図1は、本発明の実施の一形態の薄膜バルク音響波共振子20の構造を模式的に示す平面図であり、図2は図1の切断面線II−IIから見た断面図であり、図3は図1の切断面線III−IIIから見た断面図である。なお、図1〜図3の各図では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子20の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図1では、図解を容易にするために導体パターン膜27に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
薄膜バルク音響波共振子20は、基板21と、第1音響反射部材22と、共振子本体23と、接続電極24と、第2音響反射部材25と、絶縁部材26と、インピーダンス調整用の導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。
基板21は、薄膜バルク音響波共振子20のベース部材である。基板21上に、第1音響反射部材22、共振子本体23、接続電極24、第2音響反射部材25、絶縁部材26、導体パターン膜27および層間接続部材28が形成される。基板21は、厚みが0.05mm〜1mm程度に選ばれる。本実施の形態では、基板21は、直方体形状を有する。基板21は、Si(シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、SiO2(酸化シリコン)およびガラスなどによって形成され、電気絶縁性を有する。基板21の長手方向をX方向とし、短手方向をY方向とし、厚み方向をZ方向とする。前記長手方向、短手方向および厚みは、互いに直交する。前記長手方向および短手方向は、基板21の一表面21aの各辺に平行または垂直に延びる。
第1音響反射部材22は、音響多層膜反射器を構成する。第1音響反射部材22は、基板21の厚み方向の一表面21aに積層される。第1音響反射部材22は、n×λ/4(記号nは正の奇数、記号λは層を伝播する音響波の波長)の厚みを持つ2種類の膜を、交互に複数層積層して構成される。本実施の形態では、前記nは、1に選ばれる。
第1音響反射部材22は、第1および第2音響反射部材構成膜32,33を積層して構成され、音響波を反射する。第1および第2音響反射部材構成膜32,33の音響インピーダンスの相違が大きいほど、良好な反射特性を得ることができ、音響波の反射率を高めることができる。第1および第2音響反射部材構成膜32,33の音響インピーダンスの比率は、好ましくは、5:1程度に選ばれる。第1音響反射部材構成膜32は、高い固有音響インピーダンスを有し、たとえばWおよびMoなどの金属材料、またはAl2O3、ZnOおよびAlNなどの無機材料を用いて形成される。第2音響反射部材構成膜33は、低い固有音響インピーダンスを有し、SiO2などの無機材料、またはBCB(ベンゾシクロブテン)およびポリイミドなどの有機材料を用いて形成される。第1および第2音響反射部材構成膜32,33の積層数は、2層〜8層程度に選ばれ、本実施の形態では、4層に選ばれる。
第1音響反射部材22のうち、基板21からこの基板21の厚み方向Zに最も離反した表層には、第2音響反射部材構成膜33が形成される。第2音響反射部材構成膜33は、電気絶縁性を有するので、第1音響反射部材22の厚み方向Zの一表面22a上に積層して共振子本体23が形成される。第1音響反射部材22を構成する第1および第2音響反射部材構成膜32,33の積層数をどの様に選んだとしても、第1音響反射部材22のうち、共振子本体23の後述する共振部40に接触する部分は、低い音響固有インピーダンスを有する第2音響反射部材構成膜33によって形成される。このように第1音響反射部材22を構成することによって、共振子本体23の共振部40を音響的に絶縁することができる。
共振子本体23は、音響反射部材22の厚み方向の一表面22a上に設けられる。共振子本体23は、圧電体薄膜35と、圧電体薄膜35の厚み方向の一表面35a上に少なくとも一部が積層される第1電極36と、圧電体薄膜35の厚み方向の他表面35b上に少なくとも一部が積層される第2電極37とを含んで構成される。圧電体薄膜35と、第1電極36と、第2電極37とがZ方向に重なる部分が、共振部40を形成する。圧電体薄膜35の厚み方向は、前記Z方向である。圧電体薄膜35と第1および第2電極36,37とがZ方向に積層される部分が、共振部40を形成する。
第2電極37は、第1音響反射部材22の厚み方向の一表面22a上に形成される。第2電極37は、第1音響反射部材22の厚み方向の一表面22aで、第1音響反射部材22のX方向の一端部41からX方向の中央42にわたって設けられ、本実施の形態では、第1音響反射部材22の一表面22aの周縁43に離間して設けられる。また本実施の形態では、第2電極37はZ方向から見て矩形状に形成され、その周縁は、X方向またはY方向に平行に延びる。
第2電極37は、圧電体薄膜35に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W、Mo、Au、AlおよびCuなどの金属材料を用いて形成される。第2電極37は、スパッタおよびCVD(Chemical Vapor Deposition)などの薄膜形成プロセスによって、第1音響反射部材22の一表面22a上に所定の厚さで第2電極37の前駆体である金属層を積層し、この金属層をフォトリソグラフィ技術によって所定の形状に加工して形成される。また第2電極37は、電極としての機能と同時に、共振部40を構成する機能も有するので、薄膜バルク音響波共振子20が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、第2電極37を形成する材料の固有音響インピーダンスおよび密度、第2電極37を伝播する音響波の音速および波長などを考慮して、精密に選ぶ必要がある。第2電極37の最適な厚みは、薄膜バルク音響波共振子20を用いて構成される電子回路で使用する信号の周波数、共振子本体23の設計寸法、圧電体薄膜材料、電極材料を用いて異なるが、0.01μm〜0.5μm程度に選ばれる。
また第2電極37のX方向の一端部37Aは後述する絶縁部材26から露出し、外部接続端子として機能する。
圧電体薄膜35は、少なくとも一部が第2電極37の厚み方向の一表面37a上に形成される。本実施の形態では圧電体薄膜35は、第2電極37の厚み方向の一表面37a上と第1音響波反射層22の厚み方向の一表面22a上とにわたって形成される。本実施の形態では、圧電体薄膜35は、Z方向から見て矩形状に形成され、X方向およびY方向における中央部に形成される。圧電体薄膜35のY方向の長さL1は、第2電極37の短手方向Yの長さL2よりも短く選ばれ、圧電体薄膜35のY方向の中央と、第2電極37のY方向の中央とは、Y方向に垂直で同一の仮想一平面上に設けられる。
圧電体薄膜35は、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)およびPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電体材料から成り、第1電極36および第2電極37によって印加される高周波電圧に応じて伸縮し、電気的な信号を機械的な振動に変換する機能を有する。圧電体薄膜35はスパッタおよびCVDなどの薄膜形成プロセスによって、第2電極37の厚み方向の一表面37a上と第1音響波反射層22の厚み方向の一表面22a上に所定の厚さで圧電体薄膜35の前駆体を積層し、この前駆体をフォトリソグラフィ技術によって所定の形状に加工して形成される。
薄膜バルク音響波共振子20が必要な共振特性を発揮するために、圧電体薄膜35の厚みは、圧電体薄膜35を形成する材料の固有音響インピーダンスおよび密度、圧電体薄膜35を伝播する音響波の音速および波長などを考慮して、精密に選ぶ必要がある。圧電体薄膜35の最適な厚みは、薄膜バルク音響波共振子20を用いて構成される電子回路で使用する信号の周波数、共振子本体23の設計寸法、圧電体薄膜材料、電極材料を用いて異なるが、0.3μm〜1.5μm程度に選ばれる。
第1電極36は、少なくとも圧電体薄膜35のうち、第2電極37に積層される部分の厚み方向の一表面35aに積層される。本実施の形態では、圧電体薄膜35の厚み方向の一表面35aと、第1音響波反射層22の厚み方向の一表面22a上とにわたって形成される。本実施の形態では、第1電極36は、Z方向から見て矩形状に形成され、X方向およびY方向における中央部に形成される。第1電極36のY方向の長さL3は、圧電体薄膜35のY方向の長さL1よりも短く選ばれ、第1電極36のY方向の中央と、圧電体薄膜35のY方向の中央とは、Y方向に垂直で同一の仮想一平面上に設けられる。
第1電極36は、第2電極37ともに、圧電体薄膜35に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W、Mo、Au、AlおよびCuなどの金属材料を用いて形成される。第1電極36は、スパッタおよびCVDなどの薄膜形成プロセスによって、圧電体薄膜35の厚み方向の一表面35a上および第1音響反射部材22の一表面22a上に所定の厚さで第1電極36の前駆体である金属層を積層し、この金属層をフォトリソグラフィ技術によって所定の形状に加工して形成される。また第1電極36は、電極としての機能と同時に、共振部40を構成する機能も有するので、薄膜バルク音響波共振子20が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、第1電極36を形成する材料の固有音響インピーダンスおよび密度、第1電極36を伝播する音響波の音速および波長などを考慮して、精密に選ぶ必要がある。第1電極36の最適な厚みは、薄膜バルク音響波共振子20を用いて構成される電子回路で使用する信号の周波数、共振子本体23の設計寸法、圧電体薄膜材料および電極材料によって異なるが、0.01μm〜0.5μm程度に選ばれる。
共振部40のX方向の長さは、第1電極36のY方向の長さと等しく、10μm〜500μm程度に選ばれる。また共振部40のX方向の長さは、Z方向から見て第1電極36のX方向の一端と第2電極37のX方向の他端との間のX方向における長さに等しく、10μm〜500μm程度に選ばれる。本実施の形態では、共振部40は直方体形状となる。
接続電極24は、第1音響波反射層22の厚み方向の一表面22a上に設けられる。接続電極24は、共振部本体23と離間して形成され、第1または第2電極36,37と同じ材料を用いて形成される。接続電極24は、第1音響波反射層22のX方向の他端部44に設けられる。接続電極24は、第1または第2電極36,37を形成するときに、前述した金属層をフォトリソグラフィ技術によって所定の形状に加工して形成される。接続電極24は、薄膜バルク音響波共振子20の外部接続端子として機能する。
第2音響反射部材25は、音響多層膜反射器を構成する。第2音響反射部材25は、共振子本体23のうち、少なくとも共振部40を構成する部分の厚み方向の一表面36a上に積層される。第2音響反射部材25は、第1電極36の厚み方向の一表面36a上に積層される。第2音響反射部材25は、Z方向から見て共振部40の周縁よりも外方まで延びて形成される。第2音響反射部材25は、第1音響反射部材22と同様な構成であり、n×λ/4(記号nは正の奇数、記号λは音響波の波長)の厚みを持つ2種類の膜を交互に複数層積層して構成される。本実施の形態では、nは1に選ばれる。
第2音響反射部材25は、前述した第1および第2音響反射部材構成膜32,33を積層して構成される。第2音響反射部材25を構成する第1および第2音響反射部材構成膜32,33の積層数は、2層〜8層程度に選ばれ、本実施の形態では、2層に選ばれる。第2音響反射部材25を構成する第1および第2音響反射部材構成膜32,33の積層数をどの様に選んだとしても、第2音響反射部材25のうち、前記共振部40に接触する部分は、低い音響固有インピーダンスを有する第2音響反射部材構成膜33によって形成される。したがって本実施の形態では、第2音響反射部材25のうち、基板21から厚み方向Zに最も離反した表層には、第1音響反射部材構成膜32が形成される。
第2音響反射部材25によって、共振部40の振動が絶縁部材26に漏れ出すことを抑制することができ、共振部40を音響的に好適に絶縁することができるとともに、機械的に強固な薄膜バルク音響波共振子20を形成することができる。
絶縁部材26は、共振子本体23のうち第2電極37のX方向の一端部37Aを除く部分と、第2音響反射部材25と、接続電極24のうちX方向の他端部24Bを除く部分とを覆って、共振部本体23、第2音響反射部材25、第1音響反射部材22および接続電極24に積層して設けられる。また絶縁部材26は、第1音響反射部材22の一表面22aにもこの一表面22aの周縁部を除いて積層される。
絶縁部材26は、電気絶縁性を有する材料を用いて形成され、SiO2およびAl2O3などの無機材料、ならびにBCBおよびポリイミドなどの有機材料などから成る。絶縁部材26は、共振部40と、導体パターン膜27とを電気的に絶縁する役割を果たすと同時に、導体パターン膜27によって実現される機能を向上させる目的も持っている。さらに絶縁部材26は、導体パターン膜27を支持する構造材として機能する。絶縁部材26の厚み方向の一表面26aは、平面に形成される。絶縁部材26を形成する材料は、共振部40との電気的干渉を避けるために低誘電率のものが望ましい。
絶縁部材26は、スピンコートおよび真空成膜装置などによって、共振部本体20と、第2音響反射部材25と、接続電極24と、第1音響反射部材22とに積層して、絶縁部材26の前駆体を形成した後、フォトリソグラフィ技術によって所定の形状に加工して形成される。絶縁部材26の厚みは、電気特性および機械特性の観点から精密に設計する必要があるが、1μm〜50μm程度が望ましい。ここで絶縁部材26の厚みとは、第2音響反射部材25に積層される部分の厚みである。
導体パターン膜27は、絶縁部材26の厚み方向、すなわち絶縁部材26のZ方向の一表面26a上に積層して形成される。本実施の形態において導体パターン膜27は、インダクタンス素子を形成する。以後、インダクタンス素子を形成する導体パターン膜27を、インダクタパターン膜27Aという場合がある。導体パターン膜27の少なくとも一部は、Z方向から見て共振部40に重なる位置に形成される。絶縁部材26に導体パターン膜27が積層して設けられるので、導体パターン膜27と共振部40とをZ方向に離間させた状態を保持して、共振部40とこの共振部40と導体パターン膜27との不所望な電気的接触を防止することができる。
インダクタパターン膜27Aの少なくとも一部は、絶縁部材26を挟んで第1電極36および接続電極24に対向する位置に形成される。またインダクタパターン膜27Aは、絶縁部材26のみを挟んで第2電極37および圧電体薄膜35のそれぞれに対向しない位置に形成される。
インダクタパターン膜27Aは、ストリップ状に形成され、Z方向から見て略コ字形状に形成される。インダクタパターン膜27Aの層厚およびパターン幅は、電気特性および機械特性の観点から精密に設計する必要があるが、膜厚は好ましくは0.1μm〜5μm程度に選ばれ、パターン幅は好ましくは1μm〜50μm程度に選ばれる。前記パターン幅は、インダクタパターン膜27Aのコ字形状を成す各延在部45,46,47の延在方向および厚み方向に垂直な方向の寸法である。たとえば前記膜厚および前記パターン幅のいずれかを小さくすることによって、インダクタパターン膜27Aのインダクタンスを大きくすることができる。また長さを長くする、すなわち各延在部45,46,47の長さを長くすることによって、インダクタパターン膜27Aのインダクタンスを大きくすることができる。
導体パターン膜27は、真空蒸着、メッキおよびスピンコートなどの手法を用いて、絶縁部材26のZ方向の一表面26a上に導体パターン膜27の前駆体である金属層を成膜した後、この金属層をフォトリソグラフィ技術を用いて所定の形状に加工して形成される。また導体パターン膜27は、信号の損失を低減するためにAu、AlおよびCuなどの導電率の高い金属材料を用いて形成される。
前述した絶縁部材26には、この絶縁部材26をZ方向に貫通する貫通孔48が形成される。貫通孔48は、第1および第2貫通孔48A,48Bを含んでいる。第1および第2貫通孔48A,48Bは、ビアホールであり、厚み方向に延びる。第1貫通孔48Aは、絶縁部材26を介して第1電極36および導体パターン膜27を接続するために形成される。第1貫通孔48Aは、第1電極36のうち共振部40を構成する部分を除く残余の部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成され、本実施の形態では第1電極36のうち圧電体薄膜35に重ならない部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成される。
第2貫通孔48Bは、絶縁部材26を介して接続電極24および導体パターン膜27を接続するために形成される。第2貫通孔48Bは、接続電極24の一部が絶縁部材26から露出するように形成される。
絶縁部材26の第1および第2貫通孔48A,48Bに臨む内周面の厚み方向に垂直な方向の内径は、Z方向の一表面26aから他表面26bに向かうに連れて小さくなるように形成され、前記内周面はテーパ形状に形成されることが望ましい。
層間接続部材28は、第1および第2層間接続部材28A,28Bを含んで構成される。第1層間接続部材28Aは、第1貫通孔48Aに形成され、第1電極36および導体パターン膜27と接続される。第1層間接続部材28Aは、インダクタパターン膜27Aの一端部に接続される。第1層間接続部材28Aは、第1貫通孔48Aを埋めて形成される。
第2層間接続部材28Bは、第2貫通孔48Bに形成され、接続導体層24および導体パターン膜27と接続される。第2層間接続部材28Bは、インダクタパターン膜27Aの他端部に接続される。第2層間接続部材28Bは、第2貫通孔48Bを埋めて形成される。
層間接続部材28は、絶縁部材26をフォトリソグラフィ技術によってパターニングして第1および第2貫通孔48A,48Bを形成した後、第1および第2貫通孔48A,48Bに真空成膜およびメッキなどによって金属材料を充填して形成される。絶縁部材26の前駆体の一部を等方性のエッチングによって形成するか、または絶縁部材26の前駆体を感光性レジストによって形成し、第1および第2貫通孔48A,48Bを形成する部分をグレーマスクを用いて露光して、エッチングを行うことによって、第1および第2貫通孔48A,48Bの内周面をテーパ形状に形成することができる。
層間接続部材28は、Au、AlおよびCuなどの導電率の高い金属材料を用いて形成される。また絶縁部材26の厚みが薄い場合、および導体パターン膜27の形成にCVDなどカバレッジ性のよい成膜方法を用いた場合は、導体パターン膜27を形成するときに、第1および第2貫通孔48A,48Bに層間接続部材28を同時に形成することができる。
第1および第2貫通孔48A,48Bに臨む内周面の形状、サイズについては特に限定はないが、第1および第2貫通孔48A,48Bに形成される層間接続部材28の電気抵抗を低減するための観点から、できるだけ大きいものが望ましい。第1および第2貫通孔48A,48Bの厚み方向に垂直な方向の最大直径は、たとえば導体パターン膜27のパターン幅に選ばれる。
インダクタパターン膜27Aは、第1電極36と層間接続部材28を介して接続されるので、インダクタパターン膜27Aと第1電極36とは同電位となる。インダクタパターン膜27Aと第1電極36とは、絶縁部材26を挟んで対向して配置されるので、インダクタパターン膜27Aと第1電極36との間には、絶縁部材26を介して容量結合が発生する。しかしながら、インダクタパターン膜27Aと第1電極36とは同電位となるので、前記容量結合を最小限に抑えることができ、すなわち寄生容量を最小限に抑えることができ、インダクタパターン膜27Aよって薄膜バルク音響波共振子20の特性を変化させる効果を最大限に引き出すことができる。
図4は、薄膜バルク音響波共振子20の等価回路図である。図4に示されるように、薄膜バルク音響波共振子20では、共振子本体23と、インダクタンス素子を形成するインダクタパターン膜27Aとが直列に接続されている。インダクタパターンパターン膜27Aが共振子本体23に直列に接続され、すなわちインダクタパターン膜27Aが共振部40に直列に接続されるので、薄膜バルク音響波共振子20のインピーダンスは、共振子本体23のインピーダンスではなく、共振子本体23とインダクタパターン膜27Aとによって決定される。すなわち薄膜バルク音響波共振子20のインピーダンスを、インピーダンス調整用の導体パターン膜27によって変化させることができる。
図5は、2GHzの並列共振周波数を持つ共振子本体23の共振特性と、前記共振子本体23にインダクタパターン膜27Aを直列に接続したときの共振特性とを示すグラフである。図5に示すグラフにおいて、縦軸はインピーダンスを示し、横軸は入力される信号の周波数を示す。入力される信号は電圧信号である。またここでは、インダクタパターン膜27AのインダクタンスLを、L=0nH,0.8nH,1.5nHとしたときの共振特性のシミュレーション結果を示している。図5では、前記共振子本体23にL=1.5nHのインダクタパターン膜27Aを直列に接続したときの共振特性を点線で示し、前記共振子本体23にL=0.8nHのインダクタパターン膜27Aを直列に接続したときの共振特性を破線で示し、共振子本体23そのもの(L=0nH)の共振特性を実線で示している。図5からも明らかなように、インダクタパターン膜27Aを接続することによって、薄膜バルク音響波共振子の直列共振周波数が低周波側にシフトし、並列共振周波数はシフトしないことが判る。またインダクタパターン膜27Aのインダクタンスが大きいほど、共振周波数を低周波側に、より大きくシフトさせることができる。
従来の技術のように、共振部40の膜厚を変化させた場合、図26からも判るように、周波数差は変化せず、共振周波数が全体的にシフトしてしまう。これに対して、共振部40に直列にインダクタパターン膜27Aを接続した場合、図5に示すように、直列共振周波数のみが低周波数側にシフトするので、周波数差を大きくすることができる。これによって、薄膜バルク音響波共振子20における直列共振周波数と並列共振周波数の差を変化させることができ、設計の自由度を向上させることができる。このような薄膜バルク音響波共振子20をラダー型フィルタに用いると、より帯域幅の大きなフィルタを形成することができる。
このように本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20によれば、インダクタパターン膜27Aによって、薄膜バルク音響波共振子20の共振周波数を変化させることができ、すなわちインピーダンスを変化させることができる。インダクタパターン膜27Aは、共振子本体23とともに基板21上に集積化して形成することができるので、薄膜バルク音響波共振子20を小型に形成することができる。インダクタパターン膜27Aのインダクタンスは、共振周波数をシフトすべき薄膜バルク音響波共振子の電気特性によって精密に設計する必要があるが、有効な周波数シフトを得るという観点から、好ましくはL=0.1nH〜10nH程度に選ばれる。
また前記導体パターン膜27は、共振子本体23のうち共振部40を除く残余の部分に接続されるので、第1および第2電極36,37に電圧が印加されることによって、振動する共振部40の振動を妨げることがない。
薄膜バルク音響波共振子20ではそのインピーダンスが、共振子本体23と導体パターン膜27とによって決定されるので、外部素子を接続しなくても、導体パターン膜27によってインピーダンスを調整することができる。すなわち電子回路に組み込んで用いるときに、外部素子を接続しなくても、導体パターン膜27によって、インピーダンスマッチングを取ることができるので、回路に組み込んで用いるときに、外部素子に起因して発生する信号の損失および干渉を抑制することができる。また外部素子を接続する必要がないので、低コストで所望の共振周波数特性を得ることができる。
また共振子本体23と導体パターン膜27とが圧電体薄膜35の厚み方向、すなわちZ方向に積層されることによって、導体パターン膜27を設けても薄膜バルク音響波共振子20を小型に形成することができる。
第1および第2音響反射部材22,25を使用する場合は、従来の技術のように空隙によって共振部40を音響的に絶縁する場合と比較して、薄膜バルク音響波共振子20の電気特性が若干低下する。しかしながら空隙によって共振部40を音響的に絶縁する場合と比較して機械的に強固であり、特に薄膜バルク音響波共振子20のように、共振部40に積層して導体パターン膜27を形成する場合には、第1および第2音響反射部材22,25を使用する方が耐久性を向上させることができる。
また薄膜バルク音響波共振子20では、共振部40が絶縁部材26によって覆われているので、共振部40の表面に異物が付着したり水分が吸着したり、共振部の内部に水分が浸入して信号電流のリークおよび共振部の破壊されてしまうことがない。したがって、異物付着によって共振周波数が変化してしまうことがないので、信頼性を向上させることができる。
図6は、本発明の実施の他の形態の薄膜バルク音響波共振子60の構造を概略的に示す平面図であり、図7は図6の切断面線VII−VIIから見た断面図である。なお、図6および図7の各図では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子60の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図6では、図解を容易にするために導体パターン膜27に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子60は、図1に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子20における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
薄膜バルク音響波共振子60は、基板21と、第1音響反射部材22と、共振子本体23と、第2音響反射部材25と、絶縁部材26と、導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。第1電極36は、第1音響波反射層22の厚み方向の一表面22aのX方向の他端部まで延びる。本実施の形態では、第1電極36のX方向の他端部が絶縁部材26から露出し、外部接続端子として機能する。
前述の図1に示す本実施の形態では、導体パターン膜27はインダクタンス素子を形成しているが、本実施の形態では、導体パターン膜27は、キャパシタンス素子を形成する。以後、キャパシタンス素子を形成する導体パターン膜27を、キャパシタパターン膜27Bと言う場合がある。
キャパシタパターン膜27Bは、第1キャパシタパターン部81と、第2キャパシタパターン部82とを含んで構成される。第1キャパシタパターン部81と、第2キャパシタパターン部82とは、離間して形成され、ギャップキャパシタを形成する。第1キャパシタパターン部81は、絶縁部材26を挟んで第1電極36に対向する位置に延びて形成される。第2キャパシタパターン部82は、絶縁部材26を挟んで第2電極37に対向する位置まで延びて形成される。
キャパシタパターン膜27Bは、第1キャパシタパターン部81と第2キャパシタパターン部82とのギャップ部を櫛歯状に形成する、いわゆるインターディジタル・キャパシタによって実現される。これによってキャパシタパターン膜27Bが有するキャパシタンスを大きくすることができる。第1キャパシタパターン部81は、略直方体形状に形成され、第1キャパシタパターン部81の第2キャパシタパターン部82に臨むX方向の端部81Aには、X方向の一方に突出する凸部83が形成される。第2キャパシタパターン部82は、略直方体形状に形成され、第2キャパシタパターン部82の第1キャパシタパターン部81に臨むX方向の端部82Bには、X方向の他方に退避する凹所84が形成される。前記凸部83が前記凹所84に挿入されて、第1キャパシタパターン部81と第2キャパシタパターン部82とが近接して設けられる。第1キャパシタパターン部81の前記凸部83と、第2キャパシタパターン部82の凹所84との間に形成されるギャップ部は、圧電体薄膜35のうち、Z方向から見て、第2電極37のX方向の端部からX方向の一方に突出する部分に積層される。第1キャパシタパターン部81は、Z方向から見て絶縁部材26を挟んで、第1電極36および圧電体薄膜35には対向するが、第2電極36に対向しない位置に形成される。第2キャパシタパターン部82は、Z方向から見て絶縁部材26を挟んで第2電極37および圧電体薄膜35には対向するが、第1電極36に対向しない位置に形成される。
絶縁部材26には、絶縁部材26を厚み方向に貫通する第3および第4貫通孔48C,48Dが形成される。第3および第4貫通孔48C,48Dは、ビアホールであり、絶縁部材26の厚み方向に延びる。第3貫通孔48Cは、絶縁部材26を介して第1電極36および導体パターン膜27を接続するために形成される。第3貫通孔48Cは、第1電極36のうち共振部40を構成する部分を除く残余の部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成され、本実施の形態では第1電極36のうち圧電体薄膜35に重ならない部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成される。
第4貫通孔48Dは、絶縁部材26を介して第2電極37および導体パターン膜27を接続するために形成される。第4貫通孔48Dは、第2電極37のうち共振部40を構成する部分を除く残余の部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成され、本実施の形態では第2電極37のうち圧電体薄膜35に重ならない部分の一部が絶縁部材26から露出するように形成される。
第3および第4貫通孔48C,48Dは、第1および第2貫通孔48A,48Bと同様な形状に形成される。層間接続部材28は、第3および第4層間接続部材28C,28Dを含んで構成される。第3層間接続部材28Cは、第3貫通孔48Cを埋めて形成され、第1キャパシタパターン部81に接続される。第4層間接続部材28Dは、第4貫通孔48Dを埋めて形成され、第2キャパシタパターン部82に接続される。第3および第4貫通孔48C,48Dは、第1および第2貫通孔48A,48Bと同様に形成され、第3および第4層間接続部材28C,28Dは、第1および第2層間接続部材28A,28Bと同様に形成される。
第1キャパシタパターン部81は、第1電極36と第3層間接続部材28Cを介して接続され、第1キャパシタパターン部81と第1電極36とは同電位となる。第2キャパシタパターン部82は、第2電極37と第4層間接続部材28Dを介して接続され、第2キャパシタパターン部82と第2電極37とは同電位となる。第1キャパシタパターン部81と第1電極36とは、絶縁部材26を挟んで対向して配置されるので、第1キャパシタパターン部81と第1電極36との間には、絶縁部材26を介して容量結合が発生する。また第2キャパシタパターン部82と第2電極37とは、絶縁部材26を挟んで対向して配置されるので、第2キャパシタパターン部82と第2電極37との間には、絶縁部材26を介して容量結合が発生する。しかしながら、第1キャパシタパターン部81と第1電極37とは同電位となり、第2キャパシタパターン部82と第2電極37とは同電位となるので、前記容量結合をそれぞれ最小限に抑えることができ、導体パターン膜27よって薄膜バルク音響波共振子の特性変化させる効果を最大限に引き出すことができる。
キャパシタパターン膜27Bの層厚およびパターン幅は、電気特性および機械特性の観点から精密に設計する必要があるが、膜厚は好ましくは0.1μm〜5μm程度に選ばれ、パターン幅は好ましくは1μm〜50μm程度に選ばれる。前記パターン幅は、キャパシタパターン膜27Bの長手方向および厚み方向に垂直な方向の寸法である。たとえば前記膜厚および前記パターン幅のいずれかを大きくすることによって、キャパシタパターン膜27Bのキャパシタンスを大きくすることができる。
本実施の形態では、第1キャパシタパターン部81には2つの凸部83が形成され、第2キャパシタパターン部82には、2つの凹所84が形成されている。前記凸部83および凹所84の大きさ、凸部83および凹所84の数、および第1キャパシタパターン部81と第2キャパシタパターン部82との間隔は、得るべきキャパシタの容量に基づいて適宜決定され、たとえば凸部83および凹所84の幅を大きくするか、凸部83および凹所84の数を増加するか、第1キャパシタパターン部81と第2キャパシタパターン部82との間隔を小さくするかによって、キャパシタンスを大きくすることができる。
図8は、薄膜バルク音響波共振子60の等価回路図である。図4に示されるように、薄膜バルク音響波共振子20では、共振子本体23と、キャパシタンス素子を形成するキャパシタパターン膜27Bとが並列に接続されている。キャパシタパターン膜27Bが共振子本体23に並列に接続され、すなわちキャパシタパターン膜27Bが共振部40に並列に接続されるので、薄膜バルク音響波共振子60のインピーダンスは、共振子本体23のインピーダンスではなく、共振子本体23とキャパシタパターン膜27Bとによって決定される。すなわち薄膜バルク音響波共振子20のインピーダンスを、インピーダンス調整用の導体パターン膜27によって変化させることができる。
図9は、2GHzの並列共振周波数を持つ共振子本体23の共振特性と、前記共振子本体23にキャパシタパターン膜27Bを並列に接続したときの共振特性とを示すグラフである。図9に示す各グラフにおいて、縦軸はインピーダンスを示し、横軸は入力される信号の周波数を示す。入力される信号は電圧信号である。またここでは、キャパシタパターン膜27BのキャパシタンスCを、C=0pF,0.5pF,1.0pFとしたときの共振特性のシミュレーション結果を示している。
図9では、前記共振子本体23にC=1.0pFのキャパシタパターン膜27Bを並列に接続したときの共振特性を点線で示し、前記共振子本体23にC=0.5pFのキャパシタパターン膜27Bを並列に接続したときの共振特性を破線で示し、共振子本体23そのもの(C=0pF)の共振特性を実線で示している。図9からも明らかなように、キャパシタパターン膜27Bを接続することによって、薄膜バルク音響波共振子の並列共振周波数が低周波数側にシフトし、直列共振周波数はシフトしないことが判る。またキャパシタパターン膜27Bのキャパシタンスが大きいほど、共振周波数を低周波側に、より大きくシフトさせることができる。
従来の技術のように、共振部40の膜厚を変化させた場合、図26からも判るように、周波数差は変化せず、共振周波数が全体的にシフトしてしまう。これに対して、共振部40に並列にキャパシタパターン膜27Bを接続した場合、図9に示すように、並列共振周波数のみが低周波数側にシフトする。このような薄膜バルク音響波共振子をラダー型フィルタに用いると、より急峻な遷移帯域幅のフィルタを形成することができる。
このように本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子60によれば、キャパシタパターン膜27Bによって、薄膜バルク音響波共振子の共振周波数を変化させることができ、すなわちインピーダンスを変化させることができる。キャパシタパターン膜27Bは、共振子本体23とともに基板21上に集積化して形成することができる。キャパシタパターン膜27Bのキャパシタンスは、共振周波数をシフトすべき薄膜バルク音響波共振子の電気特性によって精密に設計する必要があるが、有効な周波数シフトを得るという観点から、好ましくはC=0.1pF〜10pF程度に選ばれる。
また薄膜バルク音響波共振子60によれば、前述した実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と同様な効果を得ることができる。すなわち、前記導体パターン膜27は、共振子本体23のうち共振部40を除く残余の部分に接続されるので、第1および第2電極36,37に電圧が印加されることによって、振動する共振部40の振動を妨げることがない。また外部素子を接続しなくても、導体パターン膜27によって、インピーダンスマッチングを取ることができるので、回路に組み込んで用いるときに、外部素子に起因して発生する信号の損失および干渉を抑制することができる。また外部素子を接続する必要がないので、低コストで所望の共振周波数特性を得ることができる。また小型に形成することができ、耐久性を向上させることができ、さらに信頼性を向上させることができる。
図10は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子70の構造を概略的に示す平面図である。図10では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子70の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図10では、図解を容易にするために導体パターン膜27に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子70は、図1および図6に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20,60と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子20,60における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。前述した図1に示される実施の形態では、導体パターン膜27としてインダクタパターン膜27Aのみが形成され、前述した図6に示される実施の形態では、導体パターン膜27としてキャパシタパターン膜27Bのみが形成されているが、薄膜バルク音響波共振子70は、導体パターン膜27として、インダクタパターン膜27Aおよびキャパシタパターン膜27Bが形成される。インダクタパターン膜27AのY方向の一方にキャパシタパターン膜27Bが形成される。
図11は、薄膜バルク音響波共振子70の等価回路図である。図11に示されるように、薄膜バルク音響波共振子70では、共振子本体23と、インダクタンス素子を形成するインダクタパターン膜27Aとが直列に接続され、共振子本体23と、キャパシタンス素子を形成するキャパシタパターン膜27Bとが並列に接続されている。薄膜バルク音響波共振子70においても、薄膜バルク音響波共振子70のインピーダンスを、インピーダンス調整用の導体パターン膜27によって変化させることができる。
図12は、2GHzの並列共振周波数を持つ共振子本体23の共振特性と、前記共振子本体23にインダクタパターン膜27Aを直列に接続し、かつ前記共振子本体23にキャパシタパターン膜27Bを並列に接続したときの共振特性とを示すグラフである。図12に示す各グラフにおいて、縦軸はインピーダンスを示し、横軸は入力される信号の周波数を示す。入力される信号は電圧信号である。またここでは、インダクタパターン膜27AのインダクタンスLを、L=0nH,0.8nHとして、キャパシタパターン膜27BのキャパシタンスCを、C=0pF,0.5pFとしたときの共振特性のシミュレーション結果を示している。
図12では、前記共振子本体23にL=0.8nHのインダクタパターン膜27Aを直列に接続し、かつC=1.0pFのキャパシタパターン膜27Bを並列に接続したときの共振特性を破線で示し、共振子本体23そのもの(L=0nHかつC=0pF)の共振特性を実線で示している。図12からも明らかなように、インダクタパターン膜27Aおよびキャパシタパターン膜27Bを接続することによって、直列共振周波数および並列共振周波数の双方が、低周波数側にシフトすることが判る。
共振部40に直列にインダクタパターン膜27Aを接続し、かつ共振部40に並列にキャパシタパターン膜27Bを接続した場合では、直列共振周波数と並列共振周波数との両者が変化するが、インダクタパターン膜27Aのインダクタンスおよびキャパシタパターン膜27Bのキャパシタンスを調整することによって、周波数差を変化させることができる。このような薄膜バルク音響波共振子をラダー型フィルタに用いると、帯域幅の設計の自由度が向上されたフィルタを形成することができる。
このように本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子70によれば、インダクタパターン膜27Aおよびキャパシタパターン膜27Bによって、薄膜バルク音響波共振子の共振周波数を変化させることができ、すなわちインピーダンスを変化させることができる。薄膜バルク音響波共振子70では、前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20,60と同様な効果を達成することができる。
図13は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80の構造を概略的に示す平面図であり、図14は図13の切断面線XIV−XIVから見た断面図である。なお、図13および図14の各図では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子80の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図13では、図解を容易にするために導体パターン膜27に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80は、図1に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子20における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。前述した図1に示される実施の形態では、共振部40の音響的なアイソレーションを取るために、第1および第2音響反射部材22,25が形成されているが、本実施の形態では、第1および第2音響反射部材22,25を備えず、共振部40の音響的なアイソレーションを取るために、基板21に基板貫通孔61が形成され、また共振部40と絶縁部材26との間に空隙62が形成される。
薄膜バルク音響波共振子60は、基板21と、共振子本体23と、接続電極24と、絶縁部材26と、導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。薄膜バルク音響波共振子20では、共振子本体23および接続電極24は、第1音響反射部材22の一表面22aに積層されているが、薄膜バルク音響波共振子80では、共振子本体23および接続電極24は、基板21の一表面21aに、同様に積層される。
基板貫通孔61は、基板21をZ方向に貫通して形成され、第2電極37のうち、圧電体薄膜35および第1電極36が積層される部分が基板貫通孔61から露出する。本実施の形態では、第2電極37のうち基板貫通孔61から露出する部分と、圧電体薄膜35および第1電極36うち、前記第2電極37の基板貫通孔61から露出する部分に積層される部分とによって、共振部40が形成される。基板貫通孔61に臨む内周面は、Z方向に垂直な方向の断面が矩形状となる筒形状に形成される。基板貫通孔61に臨む内周面のZ方向の断面の各辺は、Z方向またはY方向に沿って延びる。
絶縁部材26は、共振部40から離間して、共振部40を外囲して設けられる。共振子本体23のうち、少なくとも圧電性薄膜35ならびに第1および第2電極36,37が積層される積層部と絶縁部材26との間に空隙62が形成される。前記空隙62は、共振部40を絶縁部材26および導体パターン膜27からアイソレートするために設けられている。第1電極36のうち共振部40に含まれる部分の厚み方向の一表面36aと絶縁部材26とは厚み方向に、予め定める距離L4離間する。予め定める距離L4は、たとえば2μm〜20μmに選ばれる。
空隙62は、共振部40に積層してSi、SiO2および樹脂材料などによって犠牲層を成膜し、その後絶縁部材26および導体パターン27を形成した後に、前記犠牲層をエッチングによって除去して形成される。前記犠牲層のエッチングの方法は、XeF2、HFおよびプラズマなどを用いた気相法、ならびにエッチング液を使用した液相法などが使用される。
基板21に基板貫通孔61を形成することによって、前述した第1音響反射部材22と同様な効果を達成することができ、また前記空隙62を形成することによって、前述した第2音響反射部材25と同様の効果を達成することができる。したがって、本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80は、前述した実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と同様な効果を達成することができる。また第1および第2音響反射部材22,25よりも空気の方が音響波の損失が小さいので、本実施の形態のように、基板貫通孔61および空隙62によって共振部40を音響的に絶縁すると、図1に示す実施の形態のように第1および第2音響反射部材22,25によって共振部40を音響的に絶縁する場合と比較して、信号の損失をより抑制することができる。
図15は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子90の構造を概略的に示す断面図である。本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子90は、図1および図13に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20,80と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子20,80における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。薄膜バルク音響波共振子90は、基板21と、第1音響反射部材22と、共振子本体23と、接続電極24と、絶縁部材26と、インピーダンス調整用の導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。導体パターン膜27は、インダクタパターン膜27Aであり、層間接続部材28は、第1および第2層間接続部材28A,28Bを含んで構成される。
前述した図1に示される実施の形態では、共振部40を音響的に絶縁するために、第1および第2音響反射部材22,25が形成され、前述した図13に示される実施の形態では、共振部40を音響的に絶縁するために、基板貫通孔61および空隙62が形成されているが、本実施の形態では、共振部40を音響的に絶縁するために前記第1音響反射部材22と、前記空隙62とが形成される。このような構成であっても、前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20,80と、同様な効果を達成することができる。
図16は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子100の構造を概略的に示す平面図であり、図17は図16の切断面線XVII−XVIIから見た断面図である。なお、図16および図17の各図では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子100の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図16では、図解を容易にするために導体パターン膜27に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子100は、図6および図13に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子60,80と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子60,80における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。薄膜バルク音響波共振子100は、基板21と、共振子本体23と、絶縁部材26と、導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。導体パターン膜27は、キャパシタパターン膜27Bであり、層間接続部材28は、第3および第4層間接続部材28C,28Dを含んで構成される。共振子本体23は、基板21の一表面21a上に積層される。
前述した図6に示される実施の形態では、共振部40の音響的なアイソレーションを取るために、第1および第2音響反射部材22,25が形成されているが、本実施の形態では、第1および第2音響反射部材22,25を備えず、図13に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80と同様に、共振部40の音響的なアイソレーションを取るために、基板21に基板貫通孔61が形成され、また共振部40と絶縁部材26との間に空隙62が形成される。このような薄膜バルク音響波共振子100は、前述した図6に示す実施の形態の薄膜バルク音響波共振子60と同様の効果を達成することができる。
図18は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子110の構造を概略的に示す平面図であり、図19は図18の切断面線XIX−XIXから見た断面図であり、図20は図18の切断面線XX−XXから見た断面図である。なお、図18および図19の各図では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子110の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図18では、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子110は、図1に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子20における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
薄膜バルク音響波共振子110は、基板21と、第1音響反射部材22と、共振子本体23と、接続電極24と、絶縁部材26と、導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。導体パターン膜27は、インダクタパターン膜27Aである。
薄膜バルク音響波共振子110では、基板21のZ方向の一表面21a上に導体パターン膜27が形成され、導体パターン膜27のZ方向の一表面27aおよび基板21の厚み方向の一表面21aのうち導体パターン膜27が形成される部分を除く残余の部分に積層して、絶縁部材26が積層され、絶縁部材26のZ方向の一表面26aに第1音響反射部材22が積層され、第1音響反射部材22のZ方向の一表面22aに共振子本体23と接続電極24とが積層して形成される。導体パターン膜27によって生じる段差を軽減するために、スピンコートによって絶縁部材26を形成したり、絶縁部材26にポリッシングによる平坦化などの措置を講じたりした後に、共振子本体23を形成する必要がある。前記絶縁部材26に平坦化層を積層して形成して、導体パターン膜27によって生じる段差を軽減してもよい。
第1音響反射部材22および絶縁部材26から成る積層体111には、この積層体111を厚み方向に貫通する第5および第6貫通孔48E,48Fが形成される。第5および第6貫通孔48E,48Fは、ビアホールであり、積層体111の厚み方向に延びる。第5貫通孔48Eは、前記積層体111を介して第1電極36および導体パターン膜27を接続するために形成される。第5貫通孔48Eは、インダクタパターン膜27Aの一端部が積層体111から露出するように形成される。
第6貫通孔48Fは、前記積層体111を介して接続電極24および導体パターン膜27を接続するために形成される。第6貫通孔48Fは、インダクタパターン膜27Aの他端部が積層体111から露出するように形成される。
第5および第6貫通孔48E,48Fは、第1および第2貫通孔48A,48Bと同様な形状に形成される。層間接続部材28は、第5および第6層間接続部材28E,28Fを含んで構成される。第5層間接続部材28Eは、第5貫通孔48Eを埋めて形成され、インダクタパターン膜27Aの一端部と、第1電極36のうち音響反射部材22のZ方向の一表面22a上に形成される部分とに接続される。第6層間接続部材28Fは、第6貫通孔48Fを埋めて形成され、インダクタパターン膜27Aと接続電極24とに接続される。
第3および第4貫通孔48E,48Fは、第1および第2貫通孔48A,48Bと同様に形成される。第5および第6層間接続部材28E,28Fは、第1および第2層間接続部材28A,28Bと同様に形成される。
以上のような薄膜バルク音響波共振子110は、前述した図1に示す実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20と同様な効果を達成することができる。
図21は、本発明のさらに他の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子120の構造を概略的に示す断面図である。本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子120は、図13および図20に示される実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80,110と類似しており、本実施の形態の構成には、前述の薄膜バルク音響波共振子80,110における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。薄膜バルク音響波共振子120は、基板21と、共振子本体23と、接続電極24と、絶縁部材26と、導体パターン膜27と、層間接続部材28とを含んで構成される。導体パターン膜27は、インダクタパターン膜27Aである。共振子本体23と、接続電極24とは、絶縁部材26の厚み方向の一表面26aに積層される。
前述した図18に示される実施の形態では、共振部40を音響的に絶縁するために、第1音響反射部材22が形成されているが、本実施の形態では、第1音響反射部材22を備えず、共振部40を音響的に絶縁するために、絶縁部材26と基板21および導体パターン膜27との間に空隙121が形成される。空隙121は、Z方向において共振部40と基板21とに挟まれる領域に少なくとも形成される。このような構成であっても、前述した実施の形態の薄膜バルク音響波共振子80,110と、同様な効果を達成することができる。
本発明の各実施の形態では、インダクタパターン膜27Aはストリップ状に形成されているが、本発明のさらに他の実施の形態において、インダクタパターン膜27Aは、リング状に形成されてもよく、スパイラル状に形成してもよい。インダクタパターン膜27Aをリング状またはスパイラル状に形成すると、インダクタパターン膜27Aをストリップ状に形成する場合と比較して、同じ面積で形成するときにインダクタンスを大きくすることができる。
また本発明の各実施の形態では、導体パターン膜27が絶縁部材26を介して同電位となる第1電極36または第2電極37に対向するように形成されているが、本発明のさらに他の実施の形態では、導体パターン膜27は、絶縁部材26を介して同電位とならない第1電極36または第2電極37に対向して形成されてもよい。
また本発明の各実施の形態では、インダクタパターン膜27Aを、共振部40に直接に接続しているが、本発明のさらに他の実施の形態において、インダクタパターン膜27Aを共振部40に並列に接続してもよい。
また本発明の各実施の形態では、キャパシタパターン膜27Bを、共振子40に並列に接続しているが、本発明のさらに他の実施の形態において、キャパシタパターン膜27Bを共振部40に直列に接続してもよい。
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、絶縁部材26とインダクタパターン膜27Aとの間、またはインダクタパターン膜27Aの厚み方向の一表面上に磁性体材料から成る膜を形成してもよい。これによってインダクタパターン膜27Aのインダクタンス成分を大きくすることができる。
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、キャパシタパターン膜27Bは、厚み方向に絶縁部材を挟んで電極を重ねて形成し、いわゆるMIM(Metal Insulator Metal)タイプのキャパシタンス素子を形成してもよい。このようなキャパシタンス素子は、製造工程は少し複雑になるが、キャパシタンス成分を大きくすることができる。
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、絶縁部材26とキャパシタパターン膜27Bとの間、またはキャパシタパターン膜27Bのギャップ部に高誘電体材料から成る膜を形成してもよい。これによって、キャパシタパターン膜27Bのキャパシタンス成分を大きくすることもできる。
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、導体パターン膜27によって、インダクタンス素子およびキャパシタンス素子などを形成するために、絶縁部材26を磁性材料および高誘電率材料などによって形成する必要がある場合があるときには、絶縁部材26を低誘電率材料から成る層と、磁性材料および高誘電率材料などから成る層とを積層して形成してもよい。このような構成とすると、導体パターン膜27と共振部40との電気的干渉を抑制しつつ、導体パターン膜27によって高いインダクタンスを有するインダクタ素子または高いキャパシタンスを有するキャパシタンス素子を形成することができる。
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、前記絶縁部材26が、第1または第2音響反射部材22,25とともに、音響波を反射する構成としてもよい。前記第1および第2音響反射部材22,25は、その層数が多いほど良好な反射特性を持ち、すなわち第1および第2音響反射部材22,25による信号の損失を低減することができ、特にQ値が高い薄膜バルク音響波共振子を実現することができる。絶縁部材26が、第1または第2音響反射部材22,25とともに音響波を反射する場合、絶縁部材26が第1または第2音響反射部材22,25と音響波を反射しない場合と比較して、より高いQ値の薄膜バルク音響波共振子を形成することができる。また絶縁部材26が、第1または第2音響反射部材22,25とともに、音響波を反射する、すなわち音響反射部材を形成する場合、絶縁部材26が音響反射部材を形成しない場合と比較して、同じQ値を達成するためには、より少ない層数で第1または第2音響反射部材22,25を形成することができ、製造工程を少なくして、生産性を向上させることができ、また薄膜バルク音響波共振子を小型化し、製造コストを削減することができる。
絶縁部材26が、第1または第2音響反射部材22,25とともに音響波を反射するためには、絶縁部材26が高いインピーダンスを有する第1音響反射部材構成膜32に積層されるように第1および第2音響反射部材22,25を形成し、絶縁部材26と第1音響反射部材構成膜32との界面での音響反射を利用する。たとえば、第2音響反射部材25をSiO2とAl2O3との4層によって形成し、絶縁部材26をポリイミドによって形成した場合、第1電極36に近い側から順に、SiO2層、Al2O3層、SiO2層、Al2O3層、ポリイミド層という層構成となる。シミュレーションによれば、この場合の薄膜バルク音響波共振子のQ値は、2000以上となる。これに対し、第2音響反射部材25の層を1層増加させて、第1電極36に近い側から順に、SiO2層、Al2O3層、SiO2層、Al2O3層、SiO2層、ポリイミド層という層構成とした場合、Q値は、約150と大幅に低下する。これは絶縁部材26を、音響反射部材の一部として設計しなかったためで、追加したSiO2層が、Al2O3層とポリイミド層との間の音響インピーダンスマッチング層として働いたため、Al2O3層とポリイミド層との間における音響の反射機能が消失したためである。なお、絶縁部材26が、第1または第2音響反射部材22,25とともに音響波を反射するためには、絶縁部材26の厚みは、好ましくはλ/4(記号λは層を伝播する音響波の波長)の奇数倍に選ばれる。
また前述した各実施の形態では、圧電体薄膜35、第1および第2電極36,37の平面形状はそれぞれ矩形状であるが、本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態において、圧電体薄膜35、第1および第2電極36,37の平面形状を、円形状、不定形状または台形状にそれぞれ形成してもよい。圧電体薄膜35、第1および第2電極36,37の平面形状を、円形状、不定形状または台形状にそれぞれ形成しても、平面形状を矩形状に形成したときと同様の効果を達成することができるとともに、さらに不要振動(スプリアス)を抑制することができる。
前述した各実施の形態において、導体パターン膜27は、インダクタンス素子およびキャパシタンス素子の少なくとも一方を形成しているが、本発明のさらに他の実施の形態では、導体パターン膜27は、抵抗素子を形成してもよい。導体パターン膜27によって抵抗素子を形成する場合は、NiCr(ニッケル−クロム)合金およびTaN(窒化タンタル)などを用いて導体パターン膜27を形成する。
また本発明の各実施の形態では、前述した各実施の形態を組合せて薄膜バルク音響波共振子を構成してもよい。たとえば、図10に示す薄膜バルク音響波共振子70において、共振部40を第1および第2音響反射部材22,25によって音響的に絶縁するのではなく、基板21に形成される基板貫通孔61および絶縁部材26と共振部40との間に形成される空隙62によって音響的に絶縁してもよい。また前述した各実施の形態において、第1音響反射部材22および基板貫通孔61のいずれかと、第2音響反射部材25および空隙62のいずれかを組合せて、共振部40を音響的に絶縁してもよい。
図22は、本発明の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子の製造方法を用いて形成されるウエハ形成体130を示す平面図である。前述の各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子は、基板21の前駆体であるウエハ131上に、複数の共振子本体23と、共振子本体23に個別に接続される導体パターン膜27と、第1音響反射部材22、接続電極24、第2音響反射部材25、絶縁部材26および層間接続部材28などを形成して、ウエハ形成体130を形成し、ウエハ131を分断することによって形成される。図22では、複数の薄膜バルク音響波共振子70が形成されるウエハ形成体130を示している。
ウエハ131には、直径が75mm〜200mm程度の鏡面研磨されたSiウエハが用いられる。Siウエハは扱いやすく、また対応する薄膜プロセス装置も多いため、特に好適に用いられる。ウエハ131としては、上記Siウエハの他にも、薄膜プロセスと相性のよい、Al2O3、SiO2およびガラスなどによって形成されるウエハまたは平板を使用することができる。
各共振子本体23に接続される導体パターン膜27を、各共振子本体23のインピーダンスのばらつきを抑制する、すなわち基板面内の各共振子本体23の共振周波数分布を打ち消すように形成する。すなわち、ウエハ131の中央部132に形成される薄膜バルク音響波共振子70Aと、ウエハ131の周縁に形成される薄膜バルク音響波共振子70Bとのインピーダンスが等しくなるように、薄膜バルク音響波共振子70A,70Bにおいて導体パターン膜27の形状を変えて形成している。
薄膜形成プロセスでは、ウエハ131の中央部132の膜厚が厚く、中央部132から外周部133に向かうに連れて膜厚が徐々に減少する膜厚分布が発生する。このため、共振子本体23の共振周波数は、ウエハ131の中央部132が最も低く、ウエハ131の周縁に向かうに連れて徐々に増大していく。この共振周波数の分布を打ち消すため、ウエハ131の外周部133には大きなインダクタンスおよびキャパシタンスを有する導体パターン膜27を形成し、ウエハ131の中央に向かうに連れて、インダクタンスおよびキャパシタンスが漸減するように各共振子本体23に接続される導体パターン膜27を形成することによって、膜厚分布に伴う複数の薄膜バルク音響波共振子70の共振周波数差を打ち消して、ウエハ面内の共振周波数分布を極小にすることができる。このようにして、歩留まりを大幅に向上することができる。
具体的には、たとえばウエハ131の中央部132と外周部133との共振子本体23の間に、1%の共振周波数の差がある場合、その差を打ち消すように各共振子本体23に接続される導体パターン膜27によってインダクタンス素子およびキャパシタンス素子を形成することによって、周波数差を無くすことができる。必要な導体パターン膜27のインダクタンスおよびキャパシタンスは、共振周波数、その分布、必要な電気特性によって精密に設定する必要があるが、好ましくは、インダクタンスLは、0.1nH〜10nH程度に選ばれ、キャパシタンスCは、0.1pF〜10pF程度に選ばれる。たとえば、並列キャパシタンスが1.6pFであって、並列共振周波数が2.0GHzである薄膜バルク音響波共振子では、導電パターン膜27による直列インダクタンス1nHあたり、直列共振周波数が15MHz低下(2GHzに対して0.75%)し、導体パターン27による並列キャパシタンス1pFあたり、並列共振周波数が24MHz低下する(2GHzに対して1.2%)。これらを組み合わせると、前述した図12に示すように、導体パターン27によって形成された0.8nHの直列インダクタンスと0.5pFの並列キャパシタンスとによって、薄膜バルク音響波共振子70の共振特性を、低周波数側に12MHzシフトさせることができる(2GHzに対して0.6%)。
以上のように本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子の製造方法によって、ウエハ131の面内の各共振部40の共振周波数分布を、共振部40の膜厚によらず導体パターン膜27のインダクタンスおよびキャパシタンスによって補正することができる。周波数調整層または追加膜によって共振部40の膜厚を変更する手法は、同一のウエハ131に形成される個々の共振部40に対して最適な共振周波数の調製を行うことができないが、本実施の形態では、導体パターン膜27の平面形状によってインダクタンスおよびキャパシタンスを設定することができるので、フォトリソグラフィ技術を用いて、各共振子本体23に接続すべきインダクタンス素子およびキャパシタンス素子を容易に形成することができ、最適な共振周波数の調製を行うことができ、すなわちウエハ131を用いて形成される各薄膜バルク音響波共振子の、より高精度の共振周波数の分布の調整が可能となる。
本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子の製造方法では、薄膜バルク音響波共振子70を形成しているが、前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子のいずれを形成してもよく、この場合であっても同様の効果を達成することができる。
図23は、本発明の共通の基板21に形成された薄膜バルク音響波共振子140を示す平面図である。図23では、図解を容易にするために、薄膜バルク音響波共振子140の各部分の寸法を適宜拡大して示している。また図23では、図解を容易にするために導体パターン膜27、第1および第2電極36,37ならびに接続電極24に斜線を付して示し、また絶縁部材26を仮想線で仮想的に示している。また前述の各実施の形態と、同じ構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。
薄膜バルク音響波共振子140は、2つの、前述した図10に示す実施の形態の薄膜バルク音響波共振子70を基板21を共通にして形成し、さらに基板21に形成される第1音響反射部材22の一表面22aに積層して第1〜第3共振子本体23A,23B,23Cを形成して構成され、ラダー型のフィルタ装置を構成する。一方の薄膜バルク音響波共振子70を薄膜バルク音響波共振子70Aとし、他方の薄膜バルク音響波共振子70を薄膜バルク音響波共振子70Bとする。また第1〜第3共振子本体23A,23B,23Cの各構成の参照符号に、それぞれ添え字A,B,Cを付す。
薄膜バルク音響波共振子70A,70Bの第2電極37は、一体に形成される。また第1共振子本体23Aの第1電極36Aと、第2共振子本体23Bの第1電極36Bとが一体に形成され、これらは薄膜バルク音響波共振子70Aの接続電極24Aに接続される。また第2共振子本体23Bの第2電極37Bと、第3共振子本体23Cの第2電極37Cとが一体に形成され、これらは薄膜バルク音響波共振子70Bの接続電極24Bに接続される。
図24は、薄膜バルク音響波共振子140の等価回路図である。図24に示されるように、薄膜バルク音響波共振子140は、薄膜バルク音響波共振子70A,70Bが並列に接続され、第1〜第3共振子本体23A,23B,23Cが直列に接続され、薄膜バルク音響波共振子70Aが第1および第2共振子本体23A,23Bの接続部に接続され、薄膜バルク音響波共振子70Bが第2および第3共振子本体23B,23Cの接続部に接続されて構成される。
各薄膜バルク音響波共振子70A,70Bの導体パターン膜27は、形状および大きさの少なくともいずれか一方が互いに異なり、これによって薄膜バルク音響波共振子70A,70Bのインピーダンスは異なる。たとえば、共振子本体23を直並列に複数個接続して構成される前記ラダー型フィルタの場合、並列に接続される共振子本体23の共振周波数は、直列に接続される共振子本体23の共振周波数よりも、フィルタの帯域幅だけ低く設定しなければならない。共振周波数をシフトさせるために、薄膜バルク音響波共振子140では、並列に接続される共振子本体23に導体パターン膜27を接続するだけで対応することができる。ラダー型フィルタの特性をさらに向上させるため、ラダー型フィルタを構成するいくつかの共振子の共振周波数をシフトさせることが知られており、従来の技術では数回の周波数調整層の形成工程または追加膜の形成工程を追加する必要があるが、本実施の形態の薄膜バルク音響波共振子では、このような場合でも工程数を増加させること無く対応できる。
さらに薄膜バルク音響波共振子140では、それぞれが異なる共振周波数を持つ薄膜バルク音響波共振子70を、同一の基板上に簡単に形成することができるため、たとえば薄膜バルク音響波共振子を複数組み合わせたフィルタを、複数個使用して形成されるデバイス、たとえばデュプレクサなどを、同一の基板上に一括して形成でき、設計の自由度を向上させることができる。
本発明のさらの他の実施の形態では、前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子を用いて、フィルタを形成してもよい。前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子を、フィルタを構成する共振子として用いるので、従来の技術のFBARおよびSMRを使用したフィルタに比べて、小型で、信号の干渉および損失が少なく、かつ設計の自由度の高いフィルタを構成することができる。またこのようなフィルタを低コストで製造することができる。本発明の薄膜バルク音響波共振子を用いて本発明のフィルタを構成したものとしては、前述した図23に示す共振子を電気的に結合させたラダー型フィルタの他に、ラティス型フィルタ、共振子を音響的に結合させたスタックト・クリスタル(
Stacked Crystal)型フィルタ、およびカップルド・レゾネータ(Coupled Resonator)フィルタなどが挙げられる。
また本発明の実施の形態の通信装置は、前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子を用いて形成されるフィルタを有する受信回路および前述した各実施の形態のフィルタを有する送信回路の少なくとも一方を備える。これによって受信回路および送信回路における損失が小さくなったり、不要波の除去性能が上がったりする効果がある。また小型で、信号の干渉および損失が少なく、かつ設計の自由度の高いフィルタを用いて受信回路および送信回路を構成できるので、より感度を向上させることができ、小型で信頼性が高い通信装置を提供することができる。
(実施例1)
第1の実施の形態の薄膜バルク音響波共振子20の具体例について以下に説明する。本実施例では、2GHzで共振する薄膜バルク音響波共振子を作製した。
まず、高抵抗のSi基板21上に、スパッタリング法によってZnOから成る層とSiO2から成る層とを基板側からこの順番で交互に積層した8層の第1音響反射部材22を形成した。その後、0.15μmのMoから成るMo膜を、スパッタリング法によって形成した。このMo膜にフォトリソグラフィおよびフッ硝酸によるウエットエッチングを行って、第2電極37を形成した。その後、スパッタリング法によって0.67μmのZnOから成るZnO膜を成膜した。ZnO膜にフォトリソグラフィおよび希塩酸によるウエットエッチングを行って圧電薄膜層35を形成した。そして、第2電極37は、厚み0.15μmのAuをスパッタリング法によって形成し、同様にフォトリソグラフィおよびウエットエッチングによってパターン形成を行って形成した。
その後、基板21全体にSiO2から成る層とZnOから成る層とを基板側からこの順番で積層して、6層の多層膜反射器を成膜し、フォトリソグラフィおよびフッ硝酸によるウエットエッチングを行って、多層膜反射器のうち共振部40に積層される部分を除く残余の部分を除去して第2音響反射部材25を形成した。さらにその上部に、4μmのポリイミドから成る絶縁部材をスピンコートによって形成し、フォトリソグラフィによって貫通孔48を形成した後、熱硬化させて絶縁部材26を形成した。
導体パターン膜27は、絶縁部材26上に、1μmのAuを成膜し、フォトリソグラフィおよびウエットエッチングによって形成した。
これまでの実験から、ウエハ131の面内での周波数分布は、約15MHzであると見積もられているため、その周波数分布を補正するように、各共振子本体23に、所定のインダクタンス値および所定のキャパシタンス値を有する導体パターン膜27を接続した。
このようにして作製した図1に示すような薄膜バルク音響波共振子について、その共振特性をインピーダンスアナライザによって行ったところ、共振周波数が1.99GHzであり、Q値が800の良好な特性を得ることができた。またこれと同時に、共振周波数のウエハの面内分布は、1.3MHzに低減されていた。
(実施例2)
実施例1で作製した薄膜バルク音響波共振子と同様のプロセスで、薄膜バルク音響波共振子を直列に2個、並列に2個組み合わせたラダー型フィルタを作製した。ラダー型フィルタの直列および並列の周波数シフトおよびウエハの面内の周波数分布の補正を考慮して、各共振子本体23に接続される導体パターン膜27のインダクタンス値およびキャパシタンス値を設計した。
このようにして作製した図23に示すような薄膜バルク音響波共振子について、その共振特性をインピーダンスアナライザにて行ったところ、共振周波数が1.95GHz、3dB帯域幅が62MHz、最小挿入損失が2.5dBの良好な特性を持つフィルタが得られた。またこれと同時に、その共振周波数のウエハの面内分布は、1.5MHzに低減されていた。
本発明は、以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更を加えることは何ら差し支えない。たとえば、圧電体薄膜の材料として、AlNおよびPZTなどを使用してもよいし、成膜方法としてCVD法、およびゾルゲル法なども使用することができる。ゾルゲル法を用いる場合、圧電体薄膜の材料を含む溶液を基板にスピンコートした後、焼成して圧電体薄膜を形成する。特にPZTなど、電気機械結合係数が大きい強誘電体材料を使用した場合、共振周波数と反共振周波数との差が大きい薄膜バルク音響波共振子を実現することができる。共振周波数と反共振周波数との差が大きい薄膜バルク音響波共振子を用いてフィルタを形成すると、バンド幅を広くすることができ、広帯域のスペクトルを使用する無線通信機器に好適に使用することができる。
前述したように第1および第2電極36,37の材料としては、Moの他に、W、Al、Au、Cuを使用することもできるし、それらの材料を組み合わせて使用することもできる。たとえば、本実施例で使用したMoから成る電極は、固有音響インピーダンスが大きいため、良好な共振特性を得ることができるが、導電率が比較的小さいという欠点を持っている。このため、たとえば、第2電極37をMoから成る層とAuから成る層とを積層したものとすることによって、良好な共振特性と良好な電気特性を併せ持つ電極とすることができる。
また前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子における共振部40、基板21、その他材料、構造および製造プロセスなどについては、以上の例に特に限定されるものではなく、さらに、共振部40と外部接続のための端子部(図示せず)とを接続する配線および電極の取り回し、および複数の共振部を接続してフィルタとする構成および構造についても特に限定されるものではない。また、導体パターン膜27に積層して形成される保護層を形成してもよく、各層の間に密着層を挿入してもよく、基板21の一表面21aにバッファ層を形成してもよい。また前述した各実施の形態の薄膜バルク音響波共振子をパッケージで覆う構成としてもよい。
また前述した各実施の形態では、基板21の形状を直方体形状としているが、基板21の形状はこれに限らず、たとえば円柱形状に形成してもよく、その不定形状に形成してもよい。基板21の形状にかかわらず、前述した各実施の形態と同様の効果を達成することができる。また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した第2電極37は、第1音響反射部材22の一表面22aの周縁43まで延びて形成されてもよく、絶縁部材26についても、前記周縁43まで形成されてもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。