JP4438301B2 - 可塑性軽量注入材の製造方法および充填工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可塑性軽量注入材及びその製造方法、並びにその充填工法に関し、特に土木構造物の空洞充填、軽量盛土及び埋立て等に用い、所望する限定的な場所に注入固化できる可塑性軽量注入材の製造方法および充填工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル等の土木構造物や埋立てや盛り土等に注入される注入材としては、セメントミルクやセメントエアミルク等のセメント系注入材が知られており、これらの注入材は、例えば空洞部等の充填を所望する箇所に注入されて、固化する。
【0003】
しかし、注入部に注入材を導入する場合、充填しようとする箇所の空洞部に地下水や流水等の液体が存在すると、地下水や流水によって、注入した注入材が希釈化されてしまうことがある。
また、注入部を限定して注入材を区間注入する場合に、通常のセメントミルク系注入材では、かかる注入区間以外の周辺部位へ注入材の逸脱が発生してしまい、限定注入が困難である。
【0004】
このような希釈化や周辺部への逸脱を防止するために、注入材をゲル化して、地下水や流水に希釈化されることなく、また、その形状維持性によって周辺部に逸脱することのない性状の注入材が求められており、セメントミルクやセメントエアミルク等に水ガラス系薬剤やアルミニウム塩類を添加して注入材にこのような性状を付与することが行われている。
【0005】
上記水ガラス系薬剤を添加した注入材は、地下水や流水等の水によって水ガラスの未反応のナトリウムイオンが溶出してしまうため耐久性に劣り、また高アルカリ性となるため汚染が問題となる。
また、アルミニウム塩類を添加した注入材は、アルミニウムが高価であるため、これを添加した注入材も高価なものとなり、また未反応陰イオンが溶出してしまうため耐久性に劣り、さらに陰イオンによる地下水等の汚染が問題となる。
【0006】
これらの問題に対して、特許文献1には、可塑性注入材をセメントミルク又はセメントエアミルクと、ベントナイト泥水とを攪拌混合して得られる可塑性注入材が開示されている。
また、特許文献2には、セメント、ベントナイト及び水又はセメント、ベントナイト、水に、気泡を含有する注入材料が開示されている。
【0007】
しかし、上記特許文献の注入材に用いられている可塑材であるベントナイト等の粘土鉱物は、水に対する膨潤性が高く、泥水を調製するのにかなりの水を要し、軽量材、例えば気泡や発泡ビーズ等を混入するための十分な体積が確保できないため注入材の軽量化を図ることが困難である。
【0008】
また、上記注入材を得るためには、ベントナイト中の成分がセメントから溶出したカルシウム成分と容易に反応して膨潤しなくなることを防止するため、予めベントナイト泥水と、セメントミルクとを別個に調製して、十分にベントナイトが膨潤した後にセメントミルクと混合する製造方法により調製されており、セメントミルクとベントナイト泥水の2液を別個に製造する必要があることから、このための製造機械等の製造系列が2系列必要となり、製造コストが高価なものとなる。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−310779号公報
【特許文献2】
特開2000−54794号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、軽量で、瞬時にゲル化することができ、地下水や流水の影響を受けることなく優れた耐溶出性、形状維持性などの水中分離抵抗性を備えた、限定注入や水中打設が容易にできる可塑性軽量注入材の製造方法および充填工法を提供することである。
本明細書において「可塑性」という用語は、地下水や流水に希釈化されることなく、ゲル化した凝集体の状態になり、その形状付与性に起因して、周囲への逸脱が生じがたい性状であることを意味する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セメント及び混練水を含む硬化液と、界面活性剤を主成分とした起泡剤を発泡させて得られた気泡とを混合撹拌して可塑性軽量注入材を調製するに際して、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤を別個に調製して上記の注入材中に混合した場合に、地下水や流水の影響を受けることなく優れた耐溶出性、形状維持性などの水中分離抵抗性を備えた可塑性軽量注入材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち請求項1の発明は、セメント及び混練水を含む硬化液と、界面活性剤を主成分とするとともに可塑剤成分を配合した起泡剤を発泡させて得られた気泡と、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤とを別個に調製し、次いで前記各成分を混合撹拌することにより瞬時にゲル化させることを特徴とする可塑性軽量注入材の製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載の可塑性軽量注入材の製造方法において、注入材中の水溶性高分子の濃度が0.01〜10重量%の範囲になるように、上記水溶性高分子を調製することを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の可塑性軽量注入材の製造方法において、注入材中の凝結硬化促進剤の濃度が0.01〜10重量%の範囲になるように、上記凝結硬化促進剤を調製することを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項1または3記載の可塑性軽量注入材の製造方法において、注入材中の上記凝結硬化促進剤とともに、注入材中の濃度が0.01〜10重量%の範囲で凝結硬化遅延剤をさらに混合したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の可塑性軽量注入材の製造方法において、上記セメント及び混練水を含む硬化液が、さらに骨材を含む特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の可塑性軽量注入材の製造方法において、上記起泡剤中の上記可塑剤成分の濃度が0.01〜10重量%となるように、上記起泡剤に上記可塑剤成分を配合することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の発明は、注入現場箇所において、請求項1ないし6のいずれかに記載の前記各成分を混合撹拌して瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を注入箇所へ充填することを特徴とする可塑性軽量注入材の充填工法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を好ましい実施形態を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明で用いるセメント及び混練水を含む硬化液とは、例えば、セメントと混練水とを混合して得られたセメントミルクや、セメントと骨材と混練水とを混合して得られたモルタル等が挙げられ、当該硬化液中でカルシウムイオンが溶出して、その液自体で硬化性を有するものであれば、特に限定されず、任意のものが使用できる。
【0019】
骨材としては、その種類についての制約は特になく、通常の砂(川砂、山砂、海砂、砕石粉末砂等で、粒径が5mm以下のもの)、混和材(高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等)石灰石及び石灰石微粉末、シリカ系微粉末、粘土鉱物(ベントナイト、カオリン、アタパルジャイト等)砕石、珪砂、軽量骨材(パーライト、シラスバルーン等)、現地発生土などが挙げられる。
従って、粘性土等の現地発生土を含む被処理土泥水の水量を調節しセメントを配合して調製して得られる流動化処理土やベントナイト泥水にセメントを配合したもの等も当該硬化液に該当する。
混練水としては、水道水、地下水、海水などが挙げることができる。
【0020】
本発明に用いることのできるセメントとしては、普通、早強、白色、耐硫酸、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント、前記ポルトランドセメントの少なくとも1種と高炉スラグ、フライアッシュ等の少なくとも1種が混合された混合セメント、ジェットセメント、アルミナセメント等の特殊セメント、及びセメント系固化材等がある。
【0021】
セメントを含む硬化液には、必要に応じて、各種セメント混和剤を併用することも可能である。これらのセメント混和剤は、得られる注入材の可塑性に影響を及ぼすことがないものであれば使用することができる。
具体的には、公知のセメント分散剤(リグニン系、メラミン系、ナフタリン系等)、収縮低減剤(低級アルコール等)、撥水剤(高級脂肪酸等)、急結剤(アルミン酸カルシウム等)、高炉スラグ、シリカフューム、石膏、火山灰等の種々のものを挙げることができる。
例えば、減水剤等の混和剤の添加によって、セメントを含む硬化液中の単位水量を減らすことや、含有されるセメント量の調整が可能となることにより、高強度及び軽量化の配合設定の範囲を拡大することが可能である。
【0022】
本発明で使用する起泡剤は、界面活性剤を主成分とし、これに可塑剤成分を配合することができる。起泡剤中の可塑剤成分の濃度は、使用時において、0.01〜10重量%、好適には0.1〜5重量%であることが、期待する可塑性を有する注入材が得られる点で望ましい。可塑剤成分の濃度が0.01重量%より少ないと可塑性を有する効果がなく、10重量%を超えると可塑性が強すぎて気泡を消してしまう。
ここで、使用時とは、起泡剤を調製し、得られた起泡剤を、例えば1〜200倍に希釈して、気泡を発泡させる直前の濃度を示すものとする。
【0023】
本発明に使用される起泡剤の主成分である界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、蛋白質系界面活性剤又は両者の混合物が好ましく使用できる。炭化水素系界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等が使用でき、蛋白質系界面活性剤としてはケラチン、コラーゲン等が使用できる。これらの界面活性剤は1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、炭化水素系又は蛋白質系界面活性剤からなる市販の気泡モルタル用起泡剤を、起泡剤における界面活性剤の供給源として使用しても、何ら問題はない。
【0024】
好適に使用できる界面活性剤は、アニオン界面活性剤である。アニオン界面活性剤は、水中で解離して生じるアニオンが水溶液の表面に吸着されて、その表面張力を低下させる作用を有するもので泡を生成するために必要な成分である。例えばRCOONa等のカルボン酸塩、ROSO3 Na等の硫酸エステル塩、RSO3 Na等のスルホン酸塩、ROPO(ONa)2 等のリン酸エステル塩等、公知のアニオン界面活性剤が使用できる。
【0025】
具体的には、上記アニオン界面活性剤には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、アルファオレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩等のカルボン酸塩等がある。
【0026】
起泡剤中に配合する可塑剤成分としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコールやラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、メチルセルロース等のセルロース系誘導体やポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質系増粘剤、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の合成系増粘剤、グアーガム、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸、カードラン、ペクチン等の天然系増粘剤、ペクチン、キチン、キトサン等の植物、甲殻類抽出物、アルケニルコハク酸、アミノ酸と脂肪酸からなるアミノ酸系界面活性剤等のカルボン酸系界面活性剤、塩化カルシウムなどの塩素化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、チオシアン酸塩など、ジエタノールアミンやトリエタノールアミンなどのアミン類、ギ酸、酢酸、アクリル酸などの有機酸のカルシウム塩など、水ガラス系薬剤やアルミニウム塩類等の無機塩類などを添加しても良い。これらの可塑剤成分は1種あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0027】
起泡剤には、可塑性を強くするために必要に応じて粘土鉱物を配合することができる。粘土鉱物の濃度は、使用時において、1〜40重量%、好適には5〜20重量%であることが、期待する可塑性を有する注入材が得られる点で望ましい。粘土鉱物の濃度が1重量%より少ないと可塑性を有する効果がなく、40重量%を超えると可塑性が強すぎて気泡を消してしまう。
【0028】
さらに、粘土鉱物の分散性を良好にするために、必要に応じて分散剤をさらに配合することができる。分散剤の濃度は、使用時において、0.1〜10重量%であることが、期待する粘土鉱物分散性を得られる点で望ましい。分散剤の濃度が0.1重量%より少ないと粘土鉱物の分散効果が十分に得られず、10重量%を超えて添加しても粘土鉱物分散性は向上することはなく、価格的にも高価な起泡剤となってしまう。
【0029】
起泡剤に配合される粘土鉱物としては、カオリン鉱物、蛇紋岩及び類縁鉱物、パイロフィライト、タルク、雲母粘土鉱物、緑泥岩、バーミキュライト、スメクタイト、ベントナイト等の層状粘土鉱物、セピオライト、アタパルジャイト等の繊維状粘土鉱物、アロフェン及びイモゴライト等の非晶質粘土鉱物、その他、シリカ鉱物、長石、沸石、ドロマイト等で、これらの焼成物、例えばメタカオリン、メタハロイサイト等も挙げられる。これらの粘土鉱物は1種又は2種以上混合して使用できる。
このうち特に好ましい粘土鉱物として、ベントナイト、アタパルジャイトおよびメタカオリンが挙げられる。
【0030】
また、起泡剤に配合される分散剤としては、リグニン系、メラミン系、ナフタリン系、ポリカルボン酸系、リン酸塩系、クエン酸系、フミン酸系、スルホン酸系及びフミン誘導体、タンニン酸塩及びタンニン誘導体、アクリル酸ナトリウム等が挙げられ、これらを混合併用してもなんら問題はない。
【0031】
さらに、本発明の起泡剤には必要に応じて、ナトリウム塩(硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等)、カリウム塩(硫酸カリウム等)、マグネシウム塩(硫酸マグネシウム等)、カルシウム塩(硫酸カルシウム等)などの水溶性無機金属塩、セロソルブ系溶剤(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、カルビトール類(エチルカルビトール、ブチルカルビトール等)、エチレンオキシドの付加モル数が3〜10のポリオキシエチレン低級アルキルエーテル、ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール等)などの水溶性有機溶媒、ポリカルボン酸系、リグニン系、スルファミン系、ナフタレンスルホン酸系、アルキル硫酸エステル塩等の減水剤などを併用しても良い。特に水溶性有機溶媒は気泡を滑らかにし、セメントミルク中の粗泡の発生を抑制する作用がある。
【0032】
起泡剤を発泡させて得られた気泡を、セメント及び混練水を含有する硬化液と混合するにあたり、起泡剤をあらかじめ水溶性有機溶媒等を使用して水溶液の形としておいてもよく、その希釈倍率は1〜100倍程度である。
【0033】
起泡剤を発泡させる際の発泡倍率は1〜200倍、好適には15〜100倍とすることが、本発明の可塑性軽量注入材の可塑性を発現させるために望ましい。起泡剤を発泡させて気泡とするためには、発泡装置やミキサー等を用いて発泡させる通常の方法を採用することができる。
【0034】
起泡剤を発泡させて得られる気泡は、セメント及び混練水を含む硬化液とは別個に調製し、次いで両者を混合攪拌することにより瞬時にゲル化させる機能を有する。気泡の混入量は、可塑性軽量注入材の容積に対して15〜85%、好ましくは40〜60%となるように混合されることが望ましい。気泡が上記範囲より多くなると、得られる可塑性軽量注入材中のセメント量が少なくなるため硬化性が不十分となる場合もある。一方、上記範囲より少なくなると、混入した気泡が材料から分離してしまう材料分離が生じやすくなるため好ましくない。かかる気泡の混入量は、硬化液の種類などによって、変化させることができる。
【0035】
本発明の可塑性軽量注入材に使用される水溶性高分子は、注入材の水中分離抵抗性を向上させるために配合されるものであり、注入材使用時における注入材中の濃度が0.01〜10重量%、好適には0.1〜1重量%であることが、期待する水中分離抵抗性を向上させる点で望ましい。水溶性高分子の濃度が0.01重量%より少ないと期待する効果が得られにくくなり、10重量%を超えると水中分離抵抗性が強すぎて気泡を消してしまう傾向がある。
【0036】
可塑性軽量注入材に配合される水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどの化学的合成高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類、メチルセルロース、エチルセルロースとそれらの誘導体などのセルロース系高分子、ポリアクリルアミドやポリアクリル酸ソーダなどのアクリル系高分子、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質系増粘剤、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の合成系増粘剤、グアーガム、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸、カードラン、ペクチン等の天然系増粘剤、ペクチン、キチン、キトサン等の植物、甲殻類抽出物などが挙げられる。これらの水溶性高分子は、粉体のものは水溶液として使用し、液体のものはそのまま又は水で希釈して使用する。
このうち特に好ましい水溶性高分子として、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールが挙げられる。
【0037】
本発明の可塑性軽量注入材に使用される凝結硬化促進剤は、セメントの水和反応を促進して可塑性軽量注入材の凝結と硬化を促進し、注入材の水中分離抵抗性を向上させるために配合されるものであり、注入材使用時における注入材中の濃度が0.01〜10重量%、好適には0.1〜1重量%であることが、期待する水中分離抵抗性を向上させる点で望ましい。凝結促進促進剤の濃度が0.01重量%より少ないと期待する効果が得られにくくなり、10重量%を超えると強度発現が早すぎて気泡を消してしまう傾向がある。
【0038】
可塑性軽量注入材に配合される凝結硬化促進剤としては、無機塩系では、塩化カルシウムで代表される塩素化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、チオシアン酸塩などで、有機塩系では、ジエタノールアミンやトリエタノールアミンなどのアミン類、ギ酸、酢酸、アクリル酸などの有機酸のカルシウム塩などが使用できる。これらの凝結硬化促進剤も、粉体のものは水溶液として使用し、液体のものはそのまま又は水で希釈して使用する。
このうち特に好ましい促進剤として、塩化カルシウム、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0039】
本発明の可塑性軽量注入材に使用される凝結硬化遅延剤は、セメントの水和反応を遅らせて可塑性軽量注入材の凝結、硬化を遅延させることによって上記促進剤による凝結、硬化を調節するものであり、そのため、必要に応じて凝結硬化促進剤と併用して使用される。凝結硬化遅延剤を使用する場合の濃度は、注入材使用時における注入材中の濃度を0.01〜10重量%、好適には0.1〜1重量%とする。遅延剤の濃度が0.01重量%より少ないと期待する効果が得られにくくなり、10重量%を超えるとセメントの凝結や硬化が弱すぎて気泡を消してしまう傾向がある。
【0040】
可塑性軽量注入材に必要に応じて配合される凝結硬化遅延剤は、有機質系ではリグニンスルホン酸、グルコン酸塩、ポリオール高分子複合体や、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などの有機酸、グルコース、ショ糖、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの糖類で、無機質系では、珪フッ化物、リン酸塩、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化鉛、酸化ホウ素、ホウ砂などが挙げられる。これらの凝結硬化遅延剤も、粉体のものは水溶液として使用し、液体のものはそのまま又は水で希釈して使用する。
このうち特に好ましい凝結硬化遅延剤として、リグニンスルホン酸、有機酸が挙げられる。
【0041】
上述したごときセメント及び混練水を含む硬化液と、起泡剤を発泡させて得られた気泡と、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤とを混合撹拌することによって、本発明の可塑性軽量注入材とすることができる。
かような可塑性軽量注入材は、セメントと混練水を含む硬化液を調製し、これとは別個に、水などに界面活性剤と可塑剤成分さらには必要に応じて粘土鉱物や分散剤を加えて溶解分散させて得られた起泡剤を発泡させて気泡を調製し、さらこれとは別個に、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤を調製し、上記で調製した硬化液と気泡と水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤とを混合撹拌して、瞬時にゲル化させることにより製造することができる。
【0042】
上述したように本発明においては、注入材の水中分離抵抗性を向上させる成分である水溶性高分子、凝結硬化促進剤、凝結硬化遅延剤を、セメントを含む硬化液や起泡剤とは別個に、注入材成分として混合する必要がある。水溶性高分子、凝結硬化促進剤、凝結硬化遅延剤をセメントを含む硬化液あるいは起泡剤中の配合成分として用いた場合には、期待される注入材の水中分離抵抗性向上効果を得ることができない。
【0043】
また、本発明においては、セメント及び混練水を含む硬化液と気泡と水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤とを混合攪拌する製造方法を用いることができる結果、セメントミルク又はセメントエアミルクとベントナイト泥水の2液を別個に製造した後に両者を混合撹拌する従来の可塑性軽量注入材の製造方法と比較して、ミキサー等の製造系列を削減することが可能となり、製造コストの高騰が抑制できる。
【0044】
本発明の可塑性軽量注入材の充填注入では、セメント及び混練水を含む硬化液と気泡と水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤との混合攪拌を注入現場箇所でおこない、瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を所望する注入箇所へ充填することにより、耐久性に優れ、瞬時にゲル化することができ、しかも地下水や流水の影響を受けず、限定注入や水中打設が容易にできる。
【0045】
本発明の可塑性軽量注入材は、注入を現場箇所で行い、瞬時にゲル化させて、所望する注入箇所に限定注入するのに適した可塑性をもたらすフロー値と密度、すなわちフロー値80〜150mm、好適には80〜120mm、密度0.3〜1.2g/cm3 を有することが望ましい。フロー値は、日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して測定された値であって、内径8cm、高さ8cmのシリンダーに試料を入れて、引き抜き後の試料底面の直径を測定した値で表す。
【0046】
【実施例】
本発明を次の実施例により説明するが、これらに限定されるものではない。
(1)起泡剤の調製
界面活性剤(A)としてアニオン界面活性剤(アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、商品名「リボランLB−440」、ライオン(株)製)、可塑剤成分(B)としてミリスチルアルコール(商品名「カルコール40」、花王(株)製)を用い、(A):(B)=5:1(純分重量比)として、本発明で使用する起泡剤▲1▼を調製した。またこの起泡剤▲1▼に、(A)と(B)以外のその他の主要成分としてアタパルジャイト(繊維状粘土鉱物)とピロリン酸ナトリウム(分散剤)とを混合した本発明で使用する起泡剤▲2▼も調製した。
【0047】
これらとは別に対照品として、可塑剤成分(B)を含まない起泡剤▲3▼、(A)と(B)以外のその他の主要成分としてアタパルジャイト、ポリビニルアルコール(水溶性高分子)、トリエタノールアミン(凝結硬化促進剤)、クエン酸(凝結硬化遅延剤)を種々組み合わせて混合した起泡剤▲4▼〜▲7▼を調製した。
これらの起泡剤▲1▼〜▲7▼について、界面活性剤(A)と可塑剤成分(B)以外のその他の主要成分を表1にまとめて示す。なお、その他の主要成分の混合割合[(A)と(B)の合計100重量部に対する純分の重量比]は、表1中の各成分の後に記載した括弧内の数字で示してある。
これら起泡剤を用いて、発泡装置により発泡倍率25倍の気泡を作製した。
【0048】
【表1】
【0049】
(2)硬化液の調製
セメントミルクからなる硬化液は、セメント(住友大阪セメント(株)製高炉セメントB種、密度3.05g/cm3 )と混練水とを表2の配合1と配合2に示す割合で配合して、ハンドミキサーで2分間混練して調製した。一方、モルタルからなる硬化液は、セメントと砂(密度2.65g/cm3 、5mm以下に篩をかけたもの)と混練水とを表2の配合3〜17に示す割合で配合して、ハンドミキサーで2分間混練して調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
(3)水溶性高分子の調製
ポリビニルアルコール(製品名「ポバールJF−04」、日本酢ビ・ポバール(株)製)5kgを攪拌した水5kgに投入し、加熱溶解して水溶性高分子溶液を調製した。
【0052】
(4)凝結硬化促進剤の調製
トリエタノールアミン(日本純薬(株)製)を、そのまま使用した。
(5)凝結硬化遅延剤の調製
クエン酸(試薬、和光純薬(株)製)5kgを攪拌した水5kgに投入し、溶解させて遅延剤水溶液を調製した。
【0053】
(6)注入材の調製
上記(1)で得られた気泡と、上記(2)で得られた硬化液(セメントミルク又はモルタル)と、上記(3)(4)(5)で得られた水溶性高分子、凝結硬化促進剤、凝結硬化遅延剤を、表2に示すような配合1〜17になるように、ハンドミキサーにて撹拌混合し、それぞれ注入材(エアミルク、エアモルタル)を得た。
【0054】
このとき、表1に示した起泡剤▲1▼〜▲7▼と表2に示した配合1〜17を種々に組み合わせて種々の注入材を調製し、表3に示す実施例1〜15、比較例1〜7の注入材とした。
ここで、比較例1〜3は、起泡剤成分中にも注入材成分中にも、水溶性高分子及び凝結硬化促進剤のいずれも含まれないものである。比較例4〜7は、起泡剤成分中に水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤を含むものである。
【0055】
(7)注入材の試験
上記(6)で得られた注入材(エアミルク、エアモルタル)を以下の試験に供した。
(a)フロー値
日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して、内径8cm、高さ8cmのシリンダーに、上記(6)で得られた各種注入材試料を入れて、引き抜き後の試料底面の直径を測定し、その値をフロー値とした。結果を表3に示す。
(b)密度
内容量1000cm3 の計量用カップに上記(6)で得られた各種注入材試料を充填して、1000cm3 当りの重量を計測し、密度を算出した。結果を表3に示す。
【0056】
(c)水中分離抵抗性試験
日本道路公団「覆工背面空洞注入材の適応性確認試験方法(案)」の水中分離抵抗性試験に準拠して、密度が1以上のエアミルク、エアモルタルの場合は、長さ450mm程度、幅300mm程度、高さ300mm程度の水槽にpHが7〜8程度の水道水を26L(リットル)張り、水槽の中にpH計の設置位置が水面から10cmの深さとなるようにpH計を設置し、内径80mm、高さ80mmのフローコーンに上記(6)で得られた各種注入材試料を入れ、水槽内にフローコーンを入れ、素早くフローコーンを除去して、注入材を水槽に投入する前及び投入後60分経過後のpHの測定、さらには注入材の状態を観察した。
また、密度が1以下のエアミルク、エアモルタルの場合は、長さ450mm程度、幅300mm程度、高さ300mm程度の水槽にpHが7〜8程度の水道水を26L張り、水槽の中にpH計の設置位置が水面から10cmの深さとなるようにpH計を設置し、約100mLの容器に上記(6)で得られた各種注入材試料を入れ、容器を逆さにして水面に注入材を静かに乗せ、水面に乗せる前及び乗せた後60分経過後のpHの測定、さらには注入材の状態を観察した。
結果を表3に示す。
【0057】
(d)軽量注入材の可塑性の評価
軽量注入材の可塑性の評価は、密度とフロー値から、以下の基準で行った。
評価結果を表3に示す。
◎:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が80〜120mm
○:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が120超〜140mm
△:密度が0.3〜1.2g/cm3 でかつフロー値が140超〜150mm
×:密度が1.2g/cm3 超又はフロー値が150mm超
【0058】
(e)水中分離抵抗性の評価
水中分離抵抗性としての評価は、投入前と60分経過後のpH測定値から、以下の基準で行った。評価結果を表3に示す。
○:投入前と60分経過後のpH測定比率が±10%以内
×:投入前と60分経過後のpH測定比率が±10%超
【0059】
(f)水槽内又は水面上での注入材の評価
水槽内又は水面上での注入材の評価は、60分経過後の注入材の状態から以下の基準で行った。評価結果を表3に示す。
○:60分経過後に注入材の原型がある
△:60分経過後に注入材の原型があるが少し崩壊している
×:60分経過後に注入材が崩壊している
【0060】
【表3】
【0061】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように本発明によれば、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤を、起泡剤成分中に混合することなく、セメントを含む硬化液と起泡剤から得た気泡とともに注入材成分として別個に混合させることにより、軽量で、瞬時にゲル化することができ、地下水や流水の影響を受けることなく優れた耐溶出性、形状維持性などの水中分離抵抗性を備えた、限定注入や水中打設が容易にできる可塑性軽量注入材を提供することができる。
また、本発明の可塑性軽量注入材の製造方法は、上記した可塑性軽量注入材を簡便にかつ経済的に製造することができる。
更に、本発明の可塑性軽量注入材の充填工法は、迅速な限定注入や水中打設を効果的に実施することができるものである。
Claims (7)
- セメント及び混練水を含む硬化液と、界面活性剤を主成分とするとともに可塑剤成分を配合した起泡剤を発泡させて得られた気泡と、水溶性高分子及び/又は凝結硬化促進剤とを別個に調製し、次いで前記各成分を混合撹拌することにより瞬時にゲル化させることを特徴とする可塑性軽量注入材の製造方法。
- 注入材中の水溶性高分子の濃度が0.01〜10重量%の範囲になるように、上記水溶性高分子を調製することを特徴とする請求項1記載の可塑性軽量注入材の製造方法。
- 注入材中の凝結硬化促進剤の濃度が0.01〜10重量%の範囲になるように、上記凝結硬化促進剤を調製することを特徴とする請求項1または2記載の可塑性軽量注入材の製造方法。
- 注入材中の上記凝結硬化促進剤とともに、注入材中の濃度が0.01〜10重量%の範囲で凝結硬化遅延剤をさらに混合したことを特徴とする請求項1または3記載の可塑性軽量注入材の製造方法。
- 上記セメント及び混練水を含む硬化液が、さらに骨材を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の可塑性軽量注入材の製造方法。
- 上記起泡剤中の上記可塑剤成分の濃度が0.01〜10重量%となるように、上記起泡剤に上記可塑剤成分を配合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項可塑性軽量注入材の製造方法。
- 注入現場箇所において、請求項1ないし6のいずれかに記載の前記各成分を混合撹拌して瞬時にゲル化させて得られた可塑性軽量注入材を注入箇所へ充填することを特徴とする可塑性軽量注入材の充填工法。
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