以下、本発明の手術用器具および手術用器具セットの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の手術用器具(充填器具)の構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示す手術用器具(充填器具)の筒体の先端側の領域を示す拡大側面図であり、図3は、本発明の手術用器具セットを構成する手術用器具(拡径器具)の構成を示す斜視図であり、図4および図5は、それぞれ、本発明の手術用器具セットを構成する手術用器具(形状整復器具)の構成を示す斜視図であり、図6は、本発明の手術用器具セットを構成する手術用器具(押込器具)の構成を示す斜視図であり、図7〜図12は、それぞれ、本発明の手術用器具セットの使用方法を説明するための図であり、図13は、椎体圧迫骨折整復術が施された椎骨を模式的に示す図である。なお、図7〜図12には、上側に椎骨を斜め下から見た図(椎体の一部を切り欠いて示す)を示し、下側に椎骨を平面視した図を示す。また、以下、図1および図3〜図6中、左側を「先端」、右側を「基端」と言い、図2中、下側を「先端」、上側を「基端」と言う。また、以下、図7〜図12の上側の図および図13中、上側を「上部(頭側)」、下側を「下部(脚側)」、左側を「前方(腹側)」、右側を「後方(背側)」とする。
本発明の手術用器具、手術用器具セットは、骨欠損部の充填材を充填する手術に用いられるものである。
ここで、骨欠損部とは、外傷による喪失、腫瘍等の除去手術による除去、骨粗鬆症等による骨密度の低下等、または、これらの複合的な要因により生じた骨の空洞部のことを言う。
本発明の手術用器具、手術用器具セットは、椎体、腸骨、肩甲骨、上腕骨、尺骨、橈骨、大腿骨、けい骨および腓骨からなる群より選択される少なくとも1種の骨の骨欠損部に充填材を充填する手術に、好適に使用される。これらの骨は、比較的大きいサイズ(寸法)の骨であるが、このような骨では、充填材を充填すべき骨欠損部が、比較的大きい場合や複雑な形状を有する場合等が多く、このような骨に適用することにより、本発明の効果をより顕著に発揮させることができる。言い換えると、本発明によれば、上記のような骨欠損部に対しても、骨補填材を、効率よくかつ高い充填率で充填することができる。
以下では、椎体が圧潰した際に、この椎体の修復を行う手技(椎体圧迫骨折整復術)に、本発明を適用する場合を代表に説明する。
本実施形態の手術用器具セットは、例えば、椎体圧迫骨折整復術に用いられるものであり、本発明の手術用器具であるインサーター(充填器具)4と、ガイド棒(拡径器具)1と、バーチカルエレベーター(形状整復器具)2と、ホリゾンタルエレベーター(形状整復器具)3と、インパクター(押込器具)5とを有している。なお、バーチカルエレベーター2とホリゾンタルエレベーター3とは、いずれも、形状整復器具の一種であるが、椎体91の整復位置に応じて使い分けられるものである。以下、各手術用器具(構成要素)について、順次、説明する。
まず、本発明の手術用器具であるインサーター(充填器具)4について説明する。
<インサーター(本発明の手術用器具)>
図1、図2および図11に示すインサーター(充填器具)4は、椎体91内(骨欠損部内)に充填材7を充填するために用いられる手術用器具であり、特に、後に詳述するような本発明の手術用器具セットを構成する手術用器具(特に、バーチカルエレベーター2、ホリゾンタルエレベーター3)により、形状の整復が施された椎体91内(整復により椎体91内に形成された空洞911)に、充填材7を充填するために用いられる手術用器具である。
このインサーター4は、筒体41と、筒体41の中空部(内腔)412に挿通される押出棒43と、筒体41の基端部に設けられた筒体用把持部42と、押出棒43の基端部に設けられた押出棒用把持部44とを有している。
筒体41は、後述する充填材7が装填される中空部412を有している。そして、この中空部412は、筒体41の先端側において、その側方に設けられた開口部413で開放している。このように、本発明は、手術用器具(充填器具)を構成する筒体が、その先端付近において、側方に設けられた開口部に連通する中空部を備えている点に特徴を有する。
ところで、開口部が筒体の先端に設けられている場合、すなわち、中空部が筒体の基端から先端まで貫通するようなものである場合であっても、充填材を骨欠損部に供給することは可能である。しかしながら、このような場合、以下のような問題点がある。
開口部が筒体の先端に設けられている場合、充填される充填材は、筒体の先端付近に偏在し易く(留まり易く)、骨欠損部全体にわたって骨補填材を供給するのが困難となり易い。このような傾向は、骨欠損部が比較的大きい場合や複雑な形状を有している場合等に特に顕著になる。また、開口部が筒体の先端に設けられている場合であっても、充填材を充填する際に、骨欠損部内での筒体の先端に位置を変化させることにより、骨欠損部全体にわたって骨補填材を供給することも考えられるが、このような場合、筒体の傾きを変える等の必要があり、患者の負担が増大する可能性がある。
これに対し、本発明によれば、中空部に装填された充填材を骨欠損部に効率良く充填することができる。特に、骨欠損部が比較的大きい場合や複雑な形状を有している場合等においても、骨欠損部に、充填材を効率良く充填することができる。また、本発明では、開口部が筒体の側方に設けられているため、例えば、(筒体の軸方向に対する傾きを変えることなくても、)筒体をその軸を中心に回転させることにより、より効率良く充填材を充填することができる。また、このような回転をさせなくても、例えば、充填材の充填時において、開口部を重力方向に対して上側に向けることにより、充填材が効率良く拡散するように充填することができる。
開口部413の形状は、特に限定されないが、略楕円形であるのが好ましい。これにより、椎体9内に、充填材7をより効率良く(容易かつ確実に)充填することができる。
上述したように、開口部413は、筒体41の側方に設けられているが、筒体41の先端から開口部413の先端部までの距離(図2中長さL0)は、0.5〜50mmであるのが好ましく、0.5〜20mmであるのが好ましい。これにより、椎体9内に、充填材7をより効率良く充填することができる。また、椎体9の筒体41から比較的遠い部位にも充填材7を効率良く供給することができる。これに対し、筒体41の先端から開口部413の先端部までの距離が前記下限値未満であると、充填材7の大きさ、形状等によっては、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。また、筒体41の先端から開口部413の先端部までの距離が前記上限値を超えると、椎体内に充填できないばかりではなく、椎弓根より漏れ出してしまう可能性がある。
また、図2に示すように、中空部412は、その先端付近(筒体41の先端付近)で湾曲している。これにより、椎体9内に、充填材7をより効率良く充填することができ、特に充填材7を充填すべき椎体9内の空間(空洞911)が比較的大きい場合や複雑な形状を有している場合等においても、椎体9内に、充填材7をより効率良く充填することができる。また、椎体9の筒体41から比較的遠い部位にも充填材7を効率良く供給することができる。このような効果は、図示のように、中空部412が、その先端付近で湾曲している場合と同様に、屈曲している場合にも得られる。
このような筒体41は、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。これにより、充填材7を椎体91内に充填する操作の際に、充填材7が筒体41の外周面と孔93の内周面との隙間から、椎骨9外(骨欠損部の外部)に漏れ出すのを効果的に防止することができる。
また、筒体41の長さは、特に限定されないが、9〜17cm程度であるのが好ましく、11〜15cm程度であるのがより好ましい。筒体41の長さを前記範囲内とすることにより、インサーター4の取り扱いがより容易となる。
また、筒体41には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り411が形成されている。これにより、インサーター4の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での筒体41(または後述する押出棒43)の先端位置を容易に確認することができる。
筒体41の構成材料としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリフェリレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の各種樹脂材料、アルミナ、ハイドロキシアパタイト等の各種セラミックス材料等を挙げることができるが、これらの中でも、金属材料が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼で構成した場合、高強度で衝撃に強く、また耐熱性を有するため、器具を滅菌する際の熱に十分に耐えることができる。また、ステンレス鋼で構成されることにより、筒体41の内周面と押出棒43の外周面との摺動性を向上させることができ(低摩擦力)、押出棒43の移動操作をより容易に行うことができる。
また、筒体41は、例えば、パイプ状に成形されたものであってもよいし、コイル状に成形されたものであってもよい。また、例えば、筒体41がパイプ状に成形されたものである場合、筒体41の内表面付近に、上記のような樹脂材料で構成された被膜が被覆されていてもよい。これにより、筒体41の内周面と押出棒43の外周面との摺動性を向上させることができ(低摩擦力)、押出棒43の移動操作をより容易に行うことができる。
筒体41の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、筒体用把持部42が固定(固着)されている。この筒体用把持部42を把持してインサーター4の操作を行う。
筒体用把持部42は、ほぼ円筒状の部材で構成されている。この筒体用把持部42の長手方向の中央部には、周方向に沿って凹部421が形成されている。また、筒体用把持部42の基端には、リング状のフランジ422が形成されている。このような凹部421およびフランジ422は、それぞれ、滑り防止手段として機能するものであり、これらを筒体用把持部42に設けることにより、筒体用把持部42をより確実に把持することができる。これにより、インサーター4の操作をより確実に行うことができる。
また、筒体用把持部42は、その内径が基端に向かって漸増している。これにより、例えば、筒体41の中空部412への充填材7を装填する操作や、筒体41の中空部412への押出棒43を挿入する操作等を、より円滑かつ確実に行うことができる。
筒体41の中空部412には、この中空部412に装填された充填材7を排出可能な押出棒43が挿通される。押出棒43は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が筒体41の内径とほぼ等しく設定されている。具体的には、押出棒43の外径、すなわち、筒体41の内径は、特に限定されないが、3〜6mm程度であるのが好ましい。
この押出棒43は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、押出棒43の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、充填材7の充填操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを効果的に防止することができる。
この押出棒43は、筒体41に挿通した状態、すなわち、後述する押出棒用把持部44の先端が、筒体用把持部42の基端に当接した状態で、その先端部が筒体41の開口部413から突出するよう構成されている。換言すれば、押出棒43の長さは、前記状態で、その先端部が筒体41の開口部413から突出する程度とされている。このような構成とすることにより、充填材7を無駄なく筒体41の中空部412から排出することができる。
押出棒43は、例えば、前述した筒体41の構成材料として例示したもので構成されたものとすることができる。
また、押出棒43は、少なくともその先端付近が可撓性を有するものであるのが好ましい。これにより、筒体41の中空部412に装填された充填材7を、より確実に椎体9内に供給することができる。特に、筒体41の中空部412に複数個の充填材7が装填された場合において、椎体9内に供給する充填材7の量を容易に調節することができる。また、椎体9内の各部位に、それぞれ、最適な量の充填材7を容易かつ確実に供給することができる。また、筒体41の中空部412に装填された充填材7を無駄なく筒体41の中空部412から排出することができる。
また、押出棒43は、例えば、棒状またはパイプ状に成形されたものであってもよいし、コイル状に成形されたものであってもよい。また、例えば、押出棒43がパイプ状に成形されたものである場合、押出棒43の外表面付近に、上記のような樹脂材料で構成された被膜が被覆されていてもよい。これにより、筒体41の内周面と押出棒43の外周面との摺動性を向上させることができ(低摩擦力)、押出棒43の移動操作をより容易に行うことができる。また、押出棒43がコイル状に成形されたものとすることにより、比較的容易に、押出棒43を適度な可撓性を有するものとすることができる。
なお、押出棒43は、中実のものに限らず、中空のものでもよい。中空の棒状体としては、その両端のうちの少なくとも一端が閉塞しているもの、両端が開放しているもののいずれでもよい。後者の場合、例えばシース(管体)、カテーテルチューブ等が挙げられる。
また、押出棒43の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、押出棒用把持部44が固定(固着)されている。この押出棒用把持部44を把持してインサーター4の操作を行う。
この押出棒用把持部44には、その長手方向に沿って、凹部441、441が形成されている。2つの凹部441は、滑り防止手段として機能するものであり、互いに押出棒用把持部44の軸を介して対向して配置されている。このような凹部441、441を形成することにより、押出棒用把持部44をより確実に把持することができる。
本発明における充填材7としては、いかなるものを用いてもよいが、骨補填材(生体材料)として用いられる材料の粉体が好ましい。なお、ここでいう粉体とは、粉粒体、顆粒、ブロック体(例えば、略角柱状、略円柱状およびこれらの一部を切除した(特に、底面、上面に対し所定角度傾斜した角度で切除した)形状のもの等)、微小な薄片または針状体等を含む広い概念であり、その形状や形態、製造方法等は特に限定されない。
このような粉体としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等の各種セラミックスによる粉体を好適に用いることができる。セラミックスは、生体内で長期間安定に存在することができ、生体材料として優れている。また、上記のようなセラミックスの中でも、特にリン酸カルシウム系化合物による粉体が好ましい。リン酸カルシウム系化合物は、生体内で長期間安定に存在することができ、生体材料として特に優れている。
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、TCP(Ca3(PO4)2)、Ca2P2O7、Ca(PO3)2、Ca10(PO4)6F2、Ca10(PO4)6Cl2、DCPD(CaHPO4・2H2O)、Ca4O(PO4)2等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、粉体の平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.1〜6.0mm程度であるのが好ましく、1.0〜5.0mm程度であるのがより好ましい。なお、粉体が略球形状でないもの(例えば、上記のようなブロック体等)の場合、当該粉体の互いに直交する三軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の平均長さが、前記範囲内の値であるのが好ましい。
また、インサーター4は、開口部413が設けられている方向を示すマーカー(指標)423を有している。このマーカー423は、例えば着色等することにより、筒体用把持部42の外周の開口部413に対応する位置(図1中、紙面手前側)に形成されている。これにより、筒体41が、椎骨9の孔93に挿入され、開口部413を視認できない場合であっても、椎体91内で開口部413の向いている方向を容易に確認することができる。
なお、本実施形態では、このマーカー423は、筒体用把持部42に形成されているが、これに代わり、例えば、筒体41の基端側の領域等、筒体用把持部42以外の部分に形成されていてもよい。
<ガイド棒>
図3および図8に示すガイド棒1は、圧潰した椎体91を有する椎骨9に形成された孔93の径を拡大するために使用される手術用器具である。なお、この孔93は、通常、両側の椎弓92から椎体91内に到達するようにして、2つ形成される。
このガイド棒1は、横断面がほぼ円形をなす棒状体11と、棒状体11の基端部に設けられた把持部12とを有している。
ガイド棒1は、棒状体11の先端側を、孔93内に挿入するようにして使用する。これにより、孔93を拡径することができる。
孔93の内径(拡径操作を行った後の内径)は、個体差(個人差)もあるが、通常、4.5〜6.5mm程度とするのが好ましい。孔93の内径を前記範囲内とすることにより、前述したインサーター(充填器具)4や、後述する各手術用器具による操作を行うのに際し、椎弓92(特に、椎弓根)が容易に破壊されるのを防止しつつ、これらの操作を効率よく行うことができる。
また、このような孔93の拡径は、孔93の径を徐々に拡大するようにするのが好ましい。孔93の拡径を徐々に行うことにより、特に骨粗鬆症患者のように骨が脆弱になっている場合であっても、椎弓92の破壊を招くことなく、孔93を所望の内径とすることができる。
かかる観点からは、棒状体11の外径の異なる複数種類のガイド棒1を用意するのが好ましい。
この棒状体11の長さは、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。棒状体11の長さを前記範囲内とすることにより、ガイド棒1の取り扱いがより容易となる。
棒状体11は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、棒状体11の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、孔93の拡径操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを効果的に防止することができる。
また、棒状体11には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り111が形成されている。これにより、棒状体11の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での棒状体11の先端位置を容易に確認することができる。
このような棒状体11の構成材料としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリフェリレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の各種樹脂材料、アルミナ、ハイドロキシアパタイト等の各種セラミックス材料等を挙げることができるが、これらの中でも、金属材料が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。これらをステンレス鋼で構成した場合、高強度で衝撃に強く、また耐熱性を有するため、器具を滅菌する際の熱に十分に耐えることができる。
棒状体11の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部12が固定(固着)されている。この把持部12を把持してガイド棒1の操作を行う。
この把持部12には、その長手方向に沿って、凹部121、121が形成されている。2つの凹部121は、滑り防止手段として機能するものであり、互いに把持部12の軸を介して対向して配置されている。このような凹部121、121を形成することにより、把持部12をより確実に把持することができる。
<バーチカルエレベーター>
図4および図9に示すバーチカルエレベーター2は、椎体91の上部、特に、前方上部をほぼ正常位置に整復するために使用される手術用器具である。
このバーチカルエレベーター2は、棒状の本体21と、本体21の先端部に設けられた押圧部22と、本体21の基端部に設けられた把持部23とを有している。
本体21は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
また、本体21には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り211が形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部22の先端位置を容易に確認することができる。
本体21の先端部には、平板状をなす押圧部22が本体21と一体的に形成されている。
この押圧部22は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位であり、本体21に対して傾斜して設けられている。
このような構成のバーチカルエレベーター2は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図9に示す状態)で、例えば、本体21の基端側を押し下げるようにし、押圧部22の先端面221を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部22で椎体91の前方上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の前方上部を上方に持ち上げることができる。
すなわち、バーチカルエレベーター2では、押圧部22の先端面221が椎体91の上部内面に当接する当接面とされている。
押圧部22と本体21とのなす角度(図4中角度θ1)は、特に限定されないが、通常、5〜30°程度であるのが好ましく、5〜15°程度であるのがより好ましい。角度θ1を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、椎弓根を破損することなく、より容易かつ確実に行うことができる。
また、先端面221には、凹凸が形成されている。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、バーチカルエレベーター2により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
また、先端面221は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
押圧部22および本体21の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
また、押圧部22と本体21との全体での長さ(図4中長さL1)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、バーチカルエレベーター2の取り扱いがより容易となる。
なお、押圧部22は、本体21と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体21に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
また、本体21の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部23が固定(固着)されている。この把持部23を把持してバーチカルエレベーター2の操作を行う。
この把持部23には、その長手方向に沿って、凹部231、231が形成されている。2つの凹部231は、滑り防止手段として機能するものであり、互いに把持部23の軸を介して対向して配置されている。このような凹部231、231を形成することにより、把持部23をより確実に把持することができる。
また、バーチカルエレベーター2は、押圧部22の傾斜方向、すなわち、押圧部22が向いている方向を示すマーカー232を有している。このマーカー232は、例えば着色等することにより、把持部23の外周の先端面221に対応する位置(図4中上側)に形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部22、特に、先端面221の向いている方向を容易に確認することができる。
なお、本実施形態では、このマーカー232は、把持部23に形成されているが、これに代わり、例えば、本体21の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていていてもよい。
<ホリゾンタルエレベーター>
図5および図10に示すホリゾンタルエレベーター3は、椎体91の上部、特に、中央上部をほぼ正常位置に整復するために使用される手術用器具である。
このホリゾンタルエレベーター3は、棒状の本体31と、本体31の先端部に設けられた押圧部32と、本体31の基端部に設けられた把持部33とを有している。
本体31は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
また、本体31は、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り311が形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部32の先端位置を容易に確認することができる。
本体31の先端部には、平板状をなす押圧部32が本体31と一体的に形成されている。
この押圧部32は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位である。
このような構成のホリゾンタルエレベーター3は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図10に示す状態)で、例えば、本体31の基端側を下方に押し下げるようにし、押圧部32の一方の側面321を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部32で椎体91の中央上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の中央上部を、上方に持ち上げるようにして使用することができる。
本実施形態では、押圧部32の対向する一対の側面321、321(図5中、紙面手前側の面および紙面奥側の面)が、それぞれ前記当接面とされている。なお、ホリゾンタルエレベーター3では、押圧部32の周面の少なくとも一部を、椎体91の上部内面に当接する当接面とするようにしてもよい。
また、これらの側面321、321には、それぞれ、凹凸が形成されている。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、ホリゾンタルエレベーター3により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
また、各側面321は、それぞれ、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
このような押圧部32は、本体31に対して傾斜して設けられている。これにより、押圧部32を、本体31の軸を中心として回転させて用いることにより、広い範囲で椎体91の整復操作を行うことができる(図10の下側図参照)。
押圧部32と本体31とのなす角度(図5中角度θ2)は、特に限定されないが、通常、5〜30°程度であるのが好ましく、5〜15°程度であるのがより好ましい。角度θ2を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、より広い範囲で行うことができる。
押圧部32および本体31の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
また、押圧部32と本体31との全体での長さ(図5中長さL2)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の取り扱いがより容易となる。
なお、押圧部32は、本体31と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
また、本体31の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部33が固定(固着)されている。この把持部33を把持してホリゾンタルエレベーター3の操作を行う。
この把持部33には、その長手方向に沿って、凹部331、331が形成されている。2つの凹部331は、滑り防止手段として機能するものであり、互いに把持部33の軸を介して対向して配置されている。このような凹部331、331を形成することにより、把持部33をより確実に把持することができる。
また、ホリゾンタルエレベーター3は、押圧部32の傾斜方向、すなわち、押圧部32が向いている方向を示すマーカー332を有している。このマーカー332は、例えば着色等することにより、把持部33の外周(図5中下側)の側面321、321とほぼ90°をなす位置に形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部32の向いている方向を容易に確認することができる。また、この場合、側面321、321は、マーカー332とほぼ90°をなす方向を向いていることが判る。
なお、本実施形態では、このマーカー332は、把持部33に形成されているが、これに代わり、例えば、本体31の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていてもよい。
<インパクター>
図6および図12に示すインパクター(押込器具)5は、整復が施された椎体91内に充填された充填材7の密度を高めるために使用される手術用器具である。前述したように、本発明の手術用器具(充填器具)によれば、骨欠損部に充填材を効率良く充填することができるが、以下に詳述するようなインパクター(押込器具)を用いることにより、患者の負担が増大するのを防止しつつ、骨欠損部内における充填材の充填率を特に高いものとすることができる。
このインパクター5は、棒状の本体51と、本体51の先端部に設けられた押圧部52と、本体51の基端部に設けられた把持部53とを有している。
本体51は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
また、本体51には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り511が形成されている。これにより、インパクター5の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、後述する押圧部52の先端位置を容易に確認することができる。
本体51の先端部には、ほぼ円柱状をなす押圧部52が本体51と一体的に形成されている。
押圧部52は、充填材7を押圧する部分である。このような構成のインパクター5は、図12に示すように、前方(図12の上側中左方向)に移動操作するようにし、先端面521で充填材7を押圧するようにして使用することができる。これにより、充填材7を押し固めるようにして、その密度(充填密度)を高めることができる。
また、この先端面521には、凹凸が形成されている。これにより、先端面521は、充填材7(特に、粉状の充填材7)を保持することができるので、インパクター5により充填材7の密度を高める(緻密化)操作を行うのに際し、この緻密化操作をより確実に行うことができる。
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面521は、充填材7を、より確実に保持することができる。
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
また、先端面521は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
また、押圧部52は、その外径が先端に向かって漸増している。これにより、押圧部52と充填材7との接触面積を増大させることができ、充填材7の緻密化操作をより効率よく行うことができる。
なお、この押圧部52の先端外径は、椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。
押圧部52および本体51の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
また、押圧部52と本体51との全体での長さ(図6中長さL3)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、インパクター5の取り扱いがより容易となる。
なお、押圧部52は、本体51と一体的に形成されているものに限らず、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
また、本体51の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部53が固定(固着)されている。この把持部53を把持してインパクター5の操作を行う。
この把持部53には、その長手方向に沿って、凹部531、531が形成されている。2つの凹部531は、滑り防止手段として機能するものであり、互いに把持部53の軸を介して対向して配置されている。このような凹部531、531を形成することにより、把持部53をより確実に把持することができる。
以上、5つの手術用器具1〜5について説明したが、これらの手術用器具1〜5では、各把持部12、23、33、44、53が、それぞれ異なっているのが好ましい。これにより、各把持部の違いにより、異なる手術用器具であることをより確実に認識することができる。
この場合、各把持部は、例えば、形状、寸法、材質、手触り、色彩等を変える方法、文字(数字)、記号、図形のようなマーカーを付す方法等のうちの少なくとも1つの方法により、異なるものとすることができる。
図示の構成では、例えば、把持部12のA1で示す部分、把持部23のA2で示す部分、把持部33のA3で示す部分、把持部(押出棒用把持部)44のA4で示す部分、把持部53のA5で示す部分を、それぞれ、異なる色彩としたり、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付したりすることができる。
これにより、各把持部12、23、33、44、53を見るだけで、いずれの手術用器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術用器具を間違えてしまうようなミスをより確実に防止することができる。
また、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付す場合には、椎体圧迫骨折術を行う際に使用する順序にしたがって、数字を付すようにしてもよい。この場合、数字を見ながら、使用する手術用器具を順次選択していくことができ、便利である。
また、各手術用器具1〜5において、各把持部12、23、33、44、53と各先端側の部分とは、着脱自在なものであってもよい。この場合、各手術用器具1〜5は、互いに、それらの把持部が共通であり、先端側を取り替えて使用するような構成のものとすることができる。
次に、手術用器具セットの使用方法の一例について説明する。
[1] まず、X線透視下に、図7に示すように、椎体圧迫骨折整復術を施す椎骨9の椎弓92、92から、椎体91に向けてプローベ(処置具)を穿刺する。これにより、椎骨9の左右両側には、各椎弓92から椎体91内にかけて、細径の孔93、93が形成される。
[2] 次に、ガイド棒1の把持部11を把持して、図8に示すように、その先端側を、一方の孔93に挿入する。これにより、一方の孔93が拡径される。
なお、ガイド棒1は、その棒状体11の外径が異なるもの(例えば、φ:4mm、5mm、6mmの3種類)が用意されている。そして、これらを細径のものから、順次、使用することにより、孔93を徐々に拡径することができる。
このような孔93の拡径操作を、左右の孔93に対して行う。
[3] 次に、バーチカルエレベーター2の把持部23を把持して、図9に示すように、その先端側(押圧部22および本体21の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部22を前方部分に位置させる。また、このとき、押圧部22の先端面221を上方に向けた状態としておく。
そして、本体21の基端側を押し下げる。これにより、押圧部22は、その先端面221が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の前方上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
次いで、バーチカルエレベーター2の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
[4] 次に、ホリゾンタルエレベーター3の把持部33を把持して、図10に示すように、その先端側(押圧部32および本体31の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部32を中央部分に位置させる。また、このとき、押圧部32の一方の側面321を上方に向けた状態としておく。
そして、本体31の基端側を押し下げる。これにより、押圧部32は、その側面321が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の中央上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
また、押圧部32を、本体31の軸を中心に所定角度回転させ、前記と同様の操作を行う。これにより、椎体91の中央上部のより広い範囲に対して、整復操作を施すことができる。
次いで、ホリゾンタルエレベーター3の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
このような椎体91の整復操作[3]および[4]を、それぞれ、複数回繰り返して行うようにして、椎体91をほぼ元の形状に整復するようにする。
なお、このとき、椎体91を整復することにより、その内部には、空洞911が形成される。
[5] 次に、筒体41の筒体用把持部42を片手で把持して、図11に示すように、その先端側を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。そして、筒体41の開口部413を、空洞911の所望の箇所に位置させる。
この状態を維持しつつ、筒体用把持部42の基端から、充填材7を筒体41の中空部412に装填する。
次いで、他方の手で押出棒43の押出棒用把持部44を把持して、押出棒43を筒体用把持部42の基端より、筒体41の中空部412に挿入し、先端方向へ移動する。これにより、筒体41の中空部412にある充填材7は、押出棒43の先端部に押圧され、筒体41内を先端方向へ移送される。
さらに、押出棒43を先端方向へ進めると、その先端付近が筒体41の開口部413から突出し、充填材7が空洞911に供給され、充填される。
このような操作を行う際、必要に応じて、筒体41を、その軸を中心に回転させてもよい。
このような充填材7の充填操作を行うのに際しては、押出棒用把持部44の筒体用把持部42への当接により、押出棒43の筒体41の先端からの最大突出長さが規制されるため、椎体91の不要な箇所を押圧することが防止され、安全性が高い。
[6] 次に、インパクター5の把持部53を把持して、図12に示すように、その先端側(押圧部52および本体51の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。
そして、前記操作[5]で空洞911に充填された充填材7を、押圧部52で押圧する。これにより、充填材7の密度(充填密度)を高めることができる。
このような充填材7の充填操作[5]、および、充填材7の緻密化操作[6]を、それぞれ、左右の孔93を介して、複数回繰り返して行うようにして、椎体91の空洞911に充填材7を充填するとともに、その密度を高める。
また、このような操作[5]および[6]を行うことにより、椎体91の更なる整復も期待できる。
[7] 次に、左右の孔93を、それぞれ、図13に示すように、例えばハイドロキシアパタイト等の生体材料で構成される栓体8で封止する。これにより、各孔93を介して、充填材7が椎体91内(空洞911)から流出するのを防止(阻止)することができる。このため、椎体91が、再度、圧潰するのをより確実に防止することができる。
なお、各孔93は、栓体8に代わり、例えば骨セメント等により封止するようにしてもよい。
以上のようにして、椎体91に対する椎体圧迫骨折整復術が終了したら、術部(切開部)に対し縫合、結紮等を行い、手術を終了する。
なお、各手術用器具には、目盛りが設けられているので、前記操作[2]〜[6]を行うのに際しては、それぞれ、この目盛りを見ながら、それらの操作を行うことにより、各手術用器具の先端を、必要以上に椎体91内へ挿入してしまい、椎体91の不要な箇所を押圧してしまうことを防止することができ、安全性が高い。
次に、本発明の手術用器具(充填器具)の他の実施形態について説明する。以下の説明では、これらの実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図14、図15は、本発明の他の実施形態の手術用器具(充填器具)の構成を示す斜視図である。
図14に示すインサーター(充填器具)4Aでは、筒体41Aが、その先端付近において湾曲している。また、図15に示すインサーター(充填器具)4Bでは、筒体41Bが、その先端付近において屈曲している。このように、本発明においては、筒体は、その先端付近において湾曲または屈曲していてもよい。これにより、骨欠損部(椎体91内)に、充填材をより効率良く充填することができ、特に骨欠損部(空洞911)が比較的大きい場合や複雑な形状を有している場合等においても、骨欠損部に、充填材をより効率良く充填することができる。また、骨欠損部の筒体から比較的遠い部位にも充填材を効率良く供給することができる。
上記のように、筒体(筒体41A、41B)が、その先端付近において湾曲または屈曲している場合、筒体(筒体41A、41B)の基端側における軸方向と、先端付近に設けられた湾曲または屈曲している部位の接線方向とのなす角度(図14、図15中角度θ3)は、5〜30°であるのが好ましく、5〜15°であるのがより好ましい。角度θ3を前記範囲内の値とすることにより、筒体(筒体41A、41B)が前述したような湾曲または屈曲している部位を有することによる効果がより顕著に発揮される。
また、筒体(筒体41A、41B)が、その先端付近において湾曲または屈曲している場合、図14、図15に示すように、筒体(筒体41A、41B)の湾曲または屈曲している方向と、開口部が設けられている方向とがほぼ同一であるのが好ましい。これにより、筒体(筒体41A、41B)が前述したような湾曲または屈曲している部位を有することによる効果がより顕著に発揮される。
また、筒体(筒体41A、41B)が、上記のような湾曲または屈曲している部位を有するものであると、例えば、当該筒体(筒体41A、41B)を備える手術用器具(インサーター4A、4B)を、充填材を充填する充填操作の前処理としての海綿骨や瘢痕組織等を移動させる処理に好適に用いることができ、前述したような形状整復器具(バーチカルエレベーター2、ホリゾンタルエレベーター3)等を用いなくても、形状整復操作(椎体91をほぼ正常位置に整復する操作)を好適に行うことができる。
そして、本発明の手術用器具セットは、例えば、図14、図15に示すような手術用器具(インサーター4A、4B)を備えるものであってもよい。
以上、本発明の手術用器具および手術用器具セットの好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の手術用器具を構成する各手術用器具(本発明の手術用器具を含む)の各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明の手術用器具は、例えば、開口部を有する先端付近が、筒体本体から着脱可能な構成であってもよい。言い換えると、本発明の手術器具において、筒体は、筒体本体と、当該筒体本体の先端側に着脱可能な先端側部材とを有するものであってもよい。さらに、本発明の手術用器具(手術用器具セット)は、先端側部材として、例えば、開口部の大きさや形状、前述したθ3等の各種条件の異なるものを複数個備えるものであってもよい。上記のような構成であると、患者の症例等に応じて、先端側部材を適宜選択し、椎体圧迫骨折整復術等の手術(手技)において、本発明をより好適に適用することができる。このような場合、筒体本体および先端側部材にネジ部を設けることにより、筒体本体と先端側部材とを着脱可能にすることができる。
また、本発明の手術用器具セットは、少なくとも本発明の手術用器具(充填器具)を有していればよく、その組み合わせは、前記実施形態のものに限定されない。例えば、本発明の手術用器具セットでは、拡径器具、形状整復器具および押込器具のうちの任意の1または2以上が省略されていてもよく、また、任意の手術用器具が追加されていてもよい。 また、本発明の手術用器具(充填器具)が、図14、図15に示すように、その先端側が湾曲または屈曲しているものである場合、当該充填器具を形状整復操作に好適に用いることができ、上述したような形状整復器具を省略することができる。また、本発明の手術用器具(充填器具)によれば、骨欠損部に充填材を効率良く充填することができるので、前述したような押込器具を省略してもよい。
また、前記実施形態では、本発明の手術用器具、手術用器具セットを椎体圧迫骨折整復術に用いるものとして説明したが、本発明の手術用器具、手術用器具セットは、椎体圧迫骨折整復術以外の手技(手術)に用いられるものであってもよい。