JP4368009B2 - 丸刃切断装置及び丸刃切断装置用丸刃の刃先加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、磁気テープ、フィルム、又は帯状の金属箔などの原反を連続して長さ方向にスリットする丸刃切断装置、及びその装置に用いる丸刃の刃先加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気テープやフィルムなどのウェブや金属箔などを連続して長さ方向にスリットするための切断装置としては、例えば、実開平6−5890号公報や実開平6−5893号公報、及び、実開昭63−158792号公報や実開昭58−173496号公報に示されているような上下丸刃の組み合せからなる切断装置が知られており、それらの代表的なものとしては、図12及び図13に示すような丸刃切断装置があげられる。
【0003】
図12に示す丸刃切断装置は、第1刃物軸1と第2刃物軸2とが互いに平行に配置されており、その第1刃物軸1には、外径と厚さがそれぞれ所定の寸法からなりその外周にリング状の逃げ溝32が設けられ逃げ溝32の反対側外周縁が刃先とされた第1丸刃3が逃げ溝32を同一方向に向けて所定の数だけ連続して嵌合固定されている。一方、第2刃物軸2には、前記第1丸刃3の厚さとほぼ等しい厚さからなりその外周にリング状の装着段部52が設けられている刃物ホルダー5が装着段部52を同一方向に向けて連続して嵌合固定されており、その刃物ホルダー5の装着段部52にはリング状の薄丸刃からなる第2丸刃4が軸心方向に移動可能に装着されている。そして第2丸刃4の背側には皿ばね6が装着されており、皿ばね6の付勢力によって第2丸刃4はいくぶん皿形形状に変形され、第1丸刃3の刃先の垂直面に対して若干の逃げ角(図示せず)が存在している。
【0004】
この状態で少なくとも前記第2刃物軸2を軸心方向に移動させてリング状の薄丸刃からなる第2丸刃4の刃先側面41を第1丸刃3の刃先側面31に接触させてから更に所定量だけ押し込むことによって、第1丸刃3の刃先側面31に第2丸刃4の刃先側面41が所定の側圧で押されるようになっている。そして、この状態において第1刃物軸1と第2刃物軸2とをそれぞれ切断方向に回転させてやることによって両刃物軸の間に通された被切断帯としてのフィルムなどが所定の条数にスリットされる。
【0005】
次に、図13に示す丸刃切断装置は、図12に示した丸刃切断装置と同様に第1刃物軸1と第2刃物軸2とは平行に配置されており、その第1刃物軸1には、外径と厚さがそれぞれ所定の寸法からなりその外周に逃げ溝32が設けられその逃げ溝32側の外周縁が刃先とされた第1丸刃3が逃げ溝32を同一方向に向けて所定の数だけ連続して嵌合固定されている。そしてこの第1丸刃3の刃先側面31には一般的には逃げ角αが設けられている。
【0006】
一方、第2刃物軸2には、前記第1丸刃3の厚さとほぼ等しい厚さからなりその外周にリング状の装着段部52が設けられている刃物ホルダー5が装着段部52を同一方向に向けて連続して嵌合固定されており、その刃物ホルダー5の装着段部52には刃先側面に逃げ角βが設けられた皿形形状の薄丸刃からなる第2丸刃4が装着されている。そして第2丸刃4の背側には皿ばね6、または前記の実開平6−5890号公報の図8に示されているようなリング状のコイルスプリングなどが装着されており、少なくとも前記第2刃物軸2を軸心方向に移動させて皿形形状の薄丸刃からなる第2丸刃4の刃先側面41を第1丸刃3の刃先側面31に接触させてから更に所定量だけ押し込むことによって、第1丸刃3の刃先側面31に第2丸刃4の刃先側面41が所定の側圧で押されるようになっている。そして、この状態において、第1刃物軸1と第2刃物軸2とをそれぞれ切断方向に回転させてやることによって両刃物軸の間に通されたフィルムなどが所定の条数にスリットされるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図12及び図13に示した丸刃切断装置においては、第1丸刃3と第2丸刃4の一方または両方の丸刃の刃先は相手の刃先に対して逃げ角を有する形状であるため、第1丸刃3と第2丸刃4の刃先の接触状態は線接触、或いは点接触となり、両刃先の間に側圧が付与されると刃先に極めて大きな接触面圧が加わることになる。また、従来の丸刃切断装置においては、第1丸刃3と第2丸刃4の材質には、例えば一方が高速度工具鋼(SKH)で他方が金型用合金工具鋼(SKDなど)の組み合わせであったり、両者共に高速度工具鋼、或いは両者共に超硬合金の組み合わせと言うように同じ材質か類似の材質を使用していた。
【0008】
その結果、両刃先間に側圧が付与されて両刃物軸に回転が与えられると刃先周縁部には瞬時に塑性変形が発生し、刃先は図14(図面に代わる光学顕微鏡による拡大写真)にその断面を示すように捲れた状態となり、それに続いて刃先にはチッピングが発生する。そして、この状態で被切断帯をスリットすることになるので、スリットされたウェブなどの切り口は良くない状態がしばらく続き、そのまま切断を続けて適度に刃先が摩耗するとチッピングなどによる刃先破壊の進行が止まり、やがて切り口の品質は安定してくるが、安定するまでには多量の被切断ウェブが不満足な切り口のまま製品となりその多くが不良になってしまうという問題があった。また、刃先破壊の進行が減少したとしても刃先周縁部は依然として捲れた状態にあり、刃先先端はシャープな刃先とはならず、また、刃先先端でのクリアランスもゼロにはならないので、特に被切断帯の厚みが薄くなるほど切り口には不安定な状態が現れる。
【0009】
表1は図13に示す丸刃切断装置における第1丸刃3と第2丸刃4の刃先に掛かる見掛けの側圧を500g及び1000gとしたときの刃先の摩耗幅と刃先の接触面圧との関係を示したもので、第1丸刃3の外径を80mm、第2丸刃4の外径は98mmとし、上下刃の噛み込み量を0.3mmとした場合の計算値である。一方、高速度工具鋼(SKH2:ビッカース硬度HV730程度)の圧延方向での抗折力は約180Kgf/mm2 (直角方向では300Kgf/mm2 )とされており、第1丸刃3と第2丸刃4を高速度工具鋼製とした場合には表1より刃先に掛かる見掛けの側圧が500gの場合で摩耗幅16μm前後以下で、また刃先に掛かる見掛けの側圧が1000gの場合で摩耗幅22μm前後以下で塑性変形やチッピングが発生し易いことが理解できる。特に、刃先形状が鋭利な第2丸刃4の方が第1丸刃3に比べてより多くのチッピングが発生することが予想される。
【0010】
【表1】
【0011】
次に、別の従来技術として、特開平1−246094号公報には、上刃と下刃の少なくとも一方の刃先が、径外方に向かって次第に相手側の刃から離れるように面取りがされている裁断用丸刃工具の技術が開示されているが、この従来技術は、一方の刃先部分と相手側の刃との間に間隙、即ちクリアランスを設けるようにして、ウェブの裁断面をウェブ厚さ方向にわたってわざわざ凹凸を有する切り口とし、ウェブの表面上に塗布されている乳剤層を保護する目的で、その乳剤層がウェブ支持体より外側に出ないような切り口とすると言うものであり、一方の刃先の先端は鋭利な刃先とされてはいるが、その刃先先端は相手側の側面とは接触することはないので、この場合でも被切断帯の厚みが薄くなるほど切り口状態は満足出来るものとはならなかつた。
【0012】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、環状の丸刃からなる第1丸刃と、その第1丸刃の方向に押されている薄丸刃からなる第2丸刃とによって被切断帯をスリットするときに鋭利な刃先からなる丸刃の刃先に塑性変形やチッピングが起こり難い丸刃切断装置を提供することを目的としており、使い始めの初期段階から切り口状態の良好なスリット製品を得ることが可能であり、更に被切断帯を実際にスリットする条件とほぼ同じ状態で刃先を加工することによって鋭利な刃先とすると共に、第1丸刃の刃先と第2丸刃の刃先の少なくとも一方の刃先が相手の刃先に対して面で接触するようにして刃先でのクリアランスをゼロに維持し、従来は綺麗に切断することが困難とされていた厚さがミクロンオーダーの極めて薄いフィルムなどでも問題なく綺麗にスリットすることができる丸刃切断装置、及びその装置に用いる丸刃の刃先加工方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
特許を受けようとする第1発明は、第1丸刃を備えた第1刃物軸と、第1丸刃に対応する第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、第1丸刃の刃先と第2丸刃の刃先とによって第1刃物軸と第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向にスリットする丸刃切断装置であって、第1丸刃は環状の丸刃とされ、第2丸刃は第1丸刃の方に押されている薄丸刃とされている丸刃切断装置において、第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃はビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金からなり、他方の丸刃はビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼からなり、一方の丸刃の刃先側面は軸直角に形成され、他方の丸刃には逃げ角が形成され、一方の丸刃の刃先側面と他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させ、被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、一方の丸刃の刃先側面によって他方の丸刃の刃先を切削することにより、他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と鋭利な刃先線が形成され、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるようにしたことを特徴とする丸刃切断装置である。
【0014】
第1発明は、第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃を硬度の高い超硬合金によって形成し、他方の丸刃を各種工具鋼によって形成し、一方の丸刃の軸直角な刃先側面と、逃げ角が形成された他方の丸刃の刃先とをフィルムなどのスリット作業に取り掛かる前の段階で、実際のスリット作業とほぼ同じ側圧力で接触させて好ましくは両刃物軸を少なくとも1回転させることにより一方の丸刃の刃先によって他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部が形成された丸刃切断装置なので、ウェブなどの被切断物のスリットにおいては刃先に塑性変形やチッピングなどの発生が起り難くなり、最初の切断から切り口状態の良好なスリット製品を得ることができるようになる。また、他方の丸刃の刃先平面部と一方の丸刃の刃先側面とが密着し、他方の丸刃の刃先先端に鋭利な刃先線が形成されることで、他方の丸刃の刃先先端でのクリアランスがゼロになるので、厚さがミクロンオーダーの極めて薄いフィルムも綺麗に切断することができるようになる。
【0015】
特許を受けようとする第2発明は、複数の第1丸刃を備えた第1刃物軸と、第1丸刃に対応する複数の第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、第1丸刃の刃先と第2丸刃の刃先とによって第1刃物軸と第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向に複数状にスリットする丸刃切断装置であって、第1丸刃は環状の丸刃とされ、第2丸刃は第1丸刃の方に押されている薄丸刃とされている丸刃切断装置において、第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃はビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金からなり、他方の丸刃はビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼からなり、一方の丸刃の刃先側面は軸直角に形成され、他方の丸刃には逃げ角が形成され、一方の丸刃の刃先側面と前記他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させ、被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、一方の丸刃の刃先側面によって他方の丸刃の刃先を切削することにより、
他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と鋭利な刃先線が形成され、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるようにしたことを特徴とする丸刃切断装置である。
【0016】
第2発明は、第1刃物軸と第2刃物軸にそれぞれ複数の第1丸刃と複数の第2丸刃を設け、前記第1発明における上下一対の丸刃を複数対備えた丸刃切断装置としたものであり、フィルムなどの被切断帯を多数条にスリットする場合においてもそれぞれの丸刃の刃先には塑性変形やチッピングなどの発生が起こり難く、スリットされた各帯状体の切り口状態は良好なものとなる。
【0017】
特許を受けようとする第3発明は、環状の第1丸刃を備えた第1刃物軸と、前記第1丸刃の方向に押されている薄丸刃からなる第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向にスリットする丸刃切断装置に用いる丸刃の刃先加工方法において、 第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃をビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金とし、他方の丸刃をビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼とし、一方の丸刃の刃先側面を軸直角に形成し、他方の丸刃には逃げ角を形成し、一方の丸刃の刃先側面と他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させ、被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、一方の丸刃の刃先側面によって他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と他方の丸刃の刃先先端に鋭利な刃先線を形成し、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるように他方の丸刃の刃先を切削することを特徴とする丸刃切断装置用丸刃の刃先加工方法である。
【0018】
第3発明は、第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃を硬度の高い超硬合金によって形成し、他方の丸刃を各種工具鋼によって形成し、一方の丸刃の軸直角な刃先側面と、逃げ角が形成された他方の丸刃の刃先とをフィルムなどのスリット作業に取り掛かる前の段階で、実際のスリット作業とほぼ同じ側圧力で接触させて好ましくは両刃物軸を少なくとも1回転させることにより一方の丸刃の刃先によって他方の丸刃の刃先側面側周縁部を切削するようにした丸刃の加工方法なので、他方の丸刃の刃先に対して簡単に微小でほぼ均一な刃先平面部を形成することができるようになる。また本発明は硬度の低い方の材質によって形成されている刃物軸のみを回転させることによってもなし得るが、第1刃物軸と第2刃物軸の両方を回転させる方が好ましい。
【0019】
また、この第3発明が実施された上下一対の丸刃をそれぞれの刃物軸から取り外し、新たな上下一対の丸刃をそれぞれ第1刃物軸と第2刃物軸に組み込んでこの新たに組み込まれた上下一対の丸刃によって同様に第3発明を実施し、この作業を繰り返すことにより、所定数の上下丸刃対を準備してこれらを前記の第2発明の丸刃切断装置に組み込むことも可能である。また、この場合、より硬度の高い材質によって形成されている丸刃は交換せずに、硬度の低い丸刃のみを交換することによって第2丸刃の全数を加工仕上げすることも可能である。
【0020】
特許を受けようとする第4発明は、環状の第1丸刃を複数備えた第1刃物軸と前記第1丸刃の方向に押されている薄丸刃からなる第2丸刃を複数備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向に複数条にスリットする丸刃切断装置に用いる丸刃の刃先加工方法において第1丸刃と第2丸刃のうちの一方の丸刃をビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金とし、他方の丸刃をビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼とし、一方の丸刃の刃先側面を軸直角に形成し、他方の丸刃には逃げ角を形成し、一方の丸刃の刃先側面と他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させ、被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、一方の丸刃の刃先側面によって他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と他方の丸刃の刃先先端に鋭利な刃先線を形成し、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるように他方の丸刃の刃先を切削することを特徴とする丸刃切断装置用丸刃の刃先加工方法である。
【0021】
第4発明は、第1丸刃と第2丸刃の間に硬度差を設け、第1丸刃の刃先と第2丸刃の刃先とをウェブなどの切断作業に取り掛かる前の段階で、実際のスリット作業とほぼ同じ側圧力で接触させて好ましくは両刃物軸を少なくとも1回転させることにより、より硬度の高い材質からなる一方の丸刃の刃先によって他方の丸刃の刃先側面側周縁部を切削するようにした丸刃の刃先加工方法なので、複数枚備えられた他方の丸刃全数の刃先周縁部に対して簡単に微小でほぼ均一な刃先平面部を形成することができるようになる。また本発明は前記第3発明と同様に硬度の低い方の材質によって形成されている丸刃を備えている方の刃物軸のみを回転させることによってもなし得るが、第1刃物軸と第2刃物軸の両方を回転させる方が好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図3を参照しながら説明する。図において、第1刃物軸1と第2刃物軸2はそれらの軸の少なくとも片側に設けられた軸受け手段(図示せず)によって平行かつ回転自在に軸支されており、その第1刃物軸1と第2刃物軸2とは軸心方向に相対的に微調整移動でき、外部に設けられた駆動手段によって互いに反対方向の回転が与えられるようになっている。そして、図1に示す丸刃切断装置では、第1刃物軸1に外径と厚さが所定の寸法からなる環状の第1丸刃3が嵌合固定されており、第2刃物軸2には皿形形状の薄丸刃からなる第2丸刃4を装着段部52に装着している刃物ホルダー5が嵌合固定されている。
【0023】
次に、図2に示す丸刃切断装置では、第1刃物軸1に外径と厚さが所定の寸法からなる環状の第1丸刃3が嵌合固定されており、第2刃物軸2には所定の厚さからなりその外周にリング状の装着段部52が設けられている刃物ホルダー5が嵌合固定されている。そして、その刃物ホルダー5の装着段部52には薄丸刃からなる第2丸刃4とその第2丸刃4の背側に皿ばね6とが装着されており、この状態において第2丸刃4は皿ばね6の付勢力によって若干皿形形状に変形されている。
【0024】
【0025】
図3に示す丸刃切断装置においては、第1刃物軸1には、外径と厚さが所定の寸法からなりその外周に逃げ溝32が設けられた第1丸刃3が逃げ溝32を同一方向に向けて所定枚数だけ連続して嵌合固定されている。そして、図3に示す第1丸刃3は逃げ溝32の反対側外周縁が刃先とされている。一方、第1刃物軸1と上下で平行に相対している第2刃物軸2には、第1丸刃3の厚さとほぼ等しい厚さからなりその外周にリング状の装着段部52が設けられている刃物ホルダー5がその装着段部52を同一方向に向けて連続して嵌合固定されており、その装着段部52には第2丸刃4とその第2丸刃4の背側に皿ばね6とが装着されている。尚、図3に示す第2丸刃4は皿ばね6の付勢力によって若干皿形形状に変形されているリング状の薄丸刃である。また、図3に示す丸刃切断装置においては第1刃物軸1と第2刃物軸2はその両側に設けられた軸受け手段(図示せず)によって平行かつ回転自在に軸支されている。
【0026】
そして、図1乃至図3に示した丸刃切断装置のいずれにおいても、第1丸刃3は第2丸刃4に比べてより硬度の高い超硬合金を用い、第2丸刃4は高速度工具鋼、金型用合金工具鋼、炭素工具鋼などの各種工具鋼を用いている。
【0027】
例えば、従来の高速度工具鋼(SKH)製丸刃と金型用合金工具鋼(SKD)製丸刃との組み合わせにおいては、前者(SKH製丸刃)の硬度がHV772〜832(HRC63〜65)であるのに対し、後者(SKD製丸刃)の硬度はHV653〜697(HRC58〜60)と、その硬度差はせいぜいHV硬度で180であるのに対し、超硬合金の硬度はHV1350〜1500と高く、高速度工具鋼製丸刃(HV772〜832)や金型用合金工具鋼製丸刃(HV653〜697)の硬さと比較した場合その硬度差は大きいものとなる。
【0028】
いま、平行に軸支されている第1刃物軸1と第2刃物軸2の距離は第1丸刃3の刃先と第2丸刃4の刃先との上下のラップ量が所定の値になるように保持されている。そしてその状態において少なくとも一方の刃物軸を軸心方向に移動させて第2丸刃4の刃先側面41を第1丸刃3の刃先側面31に接触させてから更に所定量だけ押し込み、両丸刃の刃先同士が所定の側圧で圧接するようにしてやる。このときの第1丸刃3と第2丸刃4の刃先の関係は拡大的に表現すれば凡そ図4に示す様な状態にあるものと推測される。つまり第2丸刃4は第1丸刃3の方に所定の量だけ押し込まれているので、両刃先は図4の(イ)に示すように、X点、B点、Y点を通る刃先が線接触し、第1丸刃3のX点を通る垂直断面に対して第2丸刃4の刃先のA点は第2丸刃4の回転と共に図4の(ロ)に示すように、A、X、B、の順で侵入して行くことになり、X点における両刃先には相対的に食い込み力が作用することになる。この状態で第1刃物軸1と第2刃物軸2とをそれぞれ反対方向に1回転以上回転させてやることにより、より硬度の高い材質からなる第1丸刃の刃先が切削刃となり、その切削刃となる第1丸刃の刃先によって第2丸刃の刃先が切削加工され、刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部が形成される。
【0029】
ここで、硬度の低い方の丸刃の刃先に刃先平面部が形成されるためには、その丸刃の刃先側面に逃げ角が設けられて鋭利な刃先となっていることが必要となる。また、硬度が高い方の丸刃の刃先側面と硬度が低い方の丸刃の刃先線を含んだ刃先平面部とを面接触させる為には、硬度が高い方の丸刃の刃先側面が軸直角であることが必要である。
【0030】
尚、図3では第1丸刃3、及び刃物ホルダー5がそれぞれ互いに隣接固定されているものについて説明したが、スリット幅寸法によっては隣り合う第1丸刃3の間、及び隣り合う刃物ホルダー5の間に所定寸法のスペーサーを介在させることもできるし、また、第1丸刃3、及び刃物ホルダー5をそれぞれ単体で各刃物軸に固定することができる構造にすることによりスペーサーを省くこともできる。また、図3の第1丸刃3は逃げ溝32の反対側縁が刃先とされた丸刃としたが、逃げ溝32側の外周縁を刃先とすることもできる。
【0031】
【実施例】
図5は、本発明の一実施例を説明するための図であり、より硬度の高い材質からなる第1丸刃3の材質として超硬合金を用い、第2丸刃4の材質として高速度工具鋼を用いた場合の丸刃切断装置の両丸刃を示す図であり、第1丸刃3の外径Dは80mm、第2丸刃4の外径dは98mm、刃先側面の逃げ角βは3.5°とし、刃先の上下方向のラップ量Lは0.5mmとした。図6の(イ)は本発明による刃先加工実施前の第2丸刃4の刃先の断面を示す図面に代わる写真(光学顕微鏡による拡大写真)である。
【0032】
次に、実際に磁気テープなどを切断するときに第2丸刃4の刃先と第1丸刃3の刃先との間に掛かる見掛けの側圧は500〜1200g程度とされているが、本実施例においては、見掛けの側圧を500g程度とし、この状態において第1刃物軸1と第2刃物軸2をそれぞれ数回転させて第2丸刃4の刃先全周にわたって微小でほぼ均一な切削加工部を形成させた。
【0033】
図6の(ロ)は、第2丸刃4に形成された切削加工部の断面を示す図面に代わる写真(光学顕微鏡による拡大写真)であり、写真において刃先の切削加工部の刃物幅方向の寸法は約5.5μmであり、刃物の径方向の寸法は約55μmとなり、その切削加工部の状態は図14に示した従来の塑性変形した刃先とは明らかに異なる刃先形状であり、滑らかな切削面となり、チッピングなどの欠陥は存在しなかった。
【0034】
図7の(イ)は、切削加工によって排出された切削屑を示す図面に代わる写真〔走査型電子顕微鏡(SEM装置)による拡大写真〕であり、図7の(ロ)はその切削屑の断面を示す写真(SEM装置による拡大写真)である。そして、その幅は概ね45μm〜50μmであった。
【0035】
図8〜図10の(イ)はそれぞれ第2丸刃4の刃先を示す図面に代わる写真(SEM装置による拡大写真)であり、(ロ)はそれぞれの写真を説明するための図である。また、写真の撮影方向は図8の(ハ)に示すように刃先に対して斜め方向から観察したものである。
【0036】
まず、図8の(イ)は、未使用状態の刃先の写真であり、その刃先はシャープであることが判る。次に、図9の(イ)は本発明での前記実施例による刃先の切削加工部を観察した写真であり、切削加工部は明らかに滑らかな面となっており刃先もシャープな線となっていることが判る。
【0037】
これに対し、図10の(イ)は従来技術における上下刃の組み合せによるものであり、第1丸刃3の材質として金型用合金工具鋼(SKD)を用いた場合の第2丸刃4の刃先を観察した写真であり、塑性変形やチッピングによって刃先にはかなりのダメージがあることが判る。
【0038】
図11は、図13に示した従来の材質の組み合わせ(SKH材とSKD材)による丸刃切断装置、及び本発明の丸刃切断装置によって厚さが5μmのPETフィルムをスリットしたときの製品の切り口の断面を示す図面に代わる写真(SEM装置による拡大写真)であり、図11の(イ)は従来の丸刃切断装置によるものであり、(ロ)は本発明の丸刃切断装置によるものである。写真から明らかなように従来の丸刃切断装置による切り口には刃先のダメージによって発生したと思われる欠陥(引きちぎり)が現われているが、本発明の丸刃切断装置による切り口にはそのような欠陥は現われなかった。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、従来の丸刃切断装置では綺麗な切り口状態を得ることが困難とされていた厚さがミクロンオーダーの極めて薄いフィルムなどでも問題なく綺麗にスリットすることが可能になる。また、硬度の低い方の丸刃の刃先は使い初めの初期段階から相手丸刃の刃先に対して面で接触することになるので良好なスリット条件が長期間にわたって維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための丸刃切断装置の上下丸刃の関係を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための別の丸刃切断装置の上下丸刃の関係を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための別の丸刃切断装置の上下丸刃の関係を示す概略図である。
【図4】第1丸刃と第2丸刃の刃先の圧接部の関係を説明するための概略図である。
【図5】本発明の一実施例を説明するための概略図である。
【図6】刃先の断面を示す光学顕微鏡による拡大写真である。
【図7】本発明による刃先加工方法を実施することによって排出された切削屑を示す走査型電子顕微鏡による拡大写真である。
【図8】本発明を実施する前の丸刃の刃先を斜め方向から観察した走査型電子顕微鏡による拡大写真、及びその説明図である。
【図9】本発明を実施した丸刃の刃先を斜め方向から観察した走査型電子顕微鏡による拡大写真、及びその説明図である。
【図10】従来技術における上下丸刃の組み合わせによる丸刃の刃先を斜め方向から観察した走査型電子顕微鏡による拡大写真、及びその説明図である。
【図11】被切断ウェブの切り口断面を斜め方向から観察した走査型電子顕微鏡による拡大写真である。
【図12】従来の丸刃切断装置の一例を説明するための概略図である。
【図13】従来の丸刃切断装置の別の例を説明するための概略図である。
【図14】従来技術における上下丸刃の組み合わせによる丸刃の刃先の断面を示す光学顕微鏡による拡大写真である。
【符号の説明】
1 第1刃物軸
2 第2刃物軸
3 第1丸刃
4 第2丸刃
5 刃物ホルダー
6 皿ばね
31 第1丸刃の刃先側面
32 逃げ溝
41 第2丸刃の刃先側面
52 装着段部
Claims (4)
- 第1丸刃を備えた第1刃物軸と、前記第1丸刃に対応する第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向にスリットする丸刃切断装置であって、前記第1丸刃は環状の丸刃とされ、前記第2丸刃は前記第1丸刃の方に押されている薄丸刃とされている丸刃切断装置において、
前記第1丸刃と前記第2丸刃のうちの一方の丸刃はビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金からなり、他方の丸刃はビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼からなり、
前記一方の丸刃の刃先側面は軸直角に形成され、
前記他方の丸刃には逃げ角が形成され、
前記一方の丸刃の刃先側面と前記他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させて、
被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも前記他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、前記一方の丸刃の刃先側面によって前記他方の丸刃の刃先を切削することにより、
前記他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と鋭利な刃先線とが形成され、
該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるようにしたことを特徴とする丸刃切断装置。 - 複数の第1丸刃を備えた第1刃物軸と、前記第1丸刃に対応する複数の第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向に複数状にスリットする丸刃切断装置であって、前記第1丸刃は環状の丸刃とされ、前記第2丸刃は前記第1丸刃の方に押されている薄丸刃とされている丸刃切断装置において、
前記第1丸刃と前記第2丸刃のうちの一方の丸刃はビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金からなり、
他方の丸刃はビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼からなり、
前記一方の丸刃の刃先側面は軸直角に形成され、
前記他方の丸刃には逃げ角が形成され、
前記一方の丸刃の刃先側面と前記他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させて、
被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも前記他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、前記一方の丸刃の刃先側面によって前記他方の丸刃の刃先を切削することにより、
前記他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と鋭利な刃先線とが形成され、
該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるようにしたことを特徴とする丸刃切断装置。 - 環状の第1丸刃を備えた第1刃物軸と、前記第1丸刃の方に押されている薄丸刃からなる第2丸刃を備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向にスリットする丸刃切断装置に用いる丸刃の刃先加工方法において、
前記第1丸刃と前記第2丸刃のうちの一方の丸刃をビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金とし、
他方の丸刃をビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼とし、
前記一方の丸刃の刃先側面を軸直角に形成し、
前記他方の丸刃には逃げ角を形成し、
前記一方の丸刃の刃先側面と前記他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させて、
被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも前記他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、前記一方の丸刃の刃先側面によって前記他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と前記他方の丸刃の刃先先端に鋭利な刃先線とを形成し、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが
面接触になるように前記他方の丸刃の刃先を切削することを特徴とする丸刃切断装置用丸刃の刃先加工方法。 - 環状の第1丸刃を複数備えた第1刃物軸と、前記第1丸刃の方に押されている薄丸刃からなる第2丸刃を複数備えた第2刃物軸とを有し、前記第1丸刃の刃先と前記第2丸刃の刃先とによって前記第1刃物軸と前記第2刃物軸との間に通された被切断帯を長さ方向に複数条にスリットする丸刃切断装置に用いる丸刃の刃先加工方法において、
前記第1丸刃と前記第2丸刃のうちの一方の丸刃をビッカース硬度がHV1350以上の超硬合金とし、
他方の丸刃をビッカース硬度がHV832以下の各種工具鋼とし、
前記一方の丸刃の刃先側面を軸直角に形成し、
前記他方の丸刃には逃げ角を形成し、
前記一方の丸刃の刃先側面と前記他方の丸刃の刃先先端とを被切断帯を切断する為の所定の側圧力で接触させて、
被切断帯を切断する前の初期段階で、少なくとも前記他方の丸刃を備えた方の刃物軸を少なくとも1回転させて、前記一方の丸刃の刃先側面によって前記他方の丸刃の刃先側面側周縁部に微小でほぼ均一な刃先平面部と前記他方の丸刃の刃先先端に鋭利な刃先線とを形成し、該刃先線を含んだ前記刃先平面部と前記一方の丸刃の刃先側面とが面接触になるように前記他方の丸刃の刃先を切削することを特徴とする丸刃切断装置用丸刃の刃先加工方法。
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