本発明は、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、圧縮比を変更する可変圧縮機構を備えた内燃機関に関する。
近年、車両などに搭載される内燃機関としては、燃費低減や効率向上を目的として、圧縮を変更する可変圧縮比機構を備える内燃機関が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
一方、気筒内に燃料を噴射する筒内燃料噴射弁と吸気ポート内に燃料を噴射するポート燃料噴射弁とを併せ持つデュアルタイプの燃料噴射装置を備えた内燃機関が知られている(たとえば、特許文献2を参照)。
特開2003−206771号公報
特開2002−48035号公報
ところで、可変圧縮比機構とデュアルタイプの燃料噴射装置との双方を備えた内燃機関を好適に制御する技術については知られていない。
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、可変圧縮比機構とデュアルタイプの燃料噴射装置を備えた内燃機関に好適な制御技術を提供することにより、熱効率の向上と燃費向上を図ることを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明は、気筒内へ燃料を噴射する筒内燃料噴射弁と、吸気通路内へ燃料を噴射する吸気通路内燃料噴射弁と、圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構とを備えた内燃機関において、該内燃機関の運転状態に係るパラメータに基づいて筒内燃料噴射弁と吸気通路内燃料噴射弁と可変圧縮比機構とを協調制御する制御手段を設けることにより、熱効率の向上と燃費の向上を図るようにした。
例えば、制御手段は、上記したパラメータにより内燃機関が非暖機状態にあると判定された場合は、圧縮比が高くなるとともに吸気通路内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高くなるように可変圧縮比機構、筒内燃料噴射弁、及び吸気通路内燃料噴射弁を制御するようにしてもよい。
内燃機関が非暖機状態にあるときは、吸気通路壁面や燃焼室壁面の温度が低いため、吸気通路内燃料噴射弁や筒内燃料噴射弁から噴射された燃料が気化(霧化)し難く、可燃混合気を形成することが難しい。
特に、筒内燃料噴射弁から燃料噴射が行われた場合は、吸気通路内燃料噴射弁から燃料噴射が行われた場合に比して、燃料が霧化(気化)し難い傾向がある。更に、筒内燃料噴射弁から燃料噴射が行われた場合は、燃料を気化(霧化)させる際に筒内の熱エネルギが奪われるため、筒内温度が低下し易い。
これに対し、内燃機関が非暖機状態にあるときに圧縮比が高められるとともに吸気通路
内燃料噴射弁の燃料噴射比率が筒内燃料噴射弁より高められると、筒内温度が高まり易く且つ低下し難くなる。すなわち、圧縮比が高められることにより筒内の圧縮端温度が上昇するとともに、吸気通路内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高められることにより燃料の気化に費やされる筒内の熱エネルギが減少する。この結果、内燃機関の熱効率向上と暖機促進が図られる。
内燃機関の暖機完了後は筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高める(好ましくは目標燃料噴射量のすべてを筒内燃料噴射弁から噴射させる)ことにより成層燃焼を実現することができるため、上記のように内燃機関の暖機が促進されれば冷間始動後の早い時期に成層燃焼運転へ切り替えることができ、燃費向上効果を得ることも可能になる。
尚、内燃機関の暖機状態に関わるパラメータとしては、冷却水温度、潤滑油温度、始動時からの経過時間(運転時間)、始動時からの積算吸入空気量、始動時からの積算燃料噴射量等を例示することができる。
次に、制御手段は、上記したパラメータにより内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあると判定したときは、圧縮比を高めるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高めるように可変圧縮比機構、筒内燃料噴射弁、及び吸気通路内燃料噴射弁を制御するようにしてもよい。
内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときは1サイクルの所要時間が短くなり且つ目標燃料噴射量が増加するため、燃料と吸気を短時間で混合させる必要がある。また、筒内燃料噴射弁から燃料噴射が行われた場合は吸気通路内燃料噴射弁から燃料噴射が行われた場合に比べて燃料と吸気の混合に費やすことができる時間が短くなる。
上記したような問題に対し、内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときは筒内燃料噴射弁より吸気通路内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高め、燃料と吸気の混合に費やす時間を長くする方法が考えられる。
しかしながら、吸気通路内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高くなると、吸気通路内燃料噴射弁から噴射される多量の燃料が吸気通路内における吸気の流れを妨げ、吸気の充填効率を低下させてしまう場合がある。
一方、内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が吸気通路内燃料噴射弁より高められるとともに圧縮比が高められると、吸気通路内燃料噴射弁から噴射される燃料量が減少(燃料噴射量が零となる場合も含む)して吸気の充填効率低下が抑制されるとともに圧縮比上昇に伴う筒内温度上昇によって燃料の気化(霧化)が促進される。この結果、熱効率が向上するとともに機関出力が向上する。
内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときに圧縮比が高められるとノッキングが発生し易くなるが、筒内燃料噴射弁から噴射される燃料によって筒内温度が低下させられるため、ノッキングの発生を抑えることができる。
尚、内燃機関の負荷が高くなるほど目標燃料噴射量が増加して筒内温度が下がり易くなるため、負荷が高くなるほど圧縮比が高くなるようにしてもよい。
また、内燃機関が高回転・高負荷運転状態に加え、内燃機関が低回転・高負荷運転状態にあるときにも圧縮比を高めるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高めるようにしてもよい。
これは、変速比を連続的に変更可能な自動変速機と組み合わされる内燃機関に好適な制御である。変速比を連続的に変更可能な自動変速機と組み合わされる内燃機関は、低回転・高負荷運転領域で運転される機会が多いため、低回転・高負荷運転領域の熱効率向上が車両使用過程における燃費向上に有効となる。
そこで、内燃機関が低回転・高負荷運転状態にあるときに圧縮比が高められるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が吸気通路内燃料噴射弁より高められると、圧縮比低下による熱効率の低下が抑制されるため燃費を向上させることができる。更に筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高められることによって筒内温度が低下し易くなるため、圧縮比上昇によるノッキングの発生が抑制される。
その結果、低回転・高負荷運転領域においてノッキングを抑制しつつ熱効率を高めることができ、内燃機関の燃費を向上させることが可能となる。
内燃機関の機関回転数に関わるパラメータとしてはクランクシャフトの回転信号、カムシャフトの回転信号、機械式燃料噴射ポンプの回転信号などを例示することができる。また、内燃機関の負荷に関わるパラメータとしては、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を例示することができる。
次に、本発明は、低負荷時に吸気弁の開弁特性を変更して吸気の運動エネルギを増大させる可変動弁機構を備えた内燃機関に好適に適用することもできる。
例えば、制御手段は、前記したパラメータにより内燃機関が暖機完了後の低負荷運転状態にあると判定したときは、圧縮比が低くなるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高くなるように可変圧縮比機構、筒内燃料噴射弁、及び吸気通路内燃料噴射弁を制御するようにしてもよい。
吸気の運動エネルギは筒内で熱エネルギに変換されるため、吸気の運動エネルギが増大すると筒内温度が上昇し易くなる。このため、内燃機関が暖機完了前の低負荷運転状態にあるときに吸気の運動エネルギが増大すると、筒内温度の上昇により燃料の気化(霧化)が促進されるとともに暖機が促進される。
一方、内燃機関が暖機完了後の低負荷運転状態にあるときに吸気の運動エネルギを増大させるべく可変動弁機構が動作すると、筒内温度の上昇効果によってノッキングが誘発される場合がある。特に従来の可変圧縮比機構は負荷が低くなるほど圧縮比を高くするように動作するためノッキングが発生し易い。
そこで、内燃機関が暖機完了後の低負荷運転状態にあり且つ可変動弁機構が吸気の運動エネルギを増大させるべく動作する場合は、内燃機関が非暖機状態にある場合又は可変動弁機構が吸気の運動エネルギを増大させるべく動作しない場合(可変動弁機構を備えたいない場合も含む)に比して圧縮比が低くされるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高められるようにする。
この場合、圧縮比低下と筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率増加との相乗効果によって筒内温度が低下する。その結果、ノッキングの発生が抑制される。更に、圧縮比低下と筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率増加とが併用されると、圧縮比の低下のみでノッキングを抑制する場合に比べて圧縮比の低下量を少なくすることができ、熱効率の低下を少なくすることができる。
尚、筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高めることで筒内温度をある程度低下させること
ができるため、圧縮比を低下させずに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率を高めるようにしてもよい。この場合、可変圧縮比機構による熱効率向上効果を維持しつつノッキングの発生を抑制することができる。
次に、本発明は、吸気を圧縮するための過給器を備えた内燃機関にも好適に適用することができる。
例えば、制御手段は、過給器を備えた内燃機関が高負荷運転状態にあるときは、圧縮比が低下するとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高くなるように可変圧縮比機構、筒内燃料噴射弁、及び吸気通路内燃料噴射弁を制御するようにしてもよい。
過給器を備えた内燃機関が高負荷運転状態にあるときは、過給圧が上昇して筒内圧力が高くなるため、ノッキングが発生し易い。このようなノッキングの発生を圧縮比制御のみで抑制しようとすると、圧縮比を大幅に低下させる必要がある。しかしながら、圧縮比が大幅に低下させられると、内燃機関の熱効率が低下して燃費が悪化してしまう。
そこで、過給器を備えた内燃機関が高負荷運転状態にあるときは、圧縮比の低下に加えて筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高められるようにすれば、筒内燃料噴射弁から噴射された燃料によって筒内の温度がある程度低下するため、圧縮比を大幅に低下しなくともノッキングを抑制することができる。その結果、内燃機関の熱効率の低下を最小限に抑えることができ、燃費の悪化も抑えることができる。
尚、過給器を備えた内燃機関が高負荷運転状態にあるか否かを判別するためのパラメータとしては、前述したアクセルペダルの操作量(アクセル開度)の代わりに過給圧を用いてもよい。すなわち、制御手段は、過給圧が高くなるほど内燃機関の負荷が高いと判定し、過給圧が低くなるほど内燃機関の負荷が低いと判定するようにしてもよい。
本発明によれば、内燃機関の運転状態に応じて可変圧縮比機構とデュアルタイプの燃料噴射装置とを好適に協調制御することができるため、両者の相乗効果によって燃費や熱効率が一層向上する。
以下、本発明の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
先ず、本発明の実施例1について図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本発明に係る内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、行程容積を一定に保ちつつ燃焼室容積を増減させることにより圧縮比(圧縮比=(行程容積+燃焼室容積)/燃焼室容積)を可変とするレシプロ型の内燃機関である。
内燃機関1は、クランクシャフト2を回転自在に内装するクランクケース3と、クランクケース3に対してシリンダ軸方向へ摺動自在に取り付けられたシリンダブロック4と、シリンダブロック4の上部に取り付けられたシリンダヘッド5と、クランクケース3の底部に取り付けられたオイルパンケース6とを備えている。
シリンダブロック4にはシリンダ7が形成されている。シリンダ7には、ピストン8がシリンダ軸方向へ摺動自在に嵌装されている。ピストン8はコネクティングロッド9を介してクランクシャフト2と連結されている。
シリンダヘッド5には、燃焼室10に連通する吸気ポート11と排気ポート12が設けられている。シリンダヘッド5には、吸気ポート11に連通する吸気管13と、排気ポート12に連通する排気管14が接続されている。
シリンダヘッド5には吸気ポート11を開閉する吸気バルブ15が設けられ、吸気バルブ15は吸気カムシャフト16により開閉駆動されるようになっている。
シリンダヘッド5には排気ポート12を開閉する排気バルブ17が設けられ、排気バルブ17は排気カムシャフト18により開閉駆動されるようになっている。
シリンダヘッド5には、燃焼室10内に火花を発生させる点火栓(スパークプラグ)19が設けられている。
シリンダブロック4とクランクケース3との係合部には、シリンダブロック4をシリンダ軸方向の上死点側又は下死点側へ変位させる駆動機構20が設けられている。この駆動機構20は、本発明に係る可変圧縮比機構に相当するものであり、例えば特開2003−206771号公報に開示されている機構を用いることができる。
本実施の形態に係る内燃機関1は、吸気ポート11内へ燃料を噴射する吸気通路内燃料噴射弁21と燃焼室10内へ燃料を噴射する筒内燃料噴射弁22との二つの燃料噴射弁を具備したデュアルタイプの燃料噴射装置を備えている。
また、内燃機関1には、クランクポジションセンサ23、水温センサ24、アクセルポジションセンサ25、エアフローメータ26が取り付けられ、これらはECU27(Electronic Control Unit)と電気的に接続されている。
ECU27は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどから構成される算術論理演算回路であり、上記した各種センサの出力信号をパラメータとして内燃機関1の運転状態を判別し、判別された運転状態に応じて駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、筒内燃料噴射弁22を協調制御する。
本実施例における協調制御は、内燃機関1が暖機完了前の冷間状態(非暖機状態)にあるときに実行される。以下、本実施例における協調制御について図2に基づいて説明する。
図2は、冷間時協調制御ルーチンを示すフローチャート図である。冷間時協調制御ルーチンは所定時間毎(例えば、クランクポジションセンサ23がパルス信号を出力する度)にECU27が実行するルーチンである。
冷間時協調制御ルーチンでは、ECU27は、先ずS101において、暖機完了フラグの値が“1”であるか否かを判別する。暖機完了フラグはECU27のRAMに予め設定された記憶領域であり、内燃機関1が暖機完了前の冷間状態にあるときは“0”が記憶され、内燃機関1が暖機完了状態にあるときは“1”が記憶される。
S101において暖機完了フラグの値が“1”であると判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
S101において暖機完了フラグの値が“1”ではないと判定された場合は、ECU27はS102へ進む。S102では、ECU27は、水温センサ24の出力信号(以下、冷却水温度:THWと称する)、アクセルポジションセンサ25の出力信号(以下、アク
セル開度:ACCPと称する)、エアフローメータ26の出力信号値(以下、吸入空気量:Gaと称する)、機関回転数:NEを入力する。
S103では、ECU27は、前記S102で入力した冷却水温度:THWが暖機判定温度:T(例えば、50℃)より低いか否かを判別する。
前記S103において冷却水温度:THWが暖機判定温度:Tより低くないと判定された場合は、ECU27はS108において暖機完了フラグの値を“1”に変更して本ルーチンの実行を終了する。
前記S103において冷却水温度:THWが暖機判定温度:Tより低いと判定された場合は、ECU27はS104へ進む。S104では、ECU27は前記S102で入力したアクセル開度:ACCPと機関回転数:NEをパラメータとして基準圧縮比:εtを算出する。
基準圧縮比:εtは内燃機関1が暖機完了状態にあるときの目標圧縮比に相当する。ECU27のROMには内燃機関1が暖機完了状態にあるときの機関回転数:NEとアクセル開度:ACCPと基準圧縮比:εtとの関係を示すマップが予め記憶されており、このマップによって内燃機関1の機関回転数:NE及びアクセル開度:ACCPに適した基準圧縮比:εtが一意に決まるようになっている。
S105では、ECU27は前記基準圧縮比:εtに所定の補正値:△εを加算して目標圧縮比:εを算出する。前記補正値:△εは、固定値であってもよいが、図3に示すように冷却水温度が低くなるほど大きな値となる可変値であってもよい。
S106では、ECU27は前記S102で入力した吸入空気量:Gaをパラメータとして目標燃料噴射量:Qinjを算出する。
S107では、ECU27は、吸気通路内燃料噴射弁21と筒内燃料噴射弁22との燃料噴射比率を演算する。燃料噴射比率は、目標燃料噴射量:Qinjのうち吸気通路内燃料噴射弁21から噴射される燃料量と筒内燃料噴射弁22から噴射される燃料量との比率であり、本実施例では吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされるとともに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が0%にされる。
ECU27は、前記S106で算出された目標燃料噴射量:Qinjに吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率(=100%)を乗算して吸気通路内燃料噴射弁21の目標噴射量:Qintakeを算出するとともに、前記目標燃料噴射量:Qinjに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率(=0%)を乗算して筒内燃料噴射弁22の目標噴射量:Qcylinderを算出する。
ECU27は前記S107を実行し終えると本ルーチンの実行を一旦終了する。その後、ECU27は、前記目標圧縮比:εに従って駆動機構20を制御するとともに、前記目標噴射量Qintake、Qcylinderに従って吸気通路内燃料噴射弁21及び筒内燃料噴射弁22を制御する。
内燃機関1が暖機完了前の冷間状態にあるときに、前記した目標圧縮比:ε、目標噴射量Qintake、及び目標噴射量:Qcylinderに従って駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、及び筒内燃料噴射弁22が制御されると、目標燃料噴射量:Qinjの全てが吸気通路内燃料噴射弁21から噴射されるとともに、圧縮比が暖機完了後より高くなる。
目標燃料噴射量:Qinjの全てが吸気通路内燃料噴射弁21から噴射されると、筒内燃料噴射弁22から燃料が噴射された場合に比して、燃焼室10内の温度が低下し難くなる。これは、吸気通路内燃料噴射弁21から噴射された燃料の大部分が吸気ポート11内の熱エネルギや吸気の運動エネルギを利用して気化することにより、燃焼室10内において燃料の気化に費やされる熱エネルギが減少するためと考えられる。
また、圧縮比が暖機完了後より高くなると、圧縮端温度が上昇して燃焼室10内の熱エネルギが増加する。
従って、燃焼室10内の温度が上昇し易く且つ低下し難くなり、熱効率の向上、未燃燃料成分の排出量低減、及び暖機促進を図ることが可能となる。
尚、本実施例では内燃機関1の暖機状態を判別するためのパラメータとして冷却水温度:THWを用いたが、潤滑油温度、始動時からの経過時間(運転時間)、始動時からの積算吸入空気量、始動時からの積算燃料噴射量等をパラメータとして判別するようにしてもよい。
次に、本発明の実施例2について図4〜図5に基づいて説明する。ここでは前述した実施例1と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した実施例1では内燃機関1が暖機完了前の冷間状態(非暖機状態)にあるときに熱効率向上、暖機促進、エミッション低減を図る上で好適な協調制御について述べたが、本実施例では内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるときの熱効率向上を図る際に好適な協調制御について述べる。
内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるときは1サイクルの所要時間が短くなり且つ目標燃料噴射量:Qinjが増加するため、燃料と吸気を短時間で混合させる必要が生じる。
また、筒内燃料噴射弁22から噴射された燃料は、吸気通路内燃料噴射弁21から噴射された燃料に比べて吸気の混合に費やすことができる時間が短くなる。
上記のような問題に対し、内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるときは筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率より吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率を高め、燃料と吸気の混合に費やすことができる時間を長くする方法が考えられる。
しかしながら、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が高くなると、該吸気通路内燃料噴射弁21から噴射される多量の燃料が吸気ポート11内における吸気の流れを妨げ、吸気の充填効率が低下する可能性がある。
本実施例の協調制御では、内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるときに、筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が吸気通路内燃料噴射弁21より高められるとともに、同一運転条件下で吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%となる場合より圧縮比が高くなるようにした。
以下、本実施例における協調制御について図4に基づいて説明する。図4は高回転・高負荷時協調制御ルーチンを示すフローチャート図である。高回転・高負荷時協調制御ルーチンは、所定時間毎にECU27が実行するルーチンである。
高回転・高負荷時協調制御ルーチンでは、ECU27は、先ずS201において水温センサ24の出力信号(冷却水温度:THW)、アクセルポジションセンサ25の出力信号(アクセル開度:ACCP)、エアフローメータ26の出力信号(吸入空気量:Ga)、機関回転数:NEを入力する。
S202では、ECU27は前記S102で入力した機関回転数:NEが所定回転数:NEtより高いか否かを判別する。所定回転数:NEtは内燃機関1が高回転運転状態にあるか否かを判別するための閾値である。この閾値は内燃機関の種類によって異なるが、凡そ4000〜5000回転程度である。
前記S202において機関回転数:NEが所定回転数:NEtより高くない(機関回転数:NEが所定回転数:NEt以下)と判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S202において機関回転数:NEが所定回転数:NEtより高いと判定された場合は、ECU27はS203へ進み内燃機関1が高負荷運転領域にあるか否かを判別する。本実施例では内燃機関1の負荷を表すパラメータとしてアクセル開度:ACCPを用いる。つまり、ECU27は、前記S201で入力されたアクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいか否かを判別する。
前記S203において前記アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きくない(アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPt以下)と判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S203において前記アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいと判定された場合は、ECU27はS204において
前記S201で入力された吸入空気量:Gaをパラメータとして目標燃料噴射量:Qinjを算出する。
S205ではECU27は吸気通路内燃料噴射弁21と筒内燃料噴射弁22との燃料噴射比率を演算する。本実施例では吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が0%とされ且つ筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%とされる。
ECU27は、前記S204で算出された目標燃料噴射量:Qinjに吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率(=0%)を乗算して吸気通路内燃料噴射弁21の目標噴射量:Qintakeを算出するとともに、前記目標燃料噴射量:Qinjに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率(=100%)を乗算して筒内燃料噴射弁22の目標噴射量:Qcylinderを算出する。
S206ではECU27は前記S201で入力されたアクセル開度:ACCP及び機関回転数:NEをパラメータとして目標圧縮比:εを演算する。
図5は、負荷(アクセル開度:ACCP)と機関回転数:NEと目標圧縮比の関係を示す図である。図5中点線は吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%とされた場合の目標圧縮比を示し、図5中実線は筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%とされた場合の目標圧縮比を示している。また、図5中のεminは本実施例の可変圧縮比機構で実現可能な最低圧縮比を示し、εmaxは最高圧縮比を示している。
高回転・高負荷運転時に吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた
場合は、噴射燃料の大部分が吸気ポート11内の熱エネルギや吸気の運動エネルギを利用して気化するため、燃焼室10において燃料の気化に費やされる熱エネルギが減少する。燃焼室10において燃料の気化に費やされる熱エネルギが減少すると、燃焼室10内の温度が低下し難くノッキングが発生し易くなる。
従って、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた場合は、目標圧縮比を低下させる必要がある。
一方、高回転・高負荷運転時に筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされた場合は、噴射燃料が気化する際に燃焼室10内の熱エネルギを消費するため、燃焼室10内の温度が低下し易くなる。
従って、高回転・高負荷運転時に筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされた場合は、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた場合に比べて目標圧縮比を高めることが可能となる。
ここで図4に戻り、ECU27は、S206において前述した図5に示されるようなマップに基づいて目標圧縮比:εを算出し、本ルーチンの実行を終了する。その後、ECU27は、前記目標圧縮比:εに従って駆動機構20を制御するとともに、前記目標噴射量Qintake、Qcylinderに従って吸気通路内燃料噴射弁21及び筒内燃料噴射弁22を制御する。
上記した目標圧縮比:ε、目標噴射量Qintake、及び目標噴射量:Qcylinderに従って駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、及び筒内燃料噴射弁22が制御されると、目標燃料噴射量:Qinjの全てが筒内燃料噴射弁22から噴射されるとともに、目標燃料噴射量:Qinjの全てが吸気通路内燃料噴射弁21から噴射される場合に比して圧縮比が高くなる。
この場合、吸気の充填効率低下が抑制されるとともに内燃機関1の熱効率が向上する。更に圧縮比が高くされることによって筒内燃料噴射弁22からの噴射燃料が短時間で気化可能となるため、好適な可燃混合気を形成することが可能となる。
従って、本実施例によれば、吸気充填効率の低下抑制、熱効率の向上、ノッキング抑制、及び、良好な可燃混合気の形成を実現することができる。
尚、内燃機関1の負荷が高くなるほど目標燃料噴射量:Qinjが増加して筒内温度が下がり易くなるため、負荷が高くなるほど圧縮比が高くなるようにしてもよい。
また、筒内燃料噴射弁22は、機関回転数が高くなるほど短い時間で目標燃料噴射量を噴射しなければならなくなる。すなわち、筒内燃料噴射弁22が単位時間あたりに噴射すべき燃料量(以下、単位時間あたりの要求燃料量と称する)は、機関回転数が高くなるほど多くなる。このため、単位時間あたりの要求噴射量が筒内燃料噴射弁22の最大噴射量を超えるような場合には、目標燃料噴射量:Qinjの一部を吸気通路内燃料噴射弁21から噴射させるようにしてもよい。
高回転・高負荷運転時は吸気の慣性力が大きいため、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射量が少量であれば、吸気ポート11内における吸気の流れを妨げ難く、吸気充填効率の低下が抑制される。
次に、本発明の実施例3について図6〜図9に基づいて説明する。ここでは前述した実施例2と相違する構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述の実施例2では高回転・高負荷時に圧縮比を高めるとともに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を高めることで吸気の充填効率向上、内燃機関1の熱効率向上、ノッキング抑制、及び良好な可燃混合気の形成を図る例について述べた。これに対し、本実施例では低回転・高負荷時の熱効率向上と燃費向上を図る例について述べる。
図6は本発明を適用するドライブトレーンの概略構成を示す図である。図6に示すように内燃機関1の構成は前述した実施例1と同様である。この内燃機関1には、変速比を連続的に無段階可変する自動変速機28が連結されている。
前記自動変速機28には車速センサ29が取り付けられている。自動変速機28と車速センサ29は、自動変速機28の変速比を制御するための電子制御ユニット(T−ECU)30と電気的に接続されている。
T−ECU30は、ECU27と双方向通信を行いながら自動変速機28の変速比と内燃機関1の運転状態とを制御する。例えば、T−ECU30は、車速センサ29の出力信号(車速:V)とアクセルポジションセンサ25の出力信号(アクセル開度:ACCP)をパラメータとして自動変速機28の変速比と内燃機関1の運転状態を制御する。
具体的には、T−ECU30は、アクセル開度:ACCPをパラメータとして内燃機関1の目標機関回転数(自動変速機28の入力回転数)を演算し、その目標機関回転数と車速:Vの差に基づいて自動変速機28の変速比を定める。
T−ECU30は、内燃機関1の目標機関回転数を演算する際に、図7に示すような内燃機関1の動作線図に従って目標機関回転数を演算する。図7中の実線は内燃機関1の動作線を示し、点線は内燃機関1の等燃費線を示し、一点鎖線は内燃機関1の等出力線を表している。
内燃機関1の動作線は、等出力線と等燃費線の交点のうち最も燃費が低く且つ最も熱効率が高い交点を通るように定められている。このような動作線によれば、アクセル開度:ACCPをパラメータとして燃費及び熱効率に優れた目標機関回転数を一義に定めることができる。
ところで、図7の動作線からも明らかなように内燃機関1が低回転・高負荷運転状態にあるときの燃費は最適とは言い難い。車両走行過程における低回転・高負荷運転領域は比較的使用頻度が高いため、この運転領域の燃費改善は効果的である。
また、可変圧縮比機構を備えた内燃機関では負荷が高くなるほど圧縮比が低下させられるため、低回転・高負荷運転領域では圧縮比が低くされ、熱効率の低下が生じる。特に吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた場合は圧縮比の大幅な低下が必要となり、熱効率の低下が著しくなる。
そこで、本実施例では内燃機関が低回転・高負荷運転状態にあるときは、筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を100%にするとともに、同一運転条件下で吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%とされる場合より圧縮比が高くなるようにした。
但し、内燃機関1が暖機完了前の冷間状態にある場合に筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされると、燃料の気化が不十分となって可燃混合気を形成することが困
難になる可能性があるため、暖機完了後の低回転・高負荷運転時に限り上記制御を行うものとする。
以下、本実施例における協調制御について図8に基づいて説明する。図8は低回転・高負荷時協調制御ルーチンを示すフローチャート図である。この低回転・高負荷時協調制御ルーチンは、所定時間毎にECU27が実行するルーチンである。
低回転・高負荷時協調制御ルーチンでは、ECU27は、先ずS301において水温センサ24の出力信号(冷却水温度:THW)、アクセルポジションセンサ25の出力信号(アクセル開度:ACCP)、エアフローメータ26の出力信号(吸入空気量:Ga)、機関回転数:NEを入力する。
S302では、ECU27は前記S301で入力された冷却水温度:THWが暖機判定温度:T以上であるか否かを判別する。
前記S302において冷却水温度:THWが暖機判定温度:Tより低いと判定された場合はECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S302において冷却水温度:THWが暖機判定温度:T以上であると判定された場合はECU27はS303へ進む。S303ではECU27は前記S301で入力した機関回転数:NEが所定回転数:NElより低いか否かを判別する。所定回転数:NElは内燃機関1が低回転運転状態にあるか否かを判別するための閾値である。この閾値は内燃機関の種類によって異なるが、凡そ2000〜3000回転程度である。
前記S303において機関回転数:NEが所定回転数:NElより低くない(機関回転数:NEが所定回転数:NEl以上)と判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S303において機関回転数:NEが所定回転数:NElより低いと判定された場合は、ECU27はS304へ進み内燃機関1が高負荷運転領域にあるか否か、すなわち前記S301で入力されたアクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいか否かを判別する。
前記S304において前記アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きくない(アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPt以下)と判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S304において前記アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいと判定された場合は、ECU27はS305へ進む。S305では、ECU27は前記S301で入力された吸入空気量:Gaをパラメータとして目標燃料噴射量:Qinjを算出する。
S306ではECU27は吸気通路内燃料噴射弁21と筒内燃料噴射弁22との燃料噴射比率を演算する。本実施例では吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が0%とされ且つ筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%とされる。
ECU27は、前記S305で算出された目標燃料噴射量:Qinjに吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率(=0%)を乗算して吸気通路内燃料噴射弁21の目標噴射量:Qintakeを算出するとともに、前記目標燃料噴射量:Qinjに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率(=100%)を乗算して筒内燃料噴射弁22の目標噴射量:Qcylinderを算出する。
S307ではECU27は前記S301で入力されたアクセル開度:ACCP及び機関回転数:NEをパラメータとして目標圧縮比:εを演算する。
図9はアクセル開度:ACCPと機関回転数:NEと目標圧縮比との関係を示す図である。図9中実線は筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされたときの目標圧縮比を示し、点線は吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされたときの目標圧縮比を示している。
低回転・高負荷時の目標圧縮比は、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた場合より筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を100%にされた場合の方が高くされている。これは、筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を100%にされた場合は、吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が100%にされた場合より燃焼室10内温度が低下し易く、ノッキングが発生し難いためである。
ここで図8に戻りECU27はS307において前述した図9に示されるようなマップに従って目標圧縮比:εを算出し、本ルーチンの実行を終了する。その後、ECU27は、前記目標圧縮比:εに従って駆動機構20を制御するとともに、前記目標噴射量Qintake、Qcylinderに従って吸気通路内燃料噴射弁21及び筒内燃料噴射弁22を制御する。
上記した目標圧縮比:ε、目標噴射量Qintake、及び目標噴射量:Qcylinderに従って駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、及び筒内燃料噴射弁22が制御されると、目標燃料噴射量:Qinjの全てが筒内燃料噴射弁22から噴射されるとともに、目標燃料噴射量:Qinjの全てが吸気通路内燃料噴射弁21から噴射される場合に比して圧縮比が高くなる。この場合、内燃機関1の熱効率が向上し、それに応じて燃費も向上する。
従って、本実施例によれば、低回転・高負荷運転領域における熱効率向上及び燃費向上を図ることができる。
次に、本発明の実施例4について図10〜図12に基づいて説明する。ここでは前述した実施例1と相違する構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した実施例1では内燃機関1が暖機完了前の冷間状態(非暖機状態)にあるときに熱効率向上、暖機促進、エミッション低減を図る上で好適な協調制御について述べたが、本実施例では内燃機関が暖機完了後の低負荷運転状態にあるときの熱効率向上とノッキング抑制を図る上で好適な協調制御について述べる。
図10は、本実施例における内燃機関1の概略構成を示している。本実施例における内燃機関1は吸気バルブ15の開閉タイミングを変更する可変動弁機構160を備えており、この可変動弁機構160はECU27によって制御されるようになっている。
例えば、ECU27は、内燃機関1が低負荷運転状態にあるときに吸気バルブ15の開弁タイミングを吸気行程上死点より遅角させるべく可変動弁機構160を制御する。
内燃機関1の低負荷運転時に吸気バルブ15の開弁タイミングが吸気行程上死点より遅角されると、吸気が燃焼室10内へ流入する際の流速が高くなり、充填効率向上や燃焼改
善を図ることができる。
ところで、上記したような可変動弁機構160の制御は内燃機関1が暖機完了前の冷間状態にあるときは有効であるが、内燃機関1の暖機完了後はノッキング発生の要因となり得る。
すなわち、内燃機関1の暖機完了前に上記制御が行われると吸気の運動エネルギが燃焼室10内で熱エネルギに変換されて燃焼室10内の温度が上昇し燃料の気化が促進されるが、内燃機関1の暖機完了後に上記制御が行われると燃焼室10内温度が過剰に上昇してノッキングを誘発する可能性がある。特に可変圧縮比機構を備えた内燃機関では負荷が低くなるほど圧縮比が高くされるため、低負荷運転時に上記制御が行われるとノッキングが発生し易くなる。
そこで、本実施例では内燃機関1が暖機完了後の低負荷運転状態にあるときは、同一の運転条件下で吸気バルブ15の開弁時期が吸気行程上死点以前に設定される場合より圧縮比が低くされるとともに筒内燃料噴射弁の燃料噴射比率が高められるようした。
以下、本実施例における協調制御について図11に基づいて説明する。図11は低負荷時協調制御ルーチンを示すフローチャート図である。この低負荷時協調制御ルーチンは、所定時間毎にECU27が実行するルーチンである。
低負荷時協調制御ルーチンでは、ECU27は、先ずS401において暖機完了フラグの値が“1”であるか否かを判別する。
S401において暖機完了フラグの値が“1”であると判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
S401において暖機完了フラグの値が“1”ではないと判定された場合は、ECU27はS402へ進む。S402では、ECU27は、水温センサ24の出力信号(冷却水温度:THW)、アクセルポジションセンサ25の出力信号(アクセル開度:ACCP)、エアフローメータ26の出力信号(吸入空気量:Ga)、機関回転数:NE、及び吸気バルブ15の開弁時期:IVOを入力する。
S403ではECU27は前記S402で入力した冷却水温度:THWが暖機判定温度:Tより低いか否かを判別する。
前記S403において冷却水温度:THWが暖機判定温度:T以上であると判定された場合は、ECU27はS409において暖機完了フラグの値を“1”に変更して本ルーチンの実行を終了する。
前記S403において冷却水温度:THWが暖機判定温度:T未満であると判定された場合は、ECU27はS404へ進む。S404ではECU27は前記S402で入力した吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点より後であるか否かを判別する。
前記S404において吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点より後ではない(すなわち、開弁時期:IVOが吸気行程上死点以前である)と判定された場合は、ECU27は本ルーチンの実行を終了する。
前記S404において吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点より後であると判定された場合は、ECU27はS405へ進む。S405ではECU27は前記S
402で入力したアクセル開度:ACCPと機関回転数:NEをパラメータとして基準圧縮比:εtを算出する。
前記基準圧縮比:εtは吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点以前に設定された場合の目標圧縮比に相当する。ECU27のROMには、吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点以前に設定されている時の機関回転数:NEとアクセル開度:ACCPと基準圧縮比:εtとの関係を示すマップが予め記憶されているものとする。
S406ではECU27は前記基準圧縮比:εtから所定の補正値:△εを減算して目標圧縮比:εを算出する。前記補正値:△εは、固定値であってもよいが、図12に示すように冷却水温度が高くなるほど大きな値となる可変値であってもよい。
S407ではECU27は前記S402で入力した吸入空気量:Gaをパラメータとして目標燃料噴射量:Qinjを算出する。
S408ではECU27は吸気通路内燃料噴射弁21と筒内燃料噴射弁22との燃料噴射比率を演算する。本実施例では吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が0%にされるとともに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされる。
ECU27は、前記S407で算出された目標燃料噴射量:Qinjに吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率(=0%)を乗算して吸気通路内燃料噴射弁21の目標噴射量:Qintake(=0)を算出するとともに、前記目標燃料噴射量:Qinjに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率(=100%)を乗算して筒内燃料噴射弁22の目標噴射量
:Qcylinder(=Qinj)を算出する。
ECU27は前記S408を実行し終えると本ルーチンの実行を一旦終了する。その後、ECU27は、前記目標圧縮比:εに従って駆動機構20を制御するとともに、前記目標噴射量Qintake、Qcylinderに従って吸気通路内燃料噴射弁21及び筒内燃料噴射弁22を制御する。
内燃機関1が暖機完了後の低負荷運転状態にあり且つ吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点後に設定されるときに、前記した目標圧縮比:ε、目標噴射量Qintake、及び目標噴射量:Qcylinderに従って駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、及び筒内燃料噴射弁22が制御されると、同一運転条件下で吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点以前に設定され且つ吸気通路内燃料噴射弁21から燃料噴射される場合に比べて圧縮比が低下するとともに燃焼室10内の温度が低下する。
その結果、吸気バルブ15の開弁時期:IVOが吸気行程上死点後に設定されることによって吸気の運動エネルギが増加しても、ノッキングの発生が抑制される。更に、本実施例のように圧縮比の低下と筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率増加を併用してノッキングを抑制すると、圧縮比の低下のみでノッキングを抑制する場合に比べて圧縮比の低下量を少なくすることができ、圧縮比低下による熱効率の低下を抑えることができる。
また、上記した協調制御によれば、吸気バルブ15の開弁時期:IVOを進角させることなくノッキングを抑制することができるため、吸気の充填効率を低下させることもない。
尚、筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を高めることで燃焼室10内の温度をある程度低下させることができるため、圧縮比を低下させずに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率
を高めるようにしてもよい。この場合、可変圧縮比機構による熱効率向上効果を維持しつつノッキングの発生を抑制することができる。
また、内燃機関1がノックセンサを備えている場合には、先ず筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率を増加させ、その後にノックが検出されれば圧縮比の低下を行うようにしてもよい。その場合、筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率増加によってノックの発生を抑えることができない時に限り圧縮比が低下されるため、熱効率の低下を最小限に抑えることができる。
次に、本発明の実施例5について図13〜図14に基づいて説明する。ここでは前述した実施例1と相違する構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した実施例1では内燃機関1が暖機完了前の冷間状態(非暖機状態)にあるときに熱効率向上、暖機促進、エミッション低減を図る上で好適な協調制御について述べたが、本実施例では過給器を備えた内燃機関の高負荷時における熱効率向上とノッキング抑制を図る上で好適な協調制御について述べる。
図13は、本実施例における内燃機関1の概略構成を示している。本実施例における内燃機関1の吸気管13には吸気を圧縮する過給器31が設けられている。吸気管13の過給器31より下流には過給圧を検出する過給圧センサ(吸気圧センサ)32が設けられている。
過給器31は、内燃機関1の動力を利用する機械式の過給器であってもよく、あるいは内燃機関1の排気エネルギを利用する遠心過給器であってもよい。
過給器31を備えた内燃機関1が高負荷運転状態にあるときは、過給圧の上昇に伴って筒内圧力が高くなるため、ノッキングが発生し易い。このようなノッキングの発生を圧縮比制御のみで抑制しようとすると、圧縮比を大幅に低下させる必要がある。しかしながら、圧縮比が大幅に低下させられると、内燃機関の熱効率が低下し、燃費の悪化等が誘発される。
そこで、本実施例では、内燃機関1が高負荷運転状態にあるときは、圧縮比の低下に加えて筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が高められるようにした。
以下、本実施例における協調制御について図13に基づいて説明する。図13は高負荷時協調制御ルーチンを示すフローチャート図である。この高負荷時協調制御ルーチンは、所定時間毎にECU27が実行するルーチンである。
高負荷時協調制御ルーチンでは、ECU27は、先ずS501においてアクセルポジションセンサ25の出力信号(アクセル開度:ACCP)、エアフローメータ26の出力信号(吸入空気量:Ga)、機関回転数:NE、及び過給圧センサ32の出力信号(以下、過給圧:Pbを入力する。
S502ではECU27は前記S501で入力されたアクセル開度:ACCPをパラメータとして内燃機関1が高負荷運転状態にあるか否かを判別する。具体的には、ECU27は前記アクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいか否かを判別する。
前記S502においてアクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きくない(アクセル開度:ACCP≦所定開度:ACCPt)と判定された場合は、ECU27は
本ルーチンの実行を終了する。
前記S502においてアクセル開度:ACCPが所定開度:ACCPtより大きいと判定された場合は、ECU27はS503へ進む。S503ではECU27は前記S501で入力された吸入空気量:Gaをパラメータとして目標燃料噴射量:Qinjを算出する。
S504ではECU27は吸気通路内燃料噴射弁21と筒内燃料噴射弁22との燃料噴射比率を演算する。本実施例では吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率が0%とされ且つ筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%とされる。
ECU27は、前記S503で算出された目標燃料噴射量:Qinjに吸気通路内燃料噴射弁21の燃料噴射比率(=0%)を乗算して吸気通路内燃料噴射弁21の目標噴射量:Qintakeを算出するとともに、前記目標燃料噴射量:Qinjに筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率(=100%)を乗算して筒内燃料噴射弁22の目標噴射量:Qcylinderを算出する。
S505ではECU27は前記S501で入力されたアクセル開度:ACCP及び機関回転数:NEをパラメータとして基準圧縮比:εtを算出する。前記基準圧縮比:εtは過給器31による過給が行われない場合の目標圧縮比に相当する。
S506ではECU27は前記S505で算出された基準圧縮比:εtから所定値:△εを減算して目標圧縮比:εを算出する。ここで所定値:△εは、図15に示すように過給圧:Pbが高くなるほど大きな値を示すようになっている。
ECU27は前記S506の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を終了する。その後、ECU27は、前記目標圧縮比:εに従って駆動機構20を制御するとともに、前記目標噴射量:Qintake、Qcylinderに従って吸気通路内燃料噴射弁21及び筒内燃料噴射弁22を制御する。
上記した目標圧縮比:ε、目標噴射量Qintake、及び目標噴射量:Qcylinderに従って駆動機構20、吸気通路内燃料噴射弁21、及び筒内燃料噴射弁22が制御されると、目標燃料噴射量:Qinjの全てが筒内燃料噴射弁22から噴射されるとともに、過給器31による過給がなされない場合に比して圧縮比が低くなる。
筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率が100%にされ且つ圧縮比が低下されると、燃焼室10内温度が低下し易くなり、ノッキングの発生が抑制される。その際、圧縮比の低下と筒内燃料噴射弁22の燃料噴射比率増加を併用してノッキングを抑制するため、圧縮比の低下のみでノッキングを抑制する場合に比べて圧縮比の低下量を少なくすることができ、圧縮比低下による熱効率の低下を抑えることができる。
従って、本実施例によれば、熱効率の低下を最小限に抑えつつノッキングの発生を抑制することができる。
尚、本実施例では内燃機関1が高負荷運転状態にあるか否かを判別するパラメータとしてアクセル開度:ACCPを用いたが、アクセル開度:ACCPの代わりに過給圧:Pbを用いてもよい。
実施例1における内燃機関の概略構成を示す図
実施例1における冷間時協調制御ルーチンを示す図
冷却水温度と補正値との関係を示す図
実施例2における高回転・高負荷時協調制御ルーチンを示す図
実施例2における負荷と機関回転数と目標圧縮比との関係を示す図
実施例3におけるドライブトレーンの概略構成を示す図
実施例3における内燃機関の動作線を示す図
実施例3における低回転・高負荷時協調制御ルーチンを示す図
実施例3における負荷と機関回転数と目標圧縮比との関係を示す図
実施例4における内燃機関の概略構成を示す図
実施例4における低負荷時協調制御ルーチンを示す図
実施例4における冷却水温度と補正値との関係を示す図
実施例5における内燃機関の概略構成を示す図
実施例5における高負荷時協調制御ルーチンを示す図
実施例5における過給圧と補正値との関係を示す図
符号の説明
1・・・・内燃機関
7・・・・気筒
10・・・燃焼室
11・・・吸気ポート
12・・・排気ポート
13・・・吸気管
14・・・排気管
15・・・吸気バルブ
20・・・駆動機構
21・・・吸気通路内燃料噴射弁
22・・・筒内燃料噴射弁
23・・・クランクポジションセンサ
24・・・水温センサ
25・・・アクセルポジションセンサ
26・・・エアフローメータ
28・・・自動変速機
30・・・T−ECU
31・・・過給器
32・・・過給圧センサ