JP4441642B2 - 電解銅箔製造用のチタン製カソード電極、そのチタン製カソード電極を用いた回転陰極ドラム、チタン製カソード電極に用いるチタン材の製造方法及びチタン製カソード電極用チタン材の矯正加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極及びそのチタン製カソード電極として用いるチタン材の製造方法及び矯正加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電解銅箔の製造には、チタン製カソード電極が広く用いられてきた。チタン材は、電解銅箔の製造に用いられる硫酸銅溶液等の強酸性溶液に対しても、十分に安定した耐酸性能を有し、ステンレス鋼等に比べ極めて軽量であるためカソード電極としての取り扱いが容易で、且つ、電析した電解銅箔を引き剥がして剥離することが容易という性質を有していたからである。
【0003】
この電解銅箔の製造の場におけるチタン製カソード電極には、長期に渡って、安定した電解銅箔製造が可能であることが望まれるのは当然である。特に、電解銅箔はカソード電極上に箔状に析出した銅を引き剥がして得られるものであるから、得られた電解銅箔の片面側はカソード電極の表面形状が転写したものとなり、この面を一般には光沢面と呼んでいる。なお、他面側は、光沢面に比べると大きな凹凸を持つ艶消し状となるため、通常は粗面と称される。
【0004】
この光沢面の表面形状は、表面処理等を施され、プリント配線板等の製造に用いる最終的な製品としての電解銅箔となっても維持されるものである。例えば、基材樹脂と張り合わせて銅張積層板とした後、この光沢面は、プリント配線板製造のためのエッチングレジスト層を形成し、エッチング回路パターンを作成する面となる。このとき、光沢面の持つ凹凸形状によっては、エッチングレジスト層の密着性を良好に保つことが出来ず、エッチング回路の仕上がり精度を悪化させる場合も発生するのである。
【0005】
これらのことから、電解銅箔の製造現場において、強酸性の銅電解液中でも、カソード電極表面の形状が、可能な限り変化、変質しない材料として、耐酸性に優れたチタン材を電解銅箔製造の際のカソード電極として用いてきたのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現実には、耐酸性に優れるとされるチタン材をカソード電極として用いても、長期使用の間に、銅を電解析出させるチタン材の表面形状が、通電時間の経過と共に変化して粗くなるという現象が発生していた。
【0007】
チタン製カソード電極の表面形状が粗くなると、そのチタン製カソード電極の表面形状の転写したレプリカと言える電解銅箔の光沢面も当然に粗くなってくる。また、薄い電解銅箔ほど、ファインピッチ回路の形成に用いられる可能性が高く、光沢面の表面に異常の無いことが求められるのである。ここで、図1には、電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極の表面状態を示している。図1には、チタン製カソード電極の表面を光学顕微鏡で観察したものを示しているが、表面における焦点深度が異なって見える部分が観察されていることから、チタン製カソード電極の表面に凹凸が形成されていることが分かる。この凹凸が本明細書において、ピットと称する微細な窪みであり、電解銅箔の製造に用いる前のチタン製カソード電極の表面には見られないものである。このピットの形成原理は、長い間、鉄鋼材料の場合と同様に、主にチタン材の腐食により形成されるものと考えられてきた。チタン製カソード電極の表面にピットが存在した状態で、電解銅箔の製造に用いると、ピットに対応する部分の電解銅箔の光沢面には、微小突起が表面に形成されるか、析出異常を起こす等の状態となり、いわゆる液体レジストを用いて、より薄いエッチングレジスト層を形成してファインパターン回路を形成する場合には、良好なレジストレーションが不可能な状態となる。例えば、TAB(テープ オートメーティッド ボンディング)や、いわゆるピン間5本以上の配線密度を持つリジット系プリント配線板に用いる場合に問題となるのである。
【0008】
そのため、実際の電解銅箔の製造においては、製造される電解銅箔の光沢面粗度を測定し、光沢面粗度の値が一定の管理値をはずれると、チタン製カソード電極は、その表面を研磨することで、表面の凹凸状態を整えるメンテナンス作業を行い、繰り返して使用するというのが一般的である。このときの、従来のチタン製カソード電極の連続使用の可能な期間には、かなり広範なバラツキが存在し、経験的に見て340〜2900時間程度であった。
【0009】
しかも、この電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極の研磨に当たっては、完全に機械化することも困難で、作業者にも非常に高い熟練度が要求されるものである。この様な事情を勘案するに、電解銅箔製造に用いる際のチタン製カソード電極のメンテナンスコストの上昇を招き、結果として、トータルで見た場合の電解銅箔製造のランニングコストを上昇させるものとなっていた。
【0010】
これらのことから、安定して3000時間以上の長期に渡る連続使用が可能で、結果としてメンテナンス作業を可能な限り低減し、電解銅箔製造のランニングコストの低減に寄与させることにより、より安価で高品質な薄い電解銅箔の供給を可能とするカソード電極が望まれてきた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明に係る発明者等が、鋭意研究した結果、以下のようなチタン製カソード電極を用いれば、従来に比べ、電解銅箔製造において極めて長期に渡っての使用が可能で、メンテナンス回数を有効に低減させ、高品質の電解銅箔を長期に渡って製造することが可能となることに想到したのである。また、ここで言うチタン製カソード電極に用いるチタン材を製造するのに適した製造方法等に想到したのである。以下、本件発明に関して説明する。
【0012】
請求項1には、銅電解液を用いて電解銅箔を得る際に用いるチタン材からなるチタン製カソード電極であって、チタン材は、結晶粒度番号7.0以上であり、且つ初期水素含有量が35ppm以下であることを特徴とする電解銅箔製造用のチタン製カソード電極としている。このような発明に想到するには、次のような背景が存在するのである。
【0013】
まず、本件発明者等は、チタン製カソード電極の表面に生ずるピットが、従来の認識通り「単なる電解液による腐食」によって生ずるものであるか否かの確認を行うこととした。このため、本件発明者等は、電解銅箔の製造に用いたチタン製カソード電極のチタン材の表面に観察される窪み状のピット部分の分析を最初に行った。その結果、ピット部を、微小領域X線回折分析装置で分析すると、その窪み部分からチタンハイドライトを検出することができることが分かった。このことから、ピット部にはチタンハイドライトが存在していると判断できるのである。
【0014】
更に、カソード電極として用いた当該チタン材表面の形状の転写面となっている電解銅箔の光沢面において、チタン製カソード電極上に確認できるピットの転写位置に相当する銅箔表面からは、微量ではあるがチタンが検出されることも確認ができた。このように、電解銅箔の表面にカソード電極の痕跡が残留するというのは、チタン製カソード電極のチタン材の表面に銅箔を析出形成し、剥ぎ取って電解銅箔を得るという製法に特有の現象と考えることが出来る。これらの事実から、電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極のピットの形成には、電解液によるチタン材の単なる腐食により起こるものではなく、銅電解中の水素吸収によりチタンハイドライトが形成され、成長したチタンハイドライトが脱落することによる可能性が高いと判断出来るのである。
【0015】
このことから、本件発明者等は、18μm厚の電解銅箔の製造において約5ヶ月の連続使用の可能であったカソード電極に用いたチタン材(以下、「A材」と称する。)と、約1ヶ月の連続使用の可能であったカソード電極に用いたチタン材(以下、「B材」と称する。)とを用いて、チタンハイドライトの形成速度を比較した。ビーカー内に、Na2SO4(無水)180g/l、H2SO4150g/lを含有した溶液中を入れ、それぞれのチタン材をカソード電極として、電流密度50mA/cm2、液温室温、通電時間168時間の条件で水素発生を行わせ、チタン材に、加速試験としての水素導入を試みたのである。このとき、双方の水素発生量は、通電量で定まるものと考えられるため、同一と考えることとする。
【0016】
この実験の中で、本件発明者等は、通電を終了したビーカーの底部に黒色に見える異物の沈殿が確認できることに気づいた。そこで、この黒色異物を濾紙にて、採取してみると、量的には前記A材より、前記B材を用いた場合の沈殿異物の量が多いことが分かった。これを示したのが図2である。そして、この沈殿異物を透過電子顕微鏡を用いた電子線回折法で分析したところ、チタンハイドライトであることが判明したのである。従って、この水素導入実験の結果から判断すれば、電解銅箔の製造において用いるチタン製カソード電極においても、電解銅箔製造時には同様の現象が起きているものと考えられるのである。
【0017】
以上のことを考えるに、電解銅箔の製造に用いるカソード電極としては、可能な限りチタンハイドライトの成長を抑制し、チタン製カソード電極の表面を平滑に維持することが、電解銅箔の製品品質の向上には不可欠であることが分かるのである。従って、本件発明者等は、チタン製カソード電極を電解銅箔の製造において用い、その表面状態が、経時的に変化していくことの原因として、電解時にチタン製カソード電極が水素を吸収し、結晶組織内でチタンハイドライトを形成し、このチタンハイドライトの成長が進行して結晶格子を変形させ歪みが発生すると共に、形成されたチタンハイドライトの脱落が発生することにより、チタン製カソード電極の表面形状が変化しているものと推測したのである。
【0018】
更に、前記A材とB材とを対比して考えると、初期の成分分析において、酸素、窒素、炭素、鉄、水素等の含有量については、殆ど同等のレベルであり、異なっていたのは結晶粒度である。A材の結晶粒度は結晶粒度番号7.1、B材の結晶粒度は結晶粒度番号5.6に相当するものであり、A材の結晶粒の方が細かいものとなっていたのである。従って、この段階において、本件発明者等は、結晶粒の細かなものほど、チタンハイドライトの形成が抑制できる可能性があると判断した。
【0019】
なお、ここで言う「結晶粒度番号」とは、チタン材の結晶組織写真から判別できるものであり、結晶粒度の判断は、切断法を用い、JIS G 0552に規定する鋼のフェライト結晶粒度試験方法と同様の基準で測定した場合のもので、100倍に拡大して結晶粒を確認し、25mm平方中の結晶粒の平均数を求め、結晶粒度番号に換算した。換算式を式1として、以下に示す。
【0020】
【式1】
【0021】
更に、ビーカー内で水素吸収を行わせた後のA材とB材との水素含有量を調べてみると、初期水素量が双方ともに37ppmであったものが、A材では、580ppm、B材では560ppmであり、前述したビーカー内の黒色沈殿物がチタンハイドライトであり、B材の沈殿量の方が多いと考えれば、ほぼ同じレベルの水素吸収量となっていたと考えて差し支えないものと言える。
【0022】
この結果を考えるに、結晶粒度番号が大きく微細な結晶粒を持つチタン材ほど、カソード電極として使用したときに水素を吸収したとしても、チタンハイドライトが形成されにくいのではないか、若しくは形成されたチタンハイドライトが脱落しにくい状況になっているのではないかと考えられる。
【0023】
従来から、電解銅箔を製造するための実際の操業電解では、約50℃前後の硫酸銅溶液等が電解液として用いられており、カソード電極の近傍における銅イオンの欠乏を起こさないよう高速で溶液循環させ、通常の単なるメッキ工程で用いる電流密度と比べて遙かに高い電流密度で電解銅箔製造が行われてきた。実験室レベルでの確認は困難であるが、このような条件が揃うと供給電気量に対して、クーロンの法則に基づいて、ほぼ100%に近い電解効率が見かけ上達成できるのである。この結果、電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極における自然的水素吸収は不可避的なものであり、チタン製カソード電極に対する水素吸収の与える影響は少なく、問題にするまでのことはないと認識してきたものを覆さざるを得ないことになるのである。
【0024】
上述した実験及び検証の結果、本件発明者等は、チタン製カソード電極の連続使用可能な時間を大幅に延ばすための方策として、チタン製カソード電極の水素吸収を完全に防止することは不可能としても、チタン製カソード電極の結晶組織内におけるチタンハイドライトの形成のもたらす影響を抑制することを目的として、▲1▼チタン製カソード電極のチタン材への水素吸収を大幅に低減させる方法の確立。▲2▼チタン製カソード電極のチタン材が水素を吸収してチタンハイドライトを形成しても表面形状に変化の少ないチタン材の検討、の2側面から検討を行うことにした。
【0025】
まず、前者の水素吸収を大幅に低減させる方法の確立に当たっては、電解時の水素発生量を低減させることが考えられる。この目的を達成しようとすれば、理論的には、カソード電極としてチタン材を用いることを前提として、アノード電極の材質を変更することにより、水素の分極曲線のターフェル勾配の傾きを、銅の分極曲線のターフェル勾配の傾きに比べ、現状以上に低くすることができれば、水素発生に寄与する電気量を下げ、水素発生を抑制することが可能となる。ところが、50℃前後の強酸性の硫酸銅溶液中で良好な耐腐食性を示し、電解装置の形状に合わせての容易に加工できる材質として考えれば、その選択幅は極めて限定されてくる。そのため、現段階における技術レベルでは解決は困難と考えられ、本件明細書においては、この手法の追求は行わないものとした。
【0026】
従って、本件発明者等は、チタン製カソード電極のチタン材が水素を吸収してチタンハイドライトを形成しても表面形状に変化の少ないチタン材について研究を進めることとしたのである。まず、本件発明者等は、研磨を要するチタン製カソード電極のチタン材が、どの程度の水素を含有しているかを調べてみた。その結果、製造される電解銅箔の光沢面粗度が管理値を越えることとなったチタン製カソード電極のチタン材についての水素含有量が一定の値を示さないと言うことが分かった。
【0027】
このことから、水素含有量だけが、チタン製カソード電極のチタン材の電解銅箔の電解工程における連続使用可能な時間を決める要因ではないと判断できる。そこで、本件発明者等は、電解時にカソード側で発生した水素が、どのような経路を通じてチタン材の中に取り込まれるのかを考え併せてみることとした。カソード側で発生した水素の大部分は、水素ガスとなって大気中に放出され、一部の水素がチタン材の結晶組織中に取り込まれることとなる。このとき、水素はチタン材中を拡散していくことになる。拡散の形態は、結晶粒界を拡散する粒界拡散と結晶粒内を拡散する粒内拡散のいずれかに分類されるものであると考えられる。
【0028】
しかしながら、水素原子が、いかにチタン原子に比べ小さなものであると考えても、拡散の容易さから言えば、粒界拡散が粒内拡散に勝るものと考えられる。従って、チタン製カソード電極を構成するチタン材の結晶組織内においても、チタン結晶粒界を水素が拡散し、結晶粒界を基点としてチタンハイドライトの形成が行われ、チタンハイドライトの成長が起こるものと考えられる。一般的なチタンハイドライトは、針状の形状をしており、長いものは100μmを越えるものまでが確認される。
【0029】
また、電解銅箔の製造に用いるチタン製カソード電極のチタン材のチタンハイドライトは、水素吸収が進行するにつれ、針状のチタンハイドライトが肥大化し、積み重なり、塊状となるというメカニズムで成長し、最終的に表面から欠落し、カソード電極であるチタン材表面にピットを形成していると考えられるのである。
【0030】
チタンハイドライトが塊状に積み重なる原因については、次のように考えられる。結晶粒界を拡散経路としてチタン製カソード電極内に入った水素は、ある一定の深さで結晶粒界を基点としてチタンハイドライトを形成する。そのチタンハイドライトは、更に拡散して侵入する水素により成長することになり、やがて水素の拡散経路としての結晶粒界を塞いでしまうようになる。このような状態が形成されると、水素がチタン製カソード電極の更に深くにまで拡散しようとすれば、結晶粒界を塞いだチタンハイドライト中を拡散して内部に侵入しなければならない。ところが、チタンハイドライトを構成する水素は、チタン結晶格子にインタースティシャルな状態で位置しているものと考えられるため、通常のチタン材に比べ、水素の拡散は極めて遅くなると考えるのが一般的である。このような、状態になると、チタン製カソード電極の結晶組織の一定深さで、結晶粒界を塞ぐ形で成長したチタンハイドライトの存在位置よりも浅い部分の水素濃度が上昇し、より浅い位置でのチタンハイドライトの形成が優先的に発生するようになる。この結果、チタン製カソード電極の表面近傍でのチタンハイドライトの形成速度が加速され、チタンハイドライトが成長し、堆積した状態となり、硬く脆いチタンハイドライトの塊となると考えられるのである。そして、最終的にチタン製カソード電極の表面から脱落するものと思われるのである。
【0031】
以上のように考えれば、上述した水素吸収の加速実験の結果とも、整合性が採れるようになるのである。そこで、本件発明者等は、次のように考えることとした。電解銅箔を製造する際に電流密度は、常に一定であり、カソード側で発生する水素量及びチタン材に吸収される水素量が一定と仮定できる。そして、この発生水素の一部がチタン材の結晶粒界を通って拡散し、結晶粒界を基点としてチタンハイドライトの成長がおこるものとすれば、単位時間当たりに、この結晶粒界を通過する水素量を減らすことができれば、チタンハイドライトの成長を遅らせることができるようになると言えるのである。
【0032】
従って、チタン材に吸収される水素量が一定とすれば、結晶粒界の存在密度が高いほど、即ち、微細な結晶粒を持ち結晶粒度が高いほど、結晶粒界における単位時間当たりの通過水素量が少なくなることになる。言い換えれば、微細な結晶粒を持つチタン材ほど、結晶粒界密度が高いため、水素の拡散経路となる結晶粒界が多く、各結晶粒界における通過水素量が減少し、水素の拡散経路である結晶粒界を塞ぐほどのチタンハイドライトの成長を抑制することが出来ると言えるのである。逆に、チタン製カソード電極のチタン材の結晶粒が大きく、結晶粒度が低いほど、結晶粒界密度が低くいため、水素の拡散経路となる結晶粒界が少なく、各結晶粒界における通過水素量が増加し、カソード電極の表面近傍における結晶粒界を基点としたチタンハイドライトの形成及び成長を助長させるものとなると言えるのである。
【0033】
以上のような考えに基づき、本件発明者等は、ピットの発生したチタン製カソード電極、ピットの発生の無いチタン製カソード電極、それぞれの結晶粒径及び水素含有量を調査した。その結果を表1に示している。この試験においては、初期水素含有量が約18〜20ppmの水素含有量を持ったチタン板を用いている。このチタン板を用いて、硫酸銅溶液中で表面に銅を析出させ引き剥がして銅箔を製造しつつ、ピットの発生を確認したのである。この試験は、65g/lの銅を含有した硫酸銅溶液を用いて、鉛板を陽極とし、電流密度40A/dm2、電解総時間3000時間、液温48℃の条件で行ったものである。ここで、鉛陽極としたのは、より電解条件を電解銅箔の一般的製造条件に近づけるため、現実に用いられている電極を用いたのである。そして、電解総時間として記載したのは、実験室レベルで行ったものであるため、完全に連続した銅電解を行えたのではなく、一部において電解液更新等の不連続な時間が存在するため、実質的に電解を行った時間という意味で用いているのである。本件明細書中において、チタン材中の水素の含有率(量)の測定は、JIS H 1619 に従って分析した値を用いている。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1から分かるように、カソード電極として用いる前の初期水素含有量が同レベルであれば、一定時間電解後の水素含有量にも大きな差異は認められない。表1において、電解後の表面水素含有量とは、電解総時間3000時間の電解終了後のカソード電極として用いたチタン材の表面から1.5mm厚の試料を切りだし、測定した水素含有量を「表面水素含有量」としており、全体の水素含有量として測定したのが「トータル水素含有量」である。従って、吸収水素量が同程度であれば、ピット発生の有無から分かるように、結晶粒の大きさの指標である結晶粒度番号の値が大きい程、ピット発生が起こりにくい傾向にあるものと考えられる。即ち、電解総時間が1000時間経過後のピット発生は、結晶粒度番号6.7以上のものには見られない。これが、電解総時間3000時間経過後には結晶粒度番号6.7のものにピット発生が認められるようになり、結晶粒度番号7.0以上のものにはピット発生が見られないのである。更に、結晶粒度番号7.5以上になると電解総時間5000時間を超えても、ピット発生が見られないことが確認できたのである。このことから、3000時間経過時点において、チタン材のピット発生を防止するためには、結晶粒度番号で7.0以上であることが最低限必要な条件と考えられ、望ましくは結晶粒度番号7.5以上であることが、より望ましいと言えるのである。
【0036】
次に、本件発明者等は、結晶粒度番号が同レベルとしたときの、初期水素含有量のピット発生に及ぼす影響を調べ、表2に、その結果を示した。ここで用いた試料は、いずれも結晶粒度番号7.0〜7.1のものを用いて、初期水素含有量が20〜40ppmのものを用いた。電解条件等は表1に用いた条件と同様である。
【0037】
【表2】
【0038】
この表2から分かるのは、結晶粒度が同レベルであれば、初期水素含有量と電解後の水素含有量との関係はリニアな対応を見せている。これは、容易に想像できることであるが、電解総時間3000時間経過後のピット発生の有無を考え合わせてみると、ピット発生の認められなかったのは、初期水素含有量が35ppm以下の試料に限られるのである。このことを考えるに、カソード電極として用いるチタン材には、初期水素含有量が35ppmという要件を満たす必要があると言えるのである。
【0039】
この表1及び表2に示した結果から分かるように、結晶粒度が7.0以上であり、且つ水素含有量が35ppm以下となる領域において、電解総時間3000時間以上の安定した電解銅箔の連続製造が可能となるのである。中でも、結晶粒度7.5以上であり、且つ、水素含有量が20ppm以下になると、より安定した電解銅箔の連続製造が可能となり、電解総時間5000時間以上の安定した操業が可能となることが分かってきたのである。なお、アノード電極として、鉛アノードと同様の不溶性アノードであり、通称ペルメレック電極といわれる寸法安定電極であるDSAアノードを用いた場合にも、同様の結果が得られている。
【0040】
従って、これらの現象は、現実の電解銅箔製造の場においても、同様の傾向を示すと考えられる。このような考えの下に、請求項1に記載の発明を行ったのである。以上のように、結晶粒度及び水素含有量を考慮することで、上述したようにカソード電極として用いたチタン材の長寿命化を図れることになるが、連続使用可能な時間に一定のバラツキが存在する。
【0041】
そこで、更に、本件発明者等が、研究を行った結果によれば、チタン製カソード電極表面の結晶組織内に、いわゆる双晶が存在すると、水素吸収が速くなるとの結果が得られた。従って、結晶粒度と水素含有量とが同レベルのチタン材が存在しても、それぞれの結晶組織に含まれた双晶の存在率の差異が連続使用可能時間に影響を及ぼしている可能性が考えられるのである。双晶は、双晶境界(面)を境に鏡面対象の結晶組織が存在したものである。この双晶境界は、通常の結晶粒界に比べて、単に格子点のズレを生じた状態であり、規則性のある格子歪みを持つため低エネルギー状態にあると考えられる。このため、不規則な原子配列となる通常の結晶境界に比べ、双晶境界の格子中に対しては水素が侵入しやすく、より拡散経路となり易いため、チタンハイドライトの形成が優先的に起こるサイトとなりうると考えられるのである。このように考えれば、電解銅箔製造用のチタン製カソード電極としては、双晶の存在率が低いほど、水素吸収を遅らせ、チタンハイドライトの成長を遅らせることが出来るものと考えられるのである。
【0042】
これらのことから、請求項2には、請求項1に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極であって、チタン材の結晶組織中の双晶の存在率が20%以下である電解銅箔製造用のチタン製カソード電極としているのである。本件発明者等は、双晶の存在するチタン材において、チタンハイドライトが、どのような位置から発生しているかを調べた。現実の電解銅箔の製造でチタン製カソード電極として用いたチタン材を切り出し、そのチタン材の表層から1.5mm厚さの領域において観察した結晶組織写真を図3に示した。この図3において、双晶境界面は結晶粒内を直線且つ針状に観察できる部位であり、チタンハイドライトは微細な黒点として観察できるものである。従って、図3から分かるように、結晶組織内にチタンハイドライトが分散している状態が確認できる。ところが、双晶境界面に沿って観察すると、この双晶境界面に沿ってチタンハイドライトが発生していることが見て取れるのである。このことから、やはり双晶境界には水素が侵入しやすく、チタンハイドライトの成長基点となりやすいと考えられるのである。なお、この図3に示したチタン結晶中の双晶存在率は、約35%程度のものである。
【0043】
【表3】
【0044】
この表3には、同レベルの結晶粒度及び初期水素含有量を持ち、双晶存在率の異なるチタン製カソード電極を2000時間の現実の電解銅箔の製造に用いた後の水素含有量を測定した結果を示している。ここでは、結晶粒度番号が6.0〜6.1のチタン材を用いており、双晶の存在率の影響のみを見る事としているのである。そして、ピット発生の有無を確認したのである。この結果、双晶の存在率が20%以下の領域ではピット発生が見られず、20%を越えた領域においてピットの発生が認められたのである。このことから、チタンハイドライトの形成を抑制するためには、可能な限り双晶の存在率を低く維持しなければならず、双晶の存在率を20%以下とする必要があると考えられるのである。
【0045】
なおここで言う双晶の存在率は、一つの試料の任意の5視野を観察し、この観察視野中で確認された全結晶粒数(N)、双晶と認められる結晶粒数(Nt)とから式2により、算出された値のことである。
【0046】
【式2】
【0047】
請求項3には、回転支持軸を備えたインナードラムの外周面に円筒状のアウタースキンを嵌合したものである電解銅箔製造に用いる回転陰極ドラムであって、前記アウタースキン部は請求項1若しくは請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極である回転陰極ドラムとしている。
【0048】
現在の電解銅箔の製造には、銅を電解析出させる面にチタン材を用いた回転陰極ドラムが用いられる。電解銅箔の製造にあたり、この回転陰極ドラムは、図4に示すように、電解槽の中で、その一部が電解液中に浸漬される状態に回転支持軸で懸架されており、その回転陰極ドラムの銅の析出面となるチタン材の形状に沿って対向配置する状態で鉛系陽極が配置されている。そして、両極間に、硫酸銅溶液を流し、電解反応を利用して銅を回転陰極ドラムのチタン材表面に析出させ、この析出した銅が箔状態となり、回転陰極ドラムから連続して引き剥がして巻き取るものである。この回転陰極ドラムのカソード面を構成するチタン材をアウタースキン材と称するのである。本明細書においても、説明の都合上、「アウタースキン材」、「アウタースキン部」と称して用いる場合がある。
【0049】
回転陰極ドラムを外見から見ての形状を大まかに捉えると、回転陰極ドラムは、2つの円盤状壁部、円盤状壁部の中心部に接続する回転支持軸、及びアウタースキン部である外周壁とからなると捉えられる。現実には、図5に示すように、ステンレス鋼、炭素鋼等を用いてドラム形状としたインナードラムの外周面に円筒状としたアウタースキンを焼嵌等して製造するものである。従って、円盤状壁部は、インナードラムの円形面が外観上現れたものである。図5には、インナードラムにアウタースキンを焼嵌した後の、回転陰極ドラムの内部構成が分かりやすいように、一部のアウタースキンとインナードラムとの記載を省略している。そして、図4で示したように、2つの回転支持軸は、それぞれが軸受けに乗せられ懸架した状態で、回転陰極ドラムを回転させると共に、その回転支持軸を通してアウタースキンをカソード分極するための電流供給経路として用いる部分である。
【0050】
このアウタースキンを構成する材料として、請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極を用いたのが、請求項3に記載の回転陰極ドラムなのである。即ち、請求項3に記載の回転陰極ドラムを製造するために用いるアウタースキンは、請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極であって、板状のものを円筒状に変形加工し、その端部同士を溶接加工することで円筒状の形状として仕上げたものである。
【0051】
以上に述べたような回転陰極ドラムとすることにより、この回転陰極ドラムをカソード分極して回転させつつ、硫酸銅溶液等を電解することでチタン材で構成したアウタースキン上に銅を箔状に電解析出させ、連続的に巻き取ることで電解銅箔の製造を行うのである。このとき、請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極に用いたと同様のチタン材を用いることで電解銅箔製造用の回転陰極ドラムの長期連続使用が可能となるのである。
【0052】
以上に述べたチタン製カソード電極の結晶粒度の微細化を図ると共に、低い水素含有量を達成するためには、そこで用いるチタン材を製造するに際しても、その製造方法に関して特に留意を要する点が様々存在する。本件発明に係るチタン製カソード電極の制御すべき点は、結晶粒度、水素含有量及び双晶密度の3点である。従って、これらの点を制御して生産を行うことの出来るよう、本件発明者等は、以下の述べる製造方法に想到するに到ったのである。
【0053】
本件発明に係るチタン製カソード電極となるチタン板の製造は、端的に言えばチタンインゴットの圧延加工、及び種々の熱処理を経て行われるものであることを基礎として、以下のように考えることができる。
【0054】
この製造方法の中で、結晶粒度の調整に最も影響を及ぼす要因は、圧延加工の加工度及び熱処理の組み合わせであると考えられる。即ち、チタン材の結晶粒度の調整は、圧延加工にて変形し転位密度の上昇した結晶組織を熱処理することで、転位の消滅、再編成による回復をさせ、更に熱処理することで再結晶化を起こさせることで行うのである。
【0055】
金属の一般の性質から考えて、圧延加工時の圧下率が高く、加工度の高いものほど、高密度の転位を内蔵しており、結晶内部の歪エネルギーの高い不安定な状態にあるため、低温度域で転位の移動が起こりやすくなり、結果として回復を早め、再結晶化が起こりやすくなる。従って、結晶粒度の調整を行おうとすると、圧延加工におけるチタン材の加工度と、その加工度に応じて与える熱処理条件との組み合わせにより、最終製品であるチタン製カソード電極として用いるチタン材の結晶粒度を制御せざるを得なくなるのである。
【0056】
そして、チタン材が水素吸収の容易な材料として知られており、大気中からも水素を吸収しやすい。従って、工程の全体において、水素吸収を抑制する手段を採用することで、水素吸収量の制御を考えなければならないのである。
【0057】
更に、双晶の形成は、チタン材を室温付近で加工する際に生じる変形により形成されるものと考えられる。即ち、チタンは、その結晶軸であるC軸方向のすべり変形が困難であるため、再結晶温度以下で変形が行われた場合、その変形応力の加えられる方向とC軸とが平行となる結晶粒では、変形機構がすべりによるものではなく、いわゆる双晶変形が起こることになり、双晶の成長を促すものとなると考えられる。
【0058】
まず、請求項4には、純チタン板を熱間圧延工程で圧延チタン板とし、当該圧延チタン板に仕上げ熱処理をして、チタン材を得るための製造方法であって、熱間圧延工程は、純チタン板の圧延開始温度が200℃以上550℃未満、圧延終止温度が200℃以上であり、当該純チタン板に対する圧下率を40%以上の条件で圧延加工を行い圧延チタン板とし、この圧延チタン板の仕上げ熱処理は、熱処理炉内雰囲気を、▲1▼1kPa以下の真空状態、▲2▼露点が−50℃以上である不活性ガス置換の状態、▲3▼酸素濃度が2%〜5%の状態、のいずれかの雰囲気とし、仕上げ熱処理温度は550℃〜650℃、仕上げ熱処理時間は[圧延チタン板の板厚(t)mm]×10(分)の計算式により定まる時間以下、であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン材の製造方法としている。このカソード電極用チタン材を、請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極として使用するためには、使用するカソード電極としての形状に加工した後に、ショット状態の表面を研削する等して平滑化及び清浄化して用いるのは当然である。従って、請求項4及び以下で説明する請求項5に記載のチタン材の製造方法で得られたものは、表面を1mm程除去した状態で、水素含有量及び結晶粒度の評価を行っている。
【0059】
ここで「純チタン板の圧延開始温度が200℃以上550℃未満、圧延終止温度が200℃以上であり、当該純チタン板に対する圧下率を40%以上」という条件にしたのは、冷間領域での圧延は双晶の多大な発生を促し、且つ加工材の肉厚中心部の双晶を完全に除去するためには長時間或いは高温での焼鈍作業が必要となってくる。従って、このような現象が起こる限り、結晶粒の制御は困難を極めることとなるため、熱間領域での圧延加工を行うものとしたのである。ここで言う純チタン板とは、JIS H 4600で1種として分類されるものを用いている。また、本件明細書においては、圧延加工の終了した以降の純チタン板のことを「圧延チタン板」、仕上げ熱処理の終了した圧延チタン板を「カソード電極用チタン材」と称している。
【0060】
そして、ここで圧延開始温度と記載した理由は、次の通りである。純チタン板を所定の温度に加熱した純チタン板を圧延ロールで加工すると、圧延開始時の純チタン板が圧延ロールで冷却を受けるため、純チタン板の圧延開始時の温度と、圧延終了後の圧延終止温度とが異なるため、圧延開始時の純チタン材の温度及び圧延終了時の温度を持って製造条件を明確化するために用いたものである。更に、圧延前に行う純チタン板の所定の温度への加熱(以下、「予備加熱」と称する。)は、予備加熱時間として[純チタン板の厚さ(mm)]×1.5min/mmの式で与えられる時間を採用し、750〜850℃の温度で行うことが好ましい。この予備加熱は、純チタン板に残留した内部応力を除去し、圧延時の双晶の発生を防止することを目的としており、しかも、以下に述べる圧下率での圧延加工によって、一定の結晶粒度の圧延チタン板を製造することとの関係で最適化を図る必要があるのである。
【0061】
この圧延加工プロセスは、チタン材の板厚制御及び結晶粒度の制御を主な目的として行ったのである。従って、圧延段階で結晶粒微細化の効果を得なければならず、圧延加工の途中に再結晶化を起こす温度領域に加熱することは、最終的に結晶粒度制御を行うことを考えると、回避することが好ましい。このことから、圧延開始温度は200℃以上550℃未満の温度範囲及び後述する圧下率を規定したのである。200℃未満の温度範囲では、結晶粒微細化の効果については十分に満足するものの、圧延チタン板に残留する応力が大きくなり、歪みの影響が大きくなり板形状が悪くなる。更に、この温度範囲では、圧延加工時の負荷が大きくなり、圧延ロールの損傷が激しくなると共に、均一な圧延状態が得にくくなり、圧延後のチタン材の結晶組織の状態に不均一を生じるためである。このことから、200℃未満の温度領域に工業的な価値はないものと判断できるのである。
【0062】
これに対し、550℃という温度が、チタン材の再結晶化を起こすか否かの臨界的な温度であり、550℃を越える温度領域では、圧延途中で再結晶化を起こすことになり、結晶粒微細化効果を得にくくなり、目的とする結晶粒度7.0以上への制御が困難となるのである。特に、650℃を越える温度範囲となると、再結晶化速度が非常に速くなる領域となり、後述する仕上げ熱処理後の結晶粒径が顕著に大きくなる。上述したことは、圧延開始温度についてのみ説明しているが、圧延終止温度についても、同様に考えられ、圧延終止温度が200℃以上の温度でなければならないのである。圧延終止温度が200℃以下になると言うことは、圧延途中で加工を受けている純チタン板が200℃以下の温度になるということを意味しており、圧延開始温度を200℃以上として規定した意図を没却することとなるからである。
【0063】
そして、ここで「圧下率として40%以上」としたのは、一定レベル以上の強加工を行わないと、均一な圧延加工とすることが出来ないと共に、圧延加工による目的としたレベルでの結晶粒微細化の効果を均一に得ることが出来ないためである。この圧下率が、インゴットの状態からみて圧下率として40%以上の圧延加工がなされていないと、上述の目的を達成できないのである。圧下率とは、圧延前の材料の厚さをh1、圧延後の材料の厚さをh2とすると、[(h1−h2)/h1]×100%の式で計算されるものであるから、大きな値であればあるほど、強加工を意味するものである。
【0064】
以上のようにして得られた所定厚さのチタン板は、最終的に仕上げ熱処理が施されることになる。この仕上げ熱処理の主目的は、圧延加工により変形して加工組織となったチタン材の結晶組織を焼鈍することにより、目標の結晶粒度となる再結晶化を起こさせることにある。即ち、圧延チタン板の結晶粒度の制御は、圧延条件と、以下に説明する仕上げ熱処理の条件との組み合わせにより行われるものとなる。しかしながら、ここでは圧延条件と仕上げ熱処理の雰囲気温度とが結晶粒度に及ぼす影響を主に確認するため、仕上げ熱処理の雰囲気は大気雰囲気での加熱を行い、結晶粒度番号の測定を行った。その結果を表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
この表4から分かるように、請求項4に記載した製造条件を外れた場合の圧延チタン板の結晶粒度番号は、目的の結晶粒度番号である7.0以上とはなっていないことが分かる。また、結晶粒度番号の条件は満足しても仕上げ熱処理の終了時に圧延チタン板に矯正不能な反りを生じたのが表4の試料No.6の条件である。そして、表4中の試料No.9の条件では、製品の特徴に未再結晶と記載したように、仕上げ熱処理での供給熱量が少なく、再結晶化が起こっていないのである。これらのものは、工業的に使用できないものとして、例え結晶粒度番号が良好なものでも×判定とした。ここで圧延加工に用いた純チタン板は、幅120mm×長さ200mmで、表4に示した厚さの板材をロール圧延して、仕上げ厚さを10mmとした。圧延開始前の予備加熱は、電気炉で800℃の温度で[純チタン板の厚さ(mm)]×1.5min/mmの時間の加熱を行った。そして、予備加熱終了後、純チタン板を電気炉から取り出し、所定の圧延開始温度となった時点で圧延を開始した。圧延終了後、大気中で、表4中に記載した仕上げ熱処理条件で焼鈍を行ったのである。この表4に示した結果より、請求項4に記載した圧延加工条件の範囲が最も良好な結晶粒度を作り込めることが分かるのである。なお、表4中では、仕上げ熱処理後のチタン材の表面を1mm程度切削して現れた面での結晶粒度番号を「表面直下」の値とし、チタン材の中心部における結晶粒度番号を「肉厚中心」の値として表示している。
【0067】
仕上げ熱処理で行う焼鈍時に問題となるのは、通常の大気雰囲気中での加熱されたチタン材は、表面に厚い酸化被膜である酸化スケールを形成すると共に、条件によっては大気からの水素吸収を助長するものとなるという性質にある。
【0068】
そこで、仕上げ熱処理においては、焼鈍雰囲気をいかなるものとするかが、重要なものとなる。この焼鈍雰囲気について、本件発明者等が鋭意研究した結果、▲1▼1kPa以下の真空状態、▲2▼露点が−50℃以上である不活性ガス置換の状態、▲3▼酸素濃度が2%〜5%の状態、のいずれかの雰囲気とすることがカソード電極として用いるチタン材には最適のものであることが判明してきた。
【0069】
以下、上述した3つの要件についての説明を行うにあたり、水素含有量の制御の必要性については、上述した通りであるので、ここでは重複した説明となるため省略する。本件発明者等は、均一且つ微細な適正な酸化被膜を形成し、再結晶化の焼鈍プロセスにおける水素吸収を最低限に抑制する方法として、上述した焼鈍雰囲気とすることに想到したのである。
【0070】
上述したことから、「▲1▼1kPa以下の真空状態」としたのは、いわゆる低真空状態の雰囲気で焼鈍して、適正な酸化被膜とするための余分な酸化被膜の形成を防止し、水素吸収量を低減させるためである。ここでは、1kPa以下の真空状態としているが、より厳密には、0.01kPa以下の真空度を採用することが好ましいと言える。0.01kPa以下の真空雰囲気では、加熱中のチタン板の表面から水素が放出されるため、熱処理後の水素含有量は低くなる。ところが、0.01kPa以上の、より大気圧に近い領域では、雰囲気中の残留水分等から水素吸収が起こり、水素含有量が高くなるのである。しかしながら、本件発明においては水素含有量を35ppmのレベルに維持できれば足りるのであり、この目的を達成できる真空度を鋭意研究した結果、1kPaが臨界的意義を持つものと判断できたのである。従って、1kPaを越え大気圧に近いほど、水素吸収を起こしやすく、最終製品であるチタン製カソード電極としての水素含有量が35ppmを越えることになるのである。
【0071】
表5には、表4の試料No.4の圧延条件で圧延チタン板を製造し、真空度を変化させた雰囲気を作り、水素含有量に与える影響を調査した結果を示した。このときの圧延チタン板に含まれた水素含有量は、20ppmのものを用いている。そして、表5の仕上げ熱処理条件は、表5に記載の所定の真空度にした真空加熱炉内の雰囲気に、30mm角で厚さ10mmの試料を入れ、雰囲気温度を600℃とし、5分間の焼鈍処理を行うというものである。焼鈍終了後は、加熱を止め、室温まで炉冷し、取り出した。そして、この試料の表面を1mm程度除去し、水素ガス分析装置を用いて水素含有量を測定したのである。
【0072】
【表5】
【0073】
この表5から分かるように、真空度が0.01kPa以下の真空度では、明らかに、仕上げ熱処理後の水素含有量が減少していることが分かる。そして、1kPaを越える真空雰囲気では、本件発明の目的とするところである35ppmを越えるものとなることが裏付けられているのである。
【0074】
「▲2▼露点が−50℃以上である不活性ガス置換の状態」としたのは、大気を不活性ガスで置換し、適正な酸化被膜成長を促し、水素吸収を防止するためのものであり、特に水素吸収を最低限に抑える必要がある場合に有利な方法である。ここで言う露点が−50℃以上である不活性ガスとは、アルゴンである。このような不活性ガスを用いると、雰囲気中の水分から水素が吸収されるが、同時に酸素がチタン材の表面に保護的な酸化被膜を迅速に形成し、水素の侵入にバリア的な効果を果たすため、結果として水素吸収を防止する事になるのである。これに対して、露点が−50℃未満である不活性ガスを用いると、前述した保護的な酸化被膜の形成が行われないため、水素が容易にチタン材の内部に侵入し、水素吸収量が増加するのである。
【0075】
表6には、表5に用いたと同様の試料を用いて、不活性ガス置換の雰囲気を作り、露点が水素含有量に与える影響を調査した結果を示した。このときの不活性ガスには、アルゴンガスを用いた。アルゴンガスによる置換雰囲気を作る際には、圧延チタン板を真空加熱炉内入れ、1kPaまで減圧したところで、アルゴンガスを大気圧となるまでスローリークし、アルゴンガス中の水分を制御することで露点を変化させるものとした。そして、表5の場合に用いたと同様の条件で仕上げ熱処理を行ったのである。焼鈍終了後は、加熱を止め、室温まで炉冷し、取り出した。そして、この試料の表面を1mm程度除去し、水素ガス分析装置を用いて水素含有量を測定したのである。
【0076】
【表6】
【0077】
この表6から分かるように、露点が−50℃以上であると、圧延チタン材の表面に保護的酸化被膜が形成されるため、水素吸収が抑制されることとなり、吸収量がわずかに増加するのみであることが分かる。これに対して、露点が−50℃未満であると、水素吸収量が増加していることが明らかであり、上述したことを裏付ける結果が得られている。
【0078】
「▲3▼酸素濃度が2vol%〜5vol%の状態」とは、通常の大気中の酸素濃度が21vol%程度であることを考えれば、酸素分圧を低くした雰囲気を意味しているのである。ここで、酸素濃度が5vol%を越えると、以下で説明する焼鈍温度範囲における加熱で、酸化被膜形成が容易に起こるものとなり、水素吸収量は少ないが、余分な酸化スケールの形成が起こりやすく、表面性状が著しく劣化するものとなる。これに対して、2vol%未満の酸素濃度の範囲は、加熱による酸化膜の形成が十分ではなく、水素吸収に保護的に機能する酸化被膜形成がされず、水素吸収の容易な状態となり水素の含有量が増加するのである。特に、仕上げ熱処理を、ガスバーナー加熱で行おうとすると、未燃焼ガスからの水素吸収も問題となり、酸素濃度が2vol%未満という条件は使用できないものとなる。
【0079】
表7には、表5に用いたと同様の試料を用いて、雰囲気の酸素濃度を変化させた状態を作り、酸素濃度が水素含有量に与える影響を調査した結果を示した。ここでは、ガスバーナー加熱炉を用いて、空燃比を変化させることで炉内酸素分圧を変化させることで行った。そして、表5の場合に用いたと同様の条件で焼鈍処理を行ったのである。焼鈍終了後は、加熱を止め、試料を取り出し、室温まで放冷した。そして、この試料の表面を1mm程度除去し、水素ガス分析装置を用いて水素含有量を測定したのである。
【0080】
【表7】
【0081】
この表7から分かるように、炉内の酸素濃度が2vol%未満の場合は、圧延チタン材の表面に保護的酸化被膜を形成しないため、水素吸収を抑制することとならず、水素吸収量が増加することが分かる。一方、酸素濃度が5vol%を越えると酸化スケールの成長が大きくなり、表面の研削量等の除去を必要とする厚さが大きくなり、実用上の使用が困難となる。このことから、上述したように酸素濃度が2vol%〜5vol%の範囲が最も良好に水素吸収量を制御できる範囲となるのである。
【0082】
そして、仕上げ熱処理で用いる焼鈍温度は、仕上げ熱処理温度と称し、550℃〜650℃の範囲の温度を採用した。この仕上げ熱処理の下限温度である550℃は、チタン材の再結晶温度として考えれば、必然的に定まってくる値である。そして、上限値は、650℃以上の温度とすることも当然可能であるが、結晶粒度の制御を目的とするため、あまりにも速く再結晶化が進行する温度であると結晶粒の粗大化が起こりやすく、結晶粒度制御が困難となり、表面酸化被膜の形成及び加熱による水素吸収に与える影響が大きくなるのである。従って、制御が容易で、本件発明に見合った焼鈍作業が効率よく可能な範囲として導き出したものである。
【0083】
更に、このときの仕上げ熱処理の焼鈍時間は、仕上げ熱処理時間として[チタン板の板厚(t)mm]×10(分)の計算式により定まる時間を基準として用い、この時間以下の範囲とするのである。ここでは、下限の時間を規定していないことになる。これは、チタン材の板厚(t)に応じて仕上げ熱処理時間は定めるものであり、圧延後の結晶状態に一定のロット間バラツキが存在し、再結晶速度もロット間でバラツキが存在するものではあるが、最終的に結晶粒度が7.0以上となるように制御するのであるから、特に下限値を定義する必要性は無いものと判断したためである。前記した仕上げ熱処理時間を超える時間の加熱を行うと、結晶粒の粗大化が起こり、本件発明では用いることの出来ない結晶粒度のカソード電極用チタン板が製造されることとなるのである。
【0084】
以上のようにして製造したカソード電極用チタン板は、結晶粒度7.0以上で、且つ、水素含有量が35ppm以下となり、請求項1及びの請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極として用いることの出来るものとなるのである。そして、このチタン板を用いて、前述した請求項3に記載の電解銅箔製造用の電解ドラムの製造を行うのである。
【0085】
中でも、請求項2に記載した、結晶組織中の双晶の存在割合を20%以下に制御した電解銅箔製造用のチタン製カソード電極を製造するに当たっては、前述したようにチタン材の変形時に双晶が出現する可能性が高いと考えられ、本件発明者等の確認する限りにおいても同様の結果が研究の結果得られている。上述したように、チタンの変形では、その結晶構造の異方性から双晶変形を伴うものであるが、室温より変形温度を上げると、双晶の発生が抑制される結果、双晶密度の増加を抑制することが可能なのである。
【0086】
このことから、請求項5には、請求項4に記載した製造方法で得られたチタン材を所望の形状に矯正加工する方法であって、当該矯正加工は、当該チタン材を50℃〜200℃の温度領域で矯正変形することを特徴とするカソード電極用のチタン材の矯正加工方法としている。「矯正加工」とは、仕上げ熱処理が終了したチタン材の反り、捻れを平面上に矯正する作業、チタン材を、電解銅箔製造に用いる電解ドラムの外周壁形状とする変形加工等を包含する概念として記載している。
【0087】
ここで「チタン材を50℃〜200℃の温度領域で矯正変形する」としているが、これはチタン材自体の温度が均一で平衡温度となった状態で矯正変形することを意味しているものであり、チタン材を単に当該温度領域の雰囲気中に入れ、チタン材の外部温度と内部温度に温度差のある状態での矯正変形を意味するものではない。
【0088】
表8には、矯正加工時の加熱温度が双晶の発生に与える影響を調査した結果を示している。ここでは、元々の素材に含まれた双晶の影響を除外して考えるため、表5の試料No.4の圧延条件で幅500mm×長さ1m×厚さ10mmとした圧延チタン板を、矯正加工前に650℃×30分の熱処理をして、加工変形により導入された可能性のある双晶を消去したものを試料として用いた。
【0089】
【表8】
【0090】
双晶を除去するための熱処理を行った試料は、表8に示す各加熱温度で30分間加熱保持し、その後ローラーレベラーを通板させることで矯正加工を行った。そして、矯正加工後の圧延チタンから、20mm角の試料片を採取し、この試料片の表面を約1mm厚さ分除去し、その面をエッチングし、上述したと同様の方法で、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で双晶を観察したのである。
【0091】
表8に示した結果から分かるように、「雰囲気温度が50℃〜200℃」としたのは、50℃未満の温度の場合には、双晶密度の増加が著しく、請求項2に記載したようにチタン材の結晶組織中の双晶の存在割合を20%以下に制御することが出来ないからである。これに対して、200℃を超える温度に加熱すると、双晶の発生も少なく、矯正加工自体は容易になってくるが、矯正後に残留応力の解放が生じるため、矯正後に反りが生じ、矯正効果を得ることは出来ないものとなっている。従って、上述の温度範囲を採用するものとしたのである。
【0092】
【発明の実施の形態】
以下、カソード電極用チタン材を圧延工程、仕上げ熱処理、矯正加工を行い電解銅箔用の回転陰極ドラムを製造した過程を実施形態として示し、当該回転陰極ドラムを用いて電解銅箔を連続製造した結果について説明する。
【0093】
最初に純チタン板の圧延工程について説明する。幅1450mm×長さ1600mm×厚さ45mmの純チタン板を、加熱炉で700℃の温度で、100分間加熱し、500℃の圧延開始温度でロール圧延機で圧下率83%の圧延加工を行った。このときの圧延終止温度は270℃であった。このときの純チタン板に元々含まれていた水素含有量は、20ppmであった。
【0094】
この圧延チタン板は、仕上げ熱処理炉内に入れ、熱処理炉内ではガスバーナー加熱を採用し、ガスバーナーの空燃比を調節することで酸素含有量が3vol%の雰囲気とし、仕上げ熱処理温度630℃、仕上げ熱処理時間として[圧延チタン板の板厚(tmm)]×10min/mm=7.5mm×10=75分以下の時間である40分の条件で仕上げ熱処理を行った。このようにして、電解銅箔製造に用いる板状のカソード電極用チタン材を得たのである。
【0095】
上述した仕上げ熱処理の終了した段階で、この板状のカソード電極用チタン材に生じた歪みを矯正し、平坦な板状態とするため、200℃の温度に加熱したカソード電極用チタン材を、ローラーレベラーを用いて平坦な板状に矯正加工を行った。この矯正加工の後に、トリミング処理を施すことで、幅1370mm×長さ8500mm×厚さ7.5mmの圧延チタン板として仕上げた。この段階で得られたカソード電極用チタン材の結晶粒度は7.5であり、水素含有量は30ppm、光学式金属顕微鏡で観察場所を変えて10点の結晶組織観察を行ったが、双晶の存在率は3%であった。
【0096】
次に、当該カソード電極用チタン材を円筒状のアウタースキンとする加工を行った。円筒状にするには、板状のカソード電極用チタン材を曲げ加工し、相互に接触することとなるカソード電極用チタン材の端部同士を溶接することにより行った。このときの溶接は、結晶粒径の変化を最小限にくい止めるため、溶接時間を可能な限り短縮する必要がある。このため、短時間溶接の可能なプラズマ溶接を用いた。
【0097】
続いて、このアウタースキンを所定の温度に加熱し、予め用意していた外周壁面の外径2700mmの回転支持軸を備えたインナードラムに焼嵌めすることで、アウタースキンとインナードラムを嵌着し、電解銅箔製造用の回転陰極ドラムを製造した。
【0098】
本件発明者等は、従来より用いられてきた結晶粒度5.8,水素含有量40ppm、そして双晶の存在率25%のチタン製カソード電極よりなるアウタースキンを用いた電解銅箔製造用の回転陰極ドラムを、現実の銅箔製造の場で使用した結果と対比することで、上述の回転陰極ドラムの効果を説明する。なお、回転陰極ドラムの表面状態を見る方法としては、熟練した作業者が、回転陰極ドラムのアウタースキンの表面形状のレプリカといえる電解銅箔の光沢面を目視で観察し、銅箔表面にある突起の場所を特定し、その部位を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認しながら行ったものである。
【0099】
本実施形態に係るチタン製カソード電極材を用いた回転陰極ドラムを連続使用していく過程において、アウタースキンにピットが発生したと判断したのは、使用開始後123日経過後であり、公称厚さ18μmの電解銅箔の製造が不可能と判断するまでは197日であった。これに対して、従来より用いていた回転陰極ドラムの場合は、ピット発生までは65日、公称厚さ18μmの電解銅箔の製造が不可能と判断するまでは98日であった。このことから判断するに、本実施形態に係るチタン製カソード電極材を用いた回転陰極ドラムは、従来の回転陰極ドラムに比べ、極めて長期に渡っての電解銅箔製造が連続して可能であると言えるのである。
【0100】
【発明の効果】
本件発明に係る製造方法で得られるカソード電極用のチタン材を電解銅箔製造のチタン製カソード電極として用いるか、或いは回転陰極ドラムに加工して用いることで、3000時間以上の連続した電解銅箔製造に用いた後も、光沢面の形状の安定性に優れた電解銅箔の製造が可能となる。このようにして製造された電解銅箔を用いて、製造した銅張積層板であって、表面の整面処理として物理研磨を行うことなく、液体レジスト等の薄いレジスト層を形成する場合、銅箔の光沢面に突起等の異常析出部がないため、レジスト層が均一に形成でき、露光均一性も向上することで露光ボケを無くし、ファインピッチ回路のエッチング加工が容易となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタン製カソード電極の表面状態を表した図。
【図2】水素吸収実験においてビーカー内に沈殿した黒色異物を濾取したときの濾紙を観察した図。
【図3】水素化物の形成されたチタン材の結晶組織。
【図4】電解銅箔の製造に用いる電解装置の概念図。
【図5】回転陰極ドラムを表した概念図。
Claims (5)
- 銅電解液を用いて電解銅箔を得る際に用いるチタン材からなるチタン製カソード電極であって、
チタン材は、結晶粒度番号7.0以上であり、且つ初期水素含有量が35ppm以下であることを特徴とする電解銅箔製造用のチタン製カソード電極。 - 請求項1に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極であって、
チタン材の結晶組織中の双晶の存在率が20%以下である電解銅箔製造用のチタン製カソード電極。 - 回転支持軸を備えたインナードラムの外周面に円筒状のアウタースキンを嵌合したものである電解銅箔製造に用いる回転陰極ドラムであって、
前記アウタースキン部は請求項1若しくは請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極である回転陰極ドラム。 - 純チタン板を熱間圧延工程で圧延チタン板とし、当該圧延チタン板に仕上げ熱処理をして、チタン材を得るための製造方法であって、
熱間圧延工程は、純チタン板の圧延開始温度が200℃以上550℃未満、圧延終止温度が200℃以上であり、当該純チタン板に対する圧下率を40%以上の条件で圧延加工を行い圧延チタン板とし、
この圧延チタン板の仕上げ熱処理は、熱処理炉内雰囲気を、▲1▼1kPa以下の真空状態、▲2▼露点が−50℃以上である不活性ガス置換の状態、▲3▼酸素濃度が2%〜5%の状態、のいずれかの雰囲気とし、仕上げ熱処理温度は550℃〜650℃、仕上げ熱処理時間は[圧延チタン板の板厚(t)mm]×10(分)の計算式により定まる時間以下、であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の電解銅箔製造用のチタン製カソード電極に用いるチタン材の製造方法。 - 請求項4に記載した製造方法で得られたチタン材を所望の形状に矯正加工する方法であって、
当該矯正加工は、当該チタン材を50℃〜200℃の温度領域で矯正変形することを特徴とするチタン製カソード電極用チタン材の矯正加工方法。
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