JP4548902B2 - ラックアンドピニオン式舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はラックアンドピニオン式舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のラックアンドピニオン式舵取装置が特開平10−217984号公報に開示されている。このラックアンドピニオン式舵取装置では、図5〜7に示すように、ステアリングホイール90と結合されたステアリングシャフト91の先端にピニオン92が設けられており、このピニオン92はステアリングシャフト91とともに回転するようになっている。ピニオン92には長手方向に延在するラックバー93が噛合している。
【0003】
また、ピニオン92及びラックバー93はハウジング95に収容されており、このハウジング95は、図7に示すように、ラックバー93を挟んだピニオン92とは反対側にボス部95aを有している。ハウジング95のボス部95a内にはラックガイド96が軸方向に移動可能に設けられており、このラックガイド96は、付勢手段としてのコイルばね97の付勢力により、ラックバー93をピニオン92側に付勢している。
【0004】
また、ラックガイド96のラックバー93側の端面にはシート98が脱落不能に設けられている。すなわち、ラックガイド96は、図10にも示すように、ラックバー93側の端面の中央に内周面が円筒面96aで形成された凹部96bを有している。他方、シート98は、図11に示すように、鉄系金属からなるスチール部98aと、このスチール部98aの一面に一体に設けられた銅焼結部98bと、この銅焼結部98bの表面にコーティングされたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるコーティング部98cとで構成されている。このシート98は、スチール部98a、銅焼結部98b及びコーティング部98cからなる素材をプレス加工とともに絞り加工することにより得られ、図9(A)に示すように、プレス加工によって得られた基部98dから凸部98eを突出させている。この凸部98eは、図10に示すように、外周面がラックガイド96の凹部96bに係合する円筒面98fをもっている。また、図8に示すように、シート98のラックバー93との摺動面には、軸方向と長手方向とに直交する幅方向(図中上下方向)に延在し、凸部98eに対応する部位と交差し得る油溝98h、ここでは絞り加工時に凸部98e内に生じる絞り穴98gと交差し得る油溝98hを有している。
【0005】
かかるラックアンドピニオン式舵取装置では、ステアリングホイール90の回転がステアリングシャフト91、ピニオン92を介してラックバー93の直線運動に変換され、これによりタイヤ94の操舵角が変更される。この際、ラックガイド96は、コイルばね97の付勢力とともに、ピニオン92とラックバー93との噛合を確保しつつ、ラックバー93を長手方向に案内する。また、シート98は、ラックガイド96の凹部96bと凸部98eとが係合していることにより脱落が防止された状態の下、ラックバー93とラックガイド96との滑り摩擦力を低減させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のラックアンドピニオン式舵取装置では、シート98の凸部98eとラックガイド96の凹部96bとの係合によりシート98の脱落を防止している場合、そのシート98の耐久性が懸念されることが明らかとなった。
【0007】
すなわち、かかるラックアンドピニオン式舵取装置では、動力伝達性及び静粛性のため、図6に示すように、ピニオン92及びラックバー93としてヘリカルギヤを採用している。このため、ピニオン92の歯面とラックバー93の歯面との間には、図中、上下方向の力F1が作用してしまう。かかる方向は、図7に示すラックガイド96の移動方向である軸方向と、ラックバー93の長手方向とに直交する幅方向である。
【0008】
また、このラックアンドピニオン式舵取装置では、車両の走行時、タイヤ94に路面反力が作用することに起因し、図6に示すように、ラックバー93がやはり幅方向に繰り返し力F2を受ける。
【0009】
これらの力F1、F2はラックバー93がシート98の凸部98eを幅方向に曲げるように作用する。ここで、図9(B)に示すように、凸部98eが基部98dに対して曲率半径を有さずに突出しているのであれば(R=0(mm)のいわゆるピン角)、その曲げ応力はその境界に集中することとなる。このため、かかるシート98を採用している場合には、そのシート98の耐久性が危惧される。
【0010】
特に、図8に示すように、ラックバー93の摺動性を向上させるべく、シート98が油溝98hを有する場合、図9(B)に示すように、油溝98hが絞り穴98gと連通しているのであれば、凸部98eにおける基部98dとの境界の肉厚tは極めて薄くなってしまう。このため、この場合には、より強度が弱くなりやすく、そのシート98の耐久性が一層危惧される。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、シートの凸部とラックガイドの凹部との係合によりシートの脱落を防止している場合において、そのシートの耐久性を向上させたラックアンドピニオン式舵取装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のラックアンドピニオン式舵取装置は、ステアリングシャフトの先端に設けられ、該ステアリングシャフトとともに回転するピニオンと、該ピニオンと噛合し、該ステアリングシャフトの回転運動を長手方向の直線運動に変換して操舵角を変更させるラックバーと、該ピニオン及び該ラックバーを収容し、該ラックバーを挟んだ該ピニオンとは反対側にボス部を有するハウジングと、該ハウジングの該ボス部内で軸方向に移動可能に設けられ、付勢手段の付勢力により該ラックバーを該ピニオン側に付勢するとともに、該ラックバーを該長手方向に案内するラックガイドと、該ラックガイドの該ラックバー側の端面に脱落不能に設けられ、該ラックバーと該ラックガイドとの滑り摩擦力を低減させるシートとを備え、該ラックガイドは該ラックバー側の端面の中央に凹部を有し、該シートは基部から突出され、該凹部に係合する凸部を有するラックアンドピニオン式舵取装置において、
【0013】
前記シートの前記凸部と前記基部との境界は、前記軸方向と前記長手方向とに直交する幅方向に曲率半径を有するとともに、該長手方向にも曲率半径を有し、該幅方向の曲率半径は該長手方向の曲率半径より大きいことを特徴とする。
【0014】
本発明のラックアンドピニオン式舵取装置では、シートの凸部とラックガイドの凹部との係合によりシートの脱落を防止している。ここで、このシートは、凸部と基部との境界が少なくとも幅方向に曲率半径を有しているため、形状効果により、幅方向の曲げ応力がその境界に集中しない。このため、そのシートは高い耐久性を発揮する。
【0015】
凸部と基部との境界は長手方向にも曲率半径を有し、幅方向の曲率半径が長手方向の曲率半径より大きい。長手方向にはラックバーの案内によるせん断応力が作用し、このせん断応力は幅方向に作用する曲げ応力よりも小さい。このため、シートが長手方向の曲率半径によりせん断応力を分散させ、幅方向の曲率半径により曲げ応力を分散させれば、そのシートはより高い耐久性を発揮することができる。
【0016】
シートのラックバーとの摺動面に、幅方向に延在し、前記凸部に対応する部位と交差し得る油溝が形成されている場合、その油溝はその部位と離反していることが好ましい。こうであれば、凸部における基部との境界の肉厚が厚くなり、十分な強度を確保しやすい。このため、そのシートはさらに高い耐久性を発揮することができる。
【0017】
したがって、本発明のラックアンドピニオン式舵取装置では、シートが高い耐久性を発揮できるため、車両の安全性及び耐久性を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置では、図1〜3に示すシート1を採用している。シート1は、図2(A)及び図3(A)に示すように、素材をプレス加工して得た基部1aから凸部1bを突出させている。また、シート1は、図1及び図2(A)に示すように、軸方向と長手方向とに直交する幅方向(図中上下方向)に延在し、凸部1bに対応する部位、つまり絞り加工時に凸部1b内に生じる絞り穴1cと交差し得る油溝1dを有している。
【0020】
凸部1bと基部1aとの境界は、図2(B)に示すように、幅方向に曲率半径を有している(R1は例えば0.5(mm)以上)。また、凸部1bと基部1aとの境界は、図3(B)に示すように、長手方向にも曲率半径を有している(R2は例えば0.5(mm)以下)。幅方向の曲率半径R1は長手方向の曲率半径R2より大きい。また、図1及び図2(A)に示すように、油溝1dは絞り穴1cと離反している。
【0021】
ラックアンドピニオン式舵取装置の他の構成は、図5〜7、図10及び図11に示す従来のものと同一である。このため、同一の構成については同一符号を付して構成の詳細な説明を省略する。
【0022】
実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置では、シート1の凸部1bとラックガイド96の凹部96bとの係合によりシート1の脱落を防止している。ここで、このシート1は、凸部1bと基部1aとの境界が幅方向に曲率半径R1を有しているため、形状効果により、幅方向の曲げ応力を分散させてその境界に集中させない。また、このシート1では、凸部1bと基部1aとの境界が長手方向にも曲率半径R2を有しているため、形状効果により、長手方向のせん断応力を分散させてその境界に集中させない。このため、そのシート1は高い耐久性を発揮する。
【0023】
また、このラックアンドピニオン式舵取装置では、シート1の油溝1dが絞り穴1cと離反しているため、図2(B)に示すように、凸部1bにおける基部1aとの境界の肉厚Tが厚くなり、十分な強度を確保しやすい。このため、そのシート1はさらに高い耐久性を発揮することができる。
【0024】
したがって、このラックアンドピニオン式舵取装置では、シート1が高い耐久性を発揮できるため、車両の安全性及び耐久性を向上させることができる。
【0025】
なお、実施形態で特徴的なシート1は以下のシート用金型により製造したものである。このシート用金型は、図4に示すように、第1型2と、この第1型2に対して相対的に上下動可能な第2型3と、第2型3内を相対的に上下動可能なスライドピン4とからなる。
【0026】
第1型2の上面には、基部1aを湾曲して成形可能な第1主成形面2aが凹設され、第1主成形面2aの中央には凸部1bを基部1aに対して突出可能な第1副成形面2bが凹設されている。第1主成形面2aと第1副成形面2bとの境界は、幅方向に曲率半径を有している(R1は例えば0.5(mm)以上)。また、第1主成形面2aと第1副成形面2bとの境界は、長手方向にも曲率半径を有している(R2は例えば0.5(mm)以下、図3(A)及び(B)参照。)。
幅方向の曲率半径R1は長手方向の曲率半径R2より大きい。
【0027】
また、図4に示すように、第2型3の下面には、基部1aを湾曲して成形可能な第2主成形面3aが凸設されている。この第2型3内には上下に貫通するガイド穴3bが形成されており、ガイド穴3b内に円柱状のスライドピン4が上下動可能に設けられている。スライドピン4の下部が第1型2の第1副成形面2b内に突出するようになっている。第2型3の第2主成形面3aには、幅方向に延在し、スライドピン4を挟んで第1副成形面2bと交差し得る油溝用凸面3cが凸設されている。
【0028】
以上のように構成されたシート用金型によりシート1を製造する場合、まず、上記スチール部、銅焼結部及びコーティング部からなる板状の素材Wを第1型2上に載置する。そして、第2型3を第1型2に対して下降させ、プレス加工を行う。そして、第2型3が下降端位置にある際、スライドピン4を下降させ、絞り加工を行う。
【0029】
こうして、素材Wは、第1主成形面2aと第2主成形面3aとにより基部1aが形成される。この際、第2主成形面3aは油溝用凸面3cにより基部1aに油溝1dを凹設する。また、素材Wは、第1副成形面2bとスライドピン4の下部とにより凸部1bが形成される。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態には、特許請求の範囲に記載した技術的事項以外に次のような各種の技術的事項を有するものであることを付記しておく。
【0031】
(1)ステアリングシャフトの先端に設けられ、該ステアリングシャフトとともに回転するピニオンと、該ピニオンと噛合し、該ステアリングシャフトの回転運動を長手方向の直線運動に変換して操舵角を変更させるラックバーと、該ピニオン及び該ラックバーを収容し、該ラックバーを挟んだ該ピニオンとは反対側にボス部を有するハウジングと、該ハウジングの該ボス部内で軸方向に移動可能に設けられ、付勢手段の付勢力により該ラックバーを該ピニオン側に付勢するとともに、該ラックバーを該長手方向に案内するラックガイドと、該ラックガイドの該ラックバー側の端面に脱落不能に設けられ、該ラックバーと該ラックガイドとの滑り摩擦力を低減させるシートとを備え、該ラックガイドは該ラックバー側の端面の中央に凹部を有し、該シートは基部から突出され、該凹部に係合する凸部を有し、該凸部と該基部との境界は少なくとも該軸方向及び該長手方向と直交する幅方向に曲率半径を有しているラックアンドピニオン式舵取装置における該シート用金型であって、
【0032】
上記基部を湾曲して成形可能な第1主成形面が凹設され、該第1主成形面の中央には上記凸部を該基部に対して突出可能な第1副成形面が凹設され、該第1主成形面と該第1副成形面との境界が前記幅方向に曲率半径を有する第1型と、
【0033】
該第1型と相対的に近接可能であり、該基部を湾曲して成形可能な第2主成形面が凸設され、近接方向に貫通するガイド穴をもつ第2型と、
【0034】
該第2型の該ガイド穴内を摺動可能な円柱状のスライドピンとからなることを特徴とするシート用金型。
【0035】
(2)第1型は、第1主成形面と第1副成形面の境界が長手方向にも曲率半径を有し、幅方向の曲率半径は長手方向の曲率半径より大きいことを特徴とする技術的事項(1)記載のシート用金型。
【0036】
(3)第2型の第2主成形面には、幅方向に延在し、スライドピンを挟んで第1副成形面と交差し得る油溝用凸面が凸設されていることを特徴とする技術的事項(1)又は(2)記載のシート用金型。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートの平面図である。
【図2】(A)は実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートの幅方向の断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。
【図3】(A)は実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートの長手方向の一部断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。
【図4】実施形態のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシート用金型の断面図である。
【図5】ラックアンドピニオン式舵取装置の模式図である。
【図6】ピニオンとラックバーとの模式図である。
【図7】ラックアンドピニオン式舵取装置における幅方向の断面図である。
【図8】従来のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートの平面図である。
【図9】(A)は従来のラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートの幅方向の断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。
【図10】従来のラックアンドピニオン式舵取装置に係るラックガイド及びシートの幅方向の断面図である。
【図11】ラックアンドピニオン式舵取装置に係るシートを構成する素材の断面図である。
【符号の説明】
91…ステアリングシャフト
92…ピニオン
93…ラックバー
95…ハウジング
95a…ボス部
96…ラックガイド
1…シート
96b…凹部
1b…凸部
1a…基部
1d…油溝
Claims (2)
- ステアリングシャフトの先端に設けられ、該ステアリングシャフトとともに回転するピニオンと、該ピニオンと噛合し、該ステアリングシャフトの回転運動を長手方向の直線運動に変換して操舵角を変更させるラックバーと、該ピニオン及び該ラックバーを収容し、該ラックバーを挟んだ該ピニオンとは反対側にボス部を有するハウジングと、該ハウジングの該ボス部内で軸方向に移動可能に設けられ、付勢手段の付勢力により該ラックバーを該ピニオン側に付勢するとともに、該ラックバーを該長手方向に案内するラックガイドと、該ラックガイドの該ラックバー側の端面に脱落不能に設けられ、該ラックバーと該ラックガイドとの滑り摩擦力を低減させるシートとを備え、該ラックガイドは該ラックバー側の端面の中央に凹部を有し、該シートは基部から突出され、該凹部に係合する凸部を有するラックアンドピニオン式舵取装置において、
前記シートの前記凸部と前記基部との境界は、前記軸方向と前記長手方向とに直交する幅方向に曲率半径を有するとともに、該長手方向にも曲率半径を有し、該幅方向の曲率半径は該長手方向の曲率半径より大きいことを特徴とするラックアンドピニオン式舵取装置。 - シートのラックバーとの摺動面には、幅方向に延在し、前記凸部に対応する部位と交差し得る油溝が形成され、該油溝は該部位と離反していることを特徴とする請求項1記載のラックアンドピニオン式舵取装置。
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