以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作制御装置が適用される船外機の一例を示す部分縦断面図である。
図1において、船外機1は、上下に分割可能なエンジンカバー2と、ドライブシャフトハウジング3と、ギアハウジング4の各ハウジングを有している。エンジンカバー2内にはエンジン5が設置されている。エンジン5は、その内部にクランクシャフトが略垂直(縦置き)に配置された水冷4サイクルのV型6気筒エンジンである。
エンジン5内のクランクシャフトに連結(又はギア連結)されたドライブシャフト6は、エンジン5の下端からドライブシャフトハウジング3内を通ってギアハウジング4内にまで延びている。ギアハウジング4内には、前後進切換機構9が配置されている。
前後進切換機構9は、ドライブシャフト6の下端に固定されたベベルギアから成る駆動用ギア9aに、プロペラシャフト8上に回動自在に配置されたベベルギアから成る前進用ギア9bと後進用ギア9cをそれぞれ噛合させ、前進用ギア9bと後進用ギア9cとの間に配置されたドッグクラッチ9dを移動して、前進、後進、及びニュートラル(中立)の切り換え(シフト)を行うものである。
ドライブシャフトハウジング3内をドライブシャフト6と平行に延びるシフトロッド10は、その回動によりドッグクラッチ9dを移動させ、前進用ギア9bと後進用ギア9cのいずれかに噛合させるか、又はその中間部でいずれとも噛合させないようにすることで、ドライブシャフト6からプロペラシャフト8に回転力の伝達/切断を行う。
船外機1は、スイベルブラケット11により水平方向で回動可能に支持され、スイベルブラケット11の上部が水平方向のチルト軸12を介してクランプブラケット13に対して上下方向で回動可能に支持され、クランプブラケット13が船体(不図示)の後尾板に着脱可能に固定されることで、船体に対して水平方向(操舵方向)と上下方向(チルト方向)にそれぞれ回動可能な状態で取り付けられる。
また、エンジン5の前部には、ECM(Engine Control Module)15を含む制御系電装品を内装した電装品ボックス14が配置されている。
図2は、図1の船外機1におけるエンジンカバー2内部の横断面図である。
図2において、リモコンボックス20は、船体内に配置されており、前進、ニュートラル、後進を切り換えてシフト操作(切換操作)を行うためのシフト操作レバー21を備える。シフト操作レバー21は、インナー及びアウターケーブルで構成されるリモコンケーブル22を介して船外機1内のシフトレバー23に連結される。シフトレバー23は、複数のシフト操作用リンク25a,25b,25cを介してシフトロッド10に連結される。シフト位置検出器24がシフトレバー23の回転軸の上端に配置されている。
図3は、シフトレバー23からシフトロッド10までの部分断面図である。
図3において、操作者がシフト操作レバー21を操作すると、リモコンケーブル22を介して連結されたシフトレバー23が回転軸23aを中心に回動し、この回動によりシフトレバー23に回転軸23aを介して連結されたシフト操作用リンク25a,25b,25cを駆動してシフトロッド10が回動する。これにより、上述したように、前後進切換機構9のドッグクラッチ9dが移動して前進、後進、及びニュートラルの切り換え(シフト)が行われる。
シフト操作用リンク25aとシフト操作用リンク25bとの連結部には、ゴム等の弾性体からなるダンパ25dが挟み込まれている。なお、ダンパ25dを、シフト操作用リンク25bとシフト操作用リンク25cとの連結部に挟み込むようにしてもよい。
例えばF(前進)位置からN(ニュートラル)位置にシフト操作されたときまたはその逆のシフト操作が行われたときにギアが抜けずにシフトロッド側の動きが一瞬止まることがある。この場合、これによりシフト位置検出器24の出力値が一瞬止まってフラットになり、出力変更制御の開始に遅れが生じる。また、上記の場合、操作者に違和感を与えたり、シフト操作に重さを感じさせたりする。よって、シフトレバー23の動きを止めることなくシフトレバー23を回動させるために、上記ダンパ25dが設けられている。
図4は、図2におけるシフト位置検出器24の近傍を拡大した図である。
図4において、シフトレバー23の回転軸23a上には、信号線を介してECM15に接続されたシフト位置検出器24が配置されている。シフト位置検出器24は、例えば、回動式可変抵抗により構成され、図5に示すようにシフトレバー23の回動位置に応じた出力(電圧)を発生して、シフト位置を連続的に検出し、これにより、シフト操作の有無、シフト操作タイミング、及びシフト位置が検出される。
シフト位置検出器24は、船外機1内部のシフトレバー23やシフト操作用リンク25a,25b,25c、前後進切換機構9を含むシフト機構における最初の回転部(駆動部)に配置されているので、操作者のシフト操作を早く、正確に検出するのに適している。これは、シフトレバー23の回転軸23aの上端に直接シフト位置検出器24の回動式可変抵抗の回転軸を連結する構成なので、少ない部品点数でコンパクトにでき、組付作業性に優れると共に、回動式可変抵抗の回転軸を下方に向けた構成なので、防水面での信頼性にも優れる。また、回転軸23aと回動式可変抵抗の回転軸とを樹脂部材等を介して連結することによりシフトレバー23の回転軸からシフト位置検出器24が受ける振動を低減することも可能である。
図6は、シフト位置検出器24の出力波形を示す図であり、(a)はシフト操作レバー21にかかる負荷が小さい場合であり、(b)はシフト操作レバー21にかかる負荷がやや大きい場合であり、(c)はシフト操作レバー21にかかる負荷が大きい場合である。
図6(a)〜図6(c)において、シフト操作レバー21がF(前進)位置からN(ニュートラル)位置にシフト操作されたときは、シフト位置検出器24の出力はCからBに変化し、シフト操作レバー21がR(後進)位置からN位置にシフト操作されたときは、シフト位置検出器24の出力はAからBに変化する。
エンジン回転数が低い状態でF位置からN位置にシフト操作された場合、図6(a)に示すように、シフト位置検出器24がシフト操作を検出したタイミング(時刻)T1からドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミング(時刻)T2は、わずかに遅れTaが生じるが、シフト操作レバー21にかかる負荷(操作力)は小さい。
エンジン回転数がやや高い状態でF位置からN位置にシフト操作された場合、図6(b)に示すように、シフト位置検出器24がシフト操作を検出したタイミングT3からドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングT4は、遅れTbが生じる。遅れTbと遅れTaとの関係はTb>Taとなり、シフト位置検出器24がシフト操作を検出したタイミングからドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングは、図6(a)の場合よりも遅れ、シフト操作レバー21にかかる操作力がやや大きいことが分かる。
更に、エンジン回転数が高い状態でF位置からN位置にシフト操作された場合、図6(c)に示すように、シフト位置検出器24がシフト操作を検出したタイミングT5からドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングT6は遅れTcが生じ、遅れTcと遅れTbとの関係はTc>Tbとなり、シフト位置検出器24がシフト操作を検出したタイミングからドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングは非常に遅れる。
このように、シフト位置検出器24がシフト操作レバー21のかなりの変位(動き・回転)を検出しているにも関わらず、ドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けない状態が継続し、操作者がシフト操作レバー21への操作力を増加させるため、操作力がリモコンボックス20からドッグクラッチ9dまでのシフトケーブル22等の遊びに蓄積(のび、変形)され、ドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けた瞬間にそれまでに加えられた力によりニュートラル位置を通り越し、その後にデテント力やニュートラル位置を通り越したことを認識した操作者のレバー操作によりニュートラル位置に戻される。この状態では、操作者は多大な操作力を要すると共に、ニュートラル位置を通り越した位置からシフト操作レバー21をニュートラルに戻す操作が必要となる。
本発明では、このような不具合を防止するために、シフト操作時にシフト操作レバーにかかる操作力が設定値に達したことを検出した後にエンジンの駆動トルク(エンジン出力)を減少させるものではなく、操作者がシフト操作レバー21への操作力を増加させる前のシフト操作の初期段階を検出し、該検出時のエンジン回転数からシフト操作レバー21にかかる操作力の大小を予測してエンジン出力を減少させるエンジン出力低下(変更)制御処理を実施するものであり、従来技術に比して非常に少ない力でシフト操作が可能となる。
図7は、図1の船外機1の制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図7において、制御装置30は、RAM、ROMを備える中央処理装置(CPU)31と、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM )等から成るメモリ32と、外部の通信装置38に接続された通信インターフェース(I/F)33と、入力回路34と、出力回路35と、外部のイグニッションコイル53に接続された点火装置36と、電源回路37とを備える。
入力回路34には、外部のカム軸信号検出器39と、クランク角信号検出器(エンジン回転数検出器)40と、スロットル開度検出器41と、吸気圧力検出器42と、大気圧力検出器43と、吸気温度検出器44と、エンジン温度検出器(冷却水温度検出器)45と、エンジン傾斜角検出器46と、シフト位置検出器24と、ストップスイッチ47が接続されている。
出力回路35には、外部の燃料噴射用インジェクタ48と、ステップモータやソレノイドバルブ等で構成される空気量調整弁/アクチュエータ49と、LEDモニタ、ブザー、タコメータ、トリムメータ等で構成される表示装置50と、フューエルポンプ51が接続されている。
制御装置30内のCPU31は、入力回路34を介して入力された各種検出器からの検出信号に基づいて吸気量を演算し、その吸気量に各種補正を施した後に最適な燃料噴射量を演算し、燃料噴射量に応じたデューティ比の駆動信号を出力回路35を介してインジェクタ48に出力する。これにより、インジェクタ48は、算出された吸気量に対応する最適な燃料噴射量をデューティ制御により噴射する。
図8は、図1の船外機1のエンジン出力低下制御の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、CPU31のROMに格納された所定のプログラムに基づいて制御装置30のCPU31により実行されるものである。
図8において、まず、CPU31が、シフト位置検出器24の出力に基づいてシフト操作レバー21のシフト位置が前進(F)又は後進(R)の位置にあるか否か(すなわち、ニュートラル(N)以外の位置にあるか否か)を判別する(ステップS100)。
次に、シフト操作レバー21のシフト位置が前進(F)又は後進(R)の位置にあるときは、操作者によるシフト操作があったか否かを判別する(ステップS101)。シフト操作レバー21をF位置又はR位置からN位置にシフト操作するときの該シフト操作レバー21への操作力を低減するためには、操作者の操作しようとする意志に基づくシフト操作をより早く、正確に検出することが重要となる。そこで、シフト操作されたときのシフト位置の検出だけでなく、シフト位置検出器24の出力変化量をも検出する。
シフト操作の検出は、シフト位置検出器24の組付け誤差や各構成部品の公差によるバラツキがあるため、シフトされたときの位置(絶対値)のみの判定では迅速に行うことが難しい。また、シフト位置検出器24や各構成部品の劣化(各構成部品、可変抵抗等の摩耗による出力変化)の面からも絶対値のみによるシフト位置の判定は不具合がある。
例えば、図10に示すように、シフト操作レバー21のシフト位置がFのときのシフト位置検出器24の出力に、該シフト位置検出器24の組付け誤差や各構成部品の公差によるバラツキC1〜C2があった場合に、予め設定されたシフト操作判別用の絶対値cに基づいてシフト操作の検出を行ったときは、C2の場合はC1の場合に対してシフト操作の検出にΔt分遅れが生ずる。この場合は、シフト検出手段の出力が大きく変化している(リモコンボックス20からドッグクラッチ9dまでのケーブルやリンク等に操作力が蓄積されている)にも拘わらず、シフト操作を検出できないためにエンジン出力変更制御機能が働かず、非常に大きな操作力を必要とする。また、シフト操作の検出を絶対値c′で判別した場合にはC1の場合はNと誤検出する不具合が生ずる。
そこで、図9に示すように、シフト位置検出器24の出力を一定時間前のものと現在のものとを比較する。すなわち、短いサンプリング間隔(例えば、10ms間隔)でシフト位置検出器24の出力を測定し、現在のタイミング(時刻)Tb時の出力電圧VbとTbよりも一定時間(例えば、200ms)前のタイミングTa時の出力電圧Vaとの変化量(Va−Vb)を演算し、その出力変化量が予め設定された出力変化量A(例えば、100mV)以上の場合にシフト操作ありと判別する。これは、ノイズやシフト位置検出器24への何らかの外力(衝撃)等による瞬間的な変化を誤検出しないようにするためである。
また、制御装置30に学習機能を持たせ、F位置時又はR位置時のシフト位置検出器24の出力値を学習し、その学習値に対して設定値Vc以上の変化量があった場合にシフト操作ありと判別するようにしてもよい。学習方法としては、例えば、F位置で所定回数、同じ出力値を検出した場合に、F位置としてその出力値(学習値)を設定する。例えば、図10に示すように、シフト位置検出器24の出力電圧C2を学習値として設定し、出力電圧C2が設定値Vc以上変化した場合にシフト操作ありと判別する。経年劣化等によりF位置での出力値がC1となった場合でも、学習機能によりC1が学習値として設定されるため、正確にシフト操作の検出を行うことができる。
また、F位置時又はR位置時のシフト位置検出器24の出力を常に短いサンプリング間隔で測定し、その測定値に対して設定値Vc以上の変化量があった場合にシフト操作ありと判別するようにしてもよい。例えば、図10に示すように、シフト位置検出器24の出力電圧C2を通常の出力として一定の間隔で測定して記憶し、出力電圧C2が設定値Vc以上変化した場合に、シフト操作ありと判別する。この場合、経年劣化等によって通常の出力がC1となっても正確にシフト操作の検出を行うことができる。
このように、現在のシフト操作レバー21のシフト位置をシフト位置検出器24の出力により常に判別すると共に、シフト位置検出器24の出力変化量を常に検出することでシフト操作の有無を可能な限り早く、正確に検出することができる。
次に、スロットル開度が設定開度以下(低開度)であるか否かを判別する(ステップS102)。
船外機では、通常、急加速時にプロペラの推力により、船尾における固定された取付部(クランプブラケット等)に対して船外機のマウントされている部分が変位する。また、スロットルを開閉するスロットルケーブルの固定部とシフト操作を行うシフトケーブルの固定部とは近接しており、スロットルの急全開時にこれらの固定部が微少量変位する場合がある。このような場合又は航走中のジャンプ等により外力を受けた場合には、シフト位置検出器24がその変位を検出してしまい、操作者がシフト操作を行っていないにも拘わらず、シフト操作を行ったと誤検出してしまう不具合がある。
そこで、本実施の形態では、この誤検出を防止するために、スロットル開度が設定開度以下(低開度)のときにのみエンジン出力低下制御処理を実施する。
一般的な船外機のスロットルとシフト操作の機構は、リモコンボックスによりシフト操作とスロットル操作を1本のシフト操作レバーで行う構造となっており、ニュートラル位置からシフト操作レバーを前方に動かすことにより、フォワード(前進)にシフトされ、そのままシフト操作レバーを前方に倒すにつれてスロットルが全閉から全開まで操作可能となっている。
逆に、ニュートラル位置からシフト操作レバーを後方に動かすことによりリバース(後進)にシフトされ、そのままシフト操作レバーを後方に倒すにつれてスロットルが全閉から中開度まで操作可能となっている。この構造のために、船外機ではシフト操作時にはエンジン回転数の高低はあってもスロットル開度は略全閉状態にある。よって、スロットル開度が設定開度以下のときにのみエンジン出力低下制御処理を実施することで、急加速時等に発生する変位をシフト操作と誤検出する不具合を防止することができる。
次に、エンジン回転数を検出し、エンジン出力低下制御処理の要否を判別する(図8のステップS103)。すなわち、エンジン回転数が設定回転数以下の場合はエンジンの駆動トルクも低く、エンジン出力低下制御処理を実施する必要がないためである。
つづいて、吸気負圧が設定負圧以下か否かを判別する(ステップS104)。すなわち、エンジンの中・高回転域での一定運転状態からスロットルを急激に閉じて急減速する場合には、エンジン出力低下制御を実施しなくてもエンジン回転数の低下が大きく、シフト操作は容易であり、エンジン出力低下制御を実施したときにはエンストする可能性があるので、該制御処理を実施する必要がないためである。
一方、スロットルの急開→急閉、急加速→急減速等のスロットルスナップ時には、急激なスロットルの開閉に対してエンジン回転数の追従が遅れるため、エンジン出力低下制御処理を実施しない場合、スロットルスナップ直後のシフト操作には非常に大きな操作力が必要となる。
そこで、本実施の形態では、シフト操作検出時の吸気負圧を検出することにより、中・高回転域での一定運転状態から急減速する場合とスロットルスナップによる急減速する場合とを判別する。
エンジンの中・高回転域から急激にスロットルを閉じた場合は、スロットルバルブが閉じて吸気量が絞られた後も、ある程度エンジン回転数の高い状態を継続しながら、エンジン回転数が低下していくため、吸気負圧が非常に大きくなる。よって、シフト操作検出時の吸気負圧を検出することにより、中・高回転域での一定の運転状態から急減速する場合とスロットルスナップによる急減速とを判別することが可能となる。
他の実施の形態として、スロットルを急激に閉じる前の運転状態、例えば、中・高回転域での運転を一定時間以上継続していたか否かを判別することにより、エンジン出力低下制御を行うか否かを判別することでも可能である。
次に、図8のステップS105では、エンジン出力低下制御処理、すなわち失火制御によるエンジン出力低下制御を行う。
シフト操作検出後は、エンストをさせない範囲でできる限り素早くエンジン回転数を低下させる必要がある。急激なエンジン回転数の低下要求とエンスト防止とは相反する項目であり、それに加えて船外機1の場合、搭載される船体と装着されるプロペラは様々であることから、搭載される船体(形状・重量・積載量)とプロペラの負荷に応じた最適なエンジン回転数への低下制御が必要となる。
そこで、エンジン5の失火気筒を特定せず、シフト操作検出直後の点火予定気筒から失火(点火信号カット)制御を実施することがエンジン出力を低下するには有効である。失火制御に限らず、同様の考え方で燃料噴射量や吸入空気量制御(バイパス空気量の制御等)を実施してエンジンの駆動トルクを減少させることも可能である。ただし、燃料噴射量や空気量の制御は、変更した燃料噴射量や空気量が燃焼室に入って駆動力が低下するのが数サイクル後であるのに対して、点火制御(失火制御や遅角制御)は制御開始直後から駆動力が低下するので効果が大きい。
本エンジン出力低下制御では、シフト操作を検出すると、クランク角信号検出器40によりエンジン回転数を検出し、その時のエンジン回転数に応じた失火制御(点火信号カット)を表1に基づいて行う。
CPU31は、例えば、シフト操作検出時のエンジン回転数が2800rpmでN5のエンジン回転数域にあると仮定すると、連続失火回数をEとして直ちに失火制御を行う。例えば、E=6の場合は、図11(a)に示すように、次気筒の点火タイミング(図11(a)における(1))から失火制御を実施し、6回連続失火(♯5→♯4→♯3→♯2→♯1→♯6の順で失火)を実施し、次の気筒(♯5)は点火する。その後も同様に6回連続失火を行う。この制御によりエンジン回転数が低下し、表1におけるN4のエンジン回転数域となると、連続失火回数をD(例えば、D=3)に変更して3回連続失火に移行する。なお、表1の設定値は、船外機1に搭載されるエンジン5やプロペラ7、船外機1が搭載される船体等の種類に応じて設定される。
一方、上記連続失火制御中にエンジン回転数が急激に低下したときはエンストを引き起こす場合があるので、予め表2に示すような許容可能なエンジン回転数のエンジン回転低下勾配(1点火毎のエンジン回転数低下量)をエンジン回転数域別に設定し、検出されたエンジン回転低下勾配が該設定値を越えた場合には連続失火回数を自動的に変更する。
CPU31は、失火制御中の減速度(回転低下勾配)を演算し、その値が表2における設定値(a〜f)を越えた場合は連続失火回数をX回から(X−1)回に自動的に変更する。例えば、図11(b)に示すように、エンジン回転数域N5で6回連続失火を実施している間に減速度がeを越えた場合、例えば、1点火(失火)の間に300rpm以上エンジン回転数が低下した場合は、6回連続失火を(6−1)回、すなわち5回連続失火に変更する。それでも減速度がeを越えた場合は、さらに(5−1)回連続失火に変更する。なお、(X−n(n:2,3,・・・))回に変更することも可能である。なお、表2の設定値は、表1と同様に、船外機1に搭載されるエンジン5等の種類に応じて設定される。
また、予め表3に示すようなエンジン回転数のエンジン回転低下勾配の下限値をエンジン回転数域別に設定し、該下限値を越えた場合にはエンジン出力低下制御を解除する。
CPU31は、失火制御中の減速度を演算し、その値が表3における下限値(g〜l)を越えた場合はエンジン出力低下制御を解除する。例えば、エンジン回転数域N5で6回連続失火を実施している間に減速度がkを越えた場合、例えば、1点火(失火)の間に500rpm以上エンジン回転数が低下した場合は、エンストにいたると判断してエンジン出力低下制御を直ちに解除する(後述するステップS107)。なお、表3の設定値は、表1,表2と同様に、船外機1に搭載されるエンジン5等の種類に応じて設定される。
上記実施の形態では、エンジン出力低下制御の際に、表1〜表3に基づいて連続失火制御を行っていたが、失火制御に限らず、点火時期を所定の遅角値に変更してエンジン出力を低下させるようにしてもよい。
ところで、シフト操作検出時のエンジン回転数が低いとき(例えば、エンジン回転数域N1のとき)はエンジン出力も小さく、シフト操作力は小さいため、複数回連続して失火制御を行う必要はない。この領域においては、操作力ではなくシフトフィーリングをより良くするために、ドッグクラッチ9dが前進用ギア9b又は後進用ギア9cから抜けてニュートラルになるタイミングを予測し、1回の失火制御又は点火時期の遅角制御を実施する。
この点に関し、本実施の形態では、エンジン回転数が高い場合と低い場合(トローリング)とでは、エンジン出力低下制御の実行タイミングが異なる。すなわち、エンジン回転数が高い場合には、できる限り早く正確にシフト操作を検出し、できる限り早くトルク(エンジン出力)を減少させ、エンジン回転数を低下させるように実行タイミングを早く設定する。これに対してエンジン回転数が低い場合には、複数回数連続して失火制御を実施するとエンストの危険性が増大するため、1回の失火や点火時期遅角の実行タイミングをドッグクラッチ9dが前進用ギア9b又は後進用ギア9cから抜けてニュートラルになるタイミングに合わせる(ニュートラルとなる直前に失火や点火時期遅角を実施する)。
従って、本実施の形態では、エンジン回転数が低い場合は、シフト位置検出器24の出力の変化率(出力変化勾配)からドッグクラッチ9dが抜けてニュートラルとなるタイミングを予測(演算)する。
図12は、シフト操作検出時のエンジン出力低下制御タイミング(実行タイミング)を示す図であり、(a)はシフト操作検出時のエンジン出力低下制御タイミングの例を示し、(b)は誤操作時のシフト位置検出器出力の例を示す。
図12(a)において、シフト位置検出器出力によるシフト操作を検出したタイミングがAの位置であり、実際にドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングがDの位置である。
aは、シフト位置検出器24でシフト操作を検出した直後にエンジン出力低下制御を実施した場合のエンジン回転数の変化を示したものである。この場合は、エンジン出力が低下してエンジン回転数が低下し、エンジン出力低下制御の終了によりエンジン回転数が復帰した後にドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるため、シフト操作力を低減することができない。
これに対して、cは、シフト位置検出器出力のA〜C間の変化率(出力変化勾配)に基づいてドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングDを演算(予測)し、Cのタイミングでエンジン出力低下制御を実施した場合のエンジン回転数の変化を示したものである。この場合、ドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングでエンジン出力低下制御処理を行うことによりエンジン回転数が低下するため、シフト操作力を低減することができる。
また、エンジン回転数が低い場合は、シフト操作を最初に検出するタイミングAからエンジン出力低下制御を実行するタイミングCまでの時間的余裕があるため、シフト操作検出後にもシフト操作が継続されていることをシフト位置検出器出力の変化率(出力変化勾配)から演算してシフト操作検出の精度を上げると共に、該出力の変化率からドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになるタイミングを予測(演算)する。この制御により、操作者がリモコンボックス20のシフト操作レバー(スロットル及びシフトレバー)を握っている際の意図しないシフト操作レバー21の微小変位を検出した場合(例えば、図12(b))の誤制御を防止することができる。
一方、エンジン回転数が低回転域にある場合、リモコンボックス20のシフト操作レバー21はスロットル全閉付近にあってシフト操作可能領域にあるため、シフト操作レバー21の微小な変位によりシフト位置検出器24の出力は変化する。このため、シフト操作レバー21を握っている操作者の動き(シフト操作する意志がない状態での操作者の動き)をシフト操作と誤検出する可能性があるが、上述した制御により、一定時間の連続した変位のみをシフト操作と判別するため、操作者のシフト意志による変位を検出することができる。
低回転でのシフト操作でも、前進からニュートラルにシフトし、さらに後進にシフトする場合等は、操作者が明確な意志を持ってシフト操作を行うため、シフト操作力も大きく、シフト位置検出器24の出力の変化率も大きくなる。
エンジン回転数が中回転域にある場合は、リモコンボックス20のシフト操作レバー21はスロットルを開いた状態にあり、リモコンボックス20の構造上、シフト操作レバー21は動かない構成となっている。よって、シフト操作レバー21を握っている操作者の動きはシフト位置検出器24には伝達されない。
次に、シフト位置検出器24によりシフト位置がニュートラル(N)位置に切り換わったことを検出したときは(図8のステップS106でYES)、エンジン出力低下制御を解除する。シフト位置がN位置にあるか否かは、図12(a)に示すように、規定値Eを設けることにより判別することが可能だが、シフト位置には組付け誤差や各構成部品の公差によりバラツキがあること、同じエンジンでもシフト操作時のシフト操作力によりニュートラルに切り換える位置が異なること等から、シフト位置検出器24の出力の変化量が大きく変化するポイント(図12(a)におけるタイミングD)で検出することが最も正確である。このポイントが、ドッグクラッチ9dが前進用ギア9bから抜けてニュートラルになり、急激にシフト操作レバー21が回動する瞬間である。
また、上述したエンジン回転低下勾配が下限値を越えた場合は(ステップS107でYES)、エンジン出力低下制御を直ちに解除する。さらに、エンジン回転数が設定回転数以下に低下した場合でも(ステップS108でYES)、エンジン出力低下制御を解除する。
シフト位置検出器24の出力勾配が逆転した場合は、シフト操作途中でシフト操作がキャンセルされたものと判定し(ステップS109でYES)、エンジン出力低下制御を解除する。
また、シフト位置検出器24やクランク角信号検出器40等のセンサの故障等により制御解除条件を満たさない場合に備えて設定時間が設けられており、通常であれば短時間(Δt sec)でシフト操作が終了するが、これより長い場合は何らかの異常があると判断し、エンストする前にエンジン出力低下制御を強制解除する(ステップS110でYES)。例えば、上記設定時間は、通常のシフト操作時間の約3倍(3Δt sec)に設定されている。
上記実施の形態では、シフト位置検出器24は、シフト機構における最初の回転部に配置されているが、リモコンボックス20から船外機1内のドッグクラッチ9dまでの間であれば、どの位置に配置されていてもよい。しかしながら、リモコンボックス20〜ドッグクラッチ9d間には、リモコンケーブル22や多数のリンク機構が介在しており、それぞれに遊び(ガタ)やヒステリシスが存在するため、操作者のシフト操作をより早く正確に検出するためには、操作者すなわちリモコンボックス20に近い位置に配置することが望ましい。
図13は、シフト位置検出器24の他の配置例を示す概略図である。
図13において、シフト操作レバー21の回転軸21aに直接、回動式可変抵抗24の回転軸を連結する構成であり、これにより、シフト操作をより早く正確に検出することができる。また、前述したように、リモコンボックス20のシフト操作レバー21は、スロットル開度の開閉操作をも行う構成となっており、シフト操作だけでなく、スロットル開度も同時に検出できるメリットもある。
図14(a)〜(c)及び図15(a)〜(b)は、シフト位置検出器24のさらに他の配置例を示す概略図である。
図14(a)〜(c)及び図15(a)〜(b)において、23aはシフトレバー回転軸、61は前後進切換機構構成ブラケット、62はシフトレバー23に固定された検出レバー回動用突起、63は検出レバー、64はシフト位置の節度設定用の波形プレートであるデテント用プレート、65はシフト節度設定用のボール及びスプリング内蔵部品、66は検出レバー固定板である。
検出レバー63は、シフト位置検出器24内部の可変抵抗回転軸に固定され、シフト位置検出器24内部のスプリング機構により、図15(b)におけるXに示すように、反時計回りに検出レバー回動用突起62に押し付けられる構成となっている。これにより、シフトレバー23と共に回動する検出レバー回動用突起62が、可変抵抗回転軸を中心として検出レバー63を回動し、シフト操作を検出することができる。
検出レバー回動用突起62と接する検出レバー63の接触面63aは曲面で構成されており、シフトレバー23の回転量(角度)に対して検出レバー63の回転量(角度)をある程度任意に設計できるメリットがある。これにより、シフト検出に重要となる角度域(例えば、FからN、RからN等の変化域等)のみ検出分解能を上げることも可能である。例えば、シフトレバー1°の変化に対して、特定域のみ大きな角度で検出レバー63が回動する。これにより、図5に示すような非線形の出力特性とすることができる。
また、検出レバー63のレバー比を任意に設計できるメリットがあり、シフトレバー動作角(図15(b)における角度A°)に対して検出レバー63の動作角(図15(b)における角度B°)を大きく設定できるため、可変抵抗の使用可能角度を最大限利用した構成が可能となる。
また、本構成では、シフトレバー23と可変抵抗の回転軸が直結されておらず、上記スプリング機構が振動を吸収する構成であるため、振動による可変抵抗の回転軸の摩耗、内部抵抗素材やブラシの摩耗を防止して耐振性に優れると共に、シフト位置検出器24の配置にも自由度があり、搭載エンジンの未使用(空き)スペースを活用したコンパクトな構成が可能である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、シフト操作レバー21によるシフト操作をシフト位置検出器24により連続的に検出し、前進位置からニュートラル位置へのシフト操作又は後進位置からニュートラル位置へのシフト操作の初期段階が検出されたときは、その検出時のエンジン回転数が設定回転数以上の場合にエンジン出力低下制御を行い、シフト位置検出器24がニュートラル位置に切り換わったこと検出したときは、エンジン出力低下制御を解除するので、シフト操作の初期段階、即ち操作者がシフト操作レバー21への操作力を増加させる前の状態を検出し、該検出時のエンジン回転数が設定回転数以上の場合に、即ちシフト操作レバー21にかかる操作力が大きくなることが予測される場合にエンジン出力を減少させることにより、従来技術よりも少ない力でシフト操作が可能となり、シフト操作を容易にすることができる。
また、シフト位置検出器24がシフト操作の初期段階を検出したときは、スロットル開度が設定開度以下の場合にエンジン出力を変更する制御を行うので、急加速時や航走中のジャンプ時等にシフト操作以外の外力がシフト操作レバー21に作用したときのシフト操作の誤検出を防止することができる。
また、シフト位置検出器24がシフト操作の初期段階を検出したときは、吸気負圧が設定負圧以下の場合にエンジン出力を変更する制御を行うので、スロットルスナップ時の急激なスロットル開閉に対してエンジン回転数の追従が遅れた場合に生じるシフト操作力の増大を回避することができる。
さらに、シフト位置検出器24がシフト操作レバー21の検出されたシフト位置が前進位置または後進位置の近傍にあることを検出し、且つ検出されたシフト位置の変化量が設定値以上のときは、CPU31がシフト操作の初期段階であると判別するので、シフト位置検出器24の組み付け誤差や出力のバラツキによるシフト操作の誤検出や検出遅れを防止して、シフト操作の有無を迅速且つ正確に判別することができる。
また、CPU31は、予めエンジン回転数域別に設定された連続失火回数または点火時期遅角値に基づいて点火制御を行うことによりエンジン出力を変更するので、様々な条件下でもエンストを防止しつつ、迅速にエンジン出力を低減することができる。
また、CPU31は、エンジンの所定点火回数毎のエンジン回転数の許容低下勾配を設定し、設定された許容低下勾配が設定値を越えた場合に、連続失火回数または点火時期遅角値を変更するので、エンストを防止しつつ、迅速にエンジン出力を低減するという効果をさらに確実に奏することができる。
また、CPU31は、エンジンの所定点火回数毎のエンジン回転数の許容低下勾配の下限値を設定し、エンジン回転数の低下勾配が予め設定された下限値を越えた場合に、エンジン出力を変更する制御を解除するので、エンジン出力変更中のエンストを防止することができる。
さらに、シフト位置検出器24は、船外機1内部の前後進切換機構9の最初の駆動部に設置されるので、船外機1内部の前後進切換機構9における遊びやヒステリシスの影響を受けることなく、操作者のシフト操作を早く、正確に検出することができる。
また、シフト位置検出器24は、船外機1内部の前後進切換機構9を遠隔操作するためのリモコンボックス20に配置されたシフト操作レバー21の駆動部に設置されるので、リモコンボックス20から船外機1のドッグクラッチ9dまでの間に介在する多数のリンク機構における遊びやヒステリシスの影響を受けることなく、操作者のシフト操作をより早く正確に検出することができる。
上記第1の実施の形態では、図8のステップS101をステップS102〜S104の前に行っているが、ステップS104の後に実行してもよい。また、ステップS102〜S104の順序は図8の記載に限定されるものではない。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態は、シフト操作レバー21によるシフト操作をシフト位置検出器24により連続的に検出し、前進位置(F)からニュートラル位置(N)へのシフト操作又は後進位置(R)からニュートラル位置(N)へのシフト操作の初期段階を検出したときにエンジン出力低下制御を行うように構成されている。これに対し、本第2の実施の形態は、ニュートラル位置(N)から前進位置(F)へのシフト操作又はニュートラル位置(N)から後進位置(R)へのシフト操作の初期段階を検出したときにエンジン出力低下制御を行うように構成されている。他の構成については、上記第1の実施の形態と同じ構成であり、その説明は省略すると共に、以下の説明において、第1の実施の形態と同じ部材または機能部品については、同じ符号を用いるものとする。
図16は、本発明の第2の実施の形態に係るシフト操作制御装置のエンジン出力低下制御の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、CPU31のROMに格納された所定のプログラムに基づいて制御装置30のCPU31により実行されるものである。
図16において、まず、CPU31が、シフト位置検出器24の出力に基づいてシフト操作レバー21のシフト位置がニュートラル(N)の位置にあるか否かを判別する(ステップS201)。この判別の結果、シフト操作レバー21のシフト位置がニュートラル(N)の位置にあるときは、操作者によるシフト操作があったか否かを判別する(ステップS202〜S205)。
シフト操作の検出は、上記第1の実施の形態で説明したように、シフト位置検出器24や各構成部品の組付け誤差・公差によるバラツキ、劣化があるため、シフトされたときの位置(絶対値)のみの判定では迅速に行うことが難しい。
例えば、図17(a)において、シフト位置がNのときのシフト位置検出器24の出力BにバラツキB1〜B2があった場合、予め設定されたシフト操作判別用の絶対値Btに基づいてシフト操作の検出を行ったときは、B1の場合はB2の場合に対してシフト操作の検出にΔt分の遅れが生ずる。
一方、シフト位置検出器24の出力がB2の場合には、シフト操作レバー21への無意識の加重等による微妙な動きをシフト操作と誤検出する不具合が生ずる。例えば、操作者がシフト操作レバー21に手をかけている場合は、図17(b)に示すように、シフト操作レバー21への無意識の加重等によりシフト位置検出器24の出力が変動する。この変動を検出して後述するエンジン出力低下制御を行うと、操作者の意図しないエンジン回転数の変動が符号60として生ずる。さらに、図17(b)の符号61に示すように、シフト操作が検出された後にシフト操作をNに戻した場合でも、エンジン回転数の変動が生じる。
そこで、図18に示すように、N位置時のシフト位置検出器24の出力値(例えば、B1やB2の値)をニュートラル(N)学習値として記憶し、そのN学習値に対して幅bを有する不感帯を設定し、シフト位置検出器24の出力が不感帯を越え、且つシフト位置検出器24の出力変化量が予め設定された出力変化量Aを越えた場合に、N→F(又はN→R)のシフト操作有りと判別する。
N学習値は、シフト位置検出器24の出力が上記図5に示すb〜cの範囲にある場合、シフト位置検出器24の一定時間内の出力電圧の変動幅が予め設定された設定値以内にあるときの、N位置時のシフト位置検出器24の出力として記憶される。例えば、イニシャルのN学習値をb1、現在のシフト位置検出器24の出力をb2(b2<b1)とし、一定時間内の出力電圧の変動幅が設定値以内にあってb2付近の値で安定していた場合、b1に微量の所定値b3を減算した値を新しいN学習値(N学習値=b1−b3)とする。
一方、現在のシフト位置検出器24の出力をb4(b4>b1)とし、一定時間内の出力電圧の変動幅が設定値以内にあってb4付近に安定していた場合は、b1にb3を加算した値を新しいN学習値(N学習値=b1+b3)とする。この方法を繰り返すことによりN学習値は収束し、経年劣化等によりN位置での出力値が変化した場合でも、学習機能により新たなN学習値が設定されるため、シフト操作の有無を迅速かつ正確に検出することができる。
また、図17(b)における符号61に示すように、シフト操作が検出された後にシフト操作をNに戻した場合でも、エンジン回転数の変動が生じる。そこで、シフト位置検出器24の出力が幅bを有する不感帯を越え、且つシフト位置検出器24の出力変化量が予め設定された出力変化量を越えたときにシフト操作有りと判別する。
シフト位置検出器24の出力変化量は、直前ではなく、一定時間前のシフト位置検出器出力と現在のシフト位置検出器出力とを比較する。すなわち、図19に示すように、短いサンプリング間隔(例えば、10ms間隔)でシフト位置検出器24の出力を測定し、現在のタイミング(時刻)Tb時の出力電圧VbとTbよりも一定時間(例えば、200ms)前のタイミングTa時の出力電圧Vaとの変化量(Va−Vb)を演算し、その変化量が増加方向(N→Rの場合は減少方向)で出力変化量A(例えば、100mV)以上の場合にシフト操作ありと判別する。
これにより、N学習値に対して設定された幅bの不感帯を越えてシフト位置検出器24の出力が変動しても、容易にエンジン出力低下制御を実施しないように制御することができる。なお、ノイズやシフト位置検出器24への何らかの外力(衝撃)等により誤検出しないように、出力変化量が所定の出力変化量A以上なったか否かを複数回連続して判定するようにしてもよい。
図16に戻り、ステップS202では、上述した方法により得られたシフト位置検出器24の出力変化量(勾配)によりシフトスピードを検出し、該シフトスピードが所定の出力変化量Aを越えた(出力変化量>A)か否かを判別する。この判別の結果、所定の出力変化量Aを越えたときは(ステップS202でYES)、急加速と判定してステップS201へ戻る。これは、N→Fに素早くシフト操作が行われる急加速時にエンジン出力低下制御を実行すると、図20に示すように、エンジン回転数が一旦落ち込んで息つき62が発生し、加速性が低下する不具合が生じる。この不具合を防止するために、不感帯内においても、シフト位置検出器24の出力変化量が所定の出力変化量Aを越えた場合は、急加速と判定してエンジン出力低下制御を実施しない。
船外機の場合、シフトとスロットルを操作するレバーは共通であり、Nから急加速する場合は、図20に示すように、スロットルを急激に開く前におのずとシフト位置検出器24の出力が急変するため、シフト位置検出器24の出力変化量(勾配)から急加速時と定常時のシフト操作の判別が可能である。
シフト位置検出器24の出力変化量が所定の出力変化量Aを越えていないときは(ステップS202でNO)、シフト位置検出器24の出力値が(N学習値−b)<出力値<(N学習値+b)の範囲にあるか否かを判別する(ステップS203)。これは、上述したように、N学習値に対してそれぞれ幅bを有する不感帯内にシフト位置検出器24から出力された出力値があるか否かを判別するものである。
ステップS203の判別の結果、シフト位置検出器24の出力値が、(N学習値−b)<出力値<(N学習値+b)の範囲にないときは、出力変化量(勾配)が所定の出力変化量A≧出力変化量(勾配)≧所定の出力変化量Bの関係にあるか否かを判別する(ステップS204)。所定の出力変化量B(B<A)は任意に設定された値である。これは、出力変化量の勾配を検出して、シフトINタイミングを予測演算するためのものである。また、出力変化量は、図19に示すように、設定時間前の出力との比較により得られるものであるが、設定時間はそれほど長いものではなく、短い場合は、サンプリング間隔になる。よって、出力変化量は勾配と同じ意味を有する値とみなすことができ、出力変化量に代えて勾配を用いてもよい。但し、勾配を用いる場合、当然、上記A,Bは勾配用に設定された値となる。この判別の結果、出力変化量(勾配)がA≧出力変化量(勾配)≧Bの関係にあるときは、シフト操作ありと判別してステップS206へ進む。
一方、出力変化量(勾配)がA≧出力変化量(勾配)≧Bの関係にないときは(ステップS204でNO)、さらに出力変化量(勾配)が所定の出力変化量B≧出力変化量(勾配)≧所定の出力変化量Cの関係にあるか否かを判別する(ステップS205)。これは、シフトスピードが遅いか否かを判断するものである。所定の出力変化量Cは上記A,B(A>B>C)と共に任意に設定された値である。
ステップS205の判別の結果、出力変化量(勾配)がB≧出力変化量の勾配≧Cの関係にないときは(ステップS205でNO)、シフトスピードが遅い場合であると判断して、複数回に渡ってシフト操作有無を検出するためにステップS201へ戻る。これにより、シフト操作の検出精度を向上させることができる。
一方、出力変化量(勾配)がB≧出力変化量(勾配)≧Cの関係にあるときは(ステップS205でYES)、シフト操作ありと判別してステップS206へ進む。なお、出力変化量が0になった場合や出力変化量の勾配が逆勾配になった場合もエンジン出力低下制御を実施しない。
次に、ステップS206では、エンジン出力低下制御処理を実施する。
シフト操作が検出された後は、実際にシフト位置がNからFに切り替わるまでの時間が非常に短いため、エンストをさせない範囲でできる限り素早くエンジン回転数を低下させる必要がある。そこで、エンジン5の点火時期を遅角する(または失火させる)気筒を特定せず、シフト操作検出直後の点火予定気筒から遅角(または失火)制御を実施することがエンジン出力を低下するには有効である。
本エンジン出力低下制御では、シフト位置がNからFに切り替わった後もしばらくエンジン出力低下制御を継続してエンジン回転数を低下させ、その後徐々に定常回転数に戻すこと、すなわち遅角した点火時期を徐々に正規点火時期に戻すことでシフト操作時のショックをさらに低減している。
なお、上記遅角制御または失火制御に限らず、同様の考え方で燃料噴射量や吸入空気量制御(バイパス空気量の制御等)を実施してエンジンの駆動トルクを減少させることも可能である。ただし、燃料噴射量や吸入空気量の制御は、変更した燃料噴射量や吸入空気量が燃焼室に入って駆動力が低下するのが数サイクル後であるのに対して、失火制御や遅角制御である点火制御は制御開始直後から駆動力が低下するので、その効果が大きい。
図21は、エンジン出力低下制御の処理を示すタイミングチャートである。
図21において、t1はシフト操作の始点、t2は不感帯を越えた時点、t3は出力変化量が増加方向で所定値を越えた時点を示す。
本エンジン出力低下制御では、図21に示すように、t3においてシフト操作が検出されると、直ちに正規の点火時期から所定量(点火時期遅角量a)を遅角して遅角制御を実施する。
一方、点火時期の遅角制御実施中にエンジン回転数が急激に低下したときはエンストを引き起こす場合があるので、許容可能なエンジン回転数のエンジン回転低下勾配(1点火毎のエンジン回転数低下量)を設定し、エンジン回転低下量を常に演算して求め、エンジン回転低下量が予め設定された設定値よりも大きい場合はエンスト防止のために、例えば点火時期遅角量をaからa′に変更して、エンジン出力低下制御量を変更する。
また、エンストを防止するために、図21における符号63に示すように、吸入空気量を制御するようにしてもよい。吸入空気量を制御する場合には、点火時期を遅角する(または失火させる)と共に、シフト操作時にエンジン回転低下量が急激に低下する場合(例えば、プロペラ側からの負荷が大きい場合)に備えて吸入空気量を増量する(図21の符号61)。
そして、プロペラ側からの負荷が大きく所定値以上のエンジン回転低下量になった場合は、エンストの恐れがあるため、エンジン出力低下制御を解除して遅角させた点火時期を正規の点火時期に戻すかもしくは進角させる点火時期制御を行うと共に、予め増量しておいた吸入空気量を制御してエンストを防止する。
なお、吸入空気量の制御は、変更した燃料噴射量や吸入空気量が燃焼室に入って駆動力が低下するのが数サイクル後であるため、瞬時のエンジン出力低下が必要(効果が大きい)なときのエンジン出力低下制御には使用されない。吸入空気量を予め増量しておくのは、所定値以上のエンジン回転低下量が発生した場合のエンストを防止するためである。
また、本エンジン出力低下制御において、シフト位置検出器24の出力変化量(勾配)によりシフトスピードを検出し、該シフトスピードに応じてエンジン出力低下制御量を変更するようにしてもよい。図22(b)に示すように、シフトスピードが遅い場合はシフト操作有無の検出を複数回実施するとよい。これにより、シフト操作有無の検出精度を向上させることができる。一方、図22(a)に示すように、シフトスピードが速い場合は急加速と判定する。
また、本エンジン出力低下制御において、エンジンの暖機状態によりエンジン出力低下制御量を変更するようにしてもよい。冷機時には、エンジン内のフリクションが多く、エンジン温度や冷却水温度等から暖機状態を判別して、エンジン出力低下制御量を変更する。
なお、エンジン出力低下制御時には、タコメータ出力を制御する。すなわち、短時間ではあるが、定常のアイドル回転数よりも大きくエンジン回転数が低下し、タコメータの指針が大きく低下するため、操作者に違和感や不安感を与える不具合がある。この不具合を防止するために、エンジン出力低下制御時には設定回転数以下の表示にならないようにタコメータ出力を制御する。
エンジン出力低下制御の実施後に、エンジン回転数のエンジン回転低下量が設定値よりも大きい場合は、エンジン出力低下制御量を減じる。一方、エンジン回転低下量が限界設定値よりも大きい場合は、エンジン出力低下制御を解除するか、場合によってはエンジン出力上昇制御を実施する。
図16に戻って、エンジン回転低下量(エンジン回転低下勾配)が予め設定された下限値を越えた場合は(ステップS207でYES)、エンストが発生するおそれがあるために、エンジン出力低下制御を直ちに解除する。さらに、エンジン回転数が設定回転数以下に低下した場合でも(ステップS208でYES)、エンジン出力低下制御を解除する。
また、シフト位置検出器24の出力変化量の勾配が逆転した場合は、シフト操作途中でシフト操作がキャンセルされたものと判定し(ステップS209でYES)、エンジン出力低下制御を解除する。なお、シフト位置がN位置からF位置(またはR位置)に変更されたときにエンジン出力低下制御を解除するようにしてもよい。
次に、エンジン出力低下制御開始から設定時間(例えば、図21におけるc)が経過したか否かを判別し(ステップS210)、設定時間が経過したときは、遅角した点火時期を正規の点火時期に徐々に復帰させる(ステップS211)。設定時間(c)は、搭載される船体(形状、重量、積載量)とプロペラの負荷に応じて設定される値である。なお、シフト操作方向が逆になった場合や暖機状態が変化した場合でも同様に点火時期を復帰させるようにしてもよい。
また、シフト操作検出において、シフト操作レバー21の微妙な動き(シフト操作レバー21への無意識の加重やシフト位置検出器24の出力変動)をシフト操作ありとして誤検出しないようにしているが、シフト操作検出後もシフト位置検出器24の出力変化量を常に検出し、図17(b)に示すように、逆方向の出力変化があった場合や出力変化が無くなった場合(例えば、シフト操作レバー21をシフト操作途中で固定した場合)は、すぐにエンジン出力低下制御を解除するようにしてもよい。
上記エンジン出力低下制御では、N→Fにシフト操作された場合を説明したが、N→Fにシフトする場合とN→Rにシフトする場合とで分け、点火時期遅角量や吸入空気量等を含むエンジン出力低下制御量やエンジン回転低下勾配、エンジン回転低下勾配下限値等を、シフト操作方向別に独立して設定して制御を行う。
次に、シフト操作レバー21がF→Nに切り替えられたときに船速がある場合の処理を図23を参照して説明する。
図23は、シフト操作レバー21がF→Nに切り替えられたときに船速がある場合の処理手順を示す図である。
図23において、まず、F→Nにシフト操作が行われたか否かを判別し(ステップS300)、F→Nへのシフト操作検出時のエンジン回転数及びN位置にシフトされた後にN位置が維持された継続時間に基づいて船体の進行方向(前進か後進か)と船速を判定する(ステップS301〜S304)。
例えば、全開運転→急減速→FからNへのシフト操作→アイドル回転数維持の場合や、その後アイドル状態が10sec間継続している場合でも船速がある場合がある。そのため、アイドル状態が継続した場合にのみエンジン出力低下制御を行う設定では、エンジン停止または微速運転状態でシフト操作を繰り返す(F→N→R→N→F→N→R・・・)場合には、エンジン出力低下制御が働かず、シフト時のショックが発生してしまう不具合が生ずる。
そこで、シフト操作検出時のエンジン回転数を検出し(ステップS301)、そのエンジン回転数から表4に基づいてXn,Ynを設定する(ステップS302)。表4において、X1〜Xnは、N→Rシフト操作時のエンジン出力低下制御禁止時間であり、Y1〜Ynは、N→Rシフト操作時のエンジン出力上昇制御移行判定時間である。
次に、N→Rシフト操作を検出した後(ステップS303)、F→Nシフト操作検出時からN→Rシフト操作検出時までの経過時間tを演算する(ステップS304)。
経過時間tをステップS302で設定されたXn(n:1,2,・・・,n)と比較してt<Xnのときは(ステップS305でYES)、前進方向の船速が大きいと判断して、N→Rへのシフト操作時にはエンジン出力上昇制御を実施する(ステップS301)。
一方、Xn≦t≦Ynのときは(ステップS306でYES)、前進方向の船速があると判断して、N→Rへのシフト操作時にはエンジン出力低下制御を禁止する(ステップS309)。さらに、t>Ynのときは(ステップS307でYES)、エンジン出力低下制御を許可する(ステップS308)。これにより、F→Nへのシフト操作が行われた後であって船速があるうちに、N→Rにシフト操作が行われても、シフトショックを低減することができる。
例えば、船体がスロットル全開、エンジン回転数6000rpmで走行中に、F→Nのシフト操作が行われた場合は、シフト操作直後の船速が大きいと容易に判定することができる。そこで、エンジン回転数Na=5000〜6000rpm、Xa=10sec、Ya=20secと設定されている場合、シフト操作(F→N)後にt=5secでN→Rにシフト操作されたときは、エンジン出力上昇制御が実施される。
一方、t=15secでN→Rにシフト操作されたときは、エンジン出力低下制御は禁止される。さらに、t=25secでN→Rにシフト操作されたときは、エンジン出力低下制御が許可され、該制御が実施される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、シフト操作レバー21によるシフト操作をシフト位置検出器24により連続的に検出し、シフト位置検出器24によりニュートラル位置から前進位置へのシフト操作又はニュートラル位置から後進位置へのシフト操作の初期段階が検出されたときは、エンジン出力を変更する制御を行ない、設定時間経過後にエンジン出力を変更する制御を解除するので、シフト操作の初期段階、即ち操作者がシフト操作レバー21への操作力を増加させる前の状態を検出し、エンジン出力を減少させることにより、シフト操作時のショックを低減し、シフト操作を容易にすることができる。
また、シフト位置検出器24により検出されたシフト位置がニュートラル位置の近傍にあって、検出されたシフト位置の出力変化量が所定の出力変化量A以上あり、且つニュートラル位置に対して設定された設定値bを越えたときは、シフト操作の初期段階であると判別するので、シフト位置検出器24の組み付け誤差や出力のバラツキによるシフト操作の誤検出や検出遅れを防止して、シフト操作の有無を迅速且つ正確に判別することができる。
また、シフト位置検出器24によりニュートラル位置の出力値の変動を検出したときは、変動後のニュートラル位置の出力値を学習するので、経年劣化等によりN位置での出力値が変化した場合でも、学習機能により新たなN学習値が設定されるため、シフト操作の有無を迅速かつ正確に検出することができる。
また、シフト位置検出器24により検出されたシフト位置の変化量からシフトスピードを判定し、シフトスピードが出力変化量A以下であると判定したときはエンジン出力を変更するので、急加速時のエンジン出力変更制御を制限して、息つきの発生を防止することができる。
また、前進位置から中立位置へのシフト操作時のエンジン回転数とニュートラル位置が維持された継続時間により船速を判定し、当該船速が設定値以下であるときは、エンジン出力を変更するので、シフト操作時のショックを低減し、シフト操作を容易にすることができる。
また、失火または遅角制御によりエンジン出力の変更を行なうと共に、吸入空気量を増量してエンジン出力を変更するので、様々な条件下でもエンストを防止しつつ、迅速にエンジン出力を低減することができる。
また、設定時間経過前に所定のエンジン出力変更制御の解除条件を満たしたときは、直ちにエンジン出力を変更する制御を解除するので、様々な条件下でもエンストを防止しつつ、迅速にエンジン出力を低減することができる。