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JP4862820B2 - 音響信号増幅装置 - Google Patents

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Description

この発明は、音響信号を増幅する音響信号増幅装置に関し、詳しくは、その出力信号のクリップを防止する技術に関する。
オーディオ用パワーアンプは、外部の音響信号供給源(ソース)から入力された音響信号を、電源が供給する電力を用いて増幅し、スピーカを駆動する装置である。アンプに対して電源電圧を超える出力に相当する音響信号が入力された場合、アンプからスピーカへ出力される音響信号の信号レベルは電源電圧に制限されるため、該出力される音響信号の波形の上下ピークがつぶれた形になり、クリップ(歪み)が生じる。出力される音響信号にクリップが生じると、スピーカから出力される音響信号の音質が劣化するという問題があった。
上記クリップを防止するための技術として、電力増幅器にクリップ防止回路を備えることが従来から知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。特許文献1の記載によれば、電力増幅器において、音響信号の信号レベルと所定のクリップ検出電圧を比較するクリップ検出用コンパレータを具備し、該クリップ検出用コンパレータでの比較の結果、該音響信号の信号レベルが該クリップ検出電圧より大きくなった場合に、入力される音響信号の減衰量を大きくする(レベルを下げる)制御が行なわれ、出力信号のクリップが防止されていた。なお、クリップ検出電圧は、増幅器の電源電圧から増幅器の出力段における電圧降下量(トランジスタの電圧降下量)に対応する電圧を差し引いた値であって、これは増幅器のダイナミックレンジの上限に相当するものである。
特開平08−195634号公報
ところで、増幅器に接続される負荷のインピーダンスを変更しつつ、出力段から出力される信号のクリップの様子を観測すると、電源電圧とクリップ検出電圧の差(つまり電圧降下量)は、一定ではなく、負荷のインピーダンスに応じて変化することがわかる。しかし、上記のような従来のクリップ防止技術では、クリップ検出電圧が固定的に設定される構成であったため、負荷のインピーダンスの変動にクリップ検出電圧を対応させることができないという不都合があった。このため、低いインピーダンスの負荷が接続される可能性があれば、安全をみてクリップ検出電圧が低めに設定されるようクリップ防止回路を設計せざるを得なかった。その場合、結果的に増幅器のダイナミックレンジが狭くなってしまう。
この発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、クリップ検出の基準となるレベルを、負荷のインピーダンスに対応させることができるクリップ防止機構を備えた音響信号増幅装置を提供することを目的とする。
この発明に係る音響信号増幅装置は、音響信号を入力する入力部と、前記入力部から入力された音響信号のレベルを、制御信号に応じて制御するレベル制御部と、前記レベル制御部でレベル制御された音響信号の電力を増幅して出力段から出力する電力増幅部と、前記電力増幅部の出力段に供給される電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電力増幅部の出力段から出力される出力電流を検出する電流検出部と、前記電圧検出部により検出された電源電圧と前記電流検出部により検出された出力電流とに基づきクリップ検出基準レベルを決定する決定部と、前記入力部の入力から前記電力増幅部の出力までの何れかのステージにおける前記音響信号を入力し、該入力された何れかのステージにおける音響信号に基づき前記電力増幅部の出力段における音響信号の信号レベルを推定するレベル推定部と、前記レベル推定部により推定された信号レベルと前記決定部により決定されたクリップ検出基準レベルとの比較に基づいて前記出力段で発生する可能性のある音響信号に対するクリップを検出し、該検出結果に基づきクリップ検出信号を出力するクリップ検出部と、前記クリップ検出部から出力されたクリップ検出信号に基づき前記出力段のクリップを防止するための前記制御信号を発生する制御信号発生部とを備え、前記レベル制御部は前記制御信号発生部により発生した制御信号に応じて入力された音響信号のレベルを制御することを特徴とする。
電圧検出部により電力増幅部の出力段に供給される電源電圧が検出され、また、電流検出部により電力増幅部の出力段から出力される出力電流が検出され、決定部により該検出された電源電圧と出力電流に基づいてクリップ検出基準レベルを決定することで、電源電圧又は出力電流の少なくともいずれか一方の変動に応じて動的にクリップ検出基準レベルの値が変化する。そして、レベル推定部により推定された音響信号の信号レベルが前記決定部により決定されたクリップ検出基準レベルよりも大きいときに、クリップ検出信号がクリップ検出部から出力され、該出力されたクリップ検出信号に基づき、電力増幅部出力段のクリップを防止するための制御信号が制御信号発生部から発生する。これにより、レベル制御部は、該発生された制御信号に基づき音響信号のレベルを減衰する制御を行うことができる。
この発明に係る音響信号増幅装置によれば、電力増幅部の出力段の電源電圧と該電力増幅部の出力段の出力電流とに基づいてクリップ検出基準レベルを決定するよう構成されているので、電源電圧の変化に応じたクリップ検出基準レベルの変化だけでなく、電力増幅部に接続される負荷のインピーダンスの変化に応じたクリップ基準レベルの変化もシミュレートでき、該負荷のインピーダンスの変化に動的に対応した精密なクリップ予測、及び、それに応じたクリップ防止のための音響信号のレベル制御を行うことができるようになるとういう優れた効果を奏する。
以下、この発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係る音響信号増幅装置を適用したパワーアンプのハードウェア構成例を示すブロック図である。パワーアンプ1には、音響信号の供給源(ソース)2とスピーカ3が外部接続されている。パワーアンプ1は、ソース2から入力された音響信号を増幅して、該増幅した音響信号によりスピーカ3を駆動する装置である。この実施例では、パワーアンプ1として、例えばホールや劇場などで利用される大規模なPA(Public Address)システムに組み込まれるパワーアンプが想定されている。ソース2は、例えばオーディオミキサなど、パワーアンプ1に供給すべき音響信号を出力する装置である。
パワーアンプ1は、CPU10、フラッシュメモリ11及びRAM12からなるマイクロコンピュータと、AD変換器とディジタル入力器を含む波形入力部13と、DSPで構成される信号処理部14と、DA変換器及びAD変換器を含むDA・AD変換部(D/A・A/D部)15と、アナログ回路で構成された電力増幅部16と、表示器17と、操作子18と、その他I/O19とから構成されており、各部がバス10bを介して接続される。パワーアンプ1においてCPU10は、フラッシュメモリ11又はRAM12に記憶された制御プログラムを実行し、当該パワーアンプ1の各部の動作を制御する。
ソース2から入力された音響信号は、波形入力部13を介して信号処理部14へ供給される。ソース2から入力された音響信号がアナログ波形であれば、該アナログ波形はAD変換器を介してディジタル波形データに変換され、該変換されたディジタル波形データが信号処理部14へ供給される。また、ソース2から入力された音響信号がディジタル波形データであれば、該ソース2から入力されたディジタル波形データがディジタル入力器を介して信号処理部14へ供給される。この波形入力部13が本発明にかかる音響信号を入力する入力部に相当する。
信号処理部14は、CPU10から与えられる命令に基づき、波形入力部13から供給されたディジタル波形データに対する信号処理を行う。信号処理部14において行なわれる信号処理は、大別して、クロスオーバー処理、ディレイ処理、イコライザ処理などの波形データの特性調整と、パワーアンプ1自身(電力増幅部16)乃至スピーカ3の保護機能との2つの処理であって、詳しくは図3を参照して説明する。信号処理部14で信号処理された波形データは、DA・AD変換部15に入力される。
信号処理部14から出力された波形データ(ディジタル音響信号)は、DA・AD変換部15においてアナログ波形に変換され、該アナログ波形に変換された音響信号が電力増幅部16へ出力される。電力増幅部16では、アナログ波形の電圧および電流の増幅が行なわれ、該増幅されたアナログ波形がスピーカ端子から外部接続されたスピーカ3へ出力される。
なお、その他I/O19は、例えばイーサネット(登録商標)など、従来から知られる適宜の通信インターフェースで構成されてよい。パワーアンプ1は、その他I/O19を介して外部装置と接続可能であり、例えば外部該接続されたパーソナルコンピュータにおいて当該パワーアンプ1をリモート制御するためのソフトウェアプログラムを実行することで、該パーソナルコンピュータからパワーアンプ1をリモート制御することができてよい。
図2は、図1に示す電力増幅部16の構成例を示すブロック図である。電力増幅部16は、前段増幅部20と、相補対称な2つの出力トランジスタQ1,Q2が負荷(スピーカ3)に対して並列に接続されたプッシュプル回路で構成された出力段とを含むアナログ回路で構成されており、正側の回路は電源21a(電源電圧+B)により駆動され、負側の回路は電源22a(電源電圧−B)により駆動される。
電力増幅部16の出力段において、第1の出力トランジスタQ1は、npn形トランジスタであって、コレクタに正側の電源21aが接続され、エミッタに第1のエミッタ抵抗Re1が接続される。また、第2の出力トランジスタQ2は、pnp形トランジスタであって、コレクタに負側の電源21bに接続され、エミッタに第2のエミッタ抵抗Re2が接続される。そして、第1の出力トランジスタQ1のエミッタに接続された第1のエミッタ抵抗Re1と、第2の出力トランジスタQ2のエミッタに接続された第2のエミッタ抵抗Re2の接続点23はスピーカ端子24に接続される。スピーカ端子24のマイナス側は接地されている。なお、符合29で示す点線部分はヒートシンクである。
また、この実施例において電力増幅部16では、電源部に追従型電源回路22a,22bを採用している。追従型電源回路22a,22bは、入力された音響信号のレベルを動的に判別し、出力トランジスタに対して必要となる最小限の電力を提供する制御を行うものである。正側の電源21aに接続された正側の追従型電源回路22aは正側の出力トランジスタQ1へ電力を供給し、また、負側の電源21bに接続された負側の追従型電源回路22bは負側の出力トランジスタQ2へ電力を供給する。追従型電源回路22a,22bにより、電源21a,21bから出力トランジスタに対して供給される電力を、電力増幅部16に入力された音響信号のレベルに追従して適切に制御して、効率的で高精度の電力増幅を実現することができる。なお、この追従型電源回路22a,22bでは、入力された音響信号が大きく、出力トランジスタにクリップが生じているときに、正側及び負側の出力トランジスタに供給される電圧は、電源21a,21bから供給される電圧+B,電圧−Bとほぼ等しくなる。そのため、本実施態様では、クリップ検出基準レベルとして、追従型電源回路22a,22bを備えていないパワーアンプの場合と同様の算出方法で、電源21a,21bの電圧に基づいて算出したクリップ検出基準レベルを用いている。なお、追従型電源回路の詳細は、本出願人が開発したアンプドライブ技術「EEEngine」の説明(http://proaudio.yamaha.co.jp/topics/leading_technology/archives/learn_more_about_eeengine.html)等の記載を参照されたい。
信号処理部14から出力された波形データ(ディジタル音響信号)は、DA・AD変換部15のDA変換器30を介してアナログ波形(アナログ音響信号)に変換され、前段増幅部20に入力され、前段増幅部20では、前記入力されたアナログ波形の電圧が、出力段で必要な電圧を得るべく増幅される。前段増幅部20から出力される信号の正側の半波は、正電源21aと第1のトランジスタQ1の回路に入る。第1のトランジスタQ1では、追従型電源ユニット22aを介して供給される正側の電源電圧+Bにより、前段増幅部20から出力された正側の半波信号の電流を増幅して、スピーカ端子24へ出力する。また、前段増幅部20から出力される信号の負側の半波は、負電源21bと第2のトランジスタQ2の回路に入る。第2のトランジスタQ2では、追従型電源ユニット22bを介して供給される負の電源電圧−Bにより、該前段増幅部20から出力された負側の半波信号の電流を増幅してスピーカ端子24へ出力する。すなわち、2つの出力トランジスタQ1,Q2が、入力波形の半サイクルごとを分担して入力波形の増幅を行い、最終段のスピーカ3を駆動する。
電力増幅部16には、電源電圧検出部25、電流検出部26、出力電圧検出部27及び温度検出部28が具備されており、各部で検出したアナログ信号は、DA・AD変換部15を介してディジタルデータに変換されて信号処理部14に提供され、該信号処理部14のディジタル演算によって実現されるパワーアンプ1自身(電力増幅部16)乃至スピーカ3の保護機能に利用される。前記図1において、電力増幅部16から出力され、DA・AD変換部15を介して信号処理部14へ入力される音響信号とは逆向きの情報の流れを示す矢印は、保護機能のためのデータ通信を表している。
図2において、電源電圧検出部25は電力増幅部16の電源電圧を検出する。検出された電源電圧に応じたアナログ信号は、AD変換器31を介してディジタル信号に変換され、信号処理部14へ供給される。図2の例では、電源電圧検出部25は負側の電源21bの電源電圧−Bのみを検出する構成例が示されており、検出された電源電圧の絶対値が信号処理部14へ供給されるものとする。なお、電源電圧検出部25は負側の電源電圧のみを検出する構成に限らず、正側の電源21aで電源電圧+Bを検出するように構成してもよいし、正側と負側の両側で電源電圧を検出し、該検出された正負両側の電源電圧のうちの絶対値の低い方を検出値として採用する構成であってもよい。この電源電圧検出部25が本発明にかかる電力増幅部の出力段に供給される電源電圧を検出する電圧検出部に相当する。
電流検出部26は電力増幅部16の出力段から出力電流を検出する。検出された出力電流に応じたアナログ信号は、AD変換器32を介してディジタル信号に変換され、該ディジタル信号に変換された出力電流のデータが信号処理部14へ供給される図2の例では、電流検出部22は、エミッタ抵抗Re1の両端の電圧として検出される正側の出力電流と、エミッタ抵抗Re2の両端の電圧として検出される負側の出力電流とをそれそれ検出する構成例が示されている。従って、ここで検出される出力電流は、正から負の値の範囲で変化する。なお、出力電流の検出方法は、これに限らず、スピーカ3への出力ラインにホール素子等の検出手段を設けて、スピーカ3へ出力される交流信号から出力電流を検出するよう構成してもよい。この電流検出部26が本発明にかかる電力増幅部の出力段から出力される出力電流を検出する電流検出部に相当する。
また、出力電圧検出部27は電力増幅部16の出力段からスピーカ端子24に出力されるスピーカ駆動信号の電圧を検出する。該検出された出力電圧に応じたアナログ信号は、AD変換器33を介してディジタル信号に変換され、信号処理部14へ供給される。温度検出部28は、第1の出力トランジスタQ1及び第2の出力トランジスタQ2のヒートシンク29の温度を検出する。該検出した温度に応じたアナログ信号は、AD変換器34を介してディジタル信号に変換され、信号処理部14へ供給される。
なお、DA・AD変換部15において、信号処理部14から電力増幅部16へ供給するオーディオ信号をDA変換するDA変換器30、電源電圧検出部25で検出した電源電圧の絶対値を示す電圧(電源電圧信号)をAD変換するAD変換器31、電流検出部26で検出した出力電流を示す電圧(出力電流信号)をAD変換するAD変換器32、出力電圧検出部27で検出した出力電圧をAD変換するAD変換器33、および、温度検出部28で検出した温度を示す電圧(温度信号)をAD変換するAD変換器34は、それぞれ、信号処理部14における信号処理のサンプリング周波数(例えば96kHzなど)と同じサンプリング周波数で動作する。なお、AD変換器34については、温度変化は穏やかなので、より低いサンプリング周波数(例えば1kHz〜10kHz程度)で動作するものに置き換えてもよい。また、AD変換器31〜33は、それぞれ、入力する電圧のピーク(電源電圧は電圧差の最小値、出力電流と出力電圧はそれぞれ最大値)に追従するアナログのエンベロープフォロワを用意すれば、より低いサンプリング周波数とすることができる。
また、図2において、スピーカ端子24のブロックについてのみ接地を図示し、これ以外の各ブロックについては、図の簡略化のため、その図示を省略しているが、実際には、各ブロックもそれぞれ接地されている。また、電力増幅部16には、スピーカ3への出力ライン24から前段増幅部20の入力へ出力電圧を負帰還するためのフィードバックループが設けられているが、その図示も、図の簡略化のため省略した。
図3は、信号処理部14の実行する信号処理アルゴリズムを説明するためのブロック図である。信号処理部14の動作は、以下に述べる各モジュールの機能を実現するためのマイクロプログラムにより実行される。すなわち、CPU10は、以下に述べる各モジュールの機能を実現するためのマイクロプログラムを信号処理部14に設定する。
図3において、クロスオーバー40、ディレイ41、イコライザ(EQ)42、リミッタ43は、特性調整部を構成するモジュール群であって、図3においては特性調整部を点線で囲む。ユーザは、特性調整部を構成する各モジュールのパラメータの値を任意に設定し、信号処理部14に入力された音響信号の特性を任意に調整することができる。なお、図3においては、特性調整部の各モジュール40〜43の名称に下線を付与することで、そのパラメータの値をユーザが任意に設定できることを表現し、後述の保護機能に関するモジュール群(パラメータの値をユーザが設定しないもの)との区別を付けた。ただし、名称に下線のないモジュールのうちレベル制御部44については、ユーザがパワーアンプ1の音量調整ツマミを操作することにより、その通常音量レベル(減衰率)が制御される。
この実施例においてパワーアンプ1は、例えばホールや劇場などで利用される大規模なPA(Public Address)システムに組み込まれるものを想定している。その種のPAシステムにおいては、複数のスピーカユニット(パワーアンプ1とスピーカ3)が用意され、複数のスピーカユニットのそれぞれが受け持つ周波数帯域が、例えば高音域用、中音域用及び低音域用という具合に異なっている。よって、パワーアンプ1では自機が接続されるスピーカユニットの受け持つ周波数帯域に応じた音響信号の特性調整を行う。クロスオーバー40は当該パワーアンプ1が受け持つ周波数帯域の成分を音響信号から取り出す処理を行う。ディレイ41は、当該パワーアンプ1から出力される音響信号と、PAシステムを構成する他のスピーカユニットから出力される音響信号との位相を合わせる等のための遅延処理を行う。また、EQ42は、PAシステムが設置された会場の周波数特性をフラット化する等のため、音響信号の周波数特性を調整する。リミッタ43は、設定されたスレッショルドの値により音量を制限して、音響信号のレベルを整える。
前記特性調整部の各モジュール40〜43により特性調整された波形データは、レベル制御部44とクリップ検出部45に入力される。レベル制御部44は、入力された波形データのレベルを制御するモジュールであって、通常は、音量調整ツマミで設定された通常音量レベル(通常の減衰率)で制御を行うが、後述するクリップ検出部45、過電力検出部46、DC検出部47又は温度判定部48のいずれかが異常を検出して制御信号を出力したときには、その出力された制御信号に応じて、通常音量レベルよりも低い音量レベル(高い減衰率)で制御する。このレベル制御部44は、本発明にかかる「入力部から入力された音響信号のレベルを制御信号に応じて制御するレベル制御部」に相当する。すなわち、レベル制御部44、クリップ検出部45、過電力検出部46、DC検出部47及び温度判定部48が、パワーアンプ1(電力増幅部16)自身乃至スピーカ3の保護機能を実現するためのモジュールである。
クリップ検出部45は、電源電圧検出部25で検出された電源電圧と、電流検出部26で検出された出力電流に基づいてクリップ検出基準レベルを決定し、該決定したクリップ検出基準レベルと当該信号処理部14に入力された波形データの信号レベルを比較することで、電力増幅部16の出力段における「クリップ」の可能性を検出して、クリップの可能性が検出された場合にレベル制御部44に対する制御信号を発生するものである。なお、「クリップ」は、電源電圧を超える出力に相当する入力信号が入力された場合に、該出力信号の波形の上下ピークがつぶれた形になり、クリップ(歪み)が生じて、出力信号の音質が劣化することである。
図4は、クリップ検出部45が実行するクリップ検出処理のアルゴリズムの一例を示すブロック図である。クリップ検出部45において、変換テーブル部50、減算部51及び第2のアタックリリース部(AR2)52により、電源電圧検出部25で検出された電源電圧と電流検出部26で検出された出力電流に基づくクリップ検出基準レベルが決定される。つまり、変換テーブル部50、減算部51及び第2のアタックリリース部52が、本発明にかかる「電源電圧と出力電流とに基づきクリップ検出基準レベルを決定する決定部」に相当する。
電流検出部26で検出された出力電流(AD変換されたディジタル信号)は、クリップ検出部45に入力され、全波整流部53を介して全波整流され、変換テーブル部50に入力される。この実施例では、電流検出部26(図2参照)は、後述するDC検出のために、出力電流を正の値と負の値とで検出しているので、変換テーブル部50への入力の前段に全波整流部53を挿入して、出力電流を絶対値に変換している。なお、電流検出部26を、出力電流が絶対値で検出されるように構成した場合は、全波整流部53は不要である。
変換テーブル部50は、出力電流を電圧値VCEに変換するデータテーブルで構成されている。この変換テーブルは、出力電流に応じた電圧値VCEの変化を計測した実測結果に基づいて、予め作成されたものである。図5は変換テーブル作成のための測定システムの構成例であって、テスト信号発生部60から供給されるテスト信号(波形)を、前段増幅部と2個の相補対称な出力トランジスタQ1,Q2からなるプッシュプル回路で構成された出力段とを含む電力増幅部61で増幅し、そのときの電源電圧と電力増幅部61の出力段に接続されたダミー負荷62に現れる出力電圧Vとを、例えばオシロスコープ等の測定装置63で測定するものである。なお、電力増幅部61の出力段を構成する出力トランジスタQ1,Q2は、図2に示す電力増幅部16の出力段を構成する出力トランジスタQ1,Q2と特性が同じものとする。
テスト信号発生部60は、出力するテスト信号のレベルを電力増幅部61の出力電圧Vがクリップするレベルまで徐々に上げる。そして、計測装置63は、該クリップ発生時の正側の電源電圧+Bと、負側の電源電圧−Bと、ダミー負荷62の出力電圧の最大値Vmaxを計測する。クリップが発生していなとき(つまり電源電圧よりも出力電圧Vのレベルが小さいとき)の、電源電圧+B,−Bと、ダミー負荷62の出力電圧Vの波形の様子は、図6(a)に示すようである。これがクリップ発生時には、図6(b)に示すように、出力電圧の波形のピークが電源電圧により制限されて、出力電圧Vの波形がクリップする。この時のクリップが発生しているタイミングの電圧、つまり、出力電圧の最大値Vmaxは、現在のダミー負荷62の抵抗値でクリップを発生することなく出力できる電圧値の限界(最大出力電圧)に相当する。このクリップタイミングの出力電圧Vmaxと、正側の電源電圧+Bと該Vmaxの差である電圧値VCEを、現在のダミー負荷62の抵抗値と共に記録する。後述する通り電圧値VCEは電力増幅部16の出力段における最小電圧降下量であるから、電源電圧とVmaxの差を求めることで、電源電圧及びVmaxに応じた電圧値VCEを得ることができる。なお、ここでは正側のクリップタイミングのVmaxとVCEを記録していたが、負側のクリップタイミングのVminとVCEを記録するようにしてもよい。出力トランジスタの種類にもよるが、検出されるVCEは正側と負側でほぼ同じであることが多く、その場合、正側又は負側のどちらか一方を記録したVCEの値を逆側に使用することもできる。
上記クリップ時の出力電圧Vmaxと電圧値VCEの記録を、ダミー負荷62の抵抗値を順次変更しながら繰り返すことで、複数の抵抗値についてVmaxと電圧値VCEを記録することができる。測定を行う抵抗値の大きさは、例えば、1Ω、2Ω、4Ω、8Ω、16Ω・・・など、順次増加する適宜の値を採用してよい。なお、実際の計測結果によれば、Vmaxと電圧値VCEの各値は、負荷の抵抗値毎に、正側及び負側ともほぼ一定となる。
そして、ダミー負荷62の複数の抵抗値毎の出力電圧Vmaxに基づいて、次式(1)より、ダミー負荷62を流れる出力電流Iを該複数の抵抗値毎に求める。
出力電流I=Vmax/抵抗値Ω・・・(1)
上記式(1)により求めた抵抗値毎の出力電流Iと、抵抗値毎に測定した電圧値VCEにより、出力電流Iに応じた電圧値VCEの変化をプロットし、データ間を適宜線形補間することで、図7に示すような出力電流Iに応じた電圧値VCEを出力する「変換テーブル」を作成することができる。
変換テーブル部50の出力である電圧値VCEは、クリップ発生タイミングの出力電流に対応する電力増幅部61の出力トランジスタQ1又はQ2のコレクタ‐エミッタ間電圧降下を示しており、この明細書では、これを「最小電圧降下量」と呼ぶ。従って、電流検出部26で検出された出力電流を変換テーブル部50に入力することで、該検出された出力電流に応じた電力増幅部16の出力トランジスタQ1又はQ2における最小電圧降下量(コレクタ‐エミッタ間電圧降下)の推定値VCEを得ることができる。
図4に戻ると、クリップ検出部45には、また、電源電圧検出部25で検出された電源電圧(AD変換されたディジタル信号)が入力されており、該電源電圧は減算部51の一方の入力端子(+)に入力される。減算部51のもう一方の入力端子(−)には、前記変換テーブル部50から出力されたVCEが入力される。そして、減算部51は、該入力された電源電圧からVCEを減算し、その結果を第2のアタックリリース部52へ出力する。述べた通りVCEは、電力増幅部16の出力トランジスタQ1又はQ2における最小電圧降下量の推定値である。したがって、減算部51において、電源電圧検出部25で検出された電源電圧と、電流検出部26で検出された出力電流に応じたVCEの差を計算することで、電力増幅部16の出力段で音響信号に対するクリップが発生しない範囲での最大出力電圧に相当する値を算出することができる。
第2のアタックリリース部52は、前記減算部51から出力された信号の音量エンベロープを検出するエンベロープフォロワである。これにより、該減算部51から出力された信号、つまり電力増幅部16の出力段で発生させることができる最大出力電圧の信号レベルを検出することができる。ここで検出した信号レベルが除算器57に入力され、クリップ検出の判断基準となるクリップ検出基準レベルとして利用される。
第2のアタックリリース部52の構成例を図8に示す。第2のアタックリリース部52は、遅延器70を介して処理結果の出力信号を1サンプルタイム遅延するネガティブフィードバックループを備えた1次のIIR型フィルタであって、一方の端子(+)に今回の入力信号が入力され、もう一方の端子(−)に、出力側の信号(前回の入力信号)が逆相入力される減算器71と、減算器71の出力の値の正負に応じて出力先を切り替えるセレクタ72と、セレクタ72の正側の出力信号に対して係数K1を乗算する乗算器73と、該セレクタ72の負側の出力信号に対して係数K2を乗算する乗算器74と、乗算器73乃至74の出力信号と遅延器70の出力(1サンプル前の入力信号に対するフィルタ出力信号)を加算する加算器75とから構成され、加算器65の出力がエンベロープ検出信号として出力される。
減算器71は、現サンプルの入力信号から前サンプルの入力信号に対するフィルタ出力信号を減算する。セレクタ72は、減算器71の減算結果が正の値の場合は入力された信号を正側の乗算器73へ出力し、また、減算器71の減算結果が負の値の場合は入力された信号を負側の乗算器74へ出力する。一般に、信号の立ち上がり(アタック)部分においては、現サンプルの入力信号の方が値が大きいので、減算器71の減算結果は正の値になる。また、信号の立ち下がり(リリース)部分においては、現サンプルの入力信号の方が値が小さいので、減算器71の減算結果は負の値になる。正側の乗算器73の係数K1と、負側の乗算器74の係数K2は、0以上1以下の値の範囲で、それぞれ独立に設定することができるので、係数K1,K2の値に応じて入力信号の立ち上がり(アタック)部分と立ち下がり(リリース)部分に対する追従性をそれぞれ設定できる。
図4の第2のアタックリリース部52においては、出力トランジスタにかかる最低電圧にエンベロープを追従させるために、負側の係数K2に1に近い値を設定して立ち下りの時定数を短くし、正側の係数K1に0に近い値を設定して立ち上がりの時定数を長くする(すなわち、1>K2>K1>0)。これにより、減算部51から出力された信号が降下する部分に対して追従性が高いエンベロープ抽出を行うことができる。かくして、第2のアタックリリース部52からは、電源電圧検出部25で検出された電源電圧と電流検出部26で検出された出力電流に基づく「クリップ検出基準レベル」が出力される。
一方、信号処理部14の特性調整部から出力され、クリップ検出部45に入力された波形データ(ディジタル音響信号)は、全波整流部54を介して全波整流されて、第1のアタックリリース部(AR1)55に入力される。第1のアタックリリース部55は、該入力された音響信号の音量エンベロープを検出するエンベロープフォロワである。これにより、該入力された音響信号の信号レベルを検出する。第1のアタックリリース部55は、図8のIIR型フィルタと同様に構成されるものであるが、第1のアタックリリース部55では、入力された音響信号の絶対値の立ち上がりにエンベロープを追従させるために、正側の係数K1に1に近い値を設定して立ち上がりの時定数を短くし、負側の係数K2に0に近い値を設定して立ち下がりの時定数を長くする(すなわち、1>K1>K2>0)。
レベル調整部56では、第1のアタックリリース部55で検出された音響信号の信号レベルを補正することで、電力増幅部16の出力段における音響信号の信号レベルの推定値に変換する。具体的には、クリップ検出部45に入力される波形データ(音響信号)の取り出し位置における基準レベルと電力増幅部16のスピーカ出力24における基準レベルの差(音響信号の経路のトータルゲイン)を係数(乗数)として用いて該音響信号の信号レベルを補正(乗算)する。
この実施例では、クリップ検出部45に入力される音響信号の取り出し位置は信号処理部14の特性調整部の出力(レベル制御部44の入力)である(図3参照)。音響信号が、その取り出し位置からスピーカ出力端子24に到達するまでには、レベル制御部44、D/A変換器30、および電力増幅部16を通過するので、そのレベル差は、レベル制御部44の減衰量、D/A変換器30のゲイン、および電力増幅部16のゲインをトータルしたトータルゲインとなる。ここで、トータルゲインは、これら3つのゲインがリニア値として与えられた場合は、当該3つのゲインの積(リニア値)として計算され、デシベル値として与えられた場合は、当該3つのゲインの和(デシベル値)として計算される。そして、レベル調整部56では、第1のアタックリリース部55で検出された音響信号の信号レベルに、トータルゲインに相当する乗数(リニア値)を乗算すればよい。なお、クリップ検出部45に入力される音響信号の取り出し位置は、レベル制御部44の入力に限らない。例えば、該取り出し位置が、レベル制御部44の出力側であれば、乗数は、D/A変換器30と電力増幅部16のトータルゲインに相当する値となる。
上記の全波整流部54、第1のアタックリリース部55及びレベル調整部56が、前記入力部の入力から前記電力増幅部の出力までの何れかのステージにおける前記音響信号を入力し、該入力された何れかのステージにおける音響信号に基づき前記電力増幅部の出力段における音響信号の信号レベルを推定するレベル推定部に相当する構成である。
除算部57では、一方の入力端子(分母側「D」)に前記第2のアタックリリース部52から出力されるクリップ検出基準レベルが入力され、もう一方の入力端子(分子側「N」)に前記レベル調整部56から出力される音響信号の信号レベルが入力され、音響信号の信号レベルをクリップ検出基準レベルで除算する。これにより、クリップ検出基準レベルに対する音響信号の信号レベルの比率を求める。除算部57の商(クリップ検出基準レベルに対する音響信号の信号レベルの比率)はクリップ検出信号として制御信号発生部57に入力される。音響信号の信号レベルがクリップ検出基準レベルより大きい場合には、クリップ検出信号は「1」より大きい値であり、音響信号の信号レベルがクリップ検出基準レベル以下であれば、クリップ検出信号は「1」以下の値である。この除算部57が本発明にかかる「音響信号の信号レベルとクリップ検出基準レベルとの比較に基づいて出力段で発生する可能性のある音響信号に対するクリップを検出し、該検出結果に基づきクリップ検出信号を出力するクリップ検出部」に相当する。
制御信号発生部58は、除算部57から出力されたクリップ検出信号に基づいてクリップの発生を判断し、該判断に応じて前記レベル制御部44に対する制御信号を発生する。クリップ検出信号の値が「1」より大きい場合(つまり音響信号の信号レベルがクリップ検出基準レベルよりも大きい場合)には、音響信号に対してクリップが発生する可能性があるものと判断し、レベル制御部44に対して、レベルを減衰させるよう制御する制御信号を発生する。また、クリップ検出信号の値が「1」以下の場合(つまり音響信号の信号レベルがクリップ検出基準レベル以下の場合)には、音響信号に対してクリップが発生する可能性がないものと判断し、制御信号を発生しない。レベル制御部44は、入力信号のレベルを、通常は、音量調整つまみで設定された通常音量レベルで制御するが、制御信号発生部58が制御信号を発生した場合には、その制御信号が入力されている間、該レベルを所定の減少速度で急速に減少させ、制御信号発生部58が制御信号を発生しなくなると、該レベルを該減少速度よりも遅い所定の増加速度で前記通常音量レベルまで徐々に増加させる。なお、該レベルを減少させる減少速度を、除算部57の出力する商に応じて、商の値が大きいほど速い速度となるよう制御してもよい。
上記構成からなるクリップ検出部45によれば、変換テーブル部50において電力増幅部16の出力段で検出された出力電流に応じた電圧値VCEを求めて、減算部51において、電力増幅部16の電源電圧から電圧値VCEだけ低い値を算出することで、該検出された出力電流が上昇した場合、又は、該検出された電源電圧が降下した場合の少なくともいずれか一方の場合には、減算器51から出力される信号のレベルが降下する。そして、第2のアタックリリース部52においては、減算器51から出力される信号のレベルの下降に迅速に追従するクリップ検出基準レベルを出力する。つまり、除算部57の分母側端子に入力されるクリップ検出基準レベルが小さくなる。このように、電力増幅部16の出力段における電源電圧と出力電流とに応じてクリップ検出基準レベルを変化させているので、除算部57では、その電源電圧と出力電流に応じたクリップ検出レベルに基づいてスピーカ駆動信号のクリップ発生(ないしその可能性)をより正確に検出し、制御信号発生部58では該検出に基づいて制御信号を発生することができる。従って、レベル制御部44では、電源電圧又は出力電流の少なくともいずれか一方の変化、つまり、負荷(スピーカ3)のインピーダンスの変化に応じて動的にクリップ防止のためのレベル制御を行うことができる。
また、図3に示す信号処理部14において、過電力検出部46は、電力増幅部16の電流検出部26で検出された出力電流と出力電圧検出部27で検出された出力電圧とに基づき、負荷(スピーカ3)に流れる電力を見積もり、過電力検出時にはレベル制御部44に対する制御信号を発生して、音響信号のレベルを必要量減衰させる。また、DC検出部47は、電力増幅部16の電流検出部26で検出された出力電流と出力電圧検出部27で検出された出力電圧とに基づき直流成分の検出を行い、スピーカ3への出力に直流成分が検出された場合にはレベル制御部44に対する制御信号を発生して、音響信号のレベルを必要量減衰させる。なお、このDC検出部47における直流成分の検出のため、電流検出部26は、スピーカ3へ出力する出力電流の正側の値と負側の値とを検出している。また、温度判定部48は、電力増幅部16の温度検出部28で検出された温度の情報に基づきヒートシンク29の温度を判定し、温度が上がりすぎたときにレベル制御部44に対する制御信号を発生して、音響信号のレベルを必要量減衰させることで、温度上昇に対する保護を行う。また、CPU10は、定期的に、信号処理部14から温度検出部28が検出した温度を示すデータを読み取り、その温度に基づいてパワーアンプ1のヒートシンク29の近傍に取り付けられたファン(図示せず)の回転数を制御する。
以上説明した通り、信号処理部14のクリップ検出部45は、電力増幅部の出力段の出力電流に応じた電圧値VCEの変化を求め、該電圧値VCEと電力増幅部の出力段の電源電圧に基づいてクリップ検出基準レベルを決定するよう構成されているので、電源電圧が変化した場合だけでなく、出力電流が変化した場合、つまり、電力増幅部16に接続される負荷(スピーカ3)のインピーダンスが変化したときにも、クリップ検出基準レベルが動的に変化し、該インピーダンス変化に応じて変化するクリップ検出基準レベルに基づいてスピーカ駆動信号のクリップの発生(ないしその可能性)をより正確に検出することができる。よって、レベル制御部44は、該インピーダンス変化に動的に対応したクリップ防止のための音響信号のレベル制御を行うことができるとういう優れた効果を奏する。そのため従来技術のように、低インピーダンス負荷が接続された場合に備えてクリップ検出電圧(クリップ検出基準レベル)を低めに設定する、ということは必要ない。この実施例に係るパワーアンプ1においては、信号処理部14におけるディジタル演算によりパワーアンプ1(電力増幅部16)自身乃至スピーカ3の保護機能が実現しているので、クリップ検出部45によるクリップ検出の処理はDSPによるディジタル演算によって実現される。なお、クリップ検出部45の行っているクリップ検出の処理は、CPU10が、A/D変換器32の出力する出力電流のデータとA/D変換器31が出力する電源電圧のデータを受け取って、ディジタル演算を行うよう構成してもよいし、アナログ回路で構成されたクリップ検出回路を設けて、そのクリップ検出回路が、電源電圧検出部25が出力する電源電圧信号と電流検出部26が検出する出力電流信号とを受け取ってアナログ演算を行うよう構成してもよい。
なお、上記図4においては、変換テーブル部50がデータテーブルで構成される例を示したが、変換テーブル部50は、上記に限らず、例えば出力電流に応じた電圧値VCEを算出する演算式で構成されてもよい。この発明のポイントは出力電流に応じた電圧値VCEの変化を求め、該電圧値VCEに基づいてクリップ検出基準レベルを決定する点にあるので、このことを達成できさえすれば、変換テーブル部50の実現方法は問わない。
また、上記図4においてクリップ検出部45に対して入力される音響信号を、特性調整部の出力段から取り込む構成例を示したが、これに限らず、波形入力部13の入力段から電力増幅部16の出力段までの何れのステージから音響信号を取り込む構成であってもよい。レベル調整部56におけるレベル調整の内容は、当該音響信号を取り込むステージでの信号レベルを、電力増幅部16の出力段での信号レベルに変換するよう設定されればよい。
また、上記図4に示すクリップ検出部45の構成では、クリップ検出部45に入力された音響信号から検出された信号レベルをレベル調整部56により電力増幅部16の出力段での信号レベルに変換する構成例を示したが、これに限らず、第2のアタックリリース部52から出力されるクリップ検出基準レベルを補正して、クリップ検出部45に入力される音響信号に合わせるよう構成することができる。更に別の構成例としては、音響信号の信号レベル又はクリップ検出基準レベルの補正は行わずに、除算部57での除算結果を補正するよう構成することができる。また、更に別の構成例としては、音響信号の信号レベル又はクリップ検出基準レベルの補正は行わずに、制御信号発生部58において除算部57での比較結果に対するクリップ発生の判断基準をずらすよう構成することができる。つまり、音響信号の信号レベル又はクリップ検出基準レベルの補正、または、除算部57での除算結果の補正が行なわれている場合には、制御信号発生部58において除算部57の商が「1」以上のときにクリップ発生と判断するが、該補正が行われていないときには、クリップ発生の判断基準の閾値が「1」からずらして設定される。
また、制御信号発生部58においてクリップ発生の判断基準の閾値に、適宜のマージンが設けられていても良い。例えば、除算部57の商「1」からマージン分だけ小さい値に閾値をずらすことで、レベル制御部44においてレベルを抑制気味に制御することが可能である。
また、上記実施例は、除算部57において音響信号の信号レベルをクリップ検出基準レベルで割り算することで、音響信号の信号レベルとクリップ検出基準レベルを比較する構成例を示した。これは音響信号の信号レベルとクリップ検出基準レベルをリニアスケールで処理するからであった。別の例として、音響信号の信号レベルとクリップ検出基準レベルはデシベルスケールで処理することもでき、その場合には、音響信号の信号レベルとクリップ検出基準レベルの比較は減算によって行なわれる。つまり、除算部57は減算部に変更される。
また、上記実施例においては、パワーアンプ1(電力増幅部16)自身乃至スピーカ3の保護機能を信号処理部14におけるディジタル演算で行う構成例を示したが、この実施例に係るクリップ防止のためのレベル検出部45を含む保護機能はアナログ回路で構成及び実現してもよい。
この発明の一実施例に係る音響信号増幅装置を適用したパワーアンプのハードウェア構成例を示すブロック図。 図1に示すパワーアンプにおける電力増幅部の構成例を示すブロック図。 図1に示すパワーアンプにおける信号処理部が実行する信号処理のアルゴリズムの構成例を示すブロック図。 図3に示す信号処理部におけるクリップ検出部が実行する信号処理のアルゴリズムの構成例を示すブロック図。 図4に示す変換テーブル部を構成するデータテーブルを作成のための測定システムの構成例を示すブロック図。 図5の測定システムにおいて、測定される電源電圧とダミー負荷の出力電圧様子を示すグラフであって、(a)はクリップが発生していない状態、(b)はクリップ発生時の状態。 図4に示す変換テーブル部を構成するデータテーブルの一例を示す図。 図4に示すアタックリリース部の構成例を示すブロック図。
符号の説明
1 パワーアンプ、2 ソース、3 スピーカ、10 CPU、11 フラッシュメモリ、12 RAM、13 波形入力部、14 信号処理部、15 D/A・A/D変換部、16 電力増幅部、17 表示器、18 操作子、19 その他I/O、20 前段増幅部、Q1,Q2 出力トランジスタ、21a,21b 電源、22a,2 2b 追従電源回路、25 電源電圧検出部、26 電流検出部、27 電圧検出部、28 温度検出部、44 レベル制御部、45 クリップ検出部、46 過電力検出部、47 DC検出部、48 温度判定部、50 変換テーブル部、51 減算部、52 第2のアタックリリース部、53 全波整流部、54 全波整流部、55 第1のアタックリリース部、56 レベル調整部、57 除算部、58 制御信号発生部、60 テスト信号発生部、61 電力増幅部、62 ダミー負荷、63 計測装置、70 遅延器、71 減算器、72 セレクタ、73 正側の乗算器、74 負側の乗算器、75 加算器

Claims (3)

  1. 音響信号を入力する入力部と、
    前記入力部から入力された音響信号のレベルを、制御信号に応じて制御するレベル制御部と、
    前記レベル制御部でレベル制御された音響信号の電力を増幅して出力段から出力する電力増幅部と、
    前記電力増幅部の出力段に供給される電源電圧を検出する電圧検出部と、
    前記電力増幅部の出力段から出力される出力電流を検出する電流検出部と、
    前記電圧検出部により検出された電源電圧と前記電流検出部により検出された出力電流とに基づきクリップ検出基準レベルを決定する決定部と、
    前記入力部の入力から前記電力増幅部の出力までの何れかのステージにおける前記音響信号を入力し、該入力された何れかのステージにおける音響信号に基づき前記電力増幅部の出力段における音響信号の信号レベルを推定するレベル推定部と、
    前記レベル推定部により推定された信号レベルと前記決定部により決定されたクリップ検出基準レベルとの比較に基づいて前記出力段で発生する可能性がある音響信号に対するクリップを検出し、該検出結果に基づきクリップ検出信号を出力するクリップ検出部と、
    前記クリップ検出部から出力されたクリップ検出信号に基づき前記出力段のクリップを防止するための前記制御信号を発生する制御信号発生部と
    を備え、前記レベル制御部は前記制御信号発生部により発生した制御信号に応じて入力された音響信号のレベルを制御することを特徴とする音響信号増幅装置。
  2. 前記決定部は、前記電流検出部において検出した出力電流に基づき前記出力段の最小電圧降下量を決定する決定手段と、前記電圧検出部により検出された電源電圧から該決定した最小電圧降下量を減算する減算手段とを備え、該減算手段による減算結果に基づき前記クリップ検出基準レベルとして決定するものであることを特徴とする請求項1に記載の音響信号増幅装置。
  3. 前記レベル推定部は、入力された音響信号の信号レベルを検出する検出手段と、該検出手段により検出された信号レベルを、当該音響信号を入力したステージにおける基準レベルと前記電力増幅部の出力段における標準レベルの差に応じて補正する手段とを備え、該補正手段による補正により前記入力された音響信号の信号レベルを前記出力段における音響信号の信号レベルに変換するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の音響信号増幅装置。
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