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JP5042019B2 - 情報記録媒体とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学的もしくは電気的に情報を記録し、消去し、書き換え、及び再生する情報記録媒体とその製造方法に関するものである。
発明者は、データファイル及び画像ファイルとして使える、書換形情報記録媒体である、4.7GB/DVD−RAM(以下、DVD−RAM)を開発し、2000年に商品化した。実用化された当初のDVD−RAMにおいて、記録層は、SnTe/Ge−Sb−Teの2層構成であった(例えば、日本国特許公開特開2001−209970号公報参照)。これは、従来製品で使用していた高速結晶化材料であるGe−Sb−Te(例えば、日本国特許第2584741号公報参照)から成る相変態層の前に、結晶性の強いSnTeから成る結晶化能向上層を設ける構成である。
また、実用化されたDVD−RAMの記録層の材料として、Ge−Sn−Sb−Te(例えば、日本国特許公開特開2001−322357号公報参照)がある。これは、GeTeとSbTeにSnTeを添加した材料である。SnTeはTe化物であり且つ結晶構造がGeTeと同じ岩塩型構造であるので、SnTeはGeTeの一部を置換するように添加される。そのため、この材料を使用すると、繰り返し記録による相分離を生じることなく、結晶化速度を高めることができた。非晶質相の安定性を確保するために、SnTeの添加濃度は厳密に最適化した。このように、本発明者は、実用可能な記録層が、特定の2層構成により構成されること、および特定の添加物を加えた材料で都合良く形成されることを見出した。
現在、DVD−RAMは2倍速対応(22Mbps)と3倍速対応の媒体が市販されている。また、ハイビジョン画像の録画媒体として1倍速対応(36Mbps)の書換形Blu−ray Disc(以下、BD−RE)を2004年に発売した。BD−REの容量は25GBと50GBである。近年、データファイル用途の媒体についてはデータ処理の高速化が要求され、画像ファイル用途の媒体については高速ダビングを実施できることが要求されている。これらの要求を考慮すると、さらに高速で記録可能なBD−REおよびDVD−RAMの開発が必要である。具体的には、BD−REについては12倍速、DVD−RAMについては16倍速に対応する(adapted)ことが求められる。
16倍速はドライブのモータ回転数が約11000回/分(現状ほぼ上限値)であるときの媒体最外周における線速度に相当する。回転数を一定にして記録を行う方法(コンスタント・アンギュラー・ベロシティー(以下、CAV))では、直径12cmサイズの媒体については、媒体の最外周の線速度は最内周の線速度の約2.4倍となる。したがって、CAV仕様のBD−REは5倍速から12倍速の線速度範囲にて良子に記録/消去可能であるように開発する必要があり、CAV仕様のDVD−RAMは6倍速から16倍速の線速度範囲にて良好に記録/消去可能であるように開発する必要がある。
BD−REにおいても、DVD−RAMにおいても、市販品の数倍の線速度に対応するためには、記録層材料の結晶化速度の飛躍的な向上が不可欠となる。そこで例えば、上記Ge−Sn−Sb−TeにおいてSnTeの濃度を増やすこと、またはGe−Bi−Te系材料と称されるGeTeとBiTeを混合した材料(例えば、日本国特許第2574325号公報参照)を超高速結晶化材料として用いることが提案されている。
本発明者らは、前記SnTe/Ge−Sb−Teは、非晶質相の安定性を確保したまま、結晶化速度を高めることができる構成であることを確認した。相変化材料は、結晶化速度を大きくして結晶化しやすくすると(消去しやすくすると)、結晶化温度が下がるため、非晶質相の安定性が低下してしまう(記録マークの保存性が低下する)。SnTe/Ge−Sb−Teの2層構成においては、結晶化温度が低いSnTeは結晶化速度を大きくする役割を担い、結晶化温度が高いGe−Sb−Teは非晶質の安定性を維持する役割を担うとともに、レーザ光照射により光学的に変化し、情報が記録再生されることを可能にすると考えられる。しかしながら、この二層構成の記録層は、Ge−Sb−Teの組成を調整しても、あるいはSnTeの厚さを調整しても、結晶化速度が不足して、目標とする16倍速には対応できない。
また、前記Ge−Sn−Sb−Teの場合、16倍速に対応するためにはSnTeの濃度を多量に増やす必要があった。その場合、(GeTeをSnTeで置換するために)Geの濃度が減り、光学的変化が小さくなり、それにより信号品質が低下してしまうという課題、並びに結晶化温度が下がって非晶質相の安定性が確保できないという課題が生じた。また、前記Ge−Bi−Teは、16倍速に十分対応できるだけの結晶化速度を有するが、16倍速で記録した信号(即ち、16倍速にて形成した非晶質相)の安定性さえ確保できないという課題を有する。このように、SnTe/Ge−Sb−Teの2層構成、Ge−Sn−Sb−Te層及びGe−Bi−Te層はいずれも、高線速度且つ広い線速度範囲での記録に対応した媒体を与えるには至っていない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、大きな結晶化速度と非晶質相の安定性を併せ持つ記録層を提供する。さらにこの記録層を適用することにより、記録波長に依らず、高線速度且つ広い線速度範囲において、高い消去性能と優れた記録保存性を有する情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の情報記録媒体は、相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を含む情報記録媒体であって、記録層が厚さ方向に積層された第1番目から第M番目(Mは以上の整数)までの相変化を生じうる構成層を含み、レーザ光入射側からm番目に位置する構成層を第m構成層(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なり、かつ、少なくとも1つの第m構成層が、Ge、SnおよびTeを含むことを特徴とする。
「相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層」とは、各構成層を構成する成分が記録層全体に占める割合で記録層全体の組成を表したときに、記録層全体の組成が相変化を生じ得る組成となることをいう。また、本明細書において「構成層」という用語は、記録層が2以上の層から成る場合に各層を指すために用いられる。また、「元素組成」という用語は、二以上の元素の組み合わせのほか、単体も含む意味で使用される。例えば、第m構成層が単体から成り、第m+1層が別の単体から成る場合、および第m構成層が単体であって、第m+1層が二以上の元素から成る場合はいずれも、第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なるといえることに留意されたい。さらに、層と層との界面が不明瞭であっても、厚さ方向で元素組成を分析したときに異なる部分を2以上含む(例えば、厚さ方向の或る位置と別の位置における元素組成を比較したときに互いに異なる元素組成を有する)記録層を備えた媒体は、本発明の媒体に含まれる。
すなわち、本発明の情報記録媒体は、相変化を生じ得る組成物(以下、「相変化組成物」とも呼ぶ)を、隣り合う層同士が互いに異なる材料から成るように複数の層に分割して形成した記録層を有することを特徴とする。このような記録層は、相変化組成物の各成分が均一に分布した単一層から成る記録層と比較して、各成分の特徴がより強く現れて、各成分のもたらす利点を有効に利用できるものとなる。したがって、本発明の情報記録媒体によれば、相変化組成物およびその分割形態を適宜選択することにより、より高い結晶化温度と、より大きい結晶化速度を達成することが可能となる。
本発明の情報記録媒体において、Mが3以上である場合、第1構成層と第M構成層は、同じ元素組成を有することが好ましい。それにより、記録層の厚さ方向において、周期的な構造が得られ、記録層の性能向上、特に低倍速の記録保存性の向上に寄与する。前述のように、2つの構成層が同じ単体から成る場合にも、同じ元素組成を有するといえることに留意されたい。
本発明の情報記録媒体において、第1構成層と第M構成層は、Mの数によらず、異なる元素組成を有していてよい。そのような構成によっても、種々の機能を実現することが可能である。また、そのような構成の記録層を有する媒体は、一般に、高倍速の書き換え保存性を良好にする。
記録層の各構成層の厚さdm(nm)は、0.1≦dm≦15を満たすことが好ましい。dmが0.1nm未満であると、各層の機能を十分に発揮させることができず、dmが15nmを越えると(即ち、1つの構成層の厚さが大きくなると)、他の層の厚さが小さくなり、相変化組成物を層状に分割したことによる効果が得られにくい。
少なくとも1つの別の第m構成層は、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される、少なくとも1つの元素を含む層(以下、この層を便宜的に構成層Rと呼ぶ)であることが好ましい。これらの元素を単体、混合物、合金または化合物の形態で含む構成層Rは、光学的変化の大きい層または結晶化速度の大きい層として記録層に種々の性能を付与する。
前記特定の元素を含む構成層Rは、好ましくは、Ge、Al、InおよびGaのうちの少なくとも1つの元素とTeとを含むことが好ましい。そのような元素を含む構成層は、高い結晶化温度を有し、低線速度における非晶質相の安定性を確保する。
前記Ge、Al、InおよびGaのうちの少なくとも1つの元素とTeとを含む構成層Rと隣り合う構成層(以下、この層を便宜的に構成層Qと呼ぶ)は、BiとTeとを含むことが好ましい。BiとTeとを含む材料は、結晶化速度の大きい相変化材料であるため、構成層Qは、高線速度における消去性能の信頼性を確保する。また、前記所定の元素とTeとを含む構成層Rと、Bi−Teを含む構成層Qとを隣り合わせると、層の界面において両層の材料が非常に接近するために混合状態となり、それにより使用線速度範囲の初期性能が確立される。よって、これらの特定の2つの層の組み合わせは、初期性能および信頼性の確保を可能にする。
前記構成層Qは、さらにSb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含んでよい。これらの元素を含むと、記録層の性能(例えば、低線速度における、記録保存性)をより向上させることが可能である。
記録層の少なくとも1つの別の構成層は、好ましくはSbを含む構成層(以下、この層を便宜的に構成層Tと呼ぶ)である。Sb単体は、例えば、厚さ10nm程度の膜にしたときに、結晶性が強く、結晶化温度が100℃以下となるような性質を有するため、これを利用することにより、記録層に所望の結晶性を付与することできるので、好ましく用いられる。また、Sbは、他の元素との組み合わせることにより、結晶化温度が高くなり、記録層の信頼性を高くすることから、記録層の構成層の成分として好ましく用いられる。
Sbを含む構成層Tは、さらにTe、Al、In、Ge、SnおよびGaから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。前述のように、Sb単体は、結晶性が強いものであるが、これらの元素から選択される1または複数の元素と組み合わせると、可逆的相変化を生じ得る記録材料となる。さらに、これらの元素の添加量を調整することにより、結晶化温度を200℃以上に上昇させること、および結晶化速度を使用条件に応じて最適化させることが可能となる。
1つの別の第m構成層は、好ましくは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの希土類金属元素と、Ge、Sb、BiおよびTeから成る群αから選択される少なくとも1つの元素を含む。そのような2つの群から選択される元素を含む構成層(以下、この層を便宜的に構成層Xと呼ぶ)は、高い結晶化温度を有するので、記録層の結晶化温度を向上させることができる。
前記構成層Xは、さらに、Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Hf、In、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Se、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、およびZrから成る群βより選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。前記特定の層にこれらの元素が含まれると、結晶化温度または結晶化速度を調整することが可能となる。
本発明の情報記録媒体は、2つ以上の情報層を含み、情報層のうち少なくとも1つの情報層が上記複数の構成層から成る記録層を含むものとして提供することができる。この情報記録媒体は、複数の構成層に分割された記録層によって、所望のように(例えば、高速で)情報が記録されることをより容易にする。
複数の構成層から成る記録層は、各構成層の厚さが薄い、または初期化工程においてレーザ光が照射される等の理由によって、層と層との間の界面が明瞭でないことがある。前述のように、そのような記録層を含む情報記録媒体も本発明の範囲に含まれ、次のように特定することも可能である。即ち、本発明は、相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を含む情報記録媒体であって、記録層が二以上の元素を含み、元素組成が厚さ方向において変化している、情報記録媒体をも提供する。換言すれば、この情報記録媒体の記録層においては、組成分布が厚さ方向において一定でない。元素組成は、前述の好ましい記録層の構成に従って、ある元素組成が周期的に現れるように変化していてよい。あるいは、記録層における元素組成は、例えば、レーザ光の入射方向に沿って、ある元素が漸減し、別の元素が漸増するように変化してよい。
本発明はまた、本発明の情報記録媒体の製造方法として、相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を成膜する工程を含む情報記録媒体の製造方法であって、当該記録層を成膜する工程が1番目からM番目(Mは4以上の整数)までのスパッタリング工程を含み、m番目のスパッタリング工程を第m工程(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、連続する第m工程と第m+1工程を元素組成が互いに異なるスパッタリングターゲットを用いて実施し、かつ、少なくとも1つの第m工程を、Ge、SnおよびTeを含むスパッタリングターゲットを用いて実施し、前記1番目からM番目のスパッタリング工程で用いるスパッタリングターゲットは相変化を生じうる組成を有する材料で構成される情報記録媒体の製造方法を提供する。
本発明の情報記録媒体によれば、高線速度且つ広い線速度範囲において、高い消去性能と優れた記録保存性を実現することができる。具体的には、BD−REへの記録を12倍速から5倍速にて、また、DVD−RAMへの記録を16倍速から6倍速にて実施することが可能となる。さらに、本発明によれば、記録密度および容量、ならびに記録波長によらず、高い線速度でも消去性能が高く、且つ低い線速度で記録した信号の記録保存性に優れた、大容量で高速記録可能な情報記録媒体を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、光情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図1に示す情報記録媒体100は、基板107の一方の表面に反射層106が形成され、反射層106の表面に誘電体層105が形成され、誘電体層105の表面に記録層104が形成され、記録層104の表面に界面層103が形成され、界面層103の表面に誘電体層102が形成され、さらにカバー層101が形成された構成を有する。ここで、記録層104は、1番目からM番目までの構成層を含み、誘電体層105側から、第M構成層125、・・・、第m+1構成層124、第m構成層123、・・・、第2構成層122、第1構成層121がこの順に形成されている。
この構成の情報記録媒体は、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光で情報を記録再生する、25GB容量のBlu−ray Discとして使用できる。この構成の情報記録媒体100には、カバー層101側からレーザ光120が入射し、それにより情報の記録及び再生が実施される。
本発明の情報記録媒体は、記録層が特定の構成を有している点に特徴を有する。そこで、まず、記録層104について説明する。
記録層104は、
1)厚さ方向に積層された第1番目から第M番目(Mは2以上の整数)までの構成層を含み、
2)レーザ光入射側からm番目に位置する構成層を第m構成層(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、第m構成層と第m+1構成層の元素組成が異なり、
3)全体として相変化(BD−REの場合は可逆的相変化)を生じる、即ち、各構成層を構成する成分の割合で記録層全体の組成を表したときに、記録層全体の組成が相変化を生じ得る組成となる
という特徴を有する。
記録層を互いに異なる元素組成を有する構成層で形成することにより、1つの組成を有する一層構成の記録層(以下、そのような記録層を「単層記録層」とも呼ぶ)では両立困難であった性能を両立させることができ、あるいは、より優れた性能を得ることができる。記録層全体の組成が相変化を生じ得る限りにおいて、個々の構成層は、レーザ光の照射によって相変化を生じ得る組成を有する必要は必ずしもない。また、各構成層は、媒体の全面にわたって連続して形成されなくてもよい。成膜の都合により、構成層は一部において途切れていてもよく、例えば、島状に点在するように形成されてもよい。
単層記録層を有する媒体においては、媒体の初期性能(室温での性能)を確立することが可能でも、使用環境や輸送環境を想定した高温高湿下での信頼性を確立することが困難となる。さらに、媒体の記録再生を高く且つ広い線速度範囲において行う場合には、信頼性の確立がより困難となる。
例えば、高線速度且つ広い線速度範囲に対応する情報記録媒体を開発するためには、結晶化速度の大きい相変化材料を用いる必要がある。しかし、非晶質相から結晶相への相変化を生じる材料については、その結晶化速度が相対的に大きいと、結晶化温度が相対的に低くなる傾向があることが分かっている。すなわち、結晶化速度の大きい材料を使用すると、低線速度における非晶質相の安定性の確保が困難となる。
本発明の情報記録媒体100の記録層104は、そのような困難性を無くす又は軽減する。その理由として、次のことが考えられる。もっともこの考察により本発明が限定されるものではないことに留意すべきである。複数の構成層は、レーザが照射されると、一部において、層同士の界面が無くなるように混ざり合って、各構成層が有する性能を合わせて発揮する。同時に、各構成層は、一部において、独立した層の形態を保ち、各構成層を構成する材料の特性を呈する。すなわち、各構成層はレーザ照射によって完全に混合するのではなく、記録層104中には混ざった部分と、混ざらないで各構成層の組成が残った部分が形成されると考えられる。そのような構成は、2以上の成分の単なる混合によっては得られず、各成分に分割して積層構造とすることによって達成される。
よって、例えば、結晶化温度の高い材料から成る構成層と結晶化速度の大きい相変化材料から成る構成層で記録層104を形成した場合、2つの構成層が互いに混ざることにより使用線速度範囲の初期性能が確立され、結晶化温度の高い材料の構成層が、低線速度における非晶質相の安定性を確保し、結晶化速度の大きい相変化材料の構成層が、高線速度における消去性能の信頼性を確保することとなる。その結果、結晶化速度が大きく且つ結晶化温度の高い記録層104を実現でき、高線速度且つ広い線速度範囲に対応する情報記録媒体100を実現できる。即ち、記録層結晶化温度の高い材料の層と結晶化速度の大きい相変化材料の層とに分割した積層構造とすることによって、それら材料の利点がより活かされた情報記録媒体を実現することができる。
各構成層121−125は、すべての構成層の成分を合わせて1つの組成式で表したときに、当該組成式で表される材料が相変化(BD−REの場合は可逆的相変化)する材料となるように、成分および厚さを適宜選択して形成される。本発明において、記録層104を構成する全ての構成層の成分を合わせて表す組成式(これを、「記録層組成式」ともいう)は、任意の公知の相変化材料の組成式であってよく、記録媒体の種類に応じて、適宜選択される。
例えば、媒体がBD−REである場合、記録層組成式は、可逆的相変化を生じる組成を有し、例えば、GeTeとBiTeとを含む材料の組成式であることが好ましい。GeTeを含むと、光学的変化の大きな記録層を得ることができる。光学的変化とは、記録層が非晶質相と結晶相の間で相変化を生じる際の、複素屈折率の変化を意味する。より詳細には、光学的変化とは、結晶相における複素屈折率(nc−ikc)と非晶質相における複素屈折率(na−ika)の差、Δn及びΔkを指す。ここで、ncは結晶相での屈折率、kcは結晶相での消衰係数、naは非晶質相での屈折率、kaは非晶質相での消衰係数を指し、Δn=nc−na、Δk=kc−kaである。光学的変化が大きいほど、記録信号から検出される信号振幅が大きくなる。したがって、記録層がGeTeを多く含むと、良好な信号品質が得られる。ただし、記録層がGeTeのみで構成されると、結晶化速度が低下し、繰り返し記録性能も低下するため、その割合は100mol%未満であることを要し、より好ましくは98mol%以下である。
BiTeは、薄膜の結晶化温度が室温以下にあり、非常に結晶性の強い材料であり、これを含む記録層は、結晶化速度が大きなものとなる。BiTeの割合は、GeTeの割合に対して最適化され、それにより使用条件に適した記録層組成を得ることができる。したがって、GeTeとBiTeとを含むことにより、光学変化が大きく且つ結晶化速度も大きい優れた記録層を得ることができる。
また、GeTeとBiTeとを含む材料に、さらに、Te化物およびSb化合物より選ばれる材料を含ませると、信頼性をさらに高めること、および結晶化速度をさらに増大させることが可能となる。例えば、InTeはBiTeと価数が同じであり、融点が高いので、これを記録層に含ませると、結晶化温度を高めることができるとともに、非晶質相の安定性を得ることができる。これは、高温条件下に信号を記録した情報記録媒体を放置しても、信号劣化を生じることがないことを意味する。ただし、添加しすぎると結晶化速度を低下させてしまうので、その割合はGeTeとBiTeの割合に対して最適化することが好ましい。
具体的には、2倍速から5倍速で使用するBD−REの記録層組成の好ましい一例は、(GeTe)(BiTe(InTe100−x−y(mol%)(式中、xおよびyは、90≦x<100、0<y<10、90<x+y<100を満たす)で表される。上記式において、InTeは、結晶性の強いSnTe、PbTe、SeSn、BiTeまたはBiSeで置き換えてよく、その場合、さらに結晶化速度を増大させることができる。あるいは、InTeは、SiTe、SiSe、GaTe、AlTe、またはSbTeで置き換えてよい。また、GaTeおよびInTeは、GeTeと同様の性質を有するので、上記式においてGeTeの一部または全部をGaTeまたはInTeで置き換えてよい。
記録層組成式は、上記式に限定されない。例えば、BiTe、BiTe、SbTe、GeTe、InTe、InTe、GaTe、GaTe、AlTe、SnTe、SiTe、およびPbTeから選択される複数のTe化物を組み合わせた組成式、これらのTe化物から選択される1または複数のTe化物と、SeSn、BiSe、BiSe、およびSiSeから選択される1または複数のセレン化物とを組み合わせた組成式を、記録層組成式と定めて、各構成層を形成してよい。各化合物の割合は、記録媒体の種類および記録速度に応じて、適宜選択される。記録層組成式は、必ずしも化合物の割合で示される必要はなく、元素の割合で示してよい。
別の記録層組成式の例として、結晶化温度が25℃以下である、非常に結晶性の強い材料を多く含むものがある。ここで、結晶化温度が25℃以下である材料とは、10nmの厚さで形成したときに室温(25℃程度)にて少なくとも一部が結晶化している材料を指す。本発明によれば、記録層組成式におけるそのような材料の割合を、例えば、40mol%以上となるようにすることもでき、45%以上となるようにすることもでき、50mol%以上となるようにすることもでき、60mol%以上となるようにすることもできる。単層構造の記録層が、結晶性の強い材料をそのような割合で含むと、信頼性が低下して、高速記録に使用することが困難となる。本発明によれば、そのような記録層組成式を複数の成分に分割して記録層を積層構造とすることにより、初期性能と信頼性の両方を満足した媒体を得ることが可能となる。結晶化温度が25℃以下である材料を多く含む記録層は、図1に示す記録媒体および後述する図2に示す記録媒体において、特に好ましく用いられる。
結晶化温度が25℃以下である材料として、例えば、BiTe、SnTe、PbTe、SeSnおよびBiSeが挙げられる。そのような結晶性の強い材料と組み合わせる材料として、例えば、GeTe、GaTe、AlTeおよびInTeのような、光学的変化が大きく、かつ結晶化温度の高い材料を使用してよい。さらに別の材料として、MTe(Mは、Sb、In、GaおよびAlから選択される少なくとも1つの元素)を含んでいてよい。
記録層組成式を選択した後、その組成式の成分を複数の群に分割して、構成層121−125を形成する。組成式の分割は、化合物単位で実施してよく、または元素単位で実施してよい。例えば、上記(GeTe)(BiTe(InTe100−x−y(mol%)で示される組成式は、GeTe、BiTe、およびInTeの3つの群に分割してよく、あるいは1つの群を単体としてよい。あるいはまた、1つの群がGeTe、BiTeおよびInTeから成り、他の群がGeTeから成る、2つの群に分割してよい。あるいは、1つの群がGeTeから成り、他の群がBiTeおよびInTeから成る、2つの群に分割してよい。さらに、1つの群は、さらに複数の群に分割してよい。例えば、後述するように、第1構成層と第M構成層の元素組成を同じとする場合には、1つの群が2つに分割される。
記録層組成式を群に分割することは、各構成層の厚さを決定することを伴う。即ち、例えば、(GeTe)95(BiTe(InTe(mol%)の組成式を、GeTe、BiTe、およびInTeの3つの群に分割する場合、各化合物により形成される構成層の厚さの比は、組成式における各化合物の比と同じとなり、95:3:2となる。GeTeから成る構成層を複数形成する場合には、GeTe層の全厚さ:BiTe層の厚さ:InTe層の厚さが、この比となるように各GeTe層の厚さを決定する。
各構成層の厚さは、0.1nm以上15nm以下であることが好ましい。即ち、第m構成層の厚さdm(nm)は、1≦m≦M−1において、0.1≦dm≦15を満たすことが好ましい。1≦m≦M−1において、全ての構成層は、同じdmを有してよく、あるいは、少なくとも1つの第m構成層が異なるdmを有していてよい。また、dmは、記録層104の厚さをD(nm)とした場合、dm<Dを満たす。
M,Dおよびdmの組み合わせを以下に例示する。
(1)M=10、D=10、すべてのdmが1。
(2)M=10、D=10、d1=0.1、d2=0.3、d3=0.5、d4=2、d5=2.1、d6=2.1、d7=2、d8=0.5、d9=0.3、d10=0.1。
(3)M=2、D=15、d1=5、d2=10。
(4)M=30、D=15、すべてのdmが0.5。
(5)M=2、D=11、d1=2、d2=9。
(6)M=3、D=11、d1=2、d2=7、d3=2。
(7)M=4、D=10、d1=1、d2=2、d3=3、d4=4。
(8)M=5、D=10、すべてのdm=2。
(9)M=3、D=10、d1=1、d2=8、d3=1。
(10)M=2、D=13、d1=3、d2=10。
構成層は、例えば、Mが3以上である場合には、第1構成層(m=1)121と第M構成層125が、同じ元素組成を有するように、記録層組成式を分割して形成してよい。その場合、Mを3以上の奇数とすれば、同じ元素組成を有する構成層を一つおきに配置するように記録層を設計できる。そのように、特定の組成の構成層が規則的に配置された記録層においては、組成が周期的に変化し、また、組成分布をある程度均一にできるので記録層の性能がより良好となる。
尤も、2以上の構成層の元素組成は、後述のスパッタリングにより構成層を形成する場合にはその条件の相違等によって、完全に一致しないこともある。その場合には、各構成層の元素組成を、一例として説明する、次の手法により分析して、2以上の構成層の元素組成が同じあるか、あるいは異なっているかを判断し得る。まず、情報記録媒体100を、厚さ方向に沿って、薄く切り取って、断面が露出する薄片(例えば、図1に示すような断面が見られる薄片)を切り出す。この薄片において見られる記録層の断面を、透過型電子顕微鏡で観察する。記録層が複数の構成層の積層により構成されていれば、記録層の中に複数の界面が観察されるはずである。
次に、例えば、エネルギー分散型X線分光(EDS:energy-dispersive X-ray spectroscopy)法を用いて、断面に電子線を照射して、各構成層(界面と界面との間に相当する領域)から放射される特性X線をエネルギー変換する。それにより、各構成層の含有元素と各元素の割合を分析することができる。構成層に含まれる全ての元素(不純物を含む)の割合(原子%)を求め、各元素の割合の差が、組成分析精度以内(一般的に、例えば、±5%)であれば、それらの構成層の元素組成を同じものとみなしても実用上問題ない。また、各元素の割合の差が、組成分析精度より大きければ、それらの構成層の元素組成を異なるものとみなしてよい。
元素分析は、情報記録媒体100のアズデポの状態(as-depo:成膜後の状態であり、初期化していない状態)の領域から、薄片を切り出して行うことが好ましい。媒体によっては、成膜された領域の最内周または最外周にアズデポの状態が残されている。媒体の全面が初期化されている場合にも、同様の手法で元素組成が同一であるか、あるいは異なっているかを判断してよい。
あるいは、記録層104は、第1構成層(m=1)121と第M構成層125が異なる元素組成を有するように、設計してよい。また、いずれのように設計する場合でも、記録層は、隣り合う構成層が互いに異なる元素組成を有するように設計する必要がある。
記録層104においては、少なくとも1つの構成層が、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。これらの元素は、化合物として構成層に含まれてよく、BiTe、BiTe、SbTe、GeTe、InTe、InTe、GaTe、GaTe、AlTe、SnTe、PbTe、SeSn、BiSe、BiSe、SiTeおよびSiSeから選択される少なくとも1つの化合物として含まれてよい。あるいは、少なくとも1つの構成層は、Te単体、Bi単体、Sb単体、Ge単体、In単体、Al単体、Sn単体、Pb単体、Se単体およびSi単体から選択されるいずれか1つの単体から成っていてもよい。
前記特定の元素を少なくとも一つ含む構成層(以下、便宜的に構成層Rと呼ぶ)は、2以上の化合物の組み合わせ、2以上の元素の組み合わせ、または少なくとも1つの化合物と少なくとも一つ元素との組み合わせから成る層であってよい。組み合わせは、例えば、混合または合金の形態で実現される。具体的には、構成層Rは、
GeTe−(M1)Te(M1は、Bi、Sb、In、GaおよびAlから選択される少なくとも1つの元素)(ここで、「−」は組み合わせを意味する。以下においても同じ)、
GeTe−(M2)Te(M2は、Bi、In、Ga、Sn、Pb、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素)
Bi−Te、
Bi−(M3)、Bi−Te−(M3)(M3は、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、Se、Si、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素)、
Te−(M4)(M4は、Al、Se、Si、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素)、
Ge−(M5)(M5は、Bi、Sb、In、Ga、Al、Sn、Pb、Se、Si、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素)
を含んでもよい。
例えば、2以上の構成層の組み合わせは、「/」を用いて、第m構成層/第m+1構成層/・・・で表した場合に、GeTe/BiTe、GeTe/BiTe/InTe、GeTe/BiTe/GaTe、GeTe/BiTe/AlTe、GeTe/BiTe/SbTe、GeTe/SbTe、GeTe/SbTe/InTe、GeTe/SbTe/GaTe、GeTe/SbTe/AlTe、GeTe/InTe、GeTe/GaTe、GeTe/AlTe、GeTe/SnTe/SbTe、GeTe/SnTe/SbTe/InTe、GeTe/SnTe/SbTe/GaTe、GeTe/SnTe/SbTe/AlTe、GeTe/SnTe/BiTe、GeTe/SnTe/BiTe/SbTe、GeTe/SnTe/BiTe/InTe、GeTe/SnTe/BiTe/GaTe、GeTe/SnTe/BiTe/AlTe、GeTe/PbTe/SbTe、GeTe/PbTe/BiTe、GeTe/PbTe/BiTe/SbTe、GeTe/BiSe、GeTe/SbSe、GeTe/InSe、GeTe/GaSe、GeTe/AlSe、GeTe/SnTe/SbSe、GeTe/SnTe/BiSe、GeTe/SnTe/BiSe/SbSe、GeTe/PbTe/SbSe、GeTe/PbTe/BiSe、GeTe/PbTe/BiSe/SbSe、GaTe/SbTe、InTe/SbTeとしてよい。ここに例示した組み合わせは、構成層全体の構成を必ずしも示すものではない。例示した組み合わせは、例えば、記録層に含まれる構成層の一部であって、さらに別の構成層を有することもある。
記録層にレーザ光が照射されると、層の界面が明瞭でなくなり、複数構成層から成るものであるかどうかを判別することが困難な場合がある。そのような場合、記録層は、記録層の厚さ方向において、元素組成が変化している層として特定することができる。例えば、第1/第2/第3構成層をGeTe/PbTe/BiSeとして構成した三層構造の記録層は、Geの濃度がレーザ入射光に最も近い側にて最も高くなって、レーザ入射光の進行方向に沿って漸減し、BiおよびSeの濃度がレーザ入射光の進行方向に沿って漸増してレーザ入射光から最も遠い側にて最も高くなり、記録層の内部(記録層と他の層との界面から離れた位置をいう)にてPbの濃度が最も高くなるような組成を有する層として特定される。このことは、複数の構成層から成るいずれの記録層についてもあてはまる。
構成層Rは、Ge、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素とTeとを含むと、結晶化温度が200℃以上となり、より好ましい。さらに、高速記録を行うための媒体を作製する場合には、この構成層Rに隣接する構成層(これを便宜的に構成層Qと呼ぶ)が、BiとTeとを含むことが好ましい。その場合、結晶化温度の高い材料であるGeTe、AlTe、GaTeまたはInTeから成る層と、結晶化速度の大きい相変化材料であるBi−Teから成る層とが隣り合うこととなり、良好な記録性能を達成できる。
構成層R/構成層Qの組み合わせは、例えば、GaTe/BiTe、InTe/BiTe、およびAlTe/BiTeである。また、Mが3以上であるときには、構成層R/構成層Q/構成層Rの組み合わせが、例えば、GeTe/BiTe/GeTe、GeTe/BiTe/GaTe、またはGeTe/BiTe/InTeであるように記録層を設計してよい。
BiおよびTeを含む構成層Qは、さらに、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。その場合、構成層R/構成層Qの組み合わせは、例えば、GeTe/GeTe−BiTe、GaTe/GeTe−BiTe、InTe/GeTe−BiTe、GeTe/GeTe−BiTe−InTe、GaTe/GeTe−BiTe−InTe、InTe/GeTe−BiTe−InTe、GeTe/GeTe−BiTe−SiTe、GeTe/GeTe−BiTe−SbTe、GeTe/GeTe−SnTe−BiTe、GeTe/GeTe−GaTe−BiTe、GeTe/GeTe−AlTe−BiTe、GeTe/GeTe−PbTe−BiTe、GeTe/GeTe−BiSeである。これらの構成層の組み合わせにより、結晶化温度が高く、結晶化速度が大きい記録層104を実現できる。
あるいは、記録層104においては、少なくとも1つの構成層がSbを含むことが好ましい。Sbを含む構成層(これを便宜的に構成層Tと呼ぶ)は、さらにTe、Al、In、Ge、SnおよびGaから選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。構成層Tにおいては、これらの元素が、化合物、混合物または合金等の形態で存在する。具体的には、構成層Tは、SbTe、Sb−Te、Sb−(M6)、Sb−Te−(M6)(M6は、Bi、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、Se、Si、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素)、AlSb、GaSb、またはInSbを含んでよい。Sb−Te、Sb−(M6)およびSb−Te−(M6)は、いずれも50原子%より多いSbを含むことが好ましい。
第m構成層と第m+1構成層の元素組成が異なる限りにおいて、第m構成層と第m+1構成層をそれぞれ構成層Tとしてよい。例えば、第m構成層/第m+1構成層/・・・の組み合わせを、AlSb/SbTe、GaSb/SbTe、InSb/SbTe、AlSb/Sb−Te、GaSb/Sb−Te、InSb/Sb−Teとしてよい。あるいは、第m構成層/第m+1構成層/・・・の組み合わせを、In−Sb/Ge−Sb、In−Sb/Ge−Sb/In−Sb、In−Sb/Ge−Sb/In−Sb/Al−Sb/In−Sb、Ge−Sb/In−Sb/Ge−Sb/Al−Sb/Ge−Sb、Ge−Sb/In−Sb/Ge−Sb、Ge−Sb/Ga−Sb/Ge−Sb/In−Sb、またはIn−Sb/Sb/Ge−Sb/Sb/In−Sb等としてよい。
あるいは、記録層104においては、少なくとも1つの構成層が、少なくとも1つの希土類金属元素X、即ち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素と、Ge、Sb、BiおよびTeから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。Xは、XBi、XSb、XTeまたはXGeの化学量論組成の化合物を形成する。これらのうち、XBi、XSbおよびXTeは、BiTe、GeTeおよびSnTeと同様のNaCl型構造の結晶構造を有し、1000℃から2000℃程度の融点および200℃以上の結晶化温度を有する。したがって、XBi、XSbもしくはXTeを構成層の成分として用いると結晶構造を変えることなく、記録層の結晶化温度を向上させることができる。
希土類元素Xと上記特定の元素を含む構成層(これを便宜的に構成層Xと呼ぶ)は、Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Hf、In、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Se、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、およびZrから選択される少なくとも1つの元素をさらに含むことが好ましい。そのような元素は、記録層の結晶化温度または結晶化速度を調整することを可能にする。
M個の構成層の設計は、記録層組成に基づいて、好ましい構成層の組み合わせが得られるように、各構成層の組成および厚さを決定して行なう。1つの記録層において、構成層の数Mは、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。Mが3以上であると、第1構成層と第M構成層の元素組成を同じにすること、あるいは、一つまたは複数の特定の層を1層おき又は2層以上おきに、規則的に繰り返し配置することが可能となり、周期的に元素組成が変化した記録層を得ることができる。
例えば、先に例示した記録層組成式のように、GeTeが主たる成分として含まれる場合には、Mの数を多くすると、GeTeを含む層を2以上設けて、記録層の厚さ方向において、均等に分散させることができる。それにより、より良好な性能を有する情報記録媒体を得ることができる。同様に、他の元素組成の層も、記録層の厚さ方向において、複数の層として均等に分散していることが好ましい。したがって、Mの数はより大きいことが望ましい。尤も、Mの上限は、成膜可能なdmならびに製造コスト及びタクトタイム(takt time)等を考慮すると、50以下であることが好ましい。
複数の異なる構成層の順序は、記録層全体が相変化する組成を有する限りにおいて、特に限定されない。例えば、記録層を2つの構成層から成る層(M=2)として、2つの構成層を比較したときに、結晶化温度がより高い層を第1構成層とし、結晶化速度がより大きい層を第2構成層としてよい。第2構成層を結晶化速度のより大きい層とすることにより、良好な書き換え保存性が得られる。その場合、d1とd2とは、各構成層の組成に応じて適宜選択され、例えば、d1<d2としてよく、d1=d2としてよく、あるいはd1>d2としてよい。概して、結晶化速度のより大きい層を厚くすることが好ましい。このような構成の記録層は、例えば、後述する図3に示す記録媒体において、好ましく採用される。
あるいは、Mが3以上である場合には、結晶化温度が25℃以下である結晶性の強い材料が記録層の内部に位置するように、記録層を設計してよい。そのような構成によれば、記録層の中心から結晶核生成が生じ、結晶成長が進む。また、この構成の記録層は、第1構成層または第M構成層を結晶性の強い材料から成る層とする場合と比較して、結晶成長に際し、記録層に隣接する誘電体層等の影響を受けにくく、結晶化が速くなると考えられる。このような構成の記録層においては、結晶性の強い材料から成る構成層が、記録層の厚さにおいて中央に位置するように構成層を設計することが好ましい。
あるいは、すべての構成層がSbを含むようにしてよい。すべての構成層がSbを含むと、高い結晶化温度と高速結晶化とを両立した記録層を得ることができる。その場合、記録層組成式は、Sbを好ましくは60原子%以上の割合で含むように設定することが好ましい。また、1以上の構成層をSb単体から成る層としてよい。あるいはまた、Sb単体から成る構成層と、別の単体(例えば、Al)から成る構成層とを、交互に積層してよい。その場合、Sbが記録層全体に占める割合は、60原子%以上とすることが好ましい。
すべての構成層がSbを含む記録層、またはSb単体から成る構成層と別の単体から成る構成層を交互に積層した記録層は、例えば、後述する図2に示すような2つの情報層を有する記録媒体において好ましく用いられる。そのような記録媒体において、各情報層の記録層(特に、第1情報層の記録層)の記録層組成式は、Sbを好ましくは75原子%以上、より好ましくは、80原子%以上の割合で含む。
構成層のより具体的な設計方法の一例を以下に説明する。記録層組成式が、(GeTe)95(BiTe4.0(InTe1.0(mol%)(あるいはGe44.2Te51.2Bi3.7In0.9(原子%)と表すこともできる)である場合、これは、例えば、各化合物から成る構成層に分割することができる。その場合、M=3となる。よって、記録層104の厚さD(nm)が10であるとき、第1構成層/第2構成層/第3構成層は、GeTe(dm=9.5)/BiTe(dm=0.4)/InTe(dm=0.1)と設計できる。あるいは、M=2として、第1構成層/第2構成層を、GeTe(dm=9.5)/(BiTe80(InTe20(dm=0.5)と設計することもできる。あるいは、M=5とし、第1構成層/第2構成層/第3構成層/第4構成層/第5構成層を、GeTe(dm=3.5)/BiTe(dm=0.4)/GeTe(dm=3.0)/InTe(dm=0.1)/GeTe(dm=3.0)と設計することもできる。
いずれの設計においても、記録層104は全体として、(GeTe)95(BiTe4.0(InTe1.0(mol%)の組成を有する。レーザ照射により構成層を構成する成分が混ざり合った部分では、全体の組成による機能が発揮され、混合が生じない部分は、GeTe層、BiTe層、およびInTe層としての機能が発揮されることとなる。ここでは、一例として厚さdmを、望ましい記録層組成式に合わせて厳密に決定した。実際の設計においては、最初に設定した記録層組成式が、実際に得られる記録層の記録層組成式と一致する必要はない。例えば、記録再生性能や信頼性性能を満足するように、必要に応じてdmを調整してもよい。
各構成層は、その元素組成に応じて、記録層において所定の機能を発揮する。例えば、前述したように、GeTeは、結晶化温度が高いことに加えて、大きな光学的変化を有するから、GeTeを含む構成層によって、光学的変化の大きな記録層104を得ることができる。GaTe、InTeも同様の機能を有する。BiTeは、薄膜の結晶化温度が室温以下にあり、室温において結晶である非常に結晶性の強い材料である。よって、これを含む構成層は、結晶化速度を高めるという機能を奏する。BiSeもBiTeと同様に機能する。
InTeは、BiTeと価数が同じTe化物であり、融点も高いので、これを含む構成層は、結晶化温度を高めるという機能と非晶質相を安定させるという機能を奏する。GaTe、AlTe、SbTe、SiTe、およびSiSeもInTeと同様に機能する。SnTeは、GeTeと価数及び結晶構造が同じTe化物であり、薄膜の結晶化温度が室温以下にあり、室温において結晶である非常に結晶性の強い材料であり、融点も高い。よって、これを含む構成層は、結晶化速度を高めるという機能を奏する。BiTe、PbTe、SeSn、BiSeもSnTeと同様に機能する。
ここで、記録層が複数の構成層から成ることによる別の効果を説明する。例えば、GdBiのような融点が高い材料とGeTe−BiTeのような融点が低い材料を混合した記録層を製造する場合、Gd−Bi−Ge−Teスパッタリングターゲットが必要となる。しかしながら、材料の融点に差があると、焼結体を作製することが困難となり、スパッタリングターゲットの充填率が低下する場合がある。そうすると、スパッタ中にスパッタリングターゲットの一部が割れたり、溶けたりするという問題が生じ、媒体の製造が持続できなくなる。あるいは、そのような問題を回避するために、投入電力を下げなければならないため、媒体の生産性が低下する。一方、記録層をGdBi層とGeTe−BiTe層の二層構成とすれば、Gd−BiスパッタリングターゲットとGe−Te−Biスパッタリングターゲットを個々に準備すればよく、容易に記録層を形成でき、媒体を効率よく製造することができる。
記録層104全体の厚さDは、5nm〜16nmが好ましく、より好ましくは6nm〜13nmである。記録層が薄いと光学設計上、Rcが下がってRaが高くなり、反射率比が小さくなる。また、厚いと、熱容量が大きくなり、記録感度が低下する。
複数の構成層で記録層を形成することは、非可逆的相変化を生じる記録層を有する情報記録媒体に適用してもよい。具体的には、複数の構成層を、各層がPd、Au、Ag、Pt、IrおよびTeから選択される少なくとも1つの元素、その元素の酸化物、またはそのTe化物を含むように構成してよい。例えば、第m構成層をTe−Oから成る層とし、第m+1構成層をPd−Te、Au、Pd−O、Ag、PtおよびIrの内から選択される少なくとも1つの組み合わせまたは元素を含む層としてよい。
次に記録層以外の要素について説明する。基板107は、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。材料としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂、又はガラスを挙げることができる。成形性、価格、及び機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、厚さ約1.1mm、直径約120mmの基板107が好ましく用いられる。基板107の反射層106及び記録層104等を形成する側の表面には、レーザ光120を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板107に形成した場合、本明細書においては、レーザ光120に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。たとえば、媒体をBlu−ray Discとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、10nm〜30nmであることが好ましい。また、Blu−ray Discでは、グルーブ面のみに記録を行うが、グルーブ−グルーブ間の距離(グルーブ面中心からグルーブ面中心まで)は、約0.32μmである。
反射層106は、光学的には記録層104に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層104で生じた熱を速やかに拡散させて記録層104を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層106は、誘電体層105から始まり誘電体層102で終わる多層膜を使用環境から保護する機能も有する。反射層106の材料としては、熱伝導率が大きく、且つ使用するレーザ光の波長における光吸収が小さいことが好ましい。例えば、Al、Au、AgおよびCuのうち少なくとも1つを含む材料を用いることができる。また、それらの合金を用いてもよい。特に、Agは波長405nm付近の光吸収が小さいため、情報記録媒体100においてはAgを97原子%以上含む反射層106が好ましく用いられる。
反射層106の耐湿性を向上させる目的ならびに/あるいは熱伝導率または光学特性(例えば、光反射率、光吸収率または光透過率)を調整する目的で、上記Al、Au、Ag、およびCuから選択される1つまたは複数の元素に、他の1つまたは複数の元素を添加した材料を使用してよい。具体的には、Mg、Ca、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Zn、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Te、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、およびDyから選択される少なくとも1つの元素を添加してよい。この際、添加濃度は3原子%以下が好ましい。上記の元素の1つまたは複数が添加された材料としては、たとえば、Al−Cr、Al−Ti、Al−Ni、Au−Cr、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Ag−Nd、Ag−Nd−Au、Ag−Nd−Pd、Ag−In、Ag−In−Sn、Ag−In−Ga、Ag−In−Cu、Ag−Ga、Ag−Ga−Cu、Ag−Ga−Sn、Ag−Cu、Ag−Cu−Ni、Ag−Cu−Ca、Ag−Cu−Gd、およびAg−Zn−Al等の合金材料を用いることができる。これらの材料は何れも耐食性に優れ且つ急冷機能を有する優れた材料である。同様の目的は、反射層106を2以上の層で形成することによっても達成され得る。
反射層106の厚さは、使用する媒体の線速度や記録層104の組成に合わせて調整し、40nm〜300nmの範囲内にあることが好ましい。40nmより薄いと、急冷機能が不足し、記録層の熱が拡散しにくくなり、記録層が非晶質化しにくくなる。300nmより厚いと、急冷機能が過剰になり、記録層の熱が拡散しすぎて、記録感度が低下する(すなわち、より大きなレーザパワーが必要になる)。
誘電体層102及び誘電体層105は、光学距離を調節して記録層104の光吸収効率を高め、結晶相の反射率と非晶質相の反射率との差を大きくして信号振幅を大きくする機能を有する。また、記録層104を水分等から保護する機能も兼ね備える。誘電体層105及び102は、酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物、炭化物及び弗化物から選択される1つの材料または複数の材料の混合物を用いて形成してよい。
より具体的には、酸化物として、例えば、Al、CeO、Cr、Dy、Ga、Gd、HfO、Ho、In、La、Nb、Nd、Sc、SiO、Sm、SnO、Ta、TiO、Y、Yb、ZnO、およびZrO等を挙げることができる。硫化物は、例えばZnS等であり、セレン化物は、例えばZnSe等である。窒化物として、例えばAlN、BN、Cr−N、Ge−N、HfN、NbN、Si、TaN、TiN、VN、およびZrN等を挙げることができる。炭化物として、例えばAl、BC、CaC、Cr、HfC、MoC、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、WC、WC、およびZrC等を挙げることができる。弗化物として、例えば、CeF、DyF、ErF、GdF、HoF、LaF、NdF、YF、およびYbF等を挙げることができる。
これらの化合物の混合物として、例えばZnS−SiO、ZnS−LaF、ZnS−SiO−LaF、ZrO−SiO、ZrO−LaF、ZrO−Cr、ZrO−SiO−Cr、ZrO−Cr−LaF、ZrO−SiO−LaF、ZrO−SiO−Cr−LaF、ZrO−Ga、ZrO−SiO−Ga、ZrO−Ga−LaF、ZrO−SiO−Ga−LaF、ZrO−In、ZrO−SiO−In、ZrO−In−LaF、ZrO−SiO−In−LaF、ZrO−SiO−Cr−Ga、ZrO−SiO−Cr−In、ZrO−SiC、ZrO−SiO−SiC、HfO−SiO、HfO−LaF、HfO−Cr、HfO−SiO−Cr、HfO−Cr−LaF、HfO−SiO−LaF、HfO−SiO−Cr−LaF、HfO−Ga、HfO−SiO−Ga、HfO−Ga−LaF、HfO−SiO−Ga−LaF、HfO−In、HfO−SiO−In、HfO−In−LaF、HfO−SiO−In−LaF、HfO−SiO−Cr−Ga、HfO−SiO−Cr−In、HfO−SiC、HfO−SiO−SiC、SnO−Ga、SnO−In、SnO−SiC、SnO−Si、SnO−Ga−SiC、SnO−Ga−Si、SnO−Nb、SnO−Ta、CeO−Al−SiO等が挙げられる。
これらの材料のうち、ZnS−SiOは非晶質で、熱伝導性が低く、高い透明性及び高い屈折率を有し、また、膜形成時の成膜速度が大きく、機械特性及び耐湿性にも優れていることから、好ましく用いられる。ZnS−SiOは、(ZnS)80(SiO20(mol%)の組成を有することがより好ましい。特に、レーザ光120の入射側に位置する誘電体層102は、ZnS−SiOで形成することが好ましい。その場合、誘電体層102と記録層104との間に界面層103(後述)を設けることが好ましい。
誘電体層102及び105は、硫化物およびZnのいずれをも含まない材料で形成してよい。特に、誘電体層105は、そのような材料で、記録層104上に直接形成してもよい。そのような材料は、ZrO−SiO−Cr、ZrO−SiO−Ga、ZrO−SiO−In、ZrO−SiO−Cr−LaF、ZrO−SiO−Ga−LaF、ZrO−Ga、ZrO−SiO−In−LaF、ZrO−In、HfO−SiO−Cr、HfO−SiO−Ga、HfO−SiO−In、HfO−SiO−Cr−LaF、HfO−SiO−Ga−LaF、HfO−SiO−In−LaF、SnO−Ga−SiC、およびSnO−Ga−Si等である。これらの材料は、透明で、高い屈折率を有し、熱伝導性が低く、機械特性および耐湿性にも優れていることから、好ましく用いられる。
誘電体層102及び誘電体層105は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の厚さdとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層104の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層104の光吸収率Aa(%)、記録層104が結晶相であるときの情報記録媒体100の光反射率Rc(%)と記録層104が非晶質相であるときの情報記録媒体100の光反射率Ra(%)、記録層104が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体100の光の位相差Δφを調整する機能を有する。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差(|Rc−Ra|)又は反射率比(Rc/Ra)が大きいことが望ましい。また、記録層104がレーザ光を吸収するように、Ac及びAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように誘電体層102及び誘電体層105の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法(例えば久保田広著「波動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照)に基づく計算によって正確に決定することができる。
誘電体層の屈折率をn、厚さをd(nm)、レーザ光120の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体100の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、情報記録媒体100のようにBlu−ray Discで使用する場合、18%≦Rc且つRa≦4%であることが好ましい。この条件を満たすように、誘電体層102及び誘電体層105の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定した。その結果、屈折率が1.8〜2.5である誘電体材料を使用する場合、誘電体層102の厚さは20nm〜100nmの範囲内にあることが好ましく、30nm〜80nmの範囲内にあることがより好ましい。また、誘電体層105の厚さは、3nm〜50nmの範囲内にあることが好ましく、5nm〜40nmの範囲内にあることがより好ましい。
界面層103は、誘電体層102と記録層104との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。ここで物質移動とは、誘電体層102を(ZnS)80(SiO20(mol%)で形成した場合に、レーザ光120を記録層104に照射して繰り返し書き換えている間に、ZnSのSが記録層104に拡散していく現象をいう。界面層103はまた、誘電体層102と記録層104の密着性が悪い場合に、両者を接着する機能を有する。界面層は必要であれば誘電体層105と記録層104との間にも設けてよい。
界面層103の材料は、Znおよび/またはSを含まない材料で形成されることが好ましく、ZnおよびSのいずれをも含まない材料で形成することがより好ましい。また、界面層103は、記録層104との密着性に優れ、記録層104にレーザ光120を照射した際に、溶けない又は分解しない、耐熱性の高い材料で形成されることが好ましい。具体的には、界面層103は、酸化物、窒化物、炭化物及び弗化物から選択される1つの材料、または複数の材料の混合物を用いて形成される。
より具体的には、酸化物として、例えば、Al、CeO、Cr、Dy、Ga、Gd、HfO、Ho、In、La、MgO、Nb、Nd、Sc、SiO、Sm、SnO、Ta、TiO、Y、Yb、およびZrO等を挙げることができる。窒化物として、例えば、AlN、BN、Ge−N、HfN、Si−N、Ti−N、VN、およびZrN等を挙げることができる。炭化物として、例えば、C、Al、BC、CaC、Cr、HfC、MoC、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、WC、WC、およびZrC等を挙げることができる。弗化物として、例えば、CeF、DyF、ErF、GdF、HoF、LaF、NdF、YF、およびYbF等を挙げることができる。
混合物として、例えばZrO−Cr、ZrO−SiO−Cr、ZrO−SiO−Cr−LaF、ZrO−Ga、ZrO−SiO−Ga、ZrO−SiO−Ga−LaF、ZrO−In、ZrO−SiO−In、ZrO−SiO−In−LaF、HfO−Cr、HfO−SiO−Cr、HfO−SiO−Cr−LaF、HfO−Ga、HfO−SiO−Ga、HfO−SiO−Ga−LaF、HfO−In、HfO−SiO−In、HfO−SiO−In−LaF、ZrO−SiO−SiC、HfO−SiO−SiC、Ge−Cr−N、およびSi−Cr−N等を挙げることができる。
界面層103の厚さは、1nm〜10nmであることが好ましく、2nm〜7nmであることがより好ましい。界面層103が厚いと、基板107の表面に形成された、反射層106から始まり誘電体層102で終わる積層体の光反射率及び光吸収率が変化して、記録消去性能に影響を与える。誘電体層102が硫化物またはZnを含まない材料で形成される場合には、界面層103は設けなくてもよい。また、誘電体層102の記録層104との密着性が不十分な場合には、界面層103を設けることが好ましい。誘電体層105が硫化物またはZnを含む材料である場合、または誘電体層105の記録層104への密着性が不十分な場合には、記録層104と誘電体層105の間に別の界面層(図示せず)を設けることが好ましい。その場合、当該別の界面層は、界面層103に関して説明した材料と同じ材料で形成することができる。
次に、カバー層101について説明する。情報記録媒体の記録密度を大きくする方法として、短波長のレーザ光を使用して、レーザビームを絞り込めるように対物レンズの開口数NAを大きくする方法がある。この場合、焦点位置が浅くなるため、レーザ光120が入射する側に位置するカバー層101は、より薄く設計される。この構成によれば、より高密度の記録が可能な大容量情報記録媒体100を得ることができる。
カバー層101は、基板107同様、円盤状であり、透明で、且つ表面の平滑な板またはシートである。カバー層101の厚さは、80μm〜120μmであることが好ましく、90μm〜110μmであることがより好ましい。カバー層101は、例えば、円盤状のシートと接着層とから構成されてよく、あるいは、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂のような紫外線硬化性樹脂の単一層から構成されてもよい。また、カバー層101は、誘電体層102の表面に保護層を設け、保護層の表面に設けてもよい。カバー層101はいずれの構成を有していてもよいが、総厚さ(例えば、シートの厚さ+接着層の厚さ+保護層の厚さ、または紫外線硬化性樹脂の単一層の厚さ)が80μm〜120μmとなるようにカバー層を設計することが好ましい。シートは、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、又はPMMAのような樹脂で形成することが好ましく、特にポリカーボネートで形成することが好ましい。また、カバー層101は、レーザ光120入射側に位置するため、光学的には短波長域における複屈折が小さいものであることが好ましい。
続いて、実施の形態1の情報記録媒体100を製造する方法を説明する。情報記録媒体100においては、各層を形成するための支持体となる基板107がレーザ光入射側とは反対の側に位置するため、基板107に反射層106から順に層を形成して媒体を製造する。情報記録媒体100は、案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板107を成膜装置に配置し、基板107の案内溝が形成された表面に、反射層106を成膜する工程(工程a)、誘電体層105を成膜する工程(工程b)、記録層104を成膜する工程(工程c)、界面層103を成膜する工程(工程d)、誘電体層102を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに、誘電体層102の表面にカバー層101を形成する工程を実施することにより、製造される。
ここで、情報記録媒体の製造で用いられるスパッタリング(成膜)装置の一例を説明する。図5に、二極グロー放電型スパッタリング装置の一例を示す。スパッタ室39内は、高真空に保たれる。真空状態は、排気口32に接続された真空ポンプ(図示せず)により維持される。スパッタガス導入口33からは、一定流量のスパッタガス(例えばArガス等)が導入される。基板35は基板ホルダー(陽極)34に取り付けられ、スパッタリングターゲット(陰極)36はターゲット電極37に固定され、電極37は電源38に接続されている。両極間に高電圧を加えることにより、グロー放電が発生し、例えばAr正イオンを加速してスパッタリングターゲット36に衝突させ、ターゲットから粒子を放出させる。放出された粒子は基板35上に堆積し薄膜が形成される。スパッタリング装置は、陰極と接続する電源の種類によって直流型と高周波型に分けられる。
スパッタリング装置は、スパッタ室39を複数個つないだ構成を有してよい。あるいは、スパッタリング装置のスパッタ室39には、複数個のターゲット36を配置してもよい。それらの構成の装置を使用すると、複数の成膜工程を実施して多層膜を形成することができる。この装置は、誘電体層および記録層を含む種々の層を形成するために用いることができ、また、後述する実施の形態の媒体を製造するためにも用いることができる。図5に示す基板35は、具体的には、図1〜4にそれぞれ示す基板107、214、301および401である。
以下の説明を含む本明細書において、各層に関して、「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときの露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
最初に、基板107の案内溝が形成された面に、反射層106を成膜する工程aを実施する。工程aはスパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中で実施する。希ガスは、Arガス、Krガス、およびXeガスのいずれでもよい。
スパッタリングターゲット(以下、ターゲット)としては、Al、Au、AgおよびCuから選択される少なくとも1つの元素を含む材料、または、それらの合金から成るものを用いてよい。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される反射層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の反射層106を得るようにする。ターゲットは、特定の製造方法で製造されたものに限定されず、粉末を溶かして固めたもの、および粉末を高温高圧下で固めたものなどを用いることができる。反射層106として例えばAg−Cu系合金層を形成する際には、Ag−Cu系合金ターゲットを用いてよい。
次に、工程bを実施して、反射層106の表面に、誘電体層105を成膜する。工程bもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、およびXeガスのいずれでもよい。
工程bで使用されるターゲットとしては、酸化物、窒化物、炭化物及び弗化物から選択される1つの材料、または複数の材料の混合物を用いることができる。ターゲットの材料および組成は、所望の組成の誘電体層105を形成できるように決定される。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の誘電体層105を得るようにする。
酸化物を含む誘電体層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いてよく、あるいは5体積%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングを実施してよい。また、金属、半金属、または半導体材料から成るターゲットを用いて、10体積%以上の高い濃度で酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより誘電体層を形成してもよい。
例えば、誘電体層105としてZrO−Inを形成する場合、ZrOとInの粉末を固めたターゲットを用いることができる。粉末が隙間なく固められたターゲットの密度を100%と定義すると、密度は80%以上であることが好ましい。密度が低いほど、水分やガスが不純物としてターゲットに混入しやすくなる。また、隙間が多いターゲットに大きなスパッタパワーを投入すると、ひびが入ったり、割れたりすることがあるため、ターゲットの密度は好ましくはより高い。別法として、ZrOターゲットとInターゲットを別々の電源に取り付けて、共スパッタリングによりZrO−Inを形成してもよい。この場合、各ターゲットに投入するスパッタパワー比を調整して、ZrOとInの組成比を制御することができる。
次に、工程cを実施して、誘電体層105の表面に、記録層104を成膜する。工程cは、さらに1番目からN番目(Nは2以上の整数)までの工程を含み、ここではn番目の工程を工程c(nは整数であり、1≦n≦M−1を満たす)という。この形態においては、第M構成層から形成されるため、第m構成層は、工程c(M−m+1)で形成される。工程cもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば、スパッタ速度が大きい直流電源を用いてもよい。
工程cで使用するターゲットは、所望の組成の第(M+1−n)構成層が得られるように、二以上の元素(構成層を単体の層とする場合は一の元素)の割合を適切に決定して作製する。例えば、先に説明した構成層Rを形成する場合、ターゲットは、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。ターゲットは、これらの元素の組み合わせ(例えば、化合物または混合物)として、Bi−Te、Sb−Te、Ge−Te、In−Te、Ga−Te、Al−Te、Sn−Te、Pb−Te、Se−Sn、Bi−Se、Si−Te、およびSi−Seから選択される少なくとも1つの組み合わせを含んでもよい。
例えば、第m構成層123の組成を、BiTe(Bi40Te60(原子%)と表される)とする場合、Bi−TeターゲットをスパッタリングしてBiTe層を形成する。この際、成膜装置によって第c(M−m+1)工程で使用するターゲットの組成と形成される第m構成層の組成が一致しない場合もあるので、ターゲット中のBiとTeの割合比を調整して、BiTeの組成を有する層を得るようにする。SbTe、GeTe、InTe、SnTe、またはPbTe等を含む構成層を形成する場合も、同様に、ターゲットに含まれる元素の割合を調整して、所望の組成の構成層を得る。
第1構成層から第M構成層(Mは2以上の整数)までの構成層は次の手順で形成する。まず、誘電体層105の表面に、第M構成層125を成膜する(工程c)。続いて、第M構成層125の表面に、第M−1構成層(図示せず)を成膜する(工程c)。順に、第M−2構成層(工程c)、第M−3構成層(工程c)、・・・を順次形成していき、第m+1構成層124を形成し(工程cM−(m+1)+1)、その表面に、第m構成層123を成膜する(工程cM−m+1)。さらに、第m−1構成層(工程cM−(m−1)+1)、第m−2構成層(工程cM−(m−2)+1)、・・・を順次形成していき、第2構成層122を形成し(工程cM−1)、その表面に、第1構成層121を成膜して(工程c)、工程cを終了する。
前述のように、構成層RがGe、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素とTeとを含む場合、これに隣接する構成層は、BiとTeとを含む層(構成層Q)であることが好ましい。そのような2つの構成層は、Ge、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素とTeとを含むターゲットをスパッタリングして構成層Rを形成した後、BiとTeとを含むターゲットをスパッタリングして構成層Qを形成する方法、また、構成層Qをスパッタリングにより形成した後、構成層Rをスパッタリングにより形成する方法によって形成することができる。また、前述の好ましい構成層Tおよび構成層Xもまた、それらの構成層が含むべき元素を含むターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成できる。
−c工程は、1つのスパッタ室内に複数のターゲットを取り付けて実施してよく、または別個のスパッタ室にて実施してよい。あるいは、c−c工程は、複数のターゲットを取り付けたスパッタ室が複数設けられた装置を用いて実施してよい。例えば、GeTe/BiTe/GeTe/BiTe/GeTe/BiTe/GeTe/BiTe/GeTeのように、記録層104において、ある組成の構成層が繰り返し形成される場合には、c−c工程は、1つのスパッタ室で実施することが好ましい。また、1つのスパッタ室に複数のターゲットを取り付ける場合には、成膜装置の大型化を避けるために、小径のターゲットが好ましく用いられる。
各構成層は、前述のように0.1nm〜15nmの厚さdmを有するように形成することが好ましい。このように極めて薄い層は、厚さを精度よく制御できるよう、スパッタパワーをより小さくして形成してもよい。
次に、工程dを実施して、記録層104(第1構成層121)の表面に、界面層103を成膜する。工程dもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、およびXeガスのいずれでもよい。
工程dで使用されるターゲットとしては、酸化物、窒化物、炭化物及び弗化物から選択される1つの材料、または複数の材料の混合物から成るものを用いることができる。ターゲットの材料および組成は、所定の組成の界面層103を形成できるように決定する。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される界面層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の界面層103を得るようにすることができる。
酸化物を含む界面層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いてよく、あるいは5体積%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングを実施してよい。また、金属、半金属、または半導体材料から成るターゲットを用いて、10体積%以上の高い濃度で酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより界面層を形成してもよい。
例えば、界面層103としてZrO−SiO−Crを形成する場合、ターゲットは酸素欠損を抑えたZrO−SiO−Crを用いて、Arガス雰囲気中でスパッタリングを実施してよい。あるいは、そのような界面層103は、Zr−Si−Cr合金ターゲットを用い、酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングを実施して形成してもよい。
次に、工程eを実施して、界面層103の表面に、誘電体層102を成膜する。工程eもまた、スパッタリングにより実施される。工程eは、工程bと同様にして実施できるので、電源、ターゲットおよび雰囲気ガスに関する説明は省略する。工程eで使用するターゲットは、工程bで使用するターゲットと同じ材料から成るものであってよく、あるいは異なる材料から成るものであってよい。例えば、誘電体層102として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る層を形成する場合、スパッタリングは(ZnS)80(SiO20(mol%)から成るターゲットを用いて、1〜3体積%の酸素ガスをArガスに混合した雰囲気中で実施してよい。
上記のように、工程a〜eは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程a〜eは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程a〜eのうちの少なくとも1つの工程を、別のスパッタリング装置を用いて実施してよい。
次に、カバー層101を形成する工程を説明する。誘電体層102を成膜した後、基板107をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層102の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、円盤状のシートを密着させて、紫外線をシート側から照射して樹脂を硬化させることにより、カバー層101を形成することができる。別法として、誘電体層102の表面に、厚さ100μmの紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布して、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、カバー層101を形成することもできる。このようにして、カバー層形成工程を終了させる。
カバー層形成工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層104を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期化工程はカバー層形成工程の前に実施してもよい。このように、工程a〜e、およびカバー層形成工程を順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体100を製造することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、情報記録媒体の一例を説明する。図2に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図2に示す情報記録媒体200は、基板214、第2の情報層250、中間層208、第1の情報層240およびカバー層201がこの順に配置された構成を有する。図2に示す構成の媒体204に関連して、2つの情報層およびそれらに含まれる記録層を区別するために、入射される光に対してより近い層を「第1」と呼び、遠い層を「第2」と称している。
より詳しくは、第2の情報層250は、基板214の一方の表面に反射層213、誘電体層212、第2の記録層211、界面層210、誘電体層209がこの順に配置されて成る。ここで、第2の記録層211は1番目からM番目までの構成層を含み、誘電体層212側から、第M構成層235、・・・、第m+1構成層234、第m構成層233、・・・、第2構成層232、および第1構成層231がこの順に形成されている。
中間層208は、誘電体層209の表面に形成される。第1の情報層240は、この中間層208の表面に、誘電体層207、反射層206、誘電体層205、第1の記録層204、界面層203および誘電体層202がこの順に配置されてなる。ここで、第1の記録層204は1番目からM番目までの構成層を含み、誘電体層205側から、第M構成層225、・・・、第m+1構成層224、第m構成層223、・・・、第2構成層222、および第1構成層221がこの順に形成されている。
この形態においても、レーザ光220は、カバー層201の側から入射される。第2の情報層250の情報の記録は、第1の情報層240を通過したレーザ光220を用いて行なう。第2の情報層250から情報を再生する場合も同様である。情報記録媒体200においては、2つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。この媒体200は、例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の2倍程度の50GBの容量を有する媒体として提供される。以下、各要素を説明する。
まず、2つの記録層211および204について説明する。図示した形態において、第2の記録層211は、実施の形態1の記録層104と同様に、M個の構成層235−231から成る。第2の記録層211は、実施の形態1における記録層104と同様にして、第2の記録層211の記録組成式を定めて、この式を分割する手法により、設計することができる。構成層235−231の好ましい材料および厚さは、先に実施の形態1に関連して説明したとおりであり、ここではその詳細を省略する。
第1の記録層204もまた、M個の構成層225−221から成る。第1の記録層204の構成層の数Mは、第2の記録層211の構成層の数Mと、同じであっても、異なっていてもよい。第1の記録層204を構成する構成層225−221の好ましい材料もまた、実施の形態1の記録層104の構成層125−121のそれと同じであるから、ここではその詳細を省略する。
第1の記録層204の厚さは、第2の記録層211の厚さよりも小さいことが好ましい。それは、第1の情報層240は、レーザ光220が第2の情報層250に到達し得るように、高光透過率となるように設計する必要があることによる。具体的には、第1の記録層204が結晶相であるときの第1の情報層240の光透過率をTc(%)、第1の記録層204が非晶質相であるときの第1の情報層240の光透過率をTa(%)としたとき、45%≦(Ta+Tc)/2となることが好ましい。そのような光透過率を有するように、第1の記録層204の厚さは、3nm〜10nmであることが好ましく、5nm〜8nmであることがより好ましい。
第1の記録層204において、第m構成層の厚さdm(nm)(1は第1情報層の記録層であることを示す)は、0.1≦dm<10を満たすことが好ましい。1≦m≦M−1において、全ての構成層は、同じdmを有してよく、あるいは、少なくとも1つの第m構成層が異なるdmを有していてよい。また、dmは、第1の記録層204の厚さをD(nm)とした場合、dm<Dを満たす。
第1の記録層204について、M、D、およびdmの組み合わせを以下に例示する。
(1)M=10、D=7、すべてのdmが0.7。
(2)M=10、D=7、d1=0.4、d2=1、d3=0.1、d4=1.3、d5=1.2、d6=0.2、d7=0.5、d8=0.9、d9=0.8、d10=0.6。
(3)M=2、D=6、d1=1、d2=5。
(4)M=16、D=8、すべてのdmが0.5。
(5)M=2、D=7、d1=2、d2=5。
(6)M=3、D=6、d1=1、d2=2、d3=3。
(7)M=4、D=6.5、d1=0.5、d2=1、d3=2、d4=3。
(8)M=50、D=5、すべてのdmが0.1。
(9)M=2、D=7.5、d1=6、d2=1.5。
(10)M=5、D=5、すべてのdmが1。
次に記録層以外の要素について説明する。基板214は、実施の形態1の基板107と同様のものである。したがって、ここでは、基板214に関する詳細な説明を省略する。
反射層213は、実施の形態1における反射層106と同様の機能を有し、それの好ましい材料および厚さは反射層106のそれらと同じである。したがって、ここでは反射層213に関する詳細な説明を省略する。
誘電体層212および209は、実施の形態1における誘電体層105および102と同様の機能を有し、層105および102と同じ材料で形成することができる。第2の情報層250に記録された信号は、第1の情報層240を通過して第2の情報層250で反射されたレーザ光で再生される。したがって、第2の情報層250の反射率Rcは、18%≦Rcであることが好ましい。これを満足するために、誘電体層209の厚さは、好ましくは20nm〜100nmであり、より好ましくは30nm〜70nmである。誘電体層212の厚さは、好ましくは3nm〜40nmであり、より好ましくは5nm〜30nmである。
界面層210は、実施の形態1における界面層103と同様の機能を有し、それの好ましい材料および厚さは界面層103のそれらと同じである。したがって、ここでは界面層210に関する詳細な説明を省略する。誘電体層209が硫化物およびZnのいずれをも含まない材料で形成される場合には、界面層210は設けなくてもよい。
中間層208は、レーザ光220の、第1の情報層240における焦点位置と第2の情報層250における焦点位置とを隔てる機能を有する。中間層208には、必要に応じて、第1の情報層240の案内溝が形成されてよい。中間層208は、紫外線硬化性樹脂で形成することができる。中間層208は、レーザ光220が効率よく第2の情報層250に到達するよう、記録再生する波長λの光に対して透明であることが望ましい。
中間層208の厚さは、(i)対物レンズの開口数とレーザ光波長により決定される焦点深度以上であり、(ii)第1の記録層204と第2の記録層211との間の距離が、対物レンズの集光可能な範囲内にあり、(iii)カバー層201の厚さと合わせて、使用する対物レンズが許容できる基板厚公差内となるように選択することが好ましい。したがって、中間層208の厚さは10μm〜40μmであることが好ましい。中間層208は、必要に応じて樹脂層を複数層、積層して構成してよい。たとえば、誘電体層209を保護する層と、案内溝を有する層とから成る2層構成にしてもよい。
次に、第1の情報層240の構成について説明する。誘電体層207は、第1の情報層240の光透過率を高める機能を有する。誘電体層207の材料は、透明であり、かつ波長405nmのレーザ光220に対して、2.4以上の屈折率を有することが好ましい。そのような材料として、例えば、ZrO、Nb、Bi、CeO、またはTiOを用いることができる。TiOは、屈折率が2.7と高く、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。あるいは、TiO2を90mol%以上含む材料を使用してもよい。あるいは、ZrO、Nb、Bi、CeOおよびTiOから選択される少なくとも1つの酸化物を90mol%以上含む材料を使用してもよい。あるいは、ZrO、Nb、Bi、CeOおよびTiOから選択される少なくとも2つの酸化物を混合した材料を使用してもよい。誘電体層207の厚さは10nm〜40nmであることが好ましい。
反射層206は、第1の記録層240の熱を速やかに拡散させる機能を有する。また、上記のように、第1の情報層240は高い光透過率を有する必要があるため、反射層206における光吸収は小さいことが望ましい。よって、反射層213と比較して、反射層206の材料及び厚さはより限定される。反射層206はより薄く設計することが好ましく、光学的には消衰係数が小さく、熱的には熱伝導率が大きくなるように設計することが好ましい。
具体的には、反射層206は、好ましくは、AgまたはAg合金で形成され、より具体的には、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Ag−Nd、Ag−Nd−Au、Ag−Nd−Pd、Ag−In、Ag−In−Sn、Ag−In−Ga、Ag−In−Cu、Ag−Ga、Ag−Ga−Cu、Ag−Ga−Sn、Ag−Cu、Ag−Cu−Ni、Ag−Cu−Ca、Ag−Cu−Gd、またはAg−Zn−Al等の合金材料を用いて形成される。特にAg−Pd−Cu、Ag−Ga−Cu、およびAg−In−Cuは、光吸収が小さく、熱伝導率が大きく、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。反射層206は、好ましくは5nm以上15nm以下の厚さを有する。厚さが5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して第1の記録層204にマークが形成されにくくなる。また、厚さが15nmよりも厚いと、第1の情報層240の光透過率が45%に満たなくなる。
誘電体層202および誘電体層205は、光路長ndを調節して、第1の情報層240のRc、Ra、TcおよびTaを調節する機能を有する。例えば、45%≦(Ta+Tc)/2、5%≦Rc、Ra≦1%を満足するように、誘電体層202及び誘電体層205の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定することができる。例えば、屈折率が1.8〜2.5である誘電体材料を誘電体層202及び205を形成する場合、誘電体層202の厚さは好ましくは10nm〜80nmであり、より好ましくは20nm〜60nmである。また、誘電体層205の厚さは、好ましくは3nm〜40nmであり、より好ましくは5nm〜30nmである。
これらの誘電体層を形成する材料は、実施の形態1における誘電体層102および105と同様でよい。但し、反射層206が上述のようにAgまたはAg合金で形成される場合、誘電体層205は硫化物またはZnを含まないことが好ましい。例えば、誘電体層202は、ZnS−SiOで形成することが好ましい。この場合、界面層203(後述)を設けることが好ましい。誘電体層205の材料としては、ZrO−SiO−Cr、ZrO−SiO−Ga、ZrO−SiO−In、ZrO−SiO−Cr−LaF、ZrO−SiO−Ga−LaF、ZrO−Ga、ZrO−SiO−In−LaF、ZrO−In、HfO−SiO−Cr、HfO−SiO−Ga、HfO−SiO−In、HfO−SiO−Cr−LaF、HfO−SiO−Ga−LaF、およびHfO−SiO−In−LaFが好ましく用いられる。
界面層203は、実施の形態1における界面層103と同様の機能を有し、それの好ましい材料および厚さは界面層103のそれらと同じである。誘電体層202が硫化物およびZnのいずれをも含まない材料で形成されている場合には、界面層203は設けなくてもよい。また、図示した形態において、誘電体層205と第1の記録層204との間には界面層が設けられていない。これは、誘電体層205は好ましくはZnおよびSのいずれをも含まない材料で形成されることによる。
カバー層201は、実施の形態1のカバー層101と同様の機能を有し、同様の材料を用いて形成できる。カバー層201の厚さは、カバー層101の表面から第2の情報層の記録層211までの距離が、好ましくは80μm〜120μmとなり、より好ましくは90μm〜110μmとなるように設定する。例えば、中間層208の厚さが15μmである場合、カバー層201の厚さは85μmであってよい。あるいは、中間層208の厚さが25μmである場合、カバー層201の厚さは75μmであってよい。あるいはまた、中間層208の厚さが30μmである場合、カバー層201の厚さは70μmであってよい。一般に、カバー層201の好ましい厚さは、60μm〜90μmである。
なお、本実施の形態では、2つの情報層を含む情報記録媒体について例として説明したが、情報層が3つ、4つ、・・・と増えると、中間層の数も2つ以上になる。その場合には、中間層はそれぞれ異なる厚さを有することが好ましい。例えば、第1の中間層、第2の中間層、第3の中間層・・・の厚さは、それぞれ15μm、17μm、18μm、・・・、のように設定することが好ましい。また、情報層の数が増えても、カバー層表面から最もレーザ光から遠い情報層の記録層までの距離は、80μm〜120μmとすることが好ましく、カバー層の厚さは10μm〜70μmとすることが好ましい。
以上において、記録層を有する情報層を2つ有する構成の情報記録媒体を説明した。複数の記録層を有する情報記録媒体は、この構成に限定されず、情報層を3つ以上含む構成とすることも可能である。また、図示した形態の変形例においては、例えば2つの情報層のうち、1つの情報層の記録層を、複数の構成層から成り、全体として可逆的相変化を生じる層とし、1つの情報層の記録層を非可逆的相変化を生じる層としてよい。また、情報層を3つ有する情報記録媒体においては、3つの情報層のうち一つを再生専用の情報層とし、一つを、複数の構成層で形成され、可逆的相変化を生じる記録層を有する情報層とし、一つを非可逆的相変化を生じる記録層を有する情報層とすることも可能である。
このように、情報層を2以上有する情報記録媒体には、種々の形態のものがある。いずれの形態においても、少なくとも1つの記録層が厚さ方向に積層された1番目からM番目までの構成層で形成される。各構成層は元素組成の異なる層が1つの層として機能するとともに、各構成層の材料は隣り合う構成層の材料とともに混合物のように機能する。それにより、記録層全体は、結晶化速度が大きく、且つ非晶質相の安定性にも優れたものとなり、そのような記録層を含む情報記録媒体は高線速度且つ広い線速度範囲において、高い消去性能と優れた記録保存性を示す。
続いて、実施の形態2の情報記録媒体200を製造する方法を説明する。情報記録媒体200は、支持体となる基板214上に、第2の情報層250、中間層208、第1の情報層240、およびカバー層201を順に形成して製造する。
詳しくは、案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板214を成膜装置に配置し、基板214の案内溝が形成された表面に、反射層213を成膜する工程(工程f)、誘電体層212を成膜する工程(工程g)、第2の記録層211を成膜する工程(工程h)、界面層210を成膜する工程(工程i)、誘電体層209を成膜する工程(工程j)を順次実施し、さらに、誘電体層209の表面に、中間層208を形成する工程を実施し、それから中間層208の表面に誘電体層207を成膜する工程(工程k)、反射層206を成膜する工程(工程l)、誘電体層205を成膜する工程(工程m)、第1の記録層204を成膜する工程(工程n)、および界面層203を成膜する工程(工程o)、及び誘電体層202を成膜する工程(工程p)を順次実施し、さらに、誘電体層202の表面にカバー層201を形成する工程を実施することにより、製造される。
最初に、基板214の案内溝が形成された面に、反射層213を成膜する工程fを実施する。工程fは、実施の形態1の工程aと同様にして実施される。
次に、工程gを実施して、反射層213の表面に、誘電体層212を成膜する。工程gは、実施の形態1の工程bと同様にして実施される。
次に、工程hを実施して、誘電体層212の表面に、第2の記録層211を成膜する。工程hは、実施の形態1の工程cと同様にして実施される。即ち、工程hにおいては、複数のターゲットを用いて、構成層を形成する工程を複数回実施する。
次に、工程iを実施して、第2の記録層211の表面に、界面層210を成膜する。工程iは、実施の形態1の工程dと同様にして実施される。
次に、工程jを実施して、界面層210の表面に、誘電体層209を成膜する。工程jは、実施の形態1の工程bと同様にして実施される。
上記のように、工程f〜jは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程f〜jは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程f〜jのうちの少なくとも1つの工程を、別のスパッタリング装置を用いて実施してよい。
工程f〜jにより第2の情報層250を形成した基板214を、スパッタリング装置から取り出し、中間層208を形成する。中間層208は次の手順で形成される。まず、誘電体層209の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコートにより塗布する。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させる。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離する。それにより、前記凹凸に相補的な形状の案内溝が紫外線硬化性樹脂に形成されて、形成すべき案内溝を有する中間層208が形成される。基板214に形成された案内溝と中間層208に形成された案内溝の形状は、同様であってもよいし、異なっていてもよい。別法において、中間層208は、誘電体層209を保護する層を紫外線硬化性樹脂で形成し、その上に案内溝を有する層を形成することにより、形成してよい。その場合、得られる中間層は2層構造である。あるいは、中間層は、3以上の層を積層して構成してよい。
中間層208まで形成した基板214を再びスパッタリング装置に配置して、中間層208の表面に第1の情報層240を形成する。第1の情報層240を形成する工程は、工程k〜pに相当する。
工程kは、中間層208の案内溝を有する面に、誘電体層207を成膜する工程である。工程kもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、およびXeガスのいずれでもよい。
工程kで使用されるターゲットの材料および組成は、所望の組成の誘電体層207が形成されるように決定される。例えば、ターゲットとして、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、またはTi−Oから成るターゲットを用いることができる。あるいは、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−OおよびTi−Oから選択される少なくとも1つの組み合わせ(例えば化合物)を90mol%以上含む材料を使用してもよい。あるいは、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、およびTi−Oから選択される少なくとも2つの組み合わせを混合した材料を使用してもよい。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の誘電体層207を得るようにする。酸化物を含む誘電体層207を形成するときのスパッタリング条件等については、先に実施の形態1の工程bに関連して説明したとおりである。
次に、工程lを実施して、誘電体層207の表面に反射層206を成膜する。工程lにおいては、直流電源または高周波電源を使用し、Agを含む合金のターゲットを用いて、希ガス雰囲気中でスパッタリングを実施する。希ガスは、Arガス、Krガス、およびXeガスのいずれでもよい。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される反射層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の反射層206を得るようにする。反射層206の好ましい厚さは5〜15nmと薄いため、スパッタパワーを調節して、情報記録媒体面内の厚さ分布を±5%以内とすることが好ましい。
次に、工程mを実施して、反射層206の表面に誘電体層205を成膜する。工程mは、実施の形態1の工程bと同様にして実施される。
次に、工程nを実施して、誘電体層205の表面に第1の記録層204を成膜する。工程nは、実施の形態1の工程cと同様にして実施される。第1の記録層204を構成する構成層の厚さdmは0.1≦dm<10を満たすことが好ましいので、極めて薄い構成層を形成する場合には厚さが精度よく制御できるよう、スパッタパワーをより小さくしてもよい。
次に、工程oを実施して、第1の記録層204の表面に界面層203を成膜する。工程oは、実施の形態1の工程dと同様にして実施される。
次に、工程pを実施して、界面層203の表面に誘電体層202を成膜する。工程pは、実施の形態1の工程bと同様にして実施される。
上記のように、工程k〜pは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程k〜pは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程k〜pのうちの少なくとも1つの工程を、別のスパッタリング装置を用いて実施してよい。このように、工程k〜pを順次実施して、第1の情報層240を形成する。
第1の情報層240まで形成した後、基板214をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層202の表面に、実施の形態1と同様にして、カバー層201を形成する。例えば、接着剤となる紫外線硬化性樹脂を厚さ10μmとなるように塗布し、厚さ65μmのシートを積層して、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ75μmのカバー層201を形成できる。また、誘電体層202の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により75μmの厚さとなるように塗布して、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、カバー層201を形成することもできる。このようにして、カバー層形成工程を終了させる。
カバー層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第2の情報層250及び第1の情報層240の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層208を形成する前もしくは後に、第2の情報層250について実施し、カバー層201を形成する前もしくは後に、第1の情報層240について実施してよい。あるいは、カバー層201を形成する前もしくは後に、第1の情報層240および第2の情報層250について初期化工程を実施してもよい。このように、工程f〜j、中間層形成工程、工程k〜p、およびカバー層形成工程を順次実施することにより、実施の形態2の情報記録媒体200を製造することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、情報記録媒体の一例を説明する。図3に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図3に示す情報記録媒体300は、基板301の一方の表面に、誘電体層302が形成され、誘電体層302の表面に界面層303が形成され、界面層303の表面に記録層304が形成され、記録層304の表面に界面層305が形成され、界面層305の表面に誘電体層306が形成され、誘電体層306の表面に光吸収補正層307が形成され、光吸収補正層307の表面に反射層308が形成され、ダミー基板310が接着層309により貼り合わされた構成を有する。記録層304は1番目からM番目までの構成層を含み、界面層303側から、第1構成層321、第2構成層322、・・・、第m構成層323、第(m+1)構成層324、・・・、第M構成層325がこの順に形成されている。
この構成の情報記録媒体は、波長660nm付近の赤色域のレーザ光で情報を記録再生する、DVD−RAMとして使用できる。この構成の情報記録媒体300には、基板301側からレーザ光320が入射し、それにより情報の記録及び再生が実施される。
まず、記録層304について説明する。記録層304は、実施の形態1の記録層104および実施の形態2の記録層204および211と同様に、M個の構成層321−325から成る。記録層304は、実施の形態1における記録層104と同様にして、記録層304の記録組成式を定めて、この式を分割する手法により、設計することができる。構成層321−325の好ましい材料および厚さは、先に実施の形態1に関連して説明したとおりであり、ここではその詳細を省略する。
次に記録層以外の要素について説明する。基板301は、円盤状で、透明且つ表面の平滑な板である。基板301は、実施の形態1の基板107と同様の材料を用いて形成される。図示した形態において、厚さ約0.6mm、直径120mmの基板301が好ましく用いられる。基板301の誘電体層及び記録層等を形成する側の表面には、レーザ光を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。この形態の媒体を、例えば、DVD−RAMとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、40nm〜65nmであることが好ましい。DVD−RAMの場合、記録は、グルーブ面とランド面の両方において実施され、グルーブ−ランド間の距離(グルーブ面中心からランド面の中心まで)は、約0.615μmである。
誘電体層302及び誘電体層306は、実施の形態1における誘電体層102および誘電体層105と同様の機能を有し、その好ましい材料および厚さは誘電体層102および誘電体層105のそれらと同じである。媒体300を例えばDVD−RAMとして使用する場合、反射率Rcは、15%≦Rc且つRa≦4%であることが好ましい。これを満足するように、誘電体層302の厚さは、好ましくは100nm〜200nmであり、より好ましくは130nm〜170nmである。誘電体層306の厚さは、好ましくは20nm〜60nmであり、より好ましくは30nm〜50nmである。
誘電体層302及び306は、ZnS−SiOで形成されることが好ましい。また、誘電体層302および306はそれぞれ、屈折率の異なる2以上の層で形成されてよい。例えば、誘電体層302は、・・・/(界面層303)/SiO/ZnS−SiO/(基板301)のように構成してもよい。このような構成により、Rc/Raが大きくなり、信号品質が向上する。
界面層303及び305は、実施の形態1の界面層103と同様に、誘電体層302と記録層304との間、及び誘電体層306と記録層304との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。また、界面層は、誘電体層と記録層との密着性が悪い場合に、両者を接着する機能をも有する。界面層303及び305の好ましい材料および厚さは、実施の形態1の界面層103のそれらと同様である。誘電体層302及び/または誘電体層306が硫化物およびZnのいずれをも含まない材料で形成され、記録層304と良好に密着する場合には、界面層303及び/または界面層305は設けなくてもよい。
光吸収補正層307は、記録層304が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。光吸収補正層307は、屈折率が高く、且つ適度に光を吸収する材料で形成されることが好ましい。例えば、屈折率nが3以上6以下、消衰係数kが1以上4以下である材料を用いて、光吸収補正層307を形成できる。具体的には、Ge−CrおよびGe−Mo等の非晶質のGe合金、Si−Cr、Si−MoおよびSi−W等の非晶質のSi合金、SnTe及びPbTe等のTe化物、ならびにTi、Hf、Nb、Ta、Cr、Mo、およびW等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材料を使用することが好ましい。光吸収補正層307の厚さは、20nm〜50nmであることが好ましい。
反射層308は、実施の形態1における反射層106と同様の機能を有する。反射層308は、熱伝導率の大きなAgまたはAg合金、例えば、Ag−In、Ag−Cu、またはAg−Gaで形成されることが好ましい。熱伝導率を低下させないために、Ag以外の元素の濃度は1.5原子%以下が好ましい。反射層308の厚さは、使用する媒体の線速度や記録層304の組成に合わせて調整し、60nm〜300nmであることが好ましい。60nmより薄いと急冷条件が不足し、記録層の熱が拡散しにくくなり、記録層が非晶質化しにくくなる。300nmより厚いと急冷条件が過剰になり、記録層の熱が拡散しすぎて、記録感度が低下する(すなわち、より大きなレーザパワーが必要になる)。
図示した情報記録媒体300において、接着層309は、ダミー基板310を反射層308に接着するために設けられる。接着層309は、耐熱性及び接着性の高い材料、例えば、紫外線硬化性樹脂等の接着樹脂を用いて形成してよい。具体的には、アクリル樹脂を主成分とする材料またはエポキシ樹脂を主成分とする材料で、接着層309を形成してよい。また、必要に応じて、接着層309を形成する前に、紫外線硬化性樹脂よりなる、厚さ1μm〜20μmの保護層を反射層308の表面に設けてもよい。接着層309の厚さは好ましくは15μm〜40μmであり、より好ましくは20μm〜35μmである。
ダミー基板310は、情報記録媒体300の機械的強度を高めるとともに、基板301上に形成された積層体を保護する。ダミー基板310の好ましい材料は、基板301の好ましい材料と同じである。ダミー基板310を貼り合わせた情報記録媒体300において、機械的な反り、および歪み等が発生しないように、ダミー基板310と基板301は、実質的に同一材料で形成され、同じ厚さを有することが好ましい。
実施の形態3の情報記録媒体300は、1つの記録層を有する片面構造ディスクである。本発明の情報記録媒体は、2つの記録層を有してよい。例えば、実施の形態3において反射層308まで積層したものを、反射層308同士を対向させて、接着層309を介して貼り合わせることによって、両面構造の情報記録媒体が得られる。この場合、2つの積層体の貼り合わせは、接着層309を遅効性樹脂で形成し、圧力と熱の作用を利用して実施する。反射層308の上に保護層を設ける場合には、保護層まで形成した積層体を、保護層同士を対向させて貼り合わせることにより、両面構造の情報記録媒体を得る。
続いて、実施の形態3の情報記録媒体300を製造する方法を説明する。本実施の形態の製造方法は、レーザ入射側の誘電体層302の形成を最初に行なう点が、実施の形態1および2の製造方法と異なる。情報記録媒体300は、案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板301を成膜装置に配置し、基板301の案内溝が形成された表面に、誘電体層302を成膜する工程(工程q)、界面層303を成膜する工程(工程r)、記録層304を成膜する工程(工程s)、界面層305を成膜する工程(工程t)、誘電体層306を成膜する工程(工程u)、光吸収補正層307を成膜する工程(工程v)および反射層308を成膜する工程(工程w)を順次実施し、さらに、反射層308の表面に接着層309を形成する工程、およびダミー基板310を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。
最初に、基板301の案内溝が形成された面に、誘電体層302を成膜する工程qを実施する。工程qは、実施の形態1の工程eと同様にして実施される。
次に、工程rを実施して、誘電体層302の表面に、界面層303を成膜する。工程rは、実施の形態1の工程dと同様にして実施される。
次に、工程sを実施して、界面層303の表面に、記録層304を成膜する。工程sは、第1構成層から順に構成層を形成して、最後に第M構成層を形成することを除いては、実施の形態1の工程cと同様にして実施される。各構成層の形成は、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/もしくは窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば、スパッタ速度が大きい直流電源を用いてもよい。この工程で使用されるターゲットは、実施の形態1の工程cで使用するターゲットと同様の材料を用いて作製できる。
次に、工程tを実施して、記録層304(第M構成層325)の表面に、界面層305を成膜する。工程tは、実施の形態1の工程dと同様にして実施される。
次に、工程uを実施して、界面層305の表面に、誘電体層306を成膜する。工程uは、実施の形態1の工程eと同様にして実施される。例えば、(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る誘電体層306は、(ZnS)80(SiO20(mol%)から成るターゲットを用いて、1〜3体積%の酸素ガスをArガスに混合した雰囲気中でスパッタリングすることにより形成してよい。
次に、工程vを実施して、誘電体層306の表面に、光吸収補正層307を成膜する。工程vにおいては、直流電源または高周波電源を用いて、スパッタリングを実施する。スパッタリングは、具体的には、Ge−CrおよびGe−Mo等の非晶質のGe合金、Si−Cr、Si−MoおよびSi−W等の非晶質のSi合金、SnTe及びPbTe等のTe化物、ならびにTi、Hf、Nb、Ta、Cr、Mo、W等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材料から成るターゲットを使用することが好ましい。スパッタリングは希ガス雰囲気中で実施してよく、Arガス雰囲気中で実施してよい。成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される光吸収補正層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の光吸収補正層307を得ることができる。
次に、工程wを実施して、光吸収補正層307の表面に、反射層308を成膜する。工程wは、実施の形態1の工程aと同様にして実施される。ターゲットとしては、AgまたはAg合金、たとえば、Ag−In、Ag−Cu、またはAg−Gaから成るターゲットが好ましく用いられる。
成膜装置によっては、ターゲットの組成と形成される反射層の組成が一致しない場合もあるので、その場合は適宜ターゲットの組成を調整して、所望の組成の反射層308を得ることができる。
上記のように、工程q〜wは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程q〜wは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程q〜wのうちの少なくとも1つの工程を、別のスパッタリング装置を用いて実施してよい。
反射層308を成膜した後、基板301をスパッタリング装置から取り出す。それから、反射層308の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板310を密着させて、紫外線をダミー基板310側から照射して、樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。
貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層304を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期化工程は貼り合わせ工程の前に実施してもよい。このように、工程q〜w、接着層の形成工程、およびダミー基板の貼り合わせ工程を順次実施することにより、実施の形態3の情報記録媒体300を製造することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、電気的エネルギーを印加して情報の記録および再生を実施する情報記録媒体の一例を説明する。図4に、その情報記録媒体400の一部断面とそれを使用するシステムの一例を示す。情報記録媒体400は、いわゆるメモリである。
情報記録媒体400は、基板401の表面に、下部電極402、記録層403および上部電極404がこの順に形成されている。基板401として、具体的には、Si基板などの半導体基板、ポリカーボネート基板、またはSiO基板およびAl基板などの絶縁性基板を使用できる。下部電極402および上部電極404は、導電材料、例えば、Au、Ag、Pt、Al、Ti、WおよびCrならびにこれらの混合物のような金属をスパッタリングすることにより形成される。
この媒体において、記録層403は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で可逆的相変化を生じ得る。記録層403は、厚さ方向に積層された第1番目から第M番目(Mは2以上の整数)までの構成層を含み、基板401側からm番目に位置する構成層を第m構成層(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なり、各構成層を構成する成分の割合で記録層全体の組成を表したときに、記録層全体として相変化を生じ得る組成となるように構成されている。この媒体についても、記録層全体の組成を表わす式を複数の群に分割して各群に対応する層を積層して記録層を形成することにより、記録層の結晶化速度および結晶化温度が向上し、高速での情報の記録が可能となる。
この形態において、記録層を構成する構成層のうち、少なくとも一つの構成層は、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。また、各構成層の厚さdm(nm)は、1<dm≦100を満たすことが好ましい。この情報記録媒体400については、後述の実施例において、その作動方法とともにさらに説明する。
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。以下の実施例において、作製した各媒体を特定するために、媒体番号を用いて「媒体『媒体番号』」と呼ぶ。
(実施例1)
実施例1では、Blu−ray Disc仕様の情報記録媒体を作製して実験を行った。図1に示す情報記録媒体100を製造し、記録再生評価並びに信頼性評価を実施した。これらの評価は、2倍速と5倍速で実施した。
情報記録媒体100において、記録層104は1番目からM番目までの構成層を含む。構成層の数Mおよび厚さdmを変えた、7種類の媒体100−1〜7を準備した。また、比較のために媒体100−Aも準備した。媒体100−Aの記録層104は、(GeTe)95(BiTe(InTe(mol%)から成り、厚さDが10nmである単層である。
媒体100−1の記録層104は、3つの構成層から成り(M=3)、3つの構成層はGeTe、BiTeおよびInTeからそれぞれ成る(以下、これらの層を便宜上、GeTe層、BiTe層およびInTe層と呼ぶ)。媒体100−2の記録層104は、6つの構成層から成り(M=6)、GeTe層、BiTe層およびInTe層がこの順に2回繰り返し形成された構成を有する。媒体100−3の記録層104は、7つの構成層から成り(M=7)、GeTe層、BiTe層およびInTe層の3種類の構成層を含む。媒体100−3において、第1構成層と第7構成層は同じ元素組成を有する層(即ち、GeTe層)であり、GeTe層は、2層おきに設けられている。
媒体100−4の記録層104は、11の構成層から成り(M=11)で、媒体100−1と同様に3種類の構成層を含む。媒体100−4において、第1構成層と第11構成層は、同じ元素組成を有する層(GeTe層)であり、GeTe層は、1層おきに設けられている。媒体100−5の記録層104は、7つの構成層から成り(M=7)、媒体100−1と同様に3種類の構成層を含む。媒体100−5において、第1構成層と第7構成層は、同じ元素組成を有する層(即ち、GeTe層)であり、GeTe層は、1層おきに設けられている。媒体100−6の記録層104は、5つの構成層から成り、媒体100−1と同様に3種類の構成層を含む。第1構成層と第5構成層は、同じ元素組成を有する層(即ち、GeTe層)であり、GeTe層は、1層おきに設けられている。媒体100−7の記録層104は、3つの構成層から成り、第1および第3構成層としてGeTe層を、第2構成層として(BiTe60(InTe40から成る層を含む。第1構成層と第3構成層は、同じ元素組成を有する層(即ち、GeTe層)である。
いずれの媒体においても、各構成層の厚さdmは各構成層の化合物を合わせて表した組成式が、媒体100−Aの記録層の組成と同じとなるように配分した。また、1番目からM番目までの構成層dmの合計は媒体100−AのDと等しくした。
以下、実施例1の媒体100−1〜7の製造方法について説明する。記録層104を除く各層は、いずれの媒体においても、同じ材料で、同じ厚さとなるように、同じスパッタリング条件で形成した。各層の材料と厚さを説明する。
基板107として、案内溝(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間の距離0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を準備し、図5に示すようなスパッタリング装置内に取り付けた。基板107の案内溝が形成された表面に、反射層106としてAg−Cu系合金から成る厚さ80nmの層を、誘電体層105として(ZrO50(In50(mol%)から成る厚さ22nmの層をスパッタリングにより形成した。誘電体層105の表面に、第M構成層から開始して、第1構成層まで順にスパッタリングにより積層し、表1に示す構成の記録層104をそれぞれ形成した。次に、記録層104上に、界面層103として(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)から成る厚さ5nmの層を、誘電体層102として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る厚さ60nmの層を、順にスパッタリングにより形成した。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットはすべて、円形で、100mmの直径および6mmの厚さを有していた。反射層106は、Ag−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層105は、(ZrO50(In50(mol%)ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして形成した。
次に記録層104のスパッタリング条件について、媒体毎に説明する。構成層を形成するためのスパッタリングはいずれも、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で実施した。
媒体100−1の記録層104の形成手順は次の通りである。まず、In−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第3構成層としてInTe層を誘電体層105上に形成した。次に、Bi−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第2構成層としてBiTe層を形成した。次に、Ge−Teターゲットを、100Wの出力でスパッタリングして、第1構成層としてGeTe層を形成した。
媒体100−2の記録層104の形成手順は次のとおりである。まず、In−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第6構成層としてInTe層を誘電体層105上に形成した。次に、Bi−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第5構成層としてBiTe層を形成した。次に、Ge−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第4構成層としてGeTe層を形成した。次に、第6〜第4構成層の形成に使用したものと同様のターゲットをそれぞれ使用して、同じ出力でスパッタリングを繰り返して、第3構成層としてのInTe層、第2構成層としてのBiTe層、および第1構成層としてのGeTe層を形成した。
媒体100−3の記録層104の形成手順は次のとおりである。まず、Ge−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第7構成層としてGeTe層を誘電体層105上に形成した。次に、In−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第6構成層としてInTe層を形成した。次に、Bi−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第5構成層としてBiTe層を形成した。次に、第7〜第5構成層で使用したものと同様のターゲットを使用して、同じ出力でスパッタリングを繰り返して、第4構成層としてのGeTe層、第3構成層としてのInTe層、および第2構成層としてのBiTe層を形成した。次に、再びGe−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第1構成層としてのGeTe層を形成した。
媒体100−4の記録層104の形成手順は次のとおりである。まず、Ge−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第11構成層としてGeTe層を誘電体層105上に形成した。次に、Bi−Teターゲットを、50Wの出力でスパッタリングして、第10構成層としてBiTe層を形成した。
その後、Ge−Teターゲット(第9構成層)、In−Teターゲット(第8構成層)、Ge−Teターゲット(第7構成層)、Bi−Teターゲット(第6構成層)、Ge−Teターゲット(第5構成層)、In−Teターゲット(第4構成層)、Ge−Teターゲット(第3構成層)、Bi−Teターゲット(第2構成層)、Ge−Teターゲット(第1構成層)を、この順で、それぞれ50Wの出力でスパッタリングした。それにより、表1に示すように、第9、第7、第5、第3および第1構成層としてGeTe層を形成し、第8および第4構成層としてInTe層を形成し、第6および第2構成としてBiTe層を形成した。
媒体100−5の記録層104は、Ge−Teターゲット(第7構成層)、Bi−Teターゲット(第6構成層)、Ge−Teターゲット(第5構成層)、In−Teターゲット(第4構成層)、Ge−Teターゲット(第3構成層)、Bi−Teターゲット(第2構成層)およびGe−Teターゲット(第1構成層)を、この順で、それぞれ50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。表1に示すように、第7、第5、第3および第1構成層としてGeTe層を形成し、第6および第2構成層としてBiTe層を形成し、第4構成層としてInTe層を形成した。
媒体100−6の記録層104は、Ge−Teターゲット(第5構成層)、In−Teターゲット(第4構成層)、Ge−Teターゲット(第3構成層)、Bi−Teターゲット(第2構成層)およびGe−Teターゲット(第1構成層)を、この順で、それぞれ50Wの出力でスパッタリングして形成した。
媒体100−7の記録層104は、次の手順で形成した。まず、Ge−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングして、第3構成層としてのGeTe層を形成し、次に、Bi−In−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングして、第2構成層としての(BiTe60(InTe40層を形成し、次に、第3構成層と同様のターゲットおよび出力で第1構成層としてのGeTe層を形成した。
媒体100−Aの記録層104は、Ge−Te−Bi−Inターゲットを100Wの出力でスパッタリングし、(GeTe)95(BiTe(InTe(mol%)で表される組成の層が得られるように形成した。
界面層103は、(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)の組成を有するターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして、第1構成層121上に形成した。誘電体層102は、(ZnS)80(SiO20(mol%)の組成を有するターゲットを、圧力0.13PaのArガスに3体積%のOガスを混合した雰囲気中で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして形成した。
以上のようにして基板107の上に反射層106、誘電体層105、記録層104、界面層103および誘電体層102を順次成膜した後、基板107をスパッタリング装置から取り出した。それから、誘電体層102の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で100μmの厚さで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、カバー層101を形成した。
カバー層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、情報記録媒体100の記録層104を、半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程においては記録層104の材料を溶融させないため、初期化後の記録層104においては各々の構成層が結晶化し、隣り合う構成層の材料の混合は生じていない又は生じているとしてもその度合いは小さいと考えられる。これにより初期化工程が終了し、媒体100−1〜7及び100−Aの作製が完了した。作製した媒体100−1〜7はいずれも、鏡面部反射率がRc約20%、Ra約3%であった。
次に、情報記録媒体100の記録再生評価方法について説明する。記録再生評価は、情報記録媒体100を回転させるスピンドルモータと、レーザ光120を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光120を情報記録媒体100の記録層104上に集光させる対物レンズとを備えた一般的な構成の記録再生装置を用いて実施した。媒体100の評価においては、波長405nmの半導体レーザと開口数0.85の対物レンズを使用し、25GB容量相当の記録を行った。記録は、半径50mmの位置にて、2倍速(9.84m/秒、72Mbps)と5倍速(24.6m/秒、180Mbps)で情報が記録されるように回転数を制御して実施した。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.35mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも0.35mWよりも大きくしてもよい。
記録再生評価は、信号振幅対ノイズ比(CNR)と消去率の測定に基づいて実施した。CNRの測定方法は次のとおりである。レーザ光120を、高パワーレベルのピークパワーPp(mW)と低パワーレベルのバイアスパワーPb(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体100に向けて照射して、2T(マーク長0.149μm)の単一信号と9T(マーク長0.671μm)の単一信号を交互に計11回、グルーブ面に記録する。11回目の2T信号が記録された状態で、スペクトラムアナライザーで振幅(C)(dBm)とノイズ(N)(dBm)を測定し、その差からCNR(dB)を測定する。
消去率の測定方法は次のとおりである。上記の11回目の2T信号の振幅を測定し、12回目に9T信号を記録して、2T信号がどれだけ減衰したかスペクトラムアナライザーで測定する。この減衰量を消去率(dB)と定義する。
CNR測定の際の記録パワーを決めるために、ピークパワー(Pp)及びバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。バイアスパワーを一定の適切な値に固定し、2T振幅のピークパワー依存性を測定し、2T振幅を飽和させた。2T振幅の飽和値よりも3dBm低い2T振幅におけるピークパワーを、仮のPp1に設定した。ピークパワーをPp1に固定し、CNRと消去率のバイアスパワー依存性を測定した。この測定において、消去率が20dB以上となるときの、低パワー側のバイアスパワーPb0と高パワー側のバイアスパワーPb1の平均値をPbとした。バイアスパワーをPbに固定し、再び2T振幅のピークパワー依存性を測定し、2T振幅を飽和させ、2T振幅の飽和値よりも3dBm低い2T振幅におけるピークパワーを1.3倍した値を、Ppとした。この手順で、2倍速および5倍速のPpとPbをそれぞれ決めた。
媒体100−1〜7および100−Aについて、上記手順で求めたPpとPbを使用して、CNRと消去率を、2倍速と5倍速の条件で測定した((1)2TCNR、(2)2T消去率)。
次に、媒体の信頼性評価方法について説明する。信頼性評価は、記録した信号が高温高湿条件下に置かれても保存されるかどうか、また、高温高湿条件下に置かれた後も書き換えが可能かどうかを調べるために実施する。評価には、上記と同様の記録再生装置を用いた。まず、各媒体に、上記のPpとPbとの間でパワー変調しながら2T信号と9T信号を交互に計11回、同一トラックのグルーブ面に記録する。このような記録を、2倍速と5倍速にて、複数トラックで実施し、2TCNRを測定しておく。
続いて、これらの媒体を、温度80℃、相対湿度80%の恒温槽に100時間放置した後、取り出した。取り出した後、記録しておいた2T信号を1倍速で再生してCNRを測定した(記録保存性)。また、記録しておいた2T信号に、PpとPbとの間でパワー変調しながら9T信号を1回オーバライトして消去率を測定した(書換保存性)。オーバライトは、2倍速で記録された信号には2倍速で、5倍速で記録された信号には5倍速で実施した。
恒温槽に放置する前のCNR(B)と放置した後のCNR(A)との差、CNR(A)−CNR(B)、から記録保存性を評価する((3)CNR変化)。放置後のCNRが低下していると信頼性は芳しくない。記録保存性は低倍速で劣化しやすい。また、恒温槽に放置する前の消去率(B)と放置した後の消去率(A)との差(消去率(A)−消去率(B))から書き換え保存性を評価する((4)消去率変化)。放置後の消去率が低下していると信頼性は芳しくない。書換保存性は高倍速で劣化しやすい。
8種類の媒体の2倍速および5倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化の評価結果を表1に示す。表中、各記号の意味は次のとおりである。
(1)CNR
○:45dB以上
△:40dB以上45dB未満
×:40dB未満
(2)消去率
○:30dB以上
△:20dB以上30dB未満
×:20dB未満
(3)CNR変化
○:1dB以下
△:1dBより大きく3dB未満
×:3dB以上
(4)消去率変化
○:3dB以下
△:3dBより大きく5dB未満
×:5dB以上
いずれの評価においても、×評価は、その線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能であることを示す。○がより好ましい。
Figure 0005042019
表1に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体100−1〜7は、すべての項目で○の評価が得られ、2倍速から5倍速で使用できるものであった。これに対し媒体100−Aは、2T消去率の5倍速が×、消去率変化の2倍速が△、5倍速が×の評価であった。この結果より、記録層が単層構造である媒体は、2倍速から5倍速で使用できないことがわかった。これらの結果から、記録層全体の組成が同じであっても、媒体100−1〜7のように組成を分割して複数層構造の記録層とすることにより、初期性能と信頼性の両立が可能になると考えられる。
これらの媒体をさらに厳密に比較すると、積層数または積層形態の相違により、信頼性において異なる特徴が見られた。具体的には、媒体100−1および100−2のように、第1構成層と第M構成層の元素組成が異なる場合には、高倍速の書き換え保存性が優れていた。より具体的には、両媒体は5倍速での消去率変化が2dB以内と小さかった。さらに、媒体100−1の消去率変化は2dB程度であるのに対し、媒体100−2の消去率変化は1dB程度であり、極めて小さかった。すなわち、第1構成層と第M構成層が異なる元素組成を有する場合、構成層の数Mがより多いと、高速の書き換え保存性がより優れる傾向にあった。
一方、媒体100−3〜100−7のように、第1構成層と第M構成層が同じ元素組成を有する場合には、低倍速の記録保存性が優れていた。それを検証するために信頼性を評価する試験を継続し、記録保存性を、媒体を恒温槽にそれぞれ200時間、300時間、および500時間放置して、評価した。80℃80%の条件で100時間放置後に、○または△の評価が得られれば、常温環境における推定寿命は30年以上であるので、実用上、問題はない。よって、200時間以上の試験で×と評価されても実用上問題はなく、○であれば推定寿命が数百年または数千年と長くなることを意味する。結果を表1−2に示す。
Figure 0005042019
表1−2に示すように、100−1および100−2の媒体では、300時間以上放置すると、△または×の評価が見られるのに対し、媒体100−3〜100−7はいずれも、300時間放置しても良好な記録保存性を示した。媒体100−3については、500時間放置後に、2倍速で2.7dB、5倍速で1.3dBのCNR低下が生じた。媒体100−4については、500時間放置後も、CNR低下は1dB以下であった。媒体100−5については、500時間放置後に、2倍速で1.8dBのCNR低下が生じた。媒体100−6については、500時間放置後に、2倍速で2.8dB、5倍速で1.5dBのCNR低下が生じた。媒体100−7については、500時間放置後に、2倍速で4dB、5倍速で2.5dBのCNR低下が生じた。
これらの結果から、第1構成層と第M構成層の元素組成が同じである場合にも、構成層の数が多いと、記録保存性がより良好となることがわかった。また、媒体100−3と媒体100―5との比較から、記録層全体に多く含まれる成分(本実施例ではGeTe)は薄い多くの層に分割して、できるだけ短い周期、すなわち1層おきに設けると、媒体の信頼性がより高くなることがわかった。
(実施例2)
実施例2においても、Blu−ray Disc仕様の情報記録媒体を作製して実験を行った。実施例1同様、図1の情報記録媒体100を製造し、記録再生評価並びに信頼性評価を実施した。実施例1の媒体100−1と同様の構成を有する、媒体100−11〜13および比較のための媒体100−B〜Dを準備した。媒体100−11〜13と媒体100−1との相違点は、表2に示すように記録層104の第3構成層の材料である。
媒体100−11〜13は、第3構成層のスパッタリング条件を以下のとおりとしたことを除いては、実施例1で説明した媒体100−1の製造方法と同様の方法で製造した。いずれの媒体についても、第3構成層は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中でスパッタリングを実施して形成した。
媒体100−11の第3構成層は、Ga−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、GaTe層とした。比較のための媒体100−Bの記録層は、(GeTe)95(BiTe(GaTe(mol%)から成る単層とした。その単層記録層は、Ge−Te−Bi−Gaターゲットを100Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体100−12の第3構成層は、Al−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、AlTe層とした。比較のための媒体100−Cの記録層は、(GeTe)95(BiTe(AlTe(mol%)から成る単層とした。その単層記録層は、Ge−Te−Bi−Alターゲットを100Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体100−13の第3構成層は、Sb−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、SbTe層とした。媒体100−13との比較のための媒体100−Dの記録層は、(GeTe)95(BiTe(SbTe(mol%)から成る単層とした。その単層記録層は、Ge−Te−Bi−Sbターゲットを100Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
作製した媒体100−11〜13および100−B〜Dはいずれも、鏡面部反射率がRc約20%、Ra約3%であった。
これらの媒体の記録再生評価方法および信頼性評価方法は、実施例1で説明したとおりである。これら6種類の媒体の2倍速および5倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化の評価結果を表2に示す。表中の記号の意味は実施例1に関連して説明したとおりである。
Figure 0005042019
表2に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体100−11〜13は、すべての項目で○の評価が得られ、2倍速から5倍速で使用できるものであった。これに対し媒体100−B〜Dについては、消去率が△または×評価であった。第3構成層をGaTe、AlTe、またはSbTeで形成した場合も、実施例1と同様の結果が得られた。
(実施例3)
実施例3においても、Blu−ray Disc仕様の情報記録媒体を作製して実験を行った。図1の情報記録媒体100を製造し、記録再生評価並びに信頼性評価を実施した。本実施例では、媒体100−21〜29および比較のための媒体100−E〜Mを準備した。これらの媒体は、記録層104を除いては、実施例1と同じ構成(材料および厚さを含む)を有し、同じ方法で製造した。媒体100−21〜29と実施例1の媒体とが異なる点は、表3に示すように記録層104が2つの構成層から成ること(M=2)、第1構成層がBi−TeまたはBi−Teと他の元素との組み合わせを含むこと、および記録層104全体の厚さが16nmであることである。また、いずれの媒体においても、第2構成層は、GeTe層として誘電体層105上に15.2nmの厚さで形成した。
以下に、各媒体の第1構成層について説明する。いずれの媒体についても、第1構成層または単層記録層の形成は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中でスパッタリングを実施して形成した。
媒体100−21の第1構成層は、Bi−In−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(InTe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Eの記録層104は、Ge−Te−Bi−Inターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(InTe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−22の第1構成層は、Bi−Sb−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(SbTe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Fの記録層104は、Ge−Te−Bi−Sbターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(SbTe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−23の第1構成層は、Bi−Si−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(SiTe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Gの記録層104は、Ge−Te−Bi−Siターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(SiTe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−24の第1構成層は、Bi−Te−Si−Seターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(SiSe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Hの記録層104は、Ge−Te−Bi−Si−Seターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(SiSe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−25の第1構成層は、Bi−Ga−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(GaTe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Iの記録層104は、Ge−Te−Bi−Gaターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(GaTe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−26の第1構成層は、Bi−Al−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(AlTe40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Jの記録層104は、Ge−Te−Bi−Alターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(AlTe(mol%)から成る、厚さ16nmの単層とした。
媒体100−27の第1構成層は、Bi−Sn−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(SnTe)40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Kの記録層104は、Ge−Te−Bi−Snターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(SnTe)(mol%)から成る厚さ16nmの単層とした。
媒体100−28の第1構成層は、Bi−Pb−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(BiTe60(PbTe)40(mol%)から成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Lの記録層104は、Ge−Te−Bi−Pbターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(PbTe)(mol%)から成る厚さ16nmの単層とした。
媒体100−29の第1構成層は、Bi−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、BiTeから成る厚さ0.8nmの層とした。比較のための媒体100−Mの記録層104は、Ge−Te−Biターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)95(BiTe(mol%)から成る厚さ16nmの単層とした。
作製した媒体100−21〜29および100−E〜Mはいずれも、鏡面部反射率がRc約25%、Ra約2%であった。
これらの媒体の記録再生評価方法および信頼性評価方法は、実施例1で説明したとおりである。これら18種類の媒体の2倍速および5倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化の評価結果を表3に示す。表中の記号の意味は実施例1に関連して説明したとおりである。
Figure 0005042019
表3に示す様に、記録層104の構成層の一つが2つの化合物を含む層である場合にも、最大速度/最小速度が2.5である、2倍速から5倍速の範囲で使用可能な媒体が得られた。これに対し、全体として同じ組成を有する単層記録層を有する媒体はいずれも、そのような速度範囲では実用性を有していなかった。この結果は、3成分系の材料を、GeTeと、BiTeおよび他のTe化物またはSe化物の組み合わせとに分けて、2層構成とすることが、記録層の性能向上に寄与することを示している。
記録層が複数の構成層から成る媒体100−21〜28は、すべての項目で○の評価が得られた。媒体100−29は、2倍速のCNR変化が△であった。この結果より、BiとTeに加えて他の元素を含む記録層は、全体の厚さが16nmと大きくなっても、より良好な記録再生性能と信頼性性能をもたらすことがわかる。媒体100−E〜Lはいずれも、CNR変化の評価が2倍速で×であり、5倍速で使用可能であるが、少なくともCAVで必要な最大速度/最小速度が2.4の線速度範囲で使用するのには適していなかった。これは、記録層の厚さを16nmと大きくしたことで、結晶化速度は大きくなったものの、その分、記録保存性が低下したとことによると考えられる。媒体100−Mは、2倍速と5倍速のCNR変化の評価が×となった。
(実施例4)
実施例4においても、Blu−ray Disc仕様の情報記録媒体を作製して実験を行った。図1の情報記録媒体100を製造し、5倍速と12倍速という極めて大きな線速度で、記録再生評価並びに信頼性評価を実施した。本実施例では、媒体100−31〜35および比較のための媒体100−N〜Rを準備した。これらの媒体は、記録層104を除いては、実施例1と同じ構成(材料および厚さを含む)を有し、同じ方法で製造した。
本実施例の媒体100の記録層104は、記録層全体の厚さを8nmとした。記録層104の厚さは、実施例1〜3と比較して記録再生評価の際の線速度が大きく、記録層104へのレーザ照射時間が短くなることを考慮して、記録時の熱容量を減らすために実施例1〜3の媒体の記録層の厚さよりも薄くした。また、線速度12倍速に対応できるよう、記録層全体の組成は、BiTeの割合を大きくして、結晶化速度が十分に大きくなるようにした。
媒体100−31〜35の記録層104は5つの構成層から成る。いずれの媒体においても、第5および第2構成層をGeTeから成る層とし、第4および第1構成層をBiTeから成る層とし、表4に示すように、第3構成層を結晶性の強い種々の材料で形成した。
記録層104の構成について、より具体的に説明する。第5構成層は、GeTeから成る厚さ2.1nmの層として、誘電体層105上に形成した。第4構成層は、BiTeから成る厚さ0.9nmの層として第5構成層上に形成した。第3構成層は、後述する方法で2nmの厚さとなるように第4構成層上に形成した。第2構成層は、GeTeから成る厚さ2.1nmの層として、第3構成層上に形成した。第1構成層は、BiTeから成る厚さ0.9nmの層として第2構成層上に形成した。
いずれの媒体についても、各構成層は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、スパッタリングを実施して形成した。GeTe層はGe−Teターゲットをスパッタリングすることにより形成し、BiTe層はBi−Teターゲットをスパッタリングすることにより形成した。
以下に、各媒体の第3構成層について説明する。媒体100−31の第3構成層は、Sn−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、SnTe層とした。比較のための媒体100−Nの記録層104は、Ge−Te−Bi−Snターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)52.5(BiTe22.5(SnTe)25(mol%)から成る、厚さ8nmの単層とした。
媒体100−32の第3構成層は、Bi−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、BiTe層とした。比較例のための媒体100−Oの記録層104は、Ge−Te−Biターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)52.5(BiTe22.5(BiTe)25(mol%)から成る厚さ8nmの単層とした。
媒体100−33の第3構成層は、Pb−Teターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、PbTe層とした。比較のための媒体100−Pの記録層104は、Ge−Te−Bi−Pbターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)52.5(BiTe22.5(PbTe)25(mol%)から成る厚さ8nmの単層とした。
媒体100−34の第3構成層は、Se−Snターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、SeSn層とした。比較のための媒体100−Qは、Ge−Te−Bi−Se−Snターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)52.5(BiTe22.5(SeSn)25(mol%)から成る厚さ8nmの単層とした。
媒体100−35の第3構成層は、Bi−Seターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、BiSe層とした。比較のための媒体100−Rは、Ge−Te−Bi−Seターゲットを、100Wの出力でスパッタリングすることにより形成し、(GeTe)52.5(BiTe22.5(BiSe)25(mol%)から成る厚さ8nmの単層とした。
作製した媒体100−31〜35および100−N〜Rはいずれも、鏡面部反射率がRc約18%、Ra約3%であった。
次に、本実施例の記録再生評価方法について説明する。評価は、実施例1で使用した装置と同様の構成の記録再生装置を用いて実施した。記録は、半径57mmにて、5倍速(24.6m/秒、180Mbps)と12倍速(59.0m/秒、432Mbps)で情報が記録されるように媒体の回転数を制御して実施した。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.35mWのレーザ光を照射して実施した。記録再生評価は、信号振幅対ノイズ比(CNR)と消去率の測定により実施した。本実施例においても、実施例1で用いた手順と同様の手順で、5倍速および12倍速のPpとPbをそれぞれ決め、CNRおよび消去率を実施例1で用いた方法と同様の方法で測定した。情報記録媒体100−31〜35および100−N〜Rについて、PpとPbでパワー変調して記録した信号のCNRと消去率を5倍速と12倍速の条件で測定した((1)2TCNR、(2)2T消去率)。
信頼性評価も線速度以外は、実施例1で用いた方法と同様の方法で実施した。10種類の情報記録媒体の5倍速および12倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化の評価結果を表4に示す。表中の記号の意味は実施例1に関連して説明したとおりである。
Figure 0005042019
表4に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体100−31〜35は、すべての項目で○の評価が得られ、5倍速から12倍速で使用できるものであった。これに対し比較のために作製した媒体100−N〜Rはいずれも、2TCNRおよびCNR変化が×の評価であった。BiTeを増やして結晶化速度を十分に大きくしたために、消去率が12倍速においても良好であったが、記録マークが形成されにくく、初期性能さえ不十分であった。また、媒体100−N〜Rの記録保存性を評価したところ、予め記録しておいたマークがほとんど(結晶化して)消えてしまっていた。このように、媒体100−N〜Rは、5倍速および12倍速共に使用が困難であった。
媒体100−N〜Rの評価結果からも明らかなように、媒体をより高い線速度に対応させるためには、記録層の結晶化速度を大きくしなければならず、その分、低線速度における記録保存性を確保することが難しくなる。かかる問題は、媒体100−31〜35のように、高い結晶化速度を有する相変化材料を、構成成分に分割して多層の記録層とすることにより、解決することができる。即ち、媒体100−31〜35においては、優れた初期性能および信頼性(即ち、小さいCNR変化および消去率変化)を両立させることができた。これらの媒体の記録層において、第3構成層は結晶化速度の向上に寄与し、第2および第5構成層はCNR変化の抑制に寄与し、第1および第4構成層が消去率変化の抑制に寄与したと考えられる。また、GeTeの層を2つ設けて、周期構造を有するように記録を設計したためにより高い線速度で広い線速度範囲で使用可能な情報記録媒体を実現できた。
(実施例5)
実施例5においては、Blu−ray Disc仕様であって、2つの情報層を有する図2の情報記録媒体200を製造し、実施例4同様、5倍速と12倍速で記録再生評価並びに信頼性評価を実施した。
媒体200−1および200−2ならびに比較のための媒体200−Aおよび200−Bを準備した。具体的には、表5に示すように、媒体200−1の第2の記録層211は5層構造とし(M=5)、第1構成層をBiTe、第2構成層をGeTe、第3構成層をSnTe、第4構成層をInTe、第5構成層をGeTeからそれぞれ成る層とし、記録層全体の厚さDを8nmとした。第1の記録層204も5層構造とし(M=5)、第1構成層をBiTe、第2構成層をGeTe、第3構成層をSnTe、第4構成層をBiTe、第5構成層をGeTeからそれぞれ成る層とし、記録層全体の厚さDを6nmとした。
媒体200−Aの第2の記録層211は、媒体200−1の第2の記録層211の全体の組成と同じ組成を有する材料、即ち(GeTe)44(InTe13(SnTe)25(BiTe18(mol%)で構成し、厚さは8nmとした。第1の記録層204もまた、媒体200−1の第1の記録層204の全体の組成と同じ組成を有する材料である(GeTe)34(SnTe)33(BiTe33(mol%)で構成し、厚さは6nmとした。
媒体200−2の第2の記録層211は5層構造とし(M=5)、第1構成層をGe20Sb80、第2構成層をSb、第3構成層をIn20Sb80、第4構成層をSb、第5構成層をGe20Sb80からそれぞれ成る層とし、記録層全体の厚さDを8nmとした。第1の記録層204も5層構造とし(M=5)、第1構成層をGe15Sb85、第2構成層をSb、第3構成層をIn15Sb85、第4構成層をSb、第5構成層をGe15Sb85からそれぞれ成る層とし、記録層全体の厚さを6nmとした。
媒体200−Bの第2の記録層211は、媒体200−2の第2の記録層211の全体の組成と同じ組成を有する材料、即ちInGeSb88(原子%)で構成し、厚さは8nmとした。第1の記録層204もまた、媒体200−2の第1の記録層204の全体の組成と同じ組成を有する材料である、InGeSb91(原子%)で構成し、厚さは6nmとした。
次に、各媒体の製造方法について説明する。媒体200−1および2ならびに媒体200−AおよびBは、記録層211および204を除いて、同じ構成を有し、同じ方法によって製造した。具体的には、いずれの媒体も、基板214の案内溝形成側表面に、反射層213としてAg−Cu系合金から成る厚さ80nmの層を形成し、誘電体層212として(ZrO50(In50(mol%)から成る厚さ18nmの層を形成し、第2の記録層211として全体の厚さが8nmである層を形成した。記録層211の構成は先に説明したとおりである。次に、第2の記録層211上に、界面層210として(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)から成る厚さ5nmの層を形成し、誘電体層209として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る厚さ60nmの層を形成した。これにより、第2の情報層250が形成された。
次に、誘電体層209の表面に、案内溝を有する中間層208を25μmの厚さで形成した。中間層208の案内溝形成側表面に、誘電体層207としてTiOから成る厚さ20nmの層を形成し、反射層206としてAg−Cu系合金から成る厚さ10nmの層を形成し、誘電体層205として(ZrO50(In50(mol%)から成る厚さ12nmの層を形成し、第1の記録層204として全体の厚さが6nmである層を形成した。第1の記録層204の構成は先に説明したとおりである。次に、第1の記録層204上に、界面層203として(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)から成る5nmの層を形成し、誘電体層202として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る厚さ40nmの層を形成した。これにより、第1の情報層240が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。反射層213は、実施例1の反射層106のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。誘電体層212は実施例1の誘電体層105のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。
媒体200−1の第2の記録層211のスパッタリング条件を説明する。第2の記録層211を構成する第1〜第5構成層は、いずれも圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて、直径100mm、厚さ6mmのターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより、第5構成層から順に形成した。第5構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いてGeTeから成る厚さ2nmの層が誘電体層212上に形成されるように実施した。第4構成層のスパッタリングは、In−Teターゲットを用いてInTeから成る厚さ1nmの層が第5構成層上に形成されるように実施した。第3構成層のスパッタリングは、Sn−Teターゲットを用いて、SnTeから成る厚さ2nmの層が第4構成層上に形成されるように実施した。第2構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いてGeTeから成る厚さ1.5nmの層が第3構成層上に形成されるように実施した。第1構成層のスパッタリングは、Bi−Teターゲットを用いてBiTeから成る厚さ1.5nmの層が第2構成層上に形成されるように実施した。
媒体200−2の第2の記録層211の各構成層は、媒体200−1の第2の記録層211の形成の際に用いた、出力、雰囲気およびターゲット寸法を用いて形成した。第5構成層は、Ge−Sbターゲットを用いてGe20Sb80から成る厚さ1.6nmの層が、誘電体層212上に形成されるように実施した。第4構成層のスパッタリングは、Sbターゲットを用いてSbから成る厚さ1.6nmの層が、第5構成層上に形成されるように実施した。第3構成層のスパッタリングは、In−Sbターゲットを用いてIn20Sb80から成る厚さ1.6nmの層が、第4構成層上に形成されるように実施した。第2構成層のスパッタリングは、Sbターゲットを用いてSbから成る厚さ1.6nmの層が、第3構成層上に形成されるように実施した。第1構成層は、Ge−Sbターゲットを用いてGe20Sb80から成る厚さ1.6nmの層が、第2構成層上に形成されるように実施した。
媒体200−Aの第2の記録層211は、Ge−In−Sn−Bi−Teターゲットを用いて、(GeTe)44(InTe13(SnTe)25(BiTe18(mol%)から成る厚さ8nmの層が、誘電体層212上に形成されるように実施した。媒体200−Bの第2の記録層211は、In−Ge−Sbターゲットを用いてInGeSb88(原子%)から成る厚さ8nmの層が、誘電体層212上に形成されるように実施した。両方の媒体の第2の記録層211は、直径100mmで厚さ6mmのターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
次に、界面層210を、実施例1の界面層103のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。続いて、誘電体層209を、実施例1の誘電体層102のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。
以上のようにして、基板214の上に反射層213、誘電体層212、第2の記録層211、界面層210および誘電体層209を順次成膜した後、基板214をスパッタリング装置から取り出す。
次に、中間層208を、次の手順で形成した。まず、誘電体層209の表面に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートにより塗布した。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間の距離0.32μm)を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させた。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離した。それにより、基板214と同様の形状の案内溝が中間層208の表面に形成された。
中間層208を形成した基板214を再びスパッタリング装置に配置して、中間層208の表面に第1の情報層240を形成した。まず、中間層208上に、誘電体層207を形成した。誘電体層207は、直径100mmで厚さ6mmのTiOターゲットを、圧力0.13PaのArガスと3%の酸素ガスを混合した雰囲気で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして形成した。続いて、反射層206を反射層213と同様の条件で形成した。誘電体層205を誘電体層212と同様の条件で形成した。
媒体200−1の第1の記録層204のスパッタリング条件を説明する。第1の記録層を構成する第1〜第5構成層は、いずれも圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて、直径100mm、厚さ6mmのターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。第5構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いてGeTeから成る厚さ1nmの層が、誘電体層205上に形成されるように実施した。第4構成層のスパッタリングは、Bi−Teターゲットを用いてBiTeから成る厚さ1nmの層が、第5構成層上に形成されるように実施した。第3構成層のスパッタリングは、Sn−Teターゲットを用いてSnTeから成る厚さ2nmの層が、第4構成層上に形成されるように実施した。第2構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いてGeTeから成る厚さ1nmの層が、第3構成層上に形成されるように実施した。第1構成層のスパッタリングは、Bi−Teターゲットを用いてBiTeから成る厚さ1nmの層が、第2構成層上に形成されるように実施した。
媒体200−2の第1の記録層204の各構成層は、媒体200−1の第1の記録層204の形成の際に用いた、出力、雰囲気およびターゲット寸法を用いて形成した。第5構成層のスパッタリングは、Ge−Sbターゲットを用いてGe15Sb85から成る厚さ1.2nmが、誘電体層205上に形成されるように実施した。第4構成層のスパッタリングは、Sbターゲットを用いてSbから成る厚さ1.2nmの層が、第5構成層上に形成されるように実施した。第3構成層のスパッタリングは、In−Sbターゲットを用いてIn15Sb85から成る厚さ1.2nmの層が、第4構成層上に形成されるように実施した。第2構成層のスパッタリングは、Sbターゲットを用いてSbから成る厚さ1.2nmの層が、第3構成層上に形成されるように実施した。第1構成層は、Ge−Sbターゲットを用いてGe15Sb85から成る厚さ1.2nmの層が、第2構成層上に形成されるように実施した。
媒体200−Aの第1の記録層204は、Ge−Sn−Bi−Teターゲットを用いて、(GeTe)34(SnTe)33(BiTe33(mol%)から成る厚さ6nmの層が、誘電体層205上に形成されるように実施した。媒体200−Bの第1の記録層204は、In−Ge−Sbターゲットを用いて、InGeSb91(原子%)から成る厚さ6nmの層が、誘電体層205上に形成されるように実施した。両方の媒体の第1の記録層204は、直径100mmで厚さ6mmのターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いて50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
次に、界面層203を、界面層210のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。続いて、誘電体層202を、誘電体層209のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。
以上のようにして中間層208の上に誘電体層207、反射層206、誘電体層205、第1の記録層204、界面層203および誘電体層202を順次成膜した後、基板214をスパッタリング装置から取り出した。
それから、誘電体層202の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で75μmの厚さとなるように塗布した。次に、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、カバー層201を形成した。
カバー層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに、第2の記録層211を初期化し、その後、第1の記録層204を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体200−1および200−2の作製が完了した。
作製した媒体200−1は、第1の情報層240および第2の情報層250ともに、鏡面部反射率が、Rc約6%、Ra約1%であった。また、第1の情報層240の光透過率はTc約51%、Ta約52%であった。作製した媒体200−2は、第1の情報層240および第2の情報層250ともに、鏡面部反射率が、Rc約6%、Ra約1%であった。また、第1の情報層240の光透過率はTc約51%、Ta約45%であった。いずれも第2の情報層250の反射率は、第1の情報層240を通ったレーザ光で測定している。
次に、本実施例で用いた記録再生評価方法は、記録を第1の情報層240と第2の情報層250の各々に、5倍速と12倍速で行ったこと、および記録した信号の再生評価は、1倍速相当で、0.7mWのレーザ光を照射して実施したことを除いては、実施例4で用いた方法と同じである。信頼性評価も実施例4で用いた方法と同じ方法で行なった。媒体200−1および200−2、ならびに媒体200−Aおよび200−Bの5倍速および12倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化の評価結果を表5に示す。表中の記号の意味は実施例1に関連して説明したとおりである。
Figure 0005042019
表5に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体200−1および200−2は、すべての項目で○の評価が得られ、5倍速から12倍速にてCAV方式で記録可能なものであった。
これに対し比較のために作製した200−Aは、記録層211(第2の情報層250)の2TCNRおよびCNR変化が×の評価であった。SnTeおよびBiTeを含んだ組成であるために、結晶化速度が十分に大きく、消去率が12倍速においても良好であったが、記録マークが形成されにくく、初期性能さえ不十分であった。媒体200−Aの第2の記録層211はInTeを含んでいるにもかかわらず、その記録保存性を評価したところ、予め記録しておいたマークがほとんど(結晶化して)消えてしまっていた。
また、媒体200−Aの第1の記録層204(第1の情報層240)の2TCNRおよびCNR変化も、×の評価であった。SnTeおよびBiTeを含んだ組成であるために、結晶化速度が十分に大きく、消去率が12倍速においても良好であったが、記録マークが形成されにくく、初期性能さえ不十分であった。また、媒体200−Aの第1情報層240の記録保存性を評価した際に、予め記録しておいたマークはほとんど(結晶化して)消えてしまっていた。このように、媒体200−Aは、5〜12倍速の範囲のいずれの線速度においても、2つの情報層を共に使用できなかった。同様のことは、比較のために作製した媒体200−Bにもあてはまる。
媒体200−AおよびBの評価結果からも明らかなように、媒体をより高い線速度に対応させるためには、記録層の結晶化速度を大きくしなければならず、その分、低線速度における記録保存性を確保することが難しくなる。また、記録保存性を確立できる結晶化速度では、高線速度での消去率が不十分となる。これらの問題は、媒体200−1および200−2のように、高い結晶化速度を有する相変化材料を、構成成分に分割して多層の記録層とすることにより、解決することができる。即ち、媒体200−1および200−2の2つの情報層は、初期性能、CNR変化、および消去率変化のすべてにおいて優れていた。
媒体200−1および200−2の2つの記録層はいずれも、周期構造を有するようにしたことによっても、記録層の性能が向上していると考えられる。即ち、媒体200−1において、第2の記録層は、第2構成層と第5構成層の元素組成が同じであり、第1の記録層はさらに第1構成層と第4構成層の元素組成が同じである。また、媒体200−2の2つの記録層はともに第1の構成層と第5の構成層の元素組成が同じであり、第2構成層と第4構成層の元素組成が同じであって、第3構成層を中心として対称となっている。このように、本実施例によれば、より高線速度で広い線速度範囲で使用可能な2層情報記録媒体が実現できた。
さらに、本実施例から、GeTeを含む化合物組成の記録層、およびSbを含む共晶組成の記録層はいずれも、複数成分に分割して積層構造とすることによる効果を得られるものであることがわかった。また、本実施例では、一例としてSbから成る単体元素の構成層を形成した。これ以外の単体元素も構成層として用いることができることも検証した。
(実施例6)
実施例6では、DVD−RAM仕様の情報記録媒体を作製して実験を行った。図3の情報記録媒体300を製造し、6倍速と16倍速にて記録再生評価および信頼性評価を実施した。本実施例では、記録層304を第1構成層および第2構成層で形成し(M=2)、表6に示すように、第1構成層および/または第2構成層の組成が互いに異なる、11種類の情報記録媒体300−1〜300−11を準備し、それらとの比較のために6種類の情報記録媒体300−A〜300−Fを準備した。以下に各媒体の構成および製造方法を具体的に説明する。
はじめに、情報記録媒体300の製造方法について説明する。基板301として、案内溝(深さ50nm、グルーブ−ランド間距離0.615μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板301の案内溝形成側表面に、誘電体層302として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る厚さ140nmの層を、界面層303として(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)から成る厚さ5nmの層を、記録層304として厚さ8nmの層を形成した。記録層304の構成は、第1構成層と第2構成層を含む二層構造とした。詳細は後述する。
次に記録層304上に、界面層305として(ZrO25(SiO25(Cr50(mol%)から成る厚さ5nmの層を、誘電体層306として(ZnS)80(SiO20(mol%)から成る厚さ35nmの層を、光吸収補正層307としてSiCrから成る30nmの層を、反射層308としてAg−Cu系合金から成る厚さ120nmの層を、順に形成した。
各層のスパッタリング条件を説明する。誘電体層302および誘電体層306は、実施例1の誘電体層102のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。界面層303および界面層305は、実施例1の界面層103のスパッタリング条件と同様の条件で形成した。
次に、媒体300−1〜11の記録層304のスパッタリング条件を説明する。いずれの媒体についても、記録層を構成する第1および第2構成層は、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いて、直径100mmで厚さ6mmのターゲットを50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体300−1の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いて、GeTeから成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−Ga−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(GaTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。比較のための媒体300−Aの記録層304は、Ge−Bi−Ga−Teターゲットを用いたスパッタリングにより、(GeTe)89.5(BiTe(GaTe1.5(mol%)から成る厚さ8nmの層として界面層303上に形成した。
媒体300−2の記録層の第1構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いて、GeTeから成る厚さ2nmの厚さが界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。比較のための媒体300−Bの記録層304は、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いたスパッタリングにより、(GeTe)89.5(BiTe(InTe1.5(mol%)から成る厚さ8nmの層として界面層303上に形成した。
媒体300−3の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いて、GeTeから成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−Sb−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(SbTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。比較のための媒体300−Cは、Ge−Bi−Sb−Teターゲットを用いたスパッタリングにより、(GeTe)89.5(BiTe(SbTe1.5(mol%)から成る厚さ8nmの層として界面層303上に形成した。
媒体300−4の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ge−Teターゲットを用いて、GeTeから成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−Al−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(AlTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。比較のための媒体300−Dは、Ge−Bi−Al−Teターゲットを用いたスパッタリングにより、(GeTe)89.5(BiTe(AlTe1.5(mol%)から成る厚さ8nmの層として界面層303上に形成した。
媒体300−5の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Sb−Teターゲットを用いて、Sb70Te30(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。比較のための媒体300−Eは、Ge−Bi−Al−Sb−Teターゲットを用いたスパッタリングにより[(GeTe)86(BiTe12(AlTe75(Sb70Te3025(mol%)から成る厚さ8nmの厚さとして界面層303上に形成した。
媒体300−6の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Al−Sbターゲットを用いて、Al30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
媒体300−7の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、In−Sbターゲットを用いて、In30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
媒体300−8の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ga−Sbターゲットを用いて、Ga30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として、(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
媒体300−9の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ge−Sbターゲットを用いて、Ge30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Bi−In−Teターゲットを用いて、第2構成層として(GeTe)86(BiTe12(InTe(mol%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
媒体300−10の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、In−Sbターゲットを用いて、In30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成した。次に、Ge−Sbターゲットを用いて、第2構成層として、Ge15Sb85(原子%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
比較のための媒体300−Fの記録層304は、Ge−Sb−Inターゲットを用いて、(Ge15Sb8575(In30Sb7025(mol%)から成る厚さ8nmの層として、界面層303上にスパッタリングにより形成した。
媒体300−11の記録層304の第1構成層のスパッタリングは、Ga−Sbターゲットを用いて、Ga30Sb70(原子%)から成る厚さ2nmの層が界面層303上に形成されるように実施した。次に、Ge−Sbターゲットを用いて、第2構成層として、Ge15Sb85(原子%)から成る厚さ6nmの層を第1構成層上にスパッタリングにより形成した。
光吸収補正層307であるSiCr層は、直径100mmで厚さ6mmの、Si−Crターゲットを、圧力0.27PaのArガス雰囲気で、高周波電源を用いて300Wの出力でスパッタリングして形成した。反射層308は、直径100mmで厚さ6mmのAg−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。
以上のようにして基板301の上に誘電体層302、界面層303、記録層304、界面層305、誘電体層306、光吸収補正層307および反射層308を順次成膜した後、基板301をスパッタリング装置から取り出した。それから、紫外線硬化性樹脂を反射層308の上に塗布し、塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、ダミー基板310として直径120mm、厚さ0.6mmの円形のポリカーボネート基板を密着させた。そして、ダミー基板310の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化した樹脂から成る接着層309を30μmの厚さで形成すると同時に、ダミー基板310を接着層309を介して基板301に貼り合わせた。
ダミー基板310を貼り合わせた後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、情報記録媒体300の記録層304を、半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体300−1〜11および300−A〜Fの作製が完了した。作製した媒体300−1〜11および300−A〜Fはいずれも、鏡面部反射率がRc約16%、Ra約2%であった。
次に、記録再生評価方法について説明する。情報記録媒体300に情報を記録するために、情報記録媒体300を回転させるスピンドルモータと、レーザ光320を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光320を情報記録媒体300の記録層304上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の記録再生装置を用いて実施した。情報記録媒体300の評価においては、波長660nmの半導体レーザと開口数0.65の対物レンズを使用し、4.7GB容量相当の記録を行った。情報記録媒体300を回転させる回転数は、10000回転/分から11000回転/分の範囲とした。これにより、ディスク最内周では6倍速相当の約25m/秒、最外周では16倍速相当の約65m/秒の線速度で情報が記録された。記録した信号の再生評価は、2倍速相当の約8m/秒で、1mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、2倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも1mWよりも大きくしてよい。
記録再生評価は、ジッタ値(所定の長さの記録マークが、所定の位置からどれだけずれて形成されているかを統計的に評価する指標)に基づいて行なった。まず、ジッタ値を測定する条件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。レーザ光320を高パワーレベルと低パワーレベルとの間でパワー変調しながら情報記録媒体300に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号をグルーブ記録により記録層304の同一のグルーブ表面に10回記録した。その際、ノンマルチパルスのレーザ光を照射した。
記録後、タイムインターバルアナライザーを用いて、前端間のジッタ値および後端間のジッタ値を測定し、これらの平均値として平均ジッタ値を求めた。バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、平均ジッタ値が13%になるピークパワーの1.25倍のパワーを仮にPp1と決めた。次に、ピークパワーをPp1に固定し、バイアスパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、平均ジッタが13%以下になるバイアスパワーの上限値と下限値の平均値をPbに設定した。そして、バイアスパワーをPbに固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、平均ジッタ値が13%になるピークパワーの1.25倍のパワーをPpに設定した。PpとPbの設定は、16倍速および6倍速のそれぞれで実施した。
このようにして設定したPpおよびPbの条件で記録した場合、例えば10回繰り返し記録において、16倍速記録および6倍速記録において8〜9%の平均ジッタ値が得られた。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、16倍速でも、Pp≦30mW、Pb≦13mWを満足することが望ましい。
次に信頼性評価について説明する。信頼性評価は、記録した信号が高温高湿条件下に置かれても保存されるかどうか、また、高温高湿条件下に置かれた後も書き換えが可能かどうかを調べるために実施する。評価は、上記と同様の記録再生装置を用いて実施した。予め、上述の17種類の情報記録媒体300に、上記のPpおよびPbのパワーでランダム信号を、16倍速および6倍速の条件で、グルーブ面に複数トラック記録し、ジッタ値j(%)を測定しておく((1)ジッタ値)。温度80℃、相対湿度80%の恒温槽にこれらの媒体を100時間放置した後、取り出した。取り出した後、記録しておいた信号を再生してジッタ値ja(%)を測定する((2)記録保存性)。また、記録していた信号にPpとPbで1回オーバライトしてジッタ値jo(%)を測定する((3)書き換え保存性)。恒温槽に放置する前のジッタ値と放置した後のジッタ値を比較して、信頼性を評価する。Δja=(ja−j)(%)、Δjo=(jo−j)(%)とすると、Δja((2)ja変化)およびΔjo((3)jo変化)が大きいほど信頼性は低い。Δjaは低倍速で記録した信号について値が大きくなる傾向にあり、Δjoは高倍速で記録した信号について値が大きくなる傾向にある。ΔjaおよびΔjoの両方が共に小さいほど、広い線速度範囲でより都合良く使用できる情報記録媒体である。
17種類の情報記録媒体について、16倍速と6倍速における(1)ジッタ値、(2)ja変化、(3)jo変化の評価結果を表6に示す。表中、記号の意味はそれぞれ次のとおりである。
(1)ジッタ値
○:8%以下
△:8%より大きく10%以下
×:10%より大きい
(2)記録保存性および書換保存性
○:2%以下
△:2%より大きく5%以下
×;5%より大きい
いずれの評価においても、×評価はその線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能である。○がより好ましい。
Figure 0005042019
表6に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体300−1〜11は、すべての項目で○の評価が得られ、6倍速から16倍速のCAVで使用できるものであった。これに対し媒体300−A〜300−Fは、ja変化またはjo変化が×評価であった。ja変化が×である媒体は、記録層の結晶化速度が十分に大きく、消去率が16倍速においても良好であったが、そのため、記録マークが形成されにくく、初期性能の6倍速ジッタでさえ不十分であった。また、そのような媒体においては記録保存性を評価した際に、予め記録しておいたマークはほとんど(結晶化して)消えてしまっていた。jo変化が×である媒体は、結晶化速度が不足して、初期性能の16倍速ジッタが不十分であった。そのため、6倍速および16倍速のいずれにおいても、ジッタ値の増加が大きかった。
媒体300−A〜300−Fの評価結果からも明らかなように、媒体をより高線速度に対応させるためには、結晶化速度を大きくしなければならず、その分、低線速度における記録保存性を確保することが難しくなる。逆に、低線速度における記録保存性を確保しようとすると、結晶化速度が不足してしまう。これらの問題は、媒体300−1〜11のように、第1構成層を結晶化温度の高い材料(200℃以上)で形成し、第2構成層を結晶化速度の大きい材料で形成することにより解決される。即ち、2つの異なる特性を有する材料を混合するのではなく、積層して用いることにより、低線速度における記録保存性と高線速度における書き換え保存性を両立させることができた。
(実施例7)
実施例7では、実施例6と同様のDVD−RAM仕様の情報記録媒体を作製して実験を行なった。本実施例では、媒体300−12〜14および比較のための媒体300−G〜Iを準備した。これらの媒体の記録層304以外の要素は、実施例6と同様の材料、厚さおよび製造方法を用いて形成した。媒体300−12〜14と実施例6の媒体とが異なる点は、記録層304が7つの構成層から成ること(M=7)、少なくとも1つの構成層が、希土類金属Xから選択される少なくとも1つの元素と、Ge、Sb、BiおよびTe(群α)から選択される少なくとも1つの元素を含むことである。
以下に、各媒体の記録層304の構成および形成条件を、具体的に説明する。いずれの媒体についても、各構成層および単層構造の記録層の形成は、直径100mmで厚さ6mmのターゲットを、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中でスパッタリングして形成した。
媒体300−12の第1構成層は、Gd−Sbターゲットをスパッタリングすることにより界面層303上に形成し、GdSbから成る厚さ0.5nmの層とした。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第2構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第1構成層上に形成した。次に、Gd−Sbターゲットをスパッタリングすることにより、第3構成層としてGdSbから成る厚さ0.5nmの層を第2構成層上に形成した。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第4構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第3構成層上に形成した。
次に、Gd−Sbターゲットをスパッタリングすることにより、第5構成層としてGdSbから成る厚さ0.5nmの層を第4構成層上に形成した。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第6構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第5構成層上に形成した。次に、Gd−Sbターゲットをスパッタリングすることにより、第7構成層としてGdSbから成る厚さ0.5nmの層を第6構成層上に形成した。第1構成層から第7構成層はいずれも、直流電源を用いて50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体100−Gの記録層304は、Gd−Sb−Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、(GdSb)25(GeTe)66(BiTe)(mol%)から成る厚さ8nmの単層構造の層として、界面層303上に形成した。単層構造の記録層304は、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングした。
媒体300−13の第1構成層は、Dy−Teターゲットをスパッタリングすることにより界面層303上に形成し、DyTeから成る厚さ0.5nmの層とした。次に、Ge−Sn−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第2構成層として(GeTe)88(SnTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第1構成層上に形成した。次に、Dy−Te−Siターゲットをスパッタリングすることにより、第3構成層として(DyTe)96Siから成る厚さ0.5nmの層を第2構成層上に形成した。次に、Ge−Sn−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第4構成層として(GeTe)88(SnTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第3構成層上に形成した。次に、Dy−Te−Siターゲットをスパッタリングすることにより、第5構成層として(DyTe)96Siから成る厚さ0.5nmの層を第4構成層上に形成した。
次に、Ge−Sn−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第6構成層として(GeTe)88(SnTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第5構成層上に形成した。次に、Dy−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第7構成層としてDyTeから成る厚さ0.5nmの層を第6構成層上に形成した。第1構成層から第7構成層はいずれも、直流電源を用いて50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体300−Hの記録層304は、Dy−Si−Ge−Sn−Teターゲットをスパッタリングすることにより、(DyTe)24.5Si0.5(GeTe)66(SnTe)(mol%)から成る厚さ8nmの層として、界面層303上に形成した。単層構造の記録層304は、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングした。
媒体300−14の第1構成層は、Tb−Biターゲットをスパッタリングすることにより界面層303上に形成し、TbBiから成る厚さ0.5nmの層とした。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第2構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第1構成層上に形成した。次に、Tb−Biターゲットをスパッタリングすることにより、第3構成層としてTbBiから成る厚さ0.5nmの層を第2構成層上に形成した。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第4構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第3構成層上に形成した。
次に、Tb−Biターゲットをスパッタリングすることにより、第5構成層としてTbBiから成る厚さ0.5nmの層を第4構成層上に形成した。次に、Ge−Bi−Teターゲットをスパッタリングすることにより、第6構成層として(GeTe)88(BiTe)12(mol%)から成る厚さ2nmの層を第5構成層上に形成した。次に、Tb−Biターゲットをスパッタリングすることにより、第7構成層としてTbBiから成る厚さ0.5nmの層を第6構成層上に形成した。第1構成層から第7構成層はいずれも、直流電源を用いて50Wの出力でスパッタリングすることにより形成した。
媒体300−Iの記録層304は、Tb−Bi−Ge−Teターゲットをスパッタリングすることにより、(TbBi)25(GeTe)66(BiTe)(mol%)から成る厚さ8nmの単層構造の層として、界面層303上に形成した。単層構造の記録層304は、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングした。
6種類の情報記録媒体の16倍速と6倍速における(1)ジッタ値、(2)ja変化、(3)jo変化の評価結果を表7に示す。表中の記号の意味は、実施例6に関連して説明したとおりである。
Figure 0005042019
表7に示す様に、記録層が複数の構成層から成る媒体300−12〜14は、すべての項目で○の評価が得られたので、6倍速から16倍速のCAVで使用できるものであった。これに対し、比較のための媒体300−G〜Iはいずれも16倍速のjo変化が×評価であった。媒体300−G〜Iは、初期性能のジッタ値は○評価であったが、結晶化速度がやや不足していたと考えられる。本実施例では、結晶化温度が高く(200℃以上)、且つ結晶構造がNaCl型の材料を第1,3,5,7構成層の材料として用い、記録層を周期構造を有するように構成した。その結果、結晶化速度を向上させるとともに、記録保存性も確保することができた。このように、希土類金属Xから選択される少なくとも1つの元素と、Ge、Sb、BiおよびTeから選択される少なくとも1つの元素を含む相変化材料を分割して複数層構成の記録層を形成した場合にも、低線速度における記録保存性と高線速度における書き換え保存性を両立させることができた。
(実施例8)
実施例8として、実施例7の媒体300−13に類する構造の記録層を有する媒体を作製し、実施例7と同様の評価を行った。実施例8の媒体は、第3構成層および第5構成層を、DyTeにSi以外の元素であって、群β(Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Hf、In、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Se、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、およびZr)から選ばれる元素を添加した材料で形成した点が、実施例7の媒体と異なる。本実施例では、30種類の媒体300−13−1〜30を作製した。
媒体300−13−1〜30の第3構成層および第5構成層の組成は、順に、(DyTe)96Al、(DyTe)96Ag、(DyTe)96Au、(DyTe)96Co、(DyTe)96Cr、(DyTe)96Cu、(DyTe)96Fe、(DyTe)96Ga、(DyTe)96Hf、(DyTe)96In、(DyTe)96Ir、(DyTe)96Mn、(DyTe)96Mo、(DyTe)96Nb、(DyTe)96Ni、(DyTe)96Os、(DyTe)96Pb、(DyTe)96Pd、(DyTe)96Pt、(DyTe)96Re、(DyTe)96Rh、(DyTe)96Ru、(DyTe)96Se、(DyTe)96Sn、(DyTe)96Ta、(DyTe)96Ti、(DyTe)96、(DyTe)96、(DyTe)96Zn、(DyTe)96Zrである。
これらのうち、(DyTe)96Ga、(DyTe)96In、(DyTe)96Seおよび(DyTe)96Snのように、β単体の融点が250℃に満たないものについては、Dy−Teターゲットとβ−TeターゲットとDyターゲットを1つのスパッタ室に設けて、同時にスパッタリングすることにより形成した。媒体を評価した結果、媒体300−13−1〜30は、すべての項目で○の評価が得られ、6倍速から16倍速のCAVで使用できることが検証できた。
(実施例9)
実施例9では、電気的エネルギーを印加するメモリの実験を行った。図4に、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体とそれに記録するシステムを示す。本実施例においては、図4に示す情報記録媒体400の記録層403を、本発明に従って複数の構成層で構成した。
本実施例の情報記録媒体400は次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理した、長さ5mm、幅5mm及び厚さ1mmのSi基板401を準備した。この基板401の上に、Auの下部電極402を1mm×1mmの領域に厚さ100nmで形成した。下部電極402の上に記録層403を1mm×1mmの領域に厚さ100nmとなるように形成し、Auの上部電極404を0.6mm×0.6mmの領域に厚さ100nmとなるように形成した。
記録層403は、第1構成層から第3構成層で構成した(M=3)。下部電極402に最も近い層を第1構成層として、第1構成層はBiTe層(厚さ10nm)、第2構成層はGeTe層(厚さ80nm)、第3構成層はBiTe層(厚さ10nm)である。
下部電極402、記録層403、及び上部電極404はいずれも、スパッタリング法で形成した。これらのスパッタリングは、基板401を成膜装置に取り付けて順次実施した。まず、基板401上に下部電極402を、Auターゲットをパワー200Wでスパッタリングして形成した。続いて、下部電極402上に第1構成層を、Bi−Teターゲットを、100Wのパワーでスパッタリングして形成し、第2構成層を第1構成層上に、Ge−Teターゲットを100Wのパワーでスパッタリングして形成した。続いて、第3構成層を第2構成層上に、Bi−Teターゲットをパワー100Wでスパッタリングして形成して、記録層403の形成を終了した。続いて、記録層403上に上部電極404を、Auターゲットを200Wのパワーでスパッタリングして形成した。いずれのターゲットも、直径100mm、厚さ6mmであった。また、スパッタリングはすべて、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いて実施した。
以上のようにして製造した情報記録媒体400に電気的エネルギーを印加することによって記録層403にて可逆的相変化が起こることを、図4に示すシステムにより確認した。図4に示すように、2つの印加部409を下部電極402及び上部電極404にAuリード線でそれぞれボンディングすることによって、印加部409を介して電気的書き込み/読み出し装置411を情報記録媒体(メモリ)400に接続した。この電気的書き込み/読み出し装置411において、下部電極402と上部電極404に各々接続されている印加部409の間には、パルス発生部405がスイッチ408を介して接続され、また、抵抗測定器406がスイッチ407を介して接続されていた。抵抗測定器406は、抵抗測定器406によって測定される抵抗値の高低を判定する判定部410に接続された。パルス発生部405によって印加部409を介して上部電極404及び下部電極402の間に電流パルスを流し、下部電極402と上部電極404との間の抵抗値を抵抗測定器406によって測定し、この抵抗値の高低を判定部410で判定した。記録層403の相変化によって抵抗値は変化する。
本実施例の場合、記録層403の融点は600℃、結晶化温度は160℃、結晶化時間は40nsであった。下部電極402と上部電極404の間の抵抗値は、記録層403が非晶質状態では1000Ω、結晶状態では20Ωであった。記録層403が非晶質状態(即ち高抵抗状態)のとき、下部電極402と上部電極404の間に、20mA、50nsの電流パルスを印加したところ、下部電極402と上部電極404の間の抵抗値が低下し、記録層403が非晶質状態から結晶状態に転移した。次に、記録層403が結晶状態(即ち低抵抗状態)のとき、下部電極402と上部電極404の間に、200mA、20nsの電流パルスを印加したところ、下部電極402と上部電極404の間の抵抗値が上昇し、記録層403が結晶状態から非晶質状態に転移した。すなわち、可逆的相変化が確認された。さらに、100ns以下の高速転移が可能であり、高速メモリが得られた。
以上の結果から、第1構成層BiTe(10nm)、第2構成層GeTe(80nm)および第3構成層BiTe(10nm)から成る三層構造の記録層は、電気的エネルギーを付与することによって、相変化を生じ得ることがわかった。よって、この記録層を含む情報記録媒体400は、情報を高速記録消去する機能を有することが確認できた。また、情報記録媒体400を複数個つないでメモリ容量を増やすこと、アクセス機能及びスイッチング機能を向上させることが可能となる。
以上、種々の実施例を通じて説明してきたように、本発明は、光学的手段で記録する情報記録媒体及び電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれに適用することができる。即ち、記録層を、複数の構成層で構成することによって、これまで実現されなかった、高線速度且つ広い線速度範囲において、高い記録消去性能と、優れた記録保存性および書き換え保存性とを有する情報記録媒体が得られる。
本発明の情報記録媒体は、優れた性能を呈する記録層を有し、大容量な光学的情報記録媒体として、DVD−RAMディスク、DVD−RWディスク、DVD+RWディスク、書換形Blu−ray Disc等に有用である。さらに、本発明の情報記録媒体は、電気的情報記録媒体として、電気的な高速スイッチング素子としても有用である。
本発明の情報記録媒体の一例を示す部分断面図 本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図 本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図 本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図とそれを使用するシステムの一例を示す模式図 本発明の情報記録媒体の製造方法で使用するスパッタリング装置の一例を示す模式図
符号の説明
100,200,300,400 情報記録媒体
35,107,214,301,401 基板
102,105,202,205,207,209,212,302,306 誘電体層
103,203,210,303,305 界面層
104,204,211,304,403 記録層
121,221,231,321 第1構成層
122,222,232,322 第2構成層
123,223,233,323 第m構成層
124,224,234,324 第m+1構成層
125,225,235,325 第M構成層
307 光吸収補正層
106,206,213,308 反射層
309 接着層
310 ダミー基板
208 中間層
101,201 カバー層
240 第1の情報層
250 第2の情報層
120,220,320 レーザ光
402 下部電極
404 上部電極
405 パルス発生部
406 抵抗測定器
407,408 スイッチ
409 印加部
410 判定部
411 電気的書き込み/読み出し装置
32 排気口
33 スパッタガス導入口
34 基板ホルダー(陽極)
36 スパッタリングターゲット(陰極)
37 ターゲット電極
38 電源
39 スパッタ室

Claims (32)

  1. 相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を含む情報記録媒体であって、記録層が厚さ方向に積層された1番目からM番目(Mは4以上の整数)までの相変化を生じうる構成層を含み、レーザ光入射側からm番目に位置する構成層を第m構成層(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なり、かつ、少なくとも1つの第m構成層が、Ge、SnおよびTeを含む情報記録媒体。
  2. 第1構成層と第M構成層が、同じ元素組成を有する、請求項1に記載の情報記録媒体。
  3. 第1構成層と第M構成層が、異なる元素組成を有する、請求項1に記載の情報記録媒体。
  4. 同じ元素組成を有する層が1層おきに又は2層以上おきに繰り返し、配置されている、請求項1に記載の情報記録媒体。
  5. 前記各構成層の厚さdm(nm)が、0.1≦dm≦15を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  6. 少なくとも1つの別の第m構成層が、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む構成層Rである請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  7. 前記構成層Rが、Ge、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素とTeとを含む請求項6に記載の情報記録媒体。
  8. 前記構成層Rに隣接する構成層が、BiとTeとを含む構成層Qである請求項7に記載の情報記録媒体。
  9. 前記構成層Qが、さらに、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項8に記載の情報記録媒体。
  10. 少なくとも1つの別の第m構成層が、Sbを含む構成層Tである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  11. 前記構成層Tが、さらにTe、Al、In、Ge、SnおよびGaから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項10に記載の情報記録媒体。
  12. 前記構成層Tが、Sbを50原子%以上含む、請求項10または11に記載の情報記録媒体。
  13. 前記Ge、SnおよびTeを含む第m構成層が、Bi、Sb、In、Ga、Al、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  14. 記録層全体の組成が、結晶化温度が25℃以下である材料を40mol%以上の割合で含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  15. 少なくとも1つの別の第m構成層が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、YbおよびLuから選択される少なくとも1つの元素と、Ge、Sb、BiおよびTeから選択される少なくとも1つの元素とを含む構成層Xである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  16. 前記構成層Xが、さらに、Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Hf、In、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Se、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、およびZrから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項15に記載の情報記録媒体。
  17. 2つ以上の情報層を含み、当該情報層のうち少なくとも1つの情報層が前記1番目〜M番目までの構成層を含む記録層を含む請求項1に記載の情報記録媒体。
  18. 相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を成膜する工程を含む情報記録媒体の製造方法であって、当該記録層を成膜する工程が1番目からM番目(Mは4以上の整数)までのスパッタリング工程を含み、m番目のスパッタリング工程を第m工程(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、連続する第m工程と第m+1工程を元素組成が互いに異なるスパッタリングターゲットを用いて実施し、かつ、少なくとも1つの第m工程を、Ge、SnおよびTeを含むスパッタリングターゲットを用いて実施し、前記1番目からM番目のスパッタリング工程で用いるスパッタリングターゲットは相変化を生じうる組成を有する材料で構成される情報記録媒体の製造方法。
  19. 記録層全体の組成を決定し、当該組成を複数の群に分割して、第1〜第M構成層から成り、少なくとも1つの第m構成層が、Ge、SnおよびTeを含み、かつ第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なるように記録層を設計することをさらに含む、請求項18に記載の情報記録媒体の製造方法。
  20. 少なくとも1つの別の第m工程で用いるスパッタリングターゲットが、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項18に記載の情報記録媒体の製造方法。
  21. 少なくとも1つの別の第m工程で用いるスパッタリングターゲットが、Ge、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素とTeとを含む請求項18に記載の情報記録媒体の製造方法。
  22. 前記Ge、Al、InおよびGaのうちの少なくとも1つとTeとを含むスパッタリングターゲットを用いる第m工程の直前の工程または直後の工程で用いるスパッタリングターゲットがBiとTeとを含む請求項21に記載の情報記録媒体の製造方法。
  23. 前記BiとTeとを含むスパッタリングターゲットが、さらにSb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項22に記載の情報記録媒体の製造方法。
  24. 少なくとも1つの別の第m工程で用いるスパッタリングターゲットが、Sbを含む請求項18に記載の情報記録媒体の製造方法。
  25. 前記Sbを含むスパッタリングターゲットが、さらに、Te、Al、InおよびGaから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項24に記載の情報記録媒体の製造方法。
  26. 2つ以上の情報層を含む情報記録媒体の製造方法であって、各情報層を形成する工程が相変化を生じ得る組成を全体として有する記録層を成膜する工程を含み、少なくとも1つの記録層を成膜する工程が、1番目からM番目(Mは4以上の整数)までのスパッタリング工程を含み、m番目のスパッタリング工程を第m工程(は整数であり、1≦m≦M−1を満たす)とした場合、少なくとも1つの第m工程において、Ge、SnおよびTeを含むスパッタリングターゲットを用い、かつ連続する第m工程と第m+1工程において、互いに異なる元素組成を有するスパッタリングターゲットを用い、前記1番目からM番目のスパッタリング工程で用いるスパッタリングターゲットは相変化を生じうる組成を有する材料で構成される情報記録媒体の製造方法。
  27. 前記少なくとも1つの記録層を成膜する工程が、記録層全体の組成を決定し、当該組成を複数の群に分割して、第1〜第M構成層から成り、かつ第m構成層と第m+1構成層元素組成が互いに異なるように記録層を設計することをさらに含む、請求項26に記載の情報記録媒体の製造方法。
  28. 電気的エネルギーの印加によって相変化を生じ得る記録層を含む情報記録媒体であって、前記記録層が厚さ方向に積層された1番目からM番目(Mは4以上の整数)までの相変化を生じうる組成を有する構成層を含み、基板側からm番目に位置する構成層を第m構成層(mは整数であり、1≦m≦M−1を満たす整数)とした場合、少なくとも1つの第m構成層がGe、SnおよびTeを含み、かつ第m構成層と第m+1構成層の元素組成が互いに異なる元素組成を有する情報記録媒体。
  29. 前記各構成層の厚さdm(nm)が、1≦dm<100を満たす請求項28に記載の情報記録媒体。
  30. 少なくとも1つの別の第m構成層が、Te、Bi、Sb、Ge、In、Ga、Al、Sn、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む請求項28または29に記載の情報記録媒体。
  31. 前記Ge、SnおよびTeを含むスパッタリングターゲットが、Bi、Sb、In、Ga、Al、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項18に記載の情報記録媒体の製造方法。
  32. 前記Ge、SnおよびTeを含むスパッタリングターゲットが、Bi、Sb、In、Ga、Al、Pb、SeおよびSiから選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項26に記載の情報記録媒体の製造方法。
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