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JP4558122B2 - 抗菌防カビ剤及び抗菌防カビ組成物 - Google Patents

抗菌防カビ剤及び抗菌防カビ組成物 Download PDF

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JP4558122B2
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    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N59/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing elements or inorganic compounds
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抗菌防カビ剤及び防菌防カビ組成物、特に無機系の抗菌防カビ剤の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、人間の衣食住に関わる極めて広範囲の分野において多様な抗菌防カビ剤が使用されており、これらは有機系と無機系に大別される。
有機系の抗菌防カビ剤としては、パラベン、トリクロサン、第4級アンモニウム塩、塩酸クロルヘキシジン、チアベンダゾール、カルベンダジン、キャプタン、フルオロフォルペット、クロロタロニル等がある。
【0003】
また、無機系の抗菌防カビ剤としては銀、銅、亜鉛を中心とした抗菌性金属を置換または担持したケイ酸塩、リン酸塩、ゼオライト、合成鉱物等が主要なものであり、例えば銀、亜鉛置換ゼオライトや銀担持アパタイト、銀担持シリカゲルなどが実用化されている。
さらに最近では太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線のエネルギーを抗菌作用に応用した酸化チタン光触媒などがある。これらの抗菌・防カビ剤は建材、日用雑貨品、化粧料等に配合することにより各製品の菌による汚染、変質を防止することができるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に防腐剤として使用されるパラベンなどの有機系抗菌防カビ剤は、人体への安全性の面で問題を有し、安全性に関しては無機系抗菌防カビ剤に劣るものであった。また有機物であるため一般に熱による分解、pH変化による効果の低下等の経時安定性が低いことが指摘されている。そのため比較的高温を要する樹脂への練り混みなどの用途には制約が大きくなり、使用しづらいなどの問題もあった。
【0005】
一方、無機系抗菌防カビ剤は、人体に対しても比較的安全であり、熱や薬品による影響は受けにくいものではあったが、有機系抗菌防カビ剤と比較するとカビに対する抗菌効果が低いものであった。さらに無機系抗菌防カビ剤の原料として多用されている銀は変色しやすいため製品の外観色を変化させてしまうなどの問題を有すると共に、高価であるという欠点を有している。
また、酸化チタン光触媒は光が当たらない暗所では抗菌防カビ効果が期待できず、また光が照射されても抗菌防カビ効果が緩慢であるという欠点があった。
【0006】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は抗菌防カビ性、安全性、安定性、経済性の多面的要素に渡って総合的に優れた無機系の抗菌防カビ剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者らは鋭意研究を重ね、酸化亜鉛を主成分とし、これに混合物としてリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属を含有させることにより、それぞれの原料が単独でもっている抗菌防カビ効果が相乗的に作用し、飛躍的に高い効果が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明における抗菌防カビ剤は、酸化亜鉛を主成分として、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属塩を含有することを特徴とする。
また本発明の抗菌防カビ剤において、アルカリ金属塩の含有量が抗菌剤全体の0.5%〜75%であることが好適である。
【0008】
また本発明の抗菌防カビ剤において、酸化亜鉛成分の合成原料として酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛を用いることが好適である。
また本発明の抗菌防カビ剤において、亜鉛イオンを含む水溶液とアルカリ水溶液を、常温常圧下において反応液のpHを7〜9に保つように前記2つの水溶液の滴下量を調整しながら連続的に反応槽に供給して反応させて合成し、生成物をろ別、水洗、乾燥、焼成することにより得られたことが好適である。
また本発明の抗菌防カビ剤において、10wt%水分散体のpHが9〜14となることが好適である。
また本発明の抗菌防カビ組成物は、前記抗菌防カビ剤を含有することにより抗菌防カビ効果を有することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の目的は抗菌防カビ性、安全性、安定性、経済性の多面的要素に渡って総合的に優れた抗菌防カビ剤を提供することである。
そして本発明にかかる抗菌防カビ剤は銀亜鉛置換ゼオライトのように高価な原材料を使用していないので、従来の無機系抗菌剤と比較して安価である。また、光触媒と異なり暗所でも抗菌防カビ効果が期待でき、さらに従来の抗菌剤でしばしば問題となっていた抗菌剤単体や抗菌剤を含有する組成物の経時的変化が少ないという長所を有している。さらに特筆すべきはこれまでの無機系抗菌防カビ剤では効果の低かったカビ、酵母といった真菌類にも高い効果を示すことである。
【0010】
まず、本発明の抗菌抗カビ剤の製造方法を説明する。
抗菌抗カビ剤の製造方法
本発明における抗菌抗カビ剤の一般的な製造方法について説明する。
本発明の抗菌防カビ剤の主成分である酸化亜鉛の合成に用いられる亜鉛の塩としては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛等の無機塩類、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、乳酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛などの有機酸塩を用いることができるが水に溶解することが必要である。この中で合成原料として酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛を用いることが好適であり、より好ましくは酢酸亜鉛を用いることが好適である。
【0011】
また、アルカリ水溶液の原料としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを用いることができる。この中で特に炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを用いることが好適である。
【0012】
図1は、本発明における抗菌防カビ剤の合成方法の一例を記したフローチャートである。
同図においては酸化亜鉛の合成原料として酢酸亜鉛を用いている。
本発明の抗菌防カビ剤の合成は、まず亜鉛イオンを含む水溶液とリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩を溶解したアルカリ水溶液を作成しておく。
同図において亜鉛イオンを含む水溶液を作成するために酢酸亜鉛を、アルカリ水溶液を作成するために炭酸ナトリウムをイオン交換水に溶解させて用いている。
これらの水溶液を、常温常圧下において、イオン交換水の入った反応槽に反応液のpHが7〜9にとなるように量を調整しながら供給し、混合拡散させる。
【0013】
このようにして得られた生成物は、遠心分離器にかけてろ別して、水洗し、乾燥させ、さらに焼成を行って得ることが可能である。この図1に示した製造例では乾燥工程において80℃で15時間乾燥させ、焼成工程において300℃で焼成を行った。また図1に示すように粉体の粒径を調整するために、乾燥させた後に粉砕処理などを行っても良い。
【0014】
なお本発明における抗菌防カビ剤の製造方法は上記方法のみに限られるものではなく、このほかにも酸化亜鉛とリチウム、ナトリウム、カリウムから選択される1種あるいは2種以上のアルカリ金属塩含有させる方法であれば、適用することが可能である。
【0015】
例えば、本発明の抗菌抗カビ剤の主成分である酸化亜鉛の合成法は大きく分けて水溶液中で合成する湿式法と溶液を直接介在しない乾式法がある。
湿式法は一般に亜鉛イオンを含む水溶液と炭酸イオンを含むアルカリ水溶液を混合することにより合成される塩基性炭酸亜鉛を水洗、濾過、乾燥、焼成し、酸化亜鉛を得る方法である。
また、前記湿式法においては、炭酸イオンを含むアルカリ水溶液の代わりに水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような強アルカリ水溶液を用いると塩基性炭酸亜鉛を経ないで直接酸化亜鉛が合成され、これを水洗、濾過、乾燥して酸化亜鉛を得ることもできる。
【0016】
一方、乾式法は金属亜鉛を空気中で加熱する方法(フランス法)や亜鉛鉱(Franklinite)を石炭、コークスなどの還元剤と共に加熱してる作る方法(アメリカ法)などがある。
【0017】
このような酸化亜鉛の合成過程において、本発明の抗菌防カビ剤を簡単かつ効率的に得る方法としては、湿式法における水洗工程で水洗回数を従来の方法より減少させることにより、反応溶液中に分散している酸化亜鉛または塩基性炭酸亜鉛の微粒子に吸着されているアルカリ金属塩を意図的の残存させることである。このような方法であっても、酸化亜鉛とアルカリ金属塩が均一に混合した抗菌剤を得ることができる。
【0018】
もちろん前述の方法と同様に、乾式法で酸化亜鉛粉末を合成または湿式法で水洗を十分に行い酸化亜鉛以外の不純物をほとんど含有しない粉末を合成した後、その粉末をアルカリ金属の塩を含む水溶液に浸析後乾燥させて酸化亜鉛粉末凝集体の中に均一にアルカリ金属塩を混合しても良い。
【0019】
このようにして合成された本発明の抗菌防カビ剤において、主成分である酸化亜鉛とアルカリ金属の塩の構成比はアルカリ金属の割合が0.5〜75重量%含有されていることが好適である。この割合が0.5%未満では所望の抗菌防カビ効果が得られず、また75%以上では初期の抗菌性能は良いものの、アルカリ金属塩の高い吸湿性や溶出性による組成物の性能劣化や抗菌剤自体の強アルカリ性による人体への影響が懸念されるからである。
【0020】
本発明における抗菌防カビ剤は、粉末をそのまま用いても良いが、適宜必要に応じて、他の成分とともに組み合わせた形態で抗菌防カビ剤を構成することも可能である。
【0021】
本発明の抗菌防カビ剤に配合され得る他の成分は本発明の本来の効果である抗菌防カビ効果を妨げない限り特に限定されず、たとえば、水、アルコール、シリコーンオイル等の液体成分、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂類、酸化チタン、シリカゲル、ゼオライト、アパタイト、リン酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、ガラス等の無機粉体等を必要に応じて配合できるがこれらの成分に限定されるものではない。
【0022】
本発明の用途は多様であり、従来より細菌やカビによる汚染が懸念されている合成樹脂組成物、ゴム、繊維、紙、塗料、木材等の工業原料や皮膚外用薬剤、化粧料、トイレタリー組成物等に一定量均一に分散させて用いることにより優れた抗菌防カビ性を付与することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
8種類のアルカリ金属塩(1.水酸化リチウムLiOH、2.水酸化ナトリウムNaOH、3.水酸化カリウムKOH、4.炭酸リチウムLiCO、5.炭酸ナトリウムNaCO、6.炭酸カリウムKCO、7.炭酸水素ナトリウムNaHCO、8.炭酸水素カリウムKHCO)をそれぞれ1.0gずつ20mlのイオン交換水に溶解させ、それぞれの水溶液に9.0gの市販酸化亜鉛粉末(正同化学社製)を加えた。ホモミキサーで十分撹拌混合し、オーブンを用いて110℃で14時間乾燥させて目的物を得た。
ここで得られた粉体は前記列記されている添加されたアルカリ金属塩名の頭に付いた番号によって、それぞれ実施例1−1〜実施例1−8と呼んで区別することとする。
【0025】
本発明における抗菌防カビ剤は、酸化亜鉛と、これに混合物としてリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属塩を含有することを特徴とする。そこで、酸化亜鉛に前記塩以外の塩を加えた場合や、酸化亜鉛を単独で使用した場合にどの程度の抗菌防カビ作用を示すのかを次に示す各比較例を製造して検討することとした。
【0026】
比較例1
実施例1でリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩の代わりに、1.0gの炭酸アンモニウム(NH)COを20mlのイオン交換水に溶解させた水溶液に9.0gの市販酸化亜鉛粉末(正同化学(株)社製)を加えた。これをホモミキサーで十分撹拌混合し、オーブンを用いて110℃で14時間乾燥させ目的物を得た。
【0027】
比較例2
実施例1で加えたリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩を加えない以外は、実施例1と同様の操作を行い目的物(酸化亜鉛のみ)を得た。
【0028】
比較実験1
実施例1−1〜8、比較例1および2で得られた粉末を製剤用打錠機で直径8mmの円盤状に打錠成型し、あらかじめ前培養していたアオカビ(Penicillium sp)、クロカビ(Aspergillus niger)、カンジダ菌(Candida albicans ATCC10231)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC15442)、大腸菌(Escherichia coli ATCC8739)、黄色ブドウ球菌(Stapyhlococcus aureus FDA209P)の各供試菌株を塗布した培地上に静置した。このようにして調製した培地を真菌であるアオカビ、クロカビ、カンジダ菌は25℃で72時間、細菌である緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌は30℃で48時間培養し、生成した生育阻止帯の大きさを測定して、抗菌防カビ性能の評価を行った。
【0029】
抗菌防カビ性能の評価は次のような基準で行った。
図2に抗菌防カビ性能の評価方法を説明するための説明図を記載する。同図に示すように、シャーレ2内には培地4が作られており、培地4上にはすでに前述した真菌や細菌の供試菌株が塗布されている。その培地4の中心に打錠成型したサンプル6を配置しておき、所定時間後に培地上でサンプルの周囲に形成された各菌の育成が阻止された生育阻止帯8の大きさによってその性能を評価することとする。サンプルから生育阻止円外周までの距離である生育阻止帯が大きいほど抗菌性能が優れていると判断できる。
そして、本比較実験においては、次の表1に示すような判定基準によって性能の評価を行った。
表1に評価基準を記す。
【0030】
【表1】
Figure 0004558122
【0031】
このような評価基準に基づいて行った前記比較試験1の結果を次の表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0004558122
【0033】
以上の結果から、実施例1−1〜8は比較例1、2より抗菌防カビ性能が高いことがわかった。このことにより、酸化亜鉛はもともと無機抗菌物質として知られていたが、酸化亜鉛だけでは十分な抗菌防カビ性が得られていないことから、酸化亜鉛にアルカリ金属の塩を混合することにより抗菌防カビ効果が向上することがわかった。
そして炭酸アンモニウム塩を加えた酸化亜鉛は十分な抗菌性を発揮していないことから、混合物としてリチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属塩を含有することで抗菌性が向上できることがわかった。
【0034】
続いて原料となる亜鉛化合物が異なると、抗菌性に違いが生じるかを検討することとした。
【0035】
実施例2
反応容器に200mlのイオン交換水を入れ、撹拌装置および2台のマイクロチューブポンプを接続したpHコントローラーおよび撹拌装置をセットした。2台のマイクロチューブポンプを300mlのイオン交換水に87.8gの酢酸亜鉛2水和物を溶解した溶液と220mlのイオン交換水に63.6gの無水炭酸ナトリウムを溶解した溶液にそれぞれ接続し、反応容器に滴下できるように固定した。
常圧常温で撹拌を行いながら、反応中はpH8で一定になるよう保ちながら2つの水溶液の滴下量を調節しながら反応させた。滴下時間は約20分であった。
得られた沈殿物は水洗・遠心分離を5回ずつ繰り返し、オーブンで80℃、15時間乾燥した後、パーソナルミルで粉砕し、300℃で1時間焼成した。この粉末を粉砕後100メッシュのふるいを通し目的物を得た。
【0036】
実施例3
実施例2で87.8gの酢酸亜鉛2水和物の代わりに、115.0gの硫酸亜鉛7水和物を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い目的物を得た。
【0037】
実施例4
実施例2で87.8gの酢酸亜鉛2水和物の代わりに、54.5gの塩化亜鉛を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い目的物を得た。
【0038】
比較実験2
実施例2〜4で得られた粉末を製剤用打錠機で直径8mmの円盤状に打錠成型し、比較実験1と同様の抗菌防カビ効果の性能評価を行った。
また比較例3として無機系抗菌剤では幅広い抗菌スペクトルを持つことが知られているZeomicTM((株)シナネンゼオミック社製)、比較例4として現在化粧料にもっとも一般的に使用されている亜鉛華(正同化学(株)社製)を直径8mmの円盤状に打錠成型し、上記と同様の条件で試験を行った。
判定の方法、判定の基準等はすべて比較実験1と同様である。
結果を次の表3に示す。
【0039】
【表3】
Figure 0004558122
【0040】
以上の結果から、実施例2〜4の粉末は各供試菌に対し抗菌防カビ性を有しており、特に実施例2の粉末の性能が優れていることがわかった。実施例2〜4で得られた粉末を蛍光X線、X線回折、赤外吸収分光法により分析した結果、酸化亜鉛を主成分としてその他に5〜10重量%の炭酸ナトリウムが存在することがわかった。このことから酸化亜鉛の合成原料として酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛を用いることが好適であり、中でも酢酸亜鉛を用いることが好適である。
また本発明の抗菌防カビ剤は、現在市販されている無機系抗菌剤と比較して、アオカビ、クロカビ、カンジダ菌といった真菌に対する効果が優れたものであることがわかった。
【0041】
実施例2〜4の比較で酸化亜鉛の合成材料として酢酸亜鉛を用いることが最も好適であることがわかったが、酢酸亜鉛は酸化亜鉛の工業材料としては比較的高価であるため、より安価な原料を用いて同等の性能を有する粉末を合成する検討を行った。
【0042】
実施例5
実施例2で「300mlのイオン交換水に87.8gの酢酸亜鉛2水和物を溶解した溶液」の代わりに、「300mlのイオン交換水に54.5gの塩化亜鉛と24.0gの酢酸を溶解した溶液」を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い目的物を得た。
【0043】
比較実験3
実施例5で得られた粉体と、実施例2で得られた粉体の抗菌防カビ性能を比較実験2と同様の実験方法で比較実験を行った。
判定の方法、判定の基準等はすべて比較実験1と同様である。
抗菌防カビ性能の評価結果を次の表4に示す。
【0044】
【表4】
Figure 0004558122
【0045】
このように酸化亜鉛の合成原料として、酢酸亜鉛とは異なる材料を用いたとしても、材料に含まれる亜鉛が酢酸亜鉛を合成した際に含まれる酢酸に相当する酢酸とほぼ同量の酢酸を添加することによって、酢酸亜鉛を合成材料として合成した粉末と同様の抗菌防カビ性能を有する粉体を合成できることがわかった。
【0046】
続いて酸化亜鉛と混合されるアルカリ金属の量によって抗菌防カビ性能にどのような違いが出てくるのかを検討することとした。
【0047】
実施例6
0.025gの炭酸ナトリウムを20mlのイオン交換水に溶解させた水溶液に9.975gの市販酸化亜鉛粉末(正同化学(株)社製)を加えた。これをホモミキサーで十分撹拌混合し、オーブンを用いて110℃で14時間乾燥させ目的物を得た。
【0048】
また、炭酸ナトリウムと市販酸化亜鉛粉末(正同化学(株)社製)の混合量を表5のように変化させた以外は上記と同様の方法で操作を行い、混合されたアルカリ金属の量の異なる目的物を得た。これらは表5に記載されているように、それそれの混合量によって実施例6−1〜6−14と呼ぶこととする。
【0049】
【表5】
Figure 0004558122
【0050】
比較実験4
実施例6−1〜14、及び比較実験1で用いた比較例2(酸化亜鉛のみ)で得られた粉末を製剤用打錠機で直径8mmの円盤状に打錠成型し、比較実験1と同様の抗菌防カビ効果の性能評価を行った。
判定の方法、判定の基準等はすべて比較実験1と同様である。
結果を次の表6に示す。
【0051】
【表6】
Figure 0004558122
【0052】
得られた結果から、混合したアルカリ金属塩の添加量が0.5%以上で、抗菌防カビ性能の向上がみられ、アルカリ金属塩の混合量が増すほど抗菌防カビ効果も向上した。しかし、炭酸ナトリウム100%では真菌に対する効果が減少することがわかった。
この結果から比較例2及び実施例6−14のように酸化亜鉛及びアルカリ金属塩単独で得られる抗菌防カビ効果より両者を混合したものの方が格段に高い抗菌防カビ効果を有することがわかる。
【0053】
しかし、アルカリ金属塩の混合量が75%を越えたものでは初期の抗菌性能は良いものの、アルカリ金属塩の高い吸湿性や溶出性による組成物の性能劣化や抗菌剤自体の強アルカリ性による人体への影響が懸念されるものであった。
【0054】
この結果をふまえた上で酸化亜鉛とアルカリ金属塩を単純に粉末として混合してみたところ、抗菌防カビ効果は向上することがわかった。しかし、初期の段階では良好な抗菌性を示しているものの、アルカリ金属塩は容易に溶出してしまい効果が持続しないことが確かめられた。このため抗菌防カビ効果を長期に渡って持続させるには酸化亜鉛とアルカリ金属塩が十分に混合され、酸化亜鉛の微細な凝集体の内部にアルカリ金属塩が含有されていることが好適である。
【0055】
また本発明者らは、酸化亜鉛に様々な金属塩を含有させ、その物性と抗菌防カビ効果の間に何らかの関係が見られないかを研究したところ、高い抗菌効果を有する粉体は水に分散させてスラリーとしたときに、そのスラリーのpHが9〜14と高いアルカリ性を示すことがわかった。
【0056】
図3に青カビへの防カビ性能と粉体を水に分散させて10wt%のスラリーとしたときのpHの関係を示す。
同図に示すように高い防カビ性を有する粉体は、スラリーとしたときに高いアルカリ性を示していることがわかる。
【0057】
このように10wt%のスラリーのpHが高いほど、カビ、酵母等に対して抗菌性能が高いことが確かめられた。このような粉末スラリーのpHを高める合成要因は原料である酸化亜鉛とアルカリ金属塩とを合成する際のpHが深く関与していることが判明した。つまり、抗菌防カビ剤を合成する際のpHを7〜9に制御すると、合成された粉体をスラリーとしたときに高いアルカリ性を示す傾向にあったのである。
【0058】
そして、本発明の前記比較実験1〜4において、良好な抗菌防カビ性能を示した粉体は、どれも10wt%のスラリーとしたときにpHが9〜14を示すことがわかった。よって本発明の抗菌防カビ剤において、10wt%水分散体のpHが9〜14となることが好適である。このような粉体とすることで良好な抗菌防カビ性を示すようになるためである。
【0059】
続いて、本発明の抗菌防カビ剤を含有させて、得られる抗菌防カビ組成物の抗菌防カビ性能について検討することとした。
本発明における抗菌防カビ組成物は、前記説明したような本発明の抗菌防カビ剤を含有することにより抗菌防カビ効果を有することを特徴とする。
以下、本発明の抗菌防カビ組成物の実施例をあげて、本発明をさらに詳しく説明する。なお本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。
【0060】
実施例7
実施例2で得られた粉末を用いて、表7に示される配合表に基づいて抗菌性塗料を作製した。また、比較例5として実施例2の抗菌防カビ剤をZeomicTM((株)シナネンゼオミック社製)に置き換えた塗料を、また比較例6として抗菌性粉末を入れていない塗料を作製した。
【0061】
【表7】
Figure 0004558122
【0062】
比較実験5
実施例7、比較例5、6で得た塗料を用いて比較実験を行った。
この目的は、風呂場で使用する防カビ剤への応用を考え、タイル表面に抗菌剤を固定化した状態での性能を測定することである。
【0063】
図4に試料として用いた試験サンプルを示す。
同図に示すように(たて)10mm×(よこ)10mm×(厚さ)3mmの市販白色タイル12枚を、抗菌剤等を含まない市販のタイル用セメント目地材を用いて2.5mmの間隔をおいて固定し固化させ試験サンプルとした。この試験サンプルは水に1週間程度浸析してアルカリ分を除去した。乾燥後このサンプルの表面に実施例7、比較例5、6で得た塗料を塗料用刷毛で塗布し80℃で15時間乾燥した。これら3枚と、表面に何も塗布していないタイル目地サンプルの計4枚の防カビ試験を行った。
【0064】
試験に用いたカビはクラドスポリウム(Cladosporium)属の野生株を風呂場より採取後培養し、このカビの胞子を含んだ培養水をサンプル表面に噴霧した。タイル目地サンプルを角シャーレに入れその後25℃に保持し、およそ1週間ごとに表面カビの生育状態を肉眼で観察し、カビの生育状況を観察した。そして、カビの生育が観察されないを○、カビの生育がわずかに観察されるを△、カビの生育が少し観察されるを×、カビの生育が激しいを××で評価した。
サンプル表面の観察結果を表8に示す。
【0065】
【表8】
Figure 0004558122
【0066】
何も塗布を行っていない試料と、塗料のみを塗布した比較例6がカビの生育状況が同じことから、塗料自体にカビの生育を抑える何らかの成分が含まれていないことがわかる。それにも関わらず、本発明の抗菌防カビ剤を含有する抗菌防カビ組成物である実施例7を塗布した試料サンプルには、4ヶ月経過後もカビの育成が観察されなかった。これに対して比較例5は2ヶ月目まではカビの生育を抑えられていたものの、それ以後、わずかにカビの育成が認められるようになった。これによって本発明の抗菌防カビ剤を含有した抗菌防カビ組成物が優れた抗菌防カビ性を示すことがわかる。
【0067】
このように、実施例7は他のサンプルと比較して有為な抗カビ性を有することがわかった。また、抗菌防カビ性粉末としてZeomicTM((株)シナネンゼオミック社製)を用いた比較例5は塗料が茶色に変色してしまったのでタイルの意匠性が著しく損なわれてしまった。
以上のことにより、本発明の抗菌防カビ剤は耐変色性においても優れていることがわかる。
【0068】
比較試験6
続いて、実際の使用状態に近い条件におけるカビに対する効果を測定することとした。
シリコーン製目地剤(セメダイン(株)社製シリコーンシーラントセメダイン8060ホワイトTM)99.0gに実施例2の抗菌防カビ剤を1.0g添加しよく練り込んだもの(実施例8)、同様の目地剤99.0gに比較例2の粉末(ZeomicTM(株)シナネンゼオミック社製)1.0gを添加しよく練り込んだもの(比較例7)および同様の目地剤99.5gに有機系の防カビ剤であるTBZ(ThiabendazoleTM 和光純薬工業(株)社製)0.5gを添加しよく練り込んだもの(比較例8)を用いて試験を行った。
【0069】
そして、各目地剤をPETフィルムに厚さ1.5mmの平板状に塗布して、乾燥固定させたサンプルを調製した。また、ブランクとして抗菌剤をなにも添加しないサンプル(比較例9)を調製した。それぞれのサンプルは(たて)30mm×(よこ)30mmの正方形に切断し防カビ試験に用いた。防カビ試験はJISZ 2911−1992かび抵抗性試験法、一般工業製品の方法に準じておこない、前培養した5種類のカビ胞子を混合してサンプルに吹き付け菌糸の成長を肉眼、顕微鏡で観察した。
【0070】
ただし、成長を促進させるため胞子懸濁液に栄養源としてぶどう糖を3%添加した。その後1週間ごとに表面カビの生育状態を観察し、カビの生育が観察されないを○、カビの生育がわずかに観察されるを△、カビの生育が少し観察されるを×、カビの生育が激しいを××で評価した。
サンプル表面の観察結果を表9に示す。
【0071】
【表9】
Figure 0004558122
【0072】
実験の結果、抗菌剤を練り込んでいない比較例9はわずか3週間後にカビが認められたが、抗菌剤を練り込んだ実施例8、及び比較例7、8は1ヶ月間に渡って全くカビが見られなかった。以上の結果より、本発明抗菌防カビ剤は樹脂組成物に練り込んだ状態で、少なくとも既存のものと同等の性能を有していることがわかる。
【0073】
つぎに、粉末単体および製品系で光安定性を確認することとした。
まず粉体単体での光安定性を試験する。
【0074】
比較試験7(粉末単体での光安定性試験)
ホウケイ酸ガラス製サンプルビンに20mlの各分散液(4種類)に0.5gの粉末サンプル(実施例2で製造した粉末、比較例3:ZeomicTM((株)シナネンゼオミック社製の粉末)を入れた。この状態ではどのサンプルも粉末は白色であった。
分散液は、イオン交換水、1%酢酸水溶液、1%塩化ナトリウム水溶液、そして、抗菌防カビ剤が使用されるような使用環境において、使用される可能性のある薬剤として市販の塩素系カビとり剤(カビキラーTM(ジョンソン社製))の1/10希釈溶液を用いた。
【0075】
この状態でキセノンランプ(照度約285W/m2)を30時間照射(積算照射量:約30MJ/m2)後、粉末の変色を目視で観察し粉末単体での光安定性を評価した。
結果を次の表10に示す。なお評価方法は変色のなかったものを○、変色したものを×として記載している。
【0076】
【表10】
Figure 0004558122
【0077】
表10の結果に示すように本発明の抗菌防カビ剤はどのような環境下にあっても非常に安定性がよく、変色を起こさないことがわかる。これに対して比較例3の粉体は塩化ナトリウム水溶液で変色を起こしてしまった。またカビとり剤に対して変色してしまっているため、使用できる薬剤が制限されてしまうことがわかる。
【0078】
続いて、抗菌防カビ製品に含有させた際に、十分な光安定性を有しているかを試験した。
【0079】
比較試験8
比較試験6と同様に、シリコーン製目地剤(セメダイン(株)社製シリコーンシーラントセメダイン8060ホワイトTM)99.0gに実施例2の抗菌防カビ剤を1.0g添加しよく練り込んだもの(実施例8)、同様の目地剤99.0gに比較例2の粉末(ZeomicTM(株)シナネンゼオミック社製)1.0gを添加しよく練り込んだもの(比較例7)および同様の目地剤99.5gに有機系の防カビ剤であるTBZ(ThiabendazoleTM 和光純薬工業(株)社製)0.5gを添加しよく練り込んだもの(比較例8)を用いて試験を行った。
そして、各目地剤をPETフィルムに厚さ1.5mmの平板状に塗布して、乾燥固定させたサンプルを調製した。また、ブランクとして抗菌剤をなにも添加しないサンプル(比較例9)を調製した。
【0080】
このサンプルにキセノンランプ(照度約285W/m2)を30時間照射し(積算照射量:約30MJ/m2)、サンプル表面の色変化を目視で観察した。また、あわせてミノルタカメラ(株)社製分光測色計CM-1000を用いて測定前後のサンプル表面の色差を測定し安定性を判断した。一般的に色差が3以上であれば目視で色調の違いがわかるとされている。
【0081】
結果を次の表11に示す。なお目視観察での評価方法はほとんど黄変が観察されないを○、黄変が少し観察されるものを△、は黄変がはっきりと観察されるを×として記載している。
【0082】
【表11】
Figure 0004558122
【0083】
表11に示すように比較例7、8は目視観察してもはっきりと判別できるほどの変色を起こしてしまっている。抗菌防カビ剤を入れていない比較例9が変色を起こしていないことから、この変色は混合された抗菌防カビ剤によって引き起こされたものであることがわかる。
【0084】
これに対して本発明の抗菌防カビ剤を混合させた実施例8は何も混合していない比較例9とほとんど同じだけの変色しか起こしておらず、本発明の抗菌防カビ剤によって変色が起きていないことがわかる。
この結果、本発明抗菌防カビ剤は、従来の抗菌防カビ剤比較試験6、7と比較して光安定性が優れていることがわかる。
【0085】
以上説明したように、本発明の抗菌防カビ剤は、現在市販されている無機系抗菌剤が比較的不得意であったアオカビ、クロカビ、カンジダ菌といった真菌に対する効果、安定性、および抗菌防カビ効果の持続性に優れ、経時的変色が少ない。
【0086】
また、本発明の抗菌防カビ剤を混合することによって、種々の合成樹脂組成物、ゴム、繊維、紙、塗料、木材等の工業原料や皮膚外用薬剤、化粧料、トイレタリー製品等の組成物に抗菌防カビ性能を付与することができるため、本発明の抗菌防カビ組成物も無機系抗菌剤が比較的不得意であったアオカビ、クロカビ、カンジダ菌といった真菌に対する効果、安定性、および抗菌防カビ効果の持続性に優れ、経時的変色が少ない。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の抗菌防カビ剤は比較的簡便な方法により効率的にかつ低コストで抗菌防カビ効果とその持続性が高い抗菌剤を提供することができる。
また、本発明の抗菌防カビ組成物は、本発明の抗菌防カビ組成物を混合させることにより、抗菌防カビの持続性に優れ経時的変色の少ない種々の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における抗菌防カビ剤の合成方法の一例を記したフローチャートである。
【図2】図2は抗菌防カビ性能の評価方法を説明するための説明図である。
【図3】図3は青カビへの防カビ性能と粉体を水に分散させて10wt%のスラリーとしたときのpHの関係図である。
【図4】図4は比較実験4の試料として用いた試験サンプルを示す説明図である。
【符号の説明】
2 シャーレ
4 培地
6 サンプル
8 生育阻止帯

Claims (4)

  1. リチウム、ナトリウム及びカリウムからなるアルカリ金属群より選択される金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩から選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属塩及び、酸化亜鉛からなり
    微細な酸化亜鉛の凝集体の内部にアルカリ金属塩が含有されていて、
    亜鉛イオンを含む水溶液とアルカリ水溶液を混合することにより合成される塩基性炭酸亜鉛を、水洗を5回以内行った後、乾燥、焼成する方法、もしくは、酸化亜鉛およびアルカリ金属塩を溶解させた水溶液を撹拌混合した後に乾燥する方法により得られ、
    アルカリ金属塩の含有量が抗菌剤全体の0.5%〜75%であることを特徴とする抗菌防カビ剤。
  2. 請求項1記載の抗菌防カビ剤において、酸化亜鉛成分の合成原料として酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛を用いることを特徴とする抗菌防カビ剤。
  3. 請求項1または2に記載の抗菌防カビ剤において、10wt%水分散体のpHが9〜14となることを特徴とする抗菌防カビ剤。
  4. 請求項1乃至に記載の抗菌防カビ剤を含有することにより抗菌防カビ効果を有することを特徴とする抗菌防カビ組成物。
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