛表面に垂直方向における凹凸が大き過ぎると、それに隣接する強化繊維基材や強化繊維糸条が屈曲する可能性がある。すなわち、強化繊維基材の表面における凹凸が小さい方が、糸条の屈曲が小さくなりより高い物性の繊維強化樹脂が得られる。かかる観点から、本発明では、樹脂材料の露出部の平均厚みを10〜250μmの範囲とする。好ましくは、10〜100μm、より好ましくは、15〜60μmの範囲である。
かかる樹脂材料は、上述した間隙を有する形態であることが必要であるが、中でも、積層された強化繊維基材へのマトリックス樹脂の含浸(特に積層面の垂直方向の含浸)に優れる点、成形される繊維強化樹脂の強化繊維体積含有率を高くできる点、成形される繊維強化樹脂が高温高湿熱下においても樹脂材料の水分の拡散を最小限に抑制できる点から、点状の形態の樹脂が分散配置された態様であるのが好ましい。
ここで点状とは、布帛の表面からみた樹脂材料の平均直径が1mm以下のものをいうものとし、例えば、真円形、楕円形および不規則形(アメーバ状)についてもその平均直径が1mm以下のものは本発明においては点状に含めるものとする。なお、真円形以外の点状とする形状における平均直径は、楕円形の場合はその平均短径を、不規則形の場合はその外接円の直径とする。また点状の形態の樹脂が分散配置されているとは、布帛から任意の位置で100mm×100mmの範囲を10点取ったき、樹脂重量に10%以上のバラツキがない程度に、点状の形態の樹脂が粗密なく離散して分布していることをいう。
かかる樹脂材料は、その点状の樹脂材料の平均直径が、小さいほど均一に布帛の表面に分散させることが可能となるため、樹脂材料の平均直径1mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、250μm以下が更に好ましい。樹脂材料の平均直径が30μm以上であると、強化繊維基材の表面において樹脂材料が強化繊維糸条および補助繊維糸条を跨坐して配置されるため、形態安定性および取扱性により優れた強化繊維基材とすることができる。
かかる樹脂材料は、布帛片面に配置されていても、布帛両面に配置されていてもよい。より低コストに強化繊維基材を製造する場合は前者が好ましい。強化繊維基材の取扱性を向上させたい場合や、強化繊維基材の表裏の使い分けをしたくない場合は後者が好ましく、目的によって使い分けることができる。
本発明の強化繊維基材に用いられる布帛の、好ましい形態について以下に説明する。
図3は、本発明の強化繊維基材に用いられる布帛の一態様を示す斜視図である。
図3において、布帛26は、強化繊維糸条27であるたて糸(またはよこ糸)と、補助繊維糸条28であるよこ糸(またはたて糸)とから構成されており、強化繊維糸条27と補助繊維糸条28とが、互いに平織組織にて交錯して布帛26を形成している。この布帛26は、強化繊維糸条27が主体をなしている。このように強化繊維糸条が一方向のみに配列されている織物は一方向性織物と呼ばれ、かかる一方向性織物であれば、図3に示したものに限定されることなく、例えば、平織、朱子織、綾織、等の任意の織組織を適用することができる。その中でも好ましい織組織としては、一方向性ノンクリンプ織物が挙げられる。ノンクリンプ織物とは、強化繊維糸条の間に補助繊維糸条を配置し、それらを、お互いに並行に且つシート状に一方向に引き揃えたたて糸シートを形成し、たて方向の補助繊維糸条と、よこ方向の補助糸条群とが織組織をなして強化繊維糸条群を一体に保持した一方向性織物の一種である。一方向性織物、特に一方向性ノンクリンプ織物であると、強化繊維基材の取扱性だけでなく、強化繊維糸条の真直性、マトリックス樹脂の含浸性が、一層高く発現するため、本発明の布帛として最も好ましい形態といえる。
上述した形態以外にも、本発明の強化繊維基材に用いられる布帛は、以下の形態であっても良い。
図4および、図5は、本発明の強化繊維基材に用いられる布帛の別の態様を示す斜視図である。
図4において、布帛29は、強化繊維糸条30が一方向に配列されたたて糸と、該たて糸とは異なる方向に強化繊維糸条31が一方向に配列されたよこ糸とから構成されており、たて糸とよこ糸とが、互いに平織組織にて交錯して布帛29を形成している。このように、強化繊維糸条が二方向に配向している織物は、二方向性織物と呼ばれ、図3の平織組織以外にも、朱子織、綾織等の任意の織組織を適用することができる。
かかる二方向性織物は、強化繊維糸条同士が互いに交錯して組織を形成しているため、布帛としての取扱性に優れるだけでなく、後述する注入成形により繊維強化樹脂が成形される際、該交錯点がマトリックス樹脂の流路となり、優れた含浸性を発現する。クリンプに関しては、強化繊維糸条同士が交錯するため、上述した一方向性織物に比べて劣るが、用いる強化繊維糸条の断面をより平滑にすることで、クリンプの形成を最小限に留めることができる。例えば、組織を形成する前に、エアー・ジェット噴射やロールによる屈折・揺動処理を行い、強化繊維糸条を薄く拡げてもよいし、予め布帛とした後に同処理を行って、布帛ごと平滑にしてもよい。
図5において、布帛32は、強化繊維糸条群が一方向に配列された第一層33と、該第一層と異なる方向に強化繊維糸条群が一方向に配列された第二層34とが交差積層され、補助繊維糸条(ステッチ糸)35からなる経編により該二層同士が一体化されて布帛32を形成している。このように二方向に配向された強化繊維糸条が交差積層され補助繊維糸条(ステッチ糸)35からなる経編により該二層が一体化された布帛を、二軸ステッチ基材といい、かかる二軸ステッチ基材であれば、図5に示したものに限定されることなく本発明に適用できる。
本発明に適用する布帛としては、前記二軸ステッチ基材に限らず、一方向に配列された強化繊維糸条群が異なる方向に少なくとも2層以上が交差積層され補助繊維糸条(ステッチ糸)35からなる経編により一体化されたいわゆる多軸ステッチ基材も適用することができる。多軸ステッチ基材としては、例えば、疑似的に等方性となる様に、「−45°/0°/+45°/90°・・・」と四層以上に積層されていてもよいし、さらに多方向に積層されていてもよい。なお、多層積層の場合は、層間強化の観点から、少なくとも2層毎に樹脂材料を配置することが好ましく、各層間に樹脂材料を配置するとより好ましい。各層間に樹脂材料を配置すると、樹脂材料の効果(特に層間強化効果)を最大限に発現することができる。
上述の二軸ステッチ基材、および、多軸ステッチ基材を総称して、単にステッチ基材と呼ぶが、かかるステッチ基材は、補助繊維糸条群にて縫合一体化されたものをいう。ここで縫合一体化とは、布帛形態を維持できるだけの拘束を得られれば、特に制限されるものではなく、例えば、経編、緯編、あるいはステッチである。中でも製造効率の面から、経編であるのが好ましい。
上述の二軸ステッチ基材、および、多軸ステッチ基材は共に本発明に適用できるが、これらの中でも強化繊維糸条が一方向に配列された第一層と、該第一層と直交する方向に強化繊維糸条が一方向に配列された第二層が交差積層した、二層積層の二軸ステッチ基材(例えば、「−45°/+45°」、「0°/90°」)が好ましい。かかる構成であると、布帛がせん断変形し易いため、例えば、複雑形状や深絞り形状への追従性に優れる(賦型性)うえ、強化繊維基材を積層、成形して繊維強化樹脂とした場合に、樹脂材料が繊維強化樹脂内に均等に配置されるため、上述した樹脂材料の層間強化を十分に発揮することができる。さらに、強化繊維基材の製造(樹脂材料の固定)においても、上述した織物と同様のプロセスを適用することができ、汎用性に優れる。
なお、本発明の強化繊維基材は、強化繊維の目付が、100〜400g/m2(より好ましくは130〜290g/m2、更に好ましくは140〜220g/m2)の範囲であることが好ましい。
本発明で用いる強化繊維糸条は、特にその種類に制限はないが、例えば、ガラス繊維、有機(アラミド、PBO、PVA、PE等)繊維または炭素繊維等が挙げられる。炭素繊維は、比強度および比弾性率に優れ、耐吸水性に優れるので、航空機構造材や自動車の強化繊維糸条として好ましく用いられる。強化繊維糸条として炭素繊維を用いる場合、6,000〜70,000フイラメント、繊度(Tc)は400〜5000texの範囲であるのが好ましい。12,000〜25,000フイラメント、繊度は800〜1800texの範囲であれば、より好ましい。かかる範囲であると、比較的安価に高性能の炭素繊維を入手できる利点がある。また、本発明の強化繊維糸条は、実質的に無撚のものであることが好ましい。実質的に無撚りとは、通常1ターン/m未満であることをいう。実質的に無撚糸であると、強化繊維糸条厚みを小さくでき、また、強化繊維の真直性に優れるため、成形した繊維強化樹脂において高い強化繊維含有率を発現できると共に、優れた力学特性をもたらすことができるためである。
本発明において、布帛として一方向性織物、2軸ステッチ基材、または、多軸ステッチ基材を用いる場合には、かかる布帛に用いられる補助繊維糸条は、その繊度が強化繊維糸条の1/5以下であるのが好ましい。補助繊維糸条群の繊度(Ta)は、強化繊維糸条の繊度(Tc)の1/5以下、すなわち20%以下であるのが好ましい。具体的には、(Ta×100)/Tc2≦20である。より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。かかる比率の下限は特になく、小さければ小さいほどよいが、布帛の形態安定性、製造安定性の面から、0.05%以上であるのが一般的である。
かかる補助繊維糸条群は、布帛の厚み方向に貫通して、布帛の長手方向に延在しているため、布帛の面内方向および厚み方向に強化繊維糸条の屈曲(クリンプ)を形成する。言い換えると、補助繊維糸条群を可能な限り細くすることで、クリンプの形成を最小現に抑制することが可能であり、力学特性にすぐれる繊維強化樹脂を得ることができる。かかるクリンプは、繊維強化樹脂の強化繊維体積含有率が高い(軽量化効果に優れる)ほど、顕著に発現し、力学特性を低下させ易い。すなわち、上述態様の補助繊維糸条群であれば、優れた軽量化効果および極めて高い力学特性が要求される航空機の一次構造部材等に適用できる様な繊維強化樹脂を容易に得ることができる。Taが上記範囲内であると、強化繊維糸条のクリンプは僅かながら形成されるものの、強化繊維糸条の真直性には殆ど影響を及ぼすには至り難く、力学特性の低下は実質的に無視できるレベルとなり、高い強化繊維体積含有率でありながら、極めて高い力学特性を発現する繊維強化樹脂を得ることができるのである。補助繊維糸条群の繊度は、単独では適した指標になり難いが、強化繊維糸条を800〜1700texの範囲の炭素繊維糸条と想定すると、上記のクリンプの影響低減の観点から、補助繊維の繊度(Ta)は、8tex以下であるのが好ましい。より好ましくは5tex以下、更に好ましくは2tex以下である。しかし、細すぎても強化繊維基材の製造過程で糸切れを招き、結果的に生産性を低下させる場合があるため、0.5tex以上であることが好ましい。
クリンプ抑制の観点から、補助繊維糸条は、マルチフィラメントであることが好ましい。好ましくは5フィラメントを超えるものである。マルチフィラメントであると、フィラメント単糸の繊度(直径)を更に小さくすることが可能となり、一層クリンプを小さくして強化繊維糸条の真直性を高めることができる。また、補助繊維糸条の糸切れも少なくでき、取扱性、強化繊維基材の製造安定性の面からも優れるため好ましい。なお、マルチフィラメントの場合、成形した繊維強化樹脂が高い力学特性、強化繊維体積含有率を達成するために、実質的に無撚のものを用いることが好ましい。
本発明において、布帛として一方向性織物、ステッチ基材を用いる場合には、かかる布帛に用いられる補助繊維糸条としては、特にその種類に制限はないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ビニルアルコール、ポリフェニレンサルファイド、ポリアラミド、それらの組成物等から選ぶことができる。中でも、ポリエステル、ポリアミドであると好ましい。布帛の賦型性の観点からは、スパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)、ポリアミドまたはポリエステルの加工糸であることが好ましい。
本発明の強化繊維基材は、積層する際、加熱処理してタック性発現させるが、樹脂材料は、かかる作業性の面から、50〜150℃の範囲の融点またはガラス転移温度を有しているものが好ましい。より好ましくは70〜140℃、更に好ましくは90〜120℃の範囲の融点またはガラス転移温度を有しているものである。
樹脂材料の成分は、強化繊維基材の取扱性を向上させ、それを用いて得られる繊維強化樹脂の力学特性を向上させるものであれば、特に限定されない。樹脂材料として、各種の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を使用でき、いずれを主成分としても良い。本発明において主成分とは、通常、樹脂材料に対して50重量%を超えて含有していることをいうものとする。
本発明における樹脂材料に熱可塑性樹脂を主成分として用いる場合には、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリジシクロペンタジエン、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、フェノール、フェノキシ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にエラストマー(好ましくはブタジエン・アクリロニトリル、そのカルボン酸またはアミン変性体、フルオロエラストマー、ポリシロキサンエラストマー、)、ゴム(ブタジエン、スチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレン、スチレン・イソプレン・スチレン、天然ゴム等)、RIM用樹脂(例えばポリアミド6、ポリアミド12、ポリウレタン、ポリウレア、ポリジシクロペンタジエンを形成する触媒等を含むもの)、および、環状オリゴマー(ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を形成する触媒等を含むもの)からなる群より選ばれた1種、2種以上の共重合体、もしくは、変性体、または、2種類以上の混合物を使用することができる。中でもポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリビニルフォルマール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフォルマール、フェノキシ、および、フェノールからなる群より選ばれた1種、2種以上の共重合体、もしくは、変性体、または、2種類以上の混合物であるのが好ましい。本発明で用いる樹脂材料の主成分としては、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリビニルフォルマール、フェノキシ樹脂、ポリカーボネートからなる群より選ばれた1種、2種以上の混合物であるのがとりわけ好ましい。
また、熱硬化性樹脂を主成分として用いる場合には、エポキシ、フェノール、ポリベンゾイミダゾール、ベンゾオキサジン、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ユリア、メラミン、ビスマレイミド、ポリイミド、および、ポリアミドイミドからなる群より選ばれた1種、2種以上の混合物、もしくは、変性体、または、前記群より選ばれた1種、2種類以上の混合物、もしくは、変性体に、更にエラストマーやゴム成分、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加した樹脂等を使用することができる。中でも、エポキシ、フェノール、酢酸ビニル、不飽和ポリエステル、および、ビニルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種または2種類以上の混合物であるのが好ましい。特にエポキシを使用すると、接着性が高いため強化繊維基材の取り扱い性に優れるだけでなく、後述のマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合に高い力学特性を発現することができるため好ましい。エポキシを用いる場合は、硬化剤や硬化触媒等を含んでもよいし、含まなくてもよいが、ライフの面から後者の方が好ましい。前者の場合でも潜在性の高い硬化剤や硬化触媒であれば、特に大きな問題とはならない。
本発明の強化繊維基材に用いる樹脂材料として、熱可塑性樹脂が主成分となる樹脂材料を用いる場合、樹脂材料中の熱可塑性樹脂の配合比率は、60〜100重量%であることが好ましい。より好ましくは70〜97重量%であり、更に好ましくは80〜95重量%である。配合量が60重量%未満であると、力学特性(特にCAI)に優れた繊維強化樹脂を得難い場合がある。 また、本発明の強化繊維基材に用いる樹脂材料として熱可塑性樹脂を主成分となる樹脂材料を用いる場合、用いる熱可塑性樹脂の骨格や分子量によっては、溶融粘度や溶融温度(またはガラス転移温度)が高いこともあるため、加熱により布帛へ接着する際、強化繊維糸条に不十分にしか固定できなかったり、強化繊維基材を積層するときに高温要し作業性が悪い場合がある。この様な場合には、樹脂材料に少量の粘着付与剤、可塑剤等を副成分として配合することも好ましい。かかる副成分としては、エポキシ、フェノール、酢酸ビニル、不飽和ポリエステル、および、ビニルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種であるのが好ましい。特に、後述の繊維強化樹脂とするときのマトリックス樹脂として用いるものを適用するものであると、該マトリックス樹脂と樹脂材料との接着性、相溶性に優れる利点がある。
本発明における樹脂材料の主成分として、熱硬化性樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂が好ましい。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテルなどを使用することができる。
熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂と比較し、溶融粘度や溶融温度(またはガラス転移温度)が低いため、ホットメルトにより強化繊維を十分濡らすことができることから、強化繊維基材およびプリフォームの取扱性やタック性を鑑みた場合に好適である。その効果として、例えば、強化繊維基材およびプリフォーム端部における強化繊維の解れが抑制され、成形品における端部処理量が軽減されることから、低コスト化にも繋がる。
本発明の強化繊維基材に用いる樹脂材料として、熱硬化性樹脂が主成分となる樹脂材料を用いる場合、樹脂材料中の熱硬化性樹脂の配合比率は、51〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは53〜80重量%、さらに好ましくは55〜70重量%である。配合比率が51%未満であると、上述した強化繊維基材およぶプリフォームにおける、取扱性およびタック性を損ねる場合がある。
かかる樹脂材料として、上記熱硬化性樹脂以外の成分をさらに含んでいても良く、例えば酸化防止剤、非溶解性の有機粒子、無機粒子等を使用することができる。特に有機粒子のうち、架橋ゴム粒子や非溶解性の熱可塑性樹脂粒子は、高靱性化効果を向上させるのに有効である。また、硬化剤あるいは硬化触媒を配合してあってもよいが、自己硬化性がある場合は保管中に樹脂材料のガラス転移温度が上昇し、バインダーとしての機能が失われてしまうため、好ましくは配合しない方がよい。
かかる樹脂材料としては、その融点Tm+50℃における、せん断速度1000/sにおける溶融粘度が100〜1000Pa・sの範囲内であると好ましい。より好ましくは200〜800Pa・sであり、更に好ましくは250〜600Pa・sである。溶融粘度が小さすぎると、樹脂材料を強化繊維糸条群に加熱接着する場合に、強化繊維糸条群の表面にて拡散ないし強化繊維糸条の中に浸透してしまい、強化繊維糸条群の表面にて露出部(スペーサー)の形成が困難な場合がある。一方、溶融粘度が大きすぎると、強化繊維糸条群の中に樹脂材料が浸透し難く、樹脂材料の界面を強化繊維糸条群の中に形成できず、繊維強化樹脂とした場合に、上述の層間強化効果を十分に発現できない場合がある。かかる観点から、本発明が上記範囲であると、本発明の強化繊維基材を容易に作製することが可能である。ここで、上記溶融粘度は、回転粘度計を用いてJIS K7117−2(1999)にしたがい測定した値を指す。また、融点Tmとは、DSC(示差走査熱量計)を用いてJIS K7121(1987)にしたがい絶乾状態で20℃/minの昇温速度にて測定した値を指す。なお、融点を示さないもの(例えば非晶性ポリマー)については、同様に測定して得られるガラス転移温度+100℃を便宜的に融点(Tm)とみなすものとする。
本発明の積層体は、強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群で構成される布帛を複数枚積層した積層体であって、各積層層間部に、層間を形成する布帛の2〜40重量%の範囲内で樹脂材料が間隙を有する形態で配置されており、前記樹脂材料の個々のものは、層間に位置し強化繊維糸条を含まない層間配置部と、その両側に、層間を形成する両布帛の強化繊維糸条の内の複数の単糸が前記樹脂材料を貫通する埋没部を有する形態で、前記強化繊維基材を結合することを特徴とするものである。ここでの布帛、および、樹脂材料の定義は、前述した本発明の強化繊維基材と同じである。
ここで、前記樹脂材料は間隙を有する形態で積層体の層間部に配置されていることが必要である。樹脂材料が間隙を有する形態で積層体の層間部に配置されているとは、積層層間部に占める樹脂材料の投影面積が80%以下となる様に樹脂材料の存在部と非存在部が混在している態様で、樹脂材料が配置されていることを指す。なお、積層体における樹脂材料の投影面積は、強化繊維基材のそれとは異なり、断面から推定する。すなわち、積層体の任意の少なくとも10箇所から積層体を構成する強化繊維糸条と直交する方向に切り出した断面より確認する。かかる断面のそれぞれから、積層体を構成する布帛の各層について、上述した樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置および布帛厚み方向に対置してあるもう一方の樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛表面を形成する単糸の位置、すなわち、各層の布帛の布帛表面の位置を決定する。かかる位置に直線を引き、層間を挟んだ両表面の位置に対応する直線の間を2等分する直線を引き、その直線上において樹脂材料が存在しない距離=樹脂材料が被覆していない部分、樹脂材料が存在する距離=樹脂材料が被覆している部分と見なして測長し、それぞれの距離の割合を便宜上の投影面積とする。これを全ての層間、全ての断面について実施し、各層についてそれぞれの結果の平均値を算出し、該値を本発明の積層体における積層層間部に占める樹脂材料の投影面積として定義する。なお、樹脂材料が存在する距離および存在しない距離の測長において、左方向から右方向に測長すると想定した場合、積層体における各布帛層の布帛表面に位置する直線上において、独立の塊として配置された樹脂材料の左末端から、樹脂材料内部を貫通して右末端部を通過し、右隣に配置された樹脂材料の左末端までの距離を1単位とし、各層間にて少なくとも10単位の計測点を設けることとする。
かかる形態で前記樹脂材料が配置される存在部分の面積の割合は、5〜50%の範囲内が好ましく、また、間隙(非存在部)がより均一に分散された状態であることが好ましい。かかる樹脂材料の形態としては、例えば、多孔性フィルム、短繊維不織布、カットファイバーもしくは粉粒体、等があるが、これらの中でも、粉粒体が好ましい。
また、本発明の積層体における樹脂材料の固定の態様は、樹脂材料の個々のものが、前記強化繊維糸条の内の複数の単糸が少なくとも前記樹脂材料を貫通する埋設部と、層間に位置し強化繊維糸条を含まない層間配置部とを有する態様で固定されていることが必要である。埋設部および、層間配置部の形態については後述するが、かかる態様で固定されていることにより、マトリックス樹脂を注入し維強化樹脂とした場合において樹脂材料の層間強化効果を格段に高い効率で発現させることができるのである。一方、かかる態様外(一方の布帛側にしか埋設部がない場合や、どちらの布帛側にも埋設部がない場合)では、繊維強化樹脂において樹脂材料が効果的には機能できず、繊維強化樹脂においてクラックストッパーとしての機能を最大限に発現できない。
また、本発明の積層体における樹脂材料の埋設部の厚みは布帛の厚みより薄いことが必要である。かかる埋設部の厚みを有することにより、樹脂材料の層間強化効果を損なうことなく、強化繊維基材の優れた取扱性および樹脂含浸性をも両立するものである。一方、かかる態様外では、埋設部が強化繊維糸条を厚み方向に貫通して配されるため、繊維強化樹脂を成形する際にマトリックス樹脂の含浸を阻害し、積層体の樹脂含浸性を低下させてしまう。
また、本発明の積層体においては、各層間において樹脂材料の全投影面積の50〜100%が上記態様にて固定されていることが必要である。かかる態様で固定されていることにより、樹脂材料による効果(特に層間強化効果)を、積層体の全面にわたってより確実かつ広域に作用させることができる。一方、かかる態様外では、樹脂材料の効果(特に層間強化効果)が局所的になるだけでなくバラツキが大きくなり、積層体および繊維強化樹脂において前記効果をもたらすに至らない。
図6は、本発明の積層体を模式的に示す断面図である。36、37は布帛を、38は樹脂材料であり、複数の布帛が樹脂材料を層間部に配置した積層体40を形成していることを示している。かかる構成の積層体は、本発明の強化繊維基材を積層し、後述する所定の条件下で加熱加圧することで得ることが出きる。
図7は、本発明の積層体の層間部分を模式的に示す拡大断面図である。本図は、図6の樹脂材料38を挟む布帛36と布帛37により形成された層間部分を拡大したものである。
図7において、樹脂材料38は、布帛36および布帛37を構成する複数の単糸41、43が樹脂材料38を貫通してなる埋設部(樹脂材料38の内、符号42および44で示される領域)と、層間に位置し強化繊維糸条を含まない層間配置部(樹脂材料38の内、符号42aおよび44aの破線の間の領域)とを有する態様で固定されている。ここで、各破線の示す位置(各領域の境界)に関して詳述する。図7に示す破線42aおよび44aは、樹脂材料38中を貫通する布帛36および布帛37を構成する複数の単糸41、43のうち各層間において層間側に位置する単糸の位置を示したもの、破線42bおよび44bは、樹脂材料38のうち布帛の面と略垂直な方向において樹脂材料が布帛内に最も浸入した位置を示したものである。
破線42aおよび44aの位置は、前述した図2における破線13の位置と対応しており、樹脂材料38中を貫通する布帛36および布帛37を構成する複数の単糸41、43のうち各層間において層間側に位置する単糸の位置は、樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛表面を形成する単糸9の位置に相当し、樹脂材料38のうち布帛の面と略垂直な方向において樹脂材料が布帛内に最も浸入した位置は、樹脂材料が樹脂材料が布帛内に最も浸入した位置14に相当するものであり、それぞれの位置の定義についてもそれに準じる。
かかる積層体における樹脂材料は、隣接する布帛同士を結合し、互いに一体化させる係合材としての役割を担う。樹脂材料が係合材として働くことにより、積層体の加工、運搬、などの作業工程において、積層体としての優れた取扱性および形態安定性を付与することができる。例えば、所定の配向にて積層された積層体において、配向角度の乱れ防止することができ、その結果、製造コストの低減、製品の品質安定化に繋がる。
前記樹脂材料の別の役割として、積層体層間部に配置されている樹脂材料がスペーサーとなって、厚み方向に隣接する布帛の層間にスペースを形成する。かかるスペースは、後述する注入成形により繊維強化樹脂が成形される際、マトリックス樹脂の流路の役目を果たす(層間流路形成効果)。これにより、マトリックス樹脂の含浸が容易になるだけでなく、その含浸速度も速くなり、繊維強化樹脂の優れた生産性をもたらす。
かかる構成の積層体は、強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群で構成される布帛を積層するときに、前記各布帛の層間部に樹脂材料を配置しながら積層しても良いし、強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群で構成される布帛の表面に樹脂材料が配置された本発明の強化繊維基材を積層しても得ることができるが、後者により、得ることが好ましい。
後者においては、強化繊維基材の樹脂材料の露出部が層間を形成するもう一方の強化繊維基材の強化繊維糸条中にもう一方の埋設部を形成する。かかる態様は、強化繊維基材が積層されただけの仮積層体を厚み方向に一様に圧力を加えることで強化繊維基材の樹脂材料の露出部が層間を形成するもう一方の強化繊維基材の強化繊維糸条中に物理的に埋め込まれた状態を形成し、この状態にて仮積層体を加熱することで、樹脂材料を軟化ないし溶融させ、もう一方の強化繊維基材の強化繊維糸条中に埋設部を形成することができる。なお、強化繊維基材の片表面に樹脂材料が配置されている場合、樹脂材料の露出部の厚みが埋設部の厚みよりも大きいと、積層体とした時に樹脂材料の層間配置部と埋設部とにバランスよく樹脂材料は配置されるため好ましく、強化繊維基材の両表面に樹脂材料が配置されている場合、樹脂材料の露出部の厚みが埋設部の厚みより小さいと、同様に好ましい。
また後者は、予め樹脂材料が配置されてある強化繊維基材を用いることで、積層体の優れた生産性をもたらす。前者は、任意の面積に切り出した布帛の一枚毎に樹脂材料を配置し、積層しなければならないのに対し、後者は、連続して得られた強化繊維基材を裁断して積層するだけであるため、積層工程において省力化が可能である。
本発明の強化繊維基材を積層し、前記態様の積層体とすることで、前述した層間強化効果を最大限に発現することができる。
本発明の積層体は、前述のように、樹脂材料38は、が隣接する強化繊維基材のそれぞれの強化繊維糸条の内に、埋設部を有する。かかる埋設部は、上述した強化繊維基材のそれと同様の機能を有するが、一塊の樹脂材料が隣接する層のそれぞれにこのような埋設部を介して固定されていることで、繊維強化樹脂のおける、隣接する層のそれぞれに前述のアンカー効果をもたらす。つまり、これら効果が複合された積層体は、繊維強化樹脂にした場合に、隣接する層と層とが、樹脂材料を介して互いに強固な接着を持って連結される。これにより、繊維強化樹脂における層間剥離強度を向上することができるのである。
本発明では、積層体における層間に存在する樹脂材料のそれぞれが略同量の目付であることが好ましい。かかる態様であると、前記積層体を繊維強化樹脂とした場合に、繊維強化樹脂内において、後述する強化繊維体積含有率(Vf)のムラをなくすことができる。さらに、均一な層間が形成され、優れた力学特性をもたらす。なお、ここでいう樹脂材料とは、露出部および埋設部に双方を含むものであり、略同量とは、±5%以下の範囲内であることを指す。
本発明の繊維強化樹脂は、前記強化繊維基材、または、前記積層体を強化繊維とするものである。かかる繊維強化樹脂は、前記強化繊維基材、または、前記積層体にマトリックス樹脂を含浸し、含浸後に、固化(硬化または重合)して製造される。
本発明の繊維強化樹脂を得るために使用するマトリックス樹脂は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂であるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、シアネートエステル、ビスマレイミドベンゾオキサジン、アクリルからなる群より選ばれる少なくとも1種または2種以上の混合物であると、繊維強化樹脂の成形性と力学特性の両面においてバランスがよいことから、本発明の課題を解決し易いため好ましい。中でも、例えば航空機の一次構造部材で要求される非常に高い力学特性(特に、衝撃付与後の圧縮強度等)を達成するためには、エポキシまたはビスマレイミドであるのが好ましく、とりわけエポキシが好ましい。また、更にエラストマーやゴム、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加したものも使用することができる。
マトリックス樹脂を、後述の注入成形にて強化繊維基材に含浸させる場合、マトリックス樹脂の粘度が低いと含浸時間が短くでき、かつ非常に厚く積層した強化繊維基材をも含浸可能となる。かかる粘度は、注入温度において、400mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましい。更には、含浸時間を極力長くとるために、注入温度における1時間後の粘度は、600mPa・s以下が好ましく、400mPa・s以下がより好ましい。注入温度は、100℃以下であると設備が簡易なものにできるため好ましい。
本発明の繊維強化樹脂は、例えば、注入成形(RTM(Resin Transfer Molding)、RFI(Resin Film Infusion)、RIM(Resin Injection Molding)、真空アシストRTM等)、プレス成形等の各種成形方法およびそれらを組み合わせた成形方法にて成形することができる。
より好ましい繊維強化樹脂の成形方法としては、生産性の高い注入成形方法が挙げられる。かかる注入成形方法として、好ましくはRTMが挙げられる。RTMは、例えば、雄型および雌型により形成したキャビティ中にマトリックス樹脂を加圧して注入する成形方法がある。より好ましい成形方法として、真空アシストRTMが挙げられる。真空アシストRTMは、上述の通りであるが、例えば、雄型または雌型のいずれか一方(例えば、金属、FRP等で、変形しにくい高剛性材料が好ましい)とフィルム等のバッグ材(例えば、ナイロンフィルム、シリコンラバー等で、再使用できるものが好ましい)により形成したキャビティを減圧し、大気圧との差圧にてマトリックス樹脂を注入する。この場合、キャビティ内の強化繊維基材に樹脂拡散媒体(メディア)を配置し、かかるメディアによりマトリックス樹脂の拡散・含浸を促進する。成形後には、繊維強化樹脂からメディアを分離することが好ましい。これらの注入成形方法は、成形コストの面から好ましく適用される。
上述の繊維強化樹脂は、強化繊維体積含有率(Vf)が53〜65%の範囲であり、SACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後の常温圧縮強度が240MPa以上であるとよい。なお、Vf(単位はvol%)とは、繊維強化樹脂において強化繊維が占める体積比率のことを指し、具体的には次式によって定義され、ここで用いた記号は下記に示すとおりである。
Vf=(W×100)/(ρ×T)
W:強化繊維基材または積層体における布帛1cm2当たりの強化繊維の重量(g/cm2)
ρ:強化繊維の密度(g/cm3)
T:繊維強化樹脂の厚さ(cm)
繊維強化樹脂のVfが53〜65%の範囲であると、繊維強化樹脂の優れた力学特性を最大限に発現することができる。Vfが53%未満であると、軽量化効果に劣り、65%を超えると、上述の注入成形での成形が困難となるほか、力学特性(特に耐衝撃性)が低下する場合がある。すなわち、かかるVf範囲において、繊維強化樹脂のSACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後の常温圧縮強度が240MPa以上であると、軽量化効果と力学特性とを共に満足する材料とすることができる。かかる要件を満たす繊維強化樹脂においては、その優れた力学特性と軽量化効果から、多岐の用途にわたって利用される。特に限定されないが、航空機、自動車、または、船舶等の輸送機器における一次構造部材、二次構造部材、外装部材、内装部材もしくはそれらの部品等に用いられ、その効果を最大限に発現する。
なお、SACMAとは、Suppliers of Advanced Composite Materials Associationの略であり、SACMA−SRM−2R−94とは、ここが定める試験法の規格である。衝撃付与後の常温圧縮強度とは、SACMA−SRM−2R−94に従ってDry条件にて測定されたものである。
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。実施例および比較例に用いた原材料および成形方法は、次の通りである。
<強化繊維糸条>
炭素繊維糸条:PAN系炭素繊維、24,000フィラメント、繊度:1,033tex、引張強度:6.0GPa、引張弾性率:294GPa、破断伸度:2.0%。
<補助繊維糸条1>
ポリアミド繊維糸条:ポリアミド66、7フィラメント、繊度:1.7tex、融点:255℃、油分:0.6%。
低融点ポリアミド繊維糸条:共重合ポリアミド、10フィラメント、繊度:5.5tex、融点:115℃。
<補助繊維糸条2>
ポリエステル繊維糸条:ポリエチレンテレフタレート、24フィラメント、繊度:54tex、融点:260℃
<樹脂材料>
樹脂材料A:ポリアミド12の不織布(日本バイリーン(株)製)、目付:10g/m2、融点:175℃、ガラス転移点:50℃。
樹脂材料B:ポリアミド12の粒子。
樹脂材料C:樹脂組成物1の不織布、目付:18g/m2、ガラス転移点:85℃。
樹脂組成物1:ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業(株)製スミカエクセル(登録商標)”5003P)60重量%(主成分)と、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“エピコート(登録商標)”806)21重量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000)12.5重量部、および、トリアジン核を骨格にもつ3価のエポキシ樹脂(日産化学工業(株)製TEPIC−P)4重量部、それぞれ計り取り100℃において均一になるまで攪拌したエポキシ樹脂組成物40重量%(副成分)とを、2軸押出機にて溶融混練して相溶させたもの。
樹脂材料D:樹脂組成物2の粒子、ガラス転移点:71℃
樹脂組成物2:ポリビニルホルマール(“ビニレック(登録商標)”Kタイプ、窒素(株)製)60重量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“エピコート(登録商標)”828、ジャパンエポキシレジン(株)製)10重量部および固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“エピコート(登録商標)”1001、ジャパンエポキシレジン(株)製)30重量部を、2軸押出機にて溶融混練して相溶させたもの。
樹脂材料E:樹脂材料Cと同様の樹脂組成物の不織布、目付:50g/m2、ガラス転移点:85℃。
<マトリックス樹脂>
次の主液100重量部に、次の硬化液を39重量部加え、80℃にて均一に様に撹拌したエポキシ樹脂組成物。80℃におけるE型粘度計による粘度:55mPa・s、1時間後の粘度:180mPa・s、180℃で2時間硬化後のガラス転移点:197℃、曲げ弾性率:3.3GPa。
主液−エポキシとして、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ(“アラルダイト(登録商標)”MY−721、Vantico(株)製)40重量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“エピコート(登録商標)”825)35重量部、ジグリシジルアニリン(GAN、日本化薬(株)製)15重量部、および、トリグリシジルアミノフェノール型エポキシ樹脂(“エピコート(登録商標)”630、ジャパンエポキシレジン(株)製)10重量部をそれぞれ計り取り、70℃で1時間攪拌して均一溶解させたもの。
硬化液として、変性芳香族ポリアミン(“エピキュア(登録商標)”W、ジャパンエポキシレジン(株)製)70重量部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)20重量部、および、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(“スミキュア(登録商標)”S、住友化学工業(株)製)10重量部、それぞれ計り取り、100℃で1時間攪拌して均一にした後に70℃に降温して、硬化促進剤として、t−ブチルカテコール(宇部興産(株)製)2重量部計り取り、更に70℃で30分間攪拌して均一溶解させたもの。
<強化繊維基材の表面に占める樹脂材料の投影面積の割合:面積率A>
積層体とする前の強化繊維基材について、幅方向に3箇所から30cm×30cmのサイズを切り出し、切り出したサンプルを強化繊維基材の面に対して略垂直な方向から、CCDカメラで0.10mm/画素の精度で撮像した。得られた画像は、画像処理装置(KEYENCE製:CV−3000)を用いて画像処理(0.5mm以上の径のものを樹脂材料と判別)を行い、視野範囲と視野内における樹脂材料の画素数から、強化繊維基材における樹脂材料の投影面積の割合を算出し百分率で表示した。これを3箇所それぞれのサンプルについて実施し、それぞれの値の平均値を本実施例および比較例について求めた。
<積層体の層間に占める樹脂材料の投影面積の割合:面積率B>
(1)強化繊維基材を積層して得られた積層体の任意の10箇所から断面長が2cmとなるように、強化繊維糸条と直交する方向にサンプルを切り出し、切り出したサンプルを切り出し面が観察面となるように包埋型内に配置し、型内に包埋樹脂(BUEHLER製:EPO KWICK)を流し込んだ。包埋樹脂が硬化後、観察面を研磨し、包埋サンプルを作製した。得られた包埋サンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE(株)製“VHX−500”)を用いて、倍率500倍にて以下の手順にて観察した。
(2)積層体を構成する強化繊維基材の各層について、樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置、および、布帛厚み方向に対置してあるもう一方の樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置を決定し、それらの中間の位置に基準となる直線を画像上に設けた。なお、基準線は観察視野毎に設けた。
(3)前記基準線上において、樹脂材料が存在しない距離、樹脂材料が存在する距離をそれぞれ測長した。樹脂材料が存在する距離および存在しない距離の測長は、画面に向かって左方向から右方向に測長し、積層体における各層の基準線上において、独立の塊として配置された樹脂材料の左末端から、樹脂材料内部を貫通して右末端部を通過し、右隣に配置された樹脂材料の左末端までの距離を1単位とし、各層間にて10単位の計測を行った。なお、距離が10mm以上のものを、樹脂材料が存在しない距離、樹脂材料が存在する距離として距離を測定し、これ以下のものは無視するものとする(樹脂材料の存在する領域のなかに10mm未満の樹脂材料の存在しない領域があってもそこには樹脂材料があるものとする、逆の場合も同様)。
(4)上記測定を各断面について実施し、10単位×層間数×10箇所より得られた値の平均値を算出し、樹脂材料が存在する距離を樹脂材料が存在する距離と樹脂材料が存在しない距離の和で割返した値を算出し百分率で表示した。
<強化繊維基材の表面における樹脂材料の投影面積中の埋設部の割合:埋設部の割合C>
(1)強化繊維基材から、任意の10箇所を断面長が2cmとなるように、強化繊維糸条と直交する方向にサンプルを切り出し、切り出したサンプルを切り出し面が観察面となるように包埋型内に配置し、型内に包埋樹脂(BUEHLER製:EPO KWICK)を流し込んだ。包埋樹脂が硬化後、観察面を研磨し、包埋サンプルを作製した。得られた包埋サンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE(株)製“VHX−500”)を用いて、倍率500倍にて以下の手順にて観察した。
(2)強化繊維基材について、樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置を決定し、その位置に基準となる直線を画像上に設けた。なお、基準線は観察視野毎に設けた。
(3)次いで、上記基準線上で、樹脂材料が存在する距離を面積率Bの測定時と同様の基準で、測定し埋設部の距離とし、対応する該埋設部と連接する露出部について、上記基準線より露出部の厚みの1/2の位置で面積率Bの測定時と同様の基準で、面積率Bの測定における樹脂材料が存在する距離を求める。このようにして求めた値を用い、埋設部の距離を樹脂材料が存在する距離で割った値を百分率で表示した。
<積層体の層間、における樹脂材料の投影面積中の埋設部の割合:埋設部の割合D>
(1)強化繊維基材を積層して得られた積層体から、任意の10箇所を断面長が2cmとなるように、強化繊維糸条と直交する方向にサンプルを切り出し、切り出したサンプルを切り出し面が観察面となるように包埋型内に配置し、型内に包埋樹脂(BUEHLER製:EPO KWICK)を流し込んだ。包埋樹脂が硬化後、観察面を研磨し、包埋サンプルを作製した。得られた包埋サンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE(株)製“VHX−500”)を用いて、倍率500倍にて以下の手順にて観察した。
(2)積層体を構成する強化繊維基材の各層について、樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置、および、布帛厚み方向に対置してあるもう一方の樹脂材料中を貫通する強化繊維糸条を構成する複数の単糸のうち、布帛の最表面を形成する単糸の位置を決定し、それらの位置に基準となる直線(基準線1)を画像上に設けた。又、基準線1の中間位置に、層間部分の基準となる直線(基準線2)を画像上に設けた。なお、これらの基準線は観察視野毎に設けた。
(3)次いで、上記基準線1上で、樹脂材料が存在する距離を面積率Bの測定時と同様の基準で、測定し埋設部の距離とし、同様にして上記基準線2上で、対応する該埋設部と連接する層間配置部について、樹脂材料が存在する距離を求める。このようにして求めた値を用い、埋設部の距離を層間配置部において樹脂材料が存在する距離で割った値を百分率で表示した。
<繊維強化樹脂の成形方法>
本発明の成形方法の例を、図面を参照して説明する。
図8は、繊維強化樹脂の成形方法の実施に用いる装置の一態様の断面図である。
図8に示す様に、アルミ製成形型45の表面に、強化繊維基材46を所定の枚数と角度で積層した。積層された強化繊維基材の最表面にピールプライ47としてポリエステル繊維の離型処理された織物を配置し、その上に樹脂拡散媒体48であるポリプロピレン製メッシュ状シートを配置し、更にその上に、押さえ板となるアルミ製カウルプレート49を配置した。積層された強化繊維基材が成形型と接した周囲には、エッジ・ブリーザー50としてポリエステル繊維の不織布を複数枚積層して張り巡らした。真空吸引口51やエッジ・ブリーザーから最も近い樹脂拡散媒体までの距離が10mm以上離れるように強化繊維基材の最大外形よりも10〜50mm程度小さい樹脂拡散媒体を配置した(図示せず)。全体をバッグ材52であるナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲を、シール材53で密閉した。樹脂注入口54は、樹脂拡散媒体に接するように取り付け、シール材で密閉した。真空吸引口は、樹脂注入口から遠いエッジ・ブリーザー上に取り付け、同様にシールした。真空吸引口から吸引し、バッグ材内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引した。この時、空気が漏れていないか確認し、漏れていた場合は、漏れない様に密閉し直した。3℃/minの速度で、装置全体をマトリックス樹脂の注入温度(80℃)に昇温した。真空吸引を継続しながら、強化繊維基材が注入温度に達してから1時間保持した。その後、樹脂注入口のバルブを解放して、樹脂拡散媒体からマトリックス樹脂を必要な量だけ注入した。含浸が完了したら、樹脂注入口のバルブを閉め、マトリックス樹脂の注入を中止した。真空吸引は、マトリックス樹脂がゲル化するまで、継続した(注入開始から1.5時間)。1.5℃/minの速度で、装置全体をマトリックス樹脂の硬化温度まで昇温した。硬化温度:130℃に達した時点で、真空吸引口をシールして吸引を中止した。この時、バッグ材の中を真空状態に保つ様にシールした。硬化温度に達してから2時間保持してマトリックス樹脂を十分硬化させた。その後、3℃/minの速度で常温まで降温した。バッグ材、ピールプライおよび樹脂含浸媒体を除去して、繊維強化樹脂を得た。
<埋設部の厚み、露出部の厚み、および、層間配置部の厚みの測定方法>
後述する実施例1〜9および比較例1〜4にて得られる強化繊維基材および積層体における、表記の測定方法を以下に説明する。
先ず、強化繊維基材または積層体を2cm×2cmのサイズで3枚切り出した。切り出し角度は、強化繊維基材の場合は、強化繊維糸条の配列方向と直交する方向で、積層体の場合は、積層される所定枚数の強化繊維基材の内の、少なくとも一層について、強化繊維糸条の配列方向と直交する方向に切り出した。切り出したサンプルは、前記切り出し面が観察面側になる様に、包埋型内に配置し、包埋型内に包埋樹脂(BUEHLER製:EPO KWICK)を流し込んだ。包埋樹脂が硬化した後、観察面を研磨して、包埋サンプルを作製した。
得られた包埋サンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE(株)製“VHX−500”)を用い、500倍にて観察した。観察は、サンプル毎に図2又は図7で示される各部についてそれぞれ10点について測長を行い、それら10点についてそれぞれ平均値を算出した。
<衝撃付与後の常温圧縮強度(以降、CAIと記すこともある)>
SACMA−SRM−2R−94に規定された試験片サイズに繊維強化樹脂を成形し、SACMA−SRM−2R−94に規定の方法により、衝撃付与後の常温圧縮強度をDry条件にて評価した。
(実施例1)
炭素繊維糸条を並行に引き揃え、1.8本/cmの密度で一方向に配列してシート状の炭素繊維糸条群を形成した。補助繊維糸条(ポリアミド繊維糸条)を、3本/cmの密度で、前記炭素繊維糸条群と直交する方向に配列し、炭素繊維糸条とポリアミド繊維糸条とを交錯させ、織機を用いて平織組織の布帛を形成した(一方向性織物)。
樹脂材料Aは、布帛である一方向性織物のおもて面に重なるように牽引し、一方向性織物と樹脂材料Aを合わせて離型紙で挟み、180℃、線圧3kN/m、0.5m/minの条件にてホットプレスロールを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に接着した。なお、樹脂材料Aはおもて面にのみ接着し、うら面には接着させなかった。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料A以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は5.3重量%、面積率Aは73%、布帛の厚みは213μm、樹脂材料の埋設部の厚みは67μm、樹脂材料の露出部の厚みは56μm、埋設部の割合Cは87%であった。
(実施例2)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Bは、エンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、表面に11.4g/m2(3.0重量%)散布した。その後、200℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に仮接着させた。なお、樹脂材料Bは表面にのみ接着し、裏面には接着させなかった。
樹脂材料Bを仮接着させた布帛である一方向性織物を、線圧6kN/m、0.3m/minの条件にてプレスロールを通過させ、樹脂材料Bを布帛全面に亘って強化繊維糸条内部に向けて加圧し、埋設部を形成した。さらに連続して、再度180℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させた。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料B以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(380g/m2)に対し樹脂材料の付着量は3.0重量%、面積率Aは60%、布帛の厚みは393μm、樹脂材料の埋設部の厚みは72μm、樹脂材料の露出部の厚みは63μm、埋設部の割合Cは89%であった。
(実施例3)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Bは、エンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、表面に15.4g/m2(19.2重量%)散布した。その後、200℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に仮接着させた。なお、樹脂材料Bは表面にのみ散布し、裏面には散布しなかった。
樹脂材料Bを仮接着させた布帛である一方向性織物を、線圧4kN/m、0.3m/minの条件にてプレスロールを通過させ、樹脂材料Bを布帛全面に亘って強化繊維糸条内部に向けて加圧し、埋設部を形成した。さらに連続して、再度180℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させた。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料B以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(80g/m2)に対し樹脂材料の付着量は19.2重量%、面積率Aは67%、布帛の厚みは92μm、樹脂材料の埋設部の厚みは36μm、樹脂材料の露出部の厚みは107μm、埋設部の割合Cは92%であった。
(実施例4)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Aは、布帛である一方向性織物のおもて面に重なるように牽引し、一方向性織物と樹脂材料Aを合わせて離型紙で挟み、180℃、線圧6kN/m、0.5m/minの条件にてホットプレスロールを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に接着した。なお、樹脂材料Aは片面にのみ接着した。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料A以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は5.3重量%、面積率Aは74%、布帛の厚みは206μm、樹脂材料の埋設部の厚みは94μm、樹脂材料の露出部の厚みは31μm、埋設部の割合Cは96%であった。
(実施例5)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Cは、布帛である一方向性織物のおもて面に重なるように牽引し、一方向性織物と樹脂材料Cを合わせて離型紙で挟み、180℃、線圧6kN/m、0.5m/minの条件にてホットプレスロールを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に接着した。なお、樹脂材料Aは片面にのみ接着した。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料C以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は9.5重量%、面積率Aは78%、布帛の厚みは198μm、樹脂材料の埋設部の厚みは97μm、樹脂材料の接着部の厚みは83μm、埋設部の割合Cは98%であった。
(実施例6)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Bは、エンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、表面に15g/m2(7.9重量%)散布した。その後、200℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に仮接着させた。なお、樹脂材料Bは表面にのみ接着し、裏面には接着させなかった。
樹脂材料Bを仮接着させた布帛である一方向性織物を、線圧4kN/m、0.3m/minの条件にてプレスロールを通過させ、樹脂材料Bを布帛全面に亘って強化繊維糸条内に埋め込んだ。さらに連続して、再度180℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に接着させた。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料B以外にもポリアミド繊維糸条が、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は7.9重量%、面積率Aは65%、布帛の厚みは201μm、樹脂材料埋設部の厚みは34μm、樹脂材料の露出部の厚みは125μm、埋設部の割合Cは93%であった。
(実施例7)
実施例1と同じ布帛と樹脂材料Aとを交互に所定枚数積層して得られた積層物をアルミ製成形型の表面に配置した。この積層物の表面に離型フィルムを配置し、その上に、押さえ板となるアルミ製カウルプレートを配置する。積層された強化繊維基材が成形型と接した周囲には、エッジ・ブリーザーであるポリエステル繊維の不織布を複数枚積層して張り巡らした。エッジ・ブリーザーには、真空ポンプと連結する真空吸引口を設け、全体をバッグ材であるナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲を、シール材で密閉した。これらをオートクレーブに搬入した後、真空吸引口から吸引して、バッグ材内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引した。この状態において、オートクレーブ内を0.6MPaに加圧し、1.5℃/minの速度で180℃まで昇温した。このまま15分間保持した後、2.5℃/minの速度で常温、常圧にまで戻した。バック材、離型フィルムを除去し、積層体を得た。
得られた積層体は、樹脂材料によりタックが発現し、積層体としての取扱性および形態安定性に優れていた。また、一層当たりの炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は5.3重量%、面積率Bは74%、布帛の厚みは205μm、樹脂材料の埋設部の厚みは79μm、樹脂材料の層間配置部の厚みが45μm、埋設部の割合Dは97%であった。
(実施例8)
炭素繊維糸条を並行に引き揃え、0.9本/cmの密度で一方向に配列してシート状の炭素繊維糸条群を形成した。炭素繊維糸条を、0.9本/cmの密度で、前記炭素繊維糸条群と直交する方向に配列し、炭素繊維糸条同士を交錯させ、織機を用いて平織組織の布帛を形成した(二方向性織物)。樹脂材料Bは、実施例4と同様にして接着させた。
得られた強化繊維基材は、炭素繊維同士の交錯以外にも樹脂材料Bが布帛を固定しているため形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は7.9重量%、面積率Aは62%、布帛の厚みは226μm、樹脂材料の埋設部の厚みは148μm、樹脂材料の露出部の厚みは27μm、埋設部の割合Cは89%であった。
(実施例9)
炭素繊維糸条を並行に引き揃え、0.9本/cmの密度で一方向に配列してシート状の炭素繊維糸条群を形成した。同様に、炭素繊維糸条を、0.9本/cmの密度で一方向に配列してシート状の炭素繊維糸条群を形成し、先の炭素繊維糸条群と直交する方向に交差積層して経編機により縫合一体化し、布帛を形成した(二軸ステッチ基材)。樹脂材料Dは、実施例4と同様にして仮接着、接着させた。
得られた強化繊維基材は、強化繊維糸条群同士が経編により拘束されているうえ、樹脂材料Dが布帛を固定しているため形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(225g/m2)に対し樹脂材料の付着量は11.3重量%、面積率Aは69%、布帛の厚みは210μm、樹脂材料の埋設部の厚みは97μm、樹脂材料の露出部の厚みは138μm、埋設部の割合Cは91%であった。
(比較例1)
実施例1の強化繊維基材に用いた布帛を、樹脂材料を接着することなくそのまま強化繊維基材として用いた。
かかる強化繊維基材は、集束糸条Aとポリアミド繊維糸条とが、交錯して組織していることで、布帛として取り扱うことはできた。しかしながら、樹脂材料が接着していないため、強化繊維糸条、集束糸条Aおよびポリアミド繊維糸条の目曲がりが発生した。なお、得られた強化繊維基材の厚みは206μmであった。
(比較例2)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Eは、上記布帛を挟み込んで重なる様にし、一方向性織物と樹脂材料Eを合わせて離型紙で挟み、180℃、線圧3kN/m、0.5m/minの条件にてホットプレスロールを通過させ、樹脂材料を表面に接着した。なお、樹脂材料Eはおもて面にのみ接着し、うら面には接着させなかった。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料以外にも、集束糸条Aとポリアミド繊維糸条とが、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は26.3重量%、面積率Aは100%、布帛の厚みは207μm、樹脂材料の埋設部の厚みは125μm、樹脂材料の露出部の厚みは239μm、埋設部の割合Cは100%であった。
(比較例3)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Bは、エンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、表面に15g/m2(7.9重量%)散布した。その後、200℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛の全面に仮接着させた。なお、樹脂材料Bは表面にのみ接着し、裏面には接着させなかった。
樹脂材料Bを仮接着させた布帛である仮強化繊維基材を、所定サイズに切り出し、成形型の表面に配置した。仮強化繊維基材の表面に離型フィルムを配置し、さらにその上に、圧着用治具を配置した。圧着治具には、複数の圧子が経緯に一定間隔を持って備え付けられており、これら圧子の先端面積の合計が、仮強化繊維基材の全投影面積の30%を被覆するように設計されている。これら全てをプレス機に設置し、各圧子の押圧が0.1MPa、90℃となるように熱プレスを行い、強化繊維基材を得た。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料が部分的にしか圧着されていないため、取扱性および形態安定性に劣った。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は7.9重量%、面積率Aは64%、布帛の厚みは221μm、圧着部における樹脂材料の埋設部の厚みは79μm、露出部の厚みは45μmであり、非熱圧着部においては、埋設部の厚みは7μm、露出部の厚みは131μmであった。なお、非圧着部の埋設部おいては、樹脂材料が強化繊維糸条の内の複数の単糸を内包した、埋設部が形成されておらず、埋設部の割合Cは27%に留まった。
(比較例4)
強化繊維基材に用いる布帛は、実施例1と同じものを用いた。
樹脂材料Aは、上記布帛のおもて面に重なるように牽引し、一方向性織物と樹脂材料Aを合わせて離型紙で挟み込み、150℃、線圧3kN/m、0.5m/minの条件にてホットプレスロールを通過させ、樹脂材料を表面に接着した。なお、樹脂材料Aはおもて面にのみ接着し、うら面には接着させなかった。
得られた強化繊維基材は、樹脂材料以外にも、集束糸条Aとポリアミド繊維糸条とが、強固に交錯して布帛を固定しているため、形態安定性に優れていた。また、炭素繊維目付(190g/m2)に対し樹脂材料の付着量は5.3重量%、面積率Aは76%、布帛の厚みは223μm、樹脂材料の埋設部の厚みは14μm、樹脂材料の露出部の厚みは123μm、埋設部の割合Cは42%であった。
繊維強化樹脂の力学特性(CAI)に関し、本実施例1〜9は、非常に高い値を示した。中でも、実施例4、5、7および9のものが特に優れた。繊維強化樹脂の断面を観察した結果、実施例7のものは、繊維強化樹脂の層間において、層間を挟んで対置する層のそれぞれに、樹脂材料が接着して埋設部を形成していた。その他の実施例においては、層の一方にのみ樹脂材料が接着して埋設部を形成しており、中でも実施例4、5および9のものが、層内により深く埋設部を形成していた。すなわち、実施例4、5および9は、繊維強化樹脂内における埋設部の層間強化効果がより効率的に作用したことに起因し、極めて高いCAIを発現したと推測される。
一方、比較例1のものは、樹脂材料を用いていないため、繊維強化樹脂において層間が形成されず、CAIが著しく劣った。また、比較例2においては、樹脂材料の接着量が過剰であったこと、樹脂材料の多くが強化繊維糸条内に流入したことにより、マトリックス樹脂の含浸を阻害し、繊維強化樹脂に未含浸部が形成されたため、十分な力学特性を発現するに至らなかった。また、繊維強化樹脂の断面を観察した結果、比較例4は、強化繊維基材の作製工程において、樹脂材料を溶融、軟化するに十分な熱量が供給されなかったため、樹脂材料は強化繊維糸条の表面にのみ接着した状態であった。また、比較例3について、圧着部では樹脂材料が埋設部を形成していたが、非圧着部においては形成されていなかった。これらに起因して、樹脂材料が層間強化効果を満足に発現できず、CAIが劣ったものと考えられる。
強化繊維基材の取扱性については、本実施例のものは、優れた取扱性を示した。中でも実施例8のものは、樹脂材料によるタックに加え炭素繊維同士の交錯による形態安定効果が付与されるため、一層優れた。
一方、比較例においても、樹脂材料を用いていない比較例1および圧着面積の小さい比較例3を除いては、樹脂材料によるタックが発現し、取扱性に優れるものであった。
マトリックス樹脂の含浸性について、本実施例のものは、優れた含浸性を示し、未含浸部を有さない良品な繊維強化樹脂を得ることができた。中でも実施例1、2、6、7、8、9のものは、短い時間で樹脂を含浸させることができた。
一方、比較例においては、比較例3、4を除いて未含浸部が確認された。比較例1は、樹脂材料を用いていないため、層間流路形成効果が発現しなかったこと、比較例2は、樹脂材料の接着量が過剰であったことに起因して、それぞれマトリックス樹脂の含浸が妨げられたものと考えられる。