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JP4598265B2 - パーライト系レールおよびその製造法 - Google Patents

パーライト系レールおよびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重荷重鉄道のレールに要求される耐摩耗性を向上させ、同時に耐内部疲労損傷性を向上させたパーライト系レールおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の高効率化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の増加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレール使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善が要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷設されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナー)部や頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点で問題視されるようになった。
【0003】
しかしながら、最近の高強度化熱処理技術の進歩により、共析炭素鋼を用いた微細パーライト組織を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールが発明され、重荷重鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に改善してきた。
(1) 頭部がソルバイト組織、または微細なパーライト組織の超大荷重用の熱処理レール(特公昭54−25490号公報)。
(2) 圧延終了後、あるいは再加熱したレール頭部をオーステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/sec で加速冷却する130kgf/mm以上の高強度レールの製造法(特開昭57−198216公報)。
これらのレールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:0.7〜0.8%)による微細パーライト組織を呈する高強度レールであり、その目的は、パーライト組織中のラメラ間隔を微細化し、耐摩耗性を向上させることにあった。
【0004】
しかし近年海外の重荷重鉄道では、より一層の鉄道輸送の高効率化のために貨物の高積載化を強力に進めており、特に急曲線のレールでは上記開発のレールを用いてもG.C.部や頭側部の耐摩耗性が十分確保できず、摩耗によるレール寿命の低下が問題となってきた。このような背景から、現状の共析炭素鋼の高強度レール以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められるようになってきた。
【0005】
これらの問題を解決するため、本発明者らは下記に示すようなレールを提案した。
(3) 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を増加させた耐摩耗性に優れたレール(特開平8−144016号公報)。
(4) 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を増加させ、同時に硬さを制御した耐摩耗性に優れたレール(特開平8−246100号公報)。
これらのレールの特徴は、鋼の炭素量を増加し、パーライトラメラ中のセメンタイト相の密度を増加させ、さらに硬さを制御することにより、パーライト組織の耐摩耗性を向上させるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記(3)、(4)に示された発明レールは、高炭素化により耐摩耗性の向上は図れるものの、鋼の成分系やレール頭部の熱処理製造条件によっては、比較的冷却速度の遅いレール頭部内部では、パーライト組織中に粗大な初析セメンタイト組織が生成して疲労損傷の起点となり、レール頭部の耐内部疲労損傷性が低下するといった問題があった。
【0007】
また、これらの粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制するため、熱処理時のレール頭部の冷却速度を増加させることにより、その生成を抑制する方法も考えられるが、レール頭部のように断面積が大きい部位では、レール頭表面ではその効果が期待できるものの、内部ではその効果が全く期待できず、粗大な初析セメンタイト組織の生成を十分に抑制できないといった問題があった。
【0008】
このような背景から、高炭素含有のパーライト鋼レールにおいて、粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制したレールおよびその製造方法の開発が望まれるようになった。
すなわち本発明は、重荷重鉄道で使用される高炭素含有のパーライト鋼レールにおいて、耐摩耗性を向上させ、同時に粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制し、耐内部疲労損傷性を向上させることを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するものであって、その要旨は次の通りである。
(1)質量%で、
C :0.85超〜1.40%、 Mn:0.10〜2.00%
Si:1.00超〜3.00%、 Al:0.07超〜3.00%
を含有し、さらに必要に応じて、
Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00%
V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%
Mg:0.0005〜0.0300%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするパーライト系レール。
(2)前記鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ30mmの範囲が、硬さHv320以上のパーライト組織であることを特徴とする前記(1)に記載のパーライト系レール。
(3)前記(1) に記載の成分を含有する鋼片をレール形状に熱間圧延した後、熱間圧延ままのAr1 点以上の温度の鋼レール頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱された鋼レール頭部を、オーステナイト域温度から1〜30℃/sec の冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度が700〜500℃に達した時点で加速冷却を停止し、その後、放冷することを特徴とするパーライト系レールの製造法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、高炭素含有のパーライト鋼において、強度を増加させ、同時に粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制する添加元素を検討した。その結果、セメンタイト相に全く固溶しないSiを多量に添加すると、高強度化と初析セメンタイト組織の生成の抑制が同時に達成されることを知見した。
【0011】
図1は、Siの添加量を変化させた高炭素含有鋼の連続冷却変態線図の一例である。図1に示すように、Siの添加量が増加すると、パーライト変態領域が長時間側へ移動し、焼入れ性の増加により高強度化が達成されると同時に、特にSiの添加量が1.0%を超えた領域では、初析セメンタイト組織の生成領域も長時間側へ移動し、冷却速度の遅い領域で初析セメンタイト組織が生成し難くなることが明らかとなった。
【0012】
さらに本発明者らは、高炭素含有のパーライト鋼において、強度を増加させ、同時に初析セメンタイト組織の生成を抑制するための添加元素を検討した。その結果、Siと同様に、セメンタイト相に全く固溶しないAlを多量に添加すると、共析変態温度が高温側へ、さらに共析炭素濃度が高炭素側へそれぞれ移動し、パーライト変態時の過冷度の増加と相まって、高強度化と初析セメンタイト組織の生成の抑制が同時に達成されることを知見した。
【0013】
次に本発明者らは、上記の実験結果を検証するため、Siの添加量を0〜3.0%まで変化させた高炭素含有鋼、Alの添加量を0〜3.0%まで変化させた高炭素含有鋼をそれぞれ用いて、実レール形状の試験片の熱間圧延冷却実験を行い、それぞれの添加元素の最適成分範囲について検討を行った。
その結果、Siの添加量が1.0%を超える領域、またAlの添加量が0.07%を超える領域では、比較的冷却速度の遅いレール頭部内部においても、疲労損傷の起点となりやすい粗大な初析セメンタイト組織が生成し難くなり、高炭素含有鋼においても、レール頭表部から内部まで高い強度を有するパーライト組織が得られ易いことを見出した。
【0014】
さらに本発明者らは、これらの知見に加えて、上記発明レール鋼において、レール頭表部から内部まで高い強度を有するパーライト組織を得るためのレールの熱処理製造法について検討した。
実験の結果、高温度の熱を保有した鋼レールの頭部を、オーステナイト域温度からある一定範囲の温度域をある一定範囲の冷却速度で加速冷却することにより、レール頭表面から内部まで安定した高強度化が達成され、同時にSiやAlの添加効果と相まって、内部疲労損傷の起点となりやすい粗大な初析セメンタイト組織の生成も抑制できることが確認された。
【0015】
以上の実験室での検討の結果、SiやAl添加量の最適化を図り、同時にレール熱処理製造時の冷却条件の適正化を行うことにより、レールの内部疲労損傷の起点となる粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制し、レール頭表部から内部まで高い強度を有したパーライト組織が得られるとこを知見した。
すなわち本発明は、重荷重鉄道で使用される高炭素含有のパーライト鋼レールにおいて、耐摩耗性を向上させ、同時に粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制し、耐内部疲労損傷性を向上させることを目的としたものである。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
請求項1〜6において、レール鋼の化学成分、パーライト組織の範囲と硬さ、および熱処理製造条件を上記請求の範囲に限定した理由について、詳細に説明する。
【0017】
(1) レール鋼の化学成分
まず、本発明においてレール鋼の化学成分(成分量は質量%)を上記のように限定した理由について説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素であり、通常のレール鋼としてはC量0.60〜0.85%が添加されているが、C量0.85%以下では耐摩耗性の向上を図るためのパーライト組織中のセメンタイト相の密度が確保できず、さらに、レール頭部内部に疲労損傷の起点となる粒界フェライトが生成し易くなり、レール寿命が低下する。
またC量が1.40%を超えると、本発明の成分系では、レール頭表部や頭部内部のパーライト組織中に初析セメンタイト組織が生成し、レールの靭性が低下し、内部疲労損傷が発生しやすくなることや、パーライト組織中のセメンタイト相の密度が増加し、レールに必要とされる延性を十分に確保できなくなるため、C量を0.85超〜1.40%に限定した。
【0018】
Mnは、焼入れ性を高め、パーライト変態温度を低下させ、レール頭部の高硬度化を図り、同時に初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素であるが、0.10%未満の含有量ではこれらの効果がほとんどなく、レール頭部に必要とされる硬さの確保が困難となる。また、2.00%を超えると焼入れ性が著しく増加し、マルテンサイト組が生成し易くなることや、偏析が助長され、偏析部にレールの靭性や疲労強度に有害な初析セメンタイト組織が生成し易くなるため、Mn量を0.10〜2.00%に限定した。
【0019】
Siは、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素であり、同時に初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素であるが、1.00%以下では、初析セメンタイト組織の生成を抑制することが不十分となり、冷却速度の比較的遅いレール頭部内部に初析セメンタイト組織が生成し、内部疲労損傷が発生し易くなる。また3.00%を超えると、熱間圧延時に割れが多く生成し易くなり、溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低下する。さらに、パーライト組織が脆化し、ころがり面において表面損傷が発生しやくなる。したがって、Si量を1.00超〜3.00%に限定した。 なお、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、同時に熱間圧延時に割れの発生を抑制し、溶接性を確保するには、Si添加量を1.20〜2.00%の範囲とすることが最も望ましい。
【0020】
Alは、共析変態温度を高温側へ、同時に共析炭素濃度を高炭素側へそれぞれ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素であるが、0.070%以下では、初析セメンタイト組織の生成を抑制することが不十分となり、冷却速度の比較的遅いレール頭部内部に初析セメンタイト組織が生成し、内部疲労損傷が発生し易くなる。また、3.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大な酸化物(Al)が生成し、疲労強度を低下させることや、溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低下するため、Al量を0.07超〜3.00%に限定した。
なお、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、同時に疲労損傷の起点となる粗大な酸化物(Al)の生成を抑制し、溶接性を確保するには、Al添加量を0.10〜2.00%の範囲とすることが最も望ましい。
【0021】
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織の強度の向上、パーライト組織の延性や靭性の向上、レール溶接熱影響部での軟化や脆化を防止する目的で、Cr,Mo,V,Nb,Mgの元素を必要に応じて添加する。
【0022】
ここで、Cr,Moはパーライトの平衡変態点を上昇させ、パーライト組織の微細化により高強度化に寄与し、同時にパーライト組織中のセメンタイト相を強化することにより耐摩耗性の向上を図る。V,Nbは独自の炭化物を形成し、析出硬化で強度を高め、さらに結晶粒の成長を抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、パーライト組織の強度や延性および靭性の向上を図る
Mgは、レール溶接熱時にオーステナイト域まで加熱される熱影響部のパーライト組織を微細化し、レール溶接継ぎ手部の脆化を防止すること、が主な添加目的である。
【0023】
これら各成分の添加範囲とその限定理由を、以下に詳細に説明する。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高強度化に寄与すると同時に、パーライト組織中のセメンタイト相を強化することによって耐摩耗性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が小さく、3.00%を超える過剰な添加を行うと、マルテンサイト組織が多量に生成してレールの靭性を低下させるため、Cr量を0.05〜3.00%に限定した。
【0024】
Moは、Crと同様にパーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高強度化に寄与し、耐摩耗性を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、1.00%を超える過剰な添加を行うと、偏析が助長され、さらにパーライト変態速度が低下し、偏析部にマルテンサイト組織が生成してレールの靭性が低下するため、Mo量を0.01〜1.00%に限定した。
【0025】
Vは、熱間圧延時の冷却過程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化で強度を高め、さらに、高温度に加熱する熱処理が行われる際に、結晶粒の成長を抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、パーライト組織の強度や延性および靭性を向上させるのに有効な元素であるが、0.01%未満ではその効果が十分に期待できず、0.50%を超えて添加してもそれ以上の効果が期待できないことから、V量を0.01〜0.50%に限定した。
【0026】
Nbは、Vと同様にNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化で強度を高め、さらに、高温度に加熱する熱処理が行われる際に、結晶粒の成長を抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、そのオーステナイト粒成長抑制効果はVよりも高温度域(1200℃近傍)まで作用し、パーライト組織の延性と靭性を改善する。その効果は、0.002%未満では期待できず、また0.050%を超える過剰な添加を行ってもそれ以上の効果が期待できない。従って、Nb量を0.002〜0.050%に限定した。
【0027】
削除
【0028】
削除
【0029】
削除
【0030】
削除
【0031】
削除
【0032】
Mgは、OまたはSやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0300%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成してレールの延性や靭性を劣化させるため、Mg量を0.0005〜0.0300%に限定した。
【0033】
削除
【0034】
上記のような成分組成で構成されるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。
次に、この熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるいは熱処理する目的で高温に再加熱されたレール頭部に熱処理を施すことにより、レール頭部に硬さの高いパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。
【0035】
(2) パーライト組織の望ましい硬さおよびその範囲
パーライト組織の硬さをHv320以上に限定した理由について説明する。
本発明の成分系では、硬さがHv320未満になるとレールの摩耗が進行し、内部疲労損傷が発生し、重荷重鉄道で要求されている耐摩耗性や耐内部疲労損傷性を確保することが困難となり、レールの使用寿命が著しく低下するため、パーライト組織の硬さをHv320以上に限定した。
【0036】
次に、硬さHv320以上のパーライト組織の呈する望ましい範囲を、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として深さ30mmの範囲に限定した理由について説明する。
30mm未満では、レール頭部に必要とされている耐摩耗性および耐内部疲労損傷性を確保することが困難となり、摩耗の進行や内部疲労損傷の発生により十分な寿命改善効果が得られないためである。
【0037】
ここで、図2に本発明の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたレールの頭部断面表面位置での呼称および耐摩耗性が必要とされる領域を示す。
レール頭部において1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。
硬さHv320以上のパーライト組織は少なくとも図中の斜線部分に配置されていれば、レール頭部に必要とされている耐摩耗性および耐内部疲労損傷性を確保することができ、レール使用寿命の向上が可能となる。
【0038】
(3) 熱処理製造条件
請求項6において、レール製造時の加熱、冷却条件を上記のように限定した理由について詳細に説明する。
まず、レール頭部を冷却する前の温度条件であるが、所定の組織および硬度を得るためには、少なくともレール頭部を十分にオーステナイト化させる必要がある。その温度は、圧延直後のレール頭部においてはAr1 点以上の温度域であり、また再加熱されたレール頭部ではAc1 点+30℃以上の温度が必要である。 なお、温度の上限は特に規定しないが、あまり高温度にすると液相が現れ、オーステナイト相が不安定になるため、温度は実質1350℃が上限となる。
【0039】
ここで、上記の「レール頭部」とは、図2に示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)を含む図中の斜線部分である。以下に説明する冷却速度および温度は、前記の図2示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面から深さが2〜5mmの範囲で測定すれば、レール頭部の少なくとも深さ30mmの範囲を代表させることができ、少なくとも図2に示す斜線部分の組織と硬さを制御することができる。
また、本明細書中で説明しているレール頭表部とは、図2に示す主に耐摩耗性の必要なレール頭頂部1および頭部コーナー部2の該頭部表面から10〜15mmの領域を指すものであり、レール頭部内部とは、主に耐内部疲労損傷性が必要な上記範囲よりさらに深い頭部表面から15〜30mmまでの領域を示すものである。
【0040】
次に、レール頭部をオーステナイト域温度から700〜500℃までの間を1〜30℃/sec の冷却速度で加速冷却する方法において、加速冷却停止温度を上記の様に限定した理由について説明する。
700℃を超える温度で加速冷却を停止すると、加速冷却直後にパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成し、レール頭部の硬さがHv320未満となり、耐摩耗性が確保できないことや、加速冷却後にレール頭表部や頭部内部に初析セメンタイト組織が生成しやすく、レールの靭性や耐内部疲労損傷性を低下させるため、700℃以下に限定した。また500℃未満まで加速冷却を行うと、加速冷却後にレール内部からの十分な復熱が期待できず、レール頭部内部の偏析部等に加え、レールの靭性に有害なマルテンサイト組織が生成するため、500℃以上に限定した。
【0041】
また、レール頭部の加速冷却速度が1℃/sec 未満になると、加速冷却途中の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成し、レール頭部の硬さがHv320未満となり、レール頭部の耐摩耗性の確保が困難になることや、本成分系のようにSiやAlを十分に添加しても、比較的冷却速度の遅いレール頭部内部において、レールの内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイト組織が生成するため、1℃/sec以上に限定した。
また、加速冷却速度が30℃/secを超えると、加速冷却中にパーライト変態が終了せずに、レール頭表部にベイナイトやマルテサイト等の異常組織が生成し、レール頭部の耐摩耗性、靭性を低下させるため、加速冷却速度を1〜30℃/secの範囲に限定した。強度の高いパーライト組織をレール頭表部から内部まで安定的に生成させるには、加速冷却速度は2〜20℃/sec の範囲が最も望ましい。
【0042】
なお、本加速冷却速度範囲は、冷却開始から終了までの平均的な冷却速度を限定するものであるが、加速冷却途中においてパーライト変態による発熱やレール内部からの自然復熱による一時的な温度上昇が発生することがある。しかし、加速冷却開始から終了までの平均的な冷却速度が上記範囲内であれば、本パーライト系レールの特性に大きな影響を及ぼさないため、本レールの加速冷却条件としては、冷却途中の一時的な温度上昇に伴う冷却速度の低下も含んでいる。
【0043】
また、1〜30℃/sec の冷却速度を得る方法としては、空気や空気を主としミスト等を加えた冷却媒体およびこれらの組合わせにより、所定冷却速度を得ることが可能である。従って、Hv320以上のパーライト組織を呈した耐摩耗性に優れたレールを製造するには、レール頭部において、硬さの低いパーライト組織の生成を防止し、耐摩耗性、靭性、耐内部疲労損傷性に有害なベイナイト組織、マルテンサイト組織、初析セメンタイト組織が生成しないように、空気や空気を主としミスト等を加えた冷媒を用いて、オーステナイト域温度から1〜30℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼レール頭表部の温度が700〜500℃に達した時点で加速冷却を停止することにより、レール頭表部から内部まで高硬度のパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。
【0044】
なお、加速冷却後の冷却は強制的な冷却は行わず、パーライト変態を完遂するまで放冷、すなわち自然冷却することが望ましい。なお、生産性向上等のためレールを強制的に冷却する際には、マルテンサイト組織などのレールの靭性を低下させる組織の生成を防止するため、パーライト変態が完遂してから冷却を行うことが望ましい。なお本発明の成分系において、レール頭部全体のパーライト変態がほぼ完了する温度は、レール頭表面の温度が350℃未満に冷却された状態である。
【0045】
また、レールの金属組織としてはパーライト組織であることが望ましいが、成分系、熱処理条件および素材の偏析状態によっては、パーライト組織中に微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織が生成することがある。しかし、パーライト組織中にこれらの組織が微量に生成しても、レールの耐摩耗性、延性、靭性、耐内部疲労損傷性および強度に大きな影響を及ぼさないため、本発明パーライト系レールの組織としては、若干の初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織の混在も含んでいる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
表1及び表2(表1の続き)に、本発明レール鋼の化学成分、頭部加速冷却条件、レール頭部幅中心部硬さ、および頭部ミクロ組織を示す。また表1及び表2(表1の続き)には、図3に示す強制冷却条件下における西原式摩耗試験での70万回繰返し後の摩耗量、図4に示す転動疲労試験結果も併記した。
また表3(表2)及び表4(表2の続き)に、比較レール鋼の化学成分、頭部加速冷却条件、レール頭部幅中心部硬さおよび頭部ミクロ組織を示す。また表2には、図3に示す強制冷却条件下における西原式摩耗試験での70万回繰り返し後の摩耗量、図4に示す転動疲労試験結果も併記した。
【0047】
図5は、表1及び表2(表1の続き)に示す本発明レール鋼と、表3(表2)及び表4(表2の続き)に示す比較レール鋼(共析炭素含有鋼)の、摩耗試験結果を硬さと摩耗量の関係で比較したものである。
図3において、3はレール試験片、4は相手材、5は冷却用ノズルである。また図4において、6はレール移動用スライダーであり、この上にレール7が設置される。10はモーター9で回転する車輪8の左右の動きおよび荷重を制御する荷重負荷装置である。試験は左右に移動するレール7上を車輪8が転動する。
【0048】
なお、レールの構成は以下のとおりである。
・本発明レール鋼(11本) 符号A1,B1,D1,F1,G1,N1,O1,P
1,S1,U1,V1
上記成分範囲で、鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ30mmの範囲が、硬さHv320以上のパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レール。
・比較レール鋼(14本) 符号A2〜N2
符号A2〜C2:共析炭素含有鋼による比較レール鋼(3本)。
符号D2,E2:CおよびMnの添加量が上記請求範囲外の過共析炭素含有鋼による比較レール鋼(2本)。
符号F2〜J2:Si,Alの添加量が上記請求範囲外の過共析炭素含有鋼による比較レール鋼(5本)。
符号K2〜N2:化学成分が上記請求範囲内で、熱処理製造条件が上記請求範囲外の過共析炭素含有鋼による比較レール鋼(4本)。
【0049】
摩耗試験条件は次のとおりとした。
試験機 :西原式摩耗試験機(図3参照)
試験片形状 :円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図6参照)
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :20%
相手材 :パーライト鋼(Hv380)
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min )
繰返し回数 :70万回
【0050】
転動疲労試験の条件は次のとおりとした。
試験機:転動疲労試験機(図4参照)
試験片形状
レール:136ポンドレール×2m
車輪 :AARタイプ(直径920mm)
荷重条件(重荷重鉄道再現)
ラジアル荷重:147000N(15トン)
スラスト荷重:9800N(1トン)
潤滑条件
ドライ+油(間欠給油)
【0051】
図5に示すように、本発明レール鋼は比較レール鋼と比べて炭素量を高めることにより、同一硬さにおいて摩耗量が少なく、耐摩耗性が大きく向上した。
また、表1,表2(表1の続き)の本発明レール鋼に示すように、CやMnの添加量を適切な範囲に納めることにより、表3(表2),表4(表2の続き)の比較レール鋼で確認されたような、レール頭表面に生成し易い耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織や、レール頭部内部に生成し易い内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイト組織が生成することなく、高い硬度のパーライト組織が得られた。
【0052】
さらに、表1,表2(表1の続き)の本発明レール鋼に示すように、SiやAlの添加量を適切な範囲に納めることにより、表3(表2),表4(表2の続き)の比較レール鋼で確認されたような、レール頭部内部に生成し易い内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイト組織や粗大な介在物が生成することなく、耐内部疲労損傷性を向上させることができた。
これに加えて、適切な熱処理冷却条件を選択することにより、表3(表2),表4(表2の続き)の比較レール鋼で確認されたような、耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織やベイナイト組織、内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイト組織が生成することなく、高い硬度のパーライト組織をレール頭部内部まで安定的に生成させ、耐摩耗性と耐内部疲労損傷性を向上させることができた。
【0053】
【表1】
Figure 0004598265
【0054】
【表2】
Figure 0004598265
【0055】
【表3】
Figure 0004598265
【0056】
【表4】
Figure 0004598265
【0057】
【発明の効果】
上記ように本発明によれば、重荷重鉄道に好適な耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたレールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Si添加量とパーライト変態領域の関係を示した図。
【図2】 レール頭部断面表面位置の呼称、および硬さHv320以上のパーライト組織の必要範囲を示した図。
【図3】 西原式摩耗試験機の概略図。
【図4】 転動疲労試験機の概要図。
【図5】 本発明レール鋼と比較レール鋼の摩耗試験結果を硬さと摩耗量の関係で比較した図。
【図6】 西原式摩耗試験機における試験片採取位置を示した図。
【符号の説明】
1:頭頂部
2:頭部コーナー部
3:レール試験片
4:相手材
5:冷却用ノズル
6:レール移動用スライダー
7:レール
8:車輪
9:モーター
10:荷重負荷装置

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.85超〜1.40%、
    Mn:0.10〜2.00%
    Si:1.00超〜3.00%、
    Al:0.07超〜3.00%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするパーライト系レール。
  2. 質量%でさらに、
    Cr:0.05〜3.00%、
    Mo:0.01〜1.00%
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載のパーライト系レール。
  3. 質量%でさらに、
    V :0.01〜0.50%、
    Nb:0.002〜0.050%
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のパーライト系レール。
  4. 質量%でさらに、
    Mg:0.0005〜0.0300%
    を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のパーライト系レール。
  5. 前記鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ30mmの範囲が、硬さHv320以上のパーライト組織であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のパーライト系レール。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の成分を含有する鋼片をレール形状に熱間圧延した後、熱間圧延ままのAr1 点以上の温度の鋼レール頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱された鋼レール頭部を、オーステナイト域温度から1〜30℃/sec の冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度が700〜500℃に達した時点で加速冷却を停止し、その後、放冷することを特徴とするパーライト系レールの製造法。
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