JP4854333B2 - 高強度鋼板、未焼鈍高強度鋼板およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
ホットプレス法は、熱間でプレス加工をするのでスプリングバックの発生量は極めて少なく、形状凍結性が良い。そして、プレスの際の焼入れ効果で、非常に高い強度をもった部品を高精度で提供することができる。しかしながら、プレス加工前には鋼板を加熱することが必要であり、また、プレス後にはスケールを落とす作業が必要である。従って、作業効率が非常に悪い方法である。さらに、金型が加熱した鋼板と接するため金型の寿命が短いことも欠点であり、これが製造コストを増加させることにもなる。
ホットプレス後の鋼板は伸び値が小さく、部材が変形を受けた際に僅かな変形でも破断するので、衝撃吸収能力が小さいと評価されている。従って、ホットプレス部品を、自動車等の重要保安部品として使用することは非常に難しい。
複合組織鋼板については特許文献1、2にその例が示されている。このような鋼板においては、フェライト中に硬質なマルテンサイトを微細に分散させるが、この硬質なマルテンサイトにより、変形時に大きな加工硬化を引き起こし、高い延性を鋼板にもたらすのである。
TRIP鋼板については特許文献3、4にその例が示されている。残留オーステナイトを含有するこの種の鋼板は、その量と変形に対する安定度に応じて、変態誘起塑性に起因する極めて良好な延性と成形性を有するのである。
しかし焼鈍冷却工程において、オーステナイトの安定化のために、マルテンサイト変態を開始するMs点直上の400℃付近での低温保定が必要である。さらに、その低温保定の影響により複合組織鋼板に比べ、その炭素量と合金添加量の割には鋼板強度が低いという決定的な欠点がある。鋼板の良い伸び特性が得られ難い引張強度780MPa以上の強度領域でTRIP鋼板の適用が期待された。しかし、同強度レベルを確保しようとすると、必要な炭素量や合金添加量は多くなるので、良好なスポット接合性は確保されない。この理由によって、この鋼板はあまり普及していないのが現状である。
マルテンサイトが体積率で10%以上存在するため、合金添加量が少なくても高い強度を有している。また残留オーステナイトは炭素濃度が質量%で0.9%以上であるため、室温で準安定に存在することが可能で、変形による変態を誘発し得る。さらに体積率3%以上で、効果的に微細に分散しているため、良好な加工硬化が継続的に得られ、良い伸び特性も得られるのである。残留オーステナイトとマルテンサイトとがともにラス状または微小な粒状に存在しているので、この鋼板は延性および延びフランジ性にすぐれてもいる。残留オーステナイトが微細分散していることからは、遅れ破壊が発生しないという利点もある。
ここで言うラス状とはオーステナイトもしくはマルテンサイトの結晶粒の形状がアスペクト比で3以上のものを言い、3未満を粒状と称した。
さらにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%から選択された少なくとも1種を含有しても良い。なお、各場合で、残部はFe及び不可避的不純物とする。
こうした適切な種類と量の化学成分を含むこととすれば、上記の組織を有していて望ましい機械的性質を発揮する高強度鋼板とすることが容易である。なお、各成分の作用については後述する。
Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B (1)
上記高強度鋼板は、この実験的に導いたMn当量が2.35以下とするのも好ましい。
Mn当量が2.35以下に抑えられていると、炭素濃度の高いオーステナイトがマルテンサイトに変態する比率が低くなり、残留オーステナイト量が高くなって延性が確保されることにより、材質特性の向上が図れる。
そのような鋼板は、上述の組織を有していて高い強度と良い伸び特性とを兼ね備えるものだからである。
粗大なオーステナイト粒を有した熱延板は、最終焼鈍後で、ある程度の量の残留オーステナイトが得られても、伸び特性の向上が得られない。また、マルテンサイトや残留オーステナイトが粗大に偏在しては、良い加工硬化特性が得られない。その点、上記のとおり旧オーステナイト粒径を20μm以下とし、且つ下部ベイナイトを主とした組織を構成するなら、その後の熱処理により得られるフェライト粒径を微細にすることに加え、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを微細に分散させることが出来る。前記した元素を適量だけ有するものでもあるため、この鋼板は、適切な熱処理によって前述の高強度鋼板になり得るわけである。粒内にセメンタイトが微細に鎖列状に分散した下部ベイナイト組織から上記組織の高強度鋼板ができる機構については後述する(図5を参照)。なおここで言う旧オーステナイト粒径とは、下部ベイナイト粒径をさす。
Mn当量が2.35以下であるため、オーステナイトがマルテンサイトに変態する比率が低くなり、残留オーステナイト量が高くなる結果、材質特性の向上が図れる。
1) 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、またはさらにTi:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方を含有し、またはさらにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上を含有していて、Mn当量が2.35以下である鋼材を、
2) 複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延するとともに、
3) 圧延終了時のAr3以上の温度から冷却を開始し、150℃以上、400℃以下の温度範囲で巻き取ることを特徴とする。
発明者らの製造試験によると、後述のように、こうした条件によって上述の未焼鈍高強度鋼板を得ることができた。
4) 焼鈍のためにAc1以上、Ac3+20℃以下の温度まで加熱し、当該温度に保持した後、
5) 10℃/sec以上の速度(ΔCR)で350℃以下まで連続的に冷却することを特徴とする。
このようにすれば、後述のとおり上記の高強度鋼板を得ることができる。こうしたプロセスによって上記組織の鋼板ができる機構について後述する(図5を参照)。
なお、前記の未焼鈍高強度鋼板に冷間圧延を施した後に、4)、5)の適正な焼鈍と冷却を行うことで、同様に上記の高強度鋼板を得ることもできる。
Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4 (2)
の関係を有するようにするのがよい。
そうすれば、冷却の際にオーステナイトからマルテンサイトに至る変態を抑制でき、残留オーステナイト量を確保して材質特性の向上を図ることができる。
炭素(C)としては、0.05〜0.25%の範囲の量が必要である。0.05%よりも少なくなると、約600MPa 以上の鋼板強度が得られないので、0.05%以上の炭素量が必要である。一方、炭素量が0.25%以上になると、溶接部が硬化しすぎて溶接部から破断しやすくなる。これは、薄鋼板にとっては使用上の制約になるので、炭素量に上限を設けた。そして、0.05〜0.25%の炭素量であれば、本発明の主旨にそった複合組織が得られることを見出したものである。
一方、本発明の主旨は、最終焼鈍の加熱均熱過程で高い炭素濃度のオーステナイトを作り込み、その後350℃以下まで連続的に冷却を行っても、材質特性を向上させるに十分な量のオーステナイトを残存させることである。高い強度を得るためにはマンガンを多量に添加することが好まれるが、余り高くし過ぎるとマンガンによる焼入れ効果で、高い炭素濃度のオーステナイトでもマルテンサイトへ変態してしまう。そこでマンガン量の上限を2.2%とする。
またその他、不可避的不純物元素を含め、焼入れ性を高める元素は同様の影響を及ぼすため、最終焼鈍後の鋼板の冷却速度との関係で、(2)式(前記及び後記)を満足することが重要である。
最終工程における焼鈍温度域は高温であるので、極めて微細な結晶粒を有した鋼板や冷間圧延を行った鋼板では再結晶や結晶粒成長が発生する。再結晶や結晶粒成長が容易に生じると、熱延工程で作り込んだ微細な組織は解消されてしまい、本発明の主旨にそぐわない粗大な組織へと変わってしまう。
本発明では熱延工程で作り込んだ微細な組織を堅持することが重要である。従って、焼鈍工程における再結晶や結晶粒成長は極力抑制することが重要なのである。再結晶や粒界移動抑制効果の大きいチタンは本発明鋼に有効な元素であり、その量は、0.02〜0.22%の範囲であれば本発明の主旨にそった作用効果を発揮できる。チタン量は、0.22%よりも増えても作用効果はあまり増加しないので、上限の量を0.22%とする。
熱間圧延を施すにあたっては、複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延を行う。
そのような高圧下率の圧延を行うためには、ワークロールの直径が600mm以下の小径ロールミル、またはワークロールの平均直径が600mm以下である異径ロールミルを少なくとも後段の複数スタンドに使用することが好ましい。また、加工発熱による鋼板の温度上昇を抑制するために、冷却能力の高いカーテンウォール型冷却装置をそれら高圧下用ミルの各出側に配置し使用することも好ましい。
そして、Ar3以上のオーステナイト域で圧延を完了することが重要である。圧延完了温度がオーステナイト域を下回ると、下部ベイナイト相の他に、本発明にそぐわないフェライト相が生成する。ここで生成するフェライト相は異常に粗大化したものであり、材質を著しく阻害する。従って熱間圧延を完了する温度はAr3以上とする。
ここで「歪み」とは、各スタンド(各段)の入側での鋼板の厚さh0と出側での厚さh1の差を両者の平均厚さで除した
ε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいい、「累積歪み」とは、後段3スタンドの各段での歪みを金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、
εC=εn+εn-1/2+εn-2/4
で表されるεCをいうものとする。
熱間圧延完了後の冷却開始温度は余り高過ぎると、下部ベイナイトで形成する炭化物の形態が好ましくはなく、冷却開始温度としてAr3以上、Ar3+50℃以下であることがより好ましい。
また、上記のとおり熱間圧延で累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように圧延を行うことで、旧オーステナイトの粒径は20μm以下とすることが出来る。
本発明においては、Ac1〜Ac3+20℃の温度での焼鈍中にフェライト粒内に高炭素濃度のオーステナイトが形成されるが、それは非平衡の状態である。炭素の拡散が容易であると炭素は平衡状態へと低下する。最終製品における残留オーステナイト量を高めるためには、この炭素の拡散による濃度低下を抑制することが重要であり、拡散を促進する過度の冷間圧延は好ましくない。過度の冷間圧延を施す場合は、チタンやニオブ等の粒界の移動を抑制する元素を添加することが好ましい。
また本発明における熱間圧延後の鋼板は、下部ベイナイト相よりなる硬質な組織を有すため、冷間圧延を行う場合には、冷間圧延機に多大の負荷を与える。
以上のことを考慮すれば、冷間圧下を行う場合は圧下率としては50%以下とすることが好ましい。
なお、実施形態としてここに説明する製造例では、冷間圧延は行っていない。
この時低合金組成で高い強度を得るためには、冷却を350℃以下まで止めないことが必要である。
従来のTRIP鋼板の製造プロセスではオーステナイト中に炭素を濃縮するため、マルテンサイト変態を開始する温度であるMs点直上の温度で冷却を停止し、数十秒の保定が必要であった。しかし本発明によればAc1〜Ac3+20℃焼鈍中に高い炭素濃度のオーステナイトが形成されているため、冷却過程でMs点直上の温度での保定を行わずとも炭素濃度の高い残留オーステナイトを形成することが出来るのである。もちろん本発明鋼板においてもMs点直上の温度での保定を行えばさらにオーステナイト中に炭素を濃縮することは可能であるが、低合金で高強度化を図ることが最も重要なことであり、冷却を350℃以下まで止めないことが本発明製造プロセスの主要点である。
図2(a)・(b)は、図1に示す製造プロセスにおける熱間圧延完了後の巻取り温度(横軸)と最終焼鈍後の鋼板材質特性(引張り強さTS、伸び値EL、それらの積TS×EL)および最終焼鈍後の残留オーステナイトの形態(残留オーステナイトの体積率Vf[γ]、炭素濃度C[γ])との関係を、二つの異なる鋼種1・2について示したものである。最終焼鈍では400℃付近での保定を行わずに、上記のとおり一気に室温付近まで冷却する条件で実施した。
鋼種による差は見られるが、最終焼鈍後の残留オーステナイト量は巻取り温度の低下によって増加し、さらに150℃以下になると低下する。特に巻取り温度150℃以上、400℃以下(好ましくは150℃〜350℃)での残留オーステナイト量は顕著に増加する。
最終焼鈍後の材質特性は、引張り強度に大きな変化は見られないが、残留オーステナイトの量の増加にともなって、延性は大きく向上している。残留オーステナイトによる加工誘起変態の効果によって、伸び特性が向上していることが言える。
残留オーステナイト中の炭素濃度を測定した結果も同図に示した。炭素濃度は巻取り温度350℃付近に最高値が見られるものの、巻取り温度が150℃以上、400℃以下の温度で0.9%以上の炭素濃度が得られており、室温でもオーステナイトが安定して存在するのに必要な炭素濃度が得られている。
すなわち、図2に示す効果を得るためには(1)、(2)式に示す成分調整が重要なのである。
Mn当量(mass%)=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B (1)
Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4 (2)
ΔCR(℃/sec):最終焼鈍での冷却速度
たとえば、最終焼鈍工程での冷却速度を前記のとおり10℃/sec以上にして350℃以下にまで冷却する場合、図2の効果を得るためには、Mn当量は2.35以下に抑える必要がある。
また残留オーステナイト中の炭素濃度もX線回折法で、オーステナイト相の(111)(200)(220)(311)面のピーク強度を示す回折角を用い、オーステナイト相の格子定数を求めることで算出した。
なお、図4では、EBSP法を用いてフェライト相とオーステナイト相の組織を識別している。
150℃以上、400℃以下で巻取られた熱延板の組織(図5(a))は、下部ベイナイト組織であり、粒内には、主として、セメンタイトが鎖列状に分散している。これをAc1〜Ac3+20℃にまで昇温すると、粒内のセメンタイト付近で優先的にオーステナイトが形成される(同(b))。このオーステナイト形成場は炭化物が密集した状態であるので、高い炭素濃度のオーステナイトとなる。シリコン、アルミなどの元素が存在すると、それらは、フェライト中への炭素の拡散を抑制するので、さらにオーステナイト中の炭素濃度を高める結果になる。また、炭素は粒界を速い速度で拡散するので、粒界3重点などにおいては、平衡状態に近い炭素濃度に下がったオーステナイト粒が形成される。それが室温付近までに冷却されると、高炭素濃度のオーステナイトは残留オーステナイトと一部マルテンサイトに、低炭素濃度のオーステナイトはマルテンサイトに変態する(同(c))ものと考えられる。
この時、(1)式中のMn当量が閾値以上に高くなると、高い炭素濃度のオーステナイトでもマルテンサイトに変態する比率が高くなり、残留オーステナイト量が減少し、材質特性の向上が図れないのである。
またAc1〜Ac3+20℃焼鈍の際に再結晶や結晶粒成長などの粒界の移動が伴うと、フェライト粒内等に形成される高炭素濃度のオーステナイトは粒界に併呑されてしまい、オーステナイト中の炭素濃度は平衡状態へと低下する。従って再結晶や結晶粒成長を抑制することが本発明における重要な冶金学的要素である。極めて微細な結晶粒を有した鋼板や冷間圧延を行った鋼板ではAc1〜Ac3+20℃焼鈍中に再結晶や結晶粒成長が発生しやすいため、チタンやニオブ等の粒界移動抑制元素は、これらの鋼板においては含有することが望ましい成分元素である。
本発明は、以上の知見に基づき開発されたものである。
表1に示す化学成分を有する溶鋼を、連続鋳造法もしくは鍛造法によりスラブ(圧延素材)とした。続いてこれらのスラブを再加熱し、熱間圧延を行い、熱延鋼板とした。
また鋼種Iはチタン及びニオブの添加は無く、鋼種Cはチタン、ニオブ量をそれぞれ0.04%、0.03%、鋼種Dはチタンを添加せず、粒界移動抑制元素としてニオブを0.04%添加している。
実施例では最終焼鈍過程での冷却速度を100℃/secとしたので、Mn当量との関係で(2)式が満たされないこととなる鋼種Fも比較例とした。
その後、巻取り温度は100〜610℃の範囲で制御した。巻取り後の(熱間圧延段階の)各熱延鋼板の組織を同表に示す。150℃以上、400℃以下の低温巻取りを行ったものは下部ベイナイトを主とする組織であるのに対し、150℃以下は粒内に鎖列状のセメンタイトの析出が認められない完全なマルテンサイト相であり、400℃以上で巻き取ったものはフェライト、パーライトもしくは上部ベイナイトを主体とする組織である。なお、組織は、鋼板の圧延方向断面について、光学顕微鏡にて観察した。
鋼種A、C、Dの実施例(No.1、4、5)では、いずれの鋼種も比較的炭素量が少ないのでマルテンサイト量、残留オーステナイト量は少なく、強度レベルとしては低位であるが、比較的良い伸び特性を示し、良好な穴拡げ特性が得られている。
しかし比較例(No.3)の鋼種BはMn当量が高いため、焼鈍冷却時に十分な量の残留オーステナイトが得られず、鋼種Aの実施例と比較すると伸び特性が悪い。
また鋼種Aでは熱間圧延及び連続焼鈍での温度条件は基準範囲内であるが、熱間圧延での最終段圧下率が15%未満で、累積歪みも0.4%を下回る比較例(No.2)も示した。この条件では連続焼鈍条件で低温保定を行わずとも、残留オーステナイトが得られるが、組織が粗大であるため、同鋼種の実施例と比較し材質特性は劣る。
鋼種E、Kの例では熱間圧延での巻取り温度の水準を変更し、焼鈍後の組織及び材質への影響を調べている。巻取り温度が400℃を超える、もしくは150℃未満の比較例(No.6、7、8、10、18、19)に対し、150℃以上、400℃以下の実施例(No.9、21)では相対的に残留オーステナイト量は増加する傾向で、その分マルテンサイト量は低下する。それぞれの鋼種において、強度レベルは熱間圧延の巻取り温度水準の違いにより大きな変化はないが、実施例の伸び値は残留オーステナイト量の増加とともに向上している。さらに穴拡げ値も巻取り温度の低下に伴い向上する。
鋼種G、Kでは熱間圧延での巻取り温度は150℃以上、400℃以下に制御し、焼鈍後の冷却過程で420〜430℃保定を行う比較例(No.12、13、20)と400℃付近で保定を行わない実施例(No.14、21)を示した。焼鈍後400℃付近で保定を行った場合、400℃付近で保定を行わない場合と比較し、残留オーステナイト量は増加するが、マルテンサイト量が著しく低下する。その結果、良好な伸び値は得られるものの強度レベルが著しく低下する。一方焼鈍後400℃付近で保定を行わない場合でも、豊富な残留オーステナイトが得られており、且つ豊富なマルテンサイトが得られているため強度レベルが高い。また強度・延性バランスを示すTS×EL(引張り強さTSと伸び値ELとの積)はTRIP鋼並みの高い値(20000MPa・%以上)を示し、高い強度の割に良好な伸び特性が得られている。
また焼鈍後400℃付近で保定を行った比較例に対し、保定を行わない実施例は強度レベルが高く、強度・延性バランスも良好である。
残留オーステナイトの体積率はX線回折法により算出した。
引張り特性(引張り強さTS、伸び値EL)はJIS5号試験片形状にて引張り試験し測定した。
穴拡げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996穴拡げ試験方法に基づき穴拡げ率を測定、評価したものである。
例えば自動車のセンターピラーのように、ドアの支持とともに衝突時の変形防止等に必要な引張り強度が求められる他、プレス成形等のため曲げ、絞り加工性、関連機器の取付け穴を形成するための穴拡げ加工性、さらには他の車体部品と接合するための溶接性などにつき高いレベルが要求される部材として、極めて好ましい鋼板といえる。
Claims (12)
- 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含有し残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下であり、
平均粒径が10μm以下のフェライトの粒内および粒界に、体積率で3%以上、炭素濃度が質量%で0.9%以上のラス状オーステナイトと、体積率で10%以上の、ラス状もしくは平均粒径が10μm以下の粒状のマルテンサイトとが存在することを特徴とする高強度鋼板。
ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B - Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方または両方をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載した高強度鋼板。
- Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載した高強度鋼板。
- 引張り強さ(MPa)と伸び値(%)との積が20000(MPa・%)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した高強度鋼板。
- 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下であり、
旧オーステナイト粒径が20μm以下で、粒内に粒子径で1μm以下のセメンタイトが鎖列状に分散した下部ベイナイト組織を有することを特徴とする未焼鈍高強度鋼板。
ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B - Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方をさらに含有することを特徴とする請求項5に記載の未焼鈍高強度鋼板。
- Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項5または6に記載の未焼鈍高強度鋼板。
- 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下である鋼材を、
複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延するとともに、圧延終了時のAr3以上の温度から冷却を開始し、150℃以上、400℃以下の温度範囲で巻き取ることを特徴とする未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B - 上記鋼材が、Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方をさらに含有することを特徴とする請求項8に記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
- 上記鋼材が、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項8または9に記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
- 請求項8〜10のうちいずれかに記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法によって得た未焼鈍高強度鋼板を、
焼鈍のためにAc1以上、Ac3+20℃以下の温度まで加熱し、当該温度に保持した後、10℃/sec以上の速度ΔCRで350℃以下まで連続的に冷却することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。 - 上記したMn当量と、上記した焼鈍後の冷却の速度ΔCRとの関係を、
Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4
とすることを特徴とする請求項11に記載した高強度鋼板の製造方法。
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