以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
背景技術で述べたとおり、セリア粉末とスートとの接触を高めると、酸化温度が著しく低下することが知られており、燃料中に625ppmのCe化合物を添加した場合には、350℃以上で連続再生できるとされている(非特許文献1)。フィルタには、添加されたCeが酸化され、CeO2としてアッシュレベルで蓄積されているはずであるが、ただ単にフィルタにCeO2を塗布した場合と同様で、それのみでは堆積したスートを酸化することはできない。
そこで本発明者らは、CeO2の酸素に代表される活性な酸素をスートの酸化に効率良く用いることを想起し鋭意研究した。そして、スートとCeO2をただ単に物理的に接触させるだけでは不充分であり、化学的に相互作用させることで飛躍的にスート酸化性能が向上することに着目した。その結果、スートの酸化過程においては、スートの表面の炭素原子のネットワークが酸素原子によって切断され、あるいは炭素原子と酸素原子の結合を形成し、次第にCO、CO2を形成するものと考えた。そしてスート表面の炭素原子及び酸素原子の結合をCOあるいはCO2として引き抜き、さらにはそのCO及びCO2を系外へ積極的に放出することによって、スートの酸化が促進され、CeO2などから供給される活性な酸素を有効に利用して低温域からスートを連続的に酸化できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の排気浄化装置は、内燃機関から排出される粒子状物質を捕集可能な基材と、酸性化合物吸着手段と、酸性化合物脱離手段とから構成される。基材としては、従来の触媒に用いられているストレートフロー構造のハニカム基材、あるいはDPFとして用いられているハニカムフィルタ、フォームフィルタなどを用いることができる。その材質は、コージェライト、SiC、SiN、金属などが用いられる。
酸性化合物とは、スートの酸化によって生成したCO、CO2、及び内燃機関から排出されたCO、CO2及びNOxなどをいう。一般的な用語の解釈では、COは酸性化合物に含まれないが、酸化してCO2となると酸性化合物となることから、本明細書においては酸性化合物にCOが含まれるものとする。
基材に含まれ又は基材上に存在する酸性化合物吸着手段とは、スートの酸化によって生成したCO、CO2及び内燃機関から排出されたCO、CO2及びNOxなどの酸性化合物を一時的に吸着するとともに、後述する酸性化合物脱離手段によって吸着している酸性化合物を容易に放出する物質をいい、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、あるいはセリア、ジルコニアなどの塩基性酸化物を含む組成物が望ましい。中でもセリアを含む複合酸化物、セリア−ジルコニア固溶体などのように、酸素吸放出能を有するものが望ましく、セリアを含む複合酸化物がより望ましく、セリア及びアルミナを含む複合酸化物が特に望ましい。放出される活性な酸素によってスートの酸化が促進され、自身はリーン雰囲気中の酸素を吸収して酸素放出能を回復するからである。なお雰囲気中の酸素量あるいは温度によっては、酸性化合物吸着手段が酸素吸放出能を備えていなくても効率よくスートを酸化浄化できる場合がある。
なお酸素吸放出能は、バルクとしての能力より表面酸素としての能力が高いものが好ましい。例えば酸性化合物脱離剤が還元成分である場合には、表面酸素としての酸素放出能が高いものを用いることで、供給される酸素によって酸性化合物脱離剤が消費されるのを抑制することができる。例えばセリア−ジルコニア固溶体はバルクとしての酸素吸放出能が高いが、本発明ではバルクとしての酸素吸放出能に劣るセリアなどを用いることが好ましい。
さらには、酸性化合物吸着手段を用いることにより、期せずして粒子状物質が基材上に大量に蓄積して自発酸化を開始した場合における熱暴走を阻止することも可能である。自発酸化の熱を受けることにより、酸性化合物吸着手段に吸着していた酸性化合物が大量に脱離し、粒子状物質への酸素の供与を遮断できるからである。
基材自体が塩基性酸化物を含むように構成すれば、基材が酸性化合物吸着手段を兼ねることもできるが、一般には基材の排気流路の内周表面に酸性化合物吸着手段を担持して用いられる。このようにするには、酸性化合物吸着手段となる塩基性酸化物を排気通路の内周表面にコートしてもよいし、予め形成されたコート層に酸性化合物吸着手段となる塩基性酸化物を担持してもよい。コート層の材質としては、アルミナ、マグネシア、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカなど特に制限されず、上記したように酸性化合物吸着手段となる塩基性酸化物であってもよいし、酸性酸化物であってもよい。コート層が酸性酸化物から形成されていれば、スートの酸化によって生成した酸性化合物がコート層に吸着されることなく酸性化合物吸着手段に優先的に吸着されるからである。
酸性化合物吸着手段の量は特に制限されないが、粒子状物質を捕集可能な基材の体積1L当たり10g以上とすることが好ましい。酸性化合物吸着手段の量がこれより少ないと、CO、CO2などの酸性化合物の吸着量が不足するため、スートの酸化を促進することが困難となる。また酸性化合物吸着手段の量は、基材の体積1L当たり200g以下とすることが好ましい。これ以上多くなると圧力損失が増大しやすくなり、内燃機関の運転に影響を及ぼすからである。
なお、酸性酸化物はスートの酸化によって生じるとともに内燃機関からも排出される。本発明においては、酸性化合物吸着手段をスートを含む粒子状物質を捕集可能な基材とともに配置していることから、スートの酸化により酸性化合物が生じる場合には優先的に吸着することができる。
酸性化合物脱離手段とは酸性化合物吸着手段に吸着した酸性化合物を脱離させる手段をいい、反応系を加熱する加熱手段、酸性化合物脱離剤が例示される。加熱手段としては、電気ヒータにより加熱する方法、ポスト噴射を行うことで排気温度を上昇する方法がある。しかしポスト噴射を行う方法では大量のCO2やHCが生成することから、酸性化合物脱離剤を併用する方法あるいは電気ヒータを用いる方法が望ましい。加熱手段による加熱温度は、酸性化合物吸着手段の材質によって異なるが、例えばセリアを酸性化合物吸着手段とした場合には、300℃以上に加熱すれば吸着した酸性化合物を脱離させることができる。またスートの発生が多い条件が連続したとしても、350℃までの加熱で脱離させることができるので、エンジンには支障がない。さらに、燃料にCeを添加する方法に比較しても有利である。
なお、酸性化合物脱離剤として酸性化合物を用いることができる。この場合には、酸性化合物脱離剤として用いた酸性化合物が酸性化合物吸着手段に吸着してしまうこととなるため、さらに別の酸性化合物脱離剤を用いることにより、該酸性化合物を脱離させスート酸化により生成する酸性化合物を吸着しやすくすることが好ましい。例えば、酸性化合物吸着手段にCO2が吸着している場合には、酸性化合物であるNOxを用いてCO2を脱離することができ、こうすることにより吸着したNOxは酸性化合物脱離剤としてNH3などを用いることにより脱離することができる。
酸性化合物脱離剤としては、多量のN2を含むガスなどを用いることもできるが、H2あるいはNH3などのガスが特に好ましい。これらのガスは、酸性化合物吸着手段に吸着した酸性化合物を酸性化合物吸着手段から容易に脱離させる。中でもNH3を用いれば、塩基性であるため酸性化合物を特に容易に脱離させることができる。なおHCを多量に含むリッチ雰囲気の排気を流しても脱離させることが可能であるが、そのような排気中にはCO、CO2が多量に含まれているので、酸性化合物吸着手段の作用面から好ましくない。
例えば酸性化合物脱離剤としてNH3を用いる場合には、排気中にNH3を直接添加してもよいし、尿素などのNH3源を用いることもできる。尿素を用いる場合には、水溶液あるいは昇華ガスとして排気中に添加すればよい。また三元触媒などを用いて、排気からNH3を生成してもよい。またH2についても、水蒸気改質反応、COシフト反応などにより排気から生成することができる。
酸性化合物吸着手段に吸着している酸性化合物を脱離させる時期は、連続的に行ってもよいし、酸性化合物吸着手段の吸着量が飽和する前に行ってもよい。また酸性化合物脱離剤としてNH3を用い、NOx浄化材としてNOx選択還元型触媒を用いる場合などは、NOx浄化のための制御を行えばよい。さらに、酸性化合物脱離剤を供給する場合は、酸性化合物脱離剤の接触と同時に酸性化合物を脱離させることができるので、吸着と脱離を連続的に行うことが好ましい。これは、酸性化合物脱離剤を排気中に連続的又は間欠的に供給して酸性化合物吸着手段と接触させることで行うことができる。このようにしても、スートの表面酸化によって生成した酸性化合物は、酸性化合物脱離剤とは反応せずに先ず酸性化合物吸着手段に吸着され、ほぼ同時に酸性化合物脱離剤によって酸性化合物吸着手段から脱離する。したがってスートを連続して酸化浄化することができる。
酸性化合物脱離手段は、常時駆動することもできるが、基材の温度、基材に流入する排気中のスート量、基材に堆積したスートの堆積量などに応じて臨機応変に駆動することが望ましい。そこで本発明の排気浄化システムは、本発明の排気浄化装置と、基材の温度、基材に流入する排気中のスート量及び基材に堆積したスートの堆積量から選ばれる少なくとも一つに関連した物理量を検出する検出手段と、検出手段の検出値に基づいて酸性化合物脱離手段の駆動を制御する制御手段と、を備えている。
検出手段は、基材の温度と、基材に流入する排気中のスート量及び基材に堆積したスートの堆積量から選ばれる少なくとも一つに関連した物理量を検出する手段をいう。基材の温度に関連した物理量としては、基材自体の温度、排気の温度などがある。排気の温度を検出するには、排気温度を直接的に検出してもよいし、エンジンの運転状況及び気温などから排気温度を推定してもよい。
排気中のスート量を検出するには、エンジンの運転状況から推定することができる。あるいは排気の透明度を測定することで検出することもできる。スートの堆積量は、基材の入口側と出口側における排気の圧力差を測定することで推定することができる。あるいはエンジンの負荷状況などから演算することも可能である。
制御手段は、検出手段の検出値に基づいて酸性化合物脱離手段の駆動を制御するものであり、コンピュータを用いることが好ましいが、機械的に制御することも可能である。
本発明の排気浄化装置及び排気浄化システムは、スートの酸化を促進するスート酸化促進手段を備えることが好ましい。このスート酸化促進手段としては、NO2、オゾンなどの酸化剤を排気に供給する手段、酸化触媒など排気中のNOをNO2に酸化して排気に供給する手段、あるいはセリア、Fe2O3などの酸素吸放出材、ジルコニアなどが例示される。これらの手段では必ずしもスートを完全に酸化する必要はなく、部分的に酸化しておくことも可能である。例えば、NO2及びオゾンは低温においてスートの表面を酸化することができるため、本発明と併用するとさらにスート酸化を促進することができる。
酸性化合物吸着手段としてセリアなどの酸素吸放出材を用いれば、酸性化合物吸着手段がスート酸化促進手段を兼ねることになる。またジルコニアにイットリウムを添加したものは、結晶構造が安定化することで酸素吸放出作用が向上する。同様に、セリアにAg、Fe、Co、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tbなどを添加したものもスート酸化促進手段として有用である。このようなスート酸化促進手段を兼ねる酸性化合物吸着手段としては、セリアにAg、Fe、Pr、Coのうち一種以上を添加したものがより好ましく、セリアにAgを添加したものが特に好ましい。また、かかるセリア(好ましくは高比表面積セリア)にAlが含有されていることが更に好ましい。
このようなセリアを含む組成物を用いた酸性化合物吸着手段の調製方法としては、以下の調製方法(i)又は調製方法(ii)が好ましい。
調製方法(i)<沈殿法>
Ceと他の原料となる金属とを含有する溶液(例えば硝酸塩溶液)から、塩基(例えばアンモニア)の存在下で沈殿せしめ、得られた沈殿を焼成することによってセリアに他の金属が添加された酸性化合物吸着手段が得られる。なお、上記沈殿を生成させる際に熟成処理を行うことで、加温の熱によって溶解・再析出が促進されるとともに沈殿粒子の成長が生じるため好ましい。このような熟成処理は、室温以上、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは100〜150℃で行う。熟成温度が100℃未満では熟成の促進効果が小さく、熟成に要する時間が長大となる傾向にある。他方、熟成温度が200℃より高い温度では、酸化物前駆体の分解速度が高くなる場合があるため、酸化物とするための焼成温度が上昇し好ましくない傾向にある。
このような調製方法(i)によってセリアにAgが添加された酸性化合物吸着手段を得る場合、CeとAgの合計量におけるAgの比率(モル基準)が35〜60%であることが好ましい。Agの比率が35%未満ではスート酸化能力が低下する傾向にあり、他方、Agの比率が60%を超えるとスート酸化能力が低下すると共にAgが多量に必要となってコストが増大する傾向にある。
調製方法(ii)<担持法>
セリアを他の原料となる金属を含有する溶液(例えば硝酸塩溶液)に含浸せしめた後に蒸発乾固させ、更に焼成することによってセリアに他の金属が担持された酸性化合物吸着手段が得られる。この場合、セリアとしては、50〜300m2/gの高比表面積セリアを用いることが好ましく、100〜300m2/gの高比表面積セリアを用いることが特に好ましい。セリアの比表面積が50m2/g未満ではスート酸化能力が低下する傾向にあり、他方、セリアの比表面積が300m2/gを超えるとAg等の他の金属を均一に担持しにくくなる傾向にある。
また、かかるセリアは、Alを含有していることが更に好ましく、Alが主としてAl2O3としてセリアの少なくとも表面近傍に担持されていることが特に好ましい。このようにセリアがAlを含有する場合、CeとAlの合計量におけるAlの比率(モル基準)が10ppm〜5%であることが好ましく、15ppm〜1%であることがより好ましい。Alの含有量が前記下限未満ではスート酸化能力が低下する傾向にあり、他方、Alの含有量が前記上限を超えるとAg等の他の金属を均一に担持しにくくなる傾向にある。
なお、Alを含有するセリアの調製方法は特に制限されず、例えば、セリアをAl含有溶液(例えば硝酸アルミニウム溶液)に含浸せしめた後に蒸発乾固させ、更に焼成することによってAlを含有するセリアが得られる。
このような調製方法(ii)によってセリアにAgが担持された酸性化合物吸着手段を得る場合、CeとAgの合計量におけるAgの比率(モル基準)が10〜40%であることが好ましく、10mol%より多く20mol%より少ないことがより好ましい。Agの比率が10%未満ではスート酸化能力が低下する傾向にあり、他方、Agの比率が40%を超えるとスート酸化能力が低下すると共にAgが多量に必要となってコストが増大する傾向にある。
また、本発明においては、前述の酸性化合物吸着手段とスートとの接触を促進する接触促進手段をさらに備えることも好ましい。この接触促進手段は、スートを物理的に捕捉して酸性化合物吸着手段との接触確率を高めるものであり、SAE2002−01−0436に記載のように排気中にCeを添加する手段、排気温度で溶融して液相となる溶融塩、あるいは特願2004−030058に記載されたように、フィルタ装置を流れる排気の方向を、順流と逆流とを交互に行うようにする手段などが例示される。なお接触促進手段は、上記したスート酸化促進手段とスートとの接触も促進することが望ましい。
溶融塩としては、炭酸銀、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、希土類元素の炭酸塩、ハロゲン化銀、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物から選ばれる少なくとも一種及び/又はこれらから選ばれる複数種が複合化した複合塩を含むもの、などを用いることができる。また溶融塩の担持量は、コート層を構成する固体担体に対して1重量%以上とすることが望ましい。担持量がこれより少ないとスートの捕捉が困難となる。また担持量が多くなるほど捕捉されるスートが多くなる傾向にあるが、120重量%以上担持すると担体上での保持性が不十分となり下流に流されて凝集する場合があるので120重量%未満とすることが望ましい。
また本発明の排気浄化装置及び排気浄化システムは、基材の排気上流側に、排気中のHCを除去するHC除去手段を備えることが望ましい。スートより酸化されやすいHCやSOFが予め除去された排気が基材に流入することで、スートの酸化浄化が一層容易となる。このHC除去手段としては、酸化触媒、三元触媒などの他、水蒸気改質反応を利用する方法、あるいはゼオライトなどのHC吸着材を用いることもできる。また水蒸気改質反応を利用すれば、HCを除去するとともにH2が生成するので、このH2を酸性化合物脱離剤として利用することもできる。H2とNOxとの反応で生成するNH3を酸性化合物脱離剤としてもよい。なお酸化触媒の場合にあっては、特にNOをNO2に酸化するものである必要はない。
本発明の排気浄化装置及び排気浄化システムは、三元触媒、NOx選択還元触媒及びNOx吸蔵還元触媒から選ばれる少なくとも一つを併用することも好ましい。これによりスートに加えてHC、SOF及びNOxを同時に浄化することができる。この触媒は、基材の排気下流側に配置することが望ましい。このようにすれば、酸性化合物脱離剤としてのNH3が酸化されてNOxとなって排出されるような不具合を回避できる。またHC、SOF及びNOxを同時に浄化できるとともに、酸性化合物脱離剤をNOxの還元に用いることができる。そして酸性化合物脱離剤を多く供給してもNOxの還元に消費されるので、酸性化合物脱離剤を多く供給することで酸性化合物吸着手段に吸着している酸性化合物を確実に脱離させることができ、スートの酸化が促進される。
NOx選択還元触媒としては、Cu−ゼオライト触媒、Fe−ゼオライト触媒、V2O5/WO3/TiO2触媒などが例示される。またNOx吸蔵還元触媒としては、アルミナなどの担体に貴金属とNOx吸蔵材とを担持した触媒などを用いることができる。
また、基材の上流側でNH3を添加し、基材の下流側にNOx選択還元触媒を配置した排気浄化装置の場合には、基材とNOx選択還元触媒との間で排気中に還元剤を添加することも好ましい。このようにすれば、スート酸化を行いながら、NH3が酸化されてNOxとなるのを防止することができ、かつNOx選択還元触媒によってNOxの還元を行うことができる。この場合、複数の箇所で排気系に酸性化合物脱離剤もしくは還元剤を供給しなければならないことから、一見、複雑な制御が必要に思われるが、基材の上流での制御は単純であるので、還元剤の供給の制御を主として考慮すれば足りる。
このような構成は、特許文献3に記載されているように思われるが、それは全く見当違いである。すなわち特許文献3には、酸性化合物吸着手段と酸性化合物脱離手段によってスート酸化を促進する技術思想は見られない。また本発明と形式的に同様の構成となっている還元剤をDPFの上流側に供給する構成の場合でも(同文献の図14B、14C)、本発明とは逆の方向が開示されている。すなわち同文献の段落[0066]に記載されているように、HCを還元剤とする場合はDPFの上流側で供給できるが、NH3を還元剤とする場合には、NH3が酸化されてNOxとなるのを防止するために、同文献の図14AのようにDPFの下流側で供給することが望ましいと記載されているので、DPFにおいてNH3を酸性化合物脱離手段として機能する技術が開示されていると解釈できる余地はない。
本発明の排気浄化装置の作用の概念を図1に示す。先ず図1(A)に示すように、酸性化合物吸着手段によってスートの表面に形成された酸性化合物が引き抜かれ、スートの酸化が促進される。
スートの酸化が促進され図1(B)に示すように基材上の酸性化合物が増加すると、スートの酸化が抑制されてしまう。そこで酸性化合物脱離手段を作用させる。すると図1(C)に示すように基材上の酸性化合物が減少し、スートの酸化が再び促進されるようになる。
以下、実施例及び試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では、自動車のディーゼルエンジンの排気系に本発明を適用している。
(実施例1)
図2に、本実施例の排気浄化装置を示す。排気流路には、セラミックハニカム構造体のセルの開口部の両端を交互に市松状に目封じしてなるDPF1が配置されている。このDPF1は、図3に示すようにセル隔壁の表面にAg、Pr、Feから選ばれる一種を含むセリアからなるコート層20が形成され、コート層20が酸性化合物吸着手段2を構成している。DPF1の近傍には、酸性化合物脱離手段としてのヒータ10が配置されている。
DPF1のいわゆる強制再生のための加熱としては、PM成分中のスートが自発的に燃焼を開始する550℃〜600℃まで昇温するのが一般的であるが、コート層20を形成することで250〜350℃までの昇温で十分である。なおディーゼルエンジンの排気温度は、ポスト噴射などの制御を行わなくてもこの温度域に達することがあるが、本実施例ではスートを連続的に浄化するために、常にこの温度域を維持するようにヒータ10を制御している。
コート層20は、以下のように形成した。先ず、以下に説明する試験例1〜3にしたがってCeO2−Ag組成物粉末を調製した。
これをスラリー化し、DPF1の一端面から導入後に他端面から吸引して余分なスラリーを除去し、250℃で焼成してコート層20を形成した。コート層20の形成量は、DPF1の1Lあたり10g〜200gの範囲が好ましい。
(試験例1)
<CeO2−Ag組成物の沈殿法による調製>
CeとAgの合計量に対するAgの含有率(mol%)が25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、60mol%、65mol%、70mol%、75mol%、80mol%、85mol%となるようにCe及びAgを含有する硝酸塩溶液を調製した。なお、Ce原料としては硝酸セリウム6水和物、Ag原料としては硝酸銀を用いた。次に、それらの硝酸塩を沈殿させるのに必要なNH3量を含む25%アンモニア水を用意した。そして、上記アンモニア水を撹拌しながら上記硝酸塩溶液を混合するか(逆共沈)、或いは、上記硝酸塩溶液を撹拌しながら上記アンモニア水を混合した(共沈)。いずれの場合も10分間撹拌を継続した後、150℃で2時間の熟成処理を行った。その後、得られた沈殿物を大気中にて500℃で6時間焼成を行うことにより、Agが添加されたセリアよりなるCeO2−Ag組成物を調製した。
なお、本発明においては、硝酸塩溶液調製段階の(Ce+Ag)に対するAgのmol%を用いて得られた組成物を表現した。例えば、Agが60mol%となるように硝酸塩溶液を調製して得られた組成物を「CeO2−Ag60」(又は「Ce−Ag60」)と表現した。また、共沈法により作成した場合を「共沈」、逆共沈法により作成した場合を「逆共沈」と示した。
<CeO2−Ag組成物の担持法による調製>
先ず、以下のようにして高比表面積セリアを調製した。すなわち、硝酸二アンモニウムセリウム(V)21.06gをイオン交換水32.06mlに溶解させてセリウム塩溶液を得た。次に、イオン交換水200mlを加熱還流させ、そこに前記セリウム塩溶液を15分かけて滴下した。その後、得られた沈殿物をエタノールで洗浄しながら濾過し、大気中にて500℃で5時間焼成を行うことにより、高比表面積セリアを調製した。得られた高比表面積セリアの比表面積(BET法)は150m2/gであった。このようにして得られた高比表面積セリアを「高比表面積CeO2」と示した。
次に、以下のようにしてAlを含有する高比表面積CeO2を調製した。すなわち、前記高比表面積CeO2100gを濃度0.05mol/lの硝酸アルミニウム水溶液に含浸せしめた後に蒸発乾固させ、更に大気中にて500℃で5時間焼成を行うことにより、Alを含有する高比表面積CeO2を調製した。得られた高比表面積セリアのAl含有率(mol%)は0.05mol%であった。このようにして得られたAlを含有する高比表面積CeO2を「Al含有高比表面積CeO2」と示した。
次に、以下のようにしてAgを担持したAl含有高比表面積CeO2を調製した。すなわち、前記Al含有高比表面積CeO210gを濃度1.0mol/lの硝酸銀水溶液に含浸せしめた後に蒸発乾固させ、更に大気中にて500℃で5時間焼成を行うことにより、CeとAgの合計量に対するAgの含有率(mol%)が5mol%、10mol%、15mol%、20mol%、30mol%となるようにAgが担持されたAl含有高比表面積CeO2を調製した。このようにして得られたAgの含有率(mol%)が15mol%のAl含有高比表面積CeO2を「Ag(15)/Al含有高比表面積CeO2(85)」と示した。
また、Al含有高比表面積CeO2に代えて高比表面積CeO2を用いた以外は上記と同様にしてAgを担持させて、CeとAgの合計量に対するAgの含有率(mol%)が15mol%となるようにAgが担持された高比表面積CeO2を調製した。このようにして得られたAgの含有率(mol%)が15mol%の高比表面積CeO2を「Ag(15)/高比表面積CeO2(85)」と示した。
さらに、Al含有高比表面積CeO2に代えて沈殿法により合成した比表面積55m2/gのセリアを用いた以外は上記と同様にしてAgを担持させて、CeとAgの合計量に対するAgの含有率(mol%)が10mol%、20mol%、30mol%となるようにAgが担持されたセリアを調製した。このようにして得られたAgの含有率(mol%)が20mol%のセリアを「Ag(20)/CeO2(80)」と示した。
<試験>
上記した製造方法で調製された種々の組成のCeO2−Ag組成物を用い、乳鉢によりそれぞれスート(カーボン組成99.9%以上)と混合した。CeO2−Ag組成物とスートとの混合比は、重量比で2g:0.1gとした。なお混合は、スターラー「MMPS−M1」(アズワン社製)とマグネット乳鉢「MP−02」(アズワン社製)を用い、スピード目盛り3の電動混合にて3分間混合し、均一な混合物を調製した。
ここで、特許文献7におけるloose−contactでの評価のように、NO2などの酸化剤が存在しても323℃で1時間に10%程度しかスートが酸化されないのでは、スート酸化の評価法としては適切ではない。またこの場合には、SOFの酸化評価を行ってしまっている可能性がある。現実のディーゼル排気においては、排出されたPMのうちある程度は触媒成分との接触を良好に確保するし、特開2002−210368号公報に記載の溶融塩型触媒あるいは特願2004−030058号に記載の排気の方向を順流と逆流とを交互に行うようにする手段などを用いれば、接触をさらに緊密とすることができる。そこで本試験例では、SOFを含まないスートを用い、乳鉢を用いてCeO2−Ag組成物とtight−contactさせることで、よりスート酸化の現実に即した評価を行うこととした。
上記各種混合物と、スートのみ及びセリアのみを用い、TG−mass法により昇温時のCO2発生強度をそれぞれ測定した。熱重量分析計は「TG8120」(理学電機社製)を用いた。熱重量分析計には「GC−MS5972A」(Hewlett Packard社製)が接続され、熱重量分析計で発生したガス成分のマススペクトルを測定した。測定条件は、O210%/Heバランス雰囲気において、20K/分の昇温速度で800℃まで昇温し、m/e=44成分をスート酸化によって生じるCO2成分として測定した。結果を図4〜図8に示す。
また同じ熱重量分析計を用い、O210%/Heバランス雰囲気で各測定温度において10分間温度を保持し、そのときの重量M1と全スート重量M2からスート酸化速度を算出した。算出法は、最初の重量M1の測定後に最終的に800℃まで昇温したときの重量を元にスート重量M2を算出し、測定時間t(ここでは1/6時間)から次式により算出した。結果を図9に示す。
スート酸化速度=(M1−M2)/{(M1+M2)×t/2}
<評価>
図4及び図5に、逆共沈法で調製されたCeO2−Ag組成物の結果を示す。CeとAgの組成比(硝酸塩溶液中の組成)は、Agが35mol%より多く80mol%より少ない場合に好ましく、Agが55mol%より多く65mol%より少ない場合にさらに好ましいことがわかる。この場合に得られるCeO2−Ag組成物は、Agが50mol%付近となることから、CeO2−Ag組成物中のCeとAgの組成比は、モル比で1:1に近いほど好ましい。
図6及び図7に、CeO2にAgを担持することで調製されたCeO2−Ag組成物の結果を示す。図6は、比表面積が166m2/gのAl含有高比表面積CeO2を用いた場合の結果であり、図7は沈殿法で調製された比表面積が55m2/gのCeO2を用いた場合の結果である。CeとAgの組成比は、Agが5mol%以上の場合に好ましく、さらにはAgが10mol%より多く20mol%より少ない場合に好ましいことがわかる。またCeO2の比表面積は、50〜300m2/gの高比表面積であれば、スート酸化促進の効果があることがわかる。
図8に、Ag(15)/Al含有高比表面積CeO2(85)とAg(15)/高比表面積CeO2(85)との比較を示す。図8に示した結果から明らかなように、高比表面積セリアにAlが含有されていると、より低温側にスート酸化ピークを有しており、スート酸化能力が向上していることが確認された。
図9に、スート酸化速度を示す。Agを含むことで低温域における酸化速度が向上し、上記序列と一致していることがわかる。
また表1に、用いた各CeO2−Ag組成物のBET比表面積を示す。担持品については、AgとCeをmol%で表現している。図4〜図8を参照することで、10m2/g程度の比表面積であってもスート酸化促進効果が認められる。またAgを担持により添加した場合には、担持後の比表面積が50m2/g以上のものが望ましいこともわかる。
図10及び図11には、水銀ポロシメータにより測定された各CeO2−Ag組成物の細孔径分布を示す。また図12には、Cu−Kα線を用いθ−2θ法により測定されたXRDを示す。各CeO2−Ag組成物は、特許文献8に開示されている組成物とは異なり、0.1μm(1000Å)を中心とする細孔を有している。高比表面積CeO2に銀を担持した組成物では、図11に示されるように特許文献8と同様の70〜200Åの細孔もみられるが、大部分の細孔は0.1μmを中心としている。
本試験例のCeO2−Ag組成物は、特許文献8に開示された組成物とは異なるものである。特許文献8には、米国特許6,139,814号に記載の方法で製造されたことが記載され、米国特許6,139,814号には100Åを中心とした細孔分布を示すことが記載されているので、いずれも本試験例で開示したような0.1μmを中心とした細孔分布をもつものではない。
すなわち現実の使用におけるスートの酸化促進のためには、0.1μmを中心とした細孔分布をもつCeO2−Ag組成物を用いることが望ましい。またXRDでは、2θ=28.5°をメインピークとするCeO2とともに2θ=38.1°をメインピークとするAgのピークが見られた。図12と同様のXRDパターンを示す組成物であるからといって、スート酸化速度が低いとは限らないが、スート酸化に有利な組成物はCeO2とAgのXRDピークを有するということができる。
次に、CeO2−Ag組成物の製造方法の違いについて評価した。図13には昇温時のCO2発生強度を示し、図14にはスート酸化速度を示している。共沈法と逆共沈法の間に差が認められることから、アンモニウム塩の形成によって組成が相違する可能性がある。しかし熟成処理を行うことで、その差が縮まり、スートの酸化温度も低温域に移行していることが明らかである。
なお各CeO2−Ag組成物について、ICP発光分析法で組成分析を行った。結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、Agは水溶性のアンモニウム塩を形成することから、得られたCeO2−Ag組成物のCeとAgの比は、硝酸塩溶液中の比とは異なる場合があるので注意を要する。CeO2−Ag組成物のCeとAgの合計量に対するAgの含有率(mol%)が40%以下の場合には、硝酸塩溶液中の組成とほぼ等しくなるが、Agの含有率がそれ以上の割合になると硝酸塩溶液中の組成と異なるようになる。例えばAgの含有率が55mol%となるように硝酸塩水溶液を調製した場合には、CeO2−Ag組成物中のAgの含有率は49.1mol%(Ce:Ag=50.9:49.1)、Agの含有率が60mol%となるように硝酸塩水溶液を調製した場合にはCeO2−Ag組成物中のAgの含有率は50.2mol%、Agの含有率が80mol%となるように硝酸塩水溶液を調製した場合にはCeO2−Ag組成物中のAgの含有率は53.8mol%となる。スート酸化のためには、Agが50mol%、すなわちCe:Ag=1:1に近いほど好ましい。
また熟成処理を行うことで、Ce:Ag=1:1のCeO2−Ag組成物を形成することが容易となる。その作用は不明であるが、熟成処理によってAgのアンモニウム塩が沈殿中に取り込まれるからであると考えられる。さらには、熟成処理を行わない場合にはCeO2−Ag組成物中にAgメタルが混在する場合があるが、熟成処理を行うことでCeとAgの分布が均一となり、均一な黒色のCeO2−Ag組成物が得られる。
さらに、表2に示した結果より、例えばAgが60mol%の硝酸塩水溶液を用いて調製されたものでは、「逆共沈・熟成あり」でAg:50.2mol%、「共沈・熟成あり」でAg:48.9mol%、「逆共沈・熟成なし」でAg:33.8mol%、「共沈・熟成なし」でAg:36.1mol%である。このことから、熟成処理を行うことにより、スート酸化に好ましいCe:Ag=1:1(モル比)に近い組成を形成することができたものと考えられる。
次に、各CeO2−Ag組成物をO210%/N2バランスにて800℃で5時間保持する耐久試験を行い、その後、上記と同様にしてCO2発生強度とスート酸化速度を測定した。結果を図15及び図16に示す。800℃以上の耐久を考慮した場合には、高比表面積を有するCeO2にAgを担持したCeO2−Ag組成物を用いるのが有利であることがわかる。
(試験例2)
Agに代えてPr及びFeの硝酸塩を用い、逆共沈法のみを用いたこと以外は試験例1と同様にして、CeO2−Pr組成物及びCeO2−Fe組成物を調製した。なお、Pr原料としては硝酸プラセオジム6水和物、Fe原料としては硝酸鉄9水和物を用いた。そして試験例1と同様にしてCO2発生強度を測定し、結果を図17及び図18に示す。
図17及び図18から、CeO2−Pr組成物及びCeO2−Fe組成物もCeO2−Ag組成物と同様の効果を示すことが明らかである。
さらに、Cu−Kα線を用いθ−2θ法により各組成物のXRDを測定し、セリアのメインピークを図19及び図20に示す。CeO2−Pr組成物ではCeO2より低角側にピークがシフトし、CeO2−Fe組成物ではCeO2より高角側にピークがシフトしている。すなわちCeO2−Pr組成物及びCeO2−Fe組成物では、Ceより原子番号が小さいFeあるいは原子番号が大きいPrを添加することで、Ce原子どうしの距離が変化し、スート酸化に格子酸素が有効に使用されるようになったものと考えられる。
これ以外には、CeO2−Co組成物を用いることも好ましい。CeとCoの組成比(モル比)は、仕込み比でCe:Co=50:50とし、CeO2−Agと同様に逆共沈法で製造した組成が好ましい。この場合のICP発光分析法による組成は、Coが38mol%となっていた。仕込み比と異なる組成が得られるのは、CoもAgと同様にアンモニウム塩を形成するからである。またXRDでは、CeO2とCO3O4のパターンが得られた。
(試験例3)
<CeO2−Ag組成物の調製>
本試験例においては、特許文献8に開示されている調製法に従ってCeO2−Ag組成物を調製した。すなわち、Ce:Ag=25:75のモル比となるように0.1M及び0.5M溶液を調製しセルロース材料(Whatman フィルタペーパ 540)に含浸した後、600℃、2時間でセルロース材料を燃焼除去した。また、溶液濃度を0.1Mとすることは、特許文献8に引用されている米国特許6,139,814号公報にも好ましい旨記載されている。本試験例においては、特許文献8及び米国特許6,139,814号公報のいずれにも開示されているとはいえず、逆に米国特許6,139,814号公報のカラム4の24行〜26行にかけて0.1Mよりも好ましくないとされている濃度0.5Mについても試験を行った。
<評価>
試験例1と同様に乳鉢でCeO2−Ag組成物とスートとを混合した。ただし、本試験例ではCeO2を除きCeO2−Ag組成物とスートとの重量をそれぞれ0.3gと0.015gとした。そして、試験例1と同様にTG−mass法でのCO2生成強度の比較を行い図21に示した。溶液濃度0.1M及び0.5Mの場合をそれぞれ「Ce−Ag75 filter 0.1M」及び「Ce−Ag75 filter 0.5M」と記した。
図21では、比較のために試験例1のCeO2−Ag60(逆共沈、熟成あり)を本試験例と同様に600℃で焼成した組成物についても試験を行った。その結果、特許文献8に開示されているCe−Ag75 filter 0.1MはCeO2よりも若干スート浄化性能が向上しているにすぎなかった。それに対して、特許文献8に開示されておらず、また0.5Mとすることが好ましい旨の示唆が無いにも関わらず、0.5Mとした場合には0.1Mと比較して100℃以上も低温においてスート酸化ピークを有し、顕著な効果を有した。ただし、試験例1に開示したCeO2−Ag組成物の方がスート酸化に優れていた。
本試験例の組成物について、BET 比表面積測定を行った。「Ce−Ag75 filter 0.1M」は17.18m2/g、「Ce−Ag75 filter 0.5M」は11.59m2/gであった。特許文献8には「Ce−Ag75 filter 0.1M」の比表面積が19m2/gと記載されており、製造方法が同一である者の値が近いことから、本試験例の「Ce−Ag75 filter 0.1M」は特許文献8で開示されている「Ag0.75Ce0.25」と同一の物質であるものということができる。
(総括)
すなわち本試験例で用いられた組成物は、いずれもスートの酸化を促進するものであり、酸性化合物吸着手段としての性質あるいはスート酸化促進手段としての性質を有しているので、本発明の排気浄化装置に用いることが好ましい。また試験例で用いた組成物は、さらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いてもよい。こうすることにより、これらの金属によりSOxが吸収され、CeO2及びAgのSOx被毒を抑制できるからである。
(実施例2)
本実施例では、図22に示すように、実施例1の排気浄化装置に加えて、DPF1の排気上流側にNH3供給ノズル3を備え、DPF1に流入する排気中にNH3を供給可能とされている。
ヒータ10で250〜350℃まで加熱するとともに、NH3供給ノズル3からNH3を定常的に50ppm供給することにより、酸性化合物の脱離がさらに促進されるため、スートの酸化がさらに促進される。
(実施例3)
図23に、本実施例の排気浄化装置を示す。排気流路には、セラミックハニカム構造体のセルの開口部の両端を交互に市松状に目封じしてなるDPF1が配置されている。このDPF1は、図24に示すようにセル隔壁の表面にセリアを含むコート層20が形成され、コート層20が酸性化合物吸着手段2を構成している。
DPF1の排気上流側にはNH3供給ノズル3が配置され、DPF1に流入する排気中にNH3を供給可能とされている。またDPFの排気下流側にはNOx選択還元触媒30が配置されている。NOx選択還元触媒30は、ストレートフロー構造のハニカム基材にFe−ゼオライトからなるコート層を基材1Lあたり100g形成してなるものである。
本実施例の排気浄化装置では、エンジンの駆動と同期して、NH3供給ノズル3から排ガス中にNH3が供給される。NH3量はNOx選択還元触媒30に対する必要量とすればよいが、NOx還元にとってNH3が必要ない場合であっても、常時5ppm以上供給することとしている。NOxとPMの排出はトレードオフの関係にあることからも、こうすることが望ましい。
この排気浄化装置では、排気がDPF1に流入すると、スートはコート層20のセリアと接触することで表面が酸化され、CO、CO2などの酸性化合物が生成する。この酸性化合物は、生成とほとんど同時にセリアに吸着されて除去されるので、スートの表面ではさらに酸化が進行し新たな酸性化合物が生成してセリアに吸着する。
そしてNH3供給ノズル3からNH3が排気中に供給されているので、NH3はコート層20と接触し、セリアに吸着している酸性化合物をセリアから脱離させる。これによりセリアの酸性化合物吸着能が回復し、スートの酸化が円滑に進行する。
また過剰のNH3が供給された場合でも、DPF1を通過したNH3は、NOx選択還元触媒30においてNOxの還元浄化に消費されるので、NH3の排出は生じない。さらにNOx還元にとってNH3が必要ない場合でも、NH3はFe−ゼオライトに吸着するので排出を最小限に抑制することができる。
すなわち本実施例の排気浄化装置によれば、スートを連続的に酸化できるとともに、NOxも浄化することができる。したがってDPF1を連続再生できるので、DPF1の溶損などの不具合を回避することができ、圧損の上昇も抑制できる。
本実施例では、NH3供給ノズル3から常時NH3を供給したが、パルス的に供給してもよい。またNH3に代えてH2を供給してもよい。さらに、供給されるNH3又はH2の量が、酸性化合物の脱離には十分であるものの、NOxの浄化まで行うには不十分である場合には、DPF1とNOx選択還元触媒30の間に、NH3又はH2あるいはHCを供給することもできる。この場合、HCはDPF1に流さないようにする。酸性化合物の生成がスート酸化に悪影響を及ぼさないことから、DPF1の下流側であればHCを供給することができる。また、NH3の排出を確実に防止するために、NOx選択還元触媒30の下流側にNH3浄化触媒を設けてもよい。
なお、セリアによるスートの酸化反応の機構を拡散反射型FT−IRで詳細に調査した。得られた結果を図25及び図26に示す。なお、酸性化合物吸着剤としてCeO2−Ag60を用いてスートを酸化した場合の拡散反射型FT−IRスペクトルであり、両者とも窒素雰囲気中で測定し、測定温度は300℃とした。
図25に示す「酸性化合物吸着時」のスペクトルの測定は、300℃において直前に10分間の10%O2雰囲気とすることによって、スートの酸化により生じた酸性化合物を吸着させた後に、窒素雰囲気に切り替えて直ちに測定したものである。また、図25に示す「酸性化合物脱離後」のスペクトルの測定は、上記酸性化合物吸着時の測定後、窒素雰囲気にて10分間保持して酸性化合物を脱離させた後に、窒素雰囲気中において測定したものである。図25に示す両者のスペクトルを比較すると、酸性化合物吸着時に1450cm−1付近の強度が増大していることが確認された。
図26は、酸性化合物吸着時のスペクトルから酸性化合物脱離後のスペクトルをバックグラウンドとして得たスペクトル変化を示すグラフである。上記の1450cm−1付近のピークは、炭酸塩(CO3 2−)に帰属されることから、酸性化合物吸着時に酸性化合物であるCO3 2−が吸着し、酸性化合物脱離後にCO3 2−が脱離していることが確認された。なお、CO2を流したのみではスペクトルの変化がなかったことから、上記のCO3 2−のピークはスート酸化により生成したCO2又はCOがCO3 2−として吸着したものであると認められる。
このように、本発明にかかる酸性化合物吸着剤としてCeO2−Ag組成物を用いた場合には、非常に強い炭酸塩のピークが現れることから、スート酸化により生じる酸性化合物を速やかにスートから引き抜くことができ、このような酸性化合物の吸着と脱離を繰り返すことでスート酸化を促進することが可能であることが確認された。
また、拡散反射型FT−IRスペクトルにおいて、セリアの1200〜1700cm−1の波数領域に変化が見られ、スートの酸化時にはセリア表面にカルボキシル基あるいはカルボニル基が生成していることが明らかとなった。
一方、Applied Catalysis B:Environmental 50(2004)185−194 Table3あるいはCarbon Vol.36 No.9 pp1269などには、スートの酸化機構が記載されている。これによれば、スートは先ず表面が酸化されて複雑な構造の酸化物となり、同時にCO、CO2などの酸性化合物が生成する。これは上記した拡散反射型FT−IRによる結果を裏付け、スートの酸化機構は、先ず表面が酸化されて酸性化合物が生成し、その酸性化合物が排出されると次の表面が酸化されて再び酸性化合物が生成し、これが連続することで全体が酸化されると考えられる。
すなわち本実施例の排気浄化装置では、セリアの酸素吸放出能によって供給された活性な酸素によってスートの表面が酸化され、それによって生成した酸性化合物は、セリアに吸着する。吸着した酸性化合物は、供給されたNH3などの酸性化合物脱離剤によって反応系外へ積極的に引き抜かれる。これによりスートの酸化反応が促進され、スートを連続的に酸化することができる。したがって圧力損失が増大しにくいため強制再生が不要又は回数を大幅に減少でき、同時にNOxを浄化することが可能となるとともに、貴金属を用いていないので安価な装置となる。なおスート酸化に関係のない目的のために、貴金属を用いることができることは言うまでもない。
(実施例4)
図27に、本実施例の排気浄化装置を示す。この排気浄化装置は、NH3供給ノズル3を用いず、DPF1の排気上流側に水素生成触媒31を配置し、NOx選択還元触媒30に代えてNOx吸蔵還元触媒32を配置したこと以外は実施例3と同様の構成である。
水素生成触媒31は、ストレートフロー構造のハニカム基材にセリア−アルミナ複合酸化物からなるコート層を基材1Lあたり150g形成し、コート層にPtを基材1Lあたり1.5g担持してなるものである。
またNOx吸蔵還元触媒32は、ストレートフロー構造のハニカム基材にアルミナからなるコート層を基材1Lあたり100g形成し、コート層にPtを基材1Lあたり1.5g担持し、かつBaを基材1Lあたり0.1モル、Kを基材1Lあたり0.1モル、Liを基材1Lあたり0.1モル担持してなるものである。
この排気浄化装置では、排気がDPF1に流入すると、スートはコート層20のセリアと接触することで表面が酸化され、CO、CO2などの酸性化合物が生成する。この酸性化合物は、生成とほとんど同時にセリアに吸着されて除去されるので、スートの表面ではさらに酸化が進行し新たな酸性化合物が生成してセリアに吸着する。
そして水素生成触媒31では、水蒸気改質反応によってH2が生成し、それがDPF1に流入するので、H2はコート層20と接触し、セリアに吸着している酸性化合物を脱離させる。これによりセリアの酸性化合物吸着能が回復し、スートの酸化が円滑に進行する。さらに水素生成触媒31ではHCが消費されるので、DPF1におけるスートの酸化反応の阻害が抑制される。そしてDPF1を通過したH2は、NOx吸蔵還元触媒32においてNOxの還元浄化に消費される。したがってスートの酸化反応が連続的に進行するので、圧力損失が増大しにくくなって強制再生を不要又は回数を大幅に減少でき、同時にNOxを浄化することができる。
さらに、DPF1にセリアと共にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を配置してもよい。そうすると、これらの金属は酸性化合物吸着材として機能するとともに、期せずしてDPF1に大量の粒子状物質が堆積した場合の熱暴走を阻止できる場合がある。自然酸化の熱を受けることにより、これらの金属に吸着していたCO2などの酸性化合物が大量に脱離することで、スートなどの粒子状物質への酸素の供給が遮断されるからである。
なお図24に点線で示すように、NOx還元のために、DPF1とNOx吸蔵還元触媒32の間に、さらにNH3、H2、HCなどを供給してもよい。
(実施例5)
図28に、本実施例の排気浄化システムを示す。排気流路には、実施例3と同様のDPF1が配置されている。さらに実施例3と同様のNH3供給ノズル3が配置され、DPF1の上流側の排気流路にNH3を供給可能となっている。NH3供給ノズル3は、制御手段5によって駆動を制御されている。
この排気浄化システムでは、排気がDPF1に流入すると、スートはコート層20のセリアと接触することで表面が酸化され、CO、CO2などの酸性化合物が生成する。この酸性化合物は、生成とほとんど同時にセリアに吸着されて除去されるので、スートの表面ではさらに酸化が進行し新たな酸性化合物が生成する。しかしセリアによる酸性化合物の吸着量が飽和すると、その時点でスートの酸化が停止してしまう。
そこでセリアによる酸性化合物の吸着量が飽和するより前に、NH3供給ノズル3からNH3を排気中に供給する。NH3はコート層20と接触し、セリアに吸着している酸性化合物をセリアから脱離させる。これによりセリアの酸性化合物吸着能が回復し、スートの酸化が円滑に進行する。
以下、制御手段5の制御内容を図29を参照しながら説明する。エンジンの駆動中は温度センサ4の検出信号が制御手段5に常時入力される。先ずエンジンが駆動されると、ステップ101で制御手段5はROMに記憶されている温度(Td)を読み込む。Tdは、セリアに吸着されたCO、CO2などの酸性化合物が円滑に脱離する温度であり、脱離開始する温度より高い。この温度(Td)は、エンジンシステム毎にスートの連続酸化量が十分となる温度として予め決定されている。例えば実施例1のようにCeとAgが40:60(モル比)として共沈、熟成、焼成することに得られた組成物からコート層を形成した場合には、例えばTd=260℃として実施できる場合がある。
次にステップ102で温度センサ4から現実のDPF1の温度(T)が制御手段5に入力され、ステップ103でTdとTとが比較される。T>Tdである場合には、既にセリアから酸性化合物が脱離しているので、ステップ105でNH3供給ノズル3の駆動が停止され、処理はステップ102に戻る。一方、T≦Tdである場合には、セリアに酸性化合物が吸着している状態であるので、制御手段5はステップ104でNH3供給ノズル3を駆動する。NH3供給ノズル3はDPF1の上流側で排気にNH3を供給し、処理はステップ102に戻る。
したがってDPF1の温度TがTdより低い(T≦Td)間は、NH3が常時供給されるので、酸性化合物が生成に連続して速やかに脱離され、スートは円滑に酸化浄化される。またDPF1の温度(T)がTdより高い(T>Td)場合には、NH3は供給されず、セリアの酸化力と高温の排気によってスートは円滑に酸化浄化される。これにより本実施例の排気浄化システムによれば、300℃未満の低温域からスートを円滑に酸化浄化することができ、圧損の上昇も抑制されている。そして貴金属や触媒を用いないので、安価である。
なお、NH3の添加量は、スートの排出量と排気温度に対する必要NH3量のマップを作製しておき、その範囲内でNH3を供給することが望ましい。
(実施例6)
図30に本実施例の排気浄化システムを示す。本実施例では、実施例5の装置に加えて、エンジンの駆動状況が制御手段5に入力されている。制御手段5は、図29の制御に並行して図31に示す制御を行う。
走行時には、先ずステップ201で予め設定された所定値(X)と、予め設定された時間(Y)とが読み込まれる。ステップ202でエンジンのトルクと回転数が読み込まれると、ステップ203において制御手段5は、予めROMに記憶されているトルクと回転数に対するスートの排出量との関係が記載されたマップから、その時点における排気中のスート量(Q)を読み込む。そしてステップ204でそれまでのスートの蓄積量(A)が演算され、ステップ205では予め設定された所定値(X)とスートの蓄積量の時間的変化量(dA/dt)とが比較される。
dA/dt≧Xである場合には、山道などエンジンの負荷が大きくスートの排出量が多い走行モードになったと判断され、その後もスート排出量が多い状態が続く可能性があることから、ステップ206でNH3供給ノズル3が駆動されて処理はステップ202に戻る。したがってその後スートの排出量が多い状態が継続しても、NH3の供給によって酸性化合物が円滑に脱離されるので、スートを円滑に酸化浄化することができる。
一方、dA/dt<Xである場合には、ステップ207でdA/dt<Xの状態が継続する時間と予め設定された時間(Y)とが比較される。dA/dt<Xの状態が継続する時間が予め設定された時間(Y)以上である場合は、ステップ208でNH3供給ノズル3の駆動が停止されて処理はステップ202へ戻る。しかしdA/dt<Xの状態が継続する時間が予め設定された時間(Y)より短い場合は、山道走行が連続するなどスートの排出量が多い状態が続いているので、NH3供給ノズル3の駆動は停止されることなく処理はステップ202に戻る。
したがって本実施例の排気浄化システムによれば、実施例5の温度による制御に加えてエンジンから排出されるスートの量を予測した制御が行われるので、スートの酸化浄化をさらに精度高く行うことができる。
(実施例7)
図32に本実施例の排気浄化システムを示す。本実施例では、実施例5の装置に加えて、DPF1の上流側及び下流側の排気流路に圧力センサ6がそれぞれ配置され、DPF1の両側における排気の圧力が制御手段5に入力されている。制御手段5は、図29の制御に並行して図33に示す制御を行う。
エンジンが始動されると、ステップ301で制御手段5はROMに予め記憶された所定の差圧値Pcと予め設定された時間(Z)を読み込む。次いでステップ302で一対の圧力センサ6の検出値が入力され、ステップ303では両圧力の差圧ΔPが演算される。そしてステップ304で差圧ΔPとPcとが比較される。
ΔP≧Pcである場合には、DPF1内でのスートの堆積量が所定量を超えたと判断され、ステップ305でNH3供給ノズル3が駆動されて処理はステップ302に戻る。したがってスートの堆積量が多くなったとしても、NH3の供給によって酸性化合物が円滑に脱離されスートを円滑に酸化浄化することができるので、圧損の上昇を確実に抑制することができる。
一方ΔP<Pcである場合には、ステップ306でΔP<Pcの状態が継続する時間と予め設定された時間(Z)とが比較される。ΔP<Pcの状態が継続する時間が予め設定された時間(Z)以上である場合は、ステップ307でNH3供給ノズル3の駆動が停止されて処理はステップ302へ戻る。しかしΔP<Pcの状態が継続する継続する時間が予め設定された時間(Z)より短い場合は、スートの堆積量が多い状態が続いているので、NH3供給ノズル3の駆動は停止されることなく処理はステップ302に戻る。
したがって本実施例の排気浄化システムによれば、実施例5の温度による制御に加えてDPF1に堆積しているスートの量に応じた制御が行われるので、圧損の上昇を確実に抑制することができる。
(実施例8)
図34に本実施例の排気浄化システムを示す。本実施例では、実施例6の装置に加えて、DPF1の上流側に酸化触媒7が配置され、DPF1の下流側にNOx浄化手段8が配置されている。酸化触媒7は、ストレートフロー構造のハニカム基材に、アルミナにPtを担持してなるコート層が形成されている。またNOx浄化手段8は、ストレートフロー構造のハニカム基材に、アルミナにPt、Ba及びKを担持してなるコート層が形成されてなるNOx吸蔵還元型触媒から構成されている。
この排気浄化システムでは、図31と同様に制御されることで、NH3の供給によって酸性化合物が円滑に脱離される。また酸化触媒7によって排気中のNOが酸化されてNO2となり、酸化活性の高いNO2がスート酸化促進手段としてDPF1に流入する。したがって、スートの酸化浄化がさらに促進される。そして排気中に含まれるNOxに加えてNH3の酸化によってNOxが生成したとしても、そのNOxはNOx浄化手段8によって吸蔵あるいは還元浄化されるので、NOxが排出されるのを防止することができる。また酸化触媒7では、排気中のHCが酸化除去される。したがって酸化触媒7は、スート酸化促進手段及びHC除去手段として機能する。
なお、スートとNO2との反応によってNOが生成するが、NOx選択還元触媒ではNOの還元浄化は困難であるので、NOx浄化手段8にはNOを酸化することで吸蔵できるNOx吸蔵還元型触媒を用いている。そして脱離剤としてNH3を供給することで、排気雰囲気はストイキ〜リッチ雰囲気となり、NOx浄化手段8においてNOxを効率よく還元浄化することができる。
本実施例の場合には、エンジンのトルクと回転数に対する排出NO量のマップから、そのNOを還元浄化するに必要なNH3量を算出しておき、図29の制御によって供給されるNH3の量は算出されたNH3の量の範囲内とすることが望ましい。