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JP4854333B2 - 高強度鋼板、未焼鈍高強度鋼板およびそれらの製造方法 - Google Patents

高強度鋼板、未焼鈍高強度鋼板およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

請求項に係る発明は、高い引張り強度をもちながらも優れた加工性を有する高強度鋼板と、そのための中間製品である未焼鈍高強度鋼板、およびそれらの製造方法に関するものである。
加工性の優れた高強度鋼板に対する最近の要請を、自動車の場合を例にして述べる。地球環境保全の観点から、自動車分野においてもCO2等の排ガス量を低減していくことが是非とも必要である。そのためには、自動車車体の一層の軽量化が不可欠になる。車体の軽量化を達成するためには、自動車に使用される鋼板の強度を高めて、板厚を薄くしていかなければならない。同時に、自動車においては、搭乗者の安全性を確保していかなければならない。このためにも、鋼板の強度を一層高めていくことが必要になる。
強度を高めるための方法としては、固溶強化、析出強化、結晶粒微細化などが基本的な方法である。省資源や製造コストの低減を図りながら溶接性を確保するためには、合金添加量を極力低減することが極めて重要である。従がって、固溶強化や析出強化といった多量の合金添加を必要とする強化機構の適用だけでは、極めて高い強度を必要とする鋼板の製造は不可能である。また結晶粒微細化による強化機構を適用するにしても、現在商業的に製造が可能な結晶粒径は1〜3μmであるので、強度の上昇はある程度図れても、強度上昇に見合う延性の向上は期待できない。
鋼板の強度が高くなると加工性が悪くなるのと同時に、プレス成形後のスプリングバック等により寸法精度も悪くなる。通常のプレス成形等の冷間加工法では高強度鋼板の適用が困難である。
ホットプレス法は、熱間でプレス加工をするのでスプリングバックの発生量は極めて少なく、形状凍結性が良い。そして、プレスの際の焼入れ効果で、非常に高い強度をもった部品を高精度で提供することができる。しかしながら、プレス加工前には鋼板を加熱することが必要であり、また、プレス後にはスケールを落とす作業が必要である。従って、作業効率が非常に悪い方法である。さらに、金型が加熱した鋼板と接するため金型の寿命が短いことも欠点であり、これが製造コストを増加させることにもなる。
ホットプレス後の鋼板は伸び値が小さく、部材が変形を受けた際に僅かな変形でも破断するので、衝撃吸収能力が小さいと評価されている。従って、ホットプレス部品を、自動車等の重要保安部品として使用することは非常に難しい。
冷間プレス加工で成形品の寸法精度を向上させる方法の1つとして、成形品にビードを設けることによってスプリングバックの発生を抑制する方法がある。しかしこの加工方法では、鋼板に極めて高い加工性が要求される。
一般的に、鋼板の強度を高めると、延性は小さくなり加工性は低くなる。高強度鋼板の延性を高める従来技術として、フェライトとマルテンサイト組織からなる複合組織(Dual Phase)鋼板、フェライトと残留オーステナイト組織からなるTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼板とよばれているものがある。
複合組織鋼板については特許文献1、2にその例が示されている。このような鋼板においては、フェライト中に硬質なマルテンサイトを微細に分散させるが、この硬質なマルテンサイトにより、変形時に大きな加工硬化を引き起こし、高い延性を鋼板にもたらすのである。
TRIP鋼板については特許文献3、4にその例が示されている。残留オーステナイトを含有するこの種の鋼板は、その量と変形に対する安定度に応じて、変態誘起塑性に起因する極めて良好な延性と成形性を有するのである。
特開昭56-133423号公報 特開2005-230896号公報 特開昭62-182225号公報 特開2005-76078号公報
高い強度を有しながら冷間加工での伸び特性を向上させる従来技術として、前記複合組織鋼板とTRIP鋼板が挙げられる。
複合組織鋼板では比較的低い合金添加量でも高い強度が得られ、同時に、加工硬化による良い均一伸び特性が得られる。中でも、特許文献1・特許文献2の鋼板はフェライト母相中のマルテンサイトもしくはベイナイトを微細に分散することにより、強度と伸び特性をさらに向上させたものである。しかし両文献とも残留オーステナイト量は希少、もしくは量の制御が不十分であるためTRIP鋼板並みの伸び特性は得られておらず、複雑な形状を有する部品の加工に耐え得るまでの高い伸び特性が得られていない。
特許文献3に記載の従来から提案されているTRIP鋼板、さらに残留オーステナイトの微細分散化を図った特許文献4に記載のTRIP鋼板は、高強度で高延性、さらに高い深絞り性を有するものである。そのため複雑な形状で高い加工性を必要とし、高い強度が要求される部材への適用が指向されている。
しかし焼鈍冷却工程において、オーステナイトの安定化のために、マルテンサイト変態を開始するMs点直上の400℃付近での低温保定が必要である。さらに、その低温保定の影響により複合組織鋼板に比べ、その炭素量と合金添加量の割には鋼板強度が低いという決定的な欠点がある。鋼板の良い伸び特性が得られ難い引張強度780MPa以上の強度領域でTRIP鋼板の適用が期待された。しかし、同強度レベルを確保しようとすると、必要な炭素量や合金添加量は多くなるので、良好なスポット接合性は確保されない。この理由によって、この鋼板はあまり普及していないのが現状である。
そこで本願の発明者らは、低合金でも高い鋼板強度を得るために、最終焼鈍の冷却過程においては400℃付近での保定をおこなわず、一気に室温付近まで冷却する製造プロセスを検討した。そして、そうしたプロセスにより、高い強度と良好な加工性とを併せもつ新しい低合金・高強度の鋼板およびその製法を開発したものである。
鋭意研究を行った結果、発明者らは、適正な成分組成の採用と、最終焼鈍を行う前の組織等を工夫することによって好ましい高強度鋼板が得られることを見出した。すなわち、複合組織鋼板と同程度の低合金であっても、高い強度と優れた延性を鋼板に同時に付与することが出来きるのである。その詳細を以下に示す。
請求項に記載した高強度鋼板は、平均粒径が10μm以下のフェライトの粒内および粒界に、体積率で3%以上、炭素濃度が質量%で0.9%以上のラス状オーステナイトと、体積率で10%以上のラス状もしくは平均粒径が10μm以下の粒状のマルテンサイトとが存在することを特徴とする高強度鋼板である。
マルテンサイトが体積率で10%以上存在するため、合金添加量が少なくても高い強度を有している。また残留オーステナイトは炭素濃度が質量%で0.9%以上であるため、室温で準安定に存在することが可能で、変形による変態を誘発し得る。さらに体積率3%以上で、効果的に微細に分散しているため、良好な加工硬化が継続的に得られ、良い伸び特性も得られるのである。残留オーステナイトとマルテンサイトとがともにラス状または微小な粒状に存在しているので、この鋼板は延性および延びフランジ性にすぐれてもいる。残留オーステナイトが微細分散していることからは、遅れ破壊が発生しないという利点もある。
ここで言うラス状とはオーステナイトもしくはマルテンサイトの結晶粒の形状がアスペクト比で3以上のものを言い、3未満を粒状と称した。
上記の高強度鋼板については、とくに、質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、またはさらに、Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方または両方を含有しているものとするのが好ましい。
さらにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%から選択された少なくとも1種を含有しても良い。なお、各場合で、残部はFe及び不可避的不純物とする。
こうした適切な種類と量の化学成分を含むこととすれば、上記の組織を有していて望ましい機械的性質を発揮する高強度鋼板とすることが容易である。なお、各成分の作用については後述する。
上記高強度鋼板は焼入れ性を高める元素が多く含まれると、好ましい特性が得られないことがある。鋼板の焼入れ性を、含有する成分で実験的に導いた。その焼入れ性の指数はMn当量として、Mn、Cr、P、Mo、Bの各成分元素の質量%により、以下に示す式で整理した。
Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B (1)
上記高強度鋼板は、この実験的に導いたMn当量が2.35以下とするのも好ましい。
Mn当量が2.35以下に抑えられていると、炭素濃度の高いオーステナイトがマルテンサイトに変態する比率が低くなり、残留オーステナイト量が高くなって延性が確保されることにより、材質特性の向上が図れる。
上記高強度鋼板として、上記した組織を有するとともに、引張り強さTS(MPa)と伸び値EL(%)との積TS×ELが20000(MPa・%)以上であるものも好ましい。
そのような鋼板は、上述の組織を有していて高い強度と良い伸び特性とを兼ね備えるものだからである。
請求項に記載した未焼鈍高強度鋼板は、焼鈍およびその後の冷却を経ることにより上記のような高強度鋼板となるものである。つまりそのような鋼板は、後に適切な焼鈍および冷却することによって上述の特徴をもつ高強度鋼板になり、高い強度と伸び特性を発揮する。
未焼鈍高強度鋼板としては、質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、またはさらにTi:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方を含有し、またはさらにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上を含有していて、旧オーステナイト粒径が20μm以下で、粒内に粒子径で1μm以下のセメンタイトが微細に鎖列状に分散した下部ベイナイト組織を有するものがあげられる。そのような未焼鈍高強度鋼板は、たとえば後述のとおり焼鈍および冷却することにより、上記請求項に係る高強度鋼板となる。ここで鎖列状とはセメンタイト粒子が2個以上列をなして形成された状態をいう。
粗大なオーステナイト粒を有した熱延板は、最終焼鈍後で、ある程度の量の残留オーステナイトが得られても、伸び特性の向上が得られない。また、マルテンサイトや残留オーステナイトが粗大に偏在しては、良い加工硬化特性が得られない。その点、上記のとおり旧オーステナイト粒径を20μm以下とし、且つ下部ベイナイトを主とした組織を構成するなら、その後の熱処理により得られるフェライト粒径を微細にすることに加え、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを微細に分散させることが出来る。前記した元素を適量だけ有するものでもあるため、この鋼板は、適切な熱処理によって前述の高強度鋼板になり得るわけである。粒内にセメンタイトが微細に鎖列状に分散した下部ベイナイト組織から上記組織の高強度鋼板ができる機構については後述する(図5を参照)。なおここで言う旧オーステナイト粒径とは、下部ベイナイト粒径をさす。
同様の未焼鈍高強度鋼板としては、Mn当量が2.35以下であり、旧オーステナイト粒径が20μm以下で、粒内にセメンタイトが微細に鎖列状に分散した下部ベイナイト組織を有するものも適している。
Mn当量が2.35以下であるため、オーステナイトがマルテンサイトに変態する比率が低くなり、残留オーステナイト量が高くなる結果、材質特性の向上が図れる。
請求項に係る未焼鈍高強度鋼板の製造方法は、
1) 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、またはさらにTi:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方を含有し、またはさらにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上を含有していて、Mn当量が2.35以下である鋼材を、
2) 複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延するとともに、
3) 圧延終了時のAr3以上の温度から冷却を開始し、150℃以上、400℃以下の温度範囲で巻き取ることを特徴とする。
発明者らの製造試験によると、後述のように、こうした条件によって上述の未焼鈍高強度鋼板を得ることができた。
請求項に係る高強度鋼板の製造方法は、上記1)〜3)にて得た未焼鈍高強度鋼板を、
4) 焼鈍のためにAc1以上、Ac3+20℃以下の温度まで加熱し、当該温度に保持した後、
5) 10℃/sec以上の速度(ΔCR)で350℃以下まで連続的に冷却することを特徴とする。
このようにすれば、後述のとおり上記の高強度鋼板を得ることができる。こうしたプロセスによって上記組織の鋼板ができる機構について後述する(図5を参照)。
なお、前記の未焼鈍高強度鋼板に冷間圧延を施した後に、4)、5)の適正な焼鈍と冷却を行うことで、同様に上記の高強度鋼板を得ることもできる。
上記5)の際の冷却速度ΔCRは、前記したMn当量との間に、
Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4 (2)
の関係を有するようにするのがよい。
そうすれば、冷却の際にオーステナイトからマルテンサイトに至る変態を抑制でき、残留オーステナイト量を確保して材質特性の向上を図ることができる。
請求項に記載の高強度鋼板は、残留オーステナイトとマルテンサイトが多量に微細に分散した状態で混在するため、互いに相反する特性である強度と加工特性を兼備した鋼板である。
請求項に記載した未焼鈍高強度鋼板は、のちに適正な熱処理を行うことで、低合金でありながら非常に高い強度が得られ、さらに豊富な残留オーステナイトが含まれることになるため、複雑な加工にも耐え得る良好な加工特性を発揮するものとなる。
請求項に記載した製造方法によれば、上記した高強度鋼板または未焼鈍高強度鋼板を円滑に製造することが出来る。
以下、約600〜1500MPaの引張り強度をもちながらも優れた加工性が必要とされる加工部品に使用される薄鋼板とその製造方法について、実施の形態を示す。鋼板の成分系として、質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、さらにはTi:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%の二者のうち少なくとも一方を含有し、またはCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%から選択された成分を含有し得る組成のものを基準とする。なお、ここで述べる薄鋼板とは、板厚が約4mm以下の鋼板のことである。製造する鋼板は、主として自動車、家電製品、電子機器製品、等の高い加工性と強度が必要な部品に使用することが出来る。その他、鋼管用の素材として適用が可能である。
まず、鋼板の成分について述べる。
炭素(C)としては、0.05〜0.25%の範囲の量が必要である。0.05%よりも少なくなると、約600MPa 以上の鋼板強度が得られないので、0.05%以上の炭素量が必要である。一方、炭素量が0.25%以上になると、溶接部が硬化しすぎて溶接部から破断しやすくなる。これは、薄鋼板にとっては使用上の制約になるので、炭素量に上限を設けた。そして、0.05〜0.25%の炭素量であれば、本発明の主旨にそった複合組織が得られることを見出したものである。
シリコン(Si)量は、0.01〜1.50%の範囲とする。シリコンは固溶強化による強度向上と、残留オーステナイトの安定化のために活用する。シリコン量は、0.01%以上であれば、本発明の複合組織と材質特性が得られる。シリコン量は多いほど、残留オーステナイト量を増やすことができると同時に、その安定性を促す。しかし、1.50%以上のシリコン量になると、鋼板の表面にシリコンスケールが発生しやすくなり、薄鋼板として良好な表面性状が得られないので、シリコン量の上限を1.50%とする。
マンガン(Mn)量は、0.6〜2.2%の範囲とする。マンガン量が0.6%以下になると、焼き入れ性が不足し本発明の複合組織が得られなくなる。その結果、鋼板の強度と延性が低くなるので、マンガン量は0.6%以上とする。
一方、本発明の主旨は、最終焼鈍の加熱均熱過程で高い炭素濃度のオーステナイトを作り込み、その後350℃以下まで連続的に冷却を行っても、材質特性を向上させるに十分な量のオーステナイトを残存させることである。高い強度を得るためにはマンガンを多量に添加することが好まれるが、余り高くし過ぎるとマンガンによる焼入れ効果で、高い炭素濃度のオーステナイトでもマルテンサイトへ変態してしまう。そこでマンガン量の上限を2.2%とする。
またその他、不可避的不純物元素を含め、焼入れ性を高める元素は同様の影響を及ぼすため、最終焼鈍後の鋼板の冷却速度との関係で、(2)式(前記及び後記)を満足することが重要である。
アルミ(Al)は、0.01%以上であれば、本発明の複合組織と材質特性が得られる。アルミ量は多いほど、残留オーステナイト量を増やすことができると同時に、その安定化を促す。しかし、1.50%以上のアルミ量になると、連続鋳造工程における鋳造ノズル閉塞が生じやすくなり、スラブを連続鋳造で製造することが極めて困難になる。従って、アルミ量の上限を1.50%とする。
チタン(Ti)は、熱延工程における結晶粒の微細化とともに、最終焼鈍工程での再結晶や結晶粒成長を抑制する効果を有している。
最終工程における焼鈍温度域は高温であるので、極めて微細な結晶粒を有した鋼板や冷間圧延を行った鋼板では再結晶や結晶粒成長が発生する。再結晶や結晶粒成長が容易に生じると、熱延工程で作り込んだ微細な組織は解消されてしまい、本発明の主旨にそぐわない粗大な組織へと変わってしまう。
本発明では熱延工程で作り込んだ微細な組織を堅持することが重要である。従って、焼鈍工程における再結晶や結晶粒成長は極力抑制することが重要なのである。再結晶や粒界移動抑制効果の大きいチタンは本発明鋼に有効な元素であり、その量は、0.02〜0.22%の範囲であれば本発明の主旨にそった作用効果を発揮できる。チタン量は、0.22%よりも増えても作用効果はあまり増加しないので、上限の量を0.22%とする。
ニオブ(Nb)にも、チタンと同様に、再結晶や結晶粒成長を抑制する効果がある。本発明の主旨にそった組織をうるためには、ニオブ量として0.02〜0.10%の範囲の量が必要である。0.02%以下になると、再結晶や結晶粒成長を抑制する効果がなくなる。また、ニオブ量が0.10%よりも増えてもその作用効果はあまり増加しないので、その上限を0.10%とした。
銅(Cu)は、固溶強化により鋼の強度を向上させるが、製造上不可避的に含有する以上に、故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その上限を1.0%とした。
ニッケル(Ni)は、固溶強化により鋼の強度を向上させると同時に、シリコンやアルミと同様に残留オーステナイト量を増やすことができる。しかし製造上不可避的に含有する以上に、故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その上限を1.0%とした。
クロム(Cr)は、マンガンと同様に焼入れ性を高める元素であり、鋼の強度を向上させることが出来るが、(1)式に影響するため、Mn等を含め複合的に含有量を調整する必要性がある。また製造上不可避的に含有する以上に、故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その上限を1.0%とした。
モリブデン(Mo)は、マンガンと同様に焼入れ性を高める元素であり、鋼の強度を向上させることが出来るが、(1)式に影響するため、Mn等を含め複合的に含有量を調整する必要性がある。また製造上不可避的に含有する以上に、故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その上限を1.0%とした。
燐(P)は、本発明鋼における必要成分ではないが、製造上不可避的に含有する。燐はスポット溶接性を著しく阻害する上、マンガンと同様に焼入れ性を高める元素であり、(1)式に影響するため、基本的に可能な限り低減することが好まれる。
ホウ素(B)は、本発明鋼における必要成分ではなく、(1)式に影響するため、基本的に可能な限り低減することが好まれる。
上記の基準成分に調整したスラブは、再加熱してから熱間圧延をおこなうか、もしくは鋳造後直ちに熱間圧延をおこなうものとする。
熱間圧延を施すにあたっては、複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延を行う。
そのような高圧下率の圧延を行うためには、ワークロールの直径が600mm以下の小径ロールミル、またはワークロールの平均直径が600mm以下である異径ロールミルを少なくとも後段の複数スタンドに使用することが好ましい。また、加工発熱による鋼板の温度上昇を抑制するために、冷却能力の高いカーテンウォール型冷却装置をそれら高圧下用ミルの各出側に配置し使用することも好ましい。
そして、Ar3以上のオーステナイト域で圧延を完了することが重要である。圧延完了温度がオーステナイト域を下回ると、下部ベイナイト相の他に、本発明にそぐわないフェライト相が生成する。ここで生成するフェライト相は異常に粗大化したものであり、材質を著しく阻害する。従って熱間圧延を完了する温度はAr3以上とする。
ここで「歪み」とは、各スタンド(各段)の入側での鋼板の厚さh0と出側での厚さh1の差を両者の平均厚さで除した
ε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいい、「累積歪み」とは、後段3スタンドの各段での歪みを金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、
εC=εn+εn-1/2+εn-2/4
で表されるεCをいうものとする。
熱間圧延完了後、Ar3以上から冷却を開始し、Δ40℃/sec以上の速度で冷却行い、150℃以上、400℃以下の温度範囲まで連続的に冷却後、巻取ることが必要である。冷却開始温度がAr3を下回ると部分的にフェライト変態が起こり、また同様に冷却速度がΔ40℃/secを下回るとフェライト変態が発生する。従って本発明の下部ベイナイトを主とする望ましい相を得るためには、熱間圧延完了後、Ar3以上から冷却を開始し、Δ40℃/sec以上の冷却速度で150℃以上、400℃以下まで冷却後、巻き取ることが重要となる。
熱間圧延完了後の冷却開始温度は余り高過ぎると、下部ベイナイトで形成する炭化物の形態が好ましくはなく、冷却開始温度としてAr3以上、Ar3+50℃以下であることがより好ましい。
適正な条件で処理した熱延鋼板の組織は下部ベイナイト相の低温変態相であり、粒内に鎖列状にセメンタイトが析出している。
また、上記のとおり熱間圧延で累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように圧延を行うことで、旧オーステナイトの粒径は20μm以下とすることが出来る。
熱間圧延後、冷間圧延を行うことも出来るが、過度の圧下率で圧延を行うと粒内に過剰な転位が導入され、焼鈍の際に再結晶が起こり易く、粒界の移動に伴い粒内に形成されたセメンタイト周辺の局所的高炭素濃度領域が粒界に併呑されてしまう。このとき、炭素は容易に拡散が可能となる。
本発明においては、Ac1〜Ac3+20℃の温度での焼鈍中にフェライト粒内に高炭素濃度のオーステナイトが形成されるが、それは非平衡の状態である。炭素の拡散が容易であると炭素は平衡状態へと低下する。最終製品における残留オーステナイト量を高めるためには、この炭素の拡散による濃度低下を抑制することが重要であり、拡散を促進する過度の冷間圧延は好ましくない。過度の冷間圧延を施す場合は、チタンやニオブ等の粒界の移動を抑制する元素を添加することが好ましい。
また本発明における熱間圧延後の鋼板は、下部ベイナイト相よりなる硬質な組織を有すため、冷間圧延を行う場合には、冷間圧延機に多大の負荷を与える。
以上のことを考慮すれば、冷間圧下を行う場合は圧下率としては50%以下とすることが好ましい。
なお、実施形態としてここに説明する製造例では、冷間圧延は行っていない。
最終焼鈍では、Ac1〜Ac3+20℃の範囲に加熱し、1〜120secの間、等温保持することでフェライトとオーステナイトを形成後、650〜700℃の温度まで徐冷、その後10℃/sec以上の冷却速度で350℃以下まで冷却する。
この時低合金組成で高い強度を得るためには、冷却を350℃以下まで止めないことが必要である。
従来のTRIP鋼板の製造プロセスではオーステナイト中に炭素を濃縮するため、マルテンサイト変態を開始する温度であるMs点直上の温度で冷却を停止し、数十秒の保定が必要であった。しかし本発明によればAc1〜Ac3+20℃焼鈍中に高い炭素濃度のオーステナイトが形成されているため、冷却過程でMs点直上の温度での保定を行わずとも炭素濃度の高い残留オーステナイトを形成することが出来るのである。もちろん本発明鋼板においてもMs点直上の温度での保定を行えばさらにオーステナイト中に炭素を濃縮することは可能であるが、低合金で高強度化を図ることが最も重要なことであり、冷却を350℃以下まで止めないことが本発明製造プロセスの主要点である。
以上に示した条件を基準として製造した高強度鋼板の組織は、平均粒径が10μm以下のフェライトの粒内および粒界に、ラス状の残留オーステナイトがあり、フェライト粒界上に平均粒径が10μm以下の粒状のマルテンサイトが細かく分散している。マルテンサイトは一部残留オーステナイトと同様の形態をもつものもある。この硬質なマルテンサイトと残留オーステナイトの共存が、複合組織鋼板と同様の低合金でも高い強度特性を有する特性を生み、そしてさらにTRIP鋼板並みの伸び、加工特性を生み出すのである。
図1は、この発明の実施形態の製造プロセスにおける熱間圧延及び焼鈍での温度履歴の概念を示すもので、横軸は時間経過、縦軸は温度である。図の左方から、aの範囲は粗圧延工程、bは仕上圧延工程、cは巻取り工程をそれぞれ行っていることを示す。
図2(a)・(b)は、図1に示す製造プロセスにおける熱間圧延完了後の巻取り温度(横軸)と最終焼鈍後の鋼板材質特性(引張り強さTS、伸び値EL、それらの積TS×EL)および最終焼鈍後の残留オーステナイトの形態(残留オーステナイトの体積率Vf[γ]、炭素濃度C[γ])との関係を、二つの異なる鋼種1・2について示したものである。最終焼鈍では400℃付近での保定を行わずに、上記のとおり一気に室温付近まで冷却する条件で実施した。
鋼種による差は見られるが、最終焼鈍後の残留オーステナイト量は巻取り温度の低下によって増加し、さらに150℃以下になると低下する。特に巻取り温度150℃以上、400℃以下(好ましくは150℃〜350℃)での残留オーステナイト量は顕著に増加する。
最終焼鈍後の材質特性は、引張り強度に大きな変化は見られないが、残留オーステナイトの量の増加にともなって、延性は大きく向上している。残留オーステナイトによる加工誘起変態の効果によって、伸び特性が向上していることが言える。
残留オーステナイト中の炭素濃度を測定した結果も同図に示した。炭素濃度は巻取り温度350℃付近に最高値が見られるものの、巻取り温度が150℃以上、400℃以下の温度で0.9%以上の炭素濃度が得られており、室温でもオーステナイトが安定して存在するのに必要な炭素濃度が得られている。
但し、特定の熱延巻取温度をとるとき残留オーステナイト量が多く延性が高くなるという図2の効果は、いずれの成分範囲でも得られる効果ではない。数多くの実験の結果を解析したところ、当該図2の効果を得るためには、適正な成分範囲があることを見出した。本発明鋼の材質特性は焼入れ性を高める元素により整理が出来、その指数をMn当量として実験的に導いた。また良好な材質特性を得るためのMn当量の閾値は、最終焼鈍工程での冷却速度に依存することを見出したものである。その実験結果を図3に示す。
すなわち、図2に示す効果を得るためには(1)、(2)式に示す成分調整が重要なのである。
Mn当量(mass%)=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B (1)
Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4 (2)
ΔCR(℃/sec):最終焼鈍での冷却速度
たとえば、最終焼鈍工程での冷却速度を前記のとおり10℃/sec以上にして350℃以下にまで冷却する場合、図2の効果を得るためには、Mn当量は2.35以下に抑える必要がある。
なお、図2における残留オーステナイトの測定はCuのKα線を用いてX線回折法により求めた。板厚1/2t部位で表面電解研磨仕上げ後、オーステナイト相の(200)(220)(311)面とフェライト相の(200)(211)面の積分強度を測定し、それぞれの組合わせから算出される残留オーステナイト体積率の平均値を用いた。
また残留オーステナイト中の炭素濃度もX線回折法で、オーステナイト相の(111)(200)(220)(311)面のピーク強度を示す回折角を用い、オーステナイト相の格子定数を求めることで算出した。
図4に本発明鋼の代表的な断面組織について顕微鏡写真を示す。残留オーステナイト(写真中の白色の部分)はフェライト粒内および粒界にラス状に存在している。またマルテンサイト(写真中の黒色の部分)は同様の組織性状を示したものと、粒界3重点などに粒状の形をして存在するものとがある。本発明鋼の組織性状は残留オーステナイトとマルテンサイトが双方とも多量に混在していることが特徴である。
なお、図4では、EBSP法を用いてフェライト相とオーステナイト相の組織を識別している。
以下に本発明鋼の組織形成に至る機構について説明する。図5はその機構概念を示す。
150℃以上、400℃以下で巻取られた熱延板の組織(図5(a))は、下部ベイナイト組織であり、粒内には、主として、セメンタイトが鎖列状に分散している。これをAc1〜Ac3+20℃にまで昇温すると、粒内のセメンタイト付近で優先的にオーステナイトが形成される(同(b))。このオーステナイト形成場は炭化物が密集した状態であるので、高い炭素濃度のオーステナイトとなる。シリコン、アルミなどの元素が存在すると、それらは、フェライト中への炭素の拡散を抑制するので、さらにオーステナイト中の炭素濃度を高める結果になる。また、炭素は粒界を速い速度で拡散するので、粒界3重点などにおいては、平衡状態に近い炭素濃度に下がったオーステナイト粒が形成される。それが室温付近までに冷却されると、高炭素濃度のオーステナイトは残留オーステナイトと一部マルテンサイトに、低炭素濃度のオーステナイトはマルテンサイトに変態する(同(c))ものと考えられる。
この時、(1)式中のMn当量が閾値以上に高くなると、高い炭素濃度のオーステナイトでもマルテンサイトに変態する比率が高くなり、残留オーステナイト量が減少し、材質特性の向上が図れないのである。
またAc1〜Ac3+20℃焼鈍の際に再結晶や結晶粒成長などの粒界の移動が伴うと、フェライト粒内等に形成される高炭素濃度のオーステナイトは粒界に併呑されてしまい、オーステナイト中の炭素濃度は平衡状態へと低下する。従って再結晶や結晶粒成長を抑制することが本発明における重要な冶金学的要素である。極めて微細な結晶粒を有した鋼板や冷間圧延を行った鋼板ではAc1〜Ac3+20℃焼鈍中に再結晶や結晶粒成長が発生しやすいため、チタンやニオブ等の粒界移動抑制元素は、これらの鋼板においては含有することが望ましい成分元素である。
本発明は、以上の知見に基づき開発されたものである。
以下に発明の実施例を説明する。
表1に示す化学成分を有する溶鋼を、連続鋳造法もしくは鍛造法によりスラブ(圧延素材)とした。続いてこれらのスラブを再加熱し、熱間圧延を行い、熱延鋼板とした。
前記した基準成分に調整した鋼種A、E、G、J、Kにおいては炭素、シリコン、マンガン、チタン量はそれぞれ、0.05〜0.20%、0.20〜1.20%、1.55〜1.85%、0.06〜0.15%で、鋼種Hはさらにアルミニウム0.50%としている。
また鋼種Iはチタン及びニオブの添加は無く、鋼種Cはチタン、ニオブ量をそれぞれ0.04%、0.03%、鋼種Dはチタンを添加せず、粒界移動抑制元素としてニオブを0.04%添加している。
比較例である鋼種B、F、Lは炭素、シリコン、マンガン量は基準範囲内にあるが、その他の添加及び不可避的元素によりMn当量が高く、基準範囲を外れている。
実施例では最終焼鈍過程での冷却速度を100℃/secとしたので、Mn当量との関係で(2)式が満たされないこととなる鋼種Fも比較例とした。
熱間圧延については、実施例と比較例の各鋼種を、表2に示した条件で板厚1.4〜1.6mmに圧延し、熱延鋼板とした。表2中で下線を付けた数値は、基準となる条件を外れたものである。鋼種B・F・Lについては、化学組成が基準を外れるため鋼種の表示に下線を付けている。
表2中No.2の熱間圧延の条件を除き、いずれの条件も最終段圧下率を15%以上もしくは累積歪み0.4以上とし、仕上げ圧延をAr3以上で終了させ、1秒以内に冷却を開始した。No.2の試験条件では最終段圧下率が15%以下で、累積歪みも0.4を下回り、圧延条件に関して基準を外れる。
その後、巻取り温度は100〜610℃の範囲で制御した。巻取り後の(熱間圧延段階の)各熱延鋼板の組織を同表に示す。150℃以上、400℃以下の低温巻取りを行ったものは下部ベイナイトを主とする組織であるのに対し、150℃以下は粒内に鎖列状のセメンタイトの析出が認められない完全なマルテンサイト相であり、400℃以上で巻き取ったものはフェライト、パーライトもしくは上部ベイナイトを主体とする組織である。なお、組織は、鋼板の圧延方向断面について、光学顕微鏡にて観察した。
連続焼鈍については、800℃まで加熱後30秒等温保持し、その後690℃付近まで放冷後、気水冷却法にてΔ100℃/secで室温付近まで連続的に冷却した。また鋼種G、Kでは420〜430℃で冷却を停止し、その後数秒同温度で保定を行う条件も比較例として行った。
連続焼鈍後のマルテンサイト体積率と残留オーステナイト体積率、及び引張り試験、穴拡げ試験の結果も表2に示した。表2において、TSは引張り強さ、ELは伸び値、λは穴拡げ率である。
鋼種A、C、Dの実施例(No.1、4、5)では、いずれの鋼種も比較的炭素量が少ないのでマルテンサイト量、残留オーステナイト量は少なく、強度レベルとしては低位であるが、比較的良い伸び特性を示し、良好な穴拡げ特性が得られている。
しかし比較例(No.3)の鋼種BはMn当量が高いため、焼鈍冷却時に十分な量の残留オーステナイトが得られず、鋼種Aの実施例と比較すると伸び特性が悪い。
また鋼種Aでは熱間圧延及び連続焼鈍での温度条件は基準範囲内であるが、熱間圧延での最終段圧下率が15%未満で、累積歪みも0.4%を下回る比較例(No.2)も示した。この条件では連続焼鈍条件で低温保定を行わずとも、残留オーステナイトが得られるが、組織が粗大であるため、同鋼種の実施例と比較し材質特性は劣る。
鋼種E、Kの例では熱間圧延での巻取り温度の水準を変更し、焼鈍後の組織及び材質への影響を調べている。巻取り温度が400℃を超える、もしくは150℃未満の比較例(No.6、7、8、10、18、19)に対し、150℃以上、400℃以下の実施例(No.9、21)では相対的に残留オーステナイト量は増加する傾向で、その分マルテンサイト量は低下する。それぞれの鋼種において、強度レベルは熱間圧延の巻取り温度水準の違いにより大きな変化はないが、実施例の伸び値は残留オーステナイト量の増加とともに向上している。さらに穴拡げ値も巻取り温度の低下に伴い向上する。
鋼種G、Kでは熱間圧延での巻取り温度は150℃以上、400℃以下に制御し、焼鈍後の冷却過程で420〜430℃保定を行う比較例(No.12、13、20)と400℃付近で保定を行わない実施例(No.14、21)を示した。焼鈍後400℃付近で保定を行った場合、400℃付近で保定を行わない場合と比較し、残留オーステナイト量は増加するが、マルテンサイト量が著しく低下する。その結果、良好な伸び値は得られるものの強度レベルが著しく低下する。一方焼鈍後400℃付近で保定を行わない場合でも、豊富な残留オーステナイトが得られており、且つ豊富なマルテンサイトが得られているため強度レベルが高い。また強度・延性バランスを示すTS×EL(引張り強さTSと伸び値ELとの積)はTRIP鋼並みの高い値(20000MPa・%以上)を示し、高い強度の割に良好な伸び特性が得られている。
図6に、鋼種E、G、Kの実施例及び比較例を引張り強度と伸び値で整理した結果を示す。熱間圧延での巻取り温度が基準範囲外の比較例に対し、基準範囲内の実施例は同強度レベルでも良い伸び特性が得られる。
また焼鈍後400℃付近で保定を行った比較例に対し、保定を行わない実施例は強度レベルが高く、強度・延性バランスも良好である。
マルテンサイトの体積率は、鋼板の圧延方向断面を研磨後、4%ピクリン酸アルコールと2%ピロ硫酸ナトリウムを1対1に混合した液でエッチングし、板厚方向1/4の位置を光学顕微鏡により観察し、画像解析処理により白色にエッチングされたマルテンサイトを測定して求めた。
残留オーステナイトの体積率はX線回折法により算出した。
引張り特性(引張り強さTS、伸び値EL)はJIS5号試験片形状にて引張り試験し測定した。
穴拡げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996穴拡げ試験方法に基づき穴拡げ率を測定、評価したものである。
以上のように低合金組成において高強度で高延性な特性を示す実施例の高強度鋼板は、自動車構造用部材等として使用するのに好適である。
例えば自動車のセンターピラーのように、ドアの支持とともに衝突時の変形防止等に必要な引張り強度が求められる他、プレス成形等のため曲げ、絞り加工性、関連機器の取付け穴を形成するための穴拡げ加工性、さらには他の車体部品と接合するための溶接性などにつき高いレベルが要求される部材として、極めて好ましい鋼板といえる。
この発明の実施形態の製造プロセスにおける熱間圧延及び焼鈍での温度履歴の概念を示す線図である。 図2(a)・(b)は、熱間圧延完了後の巻取り温度と最終焼鈍後の鋼板材質特性および残留オーステナイトの形態との関係を、二つの異なる鋼種1・2について示す図である。 良好な材質特性を得るためのMn当量の閾値が最終焼鈍工程での冷却速度に依存することについて、実験結果を示す図である。 本発明による高強度鋼板についての代表的な断面組織写真である。 図5(a)・(b)・(c)は、本発明による高強度鋼板の組織形成に至る機構について説明する概念図である。 本発明による高強度鋼板の実施例とそうでない比較例とを、引張り強度と伸び値で整理した結果を示す図である。

Claims (12)

  1. 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含有し残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下であり、
    平均粒径が10μm以下のフェライトの粒内および粒界に、体積率で3%以上、炭素濃度が質量%で0.9%以上のラス状オーステナイトと、体積率で10%以上の、ラス状もしくは平均粒径が10μm以下の粒状のマルテンサイトとが存在することを特徴とする高強度鋼板。
    ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
    Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B
  2. Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方または両方をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載した高強度鋼板。
  3. Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載した高強度鋼板。
  4. 引張り強さ(MPa)と伸び値(%)との積が20000(MPa・%)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した高強度鋼板。
  5. 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下であり、
    旧オーステナイト粒径が20μm以下で、粒内に粒子径で1μm以下のセメンタイトが鎖列状に分散した下部ベイナイト組織を有することを特徴とする未焼鈍高強度鋼板。
    ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
    Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B
  6. Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方をさらに含有することを特徴とする請求項5に記載の未焼鈍高強度鋼板。
  7. Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項5または6に記載の未焼鈍高強度鋼板。
  8. 質量%でC:0.05〜0.25%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.6〜2.2%、Al:0.01〜1.50%を含み、残部Feおよび不純物よりなり、Mn当量が2.35以下である鋼材を、
    複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延するとともに、圧延終了時のAr3以上の温度から冷却を開始し、150℃以上、400℃以下の温度範囲で巻き取ることを特徴とする未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
    ただしMn当量は、含有する各成分元素の質量%より下記式にて算出される値である。
    Mn当量=Mn+1.4Cr+3P +1.5Mo+180B
  9. 上記鋼材が、Ti:0.02〜0.22%、Nb:0.02〜0.10%のいずれか一方もしくは両方をさらに含有することを特徴とする請求項8に記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
  10. 上記鋼材が、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%のうちいずれか一以上をさらに含有することを特徴とする請求項8または9に記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法。
  11. 請求項8〜10のうちいずれかに記載した未焼鈍高強度鋼板の製造方法によって得た未焼鈍高強度鋼板を、
    焼鈍のためにAc1以上、Ac3+20℃以下の温度まで加熱し、当該温度に保持した後、10℃/sec以上の速度ΔCRで350℃以下まで連続的に冷却することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  12. 上記したMn当量と、上記した焼鈍後の冷却の速度ΔCRとの関係を、
    Mn当量≦−0.005(ΔCR)+ 2.4
    とすることを特徴とする請求項11に記載した高強度鋼板の製造方法。
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