本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を向上させることが可能な分波器デバイス用回路基板、分波器及びこれを用いた通信装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、相互に積層された複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層によって包囲されているとともに、相互に通過周波数帯域が異なる第1及び第2のフィルタ素子間のインピーダンスを調整するための整合回路用線路と、前記複数の誘電体層によって包囲されているとともに、前記複数の誘電体層の最上層から最下層に渡って形成され、かつ前記第1のフィルタ素子と第1の信号電送用端子とを電気的に接続するための第1の信号電送用線路と、前記第2のフィルタ素子と第2の信号電送用端子とを電気的に接続するための第2の信号電送用線路と、前記第1の信号電送用線路と前記整合回路用線路との間、及び前記第1の信号電送用線路と前記第2の信号電送用線路との間に設けられ、かつ前記第1の信号電送用線路を囲む第1の接地用導体と、を備え、前記第1の接地用導体が、前記複数の誘電体層のうちの相互に隣接した1組以上の誘電体層の層間において、前記第1の信号伝送用線路の一部を構成する導体パターンの全体を囲むように環状に形成された第1の接地用パターン領域を含むようにした。
これにより、回路基板内部の線路間が電気的に遮蔽されるとともに、接地用の導体によって囲まれた信号電送用線路と回路基板外部との間も電気的に遮蔽されるため、回路基板内部における電気的な干渉及び回路基板外部との間における電気的な干渉を低減することができ、その結果として、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
第2の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第2の信号電送用線路が、前記複数の誘電体層によって包囲されているとともに、前記複数の誘電体層の最上層から最下層に渡って形成され、前記分波器デバイス用回路基板が、前記第2の信号電送用線路と前記整合回路用線路との間、及び前記第2の信号電送用線路と前記第1の信号電送用線路との間に設けられ、かつ前記第2の信号電送用線路を囲む第2の接地用導体、を更に備え、前記第2の接地用導体が、前記複数の誘電体層のうちの相互に隣接した1組以上の誘電体層の層間において、前記第2の信号伝送用線路の一部を構成する導体パターンの全体を囲むように環状に形成された第2の接地用パターン領域を含むようにした。
これにより、送信用及び受信用の信号電送用線路の双方について、回路基板内部の線路間が電気的に遮蔽されるとともに、回路基板外部との間も電気的に遮蔽されるため、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性をより向上させることができる。
第3の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記複数の誘電体層のうちの最上部を構成する誘電体層の上面に設けられた環状電極パターンと、前記複数の誘電体層のうちの最下部を構成する誘電体層の下面に設けられた接地用端子と、をさらに備え、前記環状電極パターンと前記接地用端子とが電気的に接続され、前記環状電極パターンの枠内に前記第1の信号電送用線路の一端を構成する導体パターンが位置しているようにした。
第4の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1の接地用パターン領域は、前記複数の誘電体層のうちの相互に隣接した複数組の誘電体層の層間にそれぞれ形成されており、当該複数の第1の接地用パターン領域によって挟まれた誘電体層を貫通し、かつ前記複数の第1の接地用パターン領域を相互に電気的に接続した1以上の導体をさらに含むようにした。
第5の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第4の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記1以上の導体が、前記第1の信号電送用線路を囲むように設けられた複数の導体を含むようにした。
これにより、信号電送用線路を更に誘電体層を貫通する複数の接地用の導体で囲むことで、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を更に向上させることができる。
第6の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1及び第2のフィルタ素子が、それぞれラダー型のフィルタ素子であるようにした。
第7の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第4の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1及び第2のフィルタ素子のうちの相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子が、並列腕に共振子を有し、前記共振子が、前記第1の接地用導体に対して電気的に接続されているようにした。
これにより、信号電送用線路の周囲に接地用の導体パターンが設けられたことで、接地用の導体パターン間に誘電体層を貫通する導体をより多く配置する事ができ、その結果として、相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子の並列共振子と接地用の端子との間を電気的に接続する導体のインダクタンスが小さくなるため、相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子の低周波側の帯域外減衰量が増大する。
第8の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第3の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記環状電極パターンの枠内に前記第2の信号電送用線路の一端を構成する導体パターンが位置しているようにした。
第9の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第2の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第2の接地用パターン領域は、前記複数の誘電体層のうちの相互に隣接した複数組の誘電体層の層間にそれぞれ形成されており、当該複数の第2の接地用パターン領域によって挟まれた誘電体層を貫通し、かつ前記複数の第2の接地用パターン領域を相互に電気的に接続した1以上の導体をさらに含むようにした。
第10の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第9の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記複数の第2の接地用パターン領域を相互に電気的に接続した1以上の導体が、前記第2の信号電送用線路を囲むように設けられた複数の導体を含むようにした。
これにより、信号電送用線路を更に誘電体層を貫通する複数の接地用の導体で囲むことで、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を更に向上させることができる。
第11の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第8の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記環状電極パターンは、前記第1の信号電送用線路の一端を構成する導体パターンと前記第2の信号電送用線路の一端を構成する導体パターンとを個別に囲むように形成されているようにした。
これにより、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を更に向上させることができる。
第12の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第9の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1及び第2のフィルタ素子が、それぞれラダー型のフィルタ素子であるようにした。
第13の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第9の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1及び第2のフィルタ素子のうちの相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子が、並列腕に共振子を有し、前記共振子が、前記第1及び第2の接地用導体に対して電気的に接続されているようにした。
これにより、信号電送用線路の周囲に接地用の導体パターンが設けられたことで、接地用の導体パターン間に誘電体層を貫通する導体をより多く配置する事ができ、その結果として、相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子の並列共振子と接地用の端子との間を電気的に接続する導体のインダクタンスが小さくなるため、相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ素子の低周波側の帯域外減衰量が増大する。
第14の態様に係る分波器デバイス用回路基板は、第1の態様に係る分波器デバイス用回路基板であって、前記第1のフィルタ素子が、送信用フィルタ素子であり、前記第2のフィルタ素子が、受信用フィルタ素子であるようにした。
第15の態様に係る分波器は、第1から第14の態様のいずれかの態様に係る分波器デバイス用回路基板と、前記分波器デバイス用回路基板に対して実装された前記第1及び第2のフィルタ素子と、を備えるようにした。
第16の態様に係る分波器は、第15の態様に係る分波器であって、前記第1のフィルタ素子が、送信用フィルタ素子であり、前記第2のフィルタ素子が、受信用フィルタ素子であり、前記第1及び第2のフィルタ素子が、アンテナに対して電気的に接続された共通端子に共通して電気的に接続され、前記整合回路の一端が、前記共通端子に対して電気的に接合され、前記整合回路の一端とは異なる前記整合回路の他端が、接地されているようにした。
第17の態様に係る分波器は、第16の態様に係る分波器であって、前記整合回路が、所定の受信用の周波数帯域の信号について前記共通端子から送信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となり、所定の送信用の周波数帯域の信号について前記送信回路から受信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となるようにした。
第18の態様に係る分波器は、第17の態様に係る分波器であって、前記受信用の周波数帯域が、869〜894MHzであり、前記送信用の周波数帯域が、824〜849MHzであるようにした。
第19の態様に係る分波器は、第15の態様に係る分波器であって、前記第1及び第2のフィルタ素子が、それぞれ環状電極部によって取り囲まれているようにした。
第20の態様に係る通信装置は、第15から第19の態様のいずれかの態様に係る分波器が搭載されたものとした。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
<通信装置>
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信装置100の機能構成を示すブロック図である。通信装置100は、例えば、携帯電話機や携帯式の無線端末等によって構成される。
図1に示すように、通信装置100は、主に制御部200、送受信機300、アンテナ400、操作部600、マイクロフォンMP、及びスピーカSPを備えている。
制御部200は、通信装置100の各種動作を統括制御する部位である。この制御部200は、CPU、RAM、及びROM等を備え、ROM内等に格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行することで、通信装置100の各種制御や機能が実現される。
アンテナ400は、送受信機300からの送信信号に基づいて無線電波を発信する一方、通信装置100の外部からの無線電波を受け付けて送受信機300に対して受信信号を転送する部位である。
スピーカSPは、送受信機300からの音声信号に応答して音声を発する部位であり、マイクロフォンMPは、音声の受け付けに応答して音声信号を生成して制御部200を介して送受信機300に対して音声信号を出力する部位である。
操作部600は、ユーザーによる通信装置100への各種入力を受け付ける部位であり、例えば、各種ボタン等によって構成される。
送受信機300は、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力された音声信号を送信信号に変換してアンテナ400に出力する一方、アンテナ400からの受信信号を音声信号に変換してスピーカSPに対して出力する部位である。
この送受信機300では、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力されたアナログ音声信号がDSP(Digital Signal Processor)301でA/D変換(アナログ信号からデジタル信号へ変換)された後、変調器302で変調され、更に局部発振器320の発振信号を用いてミキサ303で周波数変換される。ミキサ303の出力は送信用バンドパスフィルタ304およびパワーアンプ305を通り、分波器306を通ってアンテナ400に対して送信信号として出力される。
また、アンテナ400からの受信信号は分波器306を通ってローノイズアンプ307、受信用バンドパスフィルタ308を経てミキサ309へ入力される。ミキサ309は局部発振器320の発振信号を用いて受信信号の周波数を変換し、当該変換された信号はローパスフィルタ310を通って復調器311で復調され、更にDSP301でD/A変換(デジタル信号からアナログ信号へ変換)された後、制御部200を介してスピーカSPに対してアナログ音声信号として出力される。
なお、通信装置100の送受信機300では、アイソレーション特性に優れた分波器306が搭載されているため、ノイズの少ない通話が可能である。以下、分波器306について詳述する。
<分波器>
図2は、本発明の第1実施形態に係る分波器306の回路構成を例示する図である。
図2に示すように、分波器306は、信号端子1,2、共通端子3、送信用フィルタ素子(以下、単に「送信用フィルタ」と略称する)4、受信用フィルタ素子(以下、単に「受信用フィルタ」と略称する)5、整合回路6、及び信号線路7〜10を備えている。
信号端子1は、送信側の回路(送信回路)に含まれるパワーアンプ305に対して電気的に接続(導通接続)される端子(送信側信号端子)であり、信号端子2は、受信側の回路(受信回路)に含まれるローノイズアンプ307に対して電気的に接続される端子(受信側信号端子)である。共通端子3は、アンテナ400に対して電気的に接続される端子である。
送信用フィルタ4は、受信用フィルタ5とは選択的に通過させる信号の周波数帯域(通過周波数帯域)が相互に異なり、共通端子3と送信側信号端子1との間に設けられている。具体的には、送信用フィルタ4は、送信側信号端子1及び共通端子3に対して信号線路7,9によって電気的に接続されている。この送信用フィルタ4は、送信側信号端子1から信号線路7を介して入力された信号のうち、所定の送信用の周波数帯域(例えば、824〜849MHz)の信号を選択的に通過させて、信号線路9を介して共通端子3に対して出力する。
受信用フィルタ5は、共通端子3と受信側信号端子2との間に設けられている。具体的には、受信用フィルタ5は、受信側信号端子2及び共通端子3に対して信号線路8,10によって電気的に接続されている。この受信用フィルタ5は、アンテナ400側すなわち共通端子3から信号線路10を介して入力された信号のうち、所定の受信用の周波数帯域(例えば、869〜894MHz)の信号を選択的に通過させて、信号線路8を介して受信側信号端子2に対して出力する。
整合回路6は、一端が共通端子3に対して電気的に接続され、他端が接地された回路であり、所定の受信用の周波数帯域の信号については共通端子3から送信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となる一方で、所定の送信用の周波数帯域の信号については送信回路から受信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となるように調整する部位である。
ここでは、送信信号を電送する場合には、送信用フィルタ4から見て、共通端子3の前段に整合回路6が設けられ、受信信号を電送する場合には、共通端子3から見て、受信用フィルタ5の前段に整合回路6が設けられている。
このような回路構成を有する分波器306は、薄い誘電体の層が複数積層されて形成された回路基板上に送信用フィルタ4と受信用フィルタ5とが例えばフリップチップ実装されて構成される。また、整合回路6を構成する整合用線路は、複数の誘電体層にわたって構成された螺旋状の導体パターン(螺旋状パターン)又は蛇行状の導体パターン(蛇行状パターン)若しくは螺旋状パターン及び蛇行状パターンの両方で構成され、端部が接地される。
ここで、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5は、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)であっても、所謂FBARフィルタであっても、その他の方式のフィルタであっても良い。また、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5は、同一基板(例えば、SAWフィルタでは圧電基板、FBARフィルタでは種々の基板)上に作製されていても、各々別個の基板上に作製されていても構わないが、以下の理由により同一基板上に作製されている方が好ましい。
送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5の各々には製造上のばらつきが発生する。このため、各フィルタ4,5が別個の基板上に作製されている場合には、別個に様々な製造上のばらつきが生じた送信用フィルタ4と受信用フィルタ5とが組み合わされる事となる。その結果、整合回路6の線路の導体パターン(線路パターン)の最適なインダクタンスの値が、送信用フィルタ4と受信用フィルタ5との組合せによって異なってしまう不具合が生じ易い。これに対して、各フィルタ4,5が同一基板上に作製されている場合には、ウェハーのほぼ同じ場所に作製されたフィルタ間では同様なばらつきが生じるため、ウェハーから切り出したどのフィルタ4,5の組合せに対しても最適なインダクタンスの値が略同一となる。したがって、送信用フィルタ4と受信用フィルタ5との組合せによる特性のばらつきを気にする必要性が無くなるといった点から、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5が同一基板上に作製されていることが好ましい。
<分波器デバイス用回路基板>
図3は、分波器306のうちの送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5を実装するための回路が配設された基板(以下「分波器デバイス用回路基板」とも称する)800の概略構成を例示する断面模式図である。なお、図3及び図3以降の図では、方位関係を明確化するためにXYZの直交する3軸が付されている。
分波器デバイス用回路基板(以下、単に「回路基板」と略称する)800は、所定形状(ここでは略矩形状)の外形を有する複数層(ここでは3層)の誘電体の薄膜(誘電体層)Lb,Ld,Lfと、当該誘電体層Lb,Ld,Lfの表面及び層間に設けられた4層の導体の配線パターンが設けられた層(導体配線パターン層)La,Lc,Le,Lgとを備えている。すなわち、3層の誘電体層Lb,Ld,Lfが相互に積層され、その層間に複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって挟まれた2層の導体配線パターン層Lc,Leが形成されている。
導体配線パターン層Laは、誘電体層Lbの上面(+Z方向の面)すなわち回路基板800を構成する多層基板の一方主面(ここでは、表面)に設けられている。
導体配線パターン層Lcは、誘電体層Lbの下面(−Z方向の面)であり、かつ誘電体層Ldの上面(+Z方向の面)に設けられている。つまり、導体配線パターン層Lcは、誘電体層Lbと誘電体層Ldとの層間に設けられている。
導体配線パターン層Leは、誘電体層Ldの下面(−Z方向の面)であり、かつ誘電体層Lfの上面(+Z方向の面)に設けられている。つまり、導体配線パターン層Leは、誘電体層Ldと誘電体層Lfとの層間に設けられている。
導体配線パターン層Lgは、誘電体層Lfの下面(−Z方向の面)すなわち回路基板800を構成する多層基板の他方主面(ここでは、裏面)に設けられている。
このように、回路基板800は、図3中の上から順番に、導体配線パターン層La、誘電体層Lb、導体配線パターン層Lc、誘電体層Ld、導体配線パターン層Le、誘電体層Lf、及び導体配線パターン層Lgが積層されて構成されている。
誘電体層Lb,Ld,Lfを構成する誘電体の材料としては、例えばアルミナを主成分とするセラミックスや、低温で焼結可能なガラスセラミックス、又は有機材料を主成分とするガラスエポキシ樹脂等が用いられる。
なお、誘電体の材料として、セラミックスやガラスセラミックスを用いる場合には、まず、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとが有機溶剤等で均質に混練されたスラリーをシート状に成型することでグリーンシートを複数枚作製する。次に、複数枚のグリーンシートに対して所望の導体のパターン(導体パターン)や表面から裏面へと貫通するビアホールに導体を充填した導体部分(以下、単に「ビア」と略称する)を形成した後に、複数枚のグリーンシートを積層して圧着することで一体形成して焼成することにより、回路基板800が作製される。
整合回路6を構成する螺旋状パターンや蛇行状パターンは、各誘電体層(ここでは、誘電体層Ld,Lf)の表面に導体によって作製された複数の導体パターンが、誘電体層を貫通して設けられたビアによって電気的に接続されることで形成されている。
ここで、導体パターンを構成する導体としては、銀、銀にパラジウムを添加した合金、タングステン、銅、及び金などを採用することができる。当該導体パターンは、金属導体を用いたスクリーン印刷、或いは蒸着やスパッタリング等の成膜法とエッチングとの組合せ等によって形成される。
また、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5に対して直接接続される導体パターンや、PCB等の外部回路に分波器を搭載する際に接続するための導体パターン(端子)については、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5等の接続端子との接合性の向上に必要であれば、適宜導体パターンの表面にNi或いはAu等のめっきを施しても良い。
以下、回路基板800の具体的な例について説明する。
図4及び図5は、回路基板800を構成する各層La〜Lgにおける導体パターン及びビアの配置を例示する図である。図4及び図5では、回路基板800の外縁すなわち誘電体層Lb,Ld,Lfの外縁との位置関係を明確化するために、回路基板800の外縁の位置が破線で示されている。
回路基板800を構成する多層基板は、3層の誘電体層が積層した構造(3層積層構造)を有し、多層基板表面に形成された導体パターン(図4(a))、多層基板裏面に形成された導体パターン(図5(c))、誘電体層Lbと誘電体層Ldとの層間に形成された導体パターン(図4(c))、誘電体層Ldと誘電体層Lfとの層間に形成された導体パターン(図5(a))、誘電体層Lbを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Lbを貫通する複数のビア(図4(b))、誘電体層Ldを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Ldを貫通する複数のビア(図4(d))、及び誘電体層Lfを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Lfを貫通する複数のビア(図5(b))を備えている。
なお、図4及び図5では、送信用及び受信用フィルタ4,5は図示されていないが、回路基板800の上面(+Z方向の面)が、送信用及び受信用フィルタ4,5を搭載するための面(フィルタ搭載面)となっており、図4(a)の右方が送信用フィルタ4のフィルタ搭載面、図4(a)の左方が受信用フィルタ5のフィルタ搭載面となっている。
なお、送信用及び受信用フィルタ4,5が実装されて送信及び受信回路が接続される前段階の回路基板800単体の状態では、整合回路6は、相互に通過周波数帯域が異なる送信用及び受信用フィルタ4,5間のインピーダンスを調整するための線路(以下「整合回路用線路」とも称する)であり、各信号線路7〜10は、信号を伝送するための線路(以下「信号電送用線路」とも称する)であり、更に、信号端子1,2、及び共通端子3は、信号を伝送するための端子(以下「信号電送用端子」とも称する)である。
ここで、図4及び図5を参照しつつ、回路基板800における導体パターン及びビアの接続状態と、回路基板800に対して送信用及び受信用フィルタ4,5が実装されて送信及び受信回路が接続された際の送信/受信信号の流れについて説明する。
送信側信号端子1に対して、導体パターン14,27,41とビア19,32,46とによって構成される信号線路7が電気的に接続されており、導体パターン14は、送信用フィルタ4が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路7が、上下方向(Y軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲されており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成された多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfの最上層から最下層に渡って形成されている。そして、送信側信号端子1から入力される送信用の信号は、信号線路7を介して送信用フィルタ4に入力されることになる。
また、共通端子3に対して、導体パターン12,25,40とビア17,31,45とによって構成される信号線路9が電気的に接続されており、導体パターン12は、送信用フィルタ4が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路9が、上下方向(Y軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲されており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfの最上層から最下層に渡って形成されている。そして、送信用フィルタ4から出力される送信信号は、信号線路9と共通端子3とを介して、アンテナ400(図1)に出力されることになる。
一方、共通端子3に対して、導体パターン15,25,40とビア20,31,45とによって構成される信号線路10が電気的に接続されており、導体パターン15は、受信用フィルタ5が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路10が、上下方向(Y軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲されており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfの最上層から最下層に渡って形成されている。そして、アンテナ400から入力される受信信号は共通端子3と信号線路10とを介して受信用フィルタ5に入力されることになる。
また、受信側信号端子2に対して、導体パターン16,29,43とビア21,36,48とによって構成される信号線路8が電気的に接続されており、導体パターン16は、受信用フィルタ5が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路8が、上下方向(Y軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲されており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfの最上層から最下層に渡って形成されている。そして、受信用フィルタ5から出力される信号は、信号線路8を介して受信側信号端子2から出力されることになる。
共通端子3に電気的に接続されている整合回路6は、共通端子3に対してビア45によって電気的に接続される導体パターン28,40及びビア34を含む線路(整合用線路)によって構成されている。整合回路6を構成する導体パターン28,40は螺旋状パターンによって構成されている。より詳細には、整合回路6が、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲されており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において誘電体層Ldを貫通して形成されている。また、導体パターン28の一端(螺旋状パターン40とビア34によって接続されている側とは反対側の端部)は、ビア35によって接地用の導体パターン(接地用パターン)44に対して電気的に接続されている。ここで、「接地用の導体」とは「定電圧あるいは基準電圧が与えられる導体」ということもできる。
回路基板800の最上部を構成する導体配線パターン層Laに含まれる環状電極パターン11は、各々複数のビアによって構成されるビア群22〜24によって接地用の導体パターン(接地用パターン)30に対して電気的に接続されている。接地用パターン30は、1組の誘電体層Lb,Ldの層間に形成され、かつ2層の誘電体層Lb,Ldによって包囲されており、ビア群37〜39によって接地用パターン44に対して電気的に接続されている。更に、接地用パターン44は、1組の誘電体層Ld,Lfの層間に形成され、かつ2層の誘電体層Ld,Lfによって包囲されており、ビア群49〜51によって回路基板800の裏面に設けられた接地用の端子(接地用端子)52に対して電気的に接続されている。
なお、導体パターン13,26,42とビア18,33,47によって構成される線路は、送信用フィルタ4を接地用端子52に対して電気的に接続するための線路である。
回路基板800の裏面では、図5(c)で示すように、導体配線パターン層Lgのうち、送信側信号端子1が図中右下方に配置され、受信側信号端子2が図中左下方に配置され、共通端子3が図中上方の略中央に配置されている。このように回路基板800の裏面では、3つの端子1〜3が相互に極力離隔されて配置されている。
このような線路配置は、信号線路7(導体パターン14,27,41とビア19,32,46とによって構成)と整合回路6(導体パターン28,40とビア34とによって構成)との間におけるアイソレーション、信号線路8(導体パターン16,29,43とビア21,36,48とによって構成)と整合回路6との間におけるアイソレーション、信号線路7と信号線路8との間におけるアイソレーションを確保するためのものである。つまり、限られた空間内において、整合回路6、信号線路7、及び信号線路8の3つの線路間の距離が、それぞれ適正な距離設定となるように工夫されている。
更に、回路基板800では、信号線路7及び信号線路8の周囲が、それぞれ、側方より接地用パターン30,44によって囲まれている。
より具体的には、導体配線パターン層Lc(図4(c))の面内において、接地用パターン30が、信号線路7を構成する導体パターン27と信号線路8を構成する導体パターン29との間の空間領域、及び導体パターン27と整合回路6を構成する導体パターン28との間の空間領域の双方の空間領域を通るように設けられ、かつ導体パターン27を側方より囲む環状の接地用の導体パターンの領域(接地用パターン領域)30aを有するとともに、導体パターン29と導体パターン27との間の空間領域、及び導体パターン29と導体パターン28との間の空間領域の双方の空間領域を通るように設けられ、かつ導体パターン29を側方より囲む環状の接地用の導体パターンの領域(接地用パターン領域)30bを有する。なお、導体パターンの領域30aは、その内縁と導体パターン27との間隔が、導体パターン27の全周にわたって均一であることがよい。この場合、導体パターンの領域30aと導体パターン27との間に、浮遊容量が発生するのを抑えることができる。導体パターンの領域30bと導体パターン29との関係においても同様の構成がよい。
また、導体配線パターン層Le(図5(a))の面内において、接地用パターン44が、信号線路7を構成する導体パターン41と信号線路8を構成する導体パターン43との間の空間領域、及び導体パターン41と整合回路6を構成する導体パターン40との間の空間領域の双方の空間領域を通るように設けられ、かつ導体パターン41を側方より囲む環状の接地用の導体パターンの領域(接地用パターン領域)44aを有するとともに、導体パターン43と導体パターン41との間の空間領域、及び導体パターン43と導体パターン40との間の空間領域の双方の空間領域を通るように設けられ、かつ導体パターン43を側方より囲む環状の接地用の導体パターンの領域(接地用パターン領域)44bを有する。
図6は、図4(a)で示したフィルタ搭載面上に実装される弾性表面波素子900の構成を例示する上面図である。ここでは、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5が同一基板上に形成されることで弾性表面波素子900が形成されている。なお、図6で示される弾性表面波素子900は、いわゆるラダー型のフィルタ素子によって構成されている。
図6に示すように、弾性表面波素子900は、主に圧電基板902の一方主面上に送信用フィルタ(Txフィルタ)4と受信用フィルタ(Rxフィルタ)5とを備えている。弾性表面波素子900では、Txフィルタ4とRxフィルタ5とを個別に取り囲む環状電極部(環状導体)930が設けられている。図6では、環状電極部930で囲まれた2つの領域のうち上方の領域がTxフィルタ4が設けられた領域、下方の領域がRxフィルタ5が設けられた領域を示している。
Txフィルタ4には、6つの直列腕の共振子(直列共振子)914a〜914fと2つの並列腕の共振子(並列共振子)915a,915bとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極917によって電気的に接続されている。そして、Txフィルタ4には、入力パッド部911、アンテナ400と電気的に接続される出力パッド部912、及び接地電極部913が設けられている。そして、並列共振子915a,915bは、それぞれ接地電極部913に対して電気的に接続されている。
一方、Rxフィルタ5には、4つの直列共振子924a〜924dと4つの並列共振子925a〜925dとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極927によって電気的に接続されている。そして、Rxフィルタ5には、入力パッド部921、出力パッド部922、及び接地用電極923が設けられており、並列共振子925a〜925dは、それぞれ接地用電極923に対して電気的に接続されている。更に、接地用電極923が、環状電極部930に対して電気的に接続されている。
このような構成を有する弾性表面波素子900が、回路基板800上にフェイスダウン実装によって搭載されることで、分波器306が形成される。具体的には、環状電極パターン11に対して環状電極部930が、入力パッド部911に対して導体パターン14が、出力パッド部912に対して導体パターン12が、接地電極部913に対して導体パターン13が、入力パッド部921に対して導体パターン15が、出力パッド部922に対して導体パターン16が、それぞれ半田バンプを介して電気的に接続される。ここでは、並列共振子925a〜925dが、接地用電極923、環状電極部930、半田バンプ、環状電極パターン11、ビア群22〜24、接地用パターン30、ビア群37〜39、接地用パターン44、ビア群49〜51を順次介して接地用端子52に対して電気的に接続(導通接続)される。
以上のように、第1実施形態に係る回路基板800では、整合回路6が、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲された多層基板内部に配置される。そして、信号線路7及び信号線路8のそれぞれが、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって包囲された多層基板内部に配置され、かつ他方の信号線路7,8ならびに整合回路6との間を通りかつ周囲を囲む接地用の導体(ここでは、接地用パターン領域30a,30b,44a,44b)が設けられている。
このため、回路基板800内部の各線路間(整合回路6、信号線路7、及び信号線路8の各線路間)が電気的に遮蔽されるとともに、信号線路7及び信号線路8と回路基板800の外部との間も電気的に遮蔽される。したがって、回路基板800内部における電気的な干渉及び回路基板800の外部との間における電気的な干渉を低減することができる。すなわち、回路基板800内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板800外部との間におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
また、信号線路7,8の周囲を囲む接地用の導体を、誘電体層間に形成された導体パターンによって形成するような構成を採用すると、容易に接地用の導体を形成することができる。
更に、回路基板800を搭載した分波器306はアイソレーション特性に優れるため、当該分波器306を搭載した通信装置100では、良好な通信を行うことができる。
<第2実施形態>
上述した第1実施形態に係る回路基板800では、信号線路7,8が、接地用パターン30,44によって囲まれた。これに対して、第2実施形態に係る回路基板800Aでは、信号線路7,8を囲むような位置に接地用パターン30,44間を電気的に接続するビアを設けることで、更にアイソレーション特性の向上を図っている。
第2実施形態に係る通信装置100Aは、適宜ビアを追加配置した以外は、第1実施形態に係る通信装置100と同様な構成を有する。以下、第2実施形態に係る通信装置100Aのうち、第1実施形態に係る通信装置100と同様な部分については同じ符号を付して説明を省略しつつ、第1実施形態に係る通信装置100と異なる回路基板800Aの構成について主に説明する。
図7及び図8は、第2実施形態に係る回路基板800Aを構成する各層La〜Lgにおける導体パターン及びビアの配置を例示する図である。
図7及び図8に示すように、回路基板800Aでは、導体パターン14,27,41とビア19,32,46とによって構成される信号線路7の周囲に接地用の複数のビアからなるビア群53a,53bが設けられている。また、導体パターン16,29,43とビア21,36,48とによって構成される信号線路8の周囲に接地用の複数のビアからなるビア群54a,54bが設けられている。
具体的には、図7(d)に示すように、信号線路7と信号線路8並びに整合回路6との間を通るように設けられ、かつ信号線路7の周囲を囲む2つの環状の接地用パターン領域30a,44aの間を電気的に接続する接地用のビア群53a,53bが設けられている。また、信号線路8と信号線路7並びに整合回路6との間を通るように設けられ、かつ信号線路8の周囲を囲む2つの環状の接地用パターン領域30b,44bの間を電気的に接続する接地用のビア群54a,54bが設けられている。
より詳細には、信号線路7を構成するビア32と、信号線路8を構成するビア36ならびに整合回路6を構成するビア34との間の空間領域において環状に配置された複数のビアによって構成される接地用のビア群53a,53bが設けられている。また、信号線路8を構成するビア36と、信号線路7を構成するビア32ならびに整合回路6を構成するビア34との間の空間領域において環状に配置された複数のビアによって構成された接地用のビア群54a,54bが設けられている。
このように、回路基板800Aでは、信号線路7,8の周囲をそれぞれ接地用の導体で囲むために新たに接地用パターン領域30a,30b,44a,44bを設けたことで、新たに接地用のビアを設けることができる領域が増加したことを利用して、信号線路7,8の周囲をそれぞれ囲む接地用のビア群53a,53b,54a,54bが新たに設けられている。また、接地用パターン領域30a,30bを設けたことで、環状電極パターン11(図7(a))と導体パターン30(図7(c))との間を電気的に接続するビア群55b,56b(図7(b))も新たに設けることができた。
図9は、第2実施形態に係る分波器306Aの等価回路を示す図である。ここでは、接地用のビア群53a,53b,54a,54bが新たに設けられたことで、図9に示すように、受信用フィルタ5の並列共振子925a〜925dが接地される配線経路(すなわち接地用電極923から接地用端子52へ向けた配線経路)において、電気的に並列接続される配線経路が増加する。このため、接地用電極923から接地用端子52に向けた配線経路(回路)のインダクタンスが低下する。
以上のように、第2実施形態に係る回路基板800Aでは、信号線路7,8の周囲が、複数組の誘電体層間に形成された複数の接地用パターン領域30a,30b,44a,44bと、複数の接地用パターン領域30a,30b,44a,44bによって挟まれた誘電体層Ldを貫通し、かつ複数の接地用パターン領域30a,30b,44a,44bを電気的に接続する導体(ここでは、ビア群53a,53b,54a,54b)とによって囲まれている。
このような構成を採用すると、回路基板800A内部の線路間(整合回路6、信号線路7、及び信号線路8の各線路間)が電気的に遮蔽されるとともに、回路基板800A外部と、接地用の導体(ここでは、接地用パターン領域30a,30b,44a,44b、ビア群53a,53b,54a,54b)によって囲まれた信号線路7,8との間も電気的に遮蔽される。したがって、回路基板内部における電気的な干渉及び回路基板外部との間における電気的な干渉を更に低減することができる。その結果、回路基板内部におけるアイソレーション特性、並びに回路基板外部との間におけるアイソレーション特性を更に向上させることができる。
また、受信側の信号線路8の周囲に接地用パターン領域30b,44bが設けられたことで、信号線路8の周囲において、複数の接地用パターン領域30b,44bの間に誘電体層Ldを貫通する導体であるビアを配置する事ができる領域(位置)が増加する。そして、受信用及び送信用フィルタのうち、相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタ(一般的には、受信用フィルタ)の並列共振子と接地用端子との間を電気的に接続する線路(すなわち、回路基板の導体パターン及び誘電体層を貫通するビア等によって構成される導体)において生じるインダクタンスの値が小さくなれば、分波器のうちの相対的に高い通過周波数帯域を有するフィルタの低周波側の帯域外減衰量が大きくなる性質が存在することが知られている。
この性質に従えば、並列共振子に対して電気的に接続された接地用パターン30,44間を誘電体層を貫通して電気的に接続する導体であるビア(ここでは、ビア群53a,53b,54a,54b)がより多く配置されることで、ビア群53a,53b,54a,54bが並列の接地用の線路を形成して、並列共振子925a〜925dと接地用端子52との間のインダクタンスの値が小さくなる。このため、受信用フィルタ5の帯域外減衰量を増大させることができる。すなわち、ここでは、ビア群53a,53b,54a、54bを新しく設けることができたことがインダクタンスの値の低減に寄与していると言える。
したがって、回路基板800Aにおいて、信号線路7,8の周囲をそれぞれ囲むように、多数の接地用のビアが設けられることで、アイソレーション特性の更なる向上とともに、受信用フィルタ5の帯域外減衰量の増大による通信装置100Aの通信特性の更なる向上を図ることができる。
<変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記第1実施形態では、信号線路7,8の双方が、周囲を接地用パターン領域30a,30b,44a,44bによって囲まれたが、これに限られず、例えば、信号線路7,8のうちの少なくとも一方の信号線路の周囲が、相互に隣接した1組以上の誘電体層の層間に設けられた1以上の接地用の導体(例えば、導体パターン領域30a,30b,44a,44b等)によって囲まれれば、第1実施形態と同様な効果を奏する。
但し、アイソレーション特性をより向上させる観点から言えば、信号線路7,8の双方の周囲が、より多くの相互に隣接した組の誘電体層の層間にそれぞれ形成された複数の接地用の導体(例えば、導体パターン領域30a,30b,44a,44b)によって囲まれる方が好ましい。
◎また、上記第2実施形態では、接地用パターン領域30a,44a間を接地用のビア群53a,53bによって電気的に接続し、接地用パターン領域30b,44b間を接地用のビア群54a,54bによって電気的に接続したが、これに限られず、接地用パターン領域30a,44a間、及び接地用パターン領域30b,44b間のうちの少なくとも一方をビア群によって電気的に接続するようにしても、第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
但し、アイソレーション特性をより向上させる観点、及びフィルタの帯域外減衰量をより増大させる観点から言えば、接地用パターン領域30a,44a間、及び接地用パターン領域30b,44b間の双方を、より多くのビアによって電気的に接続する方が好ましい。更に、多層基板を構成する誘電体層が4層以上である場合には、より多くの相互に隣接した複数組の誘電体層の層間にそれぞれ形成され、かつ各信号線路7,8を囲む複数の接地用パターン領域が、より多くのビアによって電気的に接続される方が好ましい。
◎また、上記実施形態では、信号線路7,8を環状の接地用パターン領域30a,30b,44a,44bによって囲んだが、環状の接地用パターン領域30a,30b,44a,44bについては、接地用の電気的な接続を確保できる範囲内で、適宜スリット等が設けられても構わない。
また、信号線路7,8を囲む導体パターン領域30a,30b,44a,44bの形状は環状である必要性はなく、信号線路7や信号線路8の周囲を囲みかつ他方の信号線路7,8ならびに整合回路6との間を通るように設けられた接地用の導体パターンであれば、種々の形状のものを採用することができる。
◎また、上記実施形態では、信号線路7,8の周囲を囲む導体が、誘電体層の層間に形成された接地用の導体パターン及びビアによって構成されたが、これに限られず、誘電体の多層膜を貫通する接地用の導体であれば良い。
◎また、上記実施形態では、整合回路6が、2層の螺旋状の導体パターン28,40によって構成されたが、これに限られず、例えば、所望のサイズやインダクタンスの値が得られる場合には、1層又は3層以上の導体パターン等によって構成されても良い。
◎また、上記第2実施形態では、送信用及び受信用フィルタ4,5のうち、受信用フィルタ5の方が相対的に高い通過周波数帯域を有していたが、これに限られず、種々の異なる規格等に従って、送信用フィルタ4の方が相対的に高い通過周波数帯域を有するようにしても良い。このとき、第2実施形態に係る受信用フィルタ5と同様に、送信用フィルタ4の並列共振子を接地用端子52に対して電気的に接続するための線路のインダクタンスをより低減することで、送信用フィルタ4の帯域外減衰量を増大させることができる。
◎また、上記第2実施形態では、ラダー型フィルタの並列共振子925a〜925dを接地用端子52に対して電気的に接続する線路のインダクタンスを低減することにより、フィルタの帯域外減衰量を増大させる例を挙げて説明したが、これに限られず、例えば、いわゆるDMSフィルタに並列共振子を設ける等、並列腕に共振子を有するフィルタ、すなわち並列腕の共振子(並列共振子)を有するフィルタであれば、当該並列共振子を接地用端子に対して電気的に接続する線路のインダクタンスを低減することで、フィルタの帯域外減衰量を増大させることができる。
(実施例)
実施例として、上記第1実施形態に係る回路基板800を用いた分波器306、及び上記第2実施形態に係る回路基板800Aを用いた分波器306Aと同様な構成を有する2種類の分波器を作製した。なお、分波器306に相当するものを実施例1、分波器306Aに相当するものを実施例2とした。
つまり、実施例1に係る回路基板800として、整合回路6が、複数の誘電体層によって包囲された多層膜内部に配置されるとともに、信号線路7,8の双方が、複数の誘電体層によって包囲された多層膜内部に配置され、かつ他方の信号線路7,8ならびに整合回路6との間を通る接地用パターン領域30a,30b,44a,44bによって囲まれたものを用いた。
また、実施例2に係る回路基板800Aとして、整合回路6が、複数の誘電体層によって包囲された多層膜内部に配置されるとともに、信号線路7,8の双方が、複数の誘電体層によって包囲された多層膜内部に配置され、かつ他方の信号線路7,8ならびに整合回路6との間を通る接地用パターン領域30a,30b,44a,44bと、当該接地用パターン領域30a,30b,44a,44bの間を電気的に接続する接地用のビア群53a,53b,54a,54bとによって囲まれたものを用いた。
分波器306,306Aにおいては、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)電極及び反射器電極を備えた共振器と、当該各共振器間を接続する配線電極と、回路基板に接続するための接続端子とが形成された弾性表面波フィルタ(弾性表面波素子)900(図6)を用いた。
ここで、弾性表面波素子900を使用した分波器306,306A(実施例1,2)の製造について説明する。
弾性表面波素子900の製造については、まず、タンタル酸リチウム(LiTaO3)製の圧電基板を用い、当該圧電基板の主面上に厚みが6nmのTi薄膜を形成し、当該Ti薄膜上に厚さが125nmのAl−Cu薄膜を形成して、このTi薄膜及びAl−Cu薄膜を交互に各3層ずつ積層することで、合計6層のTi/Al−Cu積層膜を形成した。
次に、レジスト塗布装置によって厚さが約0.5μmのフォトレジストを塗布した。そして、縮小投影露光装置(ステッパー)等を用いて、図6で示した共振器や信号線、及びパッド電極等となるフォトレジストのパターンを形成した。受信用フィルタにおけるアンテナ側に最も近い並列共振子についても、この工程でフォトレジストのパターンが形成される。更に、現像装置によって不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
その次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置によって図6で示した電極パターンを形成した。そして、電極パターンの所定の領域上に保護膜を作製した。ここでは、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって、電極パターン及び圧電基板の主面上に厚さが約15nmのSiO2膜を形成した。
更に、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等でフリップチップ用の電極部(入出力電極、接地電極及びパッド電極)を覆っているSiO2膜のエッチングを行った。そして、スパッタリング装置を使用して、SiO2膜を除去した部分にCr層、Ni層、Au層を積層してなる積層電極を成膜した。このときの積層電極の膜厚は約1μm、Cr層、Ni層、及びAu層の厚さをそれぞれ0.01μm、1μm、及び0.2μmとした。その後、フォトレジスト及び積層電極の不要箇所をリフトオフ法によって同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用のバンプを電気的に接続するためのフリップチップ用の電極部とした。そして、圧電基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施すことで、各弾性表面波素子900を構成するチップに分割した。
回路基板800,800Aの製造については、まず、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製した。そして、複数枚のグリーンシートに対して所望の導体パターン及びビアを形成した後に、複数枚のグリーンシートを積層して圧着することによって多層膜を作製し、焼成することにより複数の回路基板800,800Aが集まった回路基板(集合回路基板)を作製した。集合回路基板に設けられた導体パターン等に用いられる材料としては銀とガラスとを主成分としたものを用い、合計3層の誘電体層とその表裏面及び層間に形成された導体パターンを備えた集合回路基板を作製した。
弾性表面波素子900と集合回路基板とを電気的に接続する工程については、まず導体配線パターン層La(図4(a),図7(a))の導体パターン11〜16の上に導電性を有する材料(導電材)を印刷した。この導電材としては半田を使用した。
そして、弾性表面波素子900をフリップチップ実装装置によって、弾性表面波素子900の電極形成面を下面にして集合回路基板上に仮接着した。この仮接着はN2ガス雰囲気中で行った。更に、N2ガス雰囲気中でリフローを行ない、半田を溶融することにより、弾性表面波素子900と集合回路基板上とを接着し、気密封止を施した。
そして、弾性表面波素子900が接着された集合回路基板に樹脂を塗布し、N2ガス雰囲気中でベークを行なうことで、弾性表面波素子900を樹脂によって封止した。
ここでは、複数の弾性表面波素子900を搭載できる集合回路基板を用いたため、集合回路基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施すことで、回路基板800,800Aの個片に分割することで、複数の分波器306,306Aを一度の工程で得た。なお、出来上がった各分波器306,306Aの寸法(できあがり寸法)を、実装面積2.5mm×2.0mm×高さ0.9mmとした。
このようにして作製された2種類の分波器306,306Aについて、ネットワークアナライザーを用いた測定値(Sパラメータ)より送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を得た。
(比較例)
一方、比較例として、第1実施形態に係る回路基板800から、信号線路7,8の双方の周囲を囲む接地用パターン領域30a,30b,44a,44bが削除された回路基板を用いた分波器を採用した。つまり、比較例としては、信号線路7,8の双方が、接地用パターンによっても接地用のビアによっても囲まれていない分波器を採用した。
図10及び図11は、比較例に係る分波器に含まれる回路基板を構成する各層La〜Lgにおける導体パターン及びビアの配置を示す図である。
図10(c)に示すように、変形例に係る導体配線パターン層Lcでは、第1実施形態に係る導体配線パターン層Lcの導体パターンから信号線路7,8をそれぞれ囲んでいた環状の接地用パターン領域30a,30bが除かれて、接地用の導体パターン30が3つの接地用の導体パターン55〜57に分離された形態を有する。
また、図11(a)に示すように、変形例に係る導体配線パターン層Leでは、第1実施形態に係る導体配線パターン層Leの導体パターンから信号線路7,8をそれぞれ囲んでいた環状の接地用パターン領域44a,44bが除かれて、接地用の導体パターン44が3つの接地用の導体パターン58〜60に分離された形態を有する。
なお、これらの特徴点を除いて、変形例に係る回路基板は、第1実施形態に係る回路基板800と同様な構成を有するため、図10及び図11では、第1実施形態に係る回路基板800と同様な部分については同様な符号を付して、説明を省略する。
また、変形例に係る分波器は、実施例1,2に係る分波器と同様に弾性表面波素子900を使用した分波器であり、当該分波器の製造方法については、上記実施形態1,2に係る分波器と同様であるため説明を省略する。
このようにして作製された変形例に係る分波器についても、実施例1,2に係る分波器306,306Aと同様に、ネットワークアナライザーを用いた測定値(Sパラメータ)より送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を得た。
(実施例と比較例の比較)
上述のようにして得られた、実施例1,2に係る2種類の分波器と、比較例に係る分波器とについての、送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を、図12〜図14、及び下表1に示す。図12〜図14では、横軸は周波数(単位:MHz)を、縦軸はアイソレーション(単位:dB)を示している。そして、実施例1のアイソレーションが実線R1で示され、実施例2のアイソレーションが太線R2で示され、更に、比較例のアイソレーションが破線R3で示されている。また、図12では、広範囲の周波数帯域(760〜960MHz)におけるアイソレーションを示している。図13では、US−CDMA方式で必要とされる送信用の周波数帯域(824〜849MHz)に着目したアイソレーション、すなわち図12の太破線A1で囲まれた領域に着目したアイソレーションを示している。図14では、US−CDMA方式で必要とされる受信用の周波数帯域(869〜894MHz)に着目したアイソレーション、すなわち図12の太破線A2で囲まれた領域に着目したアイソレーションを示している。そして、下表1では、実施例1、2、及び比較例について、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値、及び受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値がそれぞれ示されている。
信号線路7,8の双方の周囲を囲む接地用パターン領域30a,30b,44a,44b、及びビア群53a,53b,54a,54bが設けられていない比較例の分波器では、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が−53dBであり、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値が−42dBであった。
一方、信号線路7,8の双方の周囲を囲む接地用パターン領域30a,30b,44a,44bが設けられた実施例1の分波器では、比較例と比べて、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値は−41dBとほとんど変化しなかったが、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が−56dBと減少し、送受信の周波数帯域全体としてアイソレーション特性が向上した。特に通信装置では受信信号と比較して送信信号の方が出力が大きい(ハイパワーである)為、送信用の周波数帯域におけるアイソレーションの向上が通信特性の改善にとって重要である点を考慮すると、比較例と比べて実施例1では、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が3dBも減少しており、通信特性の改善に大きく寄与するアイソレーションの特性が向上したと言える。
また、実施例1の分波器に対して、更に信号線路7,8の双方の周囲を囲む接地用のビア群53a,53b,54a,54bが設けられた実施例2の分波器では、比較例と比べて、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値は−42dBと全く変化しなかったが、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が−57dBと減少した。そして、実施例2については、実施例1と比較して、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)及び受信用の周波数帯域(869〜894MHz)の双方において、アイソレーションの最大値が若干減少する傾向を示した。すなわち、信号線路7,8の双方の周囲を囲む接地用のビア群53a,53b,54a,54bが設けられたことで、アイソレーションの特性をより向上させることができた。
以上の結果より、信号線路7,8の双方を複数の誘電体層の内部に配置し、かつ信号線路7,8の双方の周囲を、他方の信号線路7,8ならびに整合回路6との間を通る接地用の導体によって囲むことで、アイソレーション特性が向上した分波器が得られる事を確認した。また、信号線路7,8の双方の周囲を、誘電体層の層間に設けられた接地用パターンによって囲むだけよりも、更に接地用のビア群によって囲む方がアイソレーション特性が更に向上する傾向がある事を確認した。