JP4988306B2 - 医療用粘着剤及び医療用粘着テープ又はシート - Google Patents
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Description
医療用粘着テープ又はシートの粘着層に用いられる粘着剤としては、接着性及び透湿性に優れ、かつ、皮膚に対する化学的刺激の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体から構成される粘着剤が一般的に使用されている。
しかしながら、(メタ)アクリル酸エステル系重合体から構成される粘着剤は接着力が強すぎるため、粘着テープ又はシートを皮膚から剥離する際に痛みを感じさせたり、皮膚の角質層及び表皮に損傷を与えたりすることがある。
特に、同一部位に繰り返して粘着テープ又はシートを貼付する場合には、出血を伴うような皮膚損傷を生ずることもあり、これは大きな問題となっていた。
このような皮膚に対する物理的刺激を低減させる目的で、(メタ)アクリル酸エステル系重合体中に、この重合体と相溶可能な有機液状成分を多量に含有させて、架橋処理を施してゲル状にした粘着剤が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
このようなゲル状粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の有する高い粘着性を保持したまま、剥離時に皮膚面に与える応力を緩和させ、分散させることを可能としている。従って、これらの粘着剤は、皮膚に対する物理的刺激が少なく、角質などの剥離を生じることが極めて少ないため、経皮吸収型テープ製剤及び医療用サージカルテープに適用されている。
また、上記各特許文献に開示された粘着剤を含む大部分の医療用粘着剤は、酢酸エチルなどの有機溶剤中にて作製されており、現在の状況下では環境衛生面において好ましいとは言えないものである。
すわなち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕 (メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物に、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なシラン系単量体を共重合させて得られる水分散型共重合体と、該水分散型共重合体と相溶する有機液状成分とを含み、
該水分散型共重合体の架橋後のゲル分率が40〜80重量%、架橋後のゾル分の重量平均分子量が300000以上である、医療用粘着剤。
〔2〕 上記水分散型共重合体の架橋前のゲル分率が30重量%以下である、上記〔1〕に記載の医療用粘着剤。
〔3〕 上記水分散型共重合体の架橋後のゾル分の重量平均分子量/数平均分子量が3〜7である、上記〔1〕に記載の医療用粘着剤。
〔4〕 (メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なカルボキシル基含有単量体0.1〜10重量部を含み、水分散型共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部に対して、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なシラン系単量体0.005〜2重量部を共重合させて得られたものである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の医療用粘着剤。
〔5〕 上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の医療用粘着剤を支持体の少なくとも片面に設けてなる医療用粘着テープ又はシート。
上記水分散型共重合体の架橋後のゲル分率が、40重量%未満では粘着剤の凝集力が不足し、剥離時に皮膚に粘着剤が残ったり、医療用粘着テープ又はシートの側面からの粘着剤のはみ出しが起きたりする恐れがある。また、支持体が不織布などの多孔質支持体の場合には、粘着剤が支持体を裏抜けするという現象を生じる。一方、該水分散型共重合体の架橋後のゲル分率が80重量%を超えると、十分な皮膚接着力が得られない恐れがある。
架橋後の重量平均分子量の測定方法としては、当該分野で公知の測定方法を用いることができ特に限定されないが、例えば、ゲル分率測定にて得た抽出液を乾燥させ、それを有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)に溶解し、この溶液をメンブレンフィルターにて濾過後、濾液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に供して測定する方法が挙げられる。
架橋後のゾル分の重量平均分子量/数平均分子量の測定方法としては、当該分野で公知の測定方法を用いることができ特に限定されないが、例えば、上記GPC測定を用いて得る方法が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体が0.1重量部未満であるとシラン系単量体が加水分解されず架橋反応が促進されないため不溶化分が少なくなり、剥離時に粘着剤が残りやすくなる。また、10重量部を超えると重合反応中の溶液粘度が高くなり、粘着剤の製造が困難となる問題が発生する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なカルボキシル基含有単量体としては、その構造中にカルボキシル基を含む重合性化合物であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なものであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸などが挙げられる。特に、アクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸が好ましい。
シラン系単量体の共重合量が、2重量部を超えると十分な固定性が得られず固定性が低下する場合があり、0.005重量部未満では重合体強度の不足で凝集力が低下しやすくなり糊残りなどの問題を引き起こす場合がある。
すなわち、本発明の医療用粘着テープ又はシートは、支持体の片面又は両面に、本発明の医療用粘着剤を直接塗布、乾燥するか、又は、本発明の医療用粘着剤を離型紙上に塗布、乾燥したものを支持体に貼り合せて作製する。
また、本発明の医療用粘着シートを作製後、これをテープ状にカットすることにより、本発明の医療用粘着テープを得ることもできる。
アクリル酸2−エチルヘキシル86.5重量部、メタクリル酸メチル9.6重量部、アクリル酸3.9重量部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン0.05重量部、1−ドデカンチオール0.035重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム3重量部、水44.2重量部をホモミキサーにて乳化しモノマーエマルションを得た。冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器(セパラブルフラスコ)に、上記モノマーエマルション5.2重量部と水56.3重量部を投入し、不活性ガスを導入しながら、1時間撹拌した。そこに重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート0.1重量部を投入し、60℃で1時間反応させた後、上記モノマーエマルション141.1重量部を4時間かけて滴下し3時間熟成を行い、アンモニア水を添加してpH7に調整することで、水分散型共重合体を作製した。この水分散型共重合体(固形分)100重量部に対し、有機液状成分としてトリオレイン酸ソルビタンを30重量部加え、粘着剤を得た。
得られた粘着剤100重量部に増粘剤(プライマルASE−60(ロームアンドハース社製))0.5重量部を加えて増粘した粘着剤を乾燥後の厚みが40μmとなるように剥離紙に塗布し、130℃で3分間乾燥した。得られた粘着シートをポリエステル/パルプ混紡製不織布(23g/m2)に貼り合わせることにより、粘着シートを作製した。
実施例1において、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
実施例1において、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
実施例1において、トリオレイン酸ソルビタンをモノラウリル酸ソルビタンに変更した以外は、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
実施例1において、トリオレイン酸ソルビタンをモノオレイル酸ソルビタンに変更した以外は、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
実施例1の重合開始剤2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレートを、過硫酸アンモニウム0.1重量部に変更し、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを使用せずに、架橋剤としてTEPIC−S(日産化学工業社製)0.2重量部を添加した以外は、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
実施例及び比較例で得た粘着シートについて次の特性を調べた(各試験において、n=3)。
架橋後の粘着剤中の不溶分(ゲル分率)
実施例及び比較例の各サンプルの粘着剤を約0.4g採取し、正確に重量(W1)を測定した。次にそのサンプルを酢酸エチル中に常温で7日間浸漬し、溶剤可溶分を抽出した。その残渣(不溶分)をポリテトラフルオロエチレン膜(平均孔径0.2μm、日東電工社製、TEMISH)にて濾別し、130℃で1時間乾燥させた後の重量(W2)を測定し、次式により不溶分の重量%を求めた。
(W2×100)/(W1×A/B)
A=(水分散型共重合体+架橋剤)の重量
B=(水分散型共重合体+有機液状成分+架橋剤)の重量
架橋前の実施例1〜5の粘着剤中の不溶分(ゲル分率)
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランを使用しない以外は、実施例1〜5と同様にして粘着シートを作製した。得られた粘着シートの粘着剤のゲル分率の評価を、架橋後の粘着中の不溶分の測定に即して行ったところ、ゲル分率は26%であった。このゲル分率を実施例1〜5の架橋前ゲル分率とした。
架橋前の比較例の粘着剤中の不溶分(ゲル分率)
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン又はTEPIC−Sを使用しない以外は比較例と同様にして粘着シートを作製した。得られた粘着シートの粘着剤のゲル分率の評価を、架橋後の粘着剤中の不溶分の測定に即して行ったところ、ゲル分率は50%であった。このゲル分率を比較例のゲル分率とした。
ゾル分分子量測定
ゲル分率測定で得られた抽出液(可溶分)を乾燥し、濃度1.0g/Lのテトラヒドロフラン溶液とした。この溶液を孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した後、濾液100μlをゲル浸透クロマトグラフィー(分析装置:TOSOH HLC−8120GPC(東ソー社製)、カラム:TSKgel GMH−H(s)2本、流速0.5ml/分、カラム温度40℃、検出器RI)に供し、保持時間を測定した。分子量をポリスチレン換算により算出し、重量平均分子量が10000以上のポリマーについて分子量及び分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を評価した。
接着力試験
幅12mm、長さ50mmに切断したサンプルを重さ2kgのローラーを一往復させてベークライト板に圧着し、30分経過後、剥離角度180°、速度300mm/分にて引き剥がし、その際の剥離力を測定した。
固定性試験(常態)
内径3mm、外径5mm、長さ70mmの塩化ビニル製のチューブを直径20mmの円弧を描くように曲げた状態のものを、幅12mm、長さ55mmに切断したサンプルにて被験者の腕に固定し、6時間経過後の接着状態を目視によって判定した。判定は剥れが全くないか、円弧の中心部分に相当するサンプルに剥れが見られるもののチューブがテープ状のサンプルの両端からはみ出すことなく留まり固定されているものを○とし、それ以外を×とした。
固定性試験(耐汗)
固定性試験(常態)と同様の条件にて各サンプルを被験者の腕に固定した上で、被験者を45℃/95%R.H.下に1時間おいた後の接着状態を目視によって判定した。判定は剥れが全くないか、円弧の中心部分に相当するサンプルに剥れが見られるもののチューブがテープ状のサンプルの両端からはみ出すことなく留まり固定されているものを○とし、それ以外を×とした。
皮膚刺激性
被験者の背中に6時間貼付したサンプルを引き剥がす際の痛さにより判定した。剥がす際に全く痛くないと感じるか、僅かに痛みを感じるが苦痛に感じない程度のものを○とし、痛さが苦痛に感じたものを×とした。
Claims (6)
- (メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物に、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なシラン系単量体を共重合させて得られる水分散型共重合体と、該水分散型共重合体と相溶する有機液状成分とを含み、
該有機液状成分が、炭素数が8〜18の一塩基酸又は多塩基酸と、炭素数が14〜18の分岐アルコールとのエステル、又は、炭素数が14〜18の不飽和脂肪酸又は分岐酸と、4価以下のアルコールとのエステルであり、
該水分散型共重合体の架橋後のゲル分率が40〜80重量%、架橋後のゾル分の重量平均分子量が300000以上である、医療用粘着剤。 - 前記有機液状成分の含有量が、水分散型共重合体100重量部に対して、10〜100重量部である、請求項1に記載の医療用粘着剤。
- 前記水分散型共重合体の架橋前のゲル分率が30重量%以下である、請求項1に記載の医療用粘着剤。
- 前記水分散型共重合体の架橋後のゾル分の重量平均分子量/数平均分子量が3〜7である、請求項1に記載の医療用粘着剤。
- (メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なカルボキシル基含有単量体0.1〜10重量部を含み、水分散型共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物100重量部に対して、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なシラン系単量体0.005〜2重量部を共重合させて得られたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用粘着剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用粘着剤を支持体の少なくとも片面に設けてなる医療用粘着テープ又はシート。
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