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JP4371565B2 - 石英ガラス前駆体及びその製造方法 - Google Patents

石英ガラス前駆体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石英ガラス前駆体及びその製造方法に関する。詳しくは、新規の石英ガラス前駆体とその製造方法及び該前駆体を用いた石英ガラスの製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリコン単結晶の引き上げ用ルツボの内張り材、半導体製造工程で使用される炉心管や治具、あるいは光ファイバーの外部クラッド等に高純度の石英ガラスが使用されている。これらの石英ガラスには、高純度であることは勿論のこと、内部シラノール基が少なく加熱溶融した際の粘性(以下、高温粘性という。)が高いこと及び気泡含有率が低いことなどが求められている。従来、高純度の天然石英粉末が主に使用されていたが、更に高い純度が求められる用途には、メチルシリケート等のアルコキシシランを加水分解して製造される、いわゆるゾルーゲル法による合成石英ガラス粉末などが使用されている。
【0003】
一方、米国特許第4,042,361号明細書には、ヒュームドシリカを原料に用いてシリカゾルを調製し、これを破砕片を生じるように乾燥した後、焼成してシリコン単結晶の引き上げ用ルツボ等に使用するための高純度の石英ガラスを得る試みが記載されている。
【0004】
また、特開平11−171558号公報には、光ファイバーのプリフォームの製造方法として、ヒュームドシリカのスラリーを型枠の中でゲル化させた後にゲル体を押し出し、乾燥・焼結してプリフォームとする方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のゾルーゲル法による石英ガラス粉末は、高純度であるものの、高温粘性に影響を与えるシラノール基の濃度が高く高温粘性が低いこと、アルコキシシランを原料とするため残留カーボン濃度が高いこと、更に原料が高価で且つ製造プロセスが複雑なため製造コストが非常に高いという問題があった。また、シラノール基の濃度が高かったり、残留カーボン濃度が高かったりした場合は、石英ガラス粉末の内部に気泡が発生し易くなるため、石英ガラスを製造した際に気泡が抜けずに発泡したり、石英ガラスの高温粘性を低下させることも懸念される。特に石英ガラス内部の気泡の問題は深刻で、特許第3026088号公報には、石英ルツボ内表面近傍に気泡が含まれる場合、単結晶引き上げ時の加熱により気泡が膨張し、このため石英ルツボ内表面から石英片が剥離して溶融シリコン中に混入し、単結晶化を妨げる原因となることが記されている。また、このため石英ガラス粉末中の気泡の多寡は、石英ルツボ用途においては極めて重要な品質管理項目となっている。
【0006】
一方、ヒュームドシリカを水等の極性溶媒中に分散させたシリカスラリーを経由して、石英ガラスを製造する場合には、シラノール基の濃度は低くできるものの、気泡が抜けにくく石英ガラス内部に多数の気泡が残ってしまうこともあった。また、生産性を向上させるためには、そのような分散性に優れたシリカスラリーを高濃度で製造することが重要で、更に、特開平11−171558号公報に記載のような型枠に入れて成形体を製造する際には、シリカスラリーの濃度が低い場合は、スラリーを乾燥させた時のゲルの収縮率が大きく、ゲルが割れ易いと言う問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねてきた。その結果、アルコキシシランと同様に極めて純度の高いシリカ原料として、四塩化ケイ素等のシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて製造されるヒュームドシリカに着目した。該ヒュームドシリカを特定の分散状態のスラリー状態を経て乾燥させることによって、特定の細孔分布を有する石英ガラス前駆体が得られ、その石英ガラス前駆体を焼成することによって、シラノール基の濃度が低く高温粘性が高く、高純度で気泡の少ない石英ガラスが低コストで得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ヒュームドシリカよりなる多孔体であって、水銀ポロシメーターで測定した全細孔容積が0.1〜1cc/gの範囲であり、且つ、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積が全細孔容積の10%以下であることを特徴とする石英ガラス前駆体である。
【0009】
更に本発明は、ヒュームドシリカと極性溶媒とを含む、分散指数(n値)が2.8以上のシリカスラリーを調製し、該シリカスラリーを乾燥させることを特徴とする前記の石英ガラス前駆体の製造方法、及び前記石英ガラス前駆体を焼成することを特徴とする石英ガラスの製造方法をも提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の石英ガラス前駆体は、ヒュームドシリカよりなる多孔体である。本発明においては、ヒュームドシリカを用いることが重要である。ヒュームドシリカは、高純度の四塩化ケイ素等のガスを原料としており、極めて高純度のものを容易に入手することができるので、高純度の石英ガラス前駆体を容易に得ることができる。また、石英ガラス前駆体から粉末状の石英ガラスを製造する場合、平均粒子径を調節する必要があるが、ヒュームドシリカの平均一次粒子径は7nm〜50nmの範囲にあり非常に微粒子であるので、本発明の石英ガラス前駆体は、粉砕が極めて容易であり粉砕機からの汚染を容易に防止でき、且つ石英ガラス粉末の粒度分布を制御し易いという特徴も有している。
【0012】
本発明の石英ガラス前駆体は、水銀ポロシメーターで測定した全細孔容積が0.1〜1cc/gの範囲であることが重要である。全細孔容積の好ましい範囲は、0.2〜1cc/g、さらに好ましくは0.3〜1cc/gである。全細孔容積が0.1cc/g未満の場合は石英ガラス前駆体を高温で焼成して石英ガラスとする際に、水蒸気等のガスの逃げ道が無くなり、気泡が発生したり、シラノール基濃度が高い石英ガラスが生成することなども懸念される。一方、全細孔容積が1cc/gを超えた場合は、高温で焼成して石英ガラス粉末を製造する際に気泡が残り易くなる傾向にある。即ち、石英ガラス前駆体の全細孔容積を上記範囲に調節することによって、シラノール基が少なく、気泡の発生のない緻密な石英ガラスを得ることができる。
【0013】
更に本発明の石英ガラス前駆体は、水銀ポロシメーターで測定したときに、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積が全細孔容積の10%以下、好ましくは7%以下であることが重要である。
【0014】
0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の全細孔容積に占める割合が上記範囲を超えると、前駆体を焼成して石英ガラスを製造した際に石英ガラスの内部に気泡が発生しやすい。石英ガラス中にこのような気泡が存在すると、該石英ガラスを溶融させて石英ガラス製品を製造する際にも気泡として残る場合があるため、問題となる。特に、前述した如く、シリコン単結晶の引き上げ用ルツボの内張り等に使用した場合は、単結晶引き上げ時に上記気泡が破裂し、シリコン単結晶の品質を低下させる。
【0015】
次に、本発明の石英ガラス前駆体の製造方法を各工程毎に詳細に説明する。
【0016】
本発明の石英ガラス前駆体を製造するには、まずヒュームドシリカと極性溶媒とを含むシリカスラリーを調製する。なお、ここで言うシリカスラリーとは、流動性のある液状のものは勿論、ゼリー状の半固体状のものでも良い。
【0017】
ヒュームドシリカとしては、比表面積が50〜400m2/gの範囲のものが入手可能であるが、どの比表面積のものも特に制限無く使用できる。また、比表面積の異なる二種類以上のシリカを混合して使用することもできる。
【0018】
極性溶媒としては水が好適であるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類や前記水とアルコール類の混合溶媒であっても良い。
【0019】
シリカスラリーは、ヒュームドシリカが一次粒子近くまで微分散していることが極めて重要である。シリカの分散状態は、分散指数(n値)で表わすことができ、分散指数(n値)が2.8以上、好ましくは3.0以上のシリカスラリーを調製することが望ましい。即ち、n値が2.8未満の場合は、シリカスラリー中のヒュームドシリカの分散状態が不十分であるが故に、該スラリーを乾燥させて石英ガラス前駆体を製造した場合には、全細孔容積が大きくなったり、直径0.1μm以上の細孔の比率が増加する傾向があり、そのために前記前駆体を焼成した場合に気泡を含んだ石英ガラスができてしまう場合がある。一方、n値が2.8以上であれば、本発明の要件である細孔容積と細孔分布の範囲を満たした石英ガラス前駆体を得ることができ、該前駆体を用いて石英ガラスを製造した際にも気泡の少ない石英ガラスが得られる。
【0020】
上記n値は、Journal of Ceramic Society ofJapan 101[6]707−712(1983)に記載の方法に準じて、市販の分光光度計を用いてシリカスラリーのスペクトルを測定することにより求めることができる。具体的に説明すると、まず、光路長10mmのセルを用い、参照セルと試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、460〜700nmの波長範囲にわたってゼロ点校正を行う。次に、シリカの濃度が1.5重量%になるようにシリカスラリーをイオン交換水で希釈し、試料セルに該濃度調整されたシリカスラリーを入れて波長(λ)460〜700nmの範囲の吸光度(τ)を測定する。このとき、シリカスラリーは、高濃度である場合、スラリー調製後放置していると、ゼリー状の半固体状となる場合が多いので、スラリー調製後、直ちに希釈して吸光度測定に供する。
【0021】
次に、log(λ)とlog(τ)をプロットし、下記式(1)
τ=α・λ-n (1)
(ここで、αは定数)
を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求める。この時のnの値が分散指数である。上記τの測定点の数は6点以上、好ましくは20点以上と多くとる方がnの精度が向上するために好ましい。なお、上記n値はスラリー中のシリカの分散状態を示す指標で、シリカの分散状態に優れたものほど上記n値が高くなる。
【0022】
シリカの分散状態の優れたシリカスラリーを調製する手段としては、ヒュームドシリカと極性溶媒よりなるスラリーを湿式粉砕する方法を挙げることができる。
【0023】
湿式粉砕の方法は特に限定されない。n値が2.8以上となるように、ヒュームドシリカが極性溶媒中に微分散する方法であれば採用可能である。例えば、プロペラ式ミキサー、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、摩砕機などの公知の湿式粉砕や解砕・分散が可能な装置を用いることができる。
【0024】
なお、本発明の方法では、上記工程でスラリーが金属不純物によるコンタミを受けないことが望ましい。スラリーがコンタミを受けると石英ガラス前駆体の純度が低下する可能性がある。そのような意味から、接液部は樹脂やセラミックスもしくはそれらでコーティングした部材を使用した装置が好適である。
【0025】
シリカスラリー中のシリカ濃度は特に限定されないが、シリカ濃度は高い方が生産性に優れている。また、次の工程では、シリカスラリーを乾燥させる必要があるが、シリカ濃度が高いほど乾燥工程での負担が軽くなり、好ましい。該シリカ濃度としては、15重量%以上、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは35重量%以上である。15重量%以上の場合には、乾燥時間が短く、更に生産性やエネルギー効率も良いというメリットがある。
【0026】
なお、上記のシリカ濃度の上限値は、用いるシリカの種類(比表面積値)に大きく依存する。即ち、比表面積の小さな(一次粒子径の大きな)ヒュームドシリカほど、高いシリカ濃度のスラリーが得易い傾向にある。よって、現在入手可能なヒュームドシリカの中では、50m2/gのものが、最も高いシリカ濃度のスラリーが得られ、同時に生産性が高いと言える。比表面積が50m2/gのヒュームドシリカを用いた場合には、50重量%以上、好ましくは55重量%以上のシリカ濃度のスラリーを得ることができるので好ましい。
【0027】
上記シリカスラリーを型枠の中に入れて石英ガラス前駆体の成形体を製造する場合は、上記のように50m2/gのヒュームドシリカを用いて55重量%以上の高濃度のスラリーを経由して製造するのが最も好適である。シリカ濃度が55%以上と高く、更に前述したようにn値が2.8以上のシリカスラリーとすることによって、乾燥時の前駆体の収縮が抑えられ、欠けやひび割れなどの発生を効果的に防止できる。
【0028】
上述したような、生産性が高く、粉砕(分散)性能に優れ、特にコンタミが少なく、更に高濃度のシリカスラリーを容易に製造可能な装置としては、高圧ホモジナイザー(例えば、商品名:ナノマイザー、ナノマイザー(株)製)や摩砕機(例えば、商品名:スーパーマスコロイダー、増幸産業(株)製)等を好適に採用できる。特に、スーパーマスコロイダーは、接液部にSiC砥石を用いた場合、コンタミが少なく、35重量%以上の高濃度のシリカスラリーを効率良く生産できるので本発明に最適である。
【0029】
なお、シリカが微分散した固形分濃度の低いシリカスラリーを徐々に乾燥させて高濃度化する方法も採用できる。
【0030】
なお、上記の湿式粉砕の工程では、ヒュームドシリカと極性溶媒以外に、各種の添加剤を加えることができる。例えば、シリカの安定性や分散性を上げるために、酸やアルカリなどのpH調整剤、各種の塩類、分散剤や界面活性剤、水溶性高分子等を加えることができる。本発明の石英ガラス前駆体は、石英ガラス粉末にするために高温で焼成するため、揮発性及び/または燃焼可能な化合物であれば、特に制限無く添加できる。例えば、ヒュームドシリカの分散性を向上させたり、乾燥後の石英ガラス前駆体の硬さを制御するために、アンモニアやアミンを添加するのは好ましい態様の一つである。また、PVA等の水溶性高分子や界面活性剤を添加して石英ガラス前駆体を粉砕し易くすることもできる。
【0031】
次に、本発明の方法では、上記シリカスラリーを乾燥させて石英ガラス前駆体を製造する。
【0032】
乾燥方法は特に限定されず、例えば自然乾燥であっても良い。工業的には各種の乾燥機が使用可能で、例えば、蒸気乾燥機、送風乾燥機、熱風送風乾燥機、真空乾燥機、コンベア式乾燥機、コニカル式乾燥機、ロータリーキルン、スプレードライヤーなども使用可能である。
【0033】
乾燥時間及び乾燥温度は特に限定されない。乾燥時間は数時間〜数日間の範囲、乾燥温度は室温〜数百℃の範囲から選択すれば良い。極性溶媒として水を用いた場合、工業的には、シリカスラリーが突沸するのを避けるために100℃前後の温度で数〜数十時間乾燥させて一旦ほとんどの水分を取り除いた後、150〜300℃の範囲の温度で数〜数十時間、更に残留している水分を取り除いて乾燥させるのが良い。なお、上記の乾燥を急激に行った場合には、石英ガラス前駆体の内部に比較的大きな気泡が発生し、最終的に製造した石英ガラス中にも気泡が残留することが懸念される。したがって、上記乾燥工程では、石英ガラス前駆体内部に気泡が発生しないように、ゆっくりと乾燥することが好ましい。
【0034】
本発明の石英ガラス前駆体は、粉砕した後に焼成することにより高純度で内部の気泡が少なく、更にシラノール基濃度の低い石英ガラス粉末とすることができる。
【0035】
実用的な石英ガラス粉末の平均粒子径は、1〜1000μmの範囲、好ましくは30〜700μm、更に好ましくは50〜500μmの範囲であるので、石英ガラス前駆体をほぼこの範囲となるように粉砕する。
【0036】
石英ガラス前駆体の粉砕方法は、特に限定されない。各種の乾式の粉砕手段を用いても良いし、湿式粉砕した後に再度乾燥させても良い。乾式法の方が再度乾燥させる必要がないため工業的には有利である。
【0037】
代表的な粉砕機としては、自動乳鉢、ボールミル、ロールミル、振動ミル、ピンミル、ディスクミル、摩砕機、気流粉砕機などの公知の粉砕装置が使用できる。上記の中で不純物の汚染が少なく目的の平均粒子径が得られる粉砕装置を使用すれば良い。更に前述した平均粒子径に揃えるためには篩等で選別することができる。
【0038】
本発明による石英ガラス前駆体は、元々微粒子のヒュームドシリカを水で固めただけなので、比較的軟らかく、粉砕し易いという利点がある。したがって、上記平均粒子径に調整するための粉砕機には、テフロン等のポリマー製の粉砕機やポリマーコーティングした粉砕機も使用可能である。
【0039】
本発明の石英ガラス前駆体を上述したように粉砕した粉末は、1000〜1400℃の範囲の温度で焼成することによって緻密な石英ガラス粉末に変換することができる。上記温度で焼成することによって、原料であるヒュームドシリカの一次粒子が焼結し、緻密な石英ガラスとなる。1000℃未満では緻密な石英ガラスが得られない場合があり、1400℃を超えると石英ガラス粉末同志が癒着してしまう場合がある。上記焼成には、電気炉等を使用することができる。なお、焼成時の雰囲気としては、酸素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、塩素、真空などが採用できる。特に、数%の塩素や塩化チオニル等の塩素系ガスを含む不活性ガス雰囲気中で焼成した場合には、石英ガラス粉末より金属不純物を除去する効果があり、本発明を実施する上で極めて好ましい。更に上記の塩素系ガスの処理は、石英ガラス前駆体中のシラノール基の濃度を低減できるため、本発明を実施する上で極めて好ましい。
【0040】
以上のようにして製造される本発明の石英ガラス粉末は、内部にほとんど気泡を持たないため、本発明の石英ガラス粉末を用いて石英ガラス製品を製造した際に泡が発生しない。更に、本発明の石英ガラス粉末は石英ガラスの高温粘性を低下させるシラノール基濃度が極めて低い。
【0041】
ところで、本発明においては、シリカスラリーを型枠に流し込んで特定の形の成形体を作ることも可能である。本発明の方法によれば、分散状態の優れたヒュームドシリカのスラリーを高シリカ濃度で製造できるので、乾燥後の石英ガラス前駆体が割れを生じ難い。そのようにして作った石英ガラス前駆体を1000〜1600℃の温度で焼成することによって、透明な石英製品を作ることができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の石英ガラス前駆体は、原料としてヒュームドシリカを用いており、特定の細孔容積及び細孔分布を有しているので、これを焼成することにより、高純度で内部に気泡が少なく、更にシラノール基濃度の低い石英ガラス粉末を低コストで製造することができる。また、上記石英ガラス粉末を使用すると、高純度且つ高温粘性に優れた石英ガラスを製造することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
(試験方法)
1.平均粒子径
石英ガラス粉末の平均粒子径は、ベックマン・コールター製、LS−230を用いて測定した。
【0045】
2.分散指数(n値)の測定
シリカスラリーのスペクトルは、分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セルと試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、スラリー調製直後のシリカスラリーをシリカの濃度が1.5重量%になるようにイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈液を入れて波長(λ)460〜700nmの範囲の吸光度(τ)を1nm毎に241個測定した。log(λ)とlog(τ)をプロットし、下記式(2)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。この時のnを分散指数とした。
【0046】
τ=α・λ-n (2)
(ここで、αは定数)
【0047】
3.全細孔容積の測定
石英ガラス前駆体の全細孔容積の測定には水銀ポロシメーター(Quantachrome社製、Poremaster−60)を用いた。
【0048】
また、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の全細孔容積に占める割合は、上記水銀ポロシメーターにより測定された、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積及び全細孔容積から算出した。
【0049】
4.石英ガラス粉末の屈折率の測定
純水(屈折率:nD 25=1.33)及びグリセリン(nD 25=1.47)を用いて、それぞれ石英ガラス粉末の濃度が5重量%のスラリーを作り、次にそれぞれのスラリーを適当な比率で数種類混合した。続いて、該混合液の波長593nmにおける吸光度を分光光度計を用いて測定し、更に該混合液の波長593nmにおける屈折率をアッベの屈折率計を用いて測定した。なお、吸光度と屈折率は25℃で測定した。
【0050】
上記で測定した吸光度を屈折率に対してプロットし、吸光度が最小となる屈折率の値を求め、上記最小値を取るときの屈折率を当該石英ガラス粉末の屈折率とした。
【0051】
5.石英ガラス粉末中の気泡の多寡
純水とグリセリンを用いて、石英ガラスの屈折率と若干ずらした屈折率1.42の混合液を調整し、その中に石英ガラス粉末を浸漬した。石英ガラス粉末の入った混合液をプレパラート上に展開し、光学顕微鏡を用いて各粉末中の気泡の多寡を観察した。
【0052】
6.石英ガラス粉末の内部シラノール基濃度の測定
特開平2−289416号公報に記載の測定方法に準じて、赤外吸収スペクトルを測定することによって石英ガラス粉末中の内部シラノール基濃度を測定した。具体的には、前処理として各石英ガラス粉末は100℃の乾燥器中で一昼夜乾燥し、フーリエ変換赤外分光光度計(バイオラッド社製、FTS−7)を用い、拡散反射法により赤外吸収を測定した。内部シラノール基の吸収位置である3680cm-1付近のピークの面積を求め、上記面積の値を相対比較することにより、石英ガラス粉末の内部シラノール基濃度の尺度とした。
【0053】
実施例1
(石英ガラス前駆体の製造)
比表面積が200m2/gのヒュームドシリカを固形分濃度が40重量%になるように純水と混合した。上記混合物は固形分濃度が高いため、液状ではなく粉状であった。水と粉が均一に混ざり合うまで、テフロン棒を用いて攪拌と混練を繰り返した。上記混合物は、嵩が元のヒュームドシリカと比べると約1/2に減少したが、性状は粉末のままであった。
【0054】
次に、スーパーマスコロイダー(増幸産業製)を用いて上記粉末を粉砕処理した。粉砕条件は、ディスクの直径が250mm、ディスクとディスクの間隙が200μm、ディスクの回転数が1800rpmであった。なお、ディスクには46メッシュのSiC粉末を樹脂バインダーで固めた無機有機複合材よりなる砥石を使用した。上記の粉砕処理によって、原料粉末は流動性のあるスラリー状となった。なお、該スラリーは1時間以内にゲル化し流動性を失ったが、該スラリーの体積は元のヒュームドシリカの嵩に比べると約1/10まで低下していた。
【0055】
上記の粉砕直後のシリカスラリーの一部をサンプリングし、直ちにシリカ濃度が1.5重量%になるように純水で希釈した。純水で希釈することによってシリカスラリーのゲル化は起こらなかった。上記希釈スラリーを用いてn値を測定したところ4.7であった。
【0056】
続いて、上記の固形分濃度が40重量%のヒュームドシリカのスラリーを石英ガラス製のバットに入れて送風乾燥機に仕込み、100℃で24時間乾燥させた後、更に180℃で24時間乾燥させて石英ガラス前駆体を得た。
【0057】
上記石英ガラス前駆体の全細孔容積を水銀ポロシメーターで測定した結果を図1に示す。
【0058】
上記測定のデータより、全細孔容積は0.91cc/g、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積は全細孔容積の1.6%であった。
【0059】
(石英ガラス粉末の製造)
次に、上記前駆体をセラミックス製のロールミルを用いて粉砕し、続いてポリエチレン製の篩を用いて粗粉と微粉を取り除いた。粗粉用には目開き420μm、微粉用には目開き149μmの篩を用いて、150〜420μmの範囲の粉末を分取し、粒度分布を調整した。
【0060】
続いて、上記粒度分布を調整した前駆体粉末を石英製のルツボに入れ、電気炉を用いて1350℃で10時間焼成して石英ガラス粉末を作製した。なお、そのときの昇温速度は800℃までは7℃/min、それ以降は0.75℃/minであった。冷却後、該粉末を取り出し、その物性を調べた。なお、焼成後の粉末は真っ白であった。
【0061】
上記粉末の平均粒子径は約250μmであった。該粉末を光学顕微鏡で観察したところ、粒子の形状は不定形であった。走査型電子顕微鏡で上記粉末の表面を観察した結果、元のヒュームドシリカの一次粒子は観察されず、滑らかな表面であった。上記粉末の屈折率は、1.46、真密度は2.20g/cm3、BET比表面積は、0.4m2/g、であった。また、上記粉末をX線回折装置で分析したところ、結晶性のピークはなく、非晶質であることがわかった。よって、無孔質で緻密な石英ガラス粉末であることが確認できた。
【0062】
更に上記粉末を光学顕微鏡で観察したところ、粉末内部に気泡を含んでいる粒子はほとんど見られなかった。また、上記粉末の内部シラノール基濃度を測定した結果を表1に示すが、内部シラノール基は少ないことがわかった。
【0063】
以上のことから、本実施例で製造した石英ガラス粉末は粒子内部にほとんど気泡を含まず、シラノール基濃度も極めて低いものであることがわかる。
【0064】
比較例1
(石英ガラス前駆体の製造)
内容積約4リットルのジャケット付き反応器に純水900gを仕込んだ後、テフロン製の羽根を用いて20rpmで攪拌した。ジャケットに恒温水を循環することにより、反応器内の温度を45℃に保ちつつ、該反応器にテトラメトキシシラン1520gをゆっくりと添加した。その後、テトラメトキシランと水とが混ざり合い、均一なゾルとなったところで攪拌を停止し、内容物を30分間静置した。数十分後に内容物はゲル化した。上記ゲルを反応器より取り出し、風乾後、送風乾燥機に仕込み180℃で24時間乾燥させて石英ガラス前駆体を得た。
【0065】
該前駆体の全細孔容積を測定したところ、0.04cc/gと非常に小さかった。なお、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積は全細孔容積の56%であった。
【0066】
(石英ガラス粉末の製造)
石英ガラス前駆体を実施例1と同様にして粉砕し、続いて篩い分けすることによって該前駆体粉末を作った。
【0067】
続いて、実施例1と同様にして、上記篩い分けした前駆体粉末を石英製のルツボに入れ、電気炉を用いて1350℃で10時間焼成して石英ガラス粉末を作製した。冷却後、該粉末を取り出し、その物性を調べた。その結果、実施例1では見られなかった黒い粒子がかなり多く見られた。上記黒い粒子は、アルコール等の有機物の残留物がシリカ粒子内部で炭化したものと考えられる。
【0068】
上記の黒い粒子を取り除いて以下の実験に供した。石英ガラス粉末の平均粒子径は約250μmであった。該粉末を光学顕微鏡で観察したところ、粒子の形状は不定形で、X線回折装置で分析したところ、結晶性のピークはなく、非晶質であることがわかった。
【0069】
上記石英ガラス粉末を光学顕微鏡で観察したところ、実施例1に比べて粒子内部に不透明な部分を多く含んでいることがわかった。一つは気泡であり、もう一つ有機物の残留物が炭化したものと考えられる。また、石英ガラス粉末の内部シラノール基濃度を測定した結果、実施例1に比べて内部シラノール基も多いことがわかった。
【0070】
比較例2
(石英ガラス前駆体の製造)
比表面積が200m2/gのヒュームドシリカを20重量%になるように純水と混合し、テフロン製の羽根のついたプロペラミキサーを用いて500rpmで約10分間混合することによってスラリーを調製した。
【0071】
上記スラリーのn値は2.5であった。
【0072】
続いて、実施例1と同様にして乾燥させて石英ガラス前駆体を得た。
【0073】
上記石英ガラス前駆体の全細孔容積を水銀ポロシメーターで測定したところ表1の結果が得られた。即ち、原料となるスラリーのn値が低い場合、つまりシリカの分散状態が悪い場合は、全細孔容積が1cc/gを超え、更に0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の全細孔容積に占める比率も10%を超えた。
【0074】
(石英ガラス粉末の製造)
引続き、実施例1と同様にして、粉砕、篩い分け、焼成を行った。
【0075】
できた石英ガラス粉末の平均粒子径は約250μmであった。
【0076】
比較例1のような黒点は全く生成せず、見た目には実施例1と同じ粉末が得られた。石英ガラス粉末の内部シラノール基の濃度は実施例1と比較しても遜色は無かったが、粒子内部に気泡を含んだ粒子が実施例1に比べるとやや多いことが確認された。
【0077】
実施例2
(石英ガラス前駆体の製造)
比表面積が50m2/gのヒュームドシリカを用いた以外は実施例1と同様にして石英ガラス前駆体を製造した。なお、シリカを分散するときの固形分濃度は55重量%で実施した。このときのシリカスラリーのn値は3.0であった。
【0078】
(石英ガラス粉末の製造)
前記の前駆体を使用して、実施例1と同様にして石英ガラス粉末を製造し、評価した。
【0079】
石英ガラス前駆体及び石英ガラス粉末の評価結果を表1に示す。
【0080】
石英ガラス前駆体の全細孔容積は0.65cc/g、全細孔容積に占める0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の比率は5.1%であった。
【0081】
前記の石英ガラス前駆体を焼成することによって得た石英ガラス粉末の平均粒子径は約250μmであった。石英ガラス粉末の内部シラノール基濃度は低く、粒子内部に気泡を含んでいる粒子も少ないことがわかった。
【0082】
(成形体の作製)
上記のシリカスラリー(55重量%)を内径25mmΦのテフロン容器に5g注入した。ピンホールの空いた蓋をして、40℃の恒温槽中に放置した。1週間後取り出したところ、直径約23mm、厚さ約5mmの円盤状の半透明石英ガラス前駆体(シリカゲル)が得られた。上記シリカゲルには欠けやひび割れはなかった。更に大気中で数日間乾燥させた後、150℃で一昼夜乾燥させた。続いて、電気炉中で0.5℃/分の昇温速度で1450℃まで昇温し、12時間焼成した。徐冷後、試料を取り出すと透明な石英ガラス板が得られた。
【0083】
実施例3
(石英ガラス前駆体の製造)
比表面積が200m2/gのヒュームドシリカを固形分濃度が20重量%になるように純水と混合し、テフロン製の羽根のついたプロペラミキサーを用いて500rpmで約10分間混合した。続いて、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA31)を用いて、処理圧力700kg/cm2で2回処理を行ってシリカスラリーを調製した。
【0084】
上記スラリーのn値は3.9であった。
【0085】
以下、実施例1と同様にして石英ガラス前駆体を製造し、評価した。
【0086】
(石英ガラス粉末の製造)
更に実施例1と同様にして石英ガラス粉末を製造し、評価した。
【0087】
石英ガラス前駆体及び石英ガラス粉末の評価結果を表1に示す。石英ガラス前駆体の全細孔容積は0.95cc/g、全細孔容積に占める0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の比率は7.5%であった。焼成後の石英ガラス粉末の平均粒子径は約250μmで、内部シラノール基の濃度は低く、粒子内部に気泡を含んでいる粒子もほとんど見られなかった。
【0088】
実施例4
(石英ガラス前駆体の製造)
比表面積が380m2/gのヒュームドシリカを用いた以外は実施例3と同様にしてシリカスラリーを調製した。
【0089】
上記スラリーのn値は3.8であった。
【0090】
以下、実施例1と同様にして石英ガラス前駆体を製造し、評価した。
【0091】
(石英ガラス粉末の製造)
更に実施例1と同様にして石英ガラス粉末を製造し、評価した。
【0092】
石英ガラス前駆体及び石英ガラス粉末の評価結果を表1に示す。石英ガラス前駆体の全細孔容積は0.79cc/g、全細孔容積に占める0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積の比率は3.3%であった。焼成後の石英ガラス粉末の平均粒子径は約250μmで、内部シラノール基の濃度は低く、粒子内部に気泡を含んでいる粒子もほとんど見られなかった。
【0093】
【表1】
Figure 0004371565

【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の石英ガラス前駆体の全細孔容積測定結果を示す図

Claims (3)

  1. ヒュームドシリカよりなる多孔体であって、水銀ポロシメーターで測定した全細孔容積が0.1〜1cc/gの範囲であり、且つ、0.1μm以上の細孔径を有する細孔の積算容積が全細孔容積の10%以下であることを特徴とする石英ガラス前駆体。
  2. ヒュームドシリカと極性溶媒とを含む、分散指数(n値)が2.8以上のシリカスラリーを調製し、該シリカスラリーを乾燥させることを特徴とする請求項1記載の石英ガラス前駆体の製造方法。
  3. 請求項1記載の石英ガラス前駆体を焼成することを特徴とする石英ガラスの製造方法。
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