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JP5048486B2 - アポリポタンパク質a1の模倣物とその使用 - Google Patents

アポリポタンパク質a1の模倣物とその使用 Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2004年7月16日に受理された米国仮特許出願第60/588,722号の利益を主張するものであり、その出願の全内容を参照として本明細書中に引用しておく。
異常な脂質値に関連又は由来する心血管、末梢血管、及び脳血管等の血管疾患は、文明国における死亡及び障害の主な要因であり、特に高齢者を苦しめるものである。このような病気は、米国を含む豊かな国における主要な死亡要因であり、米国では、毎年心血管疾患によって全死亡者数の半分を上回る100万人近い人々が死亡し、毎年約5万人が心血管疾患のために入院する。
動脈硬化症とは、肥厚し弾性のなくなった動脈壁を特徴とする全ての疾患を指す。この内最もよく見られる血管疾患である冠動脈疾患のアテローム性動脈硬化症が、最も強い影響力を有する。通常、血管内壁は、血液がスムーズに流れるように比較的なめらかである。ありふれた血管疾患であるアテローム性動脈硬化症においては、コレステロール、脂肪性物質、カルシウム及び脂質入りマクロファージを内包した黄色いプラーク(アテローム)が、大動脈と中動脈の内膜及び内部中膜に沈着する。プラークは、血管の閉塞と血栓を生じさせる。すると重要な生体内器官に十分な血液が供給できなくなり、結果として高血圧を伴う、心臓発作、脳卒中又は腎不全等の機能不全が起こる。アテローム性動脈硬化症は、ほとんどの冠動脈疾患において見られる。
アテローム性動脈硬化のごく初期の病変 (脂肪線条)では、血管内皮下に単球が侵入する。同時に、低比重リポタンパク質コレステロール("LDL") が内皮下に溜まり、酸化される。単球は、酸化変性したLDLを取り込み、マクロファージへと分化し、そこで安定化する。このようなマクロファージ、又は泡沫細胞が大きくなり、破裂すると血管平滑筋細胞(“VSMC”)から繊維成分が分泌され、プラークの形成に貢献する。アテローム性動脈硬化症は、動脈壁のVSMCの一部が異常に増殖すると同時に、血管内膜中に侵入、拡散し、血流を妨げ、ひいては局所的な血栓によって血管を閉塞してしまう過剰増殖性の疾患だと考えられている。このような閉塞によって、その動脈に依存する組織が、死んでしまうこともある。
LDLレベルの上昇は、一般に好ましくなく、健康上有害であると考えられている一方、HDLレベルの上昇はアテローム性動脈硬化を防ぐのによいと考えられている。HDLコレステロールは、しばしば“善玉”コレステロールと言われるが、これは、低比重リポタンパク質 (LDL) と冠状動脈性心臓病の間にある正の相関関係と少なくとも同程度に強い負の相関関係が、血中HDL 濃度と冠状動脈性心臓病の間にあるためである。アポリポタンパク質A-I (“アポA-I”) 及びA2は、HDLを構成する主要なアポタンパク質であり、コレステロールを動脈から肝臓に輸送して異化・排出させる働きを有するために抗アテローム性と考えられている。非特許文献1を参照。アテローム性動脈硬化症の治療には、HMG-CoA還元酵素阻害剤 (スタチン)、ニコチン酸、胆汁酸分離剤、又はフィブラート系薬剤といったコレステロール合成を阻害するような薬剤によるLDLコレステロールの管理と減少が含まれる。しかし、これらの医薬品には副作用がある。スタチンは、様々な度合いの筋毒性を有することが知られており(非特許文献2)、ニコチン酸は通常、血管拡張効果を誘導する。フィブラート系薬剤は、肝酵素の上昇、消化器系副作用、及び横紋筋融解症を含む多くの有害効果と関係がある(非特許文献3)。
クラスA両親媒性ヘリックス構造のアポA-Iペプチドアナログの幾つかは、アポA-I配列中の22残基がタンデムに8個並んだ繰り返し配列に由来するものであり(アポA-I ペプチド模倣物)、アテローム性動脈硬化症の亢進に対して拮抗的な効果を有することが示されている。アポA-IのC末部分 (193 から243残基)は、タンパク質-脂質間相互作用に関与していると考えられている。アポA-Iペプチド模倣物は、LDL からリン脂質添加分子を除去し、低比重リポタンパク(LDL) の酸化を防ぐ高比重リポタンパク (HDL)の作用を増強する。しかし、HDL を介したメカニズムとは別に、アポA-Iペプチド模倣物にLDLを酸化から保護する作用があるのかについては明らかではない。一般に、このようなペプチドは、生体内で速やかに分解されてしまう。
18個のL-アミノ酸を含むペプチド模倣物であるL-4F、及びそのD-アミノ酸アナログであるD-4Fは、LDLの酸化、及びLDLによる単球走化活性の誘導を防ぐことが既に示されている。さらに、D-4F は経口投与で安定であり、LDL受容体欠失マウスにおけるアテローム性動脈硬化の病変を80%近く縮小させることが示されている。非特許文献4。L- 4F及びD-4Fの1次アミノ酸配列は、 Ac-D- W-F-K- A-F- Y-D-K- V- A-E- K-F-K-E-A-F-NH2 (配列番号1)である。この18残基は、クラスA両親媒性のヘリックス構造を形成する(非特許文献5)。L-4Fは、HDL を介する過程とは別のメカニズムによって、LDLとリン脂質の酸化を阻害する。
それにも関わらず、アテローム性動脈硬化症等の脂質が原因の血管疾患の亢進、さらに一般的にはコレステロールの上昇やHDLの低下といった脂質代謝異常を、治療、予防、又は改善するためには、医薬品の改良がなお必要である。
Furchart, J.と Ailhaud, G. (1992) Clin. Chem. 38:793-797 Rosenson, (2004) Am. J. Med. 116(6):408-16 Muscari 等、(2002) Cardiology 97(3): 115-21) Navab 等、(2002) Circulation 105:290-292 Segrest等、(1974) FEBS Lett. 38:247-253
本発明は、アポリポタンパク質A-I (“アポA-I”)に由来するペプチド模倣物を提供し、これは、脂質値の改変等を通して血中コレステロールレベルと血管疾患を改善する際に有用である。ある実施形態においては、ペプチド模倣物は、D-アミノ酸配列F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D (配列番号3)を含むペプチドと実質的に類似した3次元構造をとる。都合のよいことに、本発明の化合物は、血中脂質が原因のアテローム性動脈硬化症、高脂血症、PAD、CHD及び脳血管疾患といった血管疾患の危険性がある患者又はその症状を示す患者に予防的に投与することができる。本発明の化合物は、ペプチド模倣物であり、特にレトロ・インバーソ(retro-inverso)型の配置を有するアミノ酸ポリマーである。
例えば、他の化合物の抗アテローム作用を求める、動物及び動物モデルでリポタンパク質-受容体間の相互作用を調べる、及び脂質代謝のメカニズムを解明する(脂質代謝研究に用いる動物モデルの同定を含む)際に、ここで開示されたペプチド模倣物を調査研究の手段として使用することは、本発明に含まれる。
開示されたペプチド模倣物を医薬品として使用することもまた、本発明に含まれる。加えて、ここで開示された病気又は症状を治療する薬剤を製造する際に、ここで開示されたペプチド模倣物を使用することは本発明に含まれる。
I. 概観
血管系の病気と、高いコレステロールレベルといった異常な脂質値の間には強い相関関係があり、異常な脂質値とは、特に血中及び心血管系一般におけるLDLコレステロールの上昇とHDLコレステロールの低下である。脂質値を改め、循環している血液内や病変部におけるコレステロール量を制御することは、アテローム性動脈硬化の発症及びそれに続く病状を低減するのに効果的であると考えられている。
本発明は、アポリポタンパク質A-Iのペプチド模倣物を提供し、これは脂質値を改め、血中コレステロールレベルを改善するのに有用である。本発明は、さらに一般的に、心血管中の異常に高いコレステロールレベルを治療する方法と組成物を提供することを目指すものである。
II 定義
“アミノ酸残基”という用語は、公知のものである。一般的に、ここで使用されるアミノ酸及び保護基を示すための略号は、IUPAC−IUBコミッション・オブ・バイオケミカル・ノーメンクレーチュアー(Commission on Biochemical Nomenclature)に基づくものである (Biochemistry (1972) 11:1726-1732参照)。ある実施形態において、本発明の方法で使用されるアミノ酸は、タンパク質中に存在する天然のアミノ酸、又はアミノ基とカルボキシル基を含むアミノ酸から天然に生じるタンパク同化産物又は異化産物である。特に、適切なアミノ酸側鎖は、以下のアミノ酸側鎖から選ばれるものを含む。すなわち、グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンである。
“アミノ酸残基”という用語には、さらに、ここで取り上げる任意の特異的アミノ酸のアナログ、誘導体及び同族体や、C末端又はN末端を保護されたアミノ酸誘導体(例えば、C末端又はN末端の保護基により修飾されたもの)が含まれる。例えば、環化のためのカルボキシル基、アミノ基、又は他の活性のある官能基を保持しつつ側鎖の長さが変化したアミノ酸アナログや、適切な官能基のついた様々な側鎖を有するアミノ酸アナログを使用することは、本発明の視野に入る。例えば、当化合物には、シアノアラニン、カナバニン、ジェンコリン酸(djenkolic acid)、ノルロイシン、3- ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5-ヒドロキシトリプトファン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、又はジアミノ酪酸等のアミノ酸アナログが含まれる。他にも、適切な側鎖を有する天然のアミノ酸代謝産物、又は前駆体が、同業者によって認識されると考えられ、それらは本発明の範囲に含まれるものとする。
ここで使用する“治療剤”及び“化合物”という用語には、タンパク質及び非タンパク質が両方含まれる。治療剤は、小さな有機分子、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド複合体、ペプチド模倣物、非ペプチド性治療剤、又はポリヌクレオチドでもよい。
ここで使用する "改善する"とは、症状を緩和する、軽減する、又は低下させる、あるいは病気の症状の発現回数を減らすことを意味する。
“アポタンパク質”とは、リポタンパク質の外殻にある特別なタンパク質である。リポタンパク質には、異なるアポタンパク質が様々な量含まれているが、全てのアポタンパク質がリポタンパク質の代謝に重要な役割を果たす。リポタンパク質粒子上のアポタンパク質には、特異的な細胞表面受容体と相互作用するものもある。一方、リポタンパク質の代謝に関わる酵素を活性化又は不活性化するものもある。10個の主要なアポタンパク質が単離、同定されており、これらは肝臓及び小腸で、合成、分泌される。あるリポタンパク質には、粒子クラスのある種が含まれる。例えば、アポリポタンパク質 ("アポ") B-100はVLDL、 IDL、及びLDLと相互作用し、一方、アポ AはHDLと相互作用する。アポB-100は、血液からコレステロールを除去する働きを助け、アポA は、HDLが組織からコレステロールを取り除くのを助ける。
アポA-I は、HDLの主要なアポタンパク質であり、HDLの通常の形成に必要である。ほとんどの血中HDLの前駆体は、アポA-I とリン脂質を含む円板状の粒子であり、プレ(pre)-β1 HDLと呼ばれる。遊離型コレステロールの行き来を可能にするようなHDLのアポ A-I とクラスBスカベンジャー受容体タイプIとの相互作用を通して、円板状のプレ(pre)-βl HDL は、動脈壁のマクロファージといった組織細胞膜から遊離型(エステル化されていない)コレステロールを獲得することができる。プレ(pre)-βl HDLによって獲得された遊離型コレステロールは、エステル化により非極性化されHDL の内部に取り込まれる。“アテローム性動脈硬化症”は、動脈(内皮細胞)の内壁に生じた傷から始まると考えられている。一度内壁に傷がつくと、様々な生物学的過程が絡まって、プラークの蓄積をもたらす。できた傷に反応して、そこにマクロファージが蓄積し、これが内膜下に移動する。さらに、血中の脂肪性物質を貪食したマクロファージは、泡沫細胞に変化する。泡沫細胞、及び増殖下の平滑筋細胞といった他の物質の蓄積は、プラーク形成に貢献し、最終的には動脈壁に隆起性病変を形成する。隆起性病変は脂肪性物質を吸収し続けるため、時間が経つにつれ蓄積したプラークが血管内腔を狭め血液の流れを悪くする。さらに、プラークの蓄積は血管壁を硬化し、その弾力性を失わせ得るため、血流に対する抵抗が高まり、血圧が上昇し得る。つまり、血管疾患は、多くの場合中年以降になるまで自覚症状のない進行性の疾患と考えられる。
プラークの蓄積により、血管内腔の狭窄、血餅の生成がもたらされ、体内器官に十分な血液を供給できなくなる。この結果、酸素と栄養素の供給不足になり、心臓発作、脳卒中、又は腎不全を含む機能不全、及び高血圧となる。冠動脈内でアテローム性動脈硬化症が起こると(冠動脈疾患 (CAD) 又は冠状動脈性心臓病(CHD))、心臓に対して酸素が欠乏した状態となり、ひいては心臓虚血、 狭心症、心筋梗塞、不整脈といった症状を招く。最終的には、近年における疾病と死亡の主要な原因である心臓発作を引き起こす。アテローム性動脈硬化症が末梢動脈で生じると(末梢動脈疾患(PAD))、足筋肉に対する酸素が欠乏した状態になり、歩行困難を招き最終的には歩行不能となる。
“ED50”という用語は、 薬剤が最大値の50%の反応性又は効果を示す量を意味する。
当方法で治療する際の“有効量”とは、例えばペプチド模倣物の場合、望ましい用量の一部として投与された時に、その摂取によって、アテローム性動脈硬化の病変が形成される頻度又はその個数が阻害される、あるいはそれらに関して予防効果や変化等をもたらすような調製剤中のペプチド模倣物の量を指し、治療の必要な疾患又は望ましい効果にいついて医薬的に許容される標準に従うものである。
“ヘルスケアプロバイダー”という用語は、医療サービスを人や共同体等に提供する個人又は組織を指す。“ヘルスケアプロバイダー”の例としては、医者、病院、高齢者終身ケア共同体、介護ケア施設、亜急性ケア施設、診療所、複数の科を専門とする診療所、独立した救急センター、 在宅ケアを提供する団体、及び様々な健康管理機関がある。
ここで使用する“阻害する”とは、コントロールのサンプルに生じた量と比べて、量が低減することを意味する。好ましい実施形態においては、阻害するとは、量が50%よりも低減する、より好ましくは75%よりも低減する、さらには100%低減することを意味する。
ここで使用する“説明書”とは、筆記された、あるいは可聴の医薬組成物の使用説明書を含む文書又は記録済みメディアを意味する。説明書は、ボトル上のラベル、箱に挿入された紙面、箱又はカートン上の印刷物、これらいずれかによって示されるアドレスのウェブサイト上で提供される説明書等を含む。
“LD50”という用語は、被験動物の50%が死んでしまう薬剤の量を意味する。
“脂質”とは、水に不溶の脂肪性物質であり、脂肪、油、蝋、及びこれらの関連化合物が含まれる。これらは、血液中で作られるか(内因性)、又は食物等から摂取され得る(外因性)。脂質は、正常な体の機能に必要不可欠であり、外因性又は内因性いずれであれ、細胞で使用するためには輸送された後に放出されなければならない。細胞に使用される脂質の生成、輸送、及び放出のことを、脂質代謝と言う。脂質には幾つかのクラスがあるが、2つの主要なクラスはコレステロールとトリグリセリドである。コレステロールは、食事から摂取され、かつ体内のほとんどの器官及び組織の細胞、主には肝臓において合成され得る。コレステロールは、遊離型、又はより頻繁にはコレステロールエステルと呼ばれる脂肪酸と結合した状態で存在し得る。
コレステロール等の脂質は水に不溶性のため、リポタンパク質と呼ばれる特別な分子で内包しないと、血中を輸送することができない。従って、コレステロールは、リポタンパク質と相互作用した粒子の状態で血流中を循環する。
“リポタンパク質”は、部分的に水溶性の外殻に不溶性の脂質が内包されているような構造を有する球状の化合物である。リポタンパク質のタイプによって、含まれる遊離型及びエステル化されたコレステロール、トリグリセリド、及びアポタンパク質又はアポリポタンパク質の量は異なる。リポタンパク質には、機能、及び脂質とアポタンパク質の含有量が異なる主要な5つのタイプがあり、密度の低いものから順に分類されている。すなわち、 (i) キロミクロン及びキロミクロン・レムナント、 (ii)超低比重リポタンパク質("VLDL")、(iii)中間比重リポタンパク質("IDL")、(iv)低比重リポタンパク質("LDL")、及び(v)高比重リポタンパク質("HDL")である。コレステロールは、リポタンパク質と結合した粒子の状態で血流中を循環する。
酸化変性を受けたLDLは、増大しているプラーク中のマクロファージ上スカベンジャー受容体によって取り込まれ、泡沫細胞の形成をもたらすために、アテロームの発生源となる。ペプチド模倣物におけるアポA-IのクラスA両親媒性領域は、脂質との相互作用を担うところである。本発明のアポA-I ペプチド模倣物は、一般的にLDL上のリン脂質添加分子を取り除き、LDL分子を内皮細胞による酸化に対して耐性化することにより、LDLの脂質値を改める。さらに、本発明のアポA-I 模倣ペプチドは、HDLから酸化コレステロールを取り除き、炎症誘発性HDLを抗炎症性HDLへと変換することによって、HDLの脂質値をしばしば改めると考えられている。
外因性脂質の代謝経路は、以下のようである。すなわち、食事から摂取したトリグリセリドとコレステロールが、キロミクロンによって消化管から血流中へ輸送され、キロミクロンがトリグリセリドを脂肪細胞と筋肉細胞に送達すると、残ったコレステロールは、再利用のためにキロミクロンレムナントによって肝臓に戻される。特に、食事中の脂質は、胃から小腸に入り、分解され小腸の上皮から吸収される。するとそこで、キロミクロン内に組み込まれて血流に入る。一度キロミクロンが循環血に入ると、キロミクロン中の大部分のトリグリセリドは、細胞及び筋肉細胞の毛細血管壁に存在する酵素であるリポタンパク質リパーゼによって放出される。大部分のトリグリセリドの使用と貯蔵は、脂肪細胞と他の末梢細胞で行われる。残ったトリグリセリドと食事由来コレステロールの大部分は、キロミクロンレムナントに組み込まれて肝臓に戻る。そこで、アポタンパク質を介した特異的な受容体メカニズムにより肝細胞に取り込まれ、キロミクロンレムナントは、構成成分へと分解される。肝臓は、得られたコレステロールを用いて胆汁酸とVLDLを合成する。
内因性脂質の代謝経路は、体内で合成されたコレステロールを生成、輸送、放出する経路である。コレステロールは全ての細胞で生成され得るが、その70パーセントは肝臓で合成される。従って、以後の議論では主に肝臓で合成されるコレステロールに焦点を当てる。肝臓で合成されたトリグリセリドは、コレステロール(肝臓で合成、又はキロミクロンレムナント及びHDL粒子によって送達されたもの)、及びリポタンパク質と結びつき、VLDLを形成して血中に入り、脂肪細胞や筋肉細胞といった末梢細胞に輸送される。リポタンパク質リパーゼはエネルギー源及び貯蔵物質として使われる大部分のトリグリセリドをVLDLから取り除く。細胞で使用するためにトリグリセリドが放出されると、VLDL はIDLに転換し、これは肝臓によって血中から除かれるか、あるいはLDLに変換される。コレステロールが豊富なLDL は、コレステロールを細胞に供給するか、さもなくば、血中から取り除かれる。コレステロールが過剰にあると、血管壁の細胞がコレステロールを取り込み、アテローム性動脈硬化症を導く要因となる。肝臓と小腸で作られたHDLは、細胞から過剰なコレステロールを受け取り、これを肝臓に戻して体内からコレステロールを取り除く。HDLはまた、コレステロールをVLDL、IDL又はLDLに転換することにより間接的にコレステロールを肝臓に戻す働きもする。
“脂質値”の改善には、以下の現象のうちの1つ又は複数が含まれる。すなわち、リポタンパク質の血管膠着性の低下、アテローム性プラーク量の減少 (たとえ、血中のLDL 及び/又はHDLの濃度に大きな変化がなくても)、HDL又はLDL粒子の酸化能力の低下、アテローム性動脈硬化症の緩解(例えば、頸動脈の血管造影又は超音波審査で測定することにより分かる)、及び心事故の減少である。
“ペプチド模倣物“は、リン酸化、キャッピング、脂肪酸修飾といったアミノ酸鎖の任意の修飾型を含み、非天然の主鎖及び/又は側鎖構造が含まれる。以下に述べるように、ペプチド模倣物には、アミノ酸鎖と非ペプチド性小分子を構造的に連結したものが含まれる。一般的に、ペプチド模倣物は、ペプチド様ポリマーの単位構造を有するものとして認識できる。ペプチド模倣物は、天然のペプチドが結合する標的分子のいずれにも結合する機能を持ち得る。
“予防”という用語は、その技術において承認されており、高コレステロール血症といった病気の再発又は発症といった状況で使用される際に当業者によく理解される用語である。さらに、組成物を投与しなかった場合と比べて、患者の医学的症状が出る頻度を減らす又は発症を遅らせるような組成物の投与もこの用語に含まれる。
当方法によって治療される“患者”又は“病人”は、人又は人以外の動物のいずれかを意味する。
ここで使用する“治療”とは、病気の進行を遅らせる、止める又は後退させることを意味する。好ましい実施形態において、“治療”とは、病気が消滅する時点までその進行を後退させることを意味する。
ここで使用する“不必要なコレステロール”という用語は、低比重リポタンパク質("LDL") コレステロール、及び/又はHDL/LDL比が健康上望ましくない値であるLDLと高比重リポタンパク質("HDL")コレステロールの混合物を意味する。LDL 及びHDLの意味は、当業者に公知である。一般的に、LDLコレステロール値が高い(180 mg/dlより上)のは望ましくないが、ある程度の量のHDLコレステロール(35 mg/dlより上)は循環器系にとってむしろ有益なものとなる。特に、高濃度のLDL (180 mg/dlより上) と低濃度のHDL (35 mg/dlより下) は、アテローム性動脈硬化症の進行において重要な役割を果たすことが示されている。脳卒中、及び高コレステロール血症といった他の血管疾患もまた、HDL/LDL比が良くないと悪い影響を受ける。一般的に、総コレステロール値が 200 mg/dlより高く、特にLDL値が160 mg/dlより高い場合に“高コレステロール血症”と診断される。これは、常染色体上の優性遺伝病 (家族性高コレステロール血症)によってなることもある。高コレステロール血症は、血管拡張を阻害し、高血圧と血液の循環障害を導く。従って、各タイプのリポタンパク質の量を制御することは、心血管の健康を維持するために、効果的かつ必要なことである。
“アミン”及び“アミノ”という用語は、その技術において承認されており、置換されないアミンと置換されたアミンの両方を指す。例えば、その一部は以下の一般式で表すことができる。
Figure 0005048486
式中、R9、R10及びR'10はそれぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基を指し、-(CH2)m-R8、又はR9とR10は、隣接したN 原子と共に、4から8員環の復素環を構成する。R8は、アリル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロ環又はポリ環を指す。 mは、0、又は1から8までの整数である。好ましい実施形態においては、R9 又はR10の一方のみがカルボニル基であり、例えば、R9、R10及び窒素原子がイミドを形成することはない。より好ましい実施形態においては、“アミン”という用語に、例えば、R9 及びR10の一方がカルボニル基であるアミドは含まれない。さらに好ましい実施形態においては、R9及びR10 (及び任意にR'10) はそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、又は-(CH2)m-R8を表す。 従って、ここで使用する“アルキルアミン”という用語は、前記で定義されたアミンの内、アルキル基で置換されたもの又は置換されないもの、すなわち、R9及びR10の少なくとも1つがアルキル基であるものを意味する。
“アミド”という用語は、アミノ基で置換されたカルボニル基としてその技術において承認されており、以下の一般式で表される部分を含む。
Figure 0005048486
式中、R9とR10は前記で定義されたものと同様である。アミドの好ましい実施形態では、比較的不安定なイミドは含まれないだろう。ここで使用される“保護基”という言い方は、反応性の高い官能基を望ましくない化学転換から保護する一時的な置換基を意味する。このような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、及びアルデヒドのアセタールとケトンのケタールがそれぞれある。保護基化学の分野については、(Greene, T.W.;Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 第2版;Wiley:ニューヨーク、1991)に総説が書かれている。
III. 例示的実施形態
化合物
ペプチド模倣物とは、ペプチド及びタンパク質を基にした化合物、又はこれらから由来した化合物のことである。通常、本発明のペプチド模倣物は、例えば、非天然アミノ酸、構造制限、等価置換等を用いて、1つ又は複数のアミノ酸残基を構造的に修飾することによって得られるものである。当ペプチド模倣物は、合成したペプチド及び非ペプチド性物質を構造的につなげたものである。
このようなペプチド模倣物は、非加水分解性のような特性(例えば、相当するペプチドコポリマーが分解してしまうようなプロテアーゼ、又は他の生理的条件に対する安定性の増大)を持ち、特異性及び/又は有効性が増大する。実例としては、本発明のペプチドアナログは、例えば以下のものを用いて創ることができる。すなわち、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger 等、"Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall 編、ESCOM Publisher: ライデン、オランダ、1988参照)、置換されたγ-ラクタム環 (Garvey等、 "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:ライデン、オランダ、1988, pl23)、C-7模倣物(Huffman等、 "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:ライデン、オランダ、1988, p. 105)、ケトメチレン疑似ペプチド(Ewenson等、(1986) J. Med. Chem. 29:295; and Ewenson等、"Peptides: Structure and Function (第9回American Peptide Symposium会報)," Pierce Chemical Co. ロックランド、イリノイ州、1985)、βターン構造のジペプチドコア(Nagai等、(1985) Tetrahedron Lett. 26:647; 及び Sato等、(1986) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1:1231)、β-アミノアルコール (Gordon等、(1985) Biochem. Biophys. Res. Commun. 126:419; 及び Dann等、(1986) Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:71)、ジアミノケトン(Natarajan 等、(1984) Biochem. Biophys. Res. Commun. 124:141)、及び修飾化メチレンアミノ (Roark等、"Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall 編、ESCOM Publisher:ライデン、オランダ、1988、p134)。一般的には、Session III: Analytic and synthetic methods、"Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall編、ESCOM Publisher:ライデン、オランダ、1988、も参照される。
ペプチドのアミド結合の代用となるものが多く開発されてきた。よく利用されているアミド結合の代用物には、以下の基が含まれる。すなわち、 (i) トランスオレフィン、(ii) フルオロアルケン、(iii) メチレンアミノ、(iv)ホスホンアミド、及び (v)スルホンアミドである。
Figure 0005048486
代用物の例
Figure 0005048486
加えて、主鎖のペプチド構造がより本質的に変化したペプチド模倣物も使用される。この分類に入るペプチド模倣物には、(i) レトロ・インバーソ(retro-inverso)型アナログ、及び (ii) N-アルキルグリシン型アナログ(いわゆるペプトイド)がある。
Figure 0005048486
さらに、ペプチド模倣物コポリマーの開発のために、組み合せ化学の手法が導入されている。例えば、いわゆる“ペプチド・モルフィング(peptide morphing)”戦略の一実施形態においては、広範なペプチド結合代用物を含むペプチドアナログのライブラリーを無作為に作製することに焦点が当てられている。
Figure 0005048486
本発明の好ましい実施形態においては、ペプチド模倣物は、レトロ・インバーソ(retro-inverso)型アナログである。レトロ・インバーソ(retro-inverso)型アナログは、公知の方法に従って、L-アミノ酸主体のペプチドを合成する方法と類似したやり方で作ることができる。より具体的には、Sisto 等の米国特許第4,522,752号に記載の方法を参照。HPLC又は他の適切なクロマトグラフィー法によって、その最終生成物又は中間生成物を精製することができる。
他の例示的な実施形態においては、ペプチド模倣物を、レトロ・エナンチオ(retro- enantio)型アナログとして得ることができる。このようなレトロ・エナンチオ(retro- enantio)型アナログは、市販のD-アミノ酸 (又はそのアナログ)、及び標準的な固相・液相ペプチド合成技術を用いて合成することができる。
さらに他の例示的な一実施形態においては、トランスオレフィン誘導体を作ることができる。ペプチドのトランスオレフィン型アナログは、Y.K. Shue 等(1987) Tetrahedron Lett. 28:3225に記載の方法、及び他の公知の方法に従って合成することができる。引用した工程、又は利用可能な他の工程には、使用する試剤の性質に応じて、種々のバリエーションが必要となり得ることが認められるだろう。
さらに前記の方法で合成した疑似ジペプチドを他の疑似ジペプチドにつなぎ、アミド結合の機能の代わりにオレフィンの機能を有する疑似ジペプチドを作製することが可能である。例えば、アミド結合の代わりにオレフィン結合を残基間に有するペプチドアナログを生成する標準的な技術を用いて、あるジペプチド配列に対応する疑似ジペプチドを作り、共につなぐことができる。
ペプチド模倣物誘導体のさらに他のクラスには、ホスホン酸誘導体がある。このようなホスホン酸誘導体の合成には、既知の合成技術を適用することができる。例えば、Loots等、"Peptides: Chemistry and Biology," (Escom Science Publishers、ライデン、1988、p. 118);Petrillo等、"Peptides: Structure and Function (第9回American Peptide Symposium会報)," Pierce Chemical Co. ロックランド、イリノイ州、1985)を参照。
他の実施形態においては、炭水化物又は脂質部を導入することにより、修飾が行われてもよい。このような修飾もまた、様々な溶媒中におけるペプチドの溶解度を変化させ、おかげで適切な医薬組成物として調製することが可能になる。修飾に用いられる脂質基には、ファルネシル基及びミリストイル基がある。修飾に用いられる炭水化物基には、天然に生じる任意の単糖又はオリゴ糖、及び/又は、合成した糖及び糖アルコールがあり、例えばグルコース、ガラクトース、ラムノース、マンノース、アラビノース、及び他の糖、及びそれぞれに対応したアルコール等が含まれる
本発明の化合物は、少なくとも15アミノ酸残基、より好ましくは18アミノ酸残基を含む。
ある実施形態においては、本発明のペプチド模倣物は、D-アミノ酸配列、F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D (配列番号3)を含むペプチドと本質的に同様の3次元構造を有する。特定の実施形態においては、このペプチドは、天然のペプチドに対するレトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチドのようにアミノ基からカルボキシル基の方向に、アミド結合以外の主鎖結合を少なくとも1つ有する、あるいはアミド結合以外の主鎖結合を少なくとも1つ有する。
例示的実施形態においては、ペプチド模倣物は、配列番号3又は配列番号2に、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%一致している。不一致なアミノ酸残基は、天然又は非天然に生じ得る。“一致率”という用語は、2つのアミノ酸配列、又は2つのヌクレオチド配列間の配列がどれくらい一致しているかを指す。比べやすいように並記した各配列の座位を比較することで、一致の程度を決めることができる。比較する配列の等価な位置に同じ塩基又はアミノ酸があれば、その分子はその位置において同一であり、等価な位置に同じ又は類似したアミノ酸残基(例えば、立体配置及び/又は電気的性質が類似)があれば、その分子はその位置において相同(類似)であると言える。相同性、類似性、又は一致性のパーセントは、比較する配列間の等価な位置における一致したアミノ酸又は類似したアミノ酸の数から導き出されるものである。アラインメントには、FASTA、BLAST、又はENTREZを含む様々なアルゴリズム及び/又はプログラムが使われてもよい。FASTA とBLASTは、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン州立大学、マディソン、ウィスコンシン州)の一部として利用可能であり、例えば、デフォルト値をセットして使用することができる。ENTREZは、ベセズダ、メリーランド州の米国国立生物情報センター、国立医学図書館、国立衛生研究所で提供されている。一実施形態においては、2つの配列の一致率は、ギャップペナルティ1のGCGプログラムによって決めることができる。例えば、各アミノ酸のギャップは、2つの配列間における1アミノ酸又は1ヌクレオチドのミスマッチと同程度の評価にする。
前記実施形態と部分的に重複可能な他の一実施形態においては、配列番号3又は配列番号2のペプチド模倣物中のアミノ酸は、保存的アミノ酸残基で置換される。“保存的アミノ酸置換”という用語は、あるグループのアミノ酸から同じグループの別のアミノ酸への(理論上又実際の)置換を指す。個々のアミノ酸に共通する性質を明らかにするための機能的方法は、相同な生物の対応するタンパク質間における標準化されたアミノ酸変化の頻度を解析することである(Schulz, G. E. とR. H. Schirmer., Principles of Protein Structure、Springer- Verlag)。このような解析によると、アミノ酸のグループとは、グループ内のアミノ酸同士の交換頻度が高く、それ故にタンパク質の全体的な構造に与える影響が互いに類似しているであろうものと、定義されてもよい(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer- Verlag)。このやり方で定義されるアミノ酸グループの1つの実施例としては、(i) GIu とAsp、Lys、Arg 及びHisから成る電荷を有するグループ、(ii) Lys、Arg 及びHisから成る正の電荷を有するグループ、(iii) GIuとAspから成る負の電荷を有するグループ、(iv) Phe、TyrとTrpから成る芳香族アミノ酸のグループ、 (v) HisとTrpから成る窒素環グループ、(vi) VaI、 LeuとIleから成る大きな脂肪族の非極性グループ、(vii) Met とCysから成る僅かな極性を有するグループ、(viii) Ser, Thr, Asp, Asn, GIy, Ala, GIu, GIn 及びProから成る小さい残基のグループ、(ix) VaI、 Leu、Ile、Met及びCysから成る脂肪族のグループ、及び(x) SerとThrから成る水酸基を有する小さいアミノ酸のグループがある。
好ましい実施形態においては、本発明のペプチド模倣物は、以下のD-アミノ酸配列のレトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチドである:
F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D (配列番号3)
ここで、各文字は、慣習的なアミノ酸の一文字表記を表す。ただし、アミノ酸はD-アミノ酸である。
より好ましい実施形態においては、本発明のペプチド模倣物は、以下のD-アミノ酸配列のレトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチドである:
Ac-F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D-NH2 (I) (配列番号2)
ここで、各文字は、慣習的なアミノ酸の一文字表記を表す。ただし、アミノ酸はD-アミノ酸である。
他の実施形態においては、本発明のペプチド模倣物は(I)のアナログであり、このアナログでは、1つ又は複数のD-アミノ酸残基が、置換後も元の残基の空間的性質、及びイオン的又は非イオン的性質を変えないような他のD-アミノ酸残基や他の非天然の残基で置換されている。
(I)のレトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチドを含む本発明のペプチド模倣物において、以下のような保護基を用いて、そのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端を保護するような修飾を行ってもよい。すなわち、アセチル基、CH3-(CH2)n-CO-基、アミド基、Fmoc基、t-ブトキシカルボニル基(t-BOC)、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボキシル基、9-フルオレンカルボキシル基、9-フルオレノン-1-カルボキシル基、ベンジルオキシカルボニル基、キサンチル基(Xan)、トリチル基(Trt)、4-メチルトリチル基 (Mtt)、4-メトキシトリチル基 (Mmt)、 4-メトキシ- 2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル基(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル基 (Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル基(Mbh)、トシル基(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-サルフォニル基(Pmc)、4-メチルベンジル基(MeBzI)、4-メトキシベンジル基(MeOBzI)、ベンジルオキシ基(BzIO)、ベンジル基(BzI)、ベンゾイル基(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルホニル基(Npys)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル基(Dde)、2,6-ジクロロベンジル基(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル基(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル基(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル基 (Bom)、シクロヘキシルオキシ基 (cHxO)、t-ブトキシメチル基(Bum)、t-ブトキシ基 (tBuO)、t-ブチル(tBu)基、及びトリフルオロアセチル基(TFA)、である。nは、0 から12まで変化する整数であり、通常は、0から4といった0から6までの整数である。
ある実施形態においては、本発明のペプチド模倣物は、翻訳後修飾のような修飾をさらに受けてもよい。このような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化があるが、特にこれらに限定されるわけではない。結果として、修飾されたペプチド模倣物には、ポリエチレングリコール、脂質、多糖又は単糖、及びリン酸等の非アミノ酸成分が含まれてもよい。このような非アミノ酸成分がペプチド模倣物の機能にもたらす効果については、実施例に記載の方法を用いて確かめてもよい。
治療組成物
本発明の他の一態様では、許容されたキャリア及び/又は賦形剤と、本発明のペプチド模倣物を医学的に効果の出る量含む医薬組成物を提供する。薬剤として許容されるキャリアには、任意の溶媒、分散溶液又はコーティングが含まれ、これらは生理学的に適合可能であり、ペプチド模倣物の活性を妨げたり、阻害したりしない。キャリアは、静脈注入、筋肉、口腔、腹膜内、経皮、局所、又は皮下を介した投与に適していることが好ましい。薬剤として許容されるキャリアの1つの実施例は、生理的食塩水である。他の薬剤として許容されるキャリア及びそれらの処方は公知であり、一般的には例えばRemington 's Pharmaceutical Science (第18版、Gennaro編、Mack Publishing Co., イーストン、ペンシルバニア州、1990)に記載されている。薬剤として許容される様々な賦形剤は公知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (第4版、Rowe等編、Pharmaceutical Press、ワシントン D. C)に記載されている。組成物は、液体、マイクロエマルジョン、リポソーム、カプセル、錠剤、又は他の適切な剤形の状態で処方することができる。活性成分は、作用する標的部位に到達する前に、生体内環境によって不活性化されないように物質でコーティングされてもよい。
本発明のある実施形態においては、医薬組成物は、徐放性製剤である。本発明のペプチド模倣物は、コポリマーの周囲への放出速度を制御できるように、生物学的に適合可能なポリマー又はマトリックスと混合されていてもよい。放出制御型又は徐放性の組成物には、脂肪親和性のデポー製剤が含まれる (例えば、脂肪酸、蝋、オイル)。ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)でコーティングされた特定の組成物もまた、本発明の視野に入る。本発明の組成物の他の実施形態では、非経口投与、及び肺、鼻腔や口腔を介した投与を含む様々な投与経路のために、特定の剤形、保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤又は浸透増強剤が用いられる。許容されるキャリアには、カルボキシメチルセルロース(CMC)と修飾化CMCがある.
本発明の医薬組成物は、好ましくは滅菌性かつ非発熱性であるのがよく、製造過程又は保管状況化で安定であることが好ましい。
本発明の化合物は、以下の1つ又は複数の物質と組み合わせて使用されてもよいし、あるいはこれらとは別個に、又はこれらとの混合物として使用されてもよい。すなわち、インターロイキン-6、インターロイキン-8等の不要の炎症性分子又は炎症性サイトカインと結合する抗体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、 及び 腫瘍壊死因子α;プロテアーゼ阻害剤のアプロチニンやシクロオキシゲナーゼ阻害剤等の酵素阻害剤;アモキシシリン、リファンピシン、エリトロマイシン等の抗生物質;アシクロビル等の抗ウィルス剤;糖質コルチコチド等のステロイド系抗炎症剤;アスピリン、イブプロフェン、又はアセトアミノフェン等の非ステロイド系抗炎症剤;又はインターロイキン-4やインターロイキン-10等の非炎症性サイトカインである。インターフェロン-β、腫瘍壊死因子、抗血管新生因子、エリトロポエチン、スロンボポエチン、インターロイキン、成熟化因子、走化性因子等の他のサイトカインや成長因子、及び同様の生理学的活性を有するこれらの変異体と誘導体もまた、構成要素として付加されてもよい。
本発明の化合物は、脂質値に異常がみられる糖尿病患者を治療する時に通常用いられる薬剤と組み合わせて使用されてもよい。このような薬剤には、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸、エゼチミブ、胆汁酸分離剤、フィブラート系薬剤、MTP阻害剤、ACAT阻害剤、及びCETP 阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。HMG-CoA還元酵素阻害剤の例としては、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン及びアトルバスタチンがある。胆汁酸吸着剤の例としては、コレスチラミン、コレスチポール及びコレセベラムがある。フィブラート系薬剤の例としては、ジェムフィブロジルとフェノフィブラートがある。
本発明のペプチド模倣物はまた、例えば、利尿薬、β-ブロッカー、カテプシンSの阻害剤、メチルドーパ、α2-アドレナリン作動薬、グアナドレル、レセルピン、β-アドレナリン受容体拮抗薬、α1-アドレナリン受容体拮抗薬、ヒドララジン、ミノキシジル、カルシウムチャンネル拮抗薬、ACE阻害剤、及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬等の抗高血圧薬と組み合わせて使用されてもよい。β-ブロッカーの例としては、アセブトロール、ビソプロロール、エスモロール、プロパノロール、アテノロール、ラベタロール、カルベジロール、及びメトプロロールがある。ACE阻害剤の例としては、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、 トランドラプリル、及びモエキシプリルがある。
本発明のペプチド模倣物はまた、カルシウムチャンネル拮抗薬、β-アドレナリン受容体拮抗薬及び作動薬、アルドステロン拮抗薬、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、硝酸薬、及び強心配糖体等の心血管薬と組み合わせて使用されてもよい。
本発明のペプチド模倣物はまた、H1受容体拮抗薬、H2受容体を介した作動薬及び拮抗薬;COX-2阻害剤、NSAID、サリチル酸、アセトアミノフェン、プロピオン酸誘導体、エノール酸、ジアリールフラノン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ブラジキニン作動薬及び拮抗薬等の抗炎症薬と組み合わせて使用されてもよい。
治療方法
本発明の一態様においては、治療的有効量の本発明の1つ又は複数のペプチド模倣物を投与することによって、アテローム性動脈硬化症が亢進している患者、又はその危険性がある患者を、治療する方法が提供される。
一般的に、この発明の実施形態は、治療のための組成物を適切な量(例えば、1日分の量)投与することであり、ここで適切な量とは、症状の緩和といった治療効果を出しつつ生体内レベルで確実な治療効果を及ぼすことのできる最低限度の量が考えられる。治療のために投与を開始する時のペプチド模倣物の適切な最小限度量は、1人の患者1日につき、少なくとも約2 mg、少なくとも約5 mg、少なくとも約10 mg、又は少なくとも約20 mgであることが好ましい。ここで記載されている方法の一実施形態において、投与量としては、約0.01mg/kgから約500 mg/kgまでが可能である。一般的には、1日につき、患者の体重1キログラム当たり約50から約400マイクログラムが、本発明の化合物の有効量である。しかし、当業者ならば本発明の組成物の投与量は、患者及び用いられる投与経路によって変わることが分かるだろう。個々の患者に応じて投与量を調整するのは、日頃から行われていることである。加えて、中でも化合物の大きさ、化合物の生体内分解性、化合物の生物活性、及び化合物の生物利用能などに基づいて、有効量が決められてもよい。化合物が速やかに分解せず、生物利用能があり、かつその活性が高い場合は、より少ない量で効果が出ると思われ、及び/又は投与回数を減らすことが適切かもしれない(例えば、1日に数回、数日に1回)。患者に適切な投与量は、例えば内科医又は獣医のような当業者が、一般的な諸条件のもとで、日常的に行う業務において容易に決めることができる。
化合物は、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年(例えば、時間に応じて放出されるような形態で)送達されてもよいし、あるいは一度に送達されてもよい。この送達は、例えば静脈内投与のように、一定時間連続して行われてもよい。ここで記載されている方法の一実施形態においては、治療剤は1日に少なくとも1回投与される。一実施形態においては、薬剤は毎日投与される。一実施形態においては、薬剤は1日おきに投与される。一実施形態においては、薬剤は6日から8日毎に投与される。一実施形態においては、薬剤は1週間毎に投与される。
ここに記載されている方法の一実施形態においては、以下のような投与経路が可能である。すなわち、経口投与、腹腔内投与、経皮投与、皮下投与、静脈内注射又は筋肉注射、吸入、局所的注射、病変内への注射;リポソームによる送達;局所的送達、くも膜内、歯肉ポケット、直腸、気管支内、鼻腔、粘膜、腸管、眼又は耳を介した送達、あるいは同業者が容易に行い得るような公知の方法のいずれかである。本発明の組成物の他の実施形態では、非経口投与、及び肺、鼻腔及び口腔を介した投与を含む様々な投与経路のために、粒状の形をした保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤又は浸透増強剤を用いる。
本発明の方法の実施形態は、本発明のペプチド模倣物を徐放性剤として投与することである。このような方法には、徐放性経皮吸収型パッチの利用、又は徐放性カプセルの体内への挿入、又は体内へ挿入可能なコーティング済み医療機器の利用が含まれ、これによって、本発明のペプチド模倣物を治療効果の出る量、患者に持続的に送達できるようになる。当発明の化合物及び/又は薬剤は、一定時間をかけて薬剤又はペプチドを徐放するカプセルを用いて送達されてもよい。放出制御型又は徐放性の組成物には、脂肪親和性のデポー製剤が含まれる (例えば、脂肪酸、蝋、オイル)。ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)でコーティングされた特定の組成物もまた、本発明の視野に入る。
他の関連する一実施形態においては、付加的な治療剤を少なくとも1つ投与する方法もある。このような治療剤は、抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、代謝拮抗剤、サイトカイン、又は可溶性のサイトカイン受容体であってもよい。酵素阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤又はシクロオキシゲナーゼ阻害剤であってもよい。付加的な治療剤は、医薬組成物の一部として添加されるか、又は同時に投与されてもよい。あるいは、付加的な治療剤は、その生理学的効果が本発明の化合物の生理学的効果と一部重なるような期間内に投与されてもよい。より厳密に言えば、付加的な治療剤は、コポリマーと同時に、あるいはコポリマーを投与する1週間前、数日前、24時間前、8時間前又は直前に投与されてもよい。あるいは、コポリマーを投与した1週間後、数日後、24時間後、8時間後、又は直後に、付加的な治療剤を投与してもよい。
他の本発明の一実施形態では、自己免疫疾患進行の危険性がある患者に、本発明の化合物を投与することにより予防的な治療をする方法を示す。危険性のある患者は、例えば、家族歴、又はアテローム性動脈硬化症と相関のある任意の遺伝学的マーカーに基づいて同定される。このような予防的治療には、医薬品が付加的に含まれていてもよい。
調査研究の手段
本発明のペプチド模倣物は、調査研究の手段としても有用である。例えば、本発明のペプチド模倣物は、他の化合物(他のペプチド模倣物を含む)のアテローム性動脈硬化症に対する効能を評価するのに使用することができる。
加えて、本発明のペプチド模倣物は、これを特に放射性標識、蛍光標識等で標識化すれば、動物及び動物モデルにおけるリポタンパク質-受容体間の相互作用を調べるのに使用することができる。
また、本発明のペプチド模倣物は、脂質代謝経路を解明する適切な動物モデルを同定する際に使用することもできる。例えば、ペプチド模倣物は、脂質過酸化によってアテローム性動脈硬化症が亢進している動物モデルを同定するのに使用することができる。
IV. 実施例
実施例1. レトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチド模倣物Rev-D4Fの合成と精製
レトロ・インバーソ(retro-inverso)型ペプチド模倣物Rev-D4F は、標準的なペプチド合成法によって合成され、高速液体クロマトグラフィーで精製された。
精製したRev-D4Fのリン脂質に対する相互作用能を評価するために、精製したペプチド模倣物を、コレステロールを含む脂質二重層膜の成分である1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)と混合し、ゲルろ過クロマトグラフィーによって分画した。L4FとD4F同様、Rev-D4FもDMPCと効率よく自発的に結合し、ペプチド模倣物は全て、リン脂質で共溶出した(図 2B- D)。一方、元のアポA-I タンパク質の場合は、その内の一部のみがリン脂質と自発的に結合した (図2A)。
実施例2. SR-BI依存的コレステロール排出にもたらすRev-D4Fの効果
受容体依存的なコレステロール排出にもたらすRev-D4Fの効果を調べた。クラスBスカベンジャー受容体タイプI (“SR-BI”) は、通常は肝細胞表面に発現しているHDLに対する受容体である。SR-BIに加えて、野生型アポA-I、L4Fペプチド、D4Fペプチド、又はRev-D4Fペプチド模倣物をトランスフェクトした細胞に、トリチウム標識したコレステロールを加え、コレステロール排出の割合を求めた。
質量を基準にアポA-Iと比較した場合は、L4F、D4F及びRev-D4Fは全て、 アポA-Iタンパク質よりも排出促進効果が高くなった。モルを基準に比較した場合は、全てのペプチド模倣物は、アポA-Iタンパク質よりも効果が低くなった (図 4A とB参照)。
実施例3. ABCA1依存的コレステロール排出にもたらすRev-D4Fの効果
ATP-結合カセットタンパク質A1("ABCA1") 依存的なコレステロール排出におけるRev-D4Fの効果も、SR-BIと同様(ただしSR-BIの代わりにABCA1をトランスフェクト)の方法を用いて調べた。SR-BI依存的なコレステロール排出と同様に、質量を基準にしたコレステロール排出促進効果は、アポA-Iよりも、L4F、D4F及びRev-D4Fが全て高かった。モルを基準に比較した場合は、SR- BI依存的なコレステロール排出と同様に、3つのペプチドは全て、アポA-Iより低い効果を示した (図3AとB参照)。
実施例4.血中脂質の酸化に対するペプチド模倣物の効果
本研究においては、チオバルビツール酸反応物 (TBARS)の濃度上昇をどれくらい阻害するかを指標に、人動脈内皮細胞と硫酸銅(II)が引き起こす脂質の過酸化に対する、Rev-D4F、D-4F及びL-4Fペプチド模倣物の阻害活性を測定した。図 5と6に示されているように、3つのペプチド模倣物は全て、酸化性物質中の脂質の過酸化を著しく減少させた。さらに、D-4F よりRev-D4Fの方が脂質の過酸化をより顕著に阻害した。
実施例5. MCP-1 mRNA の発現におけるペプチド模倣物の効果
この実験では、Rev-D4F、D-4F及びL-4Fペプチド模倣物が、抗炎症マーカーである単球遊走促進因子(MCP-1)のレベルを低下させる効果を解析した。 MCP-1のmRNA量を指標にしたところ、MCP-1量は、3つ全てのペプチド模倣物によって減少した。
実施例6.アポE欠損マウスにおけるRev-D4Fの効果
この実験では、アポE欠損マウスのアテローム性動脈硬化に対するRev-D4F、D-4F及びL-4Fペプチド模倣物の効果を測定、比較した。アポE欠損マウスの4群 (4週齢、n=15) にコントロール食を与え、水(コントロール)、Rev-D4F、D-4F、又はL-4Fペプチド模倣物 (1.6 mg/日、n=12/群) を水に混ぜた状態で経口により6週間投与した。オイルレッドOで染色した大動脈根の切片をNIHソフトウェアで形態計測的に定量した。
アポAIのペプチド模倣物は、血中の総コレステロール量、HDLコレステロール量及び非HDLコレステロール量に影響を与えなかった。L-4Fは、アテローム性動脈硬化病変部に何の影響も与えなかった。Rev-D4FとD4Fの両者は、水のコントロールと比べて、病変部の領域を著しく縮小し(p<0.02)、各ペプチドにより病変部はそれぞれ46%及び33%縮小した。アポE欠損マウスにおいて病変部形成の初期段階にあるアテローム性動脈硬化症を防ぐのに、Rev-D4Fが少なくともD-4F と同等もしくはそれ以上に効果的であることが、データから分かる。
等価体
ペプチド模倣物、それらの構成単位、及び他の前記組成物の等価体として考えられるものには、これらに相応し、これらと同じ特性(例えば、生体適合性)を有する物質が含まれ、この場合、元の分子の本来の作用を損なうことなく、1つ又は複数種の単純な置換が行われる。一般的に、本発明の化合物は、例えば下記の一般的な反応経路として例示されている方法、あるいは、簡単に使用できる反応開始物質、試剤及び慣習的な合成経路を用いて改良した方法によって調製されてもよい。これらの反応においては、ここで取り上げられなかった既知の変異体を利用することもまた可能である。
上記で引用された全ての参考文献は、この参照によりその全体が開示に含まれる。
アポA-I由来のペプチド及びペプチド模倣物を示す。 14Cで標識したリン脂質、及び14Cで標識したタンパク質又はペプチドの溶出プロファイルを示す(A-D)。 脂質と結合していないペプチド及びアポA-IのABCA1依存的なコレステロール排出促進作用を示す(AおよびB)。 脂質と結合したペプチド及びアポA-IのSR-BI依存的なコレステロール排出促進作用を示す(AおよびB)。 ペプチド模倣物、L-4F、D-4F及びRev D4-Fは、内皮細胞による脂質の過酸化を阻害する。 ペプチド模倣物、L-4F、D-4F及びRev D4-Fは、硫酸銅による脂質の過酸化を阻害する。 ペプチド模倣物、L-4F、D-4F及びRev D4-Fは、内皮細胞におけるMCP-1mRNA の発現を阻害する。

Claims (12)

  1. D-アミノ酸配列F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D (配列番号3)からなり、コレステロール排出を促進しかつ血中脂質の酸化を阻害することを特徴とするペプチド模倣物。
  2. 患者の脂質値を改善することを特徴とする請求項1記載のペプチド模倣物。
  3. D-アミノ酸配列Ac-F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D-NH2 (配列番号2)からなり、コレステロール排出を促進しかつ血中脂質の酸化を阻害することを特徴とするペプチド模倣物。
  4. 該ペプチド模倣物のアミノ末端又はカルボキシル末端に結合した保護基をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のペプチド模倣物。
  5. 該ペプチド模倣物のアミノ末端に結合した第一の保護基、及び該ペプチド模倣物のカルボキシル末端に結合した第二の保護基を含むことを特徴とする請求項1記載のペプチド模倣物。
  6. 前記保護基が、アセチル基、CH3-(CH2) n -CO-基、アミド基、Fmoc基、t-ブトキシカルボニル基、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボキシル基、9-フルオレンカルボキシル基、9-フルオレノン-1-カルボキシル基、ベンジルオキシカルボニル基、キサンチル基、トリチル基、4-メチルトリチル基 、4-メトキシトリチル基、 4-メトキシ- 2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル基、メシチレン-2-スルホニル基、4,4-ジメトキシベンズヒドリル基、トシル基、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-サルフォニル基、4-メチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、ベンジルオキシ基、ベンジル基、ベンゾイル基、3-ニトロ-2-ピリジンスルホニル基、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル基、2,6-ジクロロベンジル基、2-クロロベンジルオキシカルボニル基、2-ブロモベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシ基、t-ブトキシメチル基、t-ブトキシ基、t-ブチル基、及びトリフルオロアセチル基から選択され、nが0 から12までの整数であることを特徴とする請求項または記載のペプチド模倣物。
  7. 治療的有効量の請求項1からいずれか1項記載のペプチド模倣物を含む、哺乳類において血中コレステロールレベルの上昇を予防または治療するための医薬組成物。
  8. 治療的有効量の請求項1からいずれか1項記載のペプチド模倣物を含む、哺乳類においてアテローム性動脈硬化症を予防または治療するための医薬組成物。
  9. 治療的有効量の請求項1からいずれか1項記載のペプチド模倣物を含む、哺乳類において脂質値を改善するための医薬組成物。
  10. 徐放性製剤であることを特徴とする請求項からいずれか1項記載の医薬組成物。
  11. 脂質疾患を治療する薬剤、抗高血圧薬、心血管薬および抗炎症薬より成る群から選択される第2の活性薬剤をさらに含むことを特徴とする請求項から10いずれか1項記載の医薬組成物。
  12. 前記哺乳類がヒトである請求項から11いずれか1項記載の医薬組成物。
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