以下、本発明の実施の形態によるタンデム型マスタシリンダ装置を、例えば車両のBBWシステム(ブレーキバイワイヤ方式のブレーキシステム)に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態によるタンデム型のマスタシリンダ装置で、該マスタシリンダ装置1は、図1、図2に示す如く後述のシリンダ2、第1,第2,第3のピストン4,5,6、第1,第2の液圧室11A,11B、大気圧室13、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24およびストロークシミュレータ30等を含んで構成されている。
2はマスタシリンダ装置1の主要部を構成するシリンダで、該シリンダ2は、図2、図3に示すように軸方向の一側が開口端2Aとなり、他側が底部2Bとなって閉塞されている。そして、シリンダ2内は、有底円筒状のシリンダ孔2Cとして形成され、シリンダ2の開口端2A側には、後述のカバー体26が抜止め状態で取付けられている。
また、シリンダ2には、シリンダ孔2Cの軸方向に離間して径方向外向きに突出する第1,第2のボス部2D,2Eと、これらのボス部2D,2E内をシリンダ孔2C内に連通させる第1,第2のサプライポート2F,2Gとが設けられている。一方、シリンダ2の底部2Bには、後述の大気圧室13を外気(大気)に連通させるための呼吸孔2Hが穿設されている。
3は内部にブレーキ液が収容される作動液タンクとしてのリザーバで、該リザーバ3は、図1、図2に示すように管路3A,3Bを介してシリンダ2のボス部2D,2Eに接続され、後述の液圧室11A,11B内に対してブレーキ液を給排するものである。また、リザーバ3には、後述の液圧ポンプ42A,42Bに向けてブレーキ液を供給する他の管路3C(図1参照)が設けられている。
4はシリンダ2のシリンダ孔2C内に摺動可能に設けられたプライマリピストン(以下、第1のピストン4という)で、該第1のピストン4は、図2、図3に示す如く軸方向の一側がロッド取付部4Aとなり、軸方向の他側は有底のばね収容穴4Bとなっている。そして、第1のピストン4は、ロッド取付部4A側がシリンダ2の開口端2Aから外部に突出し、ロッド取付部4Aの内側には、後述のプッシュロッド9が抜止め状態で取付けられている。
ここで、第1のピストン4は、ロッド取付部4Aの突出端側が後述するカバー体26のストッパ部26Aに当接し、これにより、第1のピストン4のストロークエンドが初期位置(待機位置)として規制されるものである。また、この初期位置に停止した第1のピストン4は、後述の戻しばね14等を介して第2のピストン5を初期位置に待機させるものである。
また、第1のピストン4のばね収容穴4B内には、後述する第1の戻しばね14の一側が配置され、戻しばね14の端部は、ばね収容穴4Bの奥所側に取付けられている。また、ばね収容穴4Bは、後述する第1の液圧室11Aの一部を形成し、後述の各通路孔7は、ばね収容穴4Bに対して径方向に開口するものである。
5は第1のピストン4よりもシリンダ2の奥所側に位置してシリンダ孔2C内に摺動可能に設けられたセカンダリピストン(以下、第2のピストン5という)を示している。そして、該第2のピストン5は、第1のピストン4に対しシリンダ孔2Cの軸方向に離間して配置され、第1,第2のピストン4,5間には、後述する第1の戻しばね14が配設されている。
ここで、第2のピストン5は、有蓋筒状に形成され、第1のピストン4と軸方向で対向する一側が蓋部5Aとなって閉塞されている。また、第2のピストン5には、他側に開口するばね収容穴5Bが形成され、該ばね収容穴5B内には、後述する第2の戻しばね19の一側が配置されている。また、ばね収容穴5Bは、後述する第2の液圧室11Bの一部を形成し、後述の各通路孔8は、ばね収容穴5Bに対して径方向に開口するものである。
6は第1,第2のピストン4,5と共にシリンダ孔2C内に摺動可能に設けられた第3のピストンで、該第3のピストン6は、第1,第2のピストン4,5よりもシリンダ2の奥所側に位置してシリンダ孔2C内に配置され、第2,第3のピストン5,6間には、後述する第2の戻しばね19が配設されている。
ここで、第3のピストン6は、第2のピストン5とほぼ同様に有蓋筒状体として形成されている。そして、第3のピストン6は、シリンダ2の底部2Bとの間に後述の大気圧室13を画成し、両者の間には、後述する第3の戻しばね24が配置されている。また、第3のピストン6は、車両のブレーキ操作により図3に示す初期位置からシリンダ2の底部2Bに当接するまでの全ストローク長La が、第1,第2のピストン4,5による第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 よりも大なる長さ(ストローク)に設定されるものである。
7は第1のピストン4に設けられた第1の通路孔で、該第1の通路孔7は、第1のピストン4に径方向の孔加工を施すことにより形成され、ピストン4の周方向に離間して複数個(例えば、2〜8個程度)設けられている。そして、これらの通路孔7は、第1のピストン4が図2、図3に示すように初期位置にあるときに、後述するシール部材18よりもシリンダ2の開口端側に位置し、シリンダ2のサプライポート2Fを後述する第1の液圧室11Aに連通させる。これにより、第1の液圧室11Aとリザーバ3との間では、各通路孔7を通じてブレーキ液の給排が行われるものである。
8は第2のピストン5に設けられた第2の通路孔で、該第2の通路孔8は、第2のピストン5に径方向の孔加工を施すことにより形成され、ピストン5の周方向に離間して複数個(例えば、2〜8個程度)設けられている。そして、これらの通路孔8は、第2のピストン5が図2、図3に示す初期位置にあるときに、後述するシール部材23よりもシリンダ2の開口端側に位置し、シリンダ2のサプライポート2Gを後述する第2の液圧室11Bに連通させる。これにより、第2の液圧室11Bとリザーバ3との間では、各通路孔8を通じてブレーキ液の給排が行われるものである。
9は第1のピストン4を軸方向に押動するプッシュロッドで、該プッシュロッド9は、その一側(基端側)が図1に示すように後述のブレーキペダル10に連結され、他側(先端側)は図2、図3に示す如くピストン4のロッド取付部4Aに抜止め状態で取付けられている。
10は車両のブレーキ操作時に運転者等が踏込み操作するブレーキペダルで、該ブレーキペダル10は、プッシュロッド9を介して第1のピストン4に直結するように連結され、第1のピストン4をシリンダ孔2C内へと軸方向(図1中の矢示A方向)に押込むように踏込み操作するものである。そして、ブレーキペダル10には、後述のブレーキ反力(ペダル反力)が第1のピストン4、プッシュロッド9を通じて伝達されるものである。
11Aは第1,第2のピストン4,5間でシリンダ孔2C内に画成された第1の液圧室、11Bは第2,第3のピストン5,6間でシリンダ孔2C内に画成された第2の液圧室を示している。ここで、該第1,第2の液圧室11A,11B内には、シリンダ孔2C内でピストン4,5が軸方向へと変位するに応じて液圧が発生する。そして、第1,第2の液圧室11A,11Bには、シリンダ2に設けた第1,第2の配管ポート12A,12Bを介して後述のブレーキ配管39A,39Bが接続されるものである。
また、第1,第2の液圧室11A,11Bは、第1,第2のピストン4,5がシリンダ孔2C内を矢示A,B方向に摺動変位するときに、ピストン4,5の通路孔7,8によりシリンダ2のサプライポート2F,2Gに対して連通,遮断される。そして、第1,第2のピストン4,5が図2、図3に示す初期位置に戻ったときには、第1,第2の液圧室11A,11Bが第1,第2のピストン4,5の通路孔7,8、シリンダ2のサプライポート2F,2Gを介してリザーバ3内と連通した状態に保持されるものである。
一方、ブレーキペダル10の踏込み操作により第1,第2のピストン4,5が共に図2中の矢示A方向に押動されると、ピストン4,5の通路孔7,8は、後述のシール部材18,23を越える位置、即ちシール部材18,23よりもシリンダ2の底部側となる位置までシリンダ孔2C内を矢示A方向に摺動変位し、これにより液圧室11A,11Bは、サプライポート2F,2G(リザーバ3内)から遮断されるものである。
13はシリンダ2の底部2Bと第3のピストン6との間でシリンダ孔2C内に画成された大気圧室で、該大気圧室13は、シリンダ2の底部2Bに穿設した呼吸孔2Hを介して大気に常時連通している。大気圧室13は、後述のシール部材25により第2の液圧室11Bと常時隔絶されている。このため、大気圧室13は、図3〜図6に示すいずれの状態でも常に大気圧に保持され、内部に負圧が発生することはないものである。なお、呼吸孔2Hは大気に連通しているが、大気圧室13が常時大気圧となればよいので、リザーバ3に連通させる構成としてもよい。
14は第1のピストン4と第2のピストン5との間に配設された第1の戻しばねで、該第1の戻しばね14は、後述のリテーナ部材15とストッパ部材16を介して第1のピストン4のばね収容穴4Bと第2のピストン5の蓋部5Aとの間に、予め決められたセット荷重F1 (初期撓み)をもって配設されている。
そして、第1の戻しばね14は、後述する第2,第3の戻しばね19,24と共に第1のピストン4を矢示B方向に常時付勢し、ブレーキペダル10の踏込み操作が解除されたときには、第1のピストン4を図2、図3に示す初期位置(ストロークエンド)に戻すものである。この場合、第1の戻しばね14は、そのセット荷重F1 が後述する第2,第3の戻しばね19,24に対して、下記の数1式による関係に設定されている。
15は第1の戻しばね14のばね長制限部材をストッパ部材16と共に構成するリテーナ部材で、該リテーナ部材15は、図3〜図6に示すように段付筒状体として形成され、その内周側には棒状のストッパ部材16が摺動可能に挿嵌されている。そして、リテーナ部材15は、第1のピストン4のばね収容穴4B(第1の液圧室11A)内に配置され、ストッパ部材16との間で第1の戻しばね14を軸方向に縮小,伸長可能に保持するものである。
ここで、リテーナ部材15の一側端部には、径方向外向きに突出するばね受15Aが設けられ、このばね受15Aは、ストッパ部材16側のばね受16Aとの間で第1の戻しばね14を縮装状態に保つものである。また、リテーナ部材15の他側端部は、ストッパ部材16が摺動可能に挿嵌された環状蓋部15Bとなり、該環状蓋部15Bには、ストッパ部材16の一側端部が当接する。
これにより、リテーナ部材15とストッパ部材16とは、第1の戻しばね14がこれ以上に伸長するのを制限(規制)し、第1の戻しばね14が最大伸長するときのばね長さを、図3〜図5に示すように予め決められた所定長Ls1に設定する。即ち、第1の戻しばね14は、リテーナ部材15とストッパ部材16とによりばね長さが所定長Ls1の範囲内に規制されるものである。
そして、車両の運転者がブレーキの踏込み操作を続け、第1のピストン4が図6に示す位置までシリンダ孔2Cを矢示A方向に摺動変位したときには、ストッパ部材16が第1の戻しばね14に抗してリテーナ部材15内を軸方向に相対変位し、このときには第1の戻しばね14が、所定長Ls1よりも圧縮されるように弾性的に撓み変形されるものである。
一方、ブレーキ操作を解除したときには、第1の戻しばね14が所定長Ls1のばね長さに復帰する。そして、この状態では、第1,第2のピストン4,5の間隔が、図3〜図5に示す如く第1の戻しばね14による所定長Ls1の長さで決められる一定の間隔に再び保持されるものである。
17,18は第1のピストン4とシリンダ孔2Cとの間をシールする第1のシール部材で、該第1のシール部材17,18は、例えば環状のリップシール等を用いて構成されている。そして、第1のシール部材17,18は、第1のサプライポート2Fの前,後に離間してシリンダ2の内周側(シール溝内)にそれぞれ装着されている。この場合、シリンダ2の開口端2A寄りに位置するシール部材17は、第1のピストン4の外周面に摺接することによりシリンダ孔2C内のブレーキ液が外部に漏洩するのを防ぐものである。
また、シール部材18は、第1のサプライポート2Fよりもシリンダ孔2Cの奥所側でピストン4の外周面に摺接する。そして、シール部材18は、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って第1の液圧室11A内に発生する液圧が、例えば第1のサプライポート2F側に漏洩(逆流)するのを防ぎ、第1の液圧室11A内を比較的高い液圧状態に保つものである。
ここで、シール部材18は、図3に示す如く第1のピストン4による無効ストロークL1 (例えば、L1 =1〜3mm)を第1の通路孔7との間で設定する。即ち、第1のピストン4は、ブレーキ操作により図3に示す初期位置から無効ストロークL1 分だけ矢示A方向に変位したときに、第1の通路孔7がシール部材18の位置に達し(図4参照)、第1の液圧室11Aは、第1のサプライポート2F、リザーバ3(図2参照)に対して遮断されるものである。
19は第2のピストン5を初期位置に向けて付勢する第2の戻しばねで、該第2の戻しばね19は、後述のリテーナ部材20とストッパ部材21を介して第2のピストン5のばね収容穴5Bと第3のピストン6との間に、予め決められたセット荷重F2 (初期撓み)をもって配設されている。
この場合、第2の戻しばね19によるセット荷重F2 は、下記の数1式にも示すように、第1の戻しばね14によるセット荷重F1 よりも小さく(F2 <F1 )、後述する第3の戻しばね24によるセット荷重F3 よりも大きい(F2 >F3 )関係に設定されるものである。
そして、第2の戻しばね19は、後述する第3の戻しばね24と共に第2のピストン5を常時矢示B方向に付勢し、ブレーキペダル10の踏込み操作が解除されたときには、第2のピストン5を図2、図3に示す初期位置(ストロークエンド)に戻す。なお、このときの付勢力(戻し力)は、後述の如く第3の戻しばね24によって実質的に発生するものである。
20は第2の戻しばね19のばね長制限部材をストッパ部材21と共に構成するリテーナ部材で、該リテーナ部材20は、図3〜図6に示すように段付筒状体として形成され、その内周側には棒状のストッパ部材21が摺動可能に挿嵌されている。そして、リテーナ部材20は、第2のピストン5のばね収容穴5B(第2の液圧室11B)内に配置され、ストッパ部材21との間で第2の戻しばね19を軸方向に縮小,伸長可能に保持するものである。
ここで、リテーナ部材20の一側端部には、径方向外向きに突出するばね受部20Aが設けられ、該ばね受部20Aは、ストッパ部材21側のばね受部21Aとの間で第2の戻しばね19を縮装状態に保つものである。また、リテーナ部材20の他側端部は、ストッパ部材21が摺動可能に挿嵌された環状蓋部20Bとなり、該環状蓋部20Bには、BBWシステムの正常動作時に図3〜図6に示す如く、ストッパ部材21の一側端部が当接し続ける。
これにより、ストッパ部材21は、第2の戻しばね19がこれ以上に伸長するのをリテーナ部材20と共に制限(規制)し、戻しばね19が最大伸長するときのばね長さを、図3〜図6に示す如く予め決められた所定長Ls2に設定する。即ち、第2の戻しばね19は、システムの正常動作時に実質的に圧縮変形されることはなく、リテーナ部材20とストッパ部材21によりばね長さが所定長Ls2に規制された状態に保持されるものである。
なお、BBWシステムの失陥時等に、後述の如くフェイルセーフ弁40A,40Bが開弁されると、第2の液圧室11Bは、その容積がブレーキ操作に応じて変わり、このときの液圧変化を後述のホイールシリンダ38Bに伝える。このため、第2の戻しばね19は、このような場合に弾性的に圧縮変形され、所定長Ls2以下のばね長さに撓むことになる。
即ち、第2の液圧室11Bが後述のフェイルセーフ弁40Bを介してホイールシリンダ38Bに連通される場合には、車両のブレーキ操作に応じて第2のピストン5が戻しばね19に抗して矢示A方向に押圧される。そして、このような場合に、第2の戻しばね19は、ストッパ部材21が筒状のリテーナ部材20内を軸方向に相対変位するのを許し、両者のばね受部20A,21A間で所定長Ls2以下のばね長さに圧縮変形されるものである。
22,23は第2のピストン5とシリンダ孔2Cとの間をシールする第2のシール部材で、該第2のシール部材22,23は、例えば環状のリップシール等を用いて構成されている。そして、第2のシール部材22,23は、第2のサプライポート2Gの前,後に離間してシリンダ2の内周側(シール溝内)にそれぞれ装着されている。
この場合、第1の液圧室11A寄りに位置するシール部材22は、第2のピストン5の外周面に摺接することにより第1の液圧室11Aをリザーバ3側に対してシールし、第1の液圧室11A内のブレーキ液が第2のサプライポート2G側に漏洩するのを防ぐものである。
また、第2の液圧室11B側に位置するシール部材23は、ピストン5の外周面に摺接することにより、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って第2の液圧室11B内に液圧が発生するのを補償し、このときの液圧が、例えば第2のサプライポート2G側に漏洩(逆流)するのを防ぐものである。
ここで、シール部材23は、第3のピストン6による無効ストロークL2 (例えば、L2 =1〜3mm)を第2の通路孔8との間で図3に示す如く設定する。即ち、第3のピストン6は、ブレーキ操作により図3に示す初期位置から無効ストロークL2 分だけ矢示A方向に変位したときに、第2の通路孔8が図4に示す如くシール部材23の位置に達し、第2の液圧室11Bが第2のサプライポート2G(図2に示すリザーバ3)に対して遮断される。
24は第3のピストン6を初期位置に向けて付勢する第3の戻しばねで、該第3の戻しばね24は、シリンダ2の底部2Bと第3のピストン6との間に配設されている。そして、第3の戻しばね24は、第3のピストン6を矢示B方向に付勢し、ブレーキペダル10の踏込み操作を解除したときには、第3のピストン6を図2、図3に示す初期位置に戻すものである。
ここで、第3の戻しばね24は、そのセット荷重F3 が数1式の関係を満たすように、第1,第2の戻しばね14,19によるセット荷重F1 ,F2 よりも小さく設定されている。そして、第3のピストン6が図5に示すようにシリンダ2の底部2Bに当接するまで、数1式の関係は維持されるものである。
25はシリンダ孔2Cの奥所側で第3のピストン6とシリンダ孔2Cとの間をシールする第3のシール部材で、該第3のシール部材25は、例えば第3のピストン6の外周側(シール溝内)に装着され、シリンダ孔2Cの内周面に摺接するものである。これにより、シール部材25は、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って第2の液圧室11B内に液圧が発生するのを補償し、このときの液圧が大気圧室13側に漏洩するのを防ぐものである。
26はシリンダ2の開口端2A側に設けられた筒状のカバー体で、該カバー体26は、図2に示すように段付きの筒状体として形成され、シリンダ2の開口端2A側にナット27を用いて抜止め状態で固定されている。そして、カバー体26は、軸方向一側(後述のストッパ部26A側)がシリンダ2の開口端2Aから軸方向に突出し、カバー体26の内周側には、第1のピストン4が変位可能に挿入されている。
また、カバー体26の突出端側(軸方向一側)には、第1のピストン4を図2、図3に示す初期位置に停止させ、ピストン4のストロークエンドを規制する環状のストッパ部26Aと、該ストッパ部26Aの内周側に位置しプッシュロッド9が挿通されるロッド挿通穴26Bとが設けられている。
28は合成ゴム等の弾性材料により蛇腹状をなす筒状体として形成された保護ブーツで、該保護ブーツ28は、図2に示すように一側がプッシュロッド9の外周側に締代をもって取付けられ、他側はカバー体26の突出端側に抜止め状態で取付けられている。そして、保護ブーツ28は、プッシュロッド9を径方向外側から覆い、外部からの異物(例えば、雨水、ダスト等)がブーツ内に侵入するのを防ぐものである。
29はシリンダ2の長さ方向中間部に設けられた通液路で、該通液路29は、図2に示す如くシリンダ孔2Cから径方向外側へと斜めに傾斜して延びる細長い通路として形成されている。そして、通液路29は、シリンダ2内に画成した第1の液圧室11Aを、後述するシミュレータケース31内の蓄圧室34に連通させるものである。
30は本実施の形態で採用したストロークシミュレータで、該ストロークシミュレータ30は、後述のシミュレータケース31、蓋体32、段付ピストン33およびスプリング36等により構成されている。そして、ストロークシミュレータ30は、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って第1の液圧室11A内のブレーキ液を後述の蓄圧室34内に流入させ、このときに発生する圧力に従ってブレーキペダル10側にブレーキ反力を生じさせるものである。
31はシリンダ2に一体形成されたシミュレータケースで、該シミュレータケース31は、図2に示す如くシリンダ2のシリンダ孔2Cと平行に延びる筒状体として形成され、後述の蓋体32と共にストロークシミュレータ30の外殻を構成するものである。そして、シミュレータケース31内には、その一側(蓋体32側)が開口端31Aとなり、他側が後述の通液路29に連通されるピストン摺動穴31Bが、シリンダ孔2Cと平行に延びる有底穴として形成されている。
32はシミュレータケース31の開口端31A側を閉塞する蓋体で、該蓋体32は、図2に示す如くシミュレータケース31の開口端31A側に螺着して取付けられている。そして、蓋体32は、後述する段付ピストン33との間で、シミュレータケース31のピストン摺動穴31B内にばね室35を形成するものである。
33はストロークシミュレータ30の可動隔壁を構成する段付ピストンで、該該段付ピストン33は、シミュレータケース31のピストン摺動穴31B内に摺動可能に挿嵌され、シミュレータケース31内を蓄圧室34とばね室35とに画成している。そして、シミュレータケース31内の蓄圧室34は、シリンダ2内の第1の液圧室11Aに通液路29を介して連通している。
36はシミュレータケース31のばね室35内に配設された付勢部材としてのスプリングで、該スプリング36は、蓋体32と段付ピストン33との間に初期荷重(初期撓み)が付与された状態で設けられている。そして、スプリング36は、段付ピストン33を常に蓄圧室34側に向けて付勢するものである。
ここで、ストロークシミュレータ30の作動時には、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って第1の液圧室11A内のブレーキ液が通液路29を介して蓄圧室34内に導入される。そして、第1の液圧室11Aおよび蓄圧室34内の液圧が上昇すると、スプリング36は撓み変形し、シミュレータケース31内の段付ピストン33が図2中の矢示C方向に摺動変位するのを許しつつ、蓄圧室34内に液圧を蓄圧させるものである。
37は蓋体32に設けられたバンプラバーを示し、該バンプラバー37は、例えば合成ゴム等の弾性材料を用いて形成され、段付ピストン33の一側(先端)が蓋体32に強く衝突するのを防ぐものである。即ち、段付ピストン33が図2中の矢示C方向に大きく変位したときには、段付ピストン33の先端がバンプラバー37に弾性的に当接することにより、このときのストロークエンドがバンプラバー37で規制されるものである。
このため、第1の液圧室11Aおよび蓄圧室34内の圧力は、スプリング36の撓み変形により変化すると共に、バンプラバー37の弾性変形によっても変化する。そして、このときに発生する第1の液圧室11Aおよび蓄圧室34内の圧力がブレーキ反力となって、シリンダ2内の第1の液圧室11Aから第1のピストン4を介してブレーキペダル10に伝達され、例えば2段階のペダル反力を生じさせるものである。
次に、38A,38Bは図1に示す如く車両の車輪側に設けられる第1,第2のホイールシリンダで、該ホイールシリンダ38A,38Bは、例えばドラムブレーキまたはディスクブレーキ等のシリンダ部を構成している。そして、ホイールシリンダ38A,38Bは、図1に示す第1,第2のブレーキ配管39A,39Bを介してブレーキ液圧が給排されることにより、車両に制動力を付与するものである。
40A,40Bはブレーキ配管39A,39Bの途中に設けられた第1,第2のフェイルセーフ弁で、該フェイルセーフ弁40A,40Bは、後述するコントロールユニット46からの制御信号により開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられる。即ち、フェイルセーフ弁40A,40Bは、システムの正常動作時に開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられ、システムの失陥時等には開弁位置(a)に復帰するものである。
41A,41Bはホイールシリンダ38A,38Bに液圧を供給するための液圧源を構成する第1,第2の液圧ユニットで、これらの液圧ユニット41A,41Bは、ホイールシリンダ38A,38B、フェイルセーフ弁40A,40B間に位置するブレーキ配管39A,39Bの途中部位とリザーバ3の管路3Cとの間に配設されている。
そして、第1の液圧ユニット41Aは、図1に示す如くリザーバ3に管路3Cを介して接続された液圧ポンプ42Aと、該液圧ポンプ42Aの吐出側にチェック弁43Aを介して接続された常開の電磁弁からなるブレーキ液圧の供給弁44Aと、管路3C側に接続された常閉の電磁弁からなるブレーキ液圧の排出弁45A等とにより構成されるものである。
また、第2の液圧ユニット41Bについても同様に、リザーバ3に管路3Cを介して接続され液圧源を構成する液圧ポンプ42Bと、該液圧ポンプ42Bの吐出側にチェック弁43Bを介して接続された常開の供給弁44B、常閉の排出弁45B等とにより構成されるものである。
46はBBWシステムの制御装置を構成するコントロールユニットで、該コントロールユニット46は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、その入力側は、ブレーキペダル10の操作検出器(以下、ペダルセンサ47という)とホイールシリンダ38A,38B側の圧力センサ48A,48B等とに接続されている。
この場合、ペダルセンサ47は、ブレーキペダル10を踏込み操作したときのストロークまたは踏力を検出するものである。また、圧力センサ48A,48Bは、ホイールシリンダ38A,38Bに供給されるブレーキ液圧を検出する。そして、コントロールユニット46は、ペダルセンサ47、圧力センサ48A,48Bからの検出信号に従ってBBWシステムが正常に動作しているか否かを判別すると共に、後述の如くブレーキ液圧の制御等を行うものである。
また、コントロールユニット46は、出力側がフェイルセーフ弁40A,40Bおよび液圧ユニット41A,41B等に接続されている。そして、コントロールユニット46は、システムの正常動作時にフェイルセーフ弁40A,40Bを閉弁位置(b)に切換えると共に、液圧ユニット41A,41Bに給電を行って液圧ポンプ42A,42Bを作動させ、ホイールシリンダ38A,38Bのブレーキ液圧を増圧、保持または減圧するために供給弁44A,44B、排出弁45A,45Bを選択的に開,閉弁させるものである。
本実施の形態によるタンデム型のマスタシリンダ装置1を用いたBBWシステムは、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、BBWシステムが正常に動作する本来の状態では、コントロールユニット46からの制御信号により常開のフェイルセーフ弁40A,40Bが図1に示す開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられる。
このため、シリンダ2内に画成された第1,第2の液圧室11A,11Bは、ホイールシリンダ38A,38Bに対して遮断された状態となる。また、第1の液圧室11Aは、ストロークシミュレータ30の蓄圧室34に通液路29を介して連通している。
そして、この状態で、車両の制動時にブレーキペダル10が踏込み操作されると、シリンダ孔2C内で第1,第2,第3のピストン4,5,6が図1、図2中の矢示A方向にそれぞれ押動される。このとき、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24は、前述した数1式の関係にあるため、第3のピストン6がシリンダ2の底部2Bに当接するまでは、図3〜図5に示すように第3の戻しばね24だけが弾性的に撓み変形し、第1,第2の戻しばね14,19が撓み変形することはない。
この場合、第1,第2,第3のピストン4,5,6が図3に示す初期位置から図4に示す位置まで矢示A方向に押動されると、第3のピストン6がシリンダ2の底部2Bに対して寸法Lb (例えば、Lb =La −L1 )の位置に達する。そして、第1,第2のピストン4,5による第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 (図3参照)が、この段階で解消されると、第1,第2の液圧室11A,11Bは、第1,第2のサプライポート2F,2Gに対して遮断されることにより、液圧が発生可能な状態となる。
しかし、第3のピストン6が図5に示すようにシリンダ2の底部2Bに当接するまでは、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24(セット荷重F1 ,F2 ,F3 )は、前述した数1式の関係により第3の戻しばね24だけが撓み変形し、第1,第2の液圧室11A,11Bは、その容積が変わることはない。
また、BBWシステムの正常動作時には、第1,第2の液圧室11A,11Bが第1,第2のフェイルセーフ弁40A,40Bにより第1,第2のホイールシリンダ38A,38Bに対して遮断されている。
このため、第2のピストン5は、図3に示す通路孔8がシリンダ2のサプライポート2Gからシール部材23を介して遮断された段階(図4参照)で液圧ロック状態となり、第2の液圧室11Bは、その容積が一定に保持される。そして、液圧室11B内の容積は、図4〜図6に示すようにブレーキ操作を続ける間にわたり一定に保持される。
一方、第1の液圧室11Aは、通液路29を介してストロークシミュレータ30の蓄圧室34に連通されている。このため、第1のピストン4が図3に示す無効ストロークL1 を越える変位量で矢示A方向に摺動変位し、第1の通路孔7が図4、図5に示す如くシール部材18の位置を通過し、即ち第1の液圧室11Aが第1のサプライポート2Fに対して遮断された後に、第3のピストン6がシリンダ2の底部2Bに当接した段階(図5参照)で、第1の液圧室11A内には液圧が発生する。
そして、第1の液圧室11A内では、第1のピストン4が図5〜図6に示すように矢示A方向に摺動変位するに従って容積が減少し、第1の液圧室11A内のブレーキ液は、通液路29側からストロークシミュレータ30のシミュレータケース31(蓄圧室34)内に流入する。
このとき、ストロークシミュレータ30は、ばね室35内のスプリング36が撓み変形するに伴って、シミュレータケース31のピストン摺動穴31B内で段付ピストン33が摺動変位し、蓄圧室34内で液圧が発生する。そして、この蓄圧室34内の圧力はブレーキ反力となって、シリンダ2内の第1の液圧室11Aから第3のピストン6、第2の戻しばね19、第1のピストン4を介してブレーキペダル10に伝えられる。
このように、第1のピストン4が矢示A方向に摺動変位するに従って第1の液圧室11Aおよび蓄圧室34内の圧力が上昇するので、これに従って、ばね室35内ではスプリング36が漸次撓み変形し、これに伴ってブレーキ反力も増大する。さらに、段付ピストン33の先端がバンプラバー37に当接すると、バンプラバー37が弾性変形するので、これによってもブレーキ反力が増大する。
この結果、ブレーキペダル10のペダル反力は、スプリング36とバンプラバー37とによって2段階または複数段階で変化することになり、車両の運転者には良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)、所謂踏み応えを与えることができる。
即ち、車両の運転者に対しては、ブレーキペダル10の踏み初めが軽く、ブレーキペダル10を踏込むに従って徐々に重くなり、ある程度踏込んだ段階でいきなり重さを感じるような踏み応えを与えることができる。これにより、ブレーキペダル10の操作感を向上でき、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。
また、このようなブレーキ操作時には、ブレーキペダル10の踏込み操作をペダルセンサ47で検出することにより、コントロールユニット46から液圧ユニット41A,41Bに制御信号を出力して液圧ポンプ42A,42Bを作動できると共に、供給弁44A,44B、排出弁45A,45Bを選択的に開,閉弁することができる。
このため、車両の制動時等には、ブレーキペダル10の踏込み操作に従って液圧ポンプ42A,42Bからホイールシリンダ38A,38Bに供給するブレーキ液圧を増圧、保持または減圧でき、ブレーキペダル10の踏込み操作に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ38A,38Bに供給できると共に、車両の制動力制御を高精度に行うことができる。
一方、例えば液圧源となる液圧ポンプ42A,42Bが故障したり、コントロールユニット46が故障したりした場合には、前述の如きBBWシステムによる自動的なブレーキ液圧の制御が失効する。そして、このようなシステムの失陥時には、コントロールユニット46からフェイルセーフ弁40A,40Bに制御信号が出力されず、フェイルセーフ弁40A,40Bは図1に示す開弁位置(a)に自動的に復帰する。
これにより、マスタシリンダ装置1は、シリンダ2内の第1,第2の液圧室11A,11Bがブレーキ配管39A,39Bを介してホイールシリンダ38A,38Bに連通した状態となる。
このため、車両の制動時等にブレーキペダル10が踏込み操作されると、シリンダ孔2C内では、第1,第2,第3のピストン4,5,6が共に軸方向に押動され、第3のピストン6が図5に示す如くシリンダ2の底部2Bに当接した段階以降で、第1,第2の液圧室11A,11Bには、ブレーキペダル10の踏込み操作に対応した液圧が発生する。
そして、第1,第2の液圧室11A,11B内に発生した液圧は、ブレーキ配管39A,39Bを介してホイールシリンダ38A,38Bにブレーキ液圧として供給され、この場合でも、ブレーキペダル10の踏込み操作に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ38A,38Bに供給することができる。
ところで、シリンダ2内に設けたシール部材17,18,22,23のうち、第1のピストン4の外周面に摺接するシール部材18と第2のピストン5の外周面に摺接するシール部材23とは、ピストン4,5の摺動変位(矢示A,B方向の変位)に伴って弾性的に撓み変形するばかりでなく、第1,第2の液圧室11A,11B内での液圧変化によっても撓み変形する。
このため、ブレーキペダル10の踏込み操作時と解除時とでは、シール部材18が第1の通路孔7に対して相対的に位置ずれすることがあり、シール部材23についても、第2の通路孔8に対して相対的な位置ずれが生じる。そして、このようなシール部材18,23の位置ずれが原因となって、第1,第2の液圧室11A,11B内には負圧が発生し易くなる。
即ち、ブレーキペダル10の踏込み操作を解除した状態で、第1,第2,第3のピストン4,5,6が戻しばね14,19,24によって図3に示す初期位置へと戻されるときには、前記シール部材18,23の位置ずれと無効ストロークL1 ,L2 との影響により、第1,第2の液圧室11A,11B内が負圧傾向となる可能性がある。特に、第1の液圧室11A内が負圧傾向になると、第1のピストン4の戻り動作が不安定となって、これがブレーキペダル10に直接的に伝えられ、ブレーキのペダルフィーリングが低下する原因になる。
そこで、本実施の形態では、有底筒状のシリンダ2内に設けた第1,第2,第3のピストン4,5,6のうち、第3のピストン6とシリンダ2の底部2Bとの間に、大気(外気)に連通する大気圧室13を画成し、第3のピストン6がブレーキ操作によりシリンダ2の底部2Bに当接するまでの全ストローク長La は、第1,第2のピストン4,5による第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 よりも大なるストロークに設定している。
しかも、第3の戻しばね24は、第1,第2の戻しばね14,19よりも先に撓み変形するように、それぞれのセット荷重F1 ,F2 ,F3 を、例えば数1式の関係(F1 >F2 >F3 )に設定し、第3のピストン6が図5に示す如くシリンダ2の底部2Bに当接するまでは、この関係を維持する構成としている。
このため、車両のブレーキ操作時には、第3の戻しばね24が第1,第2の戻しばね14,19よりも先に撓み変形し、第1,第2のピストン4,5が第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 を越える位置までシリンダ2内を矢示A方向に摺動変位した後に、第3のピストン6がシリンダ2の底部2Bに当接した段階以降において、第1,第2の液圧室11A,11B内は、その容積の変化に伴って液圧が発生可能な状態になる。
この結果、車両のブレーキ操作を解除して第1,第2,第3のピストン4,5,6が初期位置に戻るときに、第1,第2の液圧室11A,11Bは、先に容積が一定の状態、即ち第1,第2の戻しばね14,19が最大伸長した所定長Ls1,Ls2の状態に復帰した後に、第1,第2,第3のピストン4,5,6は、第3の戻しばね24によって初期位置に向け押戻される。
これにより、車両のブレーキ操作を解除して第1,第2,第3のピストン4,5,6が初期位置に戻るときには、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24によるセット荷重F1 ,F2 ,F3 と、第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 、第3のピストン6の全ストローク長La との関係から、第1,第2の液圧室11A,11Bに負圧を発生させることなく、第1,第2のピストン4,5を図2、図3に示す初期位置まで円滑に戻すことができる。
この場合、第1,第2のピストン4,5が第1,第2の無効ストロークL1 ,L2 を解消する位置(図4参照)まで戻った後に、第3のピストン6は、第3の戻しばね24により第1,第2のピストン4,5と一緒に初期位置に向けて押戻されるようになる。しかし、第3のピストン6は、シリンダ2の底部2Bとの間に大気圧室13を画成しているので、この大気圧室13内に負圧が発生することはなく、第3のピストン6も初期位置まで円滑に戻すことができる。
このように、第1,第2,第3のピストン4,5,6によりシリンダ2内に画成された第1,第2の液圧室11A,11B、大気圧室13のいずれにおいても、ブレーキ操作を解除したときに負圧が発生することはなく、第1,第2,第3のピストン4,5,6は、いずれも戻り動作が負圧の影響で遅くなったり、速くなったりするように変化するのを防ぐことができる。
従って、車両のブレーキ操作を解除したときに、第1,第2のピストン4,5を第3のピストン6と同様に初期位置まで円滑に戻すことができ、例えば第1のピストン4に直結されるブレーキペダル10の戻り動作を安定化できると共に、ブレーキペダル10の引っ掛り感等の発生を抑えることができ、ブレーキのペダルフィーリングを向上することができる。
また、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24によるセット荷重F1 ,F2 ,F3 を、数1式の関係を満たすように設定することにより、例えばブレーキ操作を解除したときには、第1の戻しばね14が最初に第1のピストン4を戻り方向に付勢し、その後に第2の戻しばね19が第2のピストン5を戻り方向に付勢し、最後に第3の戻しばね24が第3のピストン6を戻り方向に付勢するように、それぞれの戻り動作を安定させることができる。
また、第1の戻しばね14には、リテーナ部材15とストッパ部材16とをばね長制限部材として設け、第1の戻しばね14が最大伸長するときのばね長さを所定長Ls1に制限する構成としている。また、第2の戻しばね19についても、リテーナ部材20とストッパ部材21とをばね長制限部材として設け、第2の戻しばね19が最大伸長するときのばね長さを所定長Ls2に制限する構成としている。
このため、車両のブレーキ操作時には、少なくとも第3の戻しばね24を第1,第2の戻しばね14,19よりも先に撓み変形させ、第3のピストン6がシリンダ2の底部2Bに当接するまでは、第1,第2の戻しばね14,19を図3〜図5に示す如く所定長Ls1,Ls2のばね長さに保持しておくことができる。
そして、ブレーキ操作を解除したときにも、第1,第2の戻しばね14,19をそれぞれ所定長Ls1,Ls2のばね長さに保持した状態で、第1,第2のピストン4,5が無効ストロークL1 ,L2 (図3参照)を解消する位置まで戻る設定とすることにより、第1の液圧室11A,11B内が負圧状態となるのを防ぎ、ブレーキペダル10の戻り動作を安定させることができる。
また、ストロークシミュレータ30のシミュレータケース31をシリンダ2に一体形成する構成とすることにより、ストロークシミュレータ30を付設したマスタシリンダ装置1の構造を簡素化することができ、装置の製造、組立て時にわたる作業性を向上することができる。
なお、前記実施の形態では、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24によるセット荷重F1 ,F2 ,F3 を、数1式の関係を満たすように設定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば下記の数2または数3に示す関係にセット荷重F1 ,F2 ,F3 を設定してもよいものである。
一方、前記実施の形態では、リテーナ部材15とストッパ部材16を用いて、第1の戻しばね14が最大伸長するときのばね長さを所定長Ls1に制限する構成とした。また、第2の戻しばね19についてもリテーナ部材20とストッパ部材21を用いて、最大伸長するときのばね長さを所定長Ls2に制限する構成とした場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前記数1、数2または数3式の関係を満たすように、第1,第2,第3の戻しばね14,19,24によるセット荷重F1 ,F2 ,F3 を設定できればよいもので、第1,第2の戻しばねには、リテーナ部材、ストッパ部材等からなるばね長制限部材を必ずしも設ける必要はないものである。
また、前記実施の形態では、ストロークシミュレータ30のシミュレータケース31をシリンダ2に一体形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばストロークシミュレータのシミュレータケース等をシリンダとは別体に形成し、両者の間を可撓性ホース等の配管で接続する構成としてもよいものである。
さらに、前記実施の形態では、ストロークシミュレータ30を備えたタンデム型のマスタシリンダ装置1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばBBWシステム等を用いていない、ストロークシミュレータが不要な通常のタンデム型マスタシリンダ装置に適用してもよいものである。