本発明は、商用電源を家電機器などの電源に変換する電源回路の制御技術に関し、さらに詳しく言えば、昇圧チョッパ型の力率改善および高調波電流抑制機能を有する電源装置に関するものである。
この種の電源装置の一例としては、図23に示すように、入力電源(商用電源)1を整流回路2で全波整流し、この交流/直流変換した電圧を昇圧チョッパ回路(力率改善手段)3で所定電圧に昇圧するとともに、電源の力率を改善し、かつ高調波電流を抑制するようにしたものがある。
この場合、昇圧チョッパ回路3は整流回路2の正端子側に直列に接続した昇圧チョークコイル(リアクタ)3aと、昇圧チョークコイル3aに直列に接続した逆阻止ダイオード3bと、この昇圧チョークコイル3aと逆阻止ダイオード3bの間で整流回路2の負端子側に接続したスイッチング素子(例えばIGBT;絶縁ゲート形トランジスタ)3cと、出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ3dとを備えている。
この昇圧チョッパ回路3の動作は、昇圧チョークコイル3aを介してスイッチング素子3cによってスイッチングして短絡する一方、スイッチングされている電圧を逆阻止ダイオード3bから平滑コンデンサ3dに供給して負荷4の電圧とする。なお、負荷4としては、例えば空気調和機のコンプレッサモータに適用した場合インバータ回路4aおよびモータ4bを想定することができる。
このような昇圧チョッパ回路3を含む電源装置の制御方法ついて、本出願人は先に特願2002―158653号を出願している。この先願発明について図24ないし図26を参照して簡単に説明すると、まず交流電源を直流電圧に変換して負荷電圧とする際、その変換された電圧を少なくともリアクタ(昇圧チョークコイル3a)を介して短絡して力率を改善する。
上記電源装置には、交流電源1のゼロクロスを検出する電源位相検出回路5と、昇圧チョッパ回路3の入力電流Iiを検出するための電流センサ6と、それら検出値、昇圧チョッパ回路3の入力電圧Viおよび出力電圧Voをもとにしてスイッチング素子3cを制御する制御部8と、この制御部8からの信号によりスイッチング素子3cを駆動する駆動部7とを備えてなる。
制御部8は、昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子3cをスイッチングするとともに、入力電流と正弦波状の入力電流基準信号との比較結果によりそのスイッチング素子3cをオン、オフしてその昇圧チョッパ回路3の出力電圧Voを負荷の電圧とする。
このとき、図24に示すように、出力電圧指令値と検出出力電圧Voとの偏差が演算手段8aで算出され、この算出偏差により電流基準信号振幅作成手段8bで入力電流基準信号Irの振幅値(いわゆる基準となる正弦波状の振幅値)が作成される。
この作成振幅値と検出入力電圧Viとの乗算が乗算手段8cで行われ、この乗算結果の入力電流基準信号(電流指令値)と電流検出値Iiをもとにしてヒステリシスコンパレータ8dでヒステリシスが作成され、このヒステリシスにより入力電流の上限値および下限値が作成され、つまり入力電流Iiがその上限値および下限値の範囲内に収まるように、上記スイッチング素子3cがスイッチングされる。
一方、上記交流電源のゼロクロスを電源位相検出回路5で検出するとともに、そのゼロクロスの所定前から同ゼロクロスまでの所定期間がスイッチング動作禁止時間作成手段8eで作成され、この作成信号によりヒステリシスの出力がアンド回路8fで禁止される。
これにより、図25および図26に示すように、その禁止区間だけスイッチング素子3cのスイッチングが禁止されるため、入力交流電源のゼロクロス点で入力電流が強制的にゼロとなり、そのゼロクロス点近傍における入力交流波形が改善され(正弦波状にされ)、高次高調波電流の低減が図れる。
しかしながら、上記昇圧チョッパ回路3の制御において、入力電圧Viが出力電圧Voより大きくなる付近(Vi≧Vo区間;入力電流Iiのピーク域)では、入力電圧や出力電圧の変動、あるいは負荷4の変動により入力電流Iiが下限値にかかり、スイッチング素子3cのスイッチング回数が増えると、当該電流制御による不具合が生じる。
例えば、図25に示すように、その入力電流Iiが下限値にかからない場合(つまり負方向変動が小さい場合)には、スイッチング素子3cのスイッチング回数が増えない。これと比べて図26に示すように、入力電流Iiが下限値にかかる場合にはスイッチング素子3cのスイッチング回数が増加し、すなわち交流電源半周期毎のスイッチング回数が異なり、一定にならずに変動する。
この交流電源半周期毎におけるスイッチング回数が変動するということは、当該電流制御が安定せず、高次高調波電流の低減を阻害するだけなく、電源高調波規制のクリア対策が難しくなる。また、1回のスイッチング分によっても、出力電圧に影響が及ぶために安定した負荷電力供給ができなくなり、特に負荷4がモータである場合モータ回転数が安定せず、騒音などの原因ともなる。
上記課題を解決するため、本発明は、交流電源を直流電圧に変換して負荷電圧とする際に、上記交流電源をリアクタを介して短絡して力率を改善する電源装置において、上記リアクタを含む力率改善手段のスイッチング素子をスイッチングするとともに、入力電流と電源電圧波形の入力電流基準信号との比較結果により、上記スイッチング素子をオン、オフして上記力率改善手段の出力電圧を負荷電圧とする一方、上記交流電源のゼロクロスを検出し、該ゼロクロス検出をもとにして所定回数だけ上記スイッチング素子をスイッチングさせ、上記ゼロクロス検出からの所定期間に上記スイッチング素子のスイッチング動作が完了するように上記スイッチング素子のスイッチング回数を調整し、上記所定期間以降に上記スイッチング素子のスイッチング動作が行われた場合は、前回の上記スイッチング回数から所定の回数分だけ上記スイッチング回数を減じて上記スイッチング素子のスイッチング動作を行うようにしたことを特徴としている。
上記所定期間以前に上記スイッチング素子のスイッチング動作が完了した場合は、前回の上記スイッチング回数から所定の回数分だけ上記スイッチング回数を増加させて上記スイッチング素子のスイッチング動作を行うようにすることが好ましい。
上記スイッチング素子のスイッチング回数を変更した結果、上記スイッチング素子のスイッチング動作が上記所定期間に完了しない場合は、上記所定期間を補正する手段を設けるようにすることが好ましい。
上記所定期間は、入力電流、電源電圧、リアクタインダクタンス、電流ヒステリシス幅、又は、スイッチング回数をパラメータとしたときの、上記スイッチング素子のスイッチングが許可状態にあるときの期間と、高調波に関する評価指数との関係に基づいて、設定されることが好ましい。
無負荷時の出力電圧と有負荷時の出力電圧を検出し、上記無負荷時の出力電圧と上記有負荷時の出力電圧の比が所定値となるように電圧制御することが好ましい。
上記交流電源は、整流手段により直流電圧に変換されて上記負荷電圧とされ、上記無負荷時の出力電圧と上記有負荷時の出力電圧に代えて、整流平均値または実効値を用いることが好ましい。
上記スイッチング素子のスイッチング回数は、上記スイッチングが上記交流電源の電源位相がゼロクロス点から90度以内に完了するように予め定められた回数に設定されることが好ましい。
上記スイッチング回数を設定する際に、当該電源装置の負荷がインバータ手段により所定の回転数で回転制御されるモータである場合、当該モータの回転数あるいはインバータ出力周波数をもとにして求めるようにすることが好ましい。
本発明によれば、交流電源波形のゼロクロスからスイッチング素子のスイッチングを開始するとともに、そのスイッチングを所定回数だけ行うようにしていることから、入力電流波形の正弦波化に寄与して高次高調波を低減し、当該電流制御を安定化することができ、ひいては電源高調波規制対応が容易に行えるようになるという効果がある。また、ゼロクロス検出からの所定期間にスイッチング素子のスイッチング動作が完了するようにスイッチング回数を調整し、所定期間以降にスイッチング素子のスイッチング動作が行われた場合は、前回のスイッチング回数から所定の回数分だけスイッチング回数を減じてスイッチング素子のスイッチング動作を行うようにしていることから、リアクタインダクタンス値のバラツキや電流ヒステリシス幅のバラツキがある状況下でも、ワールドワイド電源電圧範囲に対応するため、スイッチング素子のスイッチング回数を自動調整できるようになるという効果がある。
また、上記スイッチング回数をカウントするためのカウンタをゼロクロス検出によってリセットするようにしたことにより、交流電源の半周期ごとに当該電流制御を行うことになりその電流制御が適切に行われ、また、そのスイッチングを開始する時刻を負荷や入力電流の大きさに応じて変えることから、その電流制御による入力電流波形の正弦波化に寄与する。
また、スイッチングを電源位相90度以内で行い、つまり入力電流のピーク域付近を含めてそのスイッチングを禁止するようにしているため、上述したように入力電流波形の正弦波化に寄与でき、当該電流制御を安定させられる。また、上記スイッチング回数を種々のパラメータで決定していることから、その入力電流波形の正弦波化、電流制御の安定化が最適に行われる。
さらに、上記スイッチング回数を設定するための負荷として、インバータ手段によるモータとした場合、その回転数やインバータ周波数を負荷の大きさとしていることから、上述した効果に加え、特にインバータエアコンや冷蔵庫にとって最適である。
また、上記スイッチング回数、スイッチング制御をソフトウェアによって実現することから、当該電源装置のハードウェアのコストアップにならずに済む。さらにまた、上記スイッチング回数を交流電源の電圧の大きさに応じた値とすることから、家電機器全般に適用し、また産業機器などにも適用可能となる。
本発明の電源装置は、リアクタを含む力率改善手段(昇圧チョッパ回路)のスイッチング手段をスイッチングする際、そのスイッチングを入力電流波形のゼロクロス検出から所定回数(少なくとも電源位相90度以内の所定区間)だけ行い、つまり入力電流のピーク域(入力電圧Viが出力電圧Voより大きくなる付近)において入力電圧や出力電圧の変動、あるいは負荷4の変動があっても、そのスイッチングしないようにして入力電流制御の安定化、高次高調波電流の低減を実現する。
以下に、本発明の実施形態を図1ないし図4を参照して詳しく説明する。なお図1および図2において、図23および図24に示されている構成要素と同一もしくは同一と見なされてよい部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図3(a)は図25(a)および図26(a)に対応している。
図1において、この電源装置は、昇圧チョッパ回路3の入力電流Iiを電流センサ(例えばCT)6からの検出信号により検出する入力電流検出部10と、昇圧チョッパ回路3の入力電圧Viを検出するための入力電圧検出部11と、昇圧チョッパ回路3の出力電圧Voを検出するための出力電圧検出部12と、それらの検出値や電源位相検出回路5による交流電源のゼロクロス検出などをもとにして昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子3cをオン、オフする信号を駆動部7に出力するマイクロコンピュータなどの制御部13とを備えている。なお、他の部分については、図23と同一であることからその説明を省略する。
上記構成の電源装置の動作について、図2の電流制御ブロック線図と図3の波形図およびタイムチャート図とを参照して説明する。
制御部13は、出力電圧指令値(負荷4の印加電圧指令値)と出力直流電圧Voとの偏差をもとにしてスイッチング素子3cをスイッチングするための信号(スイッチング信号)を生成する。このとき、電源位相検出回路(電源ゼロクロス検出手段)5からの検出信号により、入力電源波形のゼロクロス点を検出してパルスカウンタ13aをリセットし、このパルスカウンタ13aが所定のカウント値に達したときにスイッチング素子3cの動作を禁止する。
図2に示すように、まず出力電圧指令値と出力電圧検出部12による出力直流電圧Voとの偏差が演算手段8aで算出され、この算出偏差により電流基準信号振幅作成手段8bで入力電流基準信号の振幅値(いわゆる基準となる正弦波状の振幅値)が作成される。
この作成振幅値と入力電圧検出部11による入力電圧Viとの乗算が乗算手段8cで行われ、この乗算結果の入力電流基準信号をもとにしてヒステリシスが作成される。なお、その入力電圧Viとしては入力電圧波形あるいは入力電圧波形の絶対値を用いるとよい。
そのヒステリシスをもった入力電流基準信号の値と入力電流検出部10による電流検出値Iiとがヒステリシスコンパレータ手段8dで比較され、この比較結果によりスイッチング素子3cのスイッチング信号が作成される。このスイッチング信号により昇圧チョッパ回路3が制御され、つまり従来と同様に入力電流基準信号を基準の正弦波としてスイッチング素子3cがスイッチングされ、入力電流波形が得られる(図3(a)参照)。
一方、電源位相検出回路5による検出電源位相信号(ゼロクロス)のリセット信号によりパルスカウンタ13aがリセットされ、このパルスカウンタ13aの出力信号とヒステリシスコンパレータ8dで得られたスイッチング信号とが論理積手段(アンド回路)8fで論理演算され、この演算結果のスイッチング信号が駆動部7に出力される。
図3に示すように、パルスカウンタ13aはスイッチング素子3cのスイッチング回数をカウントするが(同図(e)参照)、そのパルスカウンタ13aの出力はリセットされた時点でHレベルになり、そのカウント値が予め設定された所定値(パルス設定値)に達したときにLレベルになる(同図(f)参照)。パルスカウンタ13aの所定値としては入力電流Iiのピーク域付近(Vi≧Vo)の区間を含み、例えば電源位相90度以内に相当するパルス数を経験的に求める。
この場合、ゼロクロスの検出により、スイッチング素子3cがオンされ(同図(b),(c)参照)、しかる後入力電流Iiが上昇し、上限値に達したためにスイッチング素子3cがオフにされると(同図(a),(c)参照)、パルスカウンタ13aがインクリメントされる(同図(d),(e)参照)。このようにしてスイッチング素子3cをオン、オフすることにより、入力電流Iiが正弦波形状とされる。
このように、入力電圧Viが出力電圧Voより大きくなる付近(入力電流Iiのピーク域付近)、つまり入力電圧Viや出力電圧Voの変動、あるいは負荷4の変動などが大きくなる領域以降ではスイッチング素子3cのスイッチング動作が禁止される。
したがって、入力電流Iiのピーク域付近まではスイッチングによる電流制御により入力電流波形を正弦波として高次高調波を低減し、そのピーク域以後スイッチングを禁止し、交流電源の半周期毎におけるスイッチング回数のバラツキを抑え(一定とし)て当該電流制御の安定化を図ることができ、ひいては電源高調波規制のクリア対策を容易に図ることができる。
なお、上記スイッチング素子3cのスイッチング開始時刻は、ゼロクロスの検出時刻としているが、そのゼロクロス検出に対して所定の正の値(遅らせ)あるいは負の値(早め)としてもよい。その場合、その所定の正の値あるいは負の値は負荷4あるいは入力電流Iiの大きさより変え、例えばそれらが大きいほど早め、小さいほど遅らせ、また上限値と下限値の範囲量を加味することが好ましい。
上記所定値としては、電源周波数(例えば50Hzや60Hz)、入力電圧や入力電流の大きさ、出力電圧の大きさ、負荷などをもとにして変更するようにするとよく、またそれら個々をもとにし、あるいはそれらを組み合わせて適用すると好ましく、さらにそれら当該電源装置の使用環境や同電源装置を使用する機器などに応じて異なるようにようにするとよい。
すなわち、電源の高調波特性は入力電流や電源周波数などによって変化し、そのスイッチング回数が高調波抑制効果における重要なパラメータになっているため、その高調波特性に応じてスイッチング回数を変えることにより、高調波抑制効果が上がるからである。また、電源高調波規制値に対して余裕がある場合、スイッチング回数を減らすことにより、スイッチング損失やリアクタ損失の面に関して効率改善効果があるからである。
上記スイッチング回数を変更する場合には、例えば入力電流が7A以上であるときにスイッチング回数が5回に設定されている場合、その入力電流が6A以下になったときにはスイッチング回数が変更されるが、交流電源が50Hzであれば8回に、交流電源が60Hzであれば7回に変更される。
上記負荷4としては、従来例で述べたようにインバータ手段を介したモータが最適である。この場合、上記スイッチング開始時刻および所定値は、そのモータ回転数あるいはインバータ周波数に応じて求めた値とすることが好ましい。上述したことにより、入力電流波形がより正弦波に近づけるようにすることができ、当該電流制御の安定化を図ることができる。
また、その入力電源電圧を検出する検出手段を設け、上記所定値をその入力電源電圧の大きさに応じて変えるようにしてもよい。ところで、上述した所定値を設定するパラメータは、電源環境および使用機器などによって異なる。
そこで、上述したスッチング素子3cのスイッチング制御をソフトウェアで構成すれば、例えば図4のコンバータブロック線図とすることにより、PFC(コントローラ)のワールドワイドを図ることができる。
この場合、電圧制御などの高速制御を必要としないループをソフトウェアで構成しており、電流コントローラは図2に示すヒステリシスコンパレータ8d、論理回路8f、駆動部(ゲート駆動回路)7およびスイッチング素子(IGBT)3cなどのパワー系主回路によるスイッチング動作制御部を表している。
そのソフトウェア構成20は制御部13のマイクロコンピュータによって実現されるが、まず電源環境および使用機器などに応じた電圧指令値20aと出力電圧検出値の偏差が演算手段20bで算出される。この偏差を用いて電圧基準信号振幅作成手段8bのPI(比例積分)20cで比例項Pが算出されるとともに、その積分項Iが算出され、これら比例項Pおよび積分項Iにより電流指令振幅値が算出される。
その電流指令振幅値がD/A変換手段20dでアナログの出力信号に変換されて乗算手段7cに出力される。上述したように、その乗算手段7cによる乗算結果をもとにして電流制御を行う。
この電流制御では、電流指令値と出力電流値の偏差を演算手段21で算出してこれを電流コントローラ22に入力し上述した動作を行う。このソフトウェア構成20にはパルスカウンタ13aおよびスイッチング動作コントローラ20eがあり、パルスカウンタ13aは電源位相検出回路(ゼロクロス)5からのリセット信号によりカウント動作を開始する。
スイッチング動作コントローラ20eはパルスカウンタ13aのカウント値が上記電源環境および使用機器などに対応したパラメータによって決定した所定値に達したか否かを判定してそのカウント値を監視する一方、パルスカウンタ13aのカウント値が所定値に達するまでスイッチング素子3cのスイッチング許可信号(図3(f)参照;Hレベル)を電流コントローラ22に出力する。
電流コントローラ22では、入力電流Iiが上限値と下限値の範囲に入るようにスイッチング素子3cをオン、オフするとともに、このスイッチング回数情報をパルスカウンタ13aに出力する。
パルスカウンタ13aのカウント値が所定値に達すると、それを監視しているスイッチング動作コントローラ20eはスイッチング素子3cのスイッチングを禁止するための許可信号をLレベルとする。このLレベルの許可信号により電流コントローラ22ではスイッチング素子3cのオン、オフ動作を停止する。
一方、上記電流コントローラ22の動作によって得られた入力電流全波は、演算手段21にフィードバックされるとともに、当該電源装置を搭載するシステムの関数G24で出力電流にされる。この出力電流には演算手段25で外乱による負荷電流が加味され、これが積分部26で積分されて出力電圧となる。
その出力電圧が負荷4の電源電圧にされるとともに、LPF27でノイズ除去されて上記ソフトウェア構成20にフィードバックされる。このフィードバックされた出力電圧がA/D変換手段20fで上記演算手段20bの出力電圧検出値にされる。
なお、当該電源装置の保護のために過電圧・過電流保護手段23からは、過電圧・過電流保護情報がスイッチング動作コントローラ20eおよび電流コントローラ22に出力され、既に公知である保護動作が行われる。
このように、上記ソフトウェア構成20によれば、種々状態などに応じたパラメータを用いることにより、スイッチング素子3cのスイッチング制御を適切に行え、また電源装置(ハードウェア)のコストがアップせずに済む。
実施例3において、上記実施例と共通する部分については、同じ符号を付すことで説明は省略する。
力率改善および高調波電流抑制手段の一例として、上記実施例1または実施例2に記載された方式のものがある。この方式は、少ないスイッチング回数にて電流制御を安定させ、電源高調波規制対応を容易としている。具体的には、図1に示されるような昇圧チョッパ回路を用いて、リアクタを介して電源を短絡する事により、入力電流波形を任意の波形に制御可能とし、図2に示すような制御構造にて、入力電流波形が電源電圧波形状になるようにスイッチング素子をオンオフするとともに、所定のスイッチング回数到達後、スイッチング動作を禁止することで入力電流を安定させて制御を行っている(図3の波形参照)。
しかしながら、この方式では、入力電流波形が、リアクタのインダクタンス値バラツキや、抵抗値バラツキによるヒステリシス幅(上限値と下限値の設定範囲)バラツキなどの部品バラツキに影響を受けやすい。例えば、ヒステリシス幅が狭い場合と、ヒステリシス幅が広い場合とでは、出力負荷電圧およびスイッチング回数が同じならば、電流指令値が異なるように動作するため、図5(a)および同図(b)に示すように電流波形が異なってくる。また、リアクタインダクタンスが異なる場合でも、電流波形は異なる。これらの波形の相違は、高調波電流に大きな影響を与え、場合によって電源高調波規制値を超えることがある。
一方、電流のヒステリシス幅およびリアクタインダクタンス値が同じ場合でも、電源電圧が異なる状況でスイッチングを行うとスイッチング素子の短絡および解放時の電流の傾きが異なるため、電源電圧の定格が異なる地域においても電流波形が異なる。電源電圧変動幅を大きく見なければならないようなワールドワイド対応の電源とするには、国内の200−10%から海外の240V+10%等の範囲で電源高調波を抑制することが必要であるため、従来技術では、部品バラツキに対応させることが困難であった。
電源高調波について、IEC規格で40次までの高調波電流に対して次数毎に限度値が定められており、一元的に表しにくい為、下記のように高調波評価指数Ymaxという値にて説明する。
入力電流のn次高調波成分をIn、n次高調波に対する限度値をIsnとすると、限度値にて規格化した値はそれぞれ、
I2/Is2、I3/Is3、I4/Is4、‥、In/Isn、‥、I40/Is40となり、限度値に対する割合を示す値となる。
この中で、最大を示す値をYmaxとし、
Ymax=max(I2/Is2、I3/Is3、I4/Is4、‥、In/Isn、‥、I40/Is40)
と定義すると、Ymax>1のときに規格に対してNG、Ymax≦1のときに規格に対してOKと表すことができる。
ここで、上記のように、リアクタのインダクタンス値バラツキや、抵抗値バラツキによるヒステリシス幅(上限値と下限値の設定範囲)バラツキなどの部品バラツキや、電源電圧の相違は、Ymax>1となる要因となる。そのため、従来は、電源高調波規制値を満たすことが困難であった。
第3実施例では、少ないスイッチング回数にて力率を改善しつつ、部品バラツキおよび電源変動に強い電源高調波規制対応の制御を行なうことを目的としている。
ここで、図3に示すスイッチング許可信号が許可状態にある時間幅をTonとすると、入力電流、電源電圧、リアクタインダクタンス、電流ヒステリシス幅、スイッチング素子3cのスイッチング回数をパラメータとしたときの、Ton−Ymaxの特性は、図7のようになることが明らかになった。同図に示すように、Tonが2.75〜3.1msであるときに、Ymax≦1となるという結果が得られた。
しかしながら、入力電流とTonの関係は、図8に示す関係があり、リアクタインダクタンスが大きく、または/かつ、電流ヒステリシス幅が大きく、または/かつ、スイッチング回数が多く、または/かつ、電源電圧が小さい、ときには、Tonが大きくなり同図(1)の方へシフトする一方、リアクタインダクタンスが小さく、または/かつ、電流ヒステリシス幅が小さく、または/かつ、スイッチング回数が少なく、または/かつ、電源電圧が大きい、ときには、Tonが小さく同図(2)の方へシフトするなど、従来の技術では、Ymax≦1となるようなTonの値にセットすることが困難であった。
そこで、本実施形態では、リアクタインダクタンス値のバラツキや電流ヒステリシス幅のバラツキがある状況下でも、ワールドワイド電源電圧範囲に対応するため、Tonが所定の範囲に入るようにスイッチング素子3cのスイッチング回数を自動調整する電源装置を提供する。
本実施形態の電源装置は、図3に示すスイッチング許可信号のオン幅Tonが図7における第一の所定値(2.75)より小さいときは、スイッチング素子3cのスイッチング回数を増加させ、オン幅Tonが第二の所定値(3.10)より大きいときはスイッチング素子3cのスイッチング回数を減少させる。なお、スイッチング許可信号のオン幅Tonが第一の所定値(2.75)以上であり、第二の所定値(3.10)以下であるときには、スイッチング素子3cのスイッチング回数はそのままとする。
ここで、図7は図6に示すパラメータの値を変動させ、そのときのYmaxを測定し、Tonを横軸にYmax値をプロットした図である。ここで、Ymax>1の条件で、IEC規格に対してNGであることから、図7は、図6の範囲内における任意のリアクタおよび電流ヒステリシス幅に対し、スイッチング素子3cのスイッチング回数を変更して、Tonが、常にYmax≦1となるような範囲(上限値が3.05ms〜3.10ms、下限値が2.8ms前後)に制御すれば、IEC規格を満足するということを示している。
このことは、結果として、図9および図10に示すように、電流ヒステリシス幅が小さい時にはスイッチング素子3cのスイッチング回数を6回に設定し、電流ヒステリシス幅が大きいときにはスイッチング回数を5回に設定するという具合に、電流のヒステリシス幅に関わらず、スイッチング動作を行っている区間の瞬時平均値が等しくなるようスイッチング回数を変更させるという意味を持っている。
すなわち、図7は、リアクタのインダクタンス値バラツキや、抵抗値バラツキによるヒステリシス幅バラツキなどの部品バラツキを考慮して、これらのパラメータを変動させたときのTon−Ymaxの特性を表しているため、図7の結果に従って、スイッチング回数を変更して、Tonが常にYmax≦1となるような範囲に制御すれば、上記部品バラツキがあっても、電源高調波規制値を満たすことになる。
更に言えば、図7に示す特性は、電源周波数50Hz時のものであるため、Tonの時間軸を電源位相軸に置き換えることで、60Hz時にも適用可能となる。これにより、電源のワールドワイド化を図ることができ、部品バラツキのみならず、電源変動(電源電圧の相違)に対しても強い電源高調波規制対応の制御を行なうことが可能となる。
具体的には、図11および図3に示すように、Ton上限値/下限値算出手段102は、図7をもとに、Ymax≦1となる様な時間Tonの値(上限値/下限値)を出力する。本例では、上限値を3.10msに、下限値を2.75msに設定するとして説明する。後述するように、時間Tonの上限値/下限値は、入力電流の大きさ等の条件によって変化させてもよく、その場合には、Ton上限値/下限値算出手段102は、その入力電流の大きさ等の条件に基づいて、最適な上限値/下限値を算出する。
電源ゼロクロス検出手段5による検出電源位相信号(ゼロクロス)のリセット信号によりパルスカウンタ13a及びタイマカウンタ101がリセットされる。これにより、タイマカウンタ101は、時間Tonの計測を開始する。パルスカウンタ13aはスイッチング素子3cのスイッチング回数をカウントし、そのカウンタ値が予め設定された所定値(パルス設定値、本例では5回とする)に達したときに、パルスカウンタ13aの出力(図3の(f))はLレベルとなり、これにより、タイマカウンタ101による時間Tonの計測が停止する。このことから、タイマカウンタ101からは、スイッチング回数が5回のときの時間Tonが出力される。本例では、このときの時間Tonが例えば2.70msであったとする。
一方、Ton上限値/下限値算出手段102からは、上述した上限値/下限値の値(上限値は3.10ms、下限値は2.75ms)がスイッチング回数算出手段103に出力される。スイッチング回数算出手段103では、時間Tonと、上限値/下限値とを比較し、ここでは、時間Tonが下限値を下回っているため、パルスカウンタ13aに設定されたパルス設定値を1だけ増加させる(本例では6回)。これにより、次の周期(ゼロクロス)からは、パルスカウンタ値が6回になる分だけ、時間Tonが長くなり、時間Tonが下限値を上回る方向に制御する。
一方、上記例とは反対に、スイッチング回数算出手段103において、時間Tonと、上限値/下限値とが比較された結果、時間Tonが上限値を上回っている場合には、パルスカウンタ13aに設定されたパルス設定値を1だけ減少させる(本例では4回にする)。これにより、次の周期(ゼロクロス)からは、パルスカウンタ値が4回になる分だけ、時間Tonが短くなり、時間Tonが上限値を下回る方向に制御する。
このように、スイッチング回数算出手段103では、時間Tonと、上限値/下限値とが比較され、その比較結果に基づいて、パルスカウンタ13aに設定されたパルス設定値を1だけ増加又は減少させることで、その後は、時間Tonが上限値と下限値の範囲内に収まるようにする。これにより、図7の結果に従って、Tonが常にYmax≦1となるような範囲に制御すれば、上記部品バラツキがあっても、電源高調波規制値を満たすことができる。
上記のように、タイマカウンタ101により検出されたパルスカウンタ13aの出力に対応するスイッチング許可信号幅Tonと、Ton上限値/下限値算出手段102により算出された上限値(図7の3.10)および下限値(同図の2.75)とを、スイッチング回数算出手段103により比較し、その比較結果に基づいて、パルスカウンタ13aのカウンタデータをセットする。そして、スイッチング素子3c(図1参照)は、パルスカウンタ13aにセットされた規定回数分だけスイッチングを行う。
上記において、スイッチング回数の変更は入力電流波形に過渡状態を生じさせるため、変更周期を電源周期よりも遅く、数秒程度とする一方、ローパスフィルタ104を用いて時間Tonのフィルタ処理を行うことが望ましい。
また、時間Tonの上限値/下限値は、入力電流の大きさによって変化させてもよく(上限値を3.05ms〜3.10msよりも小さな値にし、下限値を2.8ms前後よりも大きな値にしてもよく)、入力電流の大きさによって変化させることで、軽負荷から重負荷まで高力率を保つことができる。例えば、軽負荷の場合、上限値を3.05ms〜3.10msよりも小さな値、例えば2.9msに設定して、スイッチング素子3cのスイッチング回数を少なくすることで、スイッチング損失を少なくすることができる。一方、重負荷の場合には、下限値を2.8ms前後よりも大きな値、例えば2.9msに設定することで、力率を良くすることができる。
次に、図12から図18を参照して、実施例4について説明する。
実施例4は、本出願人の出願(特願2004−6982)に係る発明と、上記実施例3とを組み合わせたものである。以下に、本出願において、実施例4に特有の内容(特願2004−6982の内容)を中心に説明する。
上記において、出力直流電圧Voは入力電流波形および高調波電流に対して重要なパラメータであるということができる。したがって、上記出力直流電圧Voにバラツキがあると、上記電流制御による入力電流に影響を及ぼし、つまり当該電源装置を搭載する機器に応じて高調波電流特性および力率改善特性が異なることになり、当該電源装置の適応性が低くなるという問題が起こる。
上述した電源装置にあっては、電圧フィードバック制御をコスト面などからマイコンのソフトウェアによって行うことが有用であり、そのためには出力直流電圧Voを検出するため同出力直流電圧Voを分圧する分圧抵抗回路を設け、この分圧抵抗回路の出力をA/D変換すればよい。
しかしながら、上記分圧抵抗回路の抵抗値バラツキやA/D変換に必要なA/Dコンバータリファレンス電圧AVRのバラツキなどにより、出力直流電圧Voの検出に誤差が生じることになり(つまり本来の値より高く、あるいは低くなり)、この誤差を含む出力直流電圧Voがフィードバックされるため、出力電圧にバラツキが生じる。
この部品などのバラツキは±4ないし6%程度であるが、例えば300V程度の出力直流電圧Voを検出するときには±12ないし18V程度の誤差にもなり、この出力直流電圧Voの変動は当該電流制御が安定せず、また電源高調波規制がクリアできないなどの高調波特性の安定にも問題があった。
そのバラツキは、入力電流波形にも大きく影響を及ぼし、入力電流の増大による電源電圧低下や他の系統接続機器の影響による電源電圧の増減により入力電流波形が入力電圧波形と相似形に保てなくなり、当該電流制御の安定に影響を及ぼす。
そこで、第4実施例では、以下の構成を採用している。
本実施形態の電源装置は、少なくともリアクタを含む昇圧チョッパ回路を制御する際、その昇圧チョッパ回路の出力電圧Vo(t)を検出するための分圧抵抗回路、LPFおよびA/Dコンバータを利用して無負荷出力電圧Vo(0)を検出する一方、この無負荷出力電圧Vo(0)に所定比率値を乗算したA×Vo(0)と有負荷出力電圧Vo(t)との電圧偏差Ve分に応じた電圧制御を当該電流制御に加味するようにし、無負荷時の電圧に対して有負荷時の電圧を所定比に保つことにより、分圧抵抗やA/Dコンバータレファレンス電圧AVRのバラツキにかかわらず、負荷出力電圧を一定に保つようにしてなる。
すなわち、本実施形態によると昇圧チョッパ回路の出力電圧と無負荷出力電圧の比Vo(t)/Vo(0)が分圧抵抗やA/Dコンバータのリファレンス電圧AVRのバラツキに依存しない値となる。
よって、上記比率値A(=Vo(t)/Vo(0))を所定の回路で測定して求めておけばバラツキによらずどの機種でも使用可能な値となる。したがって、上記比率値Aをあらかじめテーブルなどに記憶しておくことによりVo(t)=AVo(0)とすることができ、どのような装置でも真値に補正できる。
(例1)
以下に、図12ないし図17を参照して詳しく説明する。なお図12において、図1の構成要素と同一もしくは同一と見なされてよい部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
図12において、この電源装置は、昇圧チョッパ回路3の入力電流Iiを電流センサ(例えばCT)6からの検出信号により検出する入力電流検出部10と、昇圧チョッパ回路3の入力電圧Viを検出するため直列に接続した抵抗R1,R2の分圧抵抗回路15と、その出力電圧(出力直流電圧)Voを検出するため直列に接続した抵抗R3,R4の分圧抵抗回路16および雑音除去のLPF(ローパスフィルタ)17と、このLPF17を経た電圧をA/D変換して検出し、それら検出値や電源ゼロクロス検出部(電源位相検出部)5による交流電源1のゼロクロス検出などをもとにして昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子3cをオン、オフする信号を駆動部7に出力するマイクロコンピュータなどの制御部14とを備えている。
なお変形例として、図12に示されている昇圧チョークコイル(リアクタ)3aおよびスイッチング素子3cを整流回路2の前段に入れることによってもアクティブフィルタとして同様な効果が得られ、その場合、電流検出手段などは適宜位置を変更すればよい。また、制御部14は図1の制御部13と同様の機能を備え、他の部分については図1と同様であることからその説明を省略する。
図13を併せて参照して、上記制御部14には、当該出力電圧のバラツキを抑えるための指令値(比率値)Aを出す電圧指令14aと、LPF13を経た出力電圧Vo(t)をA/D変換して検出するA/D14bと、このA/D変換された出力電圧Vo(t)を無負荷時と有負荷時に切り替えるための判定手段14cと、その無負荷時の出力電圧Vo(0)を記憶する無負荷電圧記憶手段14dと、この無負荷時の出力電圧Vo(0)に上記比率値Aを乗算する乗算手段14eと、この乗算結果の電圧指令値と有負荷時の出力電圧検出値Vo(t)とを演算する演算手段14fと、この演算結果をもとにして入力電圧検出値Vi(t)の補正量を算出する電圧コントローラ14gと、電源ゼロクロス検出部5からの検出信号をもとにして従来と同様にスイッチング素子3cのオン、オフタイミングを発生するスイッチング動作コントローラ14hとが含まれる。
そして、上記制御部14は、入力電圧検出値Vi(t)に電圧コントローラ14gで得た演算値を乗算する乗算手段14iと、そのスイッチング動作コントローラ14hによるスイッチングタイミングをもとにしてスイッチング素子3cのスイッチング信号を出力する際、その乗算手段14iの乗算結果を加味して入力電流Iiを制御する電流コントローラ14jとを備えている。そのスイッチング動作コントローラ14hおよび電流コントローラ14jは図24に示すブロック構成でもよい。
上記構成の電源装置の動作について、図13の処理系統ブロック線図および図14ないし図16のフローチャート図を参照して説明する。制御部14は、従来同様に当該出力電圧指令値(負荷4の印加電圧指令値)をもとにしてスイッチング素子3cをスイッチングして出力電圧を負荷4に必要な所定値にするとともに、入力電流波形を正弦波形状にする。なお、入力交流波形を改善し、高次高調波電流の低減を図るため、入力電源のゼロクロス点をもとにして所定回数だけスイッチング素子3cをスイッチングする。
ここに、本実施形態のソフトウェア構成の処理を説明すると、まず電圧指令値算出処理系では判定手段14cの切り替えによって無負荷時の出力電圧Vo(0)を得て無負荷電圧記憶手段14dに記憶しており、この出力電圧Vo(0)を用いて電圧指令値Vo*(t)が得られる。判定手段14cは、負荷4を運転しているか否かによって無負荷あるいは有負荷状態を判定する。
なお、上記無負荷出力電圧は所定の期間だけ無負荷状態を作り出して検出し、この検出に際しては後述する無負荷判定手段をもって無負荷状態を判定してその検出値を記憶、更新するとよい。また、上記無負荷出力電圧の検出は、当該電源装置の電源投入後から負荷起動開始までの所定期間を無負荷状態としてその所定期間に実行し、あるいはインターバルタイマを用いて所定期間ごとに上記負荷の運転を停止してその運転停止時に行うことが好ましい。
そして、図14に示すように、比率値Aが予め経験的に求めたテーブルから参照され、あるいは現出力電圧Vo(有負荷時の出力電圧Vo(t))をもとにして算出される(ステップST1)。この比率値Aが無負荷時に得た出力電圧Vo(0)に乗算され、電圧指令値Vo*(t)(=A×Vo(0))が得られる(ステップST2)。
上記比率値Aは、電源高調波規制のクリアを勘案して求めた値であり、また負荷4がモータである場合その負荷の量に応じてモータ制御系が要求する電圧値から求めた値であり、テーブル参照や関数による演算によって得たものであるかを問わない。
上記出力電圧や入力電圧などの検出に際してA/D変換を行うA/D変換処理系では、図15に示すように、A/D変換データ(出力電圧や入力電圧)の種類を判断する(ステップST10)。そのデータ種類が出力電圧である場合、A/D変換結果をフィルタ処理するとともにVo(t)に代入する(ステップST11)。続いて、負荷状態を判断し(ステップST12)、有負荷であれば出力電圧Vo(t)をそのままとし、無負荷であれば出力電圧Vo(t)を初期値Vo(0)に代入する(ステップST13)。
上記データ種類が入力電圧である場合、A/D変換結果をフィルタ処理するとともにVi(t)に代入する(ステップST14)。続いて、負荷状態を判断し(ステップST15)、有負荷であれば入力電圧Vi(t)をそのままとし、無負荷であれば出力電圧Vi(t)を初期値Vi(0)に代入する(ステップST16)。その他のデータに関しては、それに応じた処理を実行する(ステップST17)。
上記電圧フィードバック制御を行う出力電圧制御系では、図16に示すようにPI制御であれば上記電圧指令値Vo*(t)と出力電圧検出値Vo(t)の電圧偏差Veを演算手段14fで算出する(ステップST20)。その電圧偏差Veに対して比例項P(=Kp×Ve)を求めるとともに、積分項I(=Ki×シグマVe)を求め、これにより指令振幅D(=P+I)を得て(ステップST21ないしST24)、これを用いて電流指令値を得る。なお、Kpは任意の比例ゲイン、Kiは任意の積分ゲインである。
上述した処理系のインターバル期間については、電圧指令値算出処理系のインターバル期間≧出力電圧制御処理系のインターバル期間≧A/D変換処理系のインターバル期間の関係を基本とする。
上記処理により、電圧コントローラ14gは、電圧指令値をVo*(t)とすると、出力電圧Vo(t)がVo*(t)になるように、入力電圧Viを補正する乗算値を乗算手段14iに出力する。
これによれば、処理系における出力電圧や入力電圧などを同じ分圧抵抗回路15の抵抗R1,R2やA/Dコンバータリファレンス電圧AVRを用いて得ている。また、上記電圧指令値Vo*(t)(=A×Vo(0))と出力電圧Vo(t)の電圧偏差Veが分圧抵抗回路15の抵抗R1,R2のバラツキやA/Dコンバータリファレンス電圧AVRのバラツキなどに対応した量に相当する。
したがって、上記スイッチング動作コントロール14hにて決定されたスイッチング素子3cのスイッチング区間において、電流コントローラ14jでは電流制御が行われるとともに、この電流制御に上記乗算手段14iの乗算結果を加味して出力電圧Vo(t)を一定とする電圧制御が加味される。
その乗算結果を加味する電流制御としては、スイッチング動作コントロール14hおよび電流コントロール14jを図24に示す構成とするならば、その電流制御における出力電圧指令値などを変更すればよい。
このように、分圧抵抗R1,R2のバラツキやA/Dコンバータリファレンス電圧AVRのバラツキなどがあり、当該電流制御における電圧検出に誤差が生じても、電圧制御によりその検出誤差による影響がなく、出力電圧Vo(t)が一定に保たれ、当該電流制御の安定化が図られ、また入力電流波形の機器によるバラツキが抑えられ、当該電源装置の適用性の向上が図られる。
(例2)
上記入力電流波形が入力電圧Viにも影響を及ぼすことから、上記A/D変換処理系を図17に示すルーチンで実行するようにしてもよい。この例2における電圧指令値Vo*(t)を得る方法は、比率値Aを乗算する出力電圧を無負荷時の出力電圧Vo(0)に有負荷時と無負荷時の入力電圧Viの比率Vi(t)/Vi(0)を乗算して得る(ステップST30,ST31)。
これにより、入力電圧Viの変動を考慮することになるため、電源電圧が変動しても入力電流波形を入力電圧波形と相似形に保て、当該電流制御をより安定化することができる。また、上述した実施例1により、無負荷時の出力電圧により電圧指令値Vo*(t)が設定されるため、入力電流の増大による電源電圧の低下や他の系統接続機器の影響による電源電圧の増減にもかかわらず、入力電圧ピーク値と出力電圧との比が一定に保てるようになる。
なお、上述した例1では無負荷出力電圧および有負荷出力電圧を用いて電圧制御を行うようにしているが、上記整流回路2で整流された直流電圧の整流平均値あるいは実効値を検出する手段および無負荷時の整流平均値あるいは実効値を記憶する記憶手段とを設けて、その無負荷出力電圧および有負荷出力電圧に代えて、その記憶手段の整流平均値あるいは実効値および検出整流平均値あるいは実効値を用いるようにしてもよい。
本実施形態では、図18に示すように、上記実施例3として説明した制御(符号200)と、上記図12から図17を参照して上記例2として説明した負荷電圧比率制御(符号300)とを組み合わせると、負荷電圧を安定させることができ、さらに、コンバータシステム全体が部品バラツキに対してロバスト性を発揮できる。このとき、図18の制御ブロック図に示すように、比較的速度を要求される制御をハードウェアにて、遅い処理系でもよい制御をソフトウェアにて構成すると製品コストを抑えることができる。なお、同図における電流コントローラ22は、図11に示すヒステリシスコンパレータ8dにて構成できる。また、この実施例4は、他の実施例との組み合わせも容易に可能である。
次に、図19を参照して、実施例5について説明する。
実施例5では、時間Tonの下限値(2.75)のみがTon下限値算出手段102に設定されている。実施例5では、パルスカウンタ13aの使用が省略される。
図19に示すように、電源ゼロクロス検出手段5による検出電源位相信号(ゼロクロス)のリセット信号(図中ゼロクロスタイミング)によりタイマカウンタ101がリセットされる。これにより、タイマカウンタ101は、時間Tonの計測を開始する。タイマカウンタ101による計測値が下限値(2.75)を超えた直後であって、スイッチング素子3cのスイッチングオフ信号の立下りエッジ(図中IGBT立ち下がりエッジ)を検出したときに、スイッチング許可信号を禁止出力とする。
このように、時間Tonの下限値(2.75)を越えた直後であって、スイッチング素子3cのスイッチングオフ信号の立下りエッジのタイミングで、スイッチング許可信号を禁止出力にすることで、確実に、時間Tonを図7の下限値(2.75)と上限値(3.10)の間に入れることができる。即ち、上限値(3.10)を予め設定しておかなくても、下限値(2.75)を越えた直後に、スイッチング許可信号を禁止出力にすることで、時間Tonが上限値(3.10)を超えることはない。
実施例5によれば、パルスカウンタ13aを使用せずに済むため、ハードウェアのコストダウン、もしくは、ソフトウェア負荷の軽減が実現できる。
次に、実施例6について説明する。
さらに言えば、負荷電圧をあまり安定させる必要がないような簡易的なコンバータ装置においては、スイッチング信号(図19のIGBTゲート駆動信号)と同期せずに、時間Tonが上限値(3.10)と下限値(2.75)の間になるよう、強制的にスイッチング許可信号を禁止出力としてもよい。この場合でも、図9および図10に示すスイッチング動作区間の瞬時平均値を等しくすることができ、電源高調波特性を安定化させ、高調波電流を抑制することができる。
即ち、図19に示した実施例5では、タイマカウンタ101による計測値が下限値(2.75)を上回った後、IGBTゲート駆動信号の立下りのタイミングを待って、スイッチング許可信号を禁止出力としていたのに対して、実施例6では、タイマカウンタ101による計測値が下限値(2.75)を上回った時点で、IGBTゲート駆動信号の立下りのタイミングを待つことなく、直ちに(強制的に)スイッチング許可信号を禁止出力とする。
上記実施例6では、スイッチング許可信号を禁止出力とするタイミングを、タイマカウンタ101による計測値が下限値(2.75)を上回った時点としたが、これに代えて、上限値(3.10)であってもよく、また、下限値と上限値の間の所定値であってもよい。
次に、実施例7について説明する。
実施例7は、上限値/下限値の決め方に関する。
スイッチング回数を変更すると、時間Tonは増加する。例えば、図21に示すように、入力電流がI1である状態で、スイッチング回数をn回から(n+1)回に変更したとき、Tonは{T(n+1)−T(n)}だけ増加する。
図22は、図7のYmax−Tonの傾向を模式的に示した図である。
Tonの下限値および上限値を図22に示す様に、T1およびT2とすると(T1は、Ymax<1の第1の閾値Tminである2.75よりも大きな値であり、T2は、Ymax<1の第2の閾値Tmaxである3.10よりも小さな値である。このT1とT2の幅は、上記Tonのスイッチング回数変更による増加分{T(n+1)−T(n)}より大きく設定しなければならない。
スイッチング回数がn回のときのTonがT1未満であり、スイッチング回数をn回から(n+1)回に変更して、Tonを{T(n+1)−T(n)}だけ増加させたらT2を超える場合には、スイッチング回数を変更してTonを適正な値(T1からT2の間)に制御することができないためである。
なお、このT1およびT2は、図22に示すYmax<1の2つの閾値Tmin, Tmaxよりも内側に設定しなければならない。
実施例8も、上限値、下限値の決め方に関する。
本コンバータ装置は、下限値=Tmin、上限値=Tmaxと設定してもよいが、下限値と上限値の範囲を広く設定した場合、この範囲内に、スイッチング回数がn回でも、(n+1)回でもよいような、スイッチング回数の複数条件を満たす状況が起こる。このとき、図14に示すように、Tminよりも大きな値にT1を設定し、Tmaxよりも小さな値にT2を設定し、かつ、最大力率を出力する値をT1、T2の値としてもよい。傾向として、Tonは、大きいほうが力率がよいため、T2=Tmax、T1=T2−ΔTonと設定してもよい。ここで、ΔTonは、スイッチング1回当たりのTon増加分である。この最大力率点は、入力電流値により変化する場合もあるので、上記T1およびT2を補正してもよい。
実施例9は、実施例8の変形である。
スイッチング回数を多くすると、スイッチング損失が増えることから、実施例8における最大力率点の代わりに最大効率点に基づいて、T1およびT2を設定してもよい。
前述の様に、最大力率および最大効率を達成するために、T1およびT2による制御範囲を小さく設定した場合、電源電圧変動や部品バラツキなどの影響により、スイッチング1回分のTonの増加で、Tonの制御範囲(T1からT2の範囲)に入らない場合がある。たとえば、スイッチング回数がn回でTon<T1であるときにスイッチングを(n+1)回に増加させ、Ton>T2となる様な場合である。このような場合、T1もしくはT2を変更して、Tonの制御範囲を広げるとよい。
Ton−Ymax特性である図7および図22は、ある出力電圧のときの結果である。図7および図22に対応する結果は、出力電圧の大きさに基づいて、正確に言えば、入力電圧と出力電圧の関係に基づいて、変化する。したがって、出力電圧の大きさに応じて、それぞれ、図7および図22に対応する結果を予め求めておき、それらの結果を参照して、出力電圧の大きさに基づいて、T1およびT2を補正してもよい。
(応用回路)
なお、上記の実施例は、昇圧チョッパ型力率改善回路を用いているものであるから、図1に示した代表回路だけではなく、図20−1〜図20−4に示す様な、リアクタを介した電源短絡回路全てに応用可能である。
以上述べたように、上記実施例によれば、少ないスイッチング回数にて力率を改善しつつ、部品バラツキおよび電源変動に強い電源高調波規制対応の制御を行うことができる。また、ワールドワイド対応型の電源高調波抑制が行え、本装置を搭載する製品のグローバル化が容易となる。
本発明によれば、電源装置における電流制御を安定し、電源高調波規制対応を容易としていることから、空気調和機や冷蔵庫のコンプレッサだけなく、家電機器全般に適用するとともに、産業機器にも適用可能である。
本発明による電源装置の実施形態を示す概略的ブロック線図。
上記電源装置に含まれている制御手段を示す概略的ブロック線図。
上記制御手段の動作説明用の概略的波形図およびタイムチャート。
上記制御手段における処理系を示す概略的ブロック線図。
上記電源装置において電流ヒステリシス幅が狭い場合と広い場合の電流波形を示す図。
図7の測定が行なわれるときのパラメータとその変動範囲を示す図。
Ton−Ymax特性図。
入力電流とTonとの関係を示す図。
上記電源装置において電流ヒステリシス幅が狭い場合のスイッチング回数の例を示した図。
上記電源装置において電流ヒステリシス幅が広い場合のスイッチング回数の例を示した図。
実施例3の要部の構成例を示すブロック図。
実施例4の構成例を示すブロック図。
実施例4の電源装置に含まれる制御手段の処理系等ブロック線図。
実施例4の上記電源装置の動作説明用の概略的フローチャート。
実施例4の上記電源装置の他の動作説明用の概略的フローチャート。
実施例4の上記電源装置の更に他の動作説明用の概略的フローチャート。
図14に示す処理の変形例を説明するためのフローチャート。
実施例4の構成例を示すブロック図。
実施例5を説明するためのタイムチャート図。
実施例12を説明するための図。
実施例12を説明するための他の図。
実施例12を説明するための更に他の図。
実施例12を説明するための更に他の図。
実施例7を説明するための図。
図7を模式的に示した図。
従来の電源装置を示す概略的な回路図。
上記従来の電源装置に含まれている制御手段を示す概略的ブロック線図。
上記従来の電源装置の動作を説明する概略的な波形図。
上記従来の電源装置の動作を説明する他の概略的な波形図。
符号の説明
1 入力電源(交流電源)
2 整流回路
3 昇圧チョッパ回路
3a 昇圧チョークコイル
3b 逆阻止ダイオード
3c スイッチング素子
3d 平滑コンデンサ
4 負荷
5 電源位相検出回路
6 電流センサ
7 駆動部
13 制御部
10 入力電流検出部
11 入力電圧検出部
12 出力電圧検出部
13a パルスカウンタ
Ii 入力電流
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧