図1は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの一例の構成を示し、図2は、図1の放射線撮影システムの制御ブロックを示す。
なお、既に述べた構成と同様の構成については同一符号を付してその説明を省略し、既に述べた構成との差異についてのみ説明する。
X線撮影システム10は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにX線を照射するX線源11と、X線源11との間に被写体Hを介在させた状態でX線源11に対向配置され、X線源11から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12と、操作者の操作に基づいてX線源11の曝射動作や撮影部12の撮影動作を制御するとともに、撮影部12により取得された画像データを演算処理して位相コントラスト画像を生成するコンソール13(図2)とに大別される。
X線源11は、天井から吊り下げられたX線源保持装置14により上下方向(x方向)に移動自在に保持されている。
撮影部12は、床上に設置された立位スタンド15により上下方向に移動自在に保持されている。
X線源11は、X線源制御部17の制御に基づき、高電圧発生器16から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管18を有して構成されている。
X線管18は、陽極回転型であり、電子放出源(陰極)としてのフィラメント(図示せず)と、フィラメントから放出された電子が衝突する回転陽極18aと、回転陽極18aを高速回転させて回転陽極18aにおける電子の衝突領域を変化させるモータ等の回転駆動手段(図示せず)とを有する。X線管18は、電子を回転陽極18aに衝突させることによりX線を発生する。この回転陽極18aにおける電子線の衝突領域がX線焦点(実焦点)18bとなる。
ここで、X線の発生効率ηは以下の式で求められる。
η=CZV
Cは定数であり約1.1×10−9とされ、Zはターゲット物質の原子番号でありX線源に一般に用いられるタングステンであればZ=74であり、VはX線管18の管電圧である。軟部組織についても画像濃淡のコントラストを得やすい50kVで撮影するとき、η=0.407%と極僅かの発生効率であり、99%以上の電力が熱となる。X線に供給される電力は、管電圧50kV、管電流100mAのとき5kWであり、その約99.6%が熱となることから、X線管18aが非常に大きな発熱源であることがわかる。
X線管18には、X線管18から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ19aを備えたコリメータユニット19が設けられている。コリメータユニット19は、X線管18のハウジングに一体に保持されている。
コリメータユニット19は、コリメータ19aのX線源11側に、第3の格子としてのマルチスリット140と、発泡材料で形成された断熱部材150とを内蔵する。コリメータユニット19に内蔵されたマルチスリット140は、X線源11に一体に取り付けられている。マルチスリット140は、第1の格子31に入射するX線の進行方向において第1の格子31よりも前側に配置されている。
X線源11からFPD30までの距離を、一般的な病院の撮影室で設定されるような距離(1〜2m)とした場合に、X線焦点18bの焦点サイズ(一般的に0.1mm〜1mm程度)によっては、第1の吸収型格子31を通過して射影される投影像(以下、この投影像をG1像と称する)のボケが影響し、位相コントラスト画像の画質が低下する虞がある。そこで、X線焦点18bの直後にピンホールを設置して実効的に焦点サイズを小さくすることが考えられるが、実効的な焦点サイズを縮小するためにピンホールの開口面積を小さくすると、X線強度が低下してしまう。この課題を解決するために、X線焦点18bの直後にマルチスリット140を配置している。
なお、断熱部材150及びマルチスリット140がコリメータ19aと同一の筐体内に保持されていることにより、これらがコリメータ19aとは別の筐体内に保持されている場合よりもX線源11とマルチスリット140との間の距離、及びマルチスリット140とコリメータ19aとのそれぞれの距離を短くできる。X線はX線源11から円錐状に広がるため(コーンビーム)、X線源11からマルチスリット140、コリメータ19aまでのそれぞれの距離を短くできることによりマルチスリット140のサイズ及び、コリメータ19aのサイズと移動距離を小さくすることができ、コンパクト化とコストダウンが容易になる。これらの構成により、マルチスリット140による分散放射線源の形成、及びコリメータ19aによるX線照射野の制限のそれぞれが適切に行われる。
断熱部材150は、連続気泡又は独立気泡を内包する発泡部材(フェノールフォーム、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等)であり、X線源11とマルチスリット140との間のX線の光軸A(放射線軸)に交差する位置に設けられている。このように気泡を有する断熱部材150は、X線透過率が高いため、X線源11とマルチスリット140との間に設けられる断熱部材として好適に用いられる。このような断熱部材150が、X線束の密度が高く熱集中し易い光軸Aに交差する位置に設けられることにより、X線強度を低下させることなく、マルチスリット140とX線源11とを十分に断熱することが可能となる。また、断熱部材150はX線透過率が高くX線吸収率が低いので、X線の照射による劣化を生じにくく、メンテナンスが容易となる。
また、断熱部材150は、外部からマルチスリット140への振動伝達を防止する防振部材を兼ねている。マルチスリット140に伝わる外部振動としては、X線源保持装置14を介して天井から伝わる振動、台車部14aや支柱部14bの動作に伴う振動などもあるが、主として、マルチスリット140の直近に配置されたX線源11の振動があげられる。
ここで、X線管18の回転陽極18aの高速回転に伴う振動は、マルチスリット140に伝わる振動の大きな要因となる。また、X線管18には一般に、X線管18を冷却するファンが設けられており、この冷却ファンの回転に伴う振動もマルチスリット140に伝わる振動の大きな要因となる。このようなX線管18や冷却ファンの振動がその近くに配置されたマルチスリット140に伝わり易いが、X線源11とマルチスリット140との間に設けられた断熱部材150が防振部材としても機能するため、X線源11からマルチスリット140への振動伝達を遮断してマルチスリット140の振動を十分に抑制することが可能となる。
このように、断熱部材150が防振部材を兼ねているため、断熱部材と防振部材とが別々に設けられる場合と比較してX線の実焦点18aとマルチスリット140との距離が遠くならない。これにより、マルチスリット140によって形成される各点光源(分散放射線源)のそれぞれにおけるX線強度を高くできる。
なお、マルチスリット140がコリメータユニット19を介してX線源11に一体に設けられている構成においては、X線管18や冷却ファンの振動がマルチスリット140に特に伝わり易いので、断熱部材150による防振効果をより一層大きくできる。
X線源保持装置14は、天井に設置された天井レール(図示せず)により水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部14aと、上下方向に連結された複数の支柱部14bとからなる。台車部14aには、支柱部14bを伸縮させて、X線源11の上下方向に関する位置を変更するモータ(図示せず)が設けられている。
立位スタンド15は、床に設置された本体15aに、撮影部12を保持する保持部15bが上下方向に移動自在に取り付けられている。保持部15bは、上下方向に離間して配置された2つのプーリ15cの間に掛架された無端ベルト15dに接続され、プーリ15cを回転させるモータ(図示せず)により駆動される。このモータの駆動は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール13の制御装置20により制御される。
また、立位スタンド15には、プーリ15c又は無端ベルト15dの移動量を計測することにより、撮影部12の上下方向に関する位置を検出するポテンショメータ等の位置センサ(図示せず)が設けられている。この位置センサの検出値は、ケーブル等によりX線源保持装置14に供給される。X線源保持装置14は、供給された検出値に基づいて支柱部14bを伸縮させ、撮影部12の上下動に追従するようにX線源11を移動させる。
コンソール13には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置20が設けられている。制御装置20には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置21と、撮影部12により取得された画像データを演算処理してX線画像を生成する演算処理部22と、X線画像を記憶する記憶部23と、X線画像等を表示するモニタ24と、X線撮影システム10の各部と接続されるインターフェース(I/F)25とがバス26を介して接続されている。
入力装置21としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等を用いることが可能であり、入力装置21の操作により、X線管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタ24は、液晶ディスプレイ等からなり、制御装置20の制御により、X線撮影条件等の文字やX線画像を表示する。
撮影部12は、半導体回路からなる放射線画像検出器としてのフラットパネル検出器(FPD)30、被写体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の吸収型格子31及び第2の吸収型格子32を有する。
撮影部12には、第2の吸収型格子32を上下方向(x方向)に並進移動させることにより、第1の吸収型格子31及び第2の吸収型格子32を相対移動させる走査手段33が設けられている。
FPD30は、検出面がX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交するように配置されている。詳しくは後述するが、第1及び第2の吸収型格子31,32は、FPD30とX線源11との間に配置されている。
図3は、図1の放射線撮影システムに含まれる放射線画像検出器の構成を示す。
放射線画像検出器としてのFPD30は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の画素40がアクティブマトリクス基板上にxy方向に2次元配列されてなる受像部41と、受像部41からの電荷の読み出しタイミングを制御する走査回路42と、各画素40に蓄積された電荷を読み出し、電荷を画像データに変換して記憶する読み出し回路43と、画像データをコンソール13のI/F25を介して演算処理部22に送信するデータ送信回路44とから構成されている。なお、走査回路42と各画素40とは、行毎に走査線45によって接続されており、読み出し回路43と各画素40とは、列毎に信号線46によって接続されている。
各画素40は、アモルファスセレン等の変換層(図示せず)でX線を電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタ(図示せず)に蓄積する直接変換型の素子として構成することができる。各画素40には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線45、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線46に接続される。TFTスイッチが走査回路42からの駆動パルスによってON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線46に読み出される。
なお、各画素40は、テルビウム賦活酸化ガドリニウム(Gd2O2S:Tb)やタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)等からなるシンチレータ(図示せず)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオード(図示せず)で電荷に変換して蓄積する間接変換型のX線検出素子として構成することも可能である。また、X線画像検出器としては、TFTパネルをベースとしたFPDに限られず、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子をベースとした各種のX線画像検出器を用いることも可能である。
読み出し回路43は、積分アンプ回路、A/D変換器、補正回路、及び画像メモリ(いずれも図示せず)により構成されている。積分アンプ回路は、各画素40から信号線46を介して出力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換して、A/D変換器に入力する。A/D変換器は、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して補正回路に入力する。補正回路は、画像データに対して、オフセット補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正を行い、補正後の画像データを画像メモリに記憶させる。なお、補正回路による補正処理として、X線の露光量や露光分布(いわゆるシェーディング)の補正や、FPD30の制御条件(駆動周波数や読み出し期間)に依存するパターンノイズ(例えば、TFTスイッチのリーク信号)の補正等を含めてもよい。
図4及び図5は、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32、及びFPD30を模式的に示す。
まず、第1、第2の格子31,32の構成と、これらの格子31,32によってモアレ縞が形成される作用について述べる。
第1の吸収型格子31は、基板31aと、この基板31aに配置された複数のX線遮蔽部31bとから構成されている。同様に、第2の吸収型格子32は、基板32aと、この基板32aに配置された複数のX線遮蔽部32bとから構成されている。基板31a,31bは、いずれもX線を透過させるガラス等のX線透過性部材により形成されている。
X線遮蔽部31b,32bは、いずれもX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交する面内の一方向(図示の例では、x方向及びz方向に直交するy方向)に延伸した線状の部材で構成される。各X線遮蔽部31b,32bの材料としては、X線吸収性に優れるものが好ましく、例えば、金、白金等の重金属であることが好ましい。これらのX線遮蔽部31b,32bは、金属メッキ法や蒸着法によって形成することが可能である。
X線遮蔽部31bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(x方向)に一定のピッチp1で、互いに所定の間隔d1を空けて配列されている。同様に、X線遮蔽部32bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(x方向)に一定のピッチp2で、互いに所定の間隔d2を空けて配列されている。
このような第1及び第2の吸収型格子31,32は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであるため、振幅型格子とも称される。なお、スリット部(上記空隙d1,d2の領域)は間隙でなくてもよく、例えば、高分子や軽金属などのX線低吸収材で該空隙を充填してもよい。
第1及び第2の吸収型格子31,32は、タルボ干渉効果の有無に係らず、スリット部を通過したX線を幾何学的に投影するように構成されている。具体的には、間隔d1,d2を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述の回転陽極18aとしてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d1,d2を、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに幾何学的に投影される。
X線源11から放射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点18bを発光点としたコーンビームであるため、第1の吸収型格子31を通過して射影される投影像(以下、この投影像をG1像と称する)は、X線焦点18bからの距離に比例して拡大される。第2の吸収型格子32の格子ピッチp2及び間隔d2は、そのスリット部が、第2の吸収型格子32の位置におけるG1像の明部の周期パターンと実質的に一致するように決定されている。すなわち、X線焦点18bから第1の吸収型格子31までの距離をL1、第1の吸収型格子31から第2の吸収型格子32までの距離をL2とした場合に、格子ピッチp2及び間隔d2は、次式(1)及び(2)の関係を満たすように決定される。なお、これから述べる各関係式及びそれらの説明は、マルチスリットが配置されていない構成に関するものであって、マルチスリットが配置された構成における関係式については後述する。
第1の吸収型格子31から第2の吸収型格子32までの距離L2は、タルボ干渉計では、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本X線撮影システム10の撮影部12では、第1の吸収型格子31が入射X線を回折させずに投影させる構成であって、第1の吸収型格子31のG1像が、第1の吸収型格子31の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離L2を、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
上記のように撮影部12は、タルボ干渉計を構成するものではないが、第1の吸収型格子31でX線を回折したと仮定した場合のタルボ干渉距離Zは、第1の吸収型格子31の格子ピッチp1、第2の吸収型格子32の格子ピッチp2、X線波長(ピーク波長)λ、及び正の整数mを用いて、次式(3)で表される。
式(3)は、X線源11から照射されるX線がコーンビームである場合のタルボ干渉距離を表す式であり、「Atsushi Momose, et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.10, 2008年10月, 8077頁」により知られている。
本X線撮影システム10では、撮影部12の薄型化を目的とし、上記距離L2を、m=1の場合の最小のタルボ干渉距離Zより短い値に設定する。すなわち、上記距離L2は、次式(4)を満たす範囲の値に設定される。
なお、X線源11から照射されるX線が実質的に平行ビームとみなせる場合のタルボ干渉距離Zは次式(5)となり、上記距離L2を、次式(6)を満たす範囲の値に設定する。
X線遮蔽部31b,32bは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、X線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上記したX線吸収性に優れる材料(金、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過するX線が少なからず存在する。このため、X線の遮蔽性を高めるためには、X線遮蔽部31b,32bのそれぞれの厚みh1,h2を、可能な限り厚くすることが好ましい。例えば、X線管18の管電圧が50kVの場合に、照射X線の90%以上を遮蔽することが好ましく、この場合には、厚みh1,h2は、金(Au)換算で30μm以上であることが好ましい。
一方、X線遮蔽部31b,32bの厚みh1,h2を厚くし過ぎると、斜めに入射するX線がスリット部を通過しにくくなり、いわゆるケラレが生じて、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向(条帯方向)に直交する方向(x方向)の有効視野が狭くなるといった問題がある。このため、視野確保の観点から、厚みh1,h2の上限を規定する。FPD30の検出面におけるx方向の有効視野の長さVを確保するには、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離をLとすると、厚みh1,h2は、図5に示す幾何学的関係から、次式(7)及び(8)を満たすように設定する必要がある。
例えば、d1=2.5μm、d2=3.0μmであり、通常の病院での検査を想定して、L=2mとした場合には、x方向の有効視野の長さVとして10cmの長さを確保するには、厚みh1は100μm以下、厚みh2は120μm以下とすればよい。
以上のように構成された撮影部12では、被写体Hが配置されていない場合に、第1の吸収型格子31のG1像と第2の吸収型格子32との重ね合わせにより、X線に画像コントラストが生じる。そして、この画像コントラストがFPD30によって撮像される。第2の吸収型格子32の位置におけるG1像のパターン周期p1’と、第2の吸収型格子32の実質的な格子ピッチp2’(製造後の実質的なピッチ)とは、製造誤差や配置誤差により若干の差異が生じる。このうち、配置誤差とは、第1及び第2の吸収型格子31,32が、相対的に傾斜や回転、両者の間隔が変化することによりx方向への実質的なピッチが変化することを意味している。
G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との微小な差異により、画像コントラストはモアレ縞となる。このモアレ縞の周期Tは、次式(9)で表される。
このモアレ縞をFPD30で検出するには、画素40のx方向に関する配列ピッチPは、少なくとも次式(10)を満たす必要があり、更には、次式(11)を満たすことが好ましい(ここで、nは正の整数である)。
式(10)は、配列ピッチPがモアレ周期Tの整数倍でないことを意味しており、n≧2の場合であっても原理的にモアレ縞を検出することが可能である。式(11)は、配列ピッチPをモアレ周期Tより小さくすることを意味している。
FPD30の画素40の配列ピッチPは、設計的に定められた値(一般的に100μm程度)であり変更することが困難であるため、配列ピッチPとモアレ周期Tとの大小関係を調整するには、第1及び第2の吸収型格子31,32の位置調整を行い、G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との少なくともいずれか一方を変更することによりモアレ周期Tを変更することが好ましい。
次に、マルチスリット140の構成について述べる。マルチスリット140は、上述の第1、第2の格子31,32と同様の構成とされた吸収型格子(すなわち、第3の吸収型格子)である。マルチスリット140は、X線透過性部材である基板140aと、この基板140aにX線吸収性に優れる材料で形成された複数のX線遮蔽部140bとから構成されている。複数のX線遮蔽部140bは、X線遮蔽部31b,32bと同一方向(y方向)に延伸し、X線遮蔽部31b,32bと同一方向(x方向)に一定のピッチp3で周期的に配列されている。このマルチスリット140は、X線源11からの放射線を複数のX線遮蔽部140bを用いて部分的に遮蔽することにより、x方向に関する実効的な焦点サイズを縮小し、x方向に多数の点光源(分散放射線源)を形成することを目的としている。
このマルチスリット140の格子ピッチp3は、マルチスリット140から第1の吸収型格子31までの距離をL3として、次式(12)を満たすように設定する必要がある。
また、本例では、実質的にマルチスリット140の位置がX線焦点位置となるため、第2の吸収型格子32の格子ピッチp2及び間隔d2は、次式(13)及び(14)の関係を満たすように決定される。
また、本例では、FPD30の検出面におけるx方向の有効視野の長さVを確保するには、マルチスリット140からFPD30の検出面までの距離をL’とすると、第1及び第2の吸収型格子31,32のX線遮蔽部31b,32bの厚みh1,h2は、次式(15)及び(16)を満たすように決定される。
上記式(12)は、マルチスリット140により分散形成された各点光源から射出されたX線の第1の吸収型格子31による投影像(G1像)が、第2の吸収型格子32の位置で一致する(重なり合う)ための幾何学的な条件である。このように、本例では、マルチスリット140により形成される複数の点光源に基づくG1像が重ね合わせられることにより、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。
図6に、モアレ周期Tを変更する方法を示す。
モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の吸収型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aを中心として相対的に回転させることにより行うことができる。例えば、第1の吸収型格子31に対して、第2の吸収型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させる相対回転機構50を設ける。この相対回転機構50により、第2の吸収型格子32を角度θだけ回転させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’/cosθ」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6A)。
別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の吸収型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させることにより行うことができる。例えば、第1の吸収型格子31に対して、第2の吸収型格子32を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させる相対傾斜機構51を設ける。この相対傾斜機構51により、第2の吸収型格子32を角度αだけ傾斜させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’×cosα」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6B)。
更に別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の吸収型格子31,32のいずれか一方を光軸Aの方向に沿って相対的に移動させることにより行うことができる。例えば、第1の吸収型格子31と第2の吸収型格子32との間の距離L2を変更するように、第1の吸収型格子31に対して、第2の吸収型格子32を、光軸Aの方向に沿って相対的に移動させる相対移動機構52を設ける。この相対移動機構52により、第2の吸収型格子32を光軸Aに移動量δだけ移動させると、第2の吸収型格子32の位置に投影される第1の吸収型格子31のG1像のパターン周期は、「p1’」→「p1’×(L1+L2+δ)/(L1+L2)」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6C)。
本X線撮影システム10において、撮影部12は、上述のようにタルボ干渉計ではなく、距離L2を自由に設定することができるため、相対移動機構52のように距離L2の変更によりモアレ周期Tを変更する機構を、好適に採用することができる。モアレ周期Tを変更するための第1及び第2の吸収型格子31,32の上記変更機構(相対回転機構50、相対傾斜機構51、及び相対移動機構52)は、圧電素子等のアクチュエータにより構成することが可能である。
X線源11と第1の吸収型格子31との間に被写体Hを配置した場合には、FPD30により検出されるモアレ縞は、被写体Hにより変調を受ける。この変調量は、被写体Hによる屈折効果によって偏向したX線の角度に比例する。したがって、FPD30で検出されたモアレ縞を解析することによって、被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。
次に、モアレ縞の解析方法について説明する。
図7は、被写体Hのx方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つのX線を示す。なお、図7において、マルチスリット140の図示は省略した。
符号55は、被写体Hが存在しない場合に直進するX線の経路を示しており、この経路55を進むX線は、第1及び第2の吸収型格子31,32を通過してFPD30に入射する。符号56は、被写体Hが存在する場合に、被写体Hにより屈折されて偏向したX線の経路を示している。この経路56を進むX線は、第1の吸収型格子31を通過した後、第2の吸収型格子32より遮蔽される。
被写体Hの位相シフト分布Φ(x)は、被写体Hの屈折率分布をn(x,z)、zをX線の進む方向として、次式(17)で表される。
第1の吸収型格子31から第2の吸収型格子32の位置に投射されたG1像は、被写体HでのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけx方向に変位することになる。この変位量Δxは、X線の屈折角φが微小であることに基づいて、近似的に次式(18)で表される。
ここで、屈折角φは、X線波長λと被写体Hの位相シフト分布Φ(x)を用いて、式(19)で表される。
このように、被写体HでのX線の屈折によるG1像の変位量Δxは、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、FPD30の各画素40から出力される信号の位相ズレ量ψ(被写体Hがある場合とない場合とでの各画素40の信号の位相のズレ量)に、次式(20)のように関連している。
したがって、各画素40の信号の位相ズレ量ψを求めることにより、式(20)から屈折角φが求まり、式(19)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まるから、これをxについて積分することにより、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)、すなわち被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。本X線撮影システム10では、上記位相ズレ量ψを、下記に示す縞走査法を用いて算出する。
縞走査法では、第1及び第2の吸収型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら撮影を行う(すなわち、両者の格子周期の位相を変化させながら撮影を行う)。本X線撮影システム10では、前述の走査手段33により第2の吸収型格子32を移動させているが、第1の吸収型格子31を移動させてもよい。第2の吸収型格子32の移動に伴って、モアレ縞が移動し、並進距離(x方向への移動量)が、第2の吸収型格子32の格子周期の1周期(格子ピッチp2)に達すると(すなわち、位相変化が2πに達すると)、モアレ縞は元の位置に戻る。このようなモアレ縞の変化を、格子ピッチp2を整数分の1ずつ第2の吸収型格子32を移動させながら、FPD30で縞画像を撮影し、撮影した複数の縞画像から各画素40の信号を取得し、演算処理部22で演算処理することにより、各画素40の信号の位相ズレ量ψを得る。
図8は、格子ピッチp2をM(2以上の整数)個に分割した走査ピッチ(p2/M)ずつ第2の吸収型格子32を移動させる様子を模式的に示す。
走査手段33は、k=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置に、第2の吸収型格子32を順に並進移動させる。なお、同図では、第2の吸収型格子32の初期位置を、被写体Hが存在しない場合における第2の吸収型格子32の位置でのG1像の暗部が、X線遮蔽部32bにほぼ一致する位置(k=0)としているが、この初期位置は、k=0,1,2,・・・,M−1のうちいずれの位置としてもよい。
まず、k=0の位置では、主として、被写体Hにより屈折されなかったX線が第2の吸収型格子32を通過する。次に、k=1,2,・・・と順に第2の吸収型格子32を移動させていくと、第2の吸収型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されたX線の成分が増加する。特に、k=M/2では、主として、被写体Hにより屈折されたX線のみが第2の吸収型格子32を通過する。k=M/2を超えると、逆に、第2の吸収型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されたX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が増加する。
k=0,1,2,・・・,M−1の各位置で、FPD30により撮影を行うと、各画素40について、M個の信号値が得られる。以下に、このM個の信号値から各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出する方法を説明する。第2の吸収型格子32の位置kにおける各画素40の信号値をIk(x)と標記すると、Ik(x)は、次式(21)で表される。
ここで、xは、画素40のx方向に関する座標であり、A0は入射X線の強度であり、Anは画素40の信号値のコントラストに対応する値である(ここで、nは正の整数である)。また、φ(x)は、上記屈折角φを画素40の座標xの関数として表したものである。
次いで、次式(22)の関係式を用いると、上記屈折角φ(x)は、次式(23)のように表される。
ここで、arg[ ]は、偏角の抽出を意味しており、各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。したがって、各画素40で得られたM個の信号値から、式(23)に基づいて各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出することにより、屈折角φ(x)が求められる。
図9は、縞走査に伴って変化する放射線画像検出器の一つの画素の信号を示す。
各画素40で得られたM個の信号値は、第2の吸収型格子32の位置kに対して、格子ピッチp2の周期で周期的に変化する。図9中の破線は、被写体Hが存在しない場合の信号値の変化を示しており、図9中の実線は、被写体Hが存在する場合の信号値の変化を示している。この両者の波形の位相差が各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。
そして、屈折角φ(x)は、上記式(19)で示したように微分位相値に対応する値であるため、屈折角φ(x)をx軸に沿って積分することにより、位相シフト分布Φ(x)が得られる。
以上の演算は、演算処理部22により行われ、演算処理部22は、位相コントラスト画像を記憶部23に記憶させる。
上記の縞走査、及び位相コントラスト画像の生成処理は、入力装置21から操作者により撮影指示がなされた後、制御装置20の制御に基づいて各部が連係動作し、自動的に行われ、最終的に被写体Hの位相コントラスト画像がモニタ24に表示される。
また、第1の吸収型格子31で殆どのX線を回折させずに、第2の吸収型格子32に幾何学的に投影するため、照射X線には、高い空間的可干渉性は要求されず、X線源11として医療分野で用いられている一般的なX線源を用いることができる。そして、第1の吸収型格子31から第2の吸収型格子32までの距離L2を任意の値とすることができ、該距離L2を、タルボ干渉計での最小のタルボ干渉距離より小さく設定することができるため、撮影部12を小型化(薄型化)することができる。更に、本X線撮影システムでは、第1の吸収型格子31からの投影像(G1像)には、照射X線のほぼすべての波長成分が寄与し、モアレ縞のコントラストが向上するため、位相コントラスト画像の検出感度を向上させることができる。
上述した第1及び第2の吸収型格子31,32を用いた縞走査法によるX線位相イメージングでは、X線の屈折角度、G1像の位相シフト量、強度変調信号などに関わるごく僅かな変化量を計測する上で、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの熱膨張が与える影響を無視できない。被写体を透過した際のX線の屈折角度は、約数μradとごく僅かであって、この屈折角度に応じた放射線像の位相シフト量、すなわち画素毎の信号変化量もまた、ごく僅かである。画素毎の信号変化量は、第1、第2の格子31,32の相対位置を格子のスリット間隔の1周期ずらす間に複数回撮影することで得られるが、複数回の撮影時における第1、第2の格子31,32の相対移動量は微小である。このため、熱膨張によってマルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの相対位置が僅かでもズレてしまうと、位相コントラスト画像の画質に深刻な影響を与えかねない。すなわち、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの相対位置が極めて重要である。
ここで、X線源11の近傍に配置されるマルチスリット140は特に、X線源11から発熱した熱の伝搬によって熱膨張し易く、大きな熱歪みを生じる虞があるので、マルチスリット140の熱膨張による位相コントラスト画像の画質への影響は大きい。マルチスリット140が熱膨張すると、上述の式(12)〜(14)において幾何学的に決められるマルチスリット140のピッチp3及びマルチスリット140と第1の格子31との間の距離L3が変わってマルチスリット140により形成された分散放射線源の分散焦点毎のG1像が第2の格子32の位置で重なり合わず、第2の格子32の位置に重畳されたG1像がx方向にボケてしまい、G1像のコントラストが著しく低下する。このように、マルチスリット140の熱膨張によって分散放射線源の分散焦点と第1、第2の格子31,32とのそれぞれの相対位置がズレると、実焦点18aと第1、第2の格子31,32とのそれぞれの相対位置がズレることと同様の結果となる。G1像のコントラストが低下すると、放射線画像検出器で検出される強度変化のコントラストが低下し、この強度変化に基づいて編成されるX線位相イメージングに演算誤差を生じ、位相コントラスト画像におけるコントラストや解像度の低下などの画質低下に繋がる。
また、第1、第2の格子31,32のそれぞれの格子周期(ピッチ)p1、p2及びスリット間隔d1.d2の相対関係は、X線焦点(実焦点18aに対する実効的な分散焦点)と第1、第2の格子31,32との間のそれぞれの距離L1,L2に対して幾何学的に決められているため、マルチスリット140の熱膨張等によって距離L1,L2が相対的にズレると、拡大率が変化することにより、G1像のピッチp1に対する第2の格子のピッチp2の比率がズレ、そのズレに応じた空間周波数のモアレが発生する。モアレは通常、撮影の直前又は直後等、別途取得した基準画像を用いたり、好適なフィルタ処理を施すことによって画像上問題とならない程度に補正処理を設計することが可能であるが、このようなX線焦点と各格子との相対的なズレ量に応じて空間周波数が変動するモアレを補正することは非常に困難である(このように除去が難しいモアレのことをアーティファクトと呼ぶことがある)。この点でも位相コントラスト画像の画質が低下してしまう。
そこで、マルチスリット140のX線源11側に断熱部材150が配置されたことにより、X線源11からマルチスリット140への熱の伝搬が遮断される。X線撮影システム全体の中でもX線源11は最も高温の発熱源であって、このような断熱部材150を設けることでマルチスリット140の熱膨張の原因の大部分を取り除くことが可能となるので、マルチスリット140の熱膨張を十分に抑制できる。これにより、FPD30で検出される強度変化のコントラスト低下及び位相コントラスト画像の画質低下を抑制できる。
マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの相対位置関係は、特に、位相コントラスト画像を得るための走査の方向(x方向)において重要である。断熱部材150により、このx方向におけるマルチスリット140、第1、第2格子31,32のそれぞれの相対位置ズレを走査手段33による走査ピッチ(例えば1μm前後)に対して十分に小さくできる。これにより、FPD30により複数回の撮影が行われる間に温度変化が生じても、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの適切な相対位置で撮像された画像に基づく位相コントラスト画像が得られる。
また、被写体を介在させない状態での放射線の格子パターン像を基準画像として取得する基準走査(プレ走査)の際と、被写体を介在させた状態での放射線の格子パターン像を取得する本走査の際とで温度が変わると、それぞれの走査における第1、第2の格子の相対初期位置が変わることとなるので、測定上、想定外の位相シフト量オフセットが発生してしまうが、この位相シフト量オフセットの発生を防止できるので、正しい測定結果を担保できる。以上より、マルチスリット140の熱膨張時における位相コントラスト画像の画質低下が抑制されるので、好適な位相コントラスト画像を撮影することが可能となる。
上述したマルチスリット140の熱膨張とほぼ同様に、マルチスリット140に伝わる振動もまた、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの間の相対位置ズレを生じさせるが、上述のように断熱部材150が防振部材を兼ねるので、X線管18や冷却ファンからのマルチスリット140への振動伝達を遮断できる。このため、位相コントラスト画像の画質低下をより確実に抑制できる。
第1及び第2の吸収型格子31,32を用いた縞走査法によるX線位相イメージングでは、位相検出精度の観点から、マルチスリット140、第1、第2の格子31,32のそれぞれの相対位置を正確に維持するための熱膨張対策や振動対策が特に重要であり、上述した断熱部材150によって格子の相対位置ズレの複数の要因の一要因でも取り除かれることには非常に意義がある。
なお、上述したX線撮影システム10は、第1の格子の投影像に対して縞走査を行って屈折角φを演算するものであって、そのため、第1及び第2の格子がいずれも吸収型格子であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述のとおり、タルボ干渉像に対して縞走査を行って屈折角φを演算する場合にも、本発明は有用である。よって、第1の格子は、吸収型格子に限らず位相型格子であってもよい。また、第1の格子のX線像と第2の格子との重ね合わせによって形成されるモアレ縞の解析方法は、前述した縞走査法に限られず、例えば「J. Opt. Soc. Am. Vol.72,No.1 (1982) p.156」により知られているフーリエ変換/フーリエ逆変換を用いた方法など、モアレ縞を利用した種々の方法も適用可能である。
また、本X線撮影システム10は、位相シフト分布Φを画像としたものを位相コントラスト画像として記憶ないし表示するものとして説明したが、上記のとおり、位相シフト分布Φは、屈折角φより求まる位相シフト分布Φの微分量を積分したものであって、屈折角φ及び位相シフト分布Φの微分量もまた被写体によるX線の位相変化に関連している。よって、屈折角φを画像としたもの、また、位相シフトΦの微分量を画像としたものも位相コントラスト画像に含まれる。
また、被写体がない状態で撮影(プレ撮影)して取得される画像群から位相微分像(位相シフト分布Φの微分量)を作成するようにしてもよい。この位相微分像は、検出系の位相ムラを反映している(モアレによる位相ズレ、グリッドの不均一性、線量検出器の屈折等が含まれている)。そして、被写体がある状態で撮影(メイン撮影)して取得される画像群から位相微分像を作成し、これからプレ撮影で得られた位相微分像を引くことで、測定系の位相ムラを補正した位相微分像を得ることが出来る。
図10は、上述の断熱部材150の代わりに、赤外線を遮蔽する赤外線カットフィルタ155が断熱部材として設けられた構成を示す。赤外線カットフィルタ155がX線管18の発熱による赤外線成分を遮蔽するため、マルチスリット140の温度上昇を防止できる。これにより、マルチスリット140の熱膨張を抑制できる。なお赤外線カットフィルタとして樹脂製基板又は樹脂製フイルムに誘電体薄膜を多層形成した物を用いる方がX線の吸収が少なくなるのでより望ましい。
ここで、X線源11とマルチスリット140との間に設けられる断熱部材は、上述の発泡部材とされた断熱部材150と、赤外線カットフィルタ155との両方を含んで構成されていてもよい。これにより、断熱効果を大きくできる。この場合、赤外線カットフィルタ155のX線源11側に断熱部材150を配置することにより、赤外線カットフィルタ155のX線吸収による劣化を防止できる。
なお、上記各例では、マルチスリット140及び断熱部材がコリメータユニット19に含まれていたが、これらのマルチスリット140及び断熱部材がコリメータユニット19の外側に保持されていてもよい。
また、コリメータユニット19はX線源11のハウジングに保持されているが、X線源保持装置14とは別の保持構造によってコリメータユニット19が保持されていてもよい。
すなわち、マルチスリット140はX線源11とは一体とされていなくてもよい。
図11は、本発明の実施形態を説明するためのX線撮影システムの他の例を示す。コリメータユニット29は、マルチスリット140を冷却する空冷手段160を有する。
なお、図11及び図13〜図16においては、第1、第2の格子31,32及びマルチスリット140が配置される向きが図1等における格子の向きとは90度異なっており、図11及び図13〜図16の座標軸が示すように、第1、第2の格子31,32及びマルチスリット140は、それぞれのX線遮蔽部の延伸方向(y方向)が鉛直方向に沿うように配置されている。
空冷手段160は、ファン(送風機)161及びダクト162を含んで構成されている。なお空冷手段160のX線透過領域はX線を減衰させないようにX線透過率の高い部材で構成することが望ましい。例えばベリリウム(Be)や、カーボン板や樹脂等の有機化合物や、アルミ(Al)やマグネシウム(Mg)等の原子番号の小さい金属箔を用いることが望ましい。
ダクト162は、空気導入口162A及び空気排出口162Bを有する。ダクト162の内部には、マルチスリット140及びファン161が配置されている。なお空気導入口162A及び空気排出口162Bは、X線がこれらの導入口及び排出口から漏洩しないようにX線遮蔽部材が互い違いに配置された壁を持つラビリンス構造とされることで、空気はジグザグに進むが直進性の高いX線は遮蔽することが出来るようにすることが望ましい。
空気導入口162Aは、X線源11に生じた熱の対流が生じ易いコリメータユニット29の上面部近傍の位置とは反対側にあるコリメータユニット29底面部に設けられている。このため、X線源11の発熱によって温められた空気が空気導入口162Aに入りにくく、比較的低温の外部空気をダクト162内に取り入れることができるので、冷却効率を高くできる。
一方、空気排出口162Bは、コリメータユニット29の筐体の上面部に設けられている。空気排出口162Bの近傍に配置されたファン161の吸排気により、断熱部材150とマルチスリット140との間に空気流AFが形成される。
空気流AFの方向がマルチスリット140のX線遮蔽部140bの延伸方向であるy方向に平行であって、複数のX線遮蔽部140bを横断する方向(x方向)ではないことから、空気流AFによってマルチスリット140が振動することを抑制できる。また、空気流AFがマルチスリット140の格子面(xy平面)に沿って流れ、この空気流AFによってマルチスリット140の格子面全体から放熱されるので、マルチスリット140の放熱効率を高くできる。
なお、空気導入口及び空気排出口のそれぞれの位置は、図11における空気導入口162A及び空気排出口162Bのそれぞれの位置には限定されない。例えば、コリメータユニット29のy方向両端の側面部にそれぞれ空気導入口及び空気排出口が設けられていてもよい。
また、空気導入口及び空気排出口がコリメータユニット筐体の対向する面に配置されている必要はなく、例えば、コリメータユニット29の底面部の空気導入口162Aから取り入れた空気流をマルチスリット140の格子面通過後に整流板などによって図11のy方向やz方向に屈曲させ、コリメータユニット29のy方向やz方向の側面部に設けられた空気排出口から排気するように構成されていてもよい。
空気導入口の位置は、図11のようなコリメータユニット29におけるx方向下側の位置には限られないが、X線源11からの熱の対流による影響を受けて温度上昇しない(あるいは温度上昇幅が少ない)位置とされることが好ましい。
なお、図11では、空気流AFが主としてマルチスリット140のX線源11側の面に沿って流れていたが、空気流がマルチスリットの両面に沿って流れ、マルチスリットが両面から冷却されるように構成してもよい。
マルチスリットを冷却する手段としては、空冷手段の他、水冷手段やヒートパイプ等を適宜採用できる。
図12は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例の構成を示す。
このX線撮影システム60は、被検体(患者)Hを臥位状態で撮影するX線診断装置であって、X線源11及び撮影部12の他に、被検体Hを寝載するベッド61を備える。
本例では、撮影部12は、被検体Hを介してX線源11に対向するように、天板62の下面側に取り付けられている。一方のX線源11は、X線源保持装置14によって保持されており、X線源11の角度変更機構(図示せず)によりX線照射方向が下方向とされている。X線源11は、この状態で、ベッド61の天板62に寝載された被検体HにX線を照射する。X線源保持装置14は、支柱部14bの伸縮によりX線源11の上下動を可能とするため、この上下動により、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離を調整することができる。
前述のように、撮影部12は、第1の吸収型格子31と第2の吸収型格子32との間の距離L2を短くすることができ、薄型化が可能であるため、ベッド61の天板62を支持する脚部63を短くし、天板62の位置を低くすることができる。例えば、撮影部12を薄型化し、天板62の位置を、被検体(患者)Hが容易に腰掛けられる程度の高さ(例えば、床上40cm程度)とすることが好ましい。また、天板62の位置を低くすることは、X線源11から撮影部12までの十分な距離を確保するうえでも好ましい。
なお、上記X線源11と撮影部12との位置関係とは逆に、X線源11をベッド61に取り付け、撮影部12を天井側に設置することで、被検体Hの臥位撮影を行うことも可能である。
図13及び図14は、本発明の実施形態を説明するためのX線撮影システムの他の例を示す。X線源11は、X線源保持装置14の支柱部14bに対して回動可能に設けられている。支柱部14bには水平方向に沿った回動軸14cが設けられており、図示しないモータによりX線源11が回動軸14cを中心に回動する。このため、X線源11から射出されるX線の光軸Aの向きが図13のような水平方向と、図12のような鉛直方向とに切替可能となっている。なお、光軸Aの方向を水平方向と鉛直方向との間の任意の方向に合わせられるように構成されていてもよい。
X線の光軸Aの方向が鉛直方向のときには、X線源11は、図12のようなベッド61と組み合わせられる。すなわち、X線源11、ベッド61、ベッド61の下側に設けられた撮影部12、及びコンソール13を備えたX線撮影システムが構成される。
図14及び図15は、コリメータユニット39の一部断面模式図である。コリメータユニット39は、マルチスリット140を冷却する空冷手段170を有する。空冷手段170は、ファン171、ダクト180、及び図示しない整流板などを含んで構成されている。なお空冷手段170のX線透過領域はX線を減衰させないようにX線透過率の高い部材で構成することが望ましい。例えばベリリウム(Be)や、カーボン板や樹脂等の有機化合物や、アルミ(Al)やマグネシウム(Mg)等の原子番号の小さい金属箔を用いることが望ましい。
ダクト180は、2つの空気導入口181,182と、1つの空気排出口183とを有する。なお、空気導入口181,182及び空気排出口183は、X線がこれらの導入口及び排出口から漏洩しないようにX線遮蔽部材が互い違いに配置された壁を持つラビリンス構造とされることで、空気はジグザグに進むが直進性の高いX線は遮蔽することが出来るようにすることが望ましい。
空気導入口181,182はそれぞれの開閉手段181A,182Aを含んで構成されている。ファン171及び開閉手段181A,182Aはそれぞれ、コンソール13(図2)のI/F25を介して制御装置20に接続されている。図示を省略するが、本例における制御装置20は、光軸Aの方向に応じて空気導入口181,182の開閉を制御する導入口開閉制御部を具備する。この導入口開閉制御部は、制御装置20の処理の一部を構成する。
ここで示す構成は、複数の空気導入口181,182がX線の照射方向に応じて開閉される例を示す。
図14のように、X線の光軸Aの方向が水平方向のときには(例:立位撮影時)、X線源11からの熱の対流の影響でコリメータユニット39の筐体の+y方向上端部近傍が温度上昇するとともに、ダクト180の+y方向上端にある空気排出口183近傍が、マルチスリット140からの放熱された熱を含んだ熱の滞留によって温度上昇する。このように光軸Aの方向が水平方向のときには、導入口開閉制御部の制御により、X線源11からの熱の対流の影響で温度上昇する部分から離れた位置、つまりその熱の対流において低温側にあって、かつマルチスリット140に近い位置にある一方の空気導入口181が開放されると共に、この空気導入口181よりもマルチスリット140から遠い位置にある他方の空気導入口182が閉塞される。図14のようにX線源11からの熱の対流において低温側の空気導入口が複数ある場合には、マルチスリット140との距離が近い空気導入口が開放され、マルチスリット140との距離が遠い空気導入口が閉塞される。
X軸の光軸方向が水平方向のとき、ファン171の吸排気によって外部空気が空気導入口181からダクト180内に取り入れられ、空気流AFが形成される。
図15のようにX線の光軸Aの方向が鉛直方向のときには(例:ベッドを使用した臥位撮影時)、X線源11からの熱の対流の影響でコリメータユニット39の筐体の−z方向上端部近傍が温度上昇するとともに、ダクト180の−z方向上端部近傍(マルチスリット140の上方)が、マルチスリット140からの放熱された熱を含んだ熱の滞留によって温度上昇する。このように光軸Aの方向が鉛直方向のときには、導入口開閉制御部の制御により、X線源11からの熱の対流の影響で温度上昇する部分から離れた位置、つまりその熱の対流において低温側にある一方の空気導入口182が開放されると共に、この空気導入口182よりも温度上昇部分に近い位置、つまりその熱の対流において高温側にある他方の空気導入口181が閉塞される。
X軸の光軸方向が鉛直方向のとき、ファン171の吸排気によって外部空気が空気導入口182からダクト180内に取り入れられ、空気流AFが形成される。
このように、光軸Aの方向に応じて空気導入口181,182が使い分けられることにより、X線源11の回動位置が変わっても、X線源11からの熱の対流において比較的低温の外部空気をダクト180内に取り入れ、マルチスリット140を効率的に冷却することが可能となる。
なお、図14及び図15の構成ではファン171によって吸排気を行っていたが、吸気用の別のファンを設けてもよい。ファンがそれぞれ設けられる位置は特に限定されない。光軸方向が水平方向のときと鉛直方向のときとで空気排出口183が共用されていたが、光軸方向が水平方向のときに用いられる空気排出口と、光軸方向が垂直方向のときに用いられる空気排出口とが別々に設けられていてもよい。
図14に示したコリメータユニット39は、本明細書に記載されたX線撮影システムのいずれの構成例においても適用可能である。
図16及び図17は、本発明の実施形態を説明するためのX線撮影システムの他の例を示す。このX線撮影システム60は、被検体(患者)Hを立位状態及び臥位状態で撮影することを可能とするX線診断装置であって、X線源11及び撮影部12が、旋回アーム71によって保持されている。この旋回アーム71は、基台72に旋回可能に連結されている。
旋回アーム71は、ほぼU字状の形状をしたU字状部71aと、このU字状部71aの一端に接続された直線状の直線状部71bとからなる。U字状部71aの他端には、撮影部12が取り付けられている。直線状部71bには、その延伸方向に沿って第1の溝73が形成されており、この第1の溝73に、X線源11が摺動自在に取り付けられている。X線源11と撮影部12とは対向しており、X線源11を第1の溝73に沿って移動させることにより、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離を調整することができる。
また、基台72には、上下方向に延伸した第2の溝74が形成されている。旋回アーム71は、U字状部71aと直線状部71bとの接続部に設けられた連結機構75により、第2の溝74に沿って上下方向に移動自在となっている。また、旋回アーム71は、連結機構75により、y方向に沿う回転軸Cを中心として旋回可能となっている。図16に示す立位撮影状態から、旋回アーム71を、回転軸Cを中心として時計回りに90°回動させるとともに、被検体Hを寝載するベッド(図示せず)の下に撮影部12を配置することで、臥位撮影が可能となる。なお、旋回アーム71は、90°の回動に限られず、任意の角度の回動を行うことができ、立位撮影(水平方向)及び臥位撮影(上下方向)以外の方向での撮影が可能である。旋回アーム71を90°回動させて、ベッドの下に撮影部12を配置する際には、X線源11を直線状部71bに対して回動させて、光軸Aの向きを鉛直方向に沿った向きにして撮影する。本例のX線撮影システムは、上述したコリメータユニット39を搭載しているので、光軸Aの向きに応じて空気導入口が上述と同様に選択的に開放される。これにより、マルチスリット140をより確実に冷却することが可能となる。
本例では、旋回アーム71でX線源11及び撮影部12を保持しているため、上記例と比べて、X線源11から撮影部12までの距離を容易かつ精度よく設定することができる。
なお、本例では、U字状部71aに撮影部12を配設し、直線状部71bにX線源11を配設しているが、いわゆるCアームを用いたX線診断装置のように、Cアームの一端に撮影部12を配設し、該Cアームの他端にX線源11を配設するようにしてもよい。
次に、本発明をマンモグラフィ(X線乳房撮影)に適用した例を示す。図18に示すマンモグラフィ装置80は、被検体として乳房BのX線画像(位相コントラスト画像)を撮影する装置である。マンモグラフィ装置80は、基台(図示せず)に対して旋回可能に連結されたアーム部材81の一端に配設されたX線源収納部82と、アーム部材81の他端に配設された撮影台83と、撮影台83に対して上下方向に移動可能に構成された圧迫板84とを備える。
X線源収納部82にはX線源11が収納されており、撮影台83には撮影部12が収納されている。X線源11と撮影部12とは、互いに対向するように配置されている。圧迫板84は、移動機構(図示せず)により移動し、撮影台83との間で乳房Bを挟み込んで圧迫する。この圧迫状態で、上記したX線撮影が行われる。
次に、上記マンモグラフィ装置の変形例を示す。図19に示すマンモグラフィ装置90は、第1の吸収型格子31がX線源11と圧迫板84との間に配設されている点のみが上記のマンモグラフィ装置80と異なる。第1の吸収型格子31は、アーム部材81に接続された格子収納部91に収納されている。撮影部92は、第1の吸収型格子31を備えず、FPD30、第2の吸収型格子32、及び走査手段33により構成されている。
このように、被検体(乳房)Bが第1の吸収型格子31と第2の吸収型格子32との間に位置する場合であっても、第2の吸収型格子32の位置に形成される第1の吸収型格子31の投影像(G1像)が被検体Bにより変形する。したがって、この場合でも、被検体Bに起因して変調されたモアレ縞をFPD30により検出することができる。すなわち、本例でも前述した原理で被検体Bの位相コントラスト画像を得ることができる。
本例では、第1の吸収型格子31による遮蔽により、線量がほぼ半減したX線が被検体Bに照射されることになるため、被検体Bの被曝量を、上記例の場合の約半分に低減することができる。なお、本例のように、第1の吸収型格子31と第2の吸収型格子32との間に被検体を配置することは、マンモグラフィ装置に限られず、他のX線撮影システムに適用することが可能である。
また、上記例では、前述したように、位相コントラスト画像は、第1及び第2の吸収型格子31,32のX線遮蔽部31b,32bの周期配列方向(x方向)のX線の屈折成分に基づくものとなり、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向(y方向)の屈折成分は反映されない。すなわち、xy面である格子面を介して、x方向に交差する方向(直交する場合はy方向)に沿った部位輪郭がx方向の屈折成分に基づく位相コントラスト画像として描出されるのであり、x方向に交差せずにx方向に沿っている部位輪郭はx方向の位相コントラスト画像として描出されない。すなわち、被写体Hとする部位の形状と向きによっては描出できない部位が存在する。例えば、膝等の関節軟骨の荷重面の方向を格子の面内方向であるxy方向のうちy方向に合わせると、y方向にほぼ沿った荷重面(yz面)近傍の部位輪郭は十分に描出されるが、荷重面に交差しx方向にほぼ沿って延びる軟骨周辺組織(腱や靭帯など)については描出が不十分になると考えられる。被写体Hを動かすことにより、描出が不十分な部位を再度撮影することは可能ではあるが、被写体H及び術者の負担が増えることに加え、再度撮影した画像との位置再現性を担保することが難しいといった問題がある。
そこで、他の例として、図20に示すように、第1及び第2の吸収型格子31,32の格子面の中心に直交する仮想線(X線の光軸A)を中心として、第1及び第2の吸収型格子31,32を、図20(a)に示す第1の向き(X線遮蔽部31b,32bの延伸方向がy方向に沿う方向)から一体的に任意の角度で回転させて、図20(b)に示す第2の向き(X線遮蔽部31b,32bの延伸方向がx方向に沿う方向)とする回転機構105を設け、第1の向きと第2の向きとのそれぞれにおいて位相コントラスト画像を生成するように構成することも好適である。こうすることで、上述した位置再現性の問題をなくせる。なお、図20(a)には、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向がy方向に沿う方向となるような第1、第2格子31,32の第1の向きを示し、図20(b)には、図20(a)の状態から90度回転させ、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向がx方向に沿う方向となるような第1、第2格子31,32の第2の向きを示したが、第1、第2の格子の回転角度は任意である。また、第1の向き及び第2の向きに加えて、第3の向き、第4の向きなど、2回以上の回転操作を行って、それぞれの向きでの位相コントラスト画像を生成するように構成してもよい。
なお、この回転機構105は、FPD30とは別に第1及び第2の吸収型格子31,32のみを一体的に回転させるものであってもよいし、第1及び第2の吸収型格子31,32とともにFPD30を一体的に回転させるものであってもよい。更に、回転機構105を用いた第1及び第2の向きにおける位相コントラスト画像の生成は、上記いずれの例においても適用可能である。
また、上記例の第1及び第2の吸収型格子31,32は、X線遮蔽部31b,32bの周期配列方向が直線状(すなわち、格子面が平面状)となるように構成されているが、これに代えて、図21に示すように、格子面を曲面上に凹面化した第1及び第2の吸収型格子110,111を用いることも好適である。
第1の吸収型格子110は、X線透過性でかつ湾曲した基板110aの表面に、複数のX線遮蔽部110bが所定のピッチp1で周期的に配列されている。各X線遮蔽部110bは、上記例と同様にy方向に直線状に延伸しており、第1の吸収型格子110の格子面は、X線焦点18bを通りX線遮蔽部110bの延伸方向に延びる直線を中心軸とする円筒面に沿った形状となっている。同様に、第2の吸収型格子111は、X線透過性でかつ湾曲した基板111aの表面に、複数のX線遮蔽部111bが所定のピッチp2で周期的に配列されている。各X線遮蔽部111bは、y方向に直線状に延伸しており、第2の吸収型格子111の格子面は、X線焦点18bを通りX線遮蔽部111bの延伸方向に延びる直線を中心軸とする円筒面に沿った形状となっている。
X線焦点18bから第1の吸収型格子110までの距離をL1、第1の吸収型格子110から第2の吸収型格子111までの距離をL2とした場合に、格子ピッチp2及び間隔d2は、上記式(1)の関係を満たすように決定される。第1の吸収型格子110のスリット部の開口幅d1と第2の吸収型格子111のスリット部の開口幅d2は、上記式(2)の関係を満たすように決定される。
このように、第1及び第2の吸収型格子110,111の格子面を円筒面状とすることにより、X線焦点18bから照射されるX線は、被検体Hが存在しない場合、すべて格子面に垂直に入射することになるため、本例では、X線遮蔽部110bの厚みh1とX線遮蔽部111bの厚みh2との上限の制約が緩和され、上記式(7)及び(8)を考慮する必要がない。
また、本例では、第1及び第2の吸収型格子110,111のいずれか一方を、X線焦点18bを中心として、格子面(円筒面)に沿った方向に移動させることにより、前述の縞走査を行う。更に、本例では、検出面が円筒面状のFPD112を用いることが好ましい。同様に、FPD112の検出面は、X線焦点18bを通りy方向に延びる直線を中心軸とする円筒面状とする。
本例の第1及び第2の吸収型格子110,111及びFPD112は、上記いずれの例においても適用可能である。更に、マルチスリット140を、第1及び第2の吸収型格子110,111と同様な形状とすることも好適である。
次に、本発明の例を説明するための他のX線撮影システムの構成例について説明する。図22に本例の放射線位相画像撮影装置の概略構成を示す。
本例のX線位相画像撮影装置は、X線源11から射出されたX線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子131と、第1の格子131により形成された第1の周期パターン像を強度変調して第2の周期パターン像を形成する第2の格子132と、第2の格子132により形成された第2の周期パターン像を検出するX線画像検出器(放射線画像検出器)240と、X線画像検出器240により検出された第2の周期パターン像に基づいて縞画像を取得し、その取得した縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成部260とを備えている。なお、位相コントラスト画像生成部260は、コンソール13(図2)内の制御装置20の処理の一部を構成する。
X線源11は、被写体Hに向けてX線を射出するものであり、第1の格子131にX線を照射したとき、タルボ干渉効果を発生させうるだけの空間的干渉性を有するものである。たとえば、X線の発光点のサイズが小さいマイクロフォーカスX線管やプラズマX線源を利用することができる。また、通常の医療現場で用いられるような比較的X線の発光点(いわゆる焦点サイズ)の大きなX線源を用いる場合は、所定のピッチを有するマルチスリット(例えば、上述したマルチスリット140)をX線源11と第1の格子131との間に設置して使用することができる。
第1の格子131は、照射されるX線に対して約90°又は約180°の位相変調を与える、いわゆる位相変調型格子であることが望ましく、たとえば、X線遮蔽部を金とした場合、通常の医療診断用のX線エネルギー領域において必要な厚さh1は1μm〜数μm程度になる。また、第1の格子131として、振幅変調型格子を用いることもできる。
一方、第2の格子132は、振幅変調型格子であることが望ましい。
ここで、X線源11から照射されるX線が、平行ビームではなく、コーンビームである場合には、第1の格子131を通過して形成される第1の格子131の自己像は、X線源11からの距離に比例して拡大される。そして、本例においては、第2の格子132の格子ピッチP2と間隔d2は、そのスリット部が、第2の格子132の位置における第1の格子131の自己像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定される。すなわち、X線源11の焦点から第1の格子131までの距離をL1、第1の格子131から第2の格子132までの距離をL2とした場合、第2の格子ピッチP2及び間隔d2は、上記の(1)及び式(2)の関係を満たすように決定される。
なお、X線源11から照射されるX線が平行ビームである場合には、P2=P1,d
2=d1を満たすように決定される。
X線画像検出器240は、第1の格子131に入射したX線が形成する第1の格子131の自己像が第2の格子132によって強度変調された像を画像信号として検出するものである。このようなX線画像検出器240として、本例においては、直接変換型のX線画像検出器であって、線状の読取光によって走査されることによって画像信号が読み出される、いわゆる光読取方式のX線画像検出器を用いる。
図23(A)は、本例のX線画像検出器240の斜視図、図23(B)は図23(A)に示すX線画像検出器のXZ面断面図、図23(C)は図4(A)に示すX線画像検出器のYZ面断面図である。
本例のX線画像検出器240は、図23(A)〜(C)に示すように、X線を透過する第1の電極層241、第1の電極層241を透過したX線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層242、記録用光導電層242において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層244、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層245、及び第2の電極層246をこの順に積層してなるものである。記録用光導電層242と電荷輸送層244との界面近傍には、記録用光導電層242内で発生した電荷を蓄積する蓄電部243が形成される。なお、上記各層は、ガラス基板247上に第2の電極層246から順に形成されている。
第1の電極層241としては、X線を透過するものであればよく、たとえば、ネサ皮膜(SnO2)、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚にして用いることができ、また、100nm厚のAlやAuなども用いることもできる。
記録用光導電層242は、X線の照射を受けることにより電荷を発生するものであればよく、X線に対して比較的量子効率が高く、また暗抵抗が高いなどの点で優れているa−Seを主成分とするものを使用する。厚さは10μm以上1500μm以下が適切である。また、特にマンモグラフィ用途である場合には、150μm以上250μm以下であることが好ましく、一般撮影用途である場合には、500μm以上1200μm以下であることが好ましい。
電荷輸送層244としては、たとえば、X線画像の記録の際に第1の電極層241に帯電する電荷の移動度と、その逆極性となる電荷の移動度の差が大きい程良く(例えば102以上、望ましくは103以上)、たとえば、ポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物,Clを10〜200ppmドープしたa−Se、As2Se3等の半導体物質が適当である。厚さは0.2〜2μm程度が適切である。
読取用光導電層245としては、読取光の照射を受けることにより導電性を呈するものであればよく、たとえば、a−Se、Se−Te、Se−As−Te、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、MgPc(Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine)、CuPc(Cupper phtalocyanine)などのうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。厚さは5〜20μm程度が適切である。
第2の電極層246は、読取光を透過する複数の透明線状電極246aと読取光を遮光する複数の遮光線状電極246bとを有するものである。透明線状電極246aと遮光線状電極246bとは、X線画像検出器240の画像形成領域の一方の端部から他方の端部まで連続して直線状に延びるものである。そして、透明線状電極246aと遮光線状電極246bとは、図23(A),(B)に示すように、所定の間隔を空けて交互に平行に配列されている。
透明線状電極246aは読取光を透過するとともに、導電性を有する材料から形成されている。たとえば、第1の電極層241と同様に、ITO、IZOやIDIXOを用いることができる。そして、その厚さは100〜200nm程度である。
遮光線状電極246bは読取光を遮光するとともに、導電性を有する材料から形成されている。たとえば、上記の透明導電材料とカラーフィルターを組み合せて用いることができる。透明導電材料の厚さは100〜200nm程度である。
そして、本例のX線画像検出器240においては、後で詳述するが、隣接する透明線状電極246aと遮光線状電極246bとの1組を用いて画像信号が読み出される。すなわち、図23(B)に示すように、1組の透明線状電極246aと遮光線状電極246bとによって1画素の画像信号が読み出されることになる。本例においては、1画素が略50μmとなるように透明線状電極246aと遮光線状電極246bとが配置されている。
そして、本例のX線位相画像撮影装置は、図23(A)に示すように、透明線状電極246aと遮光線状電極246bの延伸方向に直交する方向(X方向)に延設された線状読取光源250を備えている。本例の線状読取光源250は、LED(Light EmittingDiode)やLD(Laser Diode)などの光源と所定の光学系とから構成され、略10μmの幅の線状の読取光をX線画像検出器240に照射するように構成されている。そして、この線状読取光源250は、所定の移動機構(図示省略)によって透明線状電極246a及び遮光線状電極246bの延伸方向(Y方向)について移動するものであり、この移動により線状読取光源250から発せられた線状の読取光によってX線画像検出器240が走査されて画像信号が読み出される。画像信号の読取りの作用については後で詳述する。
そして、X線源11、第1の格子131、第2の格子132及びX線画像検出器240を備える構成をタルボ干渉計として機能させるためには、更にいくつかの条件をほぼ満たさねばならない。その条件について以下に説明する。
まず、第1の格子131と第2の格子132とのグリッド面が、図22に示すX−Y平面に平行であることが必要である。
そして、更に、第1の格子131と第2の格子132との距離Z2(タルボ干渉距離Z)は、第1の格子131が90°の位相変調を与える位相変調型格子である場合、次式(24)をほぼ満たさなければならない。
ただし、λはX線の波長(通常はピーク波長)、mは0か正の整数、P1は上述した第1の格子131の格子ピッチ、P2は上述した第2の格子132の格子ピッチである。
また、第1の格子131が180°の位相変調を与える位相変調型格子である場合には、タルボ干渉距離Zに関して次式(25)をほぼ満たさなければならない。mは0か正の整数、P1は上述した第1の格子131の格子ピッチ、P2は上述した第2の格子132の格子ピッチである。また、第1の格子131が振幅変調型格子である場合には、上述の式(3)をほぼ満たさなければならない。
また、第1、第2の格子131,132のそれぞれの厚みh1,h2に関しても、第1、第2の格子31,32に関して上述した式(7)及び式(8)を満たすように設定する必要がある。
そして、更に本例のX線位相画像撮影装置においては、図24に示すように、第1の格子131と第2の格子132とが、第1の格子131の延伸方向と第2の格子132の延伸方向とが相対的に傾くように配置されるものである。そして、このように配置された第1の格子131と第2の格子132に対して、X線画像検出器240によって検出される画像信号の各画素の主走査方向(図23のX方向)の主画素サイズDxと副走査方向の副画素サイズDyとは、図24に示すような関係となる。
主画素サイズDxは、上述したようにX線画像検出器240の透明線状電極246aと遮光線状電極246bの配列ピッチによって決定されるものであって、本例においては50μmに設定されている。また、副画素サイズDyは、線状読取光源250によってX線画像検出器240に照射される線状の読取光の幅によって決定されるものであって、本例においては10μmに設定されている。
ここで、本例においては、複数の縞画像を取得し、その複数の縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成するが、その取得する縞画像の数をMとすると、M個の副画素サイズDyが位相コントラスト画像の副走査方向の1つの画像解像度Dとなるように第1の格子131が第2の格子132に対して傾けられる。
具体的には、図25に示すように、第2の格子132のピッチ及び第1の格子131によって第2の格子132の位置に形成される周期パターン像(以下、第1の格子131の自己像G1という)のピッチをp、第2の格子132に対する第1の格子131の自己像のX−Y面内の相対的な回転角をθ、位相コントラスト画像の副走査方向の画像解像度をD(=Dy×M)とすると、回転角θを下式(26)を満たすように設定することによって、副走査方向の画像解像度Dの長さに対して、第1の格子131の自己像G1と第2の格子132の位相がn周期分ずれることになる。なお、図25においては、M=5、n=1の場合を示している。
したがって、位相コントラスト画像の副走査方向の画像解像度DをM分割したDx×Dyの各画素によって、第1の格子131の自己像のn周期分の強度変調をM分割した画像信号が検出できることになる。図25に示す例では、n=1としているので、副走査方向の画像解像度Dの長さに対して、第1の格子131の自己像G1と第2の格子132の位相が1周期分ずれることになる。もっとわかり易く言えば、第1の格子131の自己像G1の1周期分の第2の格子132を通過する範囲が、副走査方向の画像解像度Dの長さにわたって変化する。
そして、M=5としているので、Dx×Dyの各画素によって第1の格子131の自己像の1周期の強度変調を5分割した画像信号が検出できることになり、すなわち、Dx×Dyの各画素によって互いに異なる5つの縞画像の画像信号をそれぞれ検出することができることになる。なお、5つの縞画像の画像信号の取得方法については、後で詳述する。
なお、本例においては、上述したとおり、Dx=50μm、Dy=10μm、M=5としているので、位相コントラスト画像の主走査方向の画像解像度Dxと副走査方向の画像解像度D=Dy×Mが同じになるが、必ずしも主走査方向の画像解像度Dxと副走査方向の画像解像度Dとを合わせる必要はなく、任意の主副比としてもよい。
更に、本例においては、M=5としているが、Mは3以上であればよく、5以外であってもよい。また、上記説明ではn=1としたが、nは0以外の整数であれば1以外の整数でもよい。すなわち、nが負の整数の場合には上述した例に対して反対周りの回転となり、また、nを±1以外の整数としてn周期分の強度変調としてもよい。ただし、nがMの倍数の場合は、1組のM個の副走査方向画素Dyの間で第1の格子131の自己像G1と第2の格子132の位相が等しくなり、異なるM個の縞画像とならないため除外するものとする。
また、第2の格子132に対する第1の格子131の自己像の回転角θについては、たとえば、X線画像検出器240と第2の格子132の相対回転角を固定した後、第1の格子131を回転させることによって行うことができる。
たとえば、上式(26)でp=5μm、D=50μm、n=1とすると、理論上の回転角θは約5.7°である。そして、第2の格子132に対する第1の格子131の自己像の実際の回転角θ’は、たとえば、第1の格子の自己像と第2の格子132によるモアレのピッチによって検出することができる。
具体的には、図26に示すように、実際の回転角をθ’、回転によって生じたX方向への見た目の自己像のピッチP’とすると、観測されるモアレのピッチPmは、1/Pm=|1/P’−1/P|であるので、P’=P/cosθ’を上式に代入することによって実際の回転角θ’を求めることができる。なお、モアレのピッチPmについては、X線画像検出器240によって検出された画像信号に基づいて求めるようにすればよい。
そして、理論上の回転角θと実際の回転角θ’とを比較し、その差の分だけで自動又は手動で第1の格子131の回転角を調整するようにすればよい。
位相コントラスト画像生成部260は、X線画像検出器240により検出された互いに異なるM種類の縞画像の画像信号に基づいてX線位相コントラスト画像を生成するものである。
次に、本例のX線位相画像撮影装置の作用について説明する。
まず、図22に示すように、X線源11と第1の格子131との間に、被写体Hが配置された後、X線源11からX線が射出される。そして、そのX線は被写体Hを透過した後、第1の格子131に照射される。第1の格子131に照射されたX線は、第1の格子131で回折されることにより、第1の格子131からX線の光軸方向において所定の距離において、タルボ干渉像を形成する。
これをタルボ効果と呼び、光波が第1の格子131を通過したとき、第1の格子131から所定の距離において、第1の格子131の自己像を形成する。たとえば、第1の格子131が、90°の位相変調を与える位相変調型格子の場合、上式(24)(180°の位相変調型格子の場合は上式(25)、強度変調型格子の場合は上式(3))で与えられる距離において第1の格子131の自己像を形成する一方、被写体Hによって、第1の格子131に入射するX線の波面は歪むため、第1の格子131の自己像はそれに従って変形している。
続いて、X線は、第2の格子132を通過する。その結果、上記の変形した第1の格子131の自己像は第2の格子132との重ね合わせにより、強度変調を受け、上記波面の歪みを反映した画像信号としてX線画像検出器240により検出される。
ここで、X線画像検出器240における画像検出と読出しの作用について説明する。
まず、図27(A)に示すように高圧電源400によってX線画像検出器240の第1の電極層241に負の電圧を印加した状態において、第1の格子131の自己像と第2の格子132との重ね合わせによって強度変調されたX線が、X線画像検出器240の第1の電極層241側から照射される。
そして、X線画像検出器240に照射されたX線は、第1の電極層241を透過し、記録用光導電層242に照射される。そして、そのX線の照射によって記録用光導電層242において電荷対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層241に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として記録用光導電層242と電荷輸送層244との界面に形成される蓄電部243に蓄積される(図27(B)参照)。
次に、図28に示すように、第1の電極層241が接地された状態において、線状読取光源250から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層246側から照射される。読取光L1は透明線状電極246aを透過して読取用光導電層245に照射され、その読取光L1の照射により読取用光導電層245において発生した正の電荷が電荷輸送層244を通過して蓄電部243における潜像電荷と結合するとともに、負の電荷が、透明線状電極246aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極246bに帯電した正の電荷と結合する。
そして、読取用光導電層245において発生した負の電荷と遮光線状電極246bに帯電した正の電荷との結合によって、チャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
そして、線状読取光源250が、副走査方向に移動することによって線状の読取光L1によってX線画像検出器240が走査され、線状の読取光L1の照射された読取ライン毎に上述した作用によって画像信号が順次検出され、その検出された読取ライン毎の画像信号が位相コントラスト画像生成部260に順次入力されて記憶される。
そして、X線画像検出器240の全面が読取光L1に走査されて1フレーム全体の画像信号が位相コントラスト画像生成部260に記憶された後、位相コントラスト画像生成部260は、その記憶された画像信号に基づいて、互いに異なる5つの縞画像の画像信号を取得する。
具体的には、本例においては、図25に示すように、位相コントラスト画像の副走査方向の画像解像度Dを5分割し、第1の格子131の自己像の1周期の強度変調を5分割した画像信号が検出できるように第1の格子131を第2の格子132に対して傾けるようにしたので、図29に示すように、第1読取ラインから読み出された画像信号が第1の縞画像信号M1として取得され、第2読取ラインから読み出された画像信号が第2の縞画像信号M2として取得され、第3読取ラインから読み出された画像信号が第3の縞画像信号M3として取得され、第4読取ラインから読み出された画像信号が第4の縞画像信号M4として取得され、第5読取ラインから読み出された画像信号が第5の縞画像信号M5として取得される。なお、図29に示す第1〜第5読取ラインは、図25に示す副画素サイズDyに相当する。
また、図29においては、Dx×(Dy×5)の読取範囲しか示していないが、その他の読取範囲についても、上記と同様にして第1〜第5の縞画像信号が取得される。すなわち、図30に示すように、副走査方向について4画素間隔毎の画素行(読取ライン)からなる画素行群の画像信号が取得されて1フレームの1つの縞画像信号が取得される。より具体的には、第1読取ラインの画素行群の画像信号が取得されて1フレームの第1の縞画像信号が取得され、第2読取ラインの画素行群の画像信号が取得されて1フレームの第2の縞画像信号が取得され、第3読取ラインの画素行群の画像信号が取得されて1フレームの第3の縞画像信号が取得され、第4読取ラインの画素行群の画像信号が取得されて1フレームの第4の縞画像信号が取得され、第5読取ラインの画素行群の画像信号が取得されて1フレームの第5の縞画像信号が取得される。
上記のようにして互いに異なる第1〜第5の縞画像信号が取得され、この第1〜第5の縞画像信号に基づいて、位相コントラスト画像生成部260において位相コントラスト画像が生成される。
本例における位相コントラスト画像の生成方法は、既に式(17)〜(23)を参照して説明した内容と同様であるため、その説明を省略する。
なお、上述した第1の格子131と第2の格子132とを傾ける構成において、第1の格子131と第2の格子132とをともに吸収型(振幅変調型)格子として構成し、タルボ干渉効果の有無に関わらず、スリット部を通過した放射線を幾何学的に投影する構成としてもよい。この場合には、第1の格子131の間隔d1と第2の格子132の間隔d2とを、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分をスリット部で回折せずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。たとえば、X線源のターゲットとしてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は約0.4Åである。この場合には、第1の格子131の間隔d1と第2の格子132の間隔d2を、1μm〜10μm程度とすればスリット部で大部分の放射線が回折されずに幾何学的に投影される。第1の格子131の格子ピッチP1と第2の格子132の格子ピッチP2との関係と、第1の格子131の間隔d1と第2の格子132の間隔d2との関係とについては、上述した第1の格子131が位相変調型格子である場合と同様である。また、第2の格子132に対する第1の格子131の傾きについても、上述の例と同様であり、位相コントラスト画像の生成も、上述の例と同様に行われる。
なお、上記例においては、X線画像検出器240として、線状読取光源250から発せられた線状の読取光の走査によって画像信号が読み出される、いわゆる光読取方式のX線画像検出器を用いるようにしたが、これに限らず、たとえば、特開2002−26300号公報に記載されているような、TFTスイッチが2次元状に多数配列され、そのTFTスイッチをオンオフすることによって画像信号が読み出されるTFTスイッチを用いたX線画像検出器や、CMOSを用いたX線画像検出器などを用いるようにしてもよい。
具体的には、TFTスイッチを用いたX線画像検出器は、たとえば、図31に示すように、X線の照射によって半導体膜において光電変換された電荷を収集する画素電極271と画素電極271によって収集された電荷を画像信号として読み出すためのTFTスイッチ272とを備えた画素回路270が2次元状に多数配列されたものである。そして、TFTスイッチを用いたX線画像検出器は、画素回路行毎に設けられ、TFTスイッチ272をオンオフするためのゲート走査信号が出力される多数のゲート電極273と、画素回路列毎に設けられ、各画素回路270から読み出された電荷信号が出力される多数のデータ電極274とを備えている。なお、各画素回路270の詳細な層構成については、特開2002−26300号公報に記載されている層構成と同様である。
そして、たとえば、第2の格子132と画素回路列(データ電極)とが平行になるように設置した場合、1つの画素回路列が、上記例において説明した主画素サイズDxに相当し、1つの画素回路行が、上記例において説明した副画素サイズDyに相当する。なお、主画素サイズDx及び副画素サイズDyは、たとえば、50μmとすることができる。
そして、上記例と同様に、位相コントラスト画像を生成するためにM枚の縞画像を使用する場合、M行の画素回路行が、位相コントラスト画像の副走査方向の1つの画像解像度Dとなるように第1の格子131が第2の格子132に対して傾けられる。具体的な、第1の格子131の回転角については、上記例と同様に、上式(26)によって算出される。
上式(26)において、たとえば、M=5、n=1として第1の格子131の回転角θを設定した場合、図31の1つの画素回路270によって第1の格子131の自己像の1周期の強度変調を5分割した画像信号を検出できることになり、すなわち、図31に示す5本のゲート電極273に接続される5行の画素回路行によって、互いに異なる5つの縞画像の画像信号をそれぞれ検出することができることになる。なお、図31においては、1つの画素回路列に対して1本の第2の格子132と自己像G1とが対応して示されているが、実際には、1つの画素回路列に対して多数の第2の格子132及び自己像G1が存在していてもよく、図31は図示省略しているものとする。
したがって、第1読取ライン用ゲート電極G11に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第1の縞画像信号M1として取得され、第2読取ライン用ゲート電極G12に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第2の縞画像信号M2として取得され、第3読取ライン用ゲート電極G13に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第3の縞画像信号M3として取得され、第4読取ライン用ゲート電極G14に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第4の縞画像信号M4として取得され、第5読取ライン用ゲート電極G15に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第5の縞画像信号M5として取得される。
第1〜第5の縞画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する方法については、上記例と同様である。なお、上述したように1つの画素回路270の主走査方向及び副走査方向のサイズが50μmである場合には、位相コントラスト画像の主走査方向の画像解像度は50μmとなり、副走査方向の画像解像度は50μm×5=250μmとなる。
また、CMOSを用いたX線画像検出器としては、たとえば、X線の照射を受けて可視光を発生し、その可視光を光電変換することによって電荷信号を検出する画素回路280が、図32に示すように2次元状に多数配列されたものを用いることができる。そして、このCMOSを用いたX線画像検出器は、画素回路行毎に設けられ、画素回路280に含まれる信号読み出し回路を駆動するための駆動信号が出力される多数のゲート電極282及びリセット電極284と、画素回路列毎に設けられ、各画素回路280の信号読み出し回路から読み出された電荷信号が出力される多数のデータ電極283とを備えている。なお、ゲート電極282及びリセット電極284には、信号読み出し回路に駆動信号を出力する行選択走査部285が接続され、データ電極283には、各画素回路から出力された電荷信号に所定の処理を施す信号処理部286が接続されている。
各画素回路280は、図33に示すように、基板800の上方に絶縁膜803を介して形成された下部電極806と、下部電極806上に形成された光電変換膜807と、光電変換膜807上に形成された上部電極808と、上部電極808上に形成された保護膜809と、保護膜809上に形成されたX線変換膜810とを備えている。
X線変換膜810は、たとえば、X線の照射を受けて550nmの波長の光を発するCsI:TIから形成される。その厚さは500μm程度とすることが望ましい。
上部電極808は、光電変換膜807に550nmの波長の光を入射させる必要があるため、その入射光に対して透明な導電性材料で構成される。また、下部電極806は、画素回路280毎に分割された薄膜であり、透明又は不透明の導電性材料で形成される。
光電変換膜807は、たとえば、550nmの波長の光を吸収してこの光に応じた電荷を発生する光電変換材料から形成される。このような光電変換材料としては、たとえば、有機半導体、有機色素を含む有機材料、及び直接遷移型のバンドギャップをもつ吸収係数の大きい無機半導体結晶等を単体又は組み合わせた材料などがある。
そして、上部電極808と下部電極806との間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜807で発生した電荷のうち一方が上部電極808に移動し、他方が下部電極806に移動する。
そして、下部電極806の下方の基板800内には、この下部電極806に対応させて、下部電極806に移動した電荷を蓄積するための電荷蓄積部802と、電荷蓄積部802に蓄積された電荷を電圧信号に変換して出力する信号読み出し回路801とが形成されている。
電荷蓄積部802は、絶縁膜803を貫通して形成された導電性材料のプラグ804によって下部電極806に電気的に接続されている。信号読み出し回路801は、公知のCMOS回路によって構成されている。
そして、上述したようなCMOSを用いたX線画像検出器を、図34に示すように、第2の格子132と画素回路列(データ電極)とが平行になるように設置した場合、1つの画素回路列が、上記例において説明した主画素サイズDxに相当し、1つの画素回路行が、上記例において説明した副画素サイズDyに相当する。なお、主画素サイズDx及び副画素サイズDyは、CMOSを用いたX線画像検出器の場合には、たとえば、10μmとすることができる。
そして、上記例と同様に、位相コントラスト画像を生成するためにM枚の縞画像を使用する場合、M行の画素回路行が、位相コントラスト画像の副走査方向の1つの画像解像度Dとなるように第1の格子131が第2の格子132に対して傾けられる。具体的な、第1の格子131の回転角については、上記例と同様に、上式(26)によって算出される。
上式(26)において、たとえば、M=5、n=1として第1の格子131の回転角θを設定した場合、図34の1つの画素回路280によって第1の格子131の自己像の1周期の強度変調を5分割した画像信号を検出できることになり、すなわち、図34に示す5本のゲート電極282に接続される5行の画素回路行によって、互いに異なる5つの縞画像の画像信号をそれぞれ検出することができることになる。なお、図34においては、1つの画素回路列に対して1本の第2の格子132と自己像G1とが対応して示されているが、実際には、1つの画素回路列に対して多数の第2の格子132及び自己像G1が存在していてもよく、図34は図示省略しているものとする。
したがって、TFTスイッチを用いたX線画像検出器の場合と同様に、第1読取ライン用ゲート電極G11に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第1の縞画像信号M1として取得され、第2読取ライン用ゲート電極G12に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第2の縞画像信号M2として取得され、第3読取ライン用ゲート電極G13に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第3の縞画像信号M3として取得され、第4読取ライン用ゲート電極G14に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第4の縞画像信号M4として取得され、第5読取ライン用ゲート電極G15に接続される画素回路行から読み出された画像信号が第5の縞画像信号M5として取得される。
第1〜第5の縞画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する方法については、上記例と同様である。なお、上述したように1つの画素回路280の主走査方向及び副走査方向のサイズが10μmである場合には、位相コントラスト画像の主走査方向の画像解像度は10μmとなり、副走査方向の画像解像度は10μm×5=50μmとなる。
なお、上述したようにTFTスイッチを用いたX線画像検出器やCMOSを用いたX線画像検出器も用いることは可能であるが、これらのX線画像検出器は、画素が正方形であるため、本発明を適用する場合には、副走査方向の解像度が主走査方向の解像度に対して悪くなる。これに対し、上記例で説明した光読取方式のX線画像検出器においては、主走査方向については線状電極の幅(延伸方向と垂直な方向)によって解像度Dxが制限されるが、副走査方向については、線状読取光源250の読取光の副走査方向の幅及び1ラインあたりのチャージアンプ200の蓄積時間と線状読取光源250の移動速度の積で解像度Dyが決まることになる。主副解像度ともに典型的には数10μmであるが、主走査方向の解像度を維持したまま副走査方向の解像度を高くする設計が可能である。たとえば、線状読取光源250の幅を小さくしたり、移動速度を遅くすることにより実現可能であって、光読取方式のX線画像検出器は、より有利な構成である。
また、1回の撮影で複数の縞画像信号を取得することができるので、上述したような即座に繰り返し使用可能な半導体の検出器に限らず、蓄積性蛍光体シートや銀塩フイルムなども利用することができる。なお、この場合、蓄積性蛍光体シートや現像された銀塩フイルムなどを読み取る際の読取画素が請求項における画素に相当するものとする。
次に、本発明の例を説明するための他のX線撮影システムの構成例について説明する。図35に本例のX線位相画像撮影装置の概略構成を示す。
X線位相画像撮影装置は、図35に示すように、X線源11から射出されたX線を通過させて周期パターン像を形成する格子131と、格子131により形成された周期パターン像を検出するとともに、その周期パターン像に対して強度変調を施すX線画像検出器(放射線画像検出器)340と、X線画像検出器340をその線状電極の延伸方向に直交する方向に移動させる移動機構333と、X線画像検出器340において上記周期パターン像に対して強度変調の施された縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成する位相コントラスト画像生成部260とを備えている。
本例においても、所定のピッチを有するマルチスリット(例えば、上述のマルチスリット140)をX線源11と第1の格子131との間に設置して使用することができる。
X線画像検出器340は、X線が格子131を通過することによって格子131によって形成された格子131の自己像を検出するとともに、その自己像に応じた電荷信号を後述する格子状に分割された電荷蓄積層に蓄積することによって自己像に強度変調を施して縞画像を生成し、その生成した縞画像を画像信号として出力するものである。このようなX線画像検出器340として、本例においては、直接変換型のX線画像検出器であって、線状の読取光によって走査されることによって画像信号が読み出される、いわゆる光読取方式のX線画像検出器を用いる。
図36(A)は、本例のX線画像検出器340の斜視図、図36(B)は図36(A)に示すX線画像検出器のXZ面断面図、図36(C)は図36(A)に示すX線画像検出器のYZ面断面図である。
本例のX線画像検出器340は、図36(A)〜(C)に示すように、X線を透過する第1の電極層241、第1の電極層241を透過したX線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層242、記録用光導電層242において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷蓄積層343、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層245、及び第2の電極層246をこの順に積層してなるものである。なお、上記各層は、ガラス基板247上に第2の電極層246から順に形成されている。
電荷蓄積層343は、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性の膜であれば良く、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーやAs2S3、Sb2S3、ZnS等の硫化物、その他に酸化物、フッ化物より構成される。更には、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性であり、それと逆の極性の電荷に対しては導電性を有する方がより好ましく、移動度×寿命の積が、電荷の極性により3桁以上差がある物質が好ましい。
好ましい化合物としては、As2Se3、As2Se3にCl、Br、Iを500ppmから20000ppmまでドープしたもの、As2Se3のSeをTeで50%程度まで置換したAs2(SexTe1−x)3(0.5<x<1)、As2Se3のSeをSで50%程度まで置換したもの、As2Se3からAs濃度を±15%程度変化させたAsxSey(x+y=100、34≦x≦46)、アモルファスSe−Te系でTeを5−30wt%のもの等が挙げられる。
なお、電荷蓄積層343の材料としては、第1の電極層241と第2の電極層246との間に形成される電気力線が曲がらないようにするため、その誘電率が、記録用光導電層242と読取用光導電層245の誘電率の1/2倍以上2倍以下のものを用いることが望ましい。
そして、本例における電荷蓄積層343は、図36(A)〜(C)に示すように、第2の電極層246の透明線状電極246a及び遮光線状電極246bの延伸方向に平行となるように線状に分割されている。
また、電荷蓄積層343は、透明線状電極246a若しくは遮光線状電極246bの配列ピッチよりも細かいピッチで分割されるが、その配列ピッチP2と間隔d2は、格子131との組み合わせによって位相イメージングを行うことができるように決定される。
なお、透明線状電極246a若しくは遮光線状電極246bの配列ピッチP2及び間隔d2は、上述した第2の格子132に関するピッチP2及び間隔d2と同様に決められるため、同一符号を用いて説明する。
具体的には、X線源11から照射されるX線が、平行ビームではなく、コーンビームである場合には、格子131を通過して形成される格子131の自己像は、X線源11からの距離に比例して拡大される。そして、本例においては、電荷蓄積層343の配列ピッチP2と間隔d2は、線状の電荷蓄積層343の部分が、電荷蓄積層343の位置における格子131の自己像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定される。すなわち、格子131の格子ピッチをP1、格子131のX線遮蔽部の間隔をd1、X線源11の焦点から格子131までの距離をL1、格子131からX線画像検出器340の検出面までの距離をL2とした場合、電荷蓄積層343の配列ピッチP2及び間隔d2は、上記の(1)及び式(2)の関係を満たすように決定される。
また、電荷蓄積層343は、積層方向(Z方向)について2μm以下の厚さで形成される。
そして、電荷蓄積層343は、たとえば、上述したような材料と金属板に穴を空けたメタルマスクやファイバーなどによって形成されたマスクとを用いて抵抗加熱蒸着によって形成することができる。また、フォトリソグラフィを用いて形成するようにしてもよい。
そして、本例のX線画像検出器340においては、後で詳述するが、隣接する透明線状電極246aと遮光線状電極246bとの1組を用いて画像信号が読み出される。すなわち、図36(B)に示すように、1組の透明線状電極246aと遮光線状電極246bとによって1画素の画像信号が読み出されることになる。本例においては、1画素が略50μmとなるように透明線状電極246aと遮光線状電極246bとが配置されている。
そして、本例のX線位相画像撮影装置は、図36(A)に示すように、透明線状電極246aと遮光線状電極246bの延伸方向に直交する方向(X方向)に延設された線状読取光源250を備えている。
そして、X線源11、格子131、及び上記のように分割された電荷蓄積層343を有するX線画像検出器340を備える構成をタルボ干渉計として機能させるためには、更にいくつかの条件をほぼ満たさねばならない。その条件について以下に説明する。
まず、格子131とX線画像検出器340の検出面が、図35に示すX−Y平面に平行であることが必要である。
そして、更に、格子131とX線画像検出器340の検出面までの距離Z2(タルボ干渉距離Z)は、格子131が90°の位相変調を与える位相変調型格子である場合、上述の式(24)をほぼ満たさなければならない。
また、格子131が180°の位相変調を与える位相変調型格子である場合には、タルボ干渉距離Zに関して上述の式(25)をほぼ満たさなければならない。更に、格子131が振幅変調型格子である場合には、タルボ干渉距離Zに関して上述の式(3)をほぼ満たさなければならない。
移動機構333は、上述したように、X線画像検出器340をその線状電極の延伸方向に直交する方向に並進移動させることにより、格子131とX線画像検出器340との相対位置を変化させるものである。移動機構333は、たとえば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。
次に、本例のX線位相画像撮影装置の作用について説明する。
X線は被写体Hを透過した後、格子131に照射される。格子131に照射されたX線は、格子131で回折されることにより、格子131からX線の光軸方向において所定の距離において、タルボ干渉像を形成する。
そして、格子131の自己像は、X線画像検出器340の第1の電極層241側から入射され、X線画像検出器340の電荷蓄積層343によって強度変調を受け、上記波面のみを反映した縞画像の画像信号としてX線画像検出器340により検出される。
ここで、X線画像検出器340における縞画像の検出と読出しの作用について、より詳細に説明する。
まず、図37(A)に示すように高圧電源400によってX線画像検出器340の第1の電極層241に負の電圧を印加した状態において、格子131の自己像を担持したX線が、X線画像検出器340の第1の電極層241側から照射される。
そして、X線画像検出器340に照射されたX線は、第1の電極層241を透過し、記録用光導電層242に照射される。そして、そのX線の照射によって記録用光導電層242において電荷対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層241に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として電荷蓄積層343に蓄積される(図37(B)参照)。
ここで、本例における電荷蓄積層343は、上述したような配列ピッチで線状に分割されているので、記録用光導電層242において格子131の自己像に応じて発生した電荷のうちその直下に電荷蓄積層343が存在する電荷のみが電荷蓄積層343によってトラップされて蓄積され、それ以外の電荷については線状の電荷蓄積層343の間(以下、非電荷蓄積領域という)を通過し、読取用光導電層245を通過した後、透明線状電極246aと遮光線状電極246bとに流れ出してしまう。
このように記録用光導電層242において発生した電荷のうち、その直下に線状の電荷蓄積層343が存在する電荷のみを蓄積することによって、格子131の自己像は電荷蓄積層343の線状のパターンとの重ね合わせにより強度変調を受け、被写体Hによる自己像の波面の歪みを反映した縞画像の画像信号が電荷蓄積層343に蓄積されることになる。すなわち、本例の電荷蓄積層343は、従来の2つの格子を利用した位相イメージングにおける2つ目の格子と同等の機能を果たすことになる。
そして、次に、図38に示すように、第1の電極層241が接地された状態において、線状読取光源250から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層246側から照射される。読取光L1は透明線状電極246aを透過して読取用光導電層245に照射され、その読取光L1の照射により読取用光導電層245において発生した正の電荷が電荷蓄積層343における潜像電荷と結合するとともに、負の電荷が、透明線状電極246aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極246bに帯電した正の電荷と結合する。
そして、読取用光導電層245において発生した負の電荷と遮光線状電極246bに帯電した正の電荷との結合によって、チャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
そして、線状読取光源250が、副走査方向(Y方向)に移動することによって線状の読取光L1によってX線画像検出器340が走査され、線状の読取光L1の照射された読取ライン毎に上述した作用によって画像信号が順次検出され、その検出された読取ライン毎の画像信号が位相コントラスト画像生成部260に順次入力されて記憶される。
そして、X線画像検出器340の全面が読取光L1に走査されて1フレーム全体の画像信号が位相コントラスト画像生成部260に記憶される。
本例における位相コントラスト画像の生成方法の原理は、式(17)〜(23)を参照して説明した内容と同様であるため、その説明を省略する。位相コントラスト画像生成部260により、複数の縞画像に基づいて位相コントラスト画像が生成される。
なお、上述のX線位相画像撮影装置は、格子131からX線画像検出器340の検出面までの距離Z2がタルボ干渉距離となるように、上述の式(24)又は式(25)、あるいは式(3)を満たすようにしたが、格子131が入射X線を回折せずに投影させる構成としてもよい。この構成によれば、格子131を通過して射影される投影像が、格子131の後方の全ての位置で相似的に得られるため、格子131からX線画像検出器340の検出面までの距離Z2を、タルボ干渉距離を無関係に設定することができる。
次に、上述のX線位相画像撮影装置の変形例について説明する。上述のX線位相画像撮影装置は、移動機構333によってX線画像検出器340を並進移動させ、各位置においてX線画像の撮影を行うことによってM枚の縞画像信号を取得するようにしたが、本例のX線位相画像撮影装置は、上記のような移動機構333を必要とすることなく、1回のX線画像の撮影によってM枚の縞画像信号を取得可能に構成されたものである。
すなわち、上述の図24〜図30等を参照して説明したように、本例においても、図24〜図26等に示すように、格子131とX線画像検出器340とが、格子131の延伸方向とX線画像検出器340の電荷蓄積層343の延伸方向とが相対的に傾くように配置されるものである。そして、このように配置された格子131と電荷蓄積層343に対して、X線画像検出器340によって検出される画像信号の各画素の主走査方向(図36のX方向)の主画素サイズDxと副走査方向の副画素サイズDyとは、図25に示すような関係となる。上述の図24〜図30等を参照して説明した構成及び作用と同様にして、1回の放射線画像の撮影が行われた後、X線画像検出器340の全面が読取光L1に走査されて1フレーム全体の画像信号が位相コントラスト画像生成部260に記憶され、位相コントラスト画像生成部260は、その記憶された画像信号に基づいて、互いに異なる5つの縞画像の画像信号を取得する。この第1〜第5の縞画像信号に基づいて、位相コントラスト画像生成部260により、上記例と同様にして位相コントラスト画像が生成される。
また、上記例においては、X線画像検出器340として、電極間に、記録用光導電層242、電荷蓄積層343及び読取用光導電層245の3層を設けたものを利用するようにしたが、必ずしもこの層構成である必要はなく、たとえば、図39に示すように、読取用光導電層245を設けることなく、第2の電極層の透明線状電極246a及び遮光線状電極246b上に直接接触するように線状の電荷蓄積層343を設け、その電荷蓄積層343の上に記録用光導電層242を設けるようにしてもよい。なお、この記録用光導電層242は、読取用光導電層としても機能するものである。
この構造は、読取用光導電層245なしに第2の電極層246に直接電荷蓄積層343を設ける構造で、線状の電荷蓄積層343の形成を容易にする。すなわち、この線状の電荷蓄積層343は、蒸着で形成することができる。この蒸着工程において、選択的に線状パターンを形成するためにメタルマスクなどを用いるが、読取用光導電層245の上に線状の電荷蓄積層343を設ける構成では、読取用光導電層245の蒸着後のメタルマスクをセットする工程のため、読取用光導電層245の蒸着工程と記録用光導電層242の蒸着工程の間で大気中操作により、読取用光導電層245に劣化や、光導電層間に異物が混入して品質の劣化をもたらす虞がある。上述した読取用光導電層245を設けない構造とすることで、光導電層の蒸着後の大気中操作を減らすことができるため、上述の品質劣化の懸念を低減することができる。
以下に、図39に示すX線画像検出器360のX線画像の記録と読み出しの作用について説明する。
まず、図40(A)に示すように高圧電源400によってX線画像検出器360の第1の電極層241に負の電圧を印加した状態において、格子131の自己像を担持したX線が、X線画像検出器360の第1の電極層241側から照射される。
そして、X線画像検出器340に照射されたX線は、第1の電極層241を透過し、記録用光導電層242に照射される。そして、そのX線の照射によって記録用光導電層242において電荷対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層241に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として電荷蓄積層343に蓄積される(図40(B)参照)。なお、第2の電極層246に接した線状の電荷蓄積層343は絶縁性の膜であるから、この電荷蓄積層343に到達した電荷はそこに捕えられ、第2の電極層246へ行くことができず、蓄積されて留まる。
ここでも、上記例のX線画像検出器340と同様に、記録用光導電層242において発生した電荷のうち、その直下に線状の電荷蓄積層343が存在する電荷のみを蓄積することによって、格子131の自己像は電荷蓄積層343の線状のパターンとの重ね合わせにより強度変調を受け、被写体Hによる自己像の波面の歪みを反映した縞画像の画像信号が電荷蓄積層343に蓄積されることになる。
そして、図41に示すように、第1の電極層241が接地された状態において、線状読取光源250から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層246側から照射される。読取光L1は、透明線状電極246aを透過して電荷蓄積層343近傍の記録用光導電層242に照射され、その読取光L1の照射により発生した正の電荷が線状の電荷蓄積層343へ引き寄せられて再結合する。そして、もう一方の負の電荷は、透明線状電極246aへ引き寄せられ、透明線状電極246aに帯電した正の電荷及び透明線状電極246aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極246bに帯電した正の電荷と結合する。これによりチャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
上述したX線画像検出器360を用いた場合においても、複数の縞画像信号の取得方法及び位相コントラスト画像の生成方法は上記各例と同様である。
また、上記各例においては、X線画像検出器340の電荷蓄積層343を、完全に線状に分離して形成するようにしたが、これに限らず、たとえば、図42に示すように、平板形状の上に線状のパターンを形成することによって格子状に形成するようにしてもよい。
次に、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例を示す。
図43は、本例の構成が具備する放射線画像検出器の模式的な構成例を示す。
上記各例では、第2の吸収型格子がFPDとは独立して設けられているが、上記各例のFPDとして、特開平2009−133823号公報に開示された構成のX線画像検出器を用いることにより、前述した格子パターンとしての第2の吸収型格子を用いることなく、格子パターンを具備することができる。
X線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを画素毎に備えた直接変換型とされており、その電荷収集電極は、第1の方向にそれぞれ延伸しかつ第1の格子31により形成された放射線像の縞状パターンの周期と実質的に一致するピッチで配列された複数の線状電極を互いに電気的に接続してなる複数の線状電極群を有する。これらの線状電極群は、互いに位相が異なるように線状電極のピッチよりも短いピッチで位置がずれた状態に配置されている。ここで、格子パターンは、複数の線状電極群の各々により構成されている。
このようにX線画像検出器を構成することにより、第2の吸収型格子が不要となるため、コスト削減とともに、撮像部のさらなる薄型化を図ることができる。また、一度の撮影で複数の位相成分の縞画像を取得することができるため、縞走査のための物理的な走査が不要となる。
図43に示すように、画素120が、x方向及びy方向に沿って一定のピッチで2次元配列されており、各画素120には、X線を電荷に変換する変換層によって変換された電荷を収集するための電荷収集電極121が形成されている。電荷収集電極121は、第1〜第6の線状電極群122〜127から構成されており、各線状電極群の線状電極の配列周期の位相がπ/3ずつずれている。具体的には、第1の線状電極群122の位相を0とすると、第2の線状電極群123の位相はπ/3、第3の線状電極群124の位相は2π/3、第4の線状電極群125の位相はπ、第5の線状電極群126の位相は4π/3、第6の線状電極群127の位相は5π/3である。
第1〜第6の線状電極群122〜127はそれぞれ、y方向に延伸した線状電極をx方向に所定のピッチp2で周期的に配列したものである。この線状電極の配列ピッチp2の実質的なピッチp2’(製造後の実質的なピッチ)と、電荷収集電極121の位置(X線画像検出器の位置)におけるG1像のパターン周期p1’と、x方向に関する画素120の配列ピッチPとの関係は、上記例と同様に、式(9)で表されるモアレ縞の周期Tに基づき、式(10)を満たす必要があり、更には、式(11)を満たすことが好ましい。
更に、各画素120には、電荷収集電極121により収集された電荷を読み出すためのスイッチ群128が設けられている。スイッチ群128は、第1〜第6の線状電極群121〜126のそれぞれに設けられたTFTスイッチからなる。第1〜第6の線状電極群121〜126により収集された電荷を、スイッチ群128を制御してそれぞれ個別に読み出すことによって、一度の撮影により、互いに位相の異なる6種類の縞画像を取得することができ、この6種類の縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成することができる。
このような構成のX線画像検出器を用いることにより、撮像部から第2の吸収型格子が不要となるため、コスト削減とともに、撮像部のさらなる薄型化を図ることができる。また、本例では、一度の撮影で複数の位相成分の縞画像を取得することができるため、縞走査のための物理的な走査が不要となり、上記走査機構を排することができる。なお、電荷収集電極の構成には、上記構成に代えて、特開平2009−133823号公報に記載のその他の構成を用いることも可能である。
図44は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例を示す。
前述した各X線撮影システムによれば、これまで描出が難しかったX線弱吸収物体の高コントラストな画像(位相コントラスト画像)が得られるが、更に、位相コントラスト画像と対応して吸収画像が参照できることは読影の助けになる。例えば、吸収画像と位相コントラスト画像を重み付けや階調、周波数処理などの適当な処理によって重ね合わせることにより吸収画像で表現できなかった部分を位相コントラスト画像の情報で補うことは有効である。しかし、位相コントラスト画像とは別に吸収画像を撮影することは、位相コントラスト画像の撮影と吸収画像の撮影の間の撮影肢位のズレによって良好な重ね合わせを困難にするのに加え、撮影回数が増えることにより被検者の負担となる。また、近年、位相コントラスト画像や吸収画像の他に、小角散乱画像が注目されている。小角散乱画像は、被写体組織内部の微細構造に起因する組織性状を表現可能であり、例えば、ガンや循環器疾患といった分野での新しい画像診断のための表現方法として期待されている。
そこで、本X線撮影システムは、位相コントラスト画像のために取得した複数枚の画像から、吸収画像や小角散乱画像を生成することも可能とする演算処理部190を用いる。なお、その他の構成については、前述したX線撮影システム10と同一であるので説明は省略する。演算処理部190は、位相コントラスト画像生成部191、吸収画像生成部192、小角散乱画像生成部193が構成されている。これらは、いずれもk=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置で得られる画像データに基づいて演算処理を行う。このうち、位相コントラスト画像生成部191は、前述の手順に従って位相コントラスト画像を生成する。
吸収画像生成部192は、画素ごとに得られる画素データIk(x,y)を、図45に示すように、kについて平均化して平均値を算出して画像化することにより吸収画像を生成する。なお、平均値の算出は、画素データIk(x,y)をkについて単純に平均化することにより行なっても良いが、Mが小さい場合には誤差が大きくなるため、画素データIk(x,y)を正弦波でフィッティングした後、フィッティングした正弦波の平均値を求めるようにしてもよい。また、吸収画像の生成には、平均値に限られず、平均値に対応する量であれば、画素データIk(x,y)をkについて加算した加算値等を用いることが可能である。
なお、被写体がない状態で撮影(プレ撮影)して取得される画像群から、吸収像を作成するようにしてもよい。この吸収像は、検出系の透過率ムラを反映している(グリッドの透過率ムラ、線量検出器の吸収の影響等の情報が含まれている)。そこで、この画像から、検出系の透過率ムラを補正するための補正係数マップを作成することが出来る。被写体がある状態で撮影(メイン撮影)して取得される画像群から、吸収像を作成し、前述の補正係数を各画素にかけることで、検出系の透過率ムラを補正した、被写体の吸収像を得ることが出来る。
小角散乱画像生成部193は、画素ごとに得られる画素データIk(x,y)の振幅値を算出して画像化することにより小角散乱画像を生成する。なお、振幅値の算出は、画素データIk(x,y)の最大値と最小値との差を求めることによって行なっても良いが、Mが小さい場合には誤差が大きくなるため、画素データIk(x,y)を正弦波でフィッティングした後、フィッティングした正弦波の振幅値を求めるようにしても良い。また、小角散乱画像の生成には、振幅値に限られず、平均値を中心としたばらつきに対応する量として、分散値や標準偏差等を用いることが可能である。
なお、被写体がない状態で撮影(プレ撮影)して取得される画像群から、小角散乱画像を作成するようにしてもよい。この小角散乱画像は、検出系の振幅値ムラを反映している(グリッドのピッチ不均一性、開口率不均一性、グリッド間の相対位置ズレによる不均一性等の情報が含まれている)。そこで、この画像から、検出系の振幅値ムラを補正するための補正係数マップを作成することが出来る。被写体がある状態で撮影(メイン撮影)して取得される画像群から、小角散乱画像を作成し、前述の補正係数を各画素にかけることで、検出系の振幅値ムラを補正した、被写体の小角散乱画像を得ることが出来る。
本X線撮影システムによれば、被写体の位相コントラスト画像のために取得した複数枚の画像から吸収画像や小角散乱画像を生成するので、吸収画像や小角散乱画像の撮影の間の撮影肢位のズレが生じず、位相コントラスト画像と吸収画像や小角散乱画像との良好な重ね合わせが可能となるとともに、吸収画像や小角散乱画像のために別途撮影を行う場合に比べて被写体の負担を軽減することができる。
以上説明した各例は、本発明を医療診断用の装置に適用したものであるが、本発明は医療診断用途に限られず、工業用等のその他の放射線検出装置に適用することが可能である。
以上、説明したように、本明細書には、
第1の格子と、
前記第1の格子を通過した放射線により形成される放射線像のパターン周期と実質的に一致する周期を有する格子パターンと、
前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、
前記第1の格子に入射する放射線の進行方向において前記第1の格子よりも前側に配置され、放射線が照射される領域を選択的に遮蔽して分散放射線源を形成する第3の格子と、を備え、
前記放射線の進行方向において前記第3の格子よりも前側に、断熱部材が設けられることを特徴とする放射線撮影装置が開示されている。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記格子パターンは、第2の格子である。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記断熱部材は、前記第3の格子に入射する放射線軸に交差する位置に設けられる。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記断熱部材は、気泡を内包する部材及び赤外線を遮蔽する部材の少なくとも一方を含む。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記断熱部材は、外部から前記第3の格子への振動伝達を防止する防振部材を兼ねる。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記第3の格子は、放射線源に一体に取り付けられる。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
放射線の照射野を制限するコリメータを備え、
前記断熱部材は、前記コリメータと同一の筐体に保持される。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記第3の格子を冷却する冷却手段を備える。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記冷却手段は、空冷手段である。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記空冷手段において前記第3の格子を冷却する空気流の方向は、前記第3の格子の複数の放射線遮蔽部の延伸方向に平行とされる。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記空冷手段において前記第3の格子を冷却する空気は、前記第3の格子の少なくとも前記断熱部材側で当該第3の格子に沿って流れる。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記空冷手段は、放射線源からの熱の対流において低温側となる位置に、外部空気を取り入れる空気導入口を有する。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記空冷手段は、複数の前記空気導入口を有し、
放射線源からの熱の対流において低温側の空気導入口が開放されると共に、高温側の空気導入口が閉塞される。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記空冷手段は、放射線源からの熱の対流において低温側に配置される複数の前記空気導入口を有し、
前記第3の格子との距離が近い空気導入口が開放されると共に、前記第3の格子との距離が遠い空気導入口が閉塞される。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記断熱部材を介して前記第3の格子に向けて放射線を照射する放射線源を更に備える。
また、本明細書に開示された放射線撮影装置においては、
前記放射線源は、電子を放出する陰極と、前記陰極から放出された電子が衝突する陽極と、前記陽極を回転させて前記陽極における電子の衝突領域を変化させる回転駆動手段とを有する。
また、本明細書には、
前述した放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置の前記放射線画像検出器により検出された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算処理部と、を備える放射線撮影システムが開示されている。
また、本明細書に開示された放射線撮影システムにおいては、
前記放射線撮影装置の前記複数の空気導入口を放射線の照射方向に応じて開閉する制御を行う導入口開閉制御部と、を備える。