図1は本発明の実施の一形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図であり、図2は図1に示す電子写真感光体1を備える本発明の実施の他の形態である画像形成装置2の構成を簡略化して示す配置側面図である。
電子写真感光体1(以後、感光体と略称する)は、導電性素材からなる導電性支持体3と、導電性支持体3上に積層される下引層4と、下引層4上に積層される層であって電荷発生物質を含む電荷発生層5と、電荷発生層5の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含む電荷輸送層6とを含む。電荷発生層5と電荷輸送層6とは、感光層7を構成する。
導電性支持体3は、円筒形状を有し、(a)アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケルなどの金属材料、(b)ポリエステルフィルム、フェノール樹脂パイプ、紙管などの絶縁性物質の表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウムなどの導電性層を設けたものが好適に用いられ、その体積抵抗が1010Ω・cm以下の導電性を有するものが好ましい。導電性支持体3には、前述の体積抵抗を調整する目的で表面に酸化処理が施されてもよい。導電性支持体3は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに他の各層4,5,6の支持部材としても機能する。なお導電性支持体3の形状は、円筒形に限定されることなく、板状、フィルム状およびベルト状のいずれであってもよい。
下引層4は、たとえば、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アルミニウム陽極酸化被膜、ゼラチン、でんぷん、カゼイン、N−メトキシメチル化ナイロンなどによって形成される。また酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムなどの粒子を下引層4中に分散させてもよい。下引層4の膜厚は、約0.1〜10μmに形成される。この下引層4は、導電性支持体3と感光層7との接着層としての役割を果たすとともに、導電性支持体3から電荷が感光層7へ流れ込むのを抑制するバリア層としても機能する。このように下引層4は感光体1の帯電特性を維持するように作用するので、感光体1の寿命を延ばすことができる。
電荷発生層5は、公知の電荷発生物質を含んで構成することができる。電荷発生物質には、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機顔料、有機顔料および有機染料のいずれをも用いることができる。無機顔料としては、セレンおよびその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、キナクドリン系化合物、多環キノン系化合物、ペリレン系化合物などが挙げられる。有機染料としては、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩などが挙げられる。前述の電荷発生物質の中でも、好ましくは、有機顔料または有機染料などの有機光導電性化合物が用いられ、さらに有機光導電性化合物の中でも、フタロシアニン系化合物が好適に用いられる。特にチタニルフタロシアニン化合物を用いることが最適であり、良好な感度特性、帯電特性および再現性が得られる。
前述の列挙した顔料および染料の他に、電荷発生層5には、化学増感剤または光学増感剤を添加してもよい。化学増感剤として、電子受容性物質、たとえば、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどのシアノ化合物、アントラキノン、p−ベンゾキノンなどのキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどのニトロ化合物が挙げられる。光学増感剤として、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン系色素などの色素が挙げられる。
電荷発生層5は、前述の電荷発生物質をバインダ樹脂とともに、適当な溶媒中に分散させ、下引層4上に積層し、乾燥または硬化させて成膜する。バインダ樹脂としては、具体的に、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアクリレートなどが挙げられる。溶媒としては、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロルベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
なお溶媒は、前述のものに限定されることなく、アルコール系、ケトン系、アミド系、エステル系、エーテル系、炭化水素系、塩素化炭化水素系、芳香族系のうちから選択されるいずれかの溶媒系を、単独または混合して用いてもよい。ただし、電荷発生物質の粉砕およびミリング時の結晶転移に基づく感度低下、およびポットライフによる特性低下を考慮した場合、無機および有機顔料において結晶転移を起こしにくいシクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、テトラヒドロキノンのいずれかを用いることが好ましい。
電荷発生層5の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの気相堆積法または塗布方法などを適用することができる。塗布方法を用いる場合、電荷発生物質をボールミル、サンドグラインダ、ペイントシェイカー、超音波分散機などによって粉砕して溶剤に分散し、必要に応じてバインダ樹脂を加えた塗布液を、公知の塗布法によって下引層4上に塗布する。下引層4の形成される導電性支持体3が円筒状の場合、塗布法にはスプレイ法、垂直型リング法、浸漬塗布法などを用いることができる。電荷発生層5の膜厚は、約0.05〜5μmであることが好ましく、より好ましくは約0.1〜1μmである。
なお下引層4の形成されている導電性支持体3の形状がシートの場合、塗布法にはアプリケーター、バーコーター、キャスティング、スピンコートなどを用いることができる。
電荷輸送層6は、公知の電荷輸送物質と結着樹脂とを含んで構成することができる。電荷輸送物質は、電荷発生層5に含まれる電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、これを輸送する能力を有するものであればよい。電荷輸送物質としては、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−g−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等の電子供与性物質が挙げられる。
電荷輸送層6を構成する結着樹脂としては、電荷輸送物質と相溶性を有するものであればよく、たとえば、ポリカーボネートおよび共重合ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリケトン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂およびポリスルホン樹脂、それらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を単独または2種以上混合して用いてもよい。前述の結着樹脂の中でもポリスチレン、ポリカーボネートおよび共重合ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルなどの樹脂は、1013Ω以上の体積抵抗率を有し、成膜性や電位特性などにも優れている。
またこれらの材料を溶解させる溶剤は、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンやジオキソランなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタンやジクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンなどの芳香族類などを用いることができる。
電荷輸送層6を形成するための電荷輸送層用塗布液は、結着樹脂溶液中へ電荷輸送物質を溶解して調製される。電荷輸送層6に占める電荷輸送物質の割合は、30〜80重量%の範囲が好ましい。電荷発生層5上への電荷輸送層6の形成は、前述の下引層4上に電荷発生層5を形成したのと同様にして行われる。電荷輸送層6の膜厚は、10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。
また、電荷輸送層6は、1種以上の電子受容性物質および/または色素を含有させることによって、感度の向上を図り繰返し使用時の残留電位の上昇、疲労などを抑えるようにしてもよい。電子受容性物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環または複素環ニトロ化合物が挙げられ、これらを化学増感剤として用いることができる。
色素としては、たとえば、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物が挙げられ、これらを光学増感剤として用いることができる。
さらに、電荷輸送層6には、公知の可塑剤を含有させることによって、成形性、可撓性および機械的強度を向上させるようにしてもよい。可塑剤としては、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などが挙げられる。また、感光層7には、必要に応じてポリシロキサンなどのゆず肌防止のためのレベリング剤、耐久性向上のためフェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有してもよい。
前述のように構成される感光体1の表面皮膜物性、すなわち本実施の形態では膜状に形成される感光層7の表面皮膜物性は、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、表面に押込み最大荷重30mNを負荷した場合のクリープ値CITが、2.70%以上好ましくは3.00%以上であり、かつ表面のビッカース硬さHVが、20.00以上25.00以下であるように設定される。
以下クリープ値CITについて説明する。一般的に固体材料は、比較的低荷重のときであっても、負荷荷重の保持時間の経過に伴って、徐々に連続的な変形現象いわゆるクリープを発現し、特に有機高分子材料ではクリープが顕著に現れる。クリープは、大別すると遅延弾性変形成分と塑性変形成分とを含み、材料の柔軟性を表す指標として用いられている。図3は、感光体のクリープ値CITおよびビッカース硬さHVを求める方法を説明する図である。クリープ値CITは、圧子を介して感光体の表面に予め定める荷重を一定時間負荷した状態での圧子の押込み量の変化量、すなわち押込み荷重に対する感光体表面皮膜の緩和の程度を評価するパラメータである。
図3に示すヒステリシスライン8は、感光体1の表面に押込み荷重負荷を開始して予め定める押込み最大荷重Fmaxに達するまでの押込み過程(A→B)、押込み最大荷重Fmaxで一定時間t保持する負荷荷重保持過程(B→C)、除荷を開始して荷重零(0)に達して除荷を完了するまでの除荷過程(C→D)の変形(押込み深さ変化)履歴を示し、クリープ値CITは、負荷荷重保持過程(B→C)における押込み量の変化量で与えられる。
本実施の形態では、クリープ値CITは、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、圧子に四角錘のダイヤモンド圧子(Vickers圧子)を用い、押込み最大荷重Fmax=30mNで、一定時間t=5秒負荷保持する条件にて測定した。クリープ値CITは、具体的に式(1)によって与えられる。
CIT=100×(h2−h1)/h1 …(1)
ここで、h1:最大荷重30mNに達した時点(B)における押込み深さ
h2:最大荷重30mNで時間t保持した時点(C)における押込み深さ
このようなクリープ値CITは、たとえばフィッシャースコープH100V(株式会社フィッシャー・インストルメント製)によって求められる。
感光体1の表面のクリープ値CITを限定する理由について説明する。感光体1の表面は、クリーニング部材等が押圧されるときに与えられるエネルギーによって変形するが、クリープ値CITを2.70%以上にして柔軟性を付与することによって、変形による内部エネルギーが緩和(分散)され、磨耗の進行が抑制される。すなわち感光体の耐磨耗寿命が向上される。クリープ値CITが2.70%未満では、感光体表面の柔軟性が劣り、クリーニング部材等との擦過による耐磨耗性が低下し、電子写真感光体寿命が短くなる。
なお、クリープ値CITの上限は、特に限定されることはないが、好ましくは5.0%以下に設定される。クリープ値CITが5.0%を超えると、感光体表面が柔軟に過ぎ、たとえばクリーニング部材による擦過時の押込み変形量が大きく、充分なクリーニング効果の得られないことがある。
次に、ビッカース硬さHVについて説明する。ビッカース硬さHVは、材料の塑性の指標であり、日本工業規格(JIS)Z2244に準じて求められる。本実施の形態におけるビッカース硬さHVは、まず先のクリープ値CITを求める際のヒステリシスライン8のうち、除荷過程(C→D)において得られる除荷曲線のC点に対する接線が、押込み深さ軸と交差する切片hrと、押込み最大荷重Fmaxとから塑性変形硬さHuplastを求め、この塑性変形硬さHuplastに対応する値として求められる。具体的に塑性変形硬さ
Huplastは、式(2)によって得られる。
Huplast=Fmax/A(hr) …(2)
ここで、A(hr)は、反発押込み深さと呼ぶ先の切片hrにおける圧痕表面積であり、A(hr)=26.43・hr2で与えられる。
図4は、ビッカース硬さHVと塑性変形硬さHuplastとの関係を示す図である。図4に示すように、ビッカース硬さHVと塑性変形硬さHuplastとの間には、極めて高い相関があるので、塑性変形硬さHuplastに対応するビッカース硬さHVを求めることができる。塑性変形硬さHuplastからビッカース硬さHVへの換算も含めて、このようなビッカース硬さHVは、先のクリープ値CITと同様に、たとえばフィッシャースコープH100Vによって求めることができる。
感光体1の表面のビッカース硬さHVを限定する理由について説明する。HVが20.00未満では、電子写真方式に用いられる感光体として表面の機械的強度が不足する。またHVが25.00を超えると、感光体表面の脆さが露呈し、感光体表面におけるきずの発生が増加し、耐久性が悪化する。したがって、ビッカース硬さHVを、20.00以上25.00以下とした。
クリープ値CITと、ビッカース硬さHVとが、特定の範囲になるように設定される感光体1は、その表面層すなわち感光層7を形成する膜の柔軟性が保たれ、かつ、膜の塑性が軟質過ぎることなく、また脆くもない。したがって、帯電、露光、現像、転写、クリーニングおよび除電の画像形成が繰返し行なわれる長期間の使用においても、電子写真感光体の膜べり量が軽減されるので、クリーニング性の劣るガラス転移点(Tg)の低いトナーおよび平均円形度の高いトナーを用い、良好なクリーニング性能を維持するために、クリーニングブレードを高い線圧で用いても、感光体1の寿命が短くなることがない。また膜のきず発生も軽減されて感光体表面の平滑性が保たれるので、形成される画像にきずおよび濃度むらの発生を防止することができる。
感光体1表面のクリープ値CITおよびビッカース硬さHVの調整は、感光層7を構成する電荷輸送材料および結着樹脂の種類と配合比、感光層7の積層構造たとえば電荷発生層5の厚みと電荷輸送層6の厚みとの組合せ、また電荷発生層5および電荷輸送層6形成後の熱処理条件等の制御によって実現される。
以下感光体1における静電潜像形成動作について簡単に説明する。感光体1に形成される感光層7は、非接触方式の帯電器などによってたとえば負に一様に帯電され、帯電された状態で電荷発生層5に吸収波長を有する光が照射されると、電荷発生層5中に電子および正孔の電荷が発生する。正孔は、電荷輸送層6に含まれる電荷輸送物質によって感光体1表面に移動されて表面の負電荷を中和し、電荷発生層5中の電子は、正電荷が誘起された導電性支持体3の側に移動し、正電荷を中和する。このように、感光層7には、露光された部位の帯電量と露光されなかった部位の帯電量とに差異が生じて静電潜像が形成される。
次に図2を参照し、前述の感光体1を備える画像形成装置2の構成および画像形成動作について説明する。本実施の形態として例示する画像形成装置2は、複写機2である。
複写機2は、大略スキャナ部11と、レーザー記録部12とを含む構成である。スキャナ部11は、透明ガラスからなる原稿載置台13と、原稿載置台13上へ自動的に原稿を供給搬送するための両面対応自動原稿送り装置(RADF)14と、原稿載置台13上に載置された原稿の画像を走査して読み取るための原稿画像読み取りユニットであるスキャナユニット15とを含む。このスキャナ部11にて読み取られた原稿画像は、画像データとして画像データ入力部へと送られ、画像データに対して所定の画像処理が施される。RADF14には、RADF14に備わる図示しない原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットしておき、セットされた原稿を1枚ずつ自動的に原稿載置台13上へ送給する装置である。またRADF14は、オペレーターの選択に応じて原稿の片面または両面をスキャナユニット15に読み取らせるように、片面原稿のための搬送経路、両面原稿のための搬送経路、搬送経路切り換え手段、各部を通過する原稿の状態を把握し管理するセンサー群、制御部などを含んで構成される。
スキャナユニット15は、原稿面上を露光するランプリフレクターアセンブリ16と、原稿からの反射光像を電荷結合素子(略称CCD)23に導くために原稿からの反射光を反射する第1反射ミラー17を搭載する第1走査ユニット18と、第1反射ミラー17からの反射光像をCCD23に導くための第2および第3反射ミラー19,20を搭載する第2走査ユニット21と、原稿からの反射光像を前述の各反射ミラー17,19,20を介して電気的画像信号に変換するCCD23上に結像させるための光学レンズ22と、前記CCD23とを含む構成である。
スキャナ部11は、RADF14とスキャナユニット15との関連動作によって、原稿載置台13上に読取るべき原稿を順次送給させるとともに、原稿載置台13の下面に沿ってスキャナユニット15を移動させて原稿画像を読取るように構成される。第1走査ユニット18は、原稿載置台13に沿って原稿画像の読取り方向(図2では紙面に向って左から右)に一定速度Vで走査され、また第2走査ユニット21は、その速度Vに対して2分の1(V/2)の速度で同一方向に平行に走査される。この第1および第2走査ユニット18,21の動作によって、原稿載置台13上に載置された原稿画像を1ライン毎に順次CCD23へ結像させて画像を読取ることができる。
原稿画像をスキャナユニット15で読取って得られた画像データは、画像処理部へ送られ、各種画像処理が施された後、画像処理部のメモリに一旦記憶され、出力指示に応じてメモリ内の画像を読出してレーザー記録部12に転送して記録媒体である記録紙上に画像を形成させる。
レーザー記録部12は、記録紙の搬送系33と、レーザー書込みユニット26と、画像を形成するための電子写真プロセス部27とを備える。レーザー書込みユニット26は、前述のスキャナユニット15にて読取られてメモリに記憶された後にメモリから読出される画像データ、または外部の装置から転送される画像データに応じてレーザー光を出射する半導体レーザー光源と、レーザー光を等角速度偏向するポリゴンミラーと、等角速度で偏向されたレーザー光が電子写真プロセス部27に備えられる感光体1上で等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどを含む。
電子写真プロセス部27は、前述の感光体1の周囲に非接触帯電器28、現像手段である現像器29、転写手段である転写器30、クリーニング手段であるクリーニング器31が、矢符32で示す感光体1の回転方向の上流側から下流側に向ってこの順番に備えられる。前述のように感光体1は、非接触帯電器28によって一様に帯電され、帯電された状態で電子写真プロセス部27から出射される原稿画像データに対応するレーザー光によって露光される。露光されることによって感光体1表面に形成される静電潜像は、現像器29から供給されるトナーによって現像され、可視像であるトナー画像となる。感光体1表面に形成されたトナー画像は、後述する搬送系33によって供給される転写材である記録紙上に転写器30によって転写される。
トナー画像が記録紙に転写された後、さらに矢符32方向に回転する感光体1は、その表面がクリーニング器31に備わるクリーニングブレード31aによって擦過される。クリーニング器31に備わるクリーニングブレード31aの素材には、一般に「感光体を汚染したりきず付けたりしないこと」、「耐摩耗性に優れること」、「圧縮・引張永久歪が小さいこと」、などの性能が要求される。このようなクリーニングブレード31aの素材にはゴム弾性体が好適に用いられ、ゴム弾性体としては、たとえば、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等のゴム弾性を有するものが挙げられ、中でも耐摩耗性および永久変形性の点からポリウレタンゴムが好ましい。さらに、永久歪が小さいことから2液性熱硬化型ポリウレタンゴム材料が、より好ましい。ポリウレタンゴムに用いる硬化剤としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ハイドロキノンジエチロールエーテル、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の一般的なウレタン硬化剤を用いることができる。
なお、クリーニングブレード31aは、一種類のゴム弾性体から構成されてもよく、また、予め成形したゴム弾性体に、別途成形したゴム弾性体を、感光体1に対する当接部材として先端部に装着するようにして構成されてもよい。クリーニングブレード31aの感光体1に対する当接形態は、感光体1の回転方向32に対し、順方向およびカウンター方向のいずれであってもよいが、カウンター方向の方が、クリーニング特性が高くかつフィルミング除去能力が高いので、より好ましい。
このように設けられるクリーニング器31のクリーニングブレード31aが感光体1に当接する線圧は、20gf/cm(1.96×10−1N/cm)以上、50gf/cm(4.90×10−1N/cm)以下の範囲に設定される。線圧が20gf/cm未満であると、記録紙へ転写されることなく感光体表面に残った残留トナーを掻取ることができず、画像上にかぶりとなって現れるクリーニング不良を引き起こす。一方、線圧が50gf/cmを超えると、良好なクリーニング性能を得ることはできるが、クリーニング時に感光体の表面を研削し、感光体の膜べり量を大きくするので、感光体の寿命が短くなり、そのためメンテナンスコストが高くなる。したがって、クリーニングブレード31aの感光体1に対する線圧を、20gf/cm以上、50gf/cm以下とした。
このクリーニングブレード31aの線圧の調整は、たとえば次のようにして実現できる。秤にクリーニングブレード31aの先端エッジを押当てて測定する方法、また感光体1とクリーニングブレード31aの先端エッジとの圧接部にロードセル等のセンサを配置して電気的に測定する方法などである。クリーニング器31を装置本体に装着する際、クリーニングブレード31aの線圧が、上記のようにして予め所望の値に調整される。
記録紙の搬送系33は、画像形成を行う電子写真プロセス部27の特に転写器30の配置される転写位置へ記録紙を搬送する搬送部34と、搬送部34へ記録紙を送込むための第1〜第3カセット給紙装置35,36,37と、所望の寸法の記録紙を適宜給紙するための手差給紙装置38と、感光体1から記録紙に転写された画像、特にトナー画像を定着する定着器39と、トナー画像定着後の記録紙の裏面(トナー画像の形成された表面の反対側の面)に、さらに画像を形成するために記録紙を再供給するための再供給経路40とを含む。この搬送系33の搬送経路上には、多数の搬送ローラ41が設けられ、記録紙は搬送ローラ41によって搬送系33内の所定の位置に搬送される。
定着器39によってトナー画像を定着処理された記録紙は、裏面に画像形成するべく再供給経路40に送給されるか、または排紙ローラ42によって後処理装置43へ送給される。再供給経路40に送給された記録紙には、前述の動作が繰返し実行されて裏面に画像形成される。後処理装置43に送給された記録紙は、後処理が施された後、後処理工程に応じて定められる排紙先である第1または第2排紙カセット44,45のいずれかに排紙されて、複写機2における一連の画像形成動作が終了する。
複写機2に備わる感光体1は、柔軟性に優れ、また膜の塑性が軟質過ぎることなくまた脆くもない感光層7を有している。したがって、感光体1の膜べり量が軽減され、また膜のきず発生も軽減されて感光体1表面の平滑性が保たれるので、形成される画像にきずおよび濃度むらを生じることのない画像形成装置が実現される。
次に静電潜像を可視化してトナー画像を形成する現像剤の成分であるトナーについて説明する。トナーは、結着樹脂、着色剤、ワックス、帯電制御剤、必要に応じてその他の添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機により充分混合し、得られた混合物を二軸混練機によって溶融混練して混練物を作製し、混練物をジェット式粉砕機にて粉砕後、分級することによって作製される。さらに、該トナーには、無機微粒子が添加され、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機により付着、均一分散される。
トナーに用いられる結着樹脂としては、スチレン−アクリル系共重合体、アクリル系重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の化学構造設計における自由度の高いポリエステル樹脂が好適に用いられる。
低温で定着可能なトナーに要求される特性には、低い定着温度における充分な定着特性とともに優れたホットオフセット性が有る。ホットオフセット現象とは、定着工程において、加熱ローラ表面と転写されたトナー画像とが直接接触し、加熱ローラから加えられる熱と圧力とによって、トナーが記録紙等に溶融および定着される際、トナー画像の一部が加熱ローラ表面に付着転移し、さらにこの転移物が次の定着対象である記録紙等に再転移する現象のことである。このようなホットオフセット現象が発生すると、記録紙上に形成される画像にカブリが生じる。
また、トナーには長期間保存する場合、凝集塊が生じないという保存安定性も要求される。したがって、低温で定着可能なトナーの作製には、ホットオフセット性および保存安定性を向上させるための高い分子量を持つ結着樹脂と、低温定着性を達成するための低い分子量の結着樹脂との両者を用い、高分子量の結着樹脂と低分子量の結着樹脂とのそれぞれに別の機能を担当させている。たとえば、同一組成の樹脂の高分子量部分と低分子量部分、2山の分子量分布を持つような結着樹脂を用いてもよく、また低分子量部分と高分子量部分とで異なる組成の結着樹脂を用いてもよい。後者の場合、低分子量部分と高分子量部分とで異なる化学構造の結着樹脂を使用することが可能であるので、材料選択の自由度が増す。
トナーの着色剤としては、公知のカーボンブラックを使用することができ、たとえば米国キャボット社製リーガル(REGAL)400R,500R,660R、コロンビヤン・カーボン日本(株)製ラベン(RAVEN)H20,ラベン16,ラベン14,ラベン430,ラベン450,ラベン500、西独デグサ社製プリンテクス(Printex)200,プリンテクスA,スペシャルブラック4,プリンテクスGなどが挙げられる。
なお、着色剤のカーボンブラックは、これらに限定されるものではなく、他のものが用いられてもよい。また、これらのカーボンブラックを、単独でまたは2種以上を種々の組成に混合して用いることができる。
トナーに用いられる外添剤としては、たとえば、シリカ微粉体、アルミナ微粉体、酸化チタン微粉体、酸化ジルコニウム微粉体、酸化マグネシウム微粉体、酸化亜鉛などの金属酸化物の微粉体、また窒化ホウ素微粉体、窒化アルミニウム微粉体、窒化炭素微粉体のような窒化物の微粉体、さらにチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウムなどが挙げられる。なお外添剤には、特に平均一次粒子径が0.001〜0.2μmの無機微粉体を用いるのが好ましい。
また外添剤には、トナーの流動性を高めることとともに、トナーの帯電性を阻害しないことも必要とされる。したがって、無機微粉体は表面疎水化処理されていることがさらに好ましい。表面疎水化処理によって流動性の付与と帯電の安定化を同時に満足することが可能となる。すなわち外添剤に表面疎水化処理を施すことによって、帯電量を左右する因子である水分の影響を除外し、高湿下および低湿下での帯電量の格差を低減することができるので、環境特性を向上させることが可能になる。また、製造工程中に疎水化処理を入れることによって一次粒子の凝集が防止され、トナーに均一な帯電付与をすることが可能になる。
トナーには、必要に応じて離型剤が含有されてもよい。離型剤としては、それ自体公知の任意の離型剤、たとえば脂肪族系樹脂、脂肪族系金属塩、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物類等の脂肪族系化合物が挙げられる。具体的には、たとえば低分子量ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、炭素数4以上のオレフィン単体からなる低分子量オレフィン重合体、シリコーンオイル、各種ワックス等を使用することができる。
前述のような特性が要求される低温定着トナーのガラス転移温度(以後、Tgと呼ぶ)は、20℃を超え、60℃未満に設定される。トナーのTgが20℃以下であると、現像槽内で攪拌される間に凝集塊を生じたり、またトナーの保存安定性が悪化する。トナーのTgが60℃以上であると、定着温度を下げることができず、複写機、プリンター全体としての省エネルギー化を達成することができない。したがって、トナーのTgを、20℃を超え、60℃未満とした。
トナーのTgは、使用する結着樹脂を選択することによって、制御することが出来る。分子量の大きい結着樹脂を用いることによって、トナーのTgを高くすることができ、分子量の小さい結着樹脂を用いることによって、Tgを低くすることができる。また、高分子量タイプの結着樹脂と低分子量タイプの結着樹脂とを混合して用いる場合、その混合比率を調整することによってTgを制御することができる。
なお、Tgは以下のようにして求められる。示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、まず試料を200℃まで昇温し、次に200℃から0℃まで降温速度10℃/分で冷却し、さらに昇温速度10℃/分で昇温しながら測定を行う。測定試料は精密に10mg秤量し、これをアルミパンに入れる。リファレンスとして空のアルミパンを用いる。Tgは、前述の測定によって得られるチャートから、Tg未満のベースラインの延長線と、ピークの立上がり部分からピークの頂点までにおいて最大傾斜を示す接線との交点の温度を求め、該温度をTgとする。
本発明に用いられるトナーは、粉砕法によって製造することも可能である。しかしながら、粉砕法によって得られるトナー粒子は、一般的に不定形になる傾向があるので、機械的・熱的または他の処理を行うことによって、円形度を高めることが好ましい。トナーの円形度を高めるための処理方法としては、トナーの帯電特性、転写特性およびその他の画像特性、さらに生産性の面を考慮すると、機械的衝撃力を加える処理方法が好適に用いられる。
機械的衝撃力を加える処理方法としては、たとえば川崎重工業株式会社製のクリプトロンシステムまたはターボ工業社製のターボミルなどのような機械衝撃式粉砕機、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムのようなトナーを遠心力によってケーシングの内側に押付け、トナーに圧縮力および摩擦力などの機械的衝撃力を加える方法などが挙げられる。粉砕法で得られたトナーはいびつな形をしているが、このような後処理を加えることによって、トナーの角をとり、円形度を向上することができる。機械的衝撃力を加える処理方法においては、処理時間または処理装置中のトナー濃度などを調整することによって、任意の平均円形度のトナーを得ることができる。
また平均円形度が高いトナーを、重合法によって製造してもよい。重合法としては、ビニル系単量体などを含有するトナー形成用組成物を水中に懸濁させる方法が挙げられる。この場合、懸濁液におけるトナー形成用組成物の濃度が、1〜50重量%になるようにし、懸濁粒子のサイズは1〜30μmになるよう調節するのが好ましい。
トナー形成用組成物の懸濁状態を安定化させるために、分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤としては、媒体中に可溶の高分子、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−CO−メタクリル酸)共重合体、非イオン性もしくはイオン性界面活性剤またはリン酸カルシウムなどの無機粉末などが挙げられる。分散安定剤は、トナー形成用組成物全量に対して0.1〜10重量%を加えることが好ましい。
トナー形成用組成物中におけるラジカル重合開始剤の量は、単量体に対して、0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。重合に際しては、反応系を窒素ガスで満たし、懸濁液中におけるトナー形成用組成物の懸濁状態を維持しつつ、40〜100℃の環境温度下で攪拌し重合を行う。反応後の重合生成物である生成粒子を、濾過し、水または適当な溶剤で精製し、乾燥して、トナーを作製する。
機械的衝撃力による処理を加える方法や重合法によって作製されるトナーには、粒子の流動性を向上させるために、流動性改良剤(表面処理剤)を外添することが好ましい。流動性改良剤としては、たとえばカーボンブラック、疎水性非晶質シリカ、疎水性微粉アルミナ、微細酸化チタン、微細球状樹脂などが挙げられる。流動性改良剤は、トナー全量に対して0.1〜3.0重量%を添加するのがよい。
本明細書におけるトナー粒子の円形度(ai)は、下記式(3)によって定義される。式(3)に定義されるような円形度(ai)は、たとえば東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」を用いることによって測定される。またm個のトナー粒子について測定した各円形度(ai)の総和を求め、総和をトナー粒子数mで除算する式(4)によって得られる算術平均値を平均円形度(a)と定義する。
さらに、円形度を0.40から1.00まで0.01毎に61分割し、測定した各トナー粒子の円形度(ai)を、各分割範囲にそれぞれ割振ることによって得られる円形度(ai)の頻度分布において、頻度値が最大となる円形度をモード円形度(am)と定義する。
なお、本実施の形態で用いる前記測定装置「FPIA−2000」では、各トナー粒子の円形度(ai)を算出後、得られた各トナー粒子の円形度(ai)を、前述の円形度0.40〜1.00を61分割した各分割範囲に分けて頻度を求め、各分割範囲の中心値と頻度とを用いて平均円形度の算出を行うという簡易算出法を用いている。この簡易算出法で算出される平均円形度の値と、前述の式(4)で与えられる平均円形度(a)の値との誤差は、非常に小さく実質的に無視出来る程度のものなので、本実施の形態では、簡易算出法による平均円形度を、前記式(4)で定義される平均円形度(a)として取扱う。このように本実施の形態では、算出時間の短縮化などの観点から簡易算出法を用いているが、このような簡易算出法を用いることは本発明の主旨を逸脱するものではない。
平均円形度(ai)およびモード円形度(am)の具体的な測定方法は、以下のとおりである。界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mLに、現像剤5mgを分散させて分散液を調製し、周波数20kHz、出力50Wの超音波を分散液に5分間照射し、分散液中のトナー粒子濃度を5000〜20000個/μLとして、前記装置「FPIA−2000」により円形度(ai)の測定を行い、平均円形度(a)およびモード円形度(am)を求めた。
トナーは、その平均円形度(a)が0.950以上であることが好ましく、平均円形度を0.950以上とすることによって、帯電均一性が向上し、高品質および高解像度の画像を形成することができる。
このように、感光体1表面のクリープ値CITと、表面のビッカース硬さHVとを好適な範囲に規定することによって、クリーニングブレードの線圧を高くして用いることが可能となるので、Tgが比較的低くクリーニング性の劣る低温定着トナーおよび平均円形度(a)の高い球状のトナー粒子を用いるにも関らず、転写効率とクリーニング性とに優れ、長期間安定して高品質および高解像度の画像を形成することのできる画像形成装置が実現される。
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置に備わる感光体53の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の画像形成装置に備わる感光体53は、実施の第1形態の画像形成装置1に備わる感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。感光体53において注目すべきは、導電性支持体3上に単層からなる感光層54が形成されることである。
感光層54は、実施の第1形態の感光体1に用いるのと同様の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂などを用いて形成される。結着樹脂中に電荷発生物質および電荷輸送物質を分散したり、電荷輸送物質を含む結着樹脂中に電荷発生物質を顔料粒子の形で分散させたりして調製した感光層用塗布液を用い、実施の第1形態の感光体1における電荷発生層5を形成するのと同様の方法によって単層の感光層が導電性支持体3上に形成される。本実施の形態の単層型感光体53は、オゾン発生が少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層54が一層のみであるので、製造原価および歩留が電荷発生層および電荷輸送層の積層して構成される積層型に比べて優れている。
(実施例)
以下本発明の実施例について説明する。
まず、直径:30mm、長さ:346mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体上に種々の条件にて感光層を形成し、実施例および比較例として準備した。各感光体について説明する。
[感光体の作製]
(S1感光体);酸化チタンTTO−MI−1(Al2O3、ZrO2にて表面処理された樹枝状ルチル型、チタン成分85%;石原産業社製)3重量部およびアルコール可溶性ナイロン樹脂CM8000(東レ社製)3重量部を、メチルアルコール60重量部と1,3−ジオキソラン40重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカーにて10時間分散処理して下引層用塗布液を調整した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬後引上げ、自然乾燥して層厚0.9μmの下引層を形成した。
ブチラール樹脂S−LEC BL−2(積水化学社製)10重量部、1,3−ジオキソラン1400重量部、および下記構造式(I)で示されるチタニルフタロシアニン15重量部をボールミルにて72時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調整した。この塗布液を、下引層の場合と同様の浸漬塗布法にて前述の下引層上に塗布し、 自然乾燥して層厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として下記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物100重量部、3種類のポリカーボネート樹脂J−500、G−400、GH−503(出光興産株式会社製)を48重量部、32重量部、32重量部、同じくポリカーボネート樹脂TS2020(帝人化成社製)48重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)5重量部を混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて前述の電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS1感光体を作製した。
(S2感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として下記構造式(III)で示されるエナミン系化合物を100重量部、2種類のポリカーボネート樹脂GK−700、GH503(出光興産株式会社製)99重量部、81重量部を、テトラヒドロフラン1050重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を用い、S1感光体と同様にして電荷輸送層を形成しS2感光体を作製した。
(S3感光体);電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂にG−400(出光興産株式会社製)99重量部およびGH503(出光興産株式会社製)81重量部を用いた以外は、S2感光体と同様にして、S3感光体を作製した。
(S4感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を100重量部、ポリカーボネート樹脂G−400(出光興産株式会社製)88重量部、同じくポリカーボネート樹脂TS2020(帝人化成社製)72重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)5重量部を混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を用い、S1感光体と同様にして電荷輸送層を形成しS4感光体を作製した。
(S5感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(III)で示されるエナミン化合物を100重量部、ポリカーボネート樹脂GH−503(出光興産株式会社製)99重量部、同じくポリカーボネート樹脂M−300(出光興産株式会社製)81重量部を、テトラヒドロフラン1050重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を用い、S1感光体と同様にして電荷輸送層を形成しS5感光体を作製した。
(S6感光体);電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂にM−300(出光興産株式会社製)180重量部を用いた以外は、S5感光体と同様にして、S6感光体を作製した。
(S7感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として下記構造式(IV)で示されるスチリル系化合物を100重量部、ポリカーボネート樹脂G−400(出光興産株式会社製)105重量部、ポリエステル樹脂Vylon290(東洋紡社製)45重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)1重量部を混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を用い、S1感光体と同様にして電荷輸送層を形成しS7感光体を作製した。
(S8感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を100重量部、ポリカーボネート樹脂G−400(出光興産株式会社製)160重量部を、テトラヒドロフラン980重量部に溶解して電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を用い、S1感光体と同様にして電荷輸送層を形成しS8感光体を作製した。
これらS1〜S8感光体の感光体表面のクリープ値CITおよびビッカース硬さHVを、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、フィッシャースコープH100V(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)によって測定した。測定条件は、押込み最大荷重Fmax=30mN、押込み最大荷重までの負荷所要時間10秒、荷重保持時間t=5秒、除荷時間10秒であった。各感光体についてクリープ値CITおよびビッカース硬さHVを測定した結果を表1に示す。
[結着樹脂の作製]
(樹脂A);原料として、1,4−ブタンジオール:2070g、フマル酸:2535g、無水トリメリット酸:291g、ハイドロキノン:4.9gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、さらに8.3kPaの減圧雰囲気にて1時間反応させ、樹脂Aを作製した。
(樹脂B);原料として、BPA−PO:2000g、BPA−EO:800g、テレフタル酸:600g、ドデセニル無水コハク酸:500g、無水トリメリット酸:350gおよび酸化ジブチル錫4gを、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間反応させた後、8.3kPaの減圧雰囲気にて所定の軟化点に達するまでさらに反応させ、樹脂Bを得た。
(樹脂C);原料として、BPA−PO:2000g、BPA−EO:800g、テレフタル酸:400g、フマル酸:600g、無水トリメリット酸:550gおよび酸化ジブチル錫4gを、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間反応させた後、8.3kPaの減圧雰囲気にて所定の軟化点に達するまでさらに反応させ、樹脂Cを得た。
[トナーの作製]
(T1トナー);結着樹脂として、樹脂Aを10重量部、樹脂Bを60重量部、樹脂Cを30重量部の合計100重量部、カーボンブラック「モーガルL」(キャボットコーポレーション社製)5重量部、ポリプロピレンワックス「ビスコール550P」(三洋化成社製、融点:140℃)5重量部および荷電制御剤「S−34」(オリエント化学社製)1重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、二軸押出機により溶融混練した。得られた溶融混練物を、高速ジェットミル粉砕分級機「IDS−2型」(日本ニューマティック社製)を用いて、重量平均粒径が8μmとなるよう、粉砕、分級した。得られたT1トナーは、Tgが58℃、平均円形度(a)が0.945であった。このT1トナーに一次粒子の平均粒子径が0.1μmの市販シリカを1重量部混合分散し、外添処理を行った。
(T2トナー);粉砕、分級まではT1トナーと同様に作製した後、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムを用いて円形化処理を行った。こうして得られたT2トナーは、Tgが58℃、平均円形度(a)が0.960であった。その後、T1トナーと同様に外添処理を行った。
(T3トナー);結着樹脂として、樹脂Bを70重量部、樹脂Cを30重量部の合計100重量部、を用いること以外は、T1トナーと同様にして、T3トナーを得た。得られたT3トナーは、Tgが63℃、平均円形度(a)が0.945であった。その後T1トナーと同様に外添処理を行った。
(T4トナー);2リットル容の四つ口フラスコ中のイオン交換水710gに、0.1M−Na3PO4水溶液450gを投入し、60℃に加温した後、高速撹拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、12000rpmにて撹拌した。これに1.0M−CaCl2水溶液68gを徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤を含む水系分散媒体を得た。
一方、分散質として表2に示す物質を用意し、着色剤であるカーボンブラックとジ−tert−ブチルサリチル酸のAl化合物とスチレンとを、エバラマイルダー(荏原製作所製)を用いて予備混合した。次に表2に示すすべてを60℃に加温し、溶解、分散して単量体混合物とした。さらに、60℃に保持しながら、開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10gを加えて溶解し、単量体組成物を調製した。
ホモミキサーの2リットルフラスコ中で調製した水系分散媒体に、前述の単量体組成物を投入した。60℃で、窒素雰囲気としたTKホモミキサーを用いて、10000rpmで20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ60℃で6時間反応させた後、80℃で10時間重合させた。
重合反応終了後反応生成物を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解し、濾過、水洗、乾燥することにより、重量平均粒径約8μmのT4トナーを得た。こうして得られたT4トナーは、Tgが59℃、平均円形度(a)が0.980であった。その後T1トナーと同様に外添処理を行った。
(T5トナー);T2トナーよりも円形化処理を行う時間を短くして、平均円形度(a)が0.950であるT5トナーを得た。T5トナーのTgは58℃であった。その後T1トナーと同様に外添処理を行った。
外添処理後のT1〜T5トナー各々5重量部に、鉄粉キャリア(関東電化株式会社製)95重量部をそれぞれ均一混合し、現像剤を得た。
以下、各感光体およびトナーに関する性能評価の試験方法と、その試験結果について説明する。
[低温定着性およびホットオフセット性]
S3感光体をデジタル複写機AR−450(シャープ株式会社製)に搭載し、作製したT1〜T3トナーをそれぞれ用いて、定着器の加熱ローラの温度を90℃から240℃へと順次昇温させながら画像を形成し、以下の方法によって最低定着温度およびホットオフセット発生温度を測定した。
(最低定着温度)
上記複写機で3cm×3cmの画像濃度1.35以上の黒ベタ画像を作成した。なお画像濃度は、反射濃度計RD−915(マクベス社製)で測定した。底面寸法が、15mm×7.5mmの砂消しゴムを準備し、この砂消しゴムに1kgの荷重を掛けて、得られた黒ベタ画像を3往復擦過した。擦過前後の画像濃度を測定して、擦過前の画像濃度D1に対する擦過後の画像濃度D2の比Dr(D2/D1)を求め、画像濃度比Drが、最初に70%を超える加熱ローラの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、トナーの低温定着性が優れていると評価した。その評価基準は、以下である。
○(良好):160℃未満
△(普通):160℃以上175℃未満
×(不良):175℃以上
(ホットオフセット発生温度)
記録紙の通紙先端部から2cmが画像濃度1.35の黒ベタで、それ以外の部分は白ベタという画像を形成し、各温度に設定された定着器に通して定着処理を行った。白ベタ部分にトナー汚れが最初に生じる加熱ローラの温度をホットオフセット発生温度とした。ホットオフセット発生温度が高いほど、ホットオフセット性(ホットオフセットを発生しにくいという意味に用いる)に優れると評価した。その評価基準は、以下である。
○(良好):210℃以上
△(普通):190℃以上210℃未満
×(不良):190℃未満
評価結果を表3に示す。T1およびT2トナーは160℃未満の低い温度でも、良好な定着性を示した。T3トナーは、Tgが63℃と高いので、低温定着性が劣る結果であった。また、いずれのトナーを用いても、良好なホットオフセット性が得られた。
[クリーニング性];複写機AR−450に備わるクリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に当接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を初期線圧で25gf/cm(2.45×10−1N/cm)、もしくは40gf/cm(3.92×10−1N/cm)に調整した。温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N:Normal
Temperature/Normal Humidity)環境中で、前記複写機にS2感光体を搭載し、各トナー毎に、シャープ社製文字テストチャートを記録紙10万枚に形成してクリーニング性の確認を行なった。
画像形成前(0k)、10,000(10k)枚、50,000(50k)枚および100,000(100k)枚の各段階において、形成された画像を目視することによって、黒白2色の境界部の鮮明度、感光体回転方向へのトナー漏れによる黒すじの有無を試験し、さらに後述の測定器によってかぶり量Wkを求めて、クリーニング性を評価した。形成画像のかぶり量Wkは、日本電色工業株式会社製Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEMを用いて反射濃度を測定して求めた。まず画像形成前の記録紙の反射平均濃度Wrを測定した。次にその記録紙に対して画像形成し、画像形成後、記録紙の白地部分各所の反射濃度を測定した。最もかぶりの多いと判断された部分、すなわち白地部でありながら濃度の最も濃い部分の反射濃度Wsと、前記Wrとから以下の式(5)で求められるWkをかぶり量と定義した。
Wk=100×(Ws−Wr)/Wr …(5)
クリーニング性の評価基準は以下のようである。
◎:非常に良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%未満。
○:良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%以上5%未満。
△:実用上問題無し。鮮明度実使用上問題のないレベルであり黒すじの長さが2.0mm以下かつ5個以下。かぶり量Wkが5%以上10%未満。
×:実用不可。鮮明度実使用上問題あり。黒すじの上記△の範囲を超えるもの。かぶり量Wkが10%以上。
線圧が25gf/cmの場合のクリーニング性評価結果を表4および表5に、線圧が40gf/cmの場合のクリーニング性評価結果を表6に示す。表4より、トナーのTgが低くなると、クリーニング性が若干低下することが判った。表5および表6より、トナーの円形度が高くなるとクリーニング性が低下すること、またクリーニングブレードの線圧を高くすると、クリーニング性が向上することが判った。
[耐刷性]
複写機AR−450に備わるクリーニング器のクリーニングブレード圧を初期線圧で40gf/cm(3.92×10−1N/cm)に調整した。温度25℃、相対湿度50%のN/N環境中で、前記複写機にT1トナーを搭載し、各感光体毎に、シャープ社製文字テストチャートを記録紙10万枚に形成して耐刷試験を行なった。また、同様の耐刷試験をT4トナーにて行った。
耐刷試験開始時と記録紙10万枚にチャート形成後との膜厚、すなわち感光層の層厚みを、光干渉法による瞬間マルチ測光システムMCPD−1100(大塚電子社製)を用いて測定し、耐刷試験開始時の膜厚と記録紙10万枚にチャート形成後の膜厚との差から感光体の膜べり量を求めた。膜べり量が多い程、耐刷性が悪いと評価した。またこの耐刷試験に供した各感光体について、クリーニング性を前述と同様の方法で評価した。
[画質安定性]
各感光体を複写機AR−450に装着し、記録紙10万枚にチャートを形成した後、さらにハーフトーン画像を形成した。このハーフトーン画像を目視観察することによって、画像の濃度むらを検出し、耐刷試験後の感光体による画質低下レベル、すなわち画質安定性を評価した。
濃度むらの評価基準は、以下のようである。
○:良好。ハーフトーン画像に濃度むらなし。
△:実用上問題のないレベル。ハーフトーン画像に軽微な濃度むらあり。
×:実用上問題となるレベル。ハーフトーン画像に濃度むらあり。
また膜べり量とハーフトーン画像の濃度むらとを合わせて感光体性能の総合判定も行なった。総合判定の評価基準は、以下である。
◎:膜べり量1.0μm未満かつ濃度むらなし。
○:膜べり量1.0μm以上2.0μm以下かつ濃度むらなし。
△:膜べり量2.0μm超えまたは軽微な濃度むらあり。
×:膜べり量2.0μm超えかつ軽微な濃度むらあり、または濃度むらあり。
T1トナーを用いた場合の評価結果を表7に、円形度が高いT4トナーを用いた場合の評価結果を表8に示す。本発明の実施例の感光体、すなわちクリープ値CITが、2.70%以上であり、かつビッカース硬さHVが20.00以上25.00以下の範囲にあるS1〜S4感光体では、膜べり量が少なくて耐刷性に優れ、10万枚耐刷試験後のハーフトーン画像においても顕著な濃度むらは観察されなかった。特に、CITが3.00%以上であるS2およびS3感光体では、膜べり量が非常に少なかった。このことは、S2およびS3感光体の表面を構成する感光層が、クリープ性に代表される膜の柔軟性を有すること、かつビッカース硬さHVに代表される膜の塑性が、軟質に過ぎることなくまた脆さの露呈しない中庸な物性を有することを、反映したものと考えられる。
他方、S5およびS6感光体は、CITが3.00%以上であることから膜べり量が少なく優れた耐刷性を示したが、感光体表面の平滑性の劣化に起因すると思われる画像の濃度むらが観察された。これは、ビッカース硬さHVに反映される膜の脆さが露呈したためであると考えられる。特にS6感光体においては、感光体の表面が硬いので、感光体がクリーニングブレードによって擦過されることによって、感光体表面にアナログレコード盤の表面のような回転方向に沿った細かいきずが多数発生し、耐刷試験後の画質の劣化が顕著であった。
S7およびS8感光体では、感光体の膜べり量が極端に増大する結果となった。これは、クリープ値CITが小さいので、感光体表面のクリーニングブレードの圧接力に対する力の緩和効果が減少したことに起因すると思われる。また、耐刷試験後における感光体表面の平滑性が損なわれ、画質の劣化(濃度むら)が軽微ではあるが確認された。
S7およびS8感光体の感光体において濃度むらの発生した理由について、詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、S7感光体の場合、ビッカース硬さHVは、本発明範囲を硬い方に外れており、硬い材料に起こりがちな脆さが露呈し、結果として不均一な膜の損耗が生じ、非平滑な感光体表面において露光レーザーが散乱されることによって濃度むらが発生したと考えられる。また、S8感光体に関しても、S7感光体と同様に表面平滑性の悪化に伴うと思われる濃度むらが見られた。この場合、表面平滑性悪化の要因としては、ビッカース硬さHVの低いことから推測される膜の構造上の緻密性が損なわれている等の原因が考えられるが、詳細は明らかでない。
表8より、円形度の高いT4トナーを用いた場合、多少クリーニング性が低下するが、本発明の効果により、実使用に問題のないクリーニング性能と耐刷性とを実現することができた。
図6は、感光体のCITと膜べり量との関係を示す図である。図6では、S1〜S8感光体について測定されたCITと、膜べり量との関係を示す。図6から、CITが大きくなるのに伴って、膜べり量が減少することが判る。詳細は明らかではないが、CITに代表される感光体表面の柔軟性は、感光体表面が受けるクリーニングブレードによる押圧力の緩和の程度に影響を与えることによって、膜べり量すなわち耐刷性を特徴づけていると思われる。
また前述のようにビッカース硬さHVに代表される感光体表面の塑性は、耐刷に伴う感光体表面の平滑性に影響を与えていると思われる。したがって、感光体の耐刷性および画質安定性を決める因子として、クリープ値CITとビッカース硬さHVとの2つが大きく関わっていると考えられる。
[クリーニングブレードの線圧と耐刷性およびクリーニング性]
デジタル複写機AR−450にS2感光体を搭載し、複写機に備わるクリーニング器のクリーニングブレードの初期線圧を18gf/cm(1.76×10−1N/cm)、21gf/cm(2.06×10−1N/cm)、35gf/cm(3.43×10−1N/cm)、45gf/cm(4.41×10−1N/cm)、55gf/cm(5.39×10−1N/cm)、に調整した。温度:25℃、相対湿度:50%のN/N環境中で、T1トナーを用いて、それぞれの線圧において10万枚の耐刷試験を行い、膜べり量およびクリーニング性の評価を行った。膜べり量は、前述と同様に10万枚の耐刷試験前後の膜厚を測定した求めた。またクリーニング性の評価は、前述の黒すじおよびかぶり量Wkに依った。
クリーニング性の評価結果および膜べり量の測定結果を表9に示す。クリーニングブレードの線圧が20gf/cm以上、50gf/cm以下の場合、良好なクリーニング性を示すとともに、感光体の性能に支障を来たすほどの膜べりは起こらなかった。クリーニングブレードの線圧が20gf/cm未満の場合、感光体上の残留トナーがクリーニングブレードをすり抜けるという著しいクリーニング性の低下が見られ、逆に線圧が50gf/cmを超える55gf/cmの場合、表9中「×*」印で示すように、60000枚印刷した段階で感光体の感光層が消失するほどの膜べりが生じ、以降の耐刷試験の継続が不可能となった。
[トナー消費量]
デジタル複写機AR−450にS2感光体を搭載し、クリーニングブレードの初期線圧を35gf/cm(3.43×10−1N/cm)に調整した。複写機のトナーカートリッジにT1トナー、T2トナー、T4トナー、T5トナーを800gそれぞれ充填し、温度:25℃、相対湿度:50%のN/N環境中で、5%濃度の原稿を用いてトナーがなくなるまで耐刷試験を行った。トナーが消費し尽くされた段階における印刷枚数の多い程、トナー消費量の節減性能に優れると評価した。
試験結果を表10に示す。なお、いずれのトナーを用いた場合にも、耐刷試験後の画質(画像濃度)は初期(0k枚)時と同等の画像濃度を有していた。平均円形度(a)が0.945であっても耐刷枚数が劣ることはないが、平均円形度(a)のより高いトナーを用いることによって転写効率がよくなるので、より少ないトナー量で所望濃度の画像を多数枚得ることができる。
以上に述べたように、本実施の形態では、感光体の表面は感光層によって構成されるが、これに限定されることなく、感光層の外層にさらに表面保護層が設けられ、表面保護層表面のクリープ値CITおよびビッカース硬さHVが、所望の値に設定されるように構成されてもよい。