本発明の実施の一形態について図1〜図21に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態の表示素子は、駆動回路や信号線(データ信号線)、走査線(走査信号線)、スイッチング素子等とともに表示装置に配されて用いられる。
まず、本実施の形態の表示素子を用いた表示装置(本実施の形態の表示装置)について、図14及び図15に基づいて説明する。図14は、本実施の形態の表示素子を用いる表示装置の要部の概略構成を示すブロック図であり、図15は、図14に示す表示装置に用いられる本実施の形態の表示素子(表示素子120)の周辺の概略構成を示す模式図である。
図14に示すように、本実施の形態の表示装置60は、画素71…がマトリクス状に配された表示素子70と、駆動回路としてのソースドライバ61およびゲートドライバ62と、電源回路63等とを備えている。
上記各画素71には、図15に示すように、本実施の形態の表示素子(表示素子120)およびスイッチング素子41が設けられている。
また、上記表示素子70には、複数のデータ信号線SL1〜SLn(nは2以上の任意の整数を示す)と、各データ信号線SL1〜SLnにそれぞれ交差する複数の走査信号線GL1〜GLm(mは2以上の任意の整数を示す)とが設けられ、これらデータ信号線SL1〜SLnおよび走査信号線GL1〜GLmの組み合わせ毎に、上記画素71…が設けられている。
上記電源回路63は、上記ソースドライバ61およびゲートドライバ62に、上記表示素子70にて表示を行うための電圧を供給し、これにより、上記ソースドライバ61は、上記表示素子70のデータ信号線SL1〜SLnを駆動し、ゲートドライバ62は、表示素子70の走査信号線GL1〜GLmを駆動する。
上記スイッチング素子41としては、例えばFET(電界効果型トランジスタ)あるいはTFT(薄膜トランジスタ)等が用いられ、上記スイッチング素子41のゲート電極42が走査信号線GLiに、ドレイン電極43がデータ信号線SLiに、さらに、ソース電極24が、表示素子120に接続されている。また、表示素子120の他端は、全画素71…に共通の図示しない共通電極線に接続されている。これにより、上記各画素71において、走査信号線GLi(iは1以上の任意の整数を示す)が選択されると、スイッチング素子41が導通し、図示しないコントローラから入力される表示データ信号に基づいて決定される信号電圧が、ソースドライバ61によりデータ信号線SLi(iは1以上の任意の整数を示す)を介して表示素子120に印加される。表示素子120は上記走査信号線GLiの選択期間が終了してスイッチング素子41が遮断されている間、理想的には、遮断時の電圧を保持し続ける。
本実施の形態の表示素子は、対向する2枚の基板(基板1および2)間に、光学変調層である媒質層3が挟持されてなる。また、基板1における基板2との対向面には、媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である櫛形電極(櫛歯状の電極)4・5が互いに対向配置されている。さらに、基板1および2における、両基板の対向面とは反対側の面には、それぞれ偏光板7および8が備えられている。
図1に本実施の形態の表示素子の要部の概略構成を示す。図1(a)は、電界無印加状態(OFF状態)における本実施の形態の表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、電界印加状態(ON状態)における本実施の形態の表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1(a)・(b)に示すように、本実施の形態の表示素子は、互いに対向して配置された、少なくとも一方が透明な一対の基板(以下、画素基板20及び対向基板21と記す)を備え、これら一対の基板間に、光学変調層として、電界の印加により光学変調する媒質(以下、媒質Aと記す)からなる媒質層3が狭持されている構成を有している。
また、上記画素基板20及び対向基板21は、図1(a)・(b)に示すように、媒質保持手段(光学変調層保持手段)としての基板1・2をそれぞれ有し、これら一対の基板1・2の外側(画素基板20及び対向基板21の外側)、すなわち、これら両基板1・2の対向面とは反対側の面に、偏光板7・8がそれぞれ設けられている構成を有している。
上記一対の基板1・2のうち、少なくとも一方の基板は透明性を有する、例えばガラス基板等の透明な基板からなる。そして、これら一対の基板1・2のうち、一方の基板1における他方の基板2との対向面上には、図1(a)・(b)に示すように上記基板1に略平行な電界(横向きの電界)を上記媒質層3に印加するための電界印加手段である電極4・5が互いに対向配置されている。
上記電極4・5は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明電極材料等の電極材料からなる。本実施の形態では、例えば線幅5μm、電極間距離(電極間隔)5μm、厚み0.6μmに設定されている。ただし、上記電極材料並びに線幅、電極間距離、及び厚みは、単なる一例であって、これに限定されるものではない。
また、上記基板2における基板1との対向面上、すなわち、上記対向基板21における画素基板20との対向面表面には、ラビング処理が施された配向膜6(誘電体薄膜)が、上記基板2における基板1との対向面全面に渡って形成されている。
上記配向膜6は、図4に示すように、そのラビング方向が、上記偏光板7・8の吸収軸7a・8aのうち何れか一方の偏光板吸収軸と一致するようにラビング処理が施されている。そして、上記ラビング処理として、配向処理方向が基板面内方向の水平ラビング処理(水平配向処理)が施されている。
また、配向膜6はラビング処理された水平配向膜ではなく、垂直配向膜を用いることも出来る。
本実施の形態において用いられる上記配向膜6は、それぞれ、有機膜であってもよいし、無機膜であってもよく、上記媒質Aを構成する分子の配向の秩序の度合いを向上させ、該分子を、所望の方向に配向させることができさえすれば、特に限定されるものではないが、上記配向膜6を有機薄膜により形成した場合、良好な配向効果を示すことから、上記配向膜6としては有機薄膜を用いることがより望ましい。このような有機薄膜の中でもポリイミドは安定性、信頼性が高く、極めて優れた配向効果を示すことから、配向膜材料にポリイミドを使用することで、より良好な表示性能を示す表示素子を提供することができる。
なお、上記配向膜6としては、市販の水平及び垂直配向膜を用いることができる。
また、上記配向膜6としては、その配向制御が容易であることから光感応性を有する官能基(以下、光官能基と記す)を有していてもよい。上記光官能基としては、例えば二量化反応をするシンナメート系、カルコン系等や、異性化反応をするアゾ系等が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記配向膜6が光官能基を有する場合、上記画素基板20および対向基板21表面、すなわち、上記配向膜6表面に、偏光された紫外線の照射(以下、偏光紫外光照射と記す)を行って配向規制力を発現させることにより、容易に所望の配向処理を行うことができる。
上記表示素子は、例えば、上記画素基板20と対向基板21とを、図示しないシール剤により、必要に応じて、例えば図示しないプラスチックビーズやガラスファイバースペーサ等のスペーサを介して貼り合わせ、その空隙に、上記媒質Aを封入することにより形成される。
本実施の形態に用いられる上記媒質Aは、電界を印加することにより、光学的異方性が変化する媒質である。物質中に外部から電界Ejを加えると、電気変位Dij=εij・Ejを生じるが、そのとき、誘電率(εij)にもわずかな変化が見られる。光の周波数では屈折率(n)の自乗は誘電率と等価であるから、上記媒質Aは、電界の印加により、屈折率が変化する物質と言うこともできる。
このように、本実施の形態の表示素子は、物質の屈折率が外部電界によって変化する現象(電気光学効果)を利用して表示を行うものであり、電界印加により分子(分子の配向方向)が揃って回転することを利用した液晶表示素子とは異なり、光学的異方性の方向は殆ど変化せず、その光学的異方性の程度の変化(主に、電子分極や配向分極)により表示を行うようになっている。
上記媒質Aとしては、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質等、電界無印加時に光学的には等方(巨視的に見て等方であればよい)であり、電界印加により光学的異方性が発現する物質であってもよく、電界無印加時に光学的異方性を有し、電界印加により異方性が消失し、光学的に等方性(巨視的に見て等方であればよい)を示す物質であってもよい。典型的には、電界無印加時には光学的に等方(巨視的に見て等方であればよい)であり、電界印加により光学変調(特に電界印加により複屈折が上昇することが望ましい)を発現する媒質である。
ポッケルス効果、カー効果(それ自身は、等方相状態で観察される)は、それぞれ、電界の一次または二次に比例する電気光学効果であり、電界無印加状態では、等方相であるため光学的に等方的であるが、電界印加状態では、電界が印加されている領域において、電界方向に化合物の分子の長軸方向が配向し、複屈折が発現することにより透過率を変調することができる。例えば、カー効果を示す物質を用いた表示方式の場合、電界を印加して1つの分子内での電子の偏りを制御することにより、ランダムに配列した個々の分子が各々別個に回転して向きを変えることから、応答速度が非常に速く、また、分子が無秩序に配列していることから、視角制限がないという利点がある。なお、上記媒質Aのうち、大まかに見て電界の一次または二次に比例しているものは、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質として扱うことができる。
ポッケルス効果を示す物質としては、例えば、ヘキサミン等の有機固体材料等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記媒質Aとしては、ポッケルス効果を示す各種有機材料、無機材料を用いることができる。
また、カー効果を示す物質としては、下記構造式(1)〜(7)で示される液晶性物質等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
構造式(1)で示される液晶性物質は、3OCB(4‐シアノ‐4’‐n‐プロピルオキシビフェニル)、構造式(2)で示される液晶性物質は、5OCB(4‐シアノ‐4’‐n‐ペンチルオキシビフェニル)、構造式(3)で示される液晶性物質は、7OCB(4‐シアノ‐4’‐n‐ヘプチルオキシビフェニル)、構造式(4)で示される液晶性物質は、5CB(4‐シアノ‐4’‐n‐ペンチルビフェニル)、構造式(5)で示される液晶性物質は、3HPFF(1,2‐ジフルオロ‐4‐[トランス‐4‐(トランス‐4‐n‐プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ベンゼン)、構造式(6)で示される液晶性物質は、5HPFF(1,2‐ジフルオロ‐4‐[トランス‐4‐(トランス‐4‐n‐ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ベンゼン)、構造式(7)で示される液晶性物質は、7HPFF(1,2‐ジフルオロ‐4‐[トランス‐4‐(トランス‐4‐n‐ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ベンゼン)である。
カー効果は、入射光に対して透明な媒質中で観測される。このため、カー効果を示す物質は、透明媒質として用いられる。通常、液晶性物質は、温度上昇に伴って、短距離秩序を持った液晶相から、分子レベルでランダムな配向を有する等方相に移行する。つまり、液晶性物質のカー効果は、ネマチック相ではなく、液晶相−等方相温度以上の等方相状態の液体に見られる現象であり、上記液晶性物質は、透明な誘電性液体として使用される。
液晶性物質等の誘電性液体は、加熱による使用環境温度(加熱温度)が高いほど、等方相状態となる。よって、上記媒質として液晶性物質等の誘電性液体を使用する場合には、該誘電性液体を透明、すなわち可視光に対して透明な液体状態で使用するために、例えば、(1)媒質層3の周辺に、図示しないヒータ等の加熱手段を設け、該加熱手段により上記誘電性液体をその透明点以上に加熱して用いてもよいし、(2)バックライトからの熱輻射や、バックライトおよび/または周辺駆動回路からの熱伝導(この場合、上記バックライトや周辺駆動回路が加熱手段として機能する)等により、上記誘電性液体をその透明点以上に加熱して用いてもよい。また、(3)上記基板1・2の少なくとも一方に、ヒータとしてシート状ヒータ(加熱手段)を貼合し、所定の温度に加熱して用いてもよい。さらに、上記誘電性液体を透明状態で用いるために、透明点が、上記表示素子の使用温度範囲下限よりも低い材料を用いてもよい。
上記媒質Aは、液晶性物質を含んでいることが望ましく、上記媒質Aとして液晶性物質を使用する場合には、該液晶性物質は、巨視的には等方相を示す透明な液体であるが、微視的には一定の方向に配列した短距離秩序を有する分子集団であるクラスタを含んでいることが望ましい。なお、上記液晶性物質は可視光に対して透明な状態で使用されることから、上記クラスタも、可視光に対して透明(光学的に等方)な状態で用いられる。
このために、上記表示素子は、上述したように、ヒータ等の加熱手段を用いて温度制御を行ってもよいし、特許文献2に記載されているように、媒質層3を、高分子材料等を用いて小区域に分割して用いてもよく、上記液晶性物質の直径を例えば0.1μm以下とする等、上記液晶性物質を、光の波長よりも小さな径を有する微小ドロップレットとし、光の散乱を抑制することにより透明状態とするか、あるいは、使用環境温度(室温)にて透明な等方相を示す液晶性化合物を使用する等してもよい。上記液晶性物質の直径、さらにはクラスタの径(長径)が0.1μm以下、つまり、光の波長(入射光波長)よりも小さい場合の光の散乱は無視することができる。このため、例えば上記クラスタの径が0.1μm以下であれば、上記クラスタもまた可視光に対して透明である。
なお、上記媒質Aは、上述したようにポッケルス効果またはカー効果を示す物質に限定されない。このため、上記媒質Aは、分子の配列が、光の波長以下(例えばナノスケール)のスケールのキュービック対称性を有する秩序構造を有し、光学的には等方的に見えるキュービック相(非特許文献2、5、8参照)を有していてもよい。キュービック相は上記媒質Aとして使用することができる液晶性物質の液晶相の一つであり、キュービック相を示す液晶性物質としては、例えば、下記構造式(8)
で示されるBABH8等が挙げられる。このような液晶性物質に電界を印加すれば、微細構造に歪みが与えられ、光学変調を誘起させることが可能となる。
BABH8は、136.7℃以上、161℃以下の温度範囲では、光学波長未満(可視光の波長未満)のスケールの秩序構造からなるキュービック相を示す。また、BABH8は、格子定数が約6nmであり、光学波長よりも1桁以上も小さい。そして、BABH8の秩序構造(配向秩序)が光学波長未満であるため透明である。すなわち、上記温度範囲において、該BABH8は、電界無印加時に光学的等方性を示す。したがって、BABH8を本実施の形態の表示素子に適用する場合、直交ニコル下において良好な黒表示を行うことができる。
一方、上記BABH8の温度を、例えば上記した加熱手段等を用いて136.7℃以上、161℃以下に制御しながら、電極4・5(櫛形電極)間に電界を印加すると、キュービック対称性を有する構造(秩序構造)に歪みが生じる。すなわち、上記BABH8は、上記の温度範囲において、電界無印加状態では等方的であり、電界印加により異方性が発現する。
これにより、上記媒質層3において複屈折が発生するので、上記表示素子は、良好な白表示を行うことができる。なお、複屈折が発生する方向は一定であり、その大きさが電界印加によって変化する。また、電極4・5(櫛形電極)間に印加する電圧と透過率との関係を示す電圧透過率曲線は、136.7℃以上、161℃以下の温度範囲、すなわち、約20Kという広い温度範囲において安定した曲線となる。このため、上記BABH8を上記媒質Aとして使用した場合、温度制御を極めて容易に行うことができる。すなわち、上記BABH8からなる媒質層3は、熱的に安定な相であるため、急激な温度依存性が発現せず、温度制御が極めて容易である。
また、上記媒質Aとしては、液晶分子が光の波長以下のサイズで放射状に配向した集合体で充填された、光学的に等方的に見えるような系を実現することも可能であり、その手法としては非特許文献3に記載の液晶マイクロエマルションや非特許文献4及び6に記載の液晶・微粒子分散系(溶媒(液晶)中に微粒子を混在させた混合系、以下、単に液晶微粒子分散系と記す)の手法を応用することも可能である。これらに電界を印加すれば、放射状配向の集合体に歪みが与えられ、光学変調を誘起させることが可能である。
なお、これら液晶性物質は、何れも、単体で液晶性を示すものであってもよいし、複数の物質が混合されることにより液晶性を示すものであってもよいし、これらの物質に他の非液晶性物質が混入されていてもよい。さらには、非特許文献1に記載されているような高分子・液晶分散系の物質を適用することもできる。また、非特許文献10に記載されているようなゲル化剤を添加してもよい。
また、上記媒質Aとしては、有極性分子を含有することが望ましく、例えばニトロベンゼン等が媒質Aとして好適である。なお、ニトロベンゼンもカー効果を示す媒質の一種である。
以下に、上記媒質Aとして用いることができる物質もしくは該物質の形態の一例を示すが、本発明は以下の例示にのみ限定されるものではない。
〔スメクチックD相(SmD)〕
スメクチックD相(SmD)は、上記媒質Aとして使用することができる液晶性物質の液晶相の一つであり、図8及び9に示すように、三次元格子構造を有し、その格子定数が光の波長以下である。すなわち、スメクチックD相はキュービック対称性を有する。このため、スメクチックD相は、光学的には等方性を示す。
スメクチックD相を示す液晶性物質としては、例えば、非特許文献2もしくは非特許文献5に記載の下記一般式(9)・(10)
で表されるANBC16等が挙げられる。なお、上記一般式(9)・(10)において、mは任意の整数、具体的には、一般式(9)・(10)においてはm=16、一般式(10)においてXは−NO2基を示す。
上記ANBC16は、171.0℃〜197.2℃の温度範囲において、スメクチックD相が発現する。スメクチックD相は、複数の分子がジャングルジム(商標登録)のような三次元的格子を形成しており、その格子定数は光学波長以下である。すなわち、スメクチックD相は、キュービック対称性を有する。なお、上記ANBC16の格子定数は約6nmである。このため、スメクチックD相は、光学的に等方性を示す。
ANBC16がスメクチックD相を示す上記の温度領域において、ANBC16に電界を印加すれば、ANBC16の分子自身に誘電異方性が存在するため、分子が電界方向に向こうとして格子構造に歪が生じる。すなわち、ANBC16に光学的異方性が発現する。なお、ANBC16に限らず、スメクチックD相を示す物質であれば、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔液晶マイクロエマルション〕
液晶マイクロエマルションとは、非特許文献3において提案された、O/W型マイクロエマルション(油の中に水を界面活性剤で水滴の形で溶解させた系で、油が連続相となる)の油分子をサーモトロピック液晶分子で置換したシステム(混合系)の総称である。
液晶マイクロエマルションの具体例としては、例えば、非特許文献3に記載されている、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック液晶であるペンチルシアノビフェニル(5CB)と、逆ミセル相を示すリオトロピック(ライオトロピック)液晶であるジドデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)の水溶液との混合系がある。この混合系は、図10および図11に示すような模式図で表される構造を有している。
また、この混合系は、典型的には逆ミセルの直径が50Å程度、逆ミセル間の距離が200Å程度である。これらのスケールは光の波長より一桁程度小さい。また、逆ミセルが三次元空間的にランダムに存在しており、各逆ミセルを中心に5CBが放射状に配向している。したがって、この混合系は、光学的には等方性を示す。
そして、この混合系からなる媒質に電界を印加すれば、5CBに誘電異方性が存在するため、分子自身が電界方向に向こうとする。すなわち、逆ミセルを中心に放射状に配向していたため光学的に等方であった系に、配向異方性が発現し、光学的異方性が発現する。なお、上記の混合系に限らず、電界無印加時には光学的に等方性を示し、電界印加によって光学的異方性が発現する液晶マイクロエマルションであれば、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔リオトロピック液晶〕
リオトロピック(ライオトロピック)液晶とは、液晶を形成する主たる分子が、他の性質を持つ溶媒(水や有機溶剤など)に溶けているような他成分系の液晶を意味する。また、上記の特定の相とは、電界無印加時に光学的に等方性を示す相である。このような特定の相としては、例えば、非特許文献6に記載されているミセル相、スポンジ相、キュービック相、逆ミセル相がある。図12に、リオトロピック液晶相の分類図を示す。
両親媒性物質である界面活性剤には、ミセル相を発現する物質がある。例えば、イオン性界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウムの水溶液やパルチミン酸カリウムの水溶液等は球状ミセルを形成する。また、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと水との混合液では、ノニルフェニル基が疎水基として働き、オキシエチレン鎖が親水基として働くことにより、ミセルを形成する。他にも、スチレン−エチレンオキシドブロック共重合体の水溶液でもミセルを形成する。
例えば、球状ミセルは、分子が空間的全方位にパッキング(分子集合体を形成)して球状を示す。また、球状ミセルのサイズは、光の波長以下であるため、異方性を示さず、等方的に見える。しかしながら、このような球状ミセルに電界を印加すれば、球状ミセルが歪むため異方性を発現する。よって、球状ミセル相を有するリオトロピック液晶もまた、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。なお、球状ミセル相に限らず、他の形状のミセル相、すなわち、紐状ミセル相、楕円状ミセル相、棒状ミセル相等を媒質Aとして使用しても、同様の効果を得ることができる。
また、濃度、温度、界面活性剤の条件によっては、親水基と疎水基とが入れ替わった逆ミセルが形成されることが一般に知られている。このような逆ミセルは、光学的にはミセルと同様の効果を示す。したがって、逆ミセル相を媒質Aとして適用することにより、ミセル相を用いた場合と同等の効果を奏する。なお、前述した液晶マイクロエマルションは、逆ミセル相(逆ミセル構造)を有するリオトロピック液晶の一例である。
また、非イオン性界面活性剤であるペンタエチレングリコール−ドデシルエーテルの水溶液には、図12に示したような、スポンジ相やキュービック相を示す濃度および温度領域が存在する。このようなスポンジ相やキュービック相は、光の波長以下の秩序を有しているので透明な物質である。すなわち、これらの相からなる媒質は、光学的には等方性を示す。そして、これらの相からなる媒質に電圧を印加すると、配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。したがって、スポンジ相やキュービック相を有するリオトロピック液晶もまた、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔液晶微粒子分散系〕
また、媒質Aは、例えば、非イオン性界面活性剤ペンタエチレングリコール−ドデシルエーテル(Pentaethylenglychol-dodecylether、C12E5)の水溶液に、表面を硫酸基で修飾した直径100Å程度のラテックス粒子を混在させた、液晶微粒子分散系であってもよい。また、この液晶微粒子分散系の配向秩序(秩序構造)は光学波長未満である。上記液晶微粒子分散系ではスポンジ相が発現するが、本実施の形態において用いられる媒質Aとしては、前述したミセル相、キュービック相、逆ミセル相等を発現する液晶微粒子分散系であってもよい。なお、上記ラテックス粒子に代えて上記DDABを使用することによって、前述した液晶マイクロエマルションと同様な配向構造を得ることもできる。
また、溶媒中に分散させる微粒子(液晶微粒子)は、1種または2種以上のものにより構成されることが好ましい。
また、平均粒子径が0.2μm以下の微粒子を用いることが好ましい。平均粒子径0.2μm以下の微小な大きさの微粒子を用いることにより、媒質層3内における微粒子の分散性が安定し、長時間経っても微粒子が凝集したり、相が分離したりしない。したがって、例えば、微粒子が沈殿して局所的な微粒子のムラが生じることより、表示素子としてムラが生じることを充分に抑制できる。
また、各微粒子の粒子間距離は200nm以下であることが好ましく、190nm以下であることがさらに好ましい。
三次元的に分布した粒子に光を入射すると、ある波長において回折光が生じる。この回折光の発生を抑制すれば、光学的等方性が向上し、表示素子のコントラストが上昇する。
三次元的に分布した粒子による回折光は入射する角度にも依存するが、回折される波長λは概ねλ=2dで与えられる。ここで、dは粒子間距離である。
ここで、回折光の波長が400nm以下であれば、人間の目にほとんど認識されない。このため、λ≦400nmとすることが好ましく、その場合、粒子間距離dを200nm以下とすればよい。
さらに、国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l’Eclairage)では、人間の目で認識できない波長は380nm以下と定めている。このため、λ≦380nmとすることがさらに好ましく、その場合、粒子間距離dを190nm以下とすればよい。
また、粒子間距離が長いと粒子間の相互作用が充分に働かず、ミセル相、スポンジ相、キュービック相、逆ミセル相などの相が発現しにくくなるので、この観点からも、粒子間距離は200nm以下であることが好ましく、190nm以下であることがさらに好ましい。
また、媒質層3における微粒子の濃度(含有量)を、この微粒子と媒質層3に封入される媒質との総重量に対して、0.05wt%〜20wt%とすることが好ましい。媒質層3における微粒子の濃度が0.05wt%〜20wt%となるように調製することにより、微粒子の凝集を抑制することができる。
なお、媒質層3に封入する微粒子は特に限定されるものではなく、透明なものでも不透明なものでもよい。また、微粒子は、高分子などの有機質微粒子であってもよく、無機質微粒子や金属系微粒子などであってもよい。
有機質微粒子を用いる場合、例えば、ポリスチレンビーズ、ポリメチルメタクリレートビーズ、ポリヒドロキシアクリレートビーズ、ジビニルベンゼンビーズなどのポリマービーズ形態の微粒子を用いることが好ましい。また、これらの微粒子は架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。無機質微粒子を用いる場合、例えば、ガラスビーズやシリカビーズ等の微粒子を用いることが好ましい。
金属系微粒子を用いる場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属が好ましい。例えば、チタニア、アルミナ、パラジウム、銀、金、銅が好ましく、これらの金属あるいはこれら金属元素の酸化物などからなる微粒子を用いることが好ましい。これら金属系微粒子は1種類の金属のみで用いてもよいし、2種類以上の金属を合金化、複合化して形成してもよい。例えば、銀粒子の周りをチタニアやパラジウムで覆ってもよい。銀粒子だけで金属微粒子を構成すると、銀の酸化により表示素子の特性が変化する恐れがあるが、パラジウムなどの金属で表面を覆うことにより銀の酸化が防げる。また、ビーズの形態の金属系微粒子はそのまま用いても良く、加熱処理したものや、ビーズ表面に有機物を付与したものを用いてもよい。付与する有機物としては液晶性を示すものが好ましい。
また、金属微粒子の表面に付与する有機物は、金属1モルに対して1モル以上50モル以下の割合であることが好ましい。
上記の有機物を付与した金属系微粒子は、例えば、金属イオンを溶媒に溶解または分散してから、上記有機物と混合し、これを還元することによって得られる。上記溶媒としては水、アルコール類、エーテル類を用いることができる。
また、分散させる微粒子としてフラーレン、および/または、カーボンナノチューブで形成されたものを用いてもよい。フラーレンとしては、炭素原子を球殻状に配置したものであればよく、例えば炭素原子数nが24から96の安定した構造のものが好ましい。このようなフラーレンとしては、例えば、炭素原子60個からなるC60の球状閉殻炭素分子群などが上げられる。また、カーボンナノチューブとしては、例えば、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒形状のナノチューブなどが好ましい。
また、微粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円体状、塊状、柱状、錐状や、これらの形態に突起を持った形態、これらの形態に孔が開いている形態などであってもよい。また、微粒子の表面形態についても特に限定されるものではなく、例えば、平滑でも良く、凹凸や孔、溝を有していてもよい。
〔デンドリマー〕
デンドリマーとは、モノマー単位毎に枝分かれのある三次元状の高分岐ポリマーである。デンドリマーは、枝分かれが多いために、ある程度以上の分子量になると球状構造となる。この球状構造は、光の波長以下の秩序を有しているので透明な物質であり、電界印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。したがって、デンドリマーもまた、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。また、前述した液晶マイクロエマルションにおいてDDABに代えて上記デンドリマーを使用することにより、前述した液晶マイクロエマルションと同様な配向構造を得ることができる。このようにして得られた媒質もまた、上記媒質Aとして適用することができる。
〔コレステリックブルー相〕
また、媒質Aとして、コレステリックブルー相を適用することができる。なお、図13には、コレステリックブルー相の概略構成が示されている。
図13に示すように、コレステリックブルー相は、螺旋軸が3次元的に周期構造を形成しており、その構造は、高い対称性を有していることが知られている(例えば、非特許文献8・11参照)。コレステリックブルー相は、光の波長以下の秩序を有しているのでほぼ透明な物質であり、電界印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する(光学的異方性の程度が変化する)。すなわち、コレステリックブルー相は、光学的に概ね等方性を示し、電界印加によって液晶分子が電界方向に向こうとするために格子が歪み、異方性を発現する。よって、コレステリックブルー相を示す分子からなる媒質を、本表示素子の媒質Aとして適用できる。
なお、コレステリックブルー相を示す物質としては、例えば、「JC1041」(商品名、チッソ社製混合液晶)を48.2mol%、「5CB」(4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル、ネマチック液晶)を47.4mol%、「ZLI−4572」(商品名、メルク社製カイラルドーパント)を4.4mol%の割合で混合してなる組成物が知られている。該組成物は、330.7Kから331.8Kの温度範囲で、コレステリックブルー相を示す。
また、コレステリックブルー相を示す他の物質として、例えば、ZLI−2293(混合液晶、メルク社製)を67.1wt%、P8PIMB(1,3-phenylene bis[4-(4-8-alkylphenyliminomethyl-benzoate、バナナ型(屈曲型)液晶、下記構造式(11)参照)を15wt%、MLC−6248(カイラル剤、メルク社製)を17.9wt%混合した物質を用いてもよい。この物質は、77.2℃から82.1℃の温度範囲でコレステリックブルー相を示す。
また、上記の各物質の混合比を適宜変更して用いてもよい。例えば、ZLI−2293を69.7wt%、P8PIMBを15wt%、MLC−6248(カイラル剤)を15.3wt%混合した物質は80.8℃から81.6℃の温度範囲でコレステリックブルー相を示す。
また、コレステリックブルー相を示すさらに他の物質として、例えば、ZLI−2293(混合液晶、メルク社製)を67.1wt%、MHPOBC(4-(1-methylheptyloxycarbonyl)phenyl-4’-octylcarboxybiphenyl-4-carboxylate、直線状液晶、下記構造式(12)参照)を15wt%、MLC−6248(カイラル剤、メルク社製)を17.9wt%混合した物質を用いてもよい。この物質は、83.6℃から87.9℃の温度範囲でコレステリックブルー相を示す。
また、上記の各物質の混合比を適宜変更して用いてもよい。例えば、ZLI−2293を69.7wt%、MHPOBCを15wt%、MLC−6248(カイラル剤)を15.3wt%混合した物質は87.8℃から88.4℃の温度範囲でコレステリックブルー相を示す。
なお、ZLI−2293とMLC−6248とを混合するだけではコレステリックブルー相を発現させることはできなかったが、バナナ型(屈曲型)をした液晶P8PIMBや直線状液晶MHPOBCを添加することによりコレステリックブルー相を示した。
また、上記の例では、直線状液晶としてラセミ体を用いたが、必ずしもラセミ体に限定されるものではなく、カイラル体を用いてもよい。またカイラル炭素を1つ、あるいは複数以上含んでいてよい。また、直線状液晶を用いる場合、直線状液晶MHPOBCのように反傾構造(一層ごとに異なる方向を向いている)を持つものを用いることが好ましい。
また、直線状液晶とは、化学構造式においてほぼ横長の直線に近い液晶分子を表わすために用いた総称であり、実際の立体配置は化学構造式のように一平面内にあるとは限らず、折れ曲がっていることがあることはいうまでもない。
また、バナナ型(屈曲型)液晶とは、化学構造式において屈曲部を有する液晶分子を表わすために用いた総称であり、P8PIMBに限定されるものではない。例えば、化学構造式における屈曲部が、フェニレン基などのベンゼン環であってもよく、あるいは、ナフタレン環やメチレン鎖などで結合されてなるものであってもよい。このようなバナナ型(屈曲型)液晶としては、例えば、下記構造式(13)〜(16)に示す化合物が挙げられる。
また、上記したように、本発明に適したコレステリックブルー相は光学波長未満の欠陥秩序を有しているので、光学波長領域では概ね透明であり、概ね光学的に等方性を示す。ここで、概ね光学的に等方性を示すというのは、コレステリックブルー相は液晶の螺旋ピッチを反映した色を呈するが、この螺旋ピッチによる呈色を除いて、光学的に等方性を示すことを意味する。なお、螺旋ピッチを反映した波長の光を選択的に反射にする現象は、選択反射と呼ばれる。この選択反射の波長域が可視域に無い場合には呈色しない(呈色が人間の目に認識されない)が、可視域にある場合にはその波長に対応した色を示す。
ここで、400nm以上の選択反射波長域または螺旋ピッチを持つ場合、コレステリックブルー相(ブルー相)では、その螺旋ピッチを反映した色に呈色する。すなわち、可視光が反射されるので、それによって呈する色が人間の目に認識されてしまう。したがって、例えば、本発明の表示素子でフルカラー表示を実現してテレビなどに応用する場合、その反射ピークが可視域にあるのは好ましくない。
なお、選択反射波長は、上記媒質の持つ螺旋軸への入射角度にも依存する。このため、上記媒質の構造が一次元的ではないとき、つまりコレステリックブルー相のように三次元的な構造を持つ場合には、光の螺旋軸への入射角度は分布を持ってしまう。したがって、選択反射波長の幅にも分布ができる。
このため、ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチは可視域以下、つまり400nm以下であることが好ましい。ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチが400nm以下であれば、上記のような呈色が人間の目にほとんど認識されない。
また、国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l’Eclairage)では、人間の目の認識できない波長は380nm以下であると定められている。したがって、ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチが380nm以下であることがより好ましい。この場合、上記のような呈色が人間の目に認識されることを確実に防止できる。
また、上記のような呈色は、螺旋ピッチ、入射角度だけでなく、誘電性媒質の平均屈折率とも関係する。このとき、呈色する色の光は波長λ=nPを中心とした波長幅Δλ=PΔnの光である。ここで、nは平均屈折率、Pは螺旋ピッチである。また、Δnは屈折率の異方性である。
Δnは、誘電性物質によりそれぞれ異なるが、例えば液晶性物質を上記媒質層3に封入する物質として用いた場合、液晶性物質の平均屈折率は1.5程度、Δnは0.1程度なので、この場合、呈色する色が可視域にないためには、螺旋ピッチPは、λ=400とすると、P=400/1.5=267nmになる。また、ΔλはΔλ=0.1×267=26.7になる。したがって、上記のような呈色が人間の目にほとんど認識されないようにするためには、上記媒質の螺旋ピッチを、267nmから26.7nmの約半分である13.4nmを引いた253nm以下にすればよい。すなわち、上記のような呈色を防止するためには、上記媒質の螺旋ピッチが253nm以下であることが好ましい。
また、上記の説明では、λ=nPの関係において、λを400nmとしたが、λを国際照明委員会CIEが人間の目の認識できない波長として定めている380nmとした場合には、呈色する色が可視域外とするための螺旋ピッチは240nm以下となる。すなわち、上記媒質の螺旋ピッチを240nm以下とすることにより、上記のような呈色を確実に防止することができる。
例えば、JC1041(混合液晶、チッソ社製)を50.0wt%、5CB(4-cyano-4’-pentyl biphenyl、ネマチック液晶)を38.5wt%、ZLI−4572(カイラルドーパント、メルク社製)を11.5wt%混合した物質がある。この物質は、約53℃以下で液体的な等方相から光学的な等方相に相転移するが、螺旋ピッチが約220nmであり、可視域未満にあるために呈色しなかった。
上述のように、本発明に適したコレステリックブルー相は光学波長未満の欠陥秩序を有している。欠陥構造は隣り合う分子が大きく捩れていることに起因していているので、コレステリックブルー相を示す誘電性媒質は大きなねじれ構造を発現させるためにカイラル性を示す必要がある。大きな捩れ構造を発現させるためには、誘電性媒質にカイラル剤を加えることが好ましい。
カイラル剤の濃度としてはカイラル剤の持つ捩れ力にもよるが、8wt%または4mol%以上であることが好ましい。カイラル剤の割合が8wt%または4mol%以上とすることにより、コレステリックブルー相の温度範囲が約1℃以上になった。カイラル剤の割合が8wt%または4mol%未満の場合は、コレステリックブルー相の温度範囲が狭くなった。
また、カイラル剤の濃度が11.5wt%以上であることが、さらに好ましい。カイラル剤の濃度が11.5wt%以上の場合、螺旋ピッチが約220nmになり呈色しなかった。
また、カイラル剤の濃度は15wt%以上であることが、さらに好ましい。バナナ型(屈曲型)液晶や反傾構造をもつ直線状液晶を添加することによりコレステリックブルー相を発現させる場合、カイラル剤の濃度が15wt%以上であれば、コレステリックブルー相の温度範囲が約1℃になった。また、カイラル剤の濃度を17.9wt%に増やすことにより、コレステリックブルー相の温度範囲はさらに広がった。
このように、カイラル剤の濃度が高いとコレステリックブルー相を発現しやすくなり、さらにコレステリックブルー相が持つ螺旋ピッチも短くなるので好ましい。
ただし、カイラル剤の添加量が多くなり過ぎると、媒質層3全体の液晶性が低下するという問題が生じる。液晶性の欠如は、電界印加時における光学的異方性の発生度合いの低下に繋がり、表示素子としての機能の低下を招く。また、液晶性が低下することにより、コレステリックブルー相の安定性の低下に繋がり、コレステリックブルー相の温度範囲の拡大が見込めなくなる。このため、カイラル剤の添加濃度の上限値が決まり、本願本発明者等の解析によれば、その上限濃度は80wt%であることがわかった。すなわち、カイラル剤の濃度は80wt%以下であることが好ましい。
また、本実施の形態では、カイラル剤としてはZLI−4572やMLC−6248を用いたが、これに限るものではない。一例として、S811(E.Merck社製)など市販品を用いてもよい。また、軸不斉のカイラル剤を用いても良い。軸不斉のカイラル剤としては、例えば、軸不斉ビナフチル誘導体(下記化合物(17)参照)を用いることができる。
ここで、nは4〜14の整数である。
なお、この化合物(17)はnが奇数の時に単独でブルー相を示すことがある。例えば、n=7の場合には約103℃から約94℃の範囲でブルー相を示す。したがって、この化合物(17)が単独でブルー相を示す(液晶性がある)場合には、媒質層3に封入する媒質として、この化合物(17)を単独で用いても良いし、また、化合物(17)をカイラル剤として用いても良い。
なお、上記の説明では、コレステリックブルー相におけるカイラル剤添加による効果を述べてきたが、カイラル剤添加による上記の効果はコレステリックブルー相に限定されるものではなく、スメクチックブルー相やネマチック相等の液晶相を示す誘電性媒質においても、略同様の効果を得ることができる。
〔スメクチックブルー相〕
また、媒質Aとして、スメクチックブルー相を適用することができる。なお、図13には、スメクチックブルー相の概略構成が示されている。
図13に示すように、スメクチックブルー(BPSm)相は、コステリックブルー相と同様、高い対称性の構造を有し(例えば、非特許文献7、8参照)、光の波長以下の秩序を有しているのでほぼ透明な物質であり、電界印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。すなわち、スメクチックブルー相は、光学的に概ね等方性を示し、電界印加によって液晶分子が電界方向に向こうとするために格子が歪み、異方性を発現する。
なお、スメクチックブルー相を示す物質としては、例えば、非特許文献7に記載されているFH/FH/HH−14BTMHC等が挙げられる。該物質は、74.4℃〜73.2℃でBPSm3相、73.2℃〜72.3℃でBPSm2相、72.3℃〜72.1℃でBPSm1相を示す。BPSm相は、非特許文献8に示すように、高い対称性の構造を有するため、概ね光学的等方性が示される。また、物質FH/FH/HH−14BTMHCに電界を印加すると、液晶分子が電界方向に向こうとすることにより格子が歪み、同物質は異方性を発現する。よって、同物質は、本実施の形態の表示素子の媒質Aとして使用することができる。
以上のように、本実施の形態の表示素子において媒質Aとして使用することができる物質は、電界の印加により光学的異方性(屈折率、配向秩序度)が変化するものでありさえすれば、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質であってもよく、キュービック相、スメクチックD相、コレステリックブルー相、スメクチックブルー相の何れかを示す分子からなるものであってもよく、ミセル相、逆ミセル相、スポンジ相、キュービック相の何れかを示すリオトロピック液晶もしくは液晶微粒子分散系であってもよい。また、上記媒質Aは、液晶マイクロエマルションやデンドリマー(デンドリマー分子)、両親媒性分子、コポリマー、もしくは、上記以外の有極性分子等であってもよい。
また、上記媒質は、液晶性物質に限らず、電界印加時に光の波長以下の秩序構造(配向秩序)を有することが好ましい。秩序構造が光の波長以下であれば、光学的に等方性を示す。従って、電界印加時に秩序構造が光の波長以下となる媒質を用いることにより、電界無印加時と電界印加時とにおける表示状態を確実に異ならせることができる。
以下、本実施の形態では、上記媒質Aとして、上記構造式(1)〜(3)で示される液晶性物質、すなわち、3OCB、5OCB、及び、7OCBをそれぞれ等量混合したもの(以下、媒質混合物とする)を使用するものとするが、上記媒質Aとしては、これに限定されるものではなく、上述した各種物質そのもの、または、各種物質の混合物を適用することができる。
本実施の形態によれば、上記電極4・5としてITOを使用し、線幅5μm、電極間距離5μm、媒質層3の層厚(すなわち基板1・2間の距離)を5μmとし、媒質Aとして上記媒質懇望物を使用した。そして、外部加温装置(加熱手段)により上記媒質混合物をネマチック等方相の相転移直上近傍の温度(相転移温度よりも僅かに高い温度、例えば+0.1K)に保ち、電界印加を行うことにより、透過率を変化させることができた。なお、上記媒質混合物は、約66℃未満の温度でネマチック相、それ以上の温度で等方相を示す。
次に、本実施の形態の表示素子における表示原理について、図2(a)・(b)、図3、図4(a)〜(g)、及び、図5(a)・(b)を参照にして以下に説明する。
なお、以下の説明では、主に、上記表示素子として透過型の表示素子を使用し、電界無印加時に光学的にはほぼ等方、好適には等方であり、電界印加により光学異方性を用いる場合を例に挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
図2(a)は、電界無印加状態(OFF状態)における本実施の形態の表示素子の構成を模式的に示す要部平面図であり、図2(b)は、電界印加状態(ON状態)における本実施の形態の表示素子の構成を模式的に示す要部平面図である。なお、図2(a)・(b)は、上記表示素子における1画素中の構成を示すものとし、説明の便宜上、対向基板21の構成については図示を省略する。
さらに、図3は、図1(a)・(b)に示す表示素子における印加電圧と透過率との関係を示すグラフである。また、図4(a)〜(g)は、電界の印加による光学的異方性の変化を利用して表示を行う表示素子と従来の液晶表示素子との表示原理の違いを、電界無印加時(OFF状態)および電界印加時(ON状態)における媒質の平均的な屈折率楕円体の形状(屈折率楕円体の切り口の形状にて示す)およびその主軸方向にて模式的に示す断面図であり、図4(a)〜(g)は、順に、電界の印加による光学的異方性の変化を利用して表示を行う表示素子の電界無印加時(OFF状態)の断面図、該表示素子の電界印加時(ON状態)の断面図、TN(Twisted Nematic)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該TN方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該VA方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図、IPS(In Plane Switching)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該IPS方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図を示す。
物質中の屈折率は、一般には等方的でなく方向によって異なっている。この屈折率の異方性(光学的異方性)は、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両電極4・5の対向方向、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両電極4・5の対向方向に垂直な方向、基板面に垂直な方向(基板法線方向)を、それぞれx,y,z方向とすると、任意の直交座標系(X1,X2,X3)を用いて下記関係式(1)
(nji=nij、i,j=1,2,3)
で表される楕円体(屈折率楕円体)で示される(例えば非特許文献11参照)。ここで、上記関係式(1)を楕円体の主軸方向の座標系(Y1,Y2,Y3)を使用して書き直すと、下記関係式(2)
で示される。n1,n2,n3(以下、nx,ny,nzと記す)は主屈折率と称され、楕円体における三本の主軸の長さの半分に相当する。原点からY3=0の面と垂直な方向に進行する光波を考えると、この光波はY1とY2との方向に偏光成分を有し、各成分の屈折率はそれぞれnx,nyである。一般に、任意の方向に進行する光に対しては原点を通り、光波の進行方向に垂直な面が、屈折率楕円体の切り口と考えられ、この楕円の主軸方向が光波の偏光の成分方向であり、主軸の長さの半分がその方向の屈折率に相当する。
まず、電界の印加による光学的異方性の変化を利用して表示を行う表示素子と従来の液晶表示素子との表示原理の相違について、従来の液晶表示素子として、TN方式、VA方式、IPS方式を例に挙げて説明する。
図4(c)・(d)に示すように、TN方式の液晶表示素子は、対向配置された一対の基板101・102間に液晶層105が挟持され、上記両基板101・102上にそれぞれ透明電極103・104(電極)が設けられている構成を有し、電界無印加時には、液晶層105における液晶分子の長軸方向がらせん状に捻られて配向しているが、電界印加時には、上記液晶分子の長軸方向が電界方向に沿って配向するようになっている。この場合における平均的な屈折率楕円体105aは、電界無印加時には、図4(c)に示すように、その主軸方向(長軸方向)が基板面に平行な方向(基板面内方向)を向き、電界印加時には、図4(d)に示すように、その主軸方向が基板面法線方向を向く。すなわち、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体105aの形状は楕円であり、電界印加によって、その長軸方向(主軸方向、屈折率楕円体105aの向き)が変化する。すなわち、屈折率楕円体105aが回転する。なお、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体105aの形状および大きさは、ほぼ変わらない。
VA方式の液晶表示素子は、図4(e)・(f)に示すように、対向配置された一対の基板201・202間に液晶層205が挟持され、上記両基板201・202上にそれぞれ透明電極(電極)203・204が備えられている構成を有し、電界無印加時には、液晶層205における液晶分子の長軸方向が、基板面に対して略垂直な方向に配向しているが、電界印加時には、上記液晶分子の長軸方向が電界に垂直な方向に配向する。この場合における平均的な屈折率楕円体205aは、図4(e)に示すように、電界無印加時には、その主軸方向(長軸方向)が基板面法線方向を向き、図4(f)に示すように、電界印加時にはその主軸方向が基板面に平行な方向(基板面内方向)を向く。すなわち、VA方式の液晶表示素子の場合にも、TN方式の液晶表示素子と同様、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体205aの形状は楕円であり、電界印加によって、その長軸方向が変化する(屈折率楕円体205aが回転する)。また、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体205aの形状および大きさは、ほぼ変わらない。
また、IPS方式の液晶表示素子は、図4(g)・(h)に示すように、同一の基板301上に、1対の電極302・303が対向配置された構成を有し、図示しない対向基板との間に挟持された液晶層に、上記電極302・303により電圧が印加されることで、上記液晶層における液晶分子の配向方向(屈折率楕円体305aの主軸方向(長軸方向))を変化させ、電界無印加時と電界印加時とで、異なる表示状態を実現することができるようになっている。すなわち、IPS方式の液晶表示素子の場合にも、TN方式およびVA方式の液晶表示素子と同様、図4(g)に示す電界無印加時と図4(h)に示す電界印加時とで、屈折率楕円体305aの形状は変わらずに、その主軸方向が変化する(屈折率楕円体305aが回転する)。
このように、従来の液晶表示素子では、電界無印加時でも液晶分子が何らかの方向(典型的には一方向)に配向している。そして、電界を印加することによって、各液晶分子の配向方向が揃った状態で、その配向方向を変化させて表示(透過率の変調)を行っている。すなわち、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体の形状および大きさを保ったまま(つまり楕円形のまま)になっており、屈折率楕円体の主軸(長軸)方向のみが、電界印加によって回転(変化)することを利用して表示を行っている。したがって、屈折率楕円体の長軸方向は電界印加方向に対して、垂直あるいは平行とは限らない。つまり、従来の液晶表示素子では、液晶分子の配向秩序度はほぼ一定であり、配向方向を変化させることによって表示(透過率の変調)を行っている。さらに換言すれば、従来の液晶表示素子では、電界印加によって、配向秩序度はほぼ一定のまま、配向容易軸の方向が変化する。
これに対し、本実施の形態にかかる表示素子は、図4(a)・(b)に示すように、電界無印加時における屈折率楕円体3aの形状は球状、すなわち、光学的に等方(nx=ny=nz、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0(ほぼゼロ))であり、電界を印加することによって異方性(nx>ny、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0)が発現して、屈折率楕円体3aが楕円になる(光学的異方性を示す)。また、このとき屈折率楕円体3aの長軸方向は電界方向と垂直になる。つまり、誘電性物質の誘電異方性が負(ネガ型液晶)の場合、全ての電圧値において、屈折率楕円体3aの長軸方向は電界方向に垂直(直交状態)になり、誘電異方性が正(ポジ型液晶)の場合、全ての電圧値において、屈折率楕円体3aの長軸方向は電界方向に平行になる。本発明において、電界方向と屈折率楕円体3aの主軸方向の少なくとも一つとは、常に平行もしくは直交である。なお、本発明において、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0(配向秩序度が殆ど無い)というのは、可視光より小さいスケールで見た場合には、液晶分子等が、ある方向に並んでいる割合が多い(配向秩序がある)が、可視光より大きいスケールで見ると、配向方向が平均化されていて配向秩序が無いことを意味している。すなわち、配向秩序度が可視光波長域、及び、可視光波長域より大きい波長の光に対して何ら影響を与えない程度に小さいことを示す。例えば、クロスニコル下で黒表示を実現している状態を示す。一方、本発明において、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0とは、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度が、ほぼゼロの状態よりも大きいことを示し、例えば、クロス二コル下で白表示を実現している状態を示す。(この場合、階調表示であるグレーも含まれる)。
すなわち、本実施の形態にかかる表示素子では、電界無印加時に分子9は、あらゆる方向を向いている。但し、これらの分子は、可視光波長スケール未満の秩序(秩序構造、配向秩序)を有しているので、光学的異方性が発現せず(可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0)、図4(a)に示すように、屈折率楕円体3aの形状が球状となる。しかしながら、図4(b)に示すように、電界印加時には、個々の分子9が負の誘電異方性を有しているため基板面内方向(基板面に平行な方向)を向こうとして配向状態が変化する。また、この際、可視光波長未満の秩序構造に歪みが生じて光学的異方性(可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0)が発現する。このように、本実施の形態にかかる表示素子では、電界無印加時には屈折率楕円体3aの形が等方的(nx=ny=nz)であり、電界印加によって屈折率楕円体3aの形に異方性(下界面(すなわち、図4(b)においては下側の基板1との界面)付近:nx>ny、上界面(すなわち、図4(b)においては上側の基板2との界面)付近:ny>nx)が例えばこのように発現する。つまり、本実施の形態にかかる表示素子では、電界印加によって屈折率楕円体3aの形状、大きさが変化する。ここで、上記nx,ny,nzは、それぞれ、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両櫛形の電極4・5の対向方向の主屈折率、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両櫛形の電極4・5の対向方向に垂直な方向の主屈折率、基板面に垂直な方向(基板法線方向)の主屈折率を表している。
また、図18は、図1に示す表示素子における電界印加時の上記媒質Aの一分子(分子9)の屈折率楕円体3aの形状を示す模式図である。このように、上記屈折率楕円体3aの形状は、原点を通り、光波の進行方向に垂直な面を切り口とする、屈折率楕円体(楕円)の切り口の形状にて示され、前記したように、楕円の主軸方向が光波の偏光の成分方向であり、主軸の長さの半分がその方向の屈折率に相当する。
本実施の形態かかる上記媒質Aは、上記したように電界無印加時に光学的等方性(等方相)を示し、電界を印加することによって光学的異方性を発現させる。このため、電界無印加時における屈折率楕円体3aの形状は球状、すなわち、光学的に等方であり、電界を印加することによって異方性が発現するようになっている。
そこで、図18に示すように電界方向に垂直な方向の屈折率によって示される、光学的異方性の発現による、電界印加時の楕円の主軸方向(すなわち、光波の偏光の成分方向)の屈折率、つまり、上記分子9の長軸方向における屈折率(異常光屈折率)をne、上記楕円の主軸方向に垂直な方向の屈折率、つまり、上記分子の短軸方向における屈折率(常光屈折率)をnoとすると、上記屈折率異方性(Δn)(複屈折変化)は、Δn=ne−noで表される。
すなわち、本発明において、上記屈折率異方性(Δn)は、Δn=ne−no(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で示される複屈折変化を示し、本発明は、上記neおよびnoが変化するのに対し、従来の液晶表示装置は、上記neおよびnoは変化しない。
また、上記電界印加時の屈折率楕円体3aの長軸方向は、電界方向に対して平行(誘電異方性が正の媒質の場合)、または、垂直(誘電異方性が負の媒質を用いる場合)となる。
これに対して、従来の液晶表示素子では、電界印加によって屈折率楕円体の長軸方向を回転させて表示を行うので、屈折率楕円体の長軸方向は、電界方向に対して平行または垂直になるとは限らない。
このように、本実施の形態にかかる表示素子は、光学的異方性の方向は一定(電界印加方向は変化しない)で例えば可視光波長以上のスケールでの配向秩序度を変調させることによって表示を行うものであり、媒質Aそのものの光学的異方性(例えば可視光波長以上のスケールにおける配向秩序)の程度を変化させている。したがって、従来の液晶表示素子とは表示原理が大きく異なっている。
なお、上記媒質層3に封入される媒質Aは、電界の印加によって、光学的異方性の程度が変化するものであればよく、電界無印加時には光学的に概ね等方(可視光以上のスケールでの配向秩序度≒0)であり、電界印加により光学変調を誘起(つまり、電界印加により光学的異方性を示す)される媒質であってもよい。また、上記媒質Aは、電界印加に伴い、分子9、または分子集合体(クラスタ)の可視光以上のスケールでの配向秩序度が上昇(光学変調が既に誘起されている状態(可視光以上のスケールでの配向秩序度>0)から、可視光以上のスケールでの分子9の配向秩序度がさらに上昇)する物質(媒質)であってもよい。
本発明において、電界の印加により媒質Aの光学異方性の程度が変化するとは、前記したように、電界の印加に伴って屈折率楕円体3aの形状が変化することを示し、上記したように電界無印加時に光学的等方性を示し、電界を印加することによって光学的異方性の程度が変化する場合、つまり、電界を印加することによって光学的異方性が発現する場合、屈折率楕円体3aの形状は、電界の印加により、球状から楕円に変化する。
本実施の形態にかかる表示素子は、図2(a)に示すように、櫛形の電極4・5に電界(電圧)を印加していない状態では、基板1・2間に封入される媒質Aが等方相を示し、光学的にも等方となるので、黒表示になる。
一方、図2(b)に示すように、電極4・5に電界を印加すると、上記媒質Aの各分子が、その長軸方向が上記電極4・5間に形成される電界に沿うように配向されるので、複屈折現象が発現する。この複屈折現象により、電極4・5間の電圧に応じて表示素子の透過率を変調することが可能になる。
なお、相転移温度(転移点)から十分遠い温度においては表示素子の透過率を変調させるために必要な電圧は大きくなるが、転移点のすぐ直上の温度では0〜100V前後の電圧で、十分に透過率を変調させることが可能になる。
例えば、非特許文献7および非特許文献11によれば、電界方向の屈折率と、電界方向に垂直な方向の屈折率とを、それぞれn//、n⊥とすると、複屈折変化(Δn=n//−n⊥)と、外部電界、すなわち電界E(V/m)との関係は、下記関係式(3)
Δn=λ・Bk・E2 …(3)
で表される。なお、λは真空中での入射光の波長(m)、Bkはカー定数(m/V2)、Eは印加電界強度(V/m)である。
カー定数Bkは、温度(T)の上昇とともに1/(T−Tni)に比例する関数で減少することが知られている。このため、カー定数Bkは、転移点(Tni)近傍では弱い電界強度で駆動できていたとしても、温度(T)が上昇するとともに急激に必要な電界強度が増大する。このため、転移点から十分遠い温度(転移点よりも十分に高い温度)では透過率を変調させるために必要な電圧が大きくなるが、相転移直上の温度では、約100V以下の電圧で、透過率を十分に変調させることができる。
さらに、電界の印加により光学的異方性が発現する媒質Aを表示媒質に用いた表示素子を備えた表示装置において電源の投入を行ったとき、周囲温度が低い場合には、上記媒質Aが本来駆動されるべき温度に達しておらず、媒質Aの物理的な状態が、素子駆動時に本来有しているべき状態とは異なっていることがあることが挙げられる。例えば、上記媒質Aがネマチック−等方相の相転移温度直上の等方相状態で、本来駆動しなければならない場合(なお、逆の場合もあり得る)、電源投入時に、上記相転移温度よりも低温のネマチック状態になっていることがある。この場合、電界無印加状態では本来等方状態により黒表示を達成しなければならないときに、無電界印加でも光学的異方性を有するネマチックでは、その光学的異方性により光を透過させてしまうことになる。したがって、このような場合には、良好な黒表示ができなくなり、コントラストが低下してしまう。もちろん、ヒータや光源(バックライト)により表示素子を過熱し、良好な表示を得ることができるが、瞬時に温度を上昇させ、また安定化させることは容易なことではない。
本実施の形態の表示素子によれば、例えば、電源投入時に周囲温度が上記転移点よりも低く、媒質Aが、本来駆動されるべき温度に達していない場合、析出したネマチック液晶相は、上記配向膜6における配向(処理)方向、水平配向膜の場合は後述する図6に示すような、偏光板吸収軸方向に配向するため、あるいは垂直配向膜の場合は偏光板平面と垂直になるため、上記ネマチック液晶相、つまり、物理的状態が本来の駆動時の状態と異なる媒質による光学的な寄与は無い。この結果、ヒータおよびバックライトにより表示素子の温度が上昇するまでの間においても良好な黒表示を実現することができる。
すなわち、本実施の形態によれば、たとえ電界無印加時に光学異方性が発現したとしても、上記画素基板20および対向基板21における互いの対向表面に、一方の偏光板吸収軸と平行または直交する方向の水平配向処理を施し、その光学異方性の方向、つまり、配向方向を、上記偏光板吸収軸と平行または直交する方向にしておくか、あるいは垂直配向処理を施し、配向方向を上記偏光版平面と垂直にすることで、その光学的寄与を消失させることができる。つまり、本実施の形態において、上記画素基板20における対向基板21の対向面表面に水平あるいは垂直配向処理が施されていることで、基板界面の媒質A、厳密には該媒質Aを構成する分子は、素子駆動温度未満の温度で、上記配向処理における配向(処理)方向に沿って配向する。
また、本実施の形態の表示素子によれば、所望の駆動温度領域に達したとしても、基板界面に吸着した分子による黒表示時の光の漏れは観測されず、高いコントラストを実現することができた。この結果、コントラストが低下することがなく、高速応答性、視野角特性に優れた表示素子を得ることができる。
従来の表示素子では、一対の基板において媒質と接する両方の基板の面に配向膜が成膜されているので、電界印加時には、媒質のみならず、配向膜にも電圧が印加される。このため、媒質に印加される電圧は、配向膜に印加される電圧の分だけ減少してしまう。その結果、従来の表示素子では、駆動電圧の低減効果が相殺してしまうという問題がある。
しかしながら、本実施の形態の表示素子では、図1(a)・(b)に示すように、基板1(画素基板20)における基板2(対向基板21)の対向面表面にのみ水平あるいは垂直配向処理が施されている。すなわち、電極4・5を形成した基板1には配向膜が形成されていない。このため、本実施の形態の表示素子では、電極4・5が、配向膜を介して媒質層3の媒質Aに電圧を印加することがない。したがって、本実施の形態の表示素子では、媒質Aに印加される電圧が、配向膜に印加される電圧の分だけ減少することがなく、駆動電圧を有意に低減することができる。
以下、図5(a)・(b)を参照して、本実施の形態の表示素子と従来の表示素子とで駆動電圧を比較した結果について説明する。
図5(a)は、電界印加状態(ON状態)における比較用の従来の表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、図5(b)は、電界印加状態(ON状態)における本実施の形態の表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。図5(b)における本実施の形態の表示素子の要部の構成は、図1(b)における表示素子の要部の構成と同一であるので、ここでは説明を省略する。
図5(a)に示すように、比較用の従来の表示素子では、両基板11・12(画素基板30及び対向基板31)に対して、配向膜16・19の形成並びにラビング処理が行なわれている。すなわち、画素基板30に設けられた電極14・15上にも配向膜19が形成され、水平配向処理が施されている。この比較用の従来の表示素子を外部加温装置(加熱手段)により上記媒質混合物をネマチック等方相の相転移直上近傍の温度(相転移温度よりも僅かに高い温度、例えば+0.1K)に保ち、電界印加を行った場合、最大透過率を得られる印加電圧は、63Vであった。
これに対して、図5(b)に示す本実施の形態の表示素子を外部加温装置(加熱手段)により上記媒質混合物をネマチック等方相の相転移直上近傍の温度(相転移温度よりも僅かに高い温度、例えば+0.1K)に保ち、電界印加を行った場合、最大透過率を得られる印加電圧は、59Vであった。
このように、電極上に配向膜を形成していない本実施の形態の表示素子は、電極上に配向膜を形成させた従来の表示素子と比較して、最大透過率を得られる印加電圧を顕著に低減させることができた。
同じ電界強度が媒質Aに印加された場合、配向処理が施された基板界面近傍の媒質Aの分子は、配向処理が施されていない基板界面近傍の媒質Aの分子に比べて、界面の影響を受けて配向処理方向により配向しやすくなる。しかしながら、図5(a)に示すように、配向膜19を電極14・15が形成された基板11に塗布した場合、すなわち、電極14・15上に配向膜19を塗布した場合には、配向膜19にも電圧が印加される分、光学変調を行う媒質Aにかかる電圧が低くなる。そのため、電極14・15上に配向膜19を塗布する場合、塗布しない場合と比較して、より大きい電圧を印加しなければならない。
それゆえ、図5(a)の配向膜19による電圧降下、及び、配向処理による基板界面近傍分子の配向効果を考慮すると、電極が無い基板のみ配向処理を行えば良いことがわかる。
図5(a)の従来の表示素子では、両基板11・12における互いの対向面表面に配向膜16・19を塗布して配向処理を行っていたために、配向膜19にも電圧が印加され、そのぶん、光学変調される媒質層13へ印加される電圧が減り、駆動電圧の低減効果は相殺されてしまった。一方、図5(b)の本実施の形態の表示素子では、電界印加を行わない基板(基板2)のみに配向膜6が形成され配向処理を行うので、効果的に駆動電圧を低減することが可能になった。
基板1に設けられた電極4・5は、その電界印加方向が、少なくとも2方向になるように設けられている。電界印加方向が少なくとも2方向存在することで、媒質層3で、媒質Aの光学的異方性の方向が異なる媒質ドメインが存在する。このため、上記表示素子において視野角特性が向上するという効果を奏する。また、上記少なくとも2方向の電界印加方向が互いに垂直になるように、電極4・5がもうけられている場合、媒質Aの光学異方性の方向が互いに直交する(90度の角度をなす)媒質ドメインが存在する。このため、表示素子において、各媒質ドメインにおける斜め視角の色つき現象を互いに補償しあうことが可能になる。したがって、透過率を損なうことなく、視野角特性をより向上させることができる表示素子を実現できる。また、媒質Aの光学異方性の方向が互いに直交し、かつ、上記偏光板7・8の偏光板吸収軸7a・8aとの角度が45度の角度をなすように配置されている場合、斜め視角の色付き現象の補償度が増し、視野角特性をさらに向上させる表示素子を実現できる。
このように電界印加方向が少なくとも2方向存在する電極としては、例えば、櫛歯部分4a・5aが楔型形状を有し、かつ、互いに噛み合う方向に対向配置された櫛形電極が挙げられる。「楔形形状」とは、櫛歯部分4a・5aが、所定の角度(鋸歯角度α)で折れ曲がった形状のことをいう。また、櫛歯部分4a・5aは、図6に示すように、楔型形状複数有した形状でもよい。このように、楔型形状を複数有する形状の一例としては、鋸歯形状が挙げられる。なお、図6は、本実施の形態の表示素子における電極構造と偏光板吸収軸との関係を説明する図である。
ここでいう「櫛形電極」とは、図6・7に示すように、複数の電極(櫛歯部分)4a・24aが、1つの電極(櫛根部分)4b・24bから、その長手方向に対して所定の方向に伸長した電極のことをいう。また、「鋸歯形状」とは、図6に示すように、櫛歯部分が、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、鋸歯角度αで交互に折れ曲がりながら伸長した形状のことをいう。
このような鋸歯形状を有する電極の一例としては、図6に示す電極4・5の構成が挙げられる。図6に示すように、電極4は、櫛根部分4bと櫛歯部分4aとからなる。櫛歯部分4aは、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、交互に折れ曲がりながら伸長している。また、櫛歯部分4aは、鋸歯成分4c及び鋸歯成分4dが構成する鋸歯単位4eが連続して伸長した構成になっている。この鋸歯単位4eは、鋸歯成分4cと鋸歯成分4dとが鋸歯角度αの角度をなすように折れ曲がった構成である。そして電極4の櫛歯部分4aにおいては、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、等間隔で交互に折れ曲がりながら伸長した構成になっている。
また、電極5における櫛歯部分5aも、電極4における櫛歯部分4aと同様に、鋸歯成分5c及び鋸歯成分5dが構成する鋸歯単位5eが連続して伸長した構成になっており、鋸歯単位5eにおける鋸歯成分5cと鋸歯成分5dとが、鋸歯角度αの角度をなすように折れ曲がった構成である。
また、図6に示すように、電極4と電極5とは、それぞれの櫛歯部分4aと櫛歯部分5aとが噛み合うように対向配置されている。すなわち、電極4と電極5とは、櫛歯部分4aにおける鋸歯成分4c及び鋸歯成分4dが、各々櫛歯部分5aにおける鋸歯成分5c及び鋸歯成分5dと平行になるように、対向配置されている。それゆえ、電極4・5に電圧を印加すると、電界印加方向が互いに異なる2つの電界が形成される。すなわち、鋸歯成分4cと鋸歯成分5cとの間の電界(図6の電界印加方向45c)、及び、鋸歯成分4dと鋸歯成分5dとの間の電界(図6の電界印加方向45d)が形成される。
また、上記の鋸歯単位4e、及び、鋸歯単位5eは、その形状から、「く」の字型形状を有しているとも言える。それゆえ、上記「鋸歯形状」は、鋸歯単位に相当する「く」の字成分が、櫛根部分の長手方向に対して遠ざかる方向に伸長した形状であるともいえる。また、「櫛歯部分が鋸歯形状」とは、櫛歯部分が「く」の字型形状を有するジグザグ線の形状であるともいえる。
また、上記の鋸歯単位4e、及び、鋸歯単位5eは、その形状から、「v」の字の形状を有しているとも言える。それゆえ、上記「鋸歯形状」は、鋸歯単位に相当する「v」の字成分が、櫛根部分の長手方向に対して遠ざかる方向に伸長した形状であるともいえる。また、「櫛歯部分が鋸歯形状」とは、櫛歯部分が「v」の字型形状を有するジグザグ線の形状であるともいえる。
また、図6に示すように、電界印加方向45cと電界印加方向45dとは互いに垂直である。このため、媒質Aの光学異方性の方向が互いに直交する(90度の角度をなす)媒質ドメインが存在し、表示素子において、各媒質ドメインにおける斜め視角の色つき現象を互いに補償しあうことが可能になる。
また、本実施の形態の表示素子において、媒質層3は、図1(b)に示すように電界印加方向に配向秩序度が上昇することにより光学的異方性が発現し、透過率が変化するシャッタ型の表示素子として機能し得る。したがって、互いに直交する偏光板吸収軸方向に対して、その異方性方向は、45度の角度をなす時に最大透過率を与える。なお、媒質Aの各媒質ドメインの光学的異方性が発現する方位が、偏光板吸収軸にそれぞれ±θ(度)の角度に存在するとしたときの透過率(P)は、P(%)=Sin2(2θ)より見積もられる。それゆえ、上記θが45度の時の透過率を100%とすれば、ほぼ90%以上であれば人間の目には最大輝度を有していると感じられることから、上記θは、35度<θ<55度であれば、人間の目には最大輝度を有していると感じられる。すなわち、本実施の形態に示すように、電界が例えば基板1に略平行に印加される表示素子では、各電界印加方向45c・45dの電界印加により発生する光学的異方性の方向と、上記偏光板7・8の吸収軸7a・8aとがなす角度がそれぞれ約45度(45度±10度未満の範囲内、好適には45度±5度の範囲内、最も好適には45度)であり、かつ、各電界印加方向45c・45dの電界印加により発生する光学的異方性の方向が互いに約90度(90度±20度未満の範囲内、好適には90度±10度の範囲内、最も好適には90度)の角度をなすことが望ましい。
また、本実施の形態において、電極4・5による電界印加方向45c・45dは、配向膜6の配向方向に対して、0度〜45度の角度をなすことが好ましい。
本実施の形態の表示素子において、電極4・5による電界印加方向45c・45dは、配向膜6の配向方向に対して、0度〜45度の角度をなすように配向膜6を基板2表面に配向処理を施すことで、媒質層3は、配向膜6の水平配向方向に配向秩序度が上昇する。このため、相転移直上の温度で、上記関係式(3)におけるカー定数Bkが増大する(すなわち、カー効果が増大する)。そして、カー定数Bkが増大することにより、表示素子に印加する駆動電圧を低減することが可能になり実用に供することができるようになる。また、電極4・5による電界印加方向45c・45dと配向膜6の配向方向とがなす角度が、45度よりも大きい場合、カー定数が低下し、上述のような駆動電圧の低下を実現することができないので好ましくない。
したがって、電極4・5による電界印加方向45c・45dと、配向膜6の配向方向とのなす角度が0度〜45度であることで、カー定数Bkの増大により駆動電圧を低減させつつ、視野角特性が向上することが可能な表示素子を実現することができる。
また、上述のカー定数Bkの増大(カー効果の増大)は、本実施の形態の表示素子において、電極4・5による電界印加方向と配向膜6の水平配向方向とが略同じ(電極4・5による電界印加方向と配向膜6の水平配向方向とがなす角度が0度)になる場合に、最大限の効果が得られる。
本実施の形態において、上記配向膜6におけるラビング方向6aは、図6に示すように、上記偏光板7・8の何れか一方の偏光板吸収軸と一致している。
また、本実施の形態では、図6に示すように、両基板1・2にそれぞれ設けられた偏光板7・8は、互いに偏光板吸収軸方向が直交するように配置されているとともに、各偏光板7・8における偏光板吸収軸7a・8aは、電極4・5により形成される、上述の2方向の電界印加方向45c・45dに対して45度の角度をなしている。
よって、本実施の形態では、図6に示すように、上記表示素子において、上記電極4・5による電界印加方向45c・45dは、上記偏光板7・8の偏光板吸収軸方向7a・8a並びに配向膜6のラビング方向6aと45度の角度をなしている。
このような表示素子の構造を用いて、スイッチング素子、信号線、走査線、対向電極線を設けることにより、マトリクス状の画素群を形成した実施形態について、図16および図17に基づいて説明すれば、以下の通りである。図16および図17は、それぞれ、本実施の形態にかかる表示素子における各画素の電極構成の一例を模式的に示す平面図である。
本実施の形態にかかる表示素子70は、図16および図17に示すように、マトリクス状に配置された複数の画素71の各列および各行にデータ信号線51(SLv)および走査信号線52(GLw)がそれぞれ設けられていると共に、各画素71内に、櫛形の電極4からなる櫛形状の画素電極と、櫛形の電極5からなる対向電極とが設けられた構成を有している。より具体的には、本実施の形態にかかる表示素子70は、マトリクス状に配置された複数のデータ信号線51および走査信号線52と、上記データ信号線51と走査信号線52との各交差点に対応して設けられた少なくとも一つのTFT53(スイッチング素子)と、該TFT53に接続された櫛形状の画素電極である櫛形の電極4と、上記櫛形の電極4の櫛歯部分4a・4a間に挿設され、上記櫛歯部分4aと咬合するように形成された櫛歯部分5aを有する櫛形状の対向電極である櫛形の電極5とを備え、各櫛歯部分4a・5aが、各画素71内に、両櫛形の電極4・5によって互いに90度の角度をなす電界が印加される少なくとも2つのドメインDM・DM’が形成されるように、基板1・2に略平行な面内で、それぞれ湾曲角(屈曲角)90度でジグザグ状(楔型形状)に折れ曲がっている構成を有している。
これにより、本実施の形態では、各櫛歯部分4a・5aがそれぞれ90度の角度で折れ曲がっていると共に、各櫛歯部分4a・5aが、互いに咬合するように対向して配置されていることで、櫛歯部分4a・5a間に、互いにほぼ直交する電界が印加される少なくとも2つのドメインDM・DM’(微小領域)が形成されるようになっている。
すなわち、本実施の形態にかかる表示素子70は、各櫛歯部分4a・5aが、それぞれ、互いに90度の角度をなす屈曲部(鋸歯成分)4a1、4a2、…4ar・5a1、5a2、…5ar(rは電界が印加されることで、各画素71内に、電界の印加により発生する光学的異方性の任意の整数)からなり、屈曲部(鋸歯成分)4a1・5a1と屈曲部(鋸歯成分)4a2・5a2とで互いにほぼ直交する方向が互いに90度の角度をなす少なくとも2つのドメインDM・DM’が設けられている構成を有している。
なお、本実施の形態にかかる表示素子70もまた、基板1・2の外側に偏光板7・8が設けられ、これら偏光板7・8は、互いの吸収軸7a・8a、つまり、偏光板吸収軸方向が直交するように形成されており、各偏光板7・8における吸収軸7a・8aと櫛形の電極4・5における櫛歯部分4a・5aの電極伸長方向、すなわち、各屈曲部4ar・5arの電極伸長方向とは45度の角度をなすように形成されている。このため、各偏光板7・8における吸収軸7a・8aは、各屈曲部4ar・5arの電界印加方向に対して、45度の角度をなすように形成されている。
本願発明者等の検討によれば、以上の構成によっても、透過率を損なうことなく、あらゆる方位について着色現象が抑制された視野角の広い表示素子70を得ることができることが判った。
なお、図16に示す電極構造においては、データ信号線51と画素71内の対向電極、つまり、上記データ信号線51と対向して設けられた櫛形の電極5との間に、大きな非表示領域34が存在することがわかる。
そこで、図17では、データ信号線51を、直線とせず、画素71内の櫛形の電極4・5の折れ曲がりと平行になるように形成したところ、上記非表示領域34は大幅に減少した。
すなわち、図16に示す構造では表示領域が30%程度であったものが、図17に示す構造を適用することにより、表示領域を40%にまで上昇させることができた。
なお、本実施の形態では、上記櫛形の電極4・5の櫛歯部分4a・5aがデータ信号線51に沿って設けられ、上記データ信号線51が、上記櫛歯部分4a・5aの形状に沿ってジグザグ状に折れ曲がっている構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記櫛歯部分4a・5aは、上記走査信号線52に沿って延設されていてもよく、また、上記データ信号線51および走査信号線52は、その少なくとも一方が、ジグザグ状に形成されていればよい。
また、本実施の形態では、各ドメインDM・DM’の電界印加時における光学的異方性の方向と、上記偏光板7・8の吸収軸とがなす角度は、それぞれ約45度(45度±10度の範囲内、より好適には45度±10度未満の範囲内、より一層好適には45度±5度の範囲内)であることが好ましく、各ドメインDM・DM’の電界印加時における光学的異方性の方向は、互いに約90度(90度±20度の範囲内、より好適には90度±20度未満の範囲内、より一層好適には90±10度の範囲内)の角度をなしていることが好ましい。
つまり、前述したように、偏光板吸収軸に対してθが35度≦θ≦55度の範囲内、特に、35度<θ<55度の範囲内では大きな輝度の差異を感じないために、色付き現象の補償に対しても互いのドメイン領域の輝度が10%程度の差であれば、色の差異をほぼ感じることはなく、この範囲でほぼ実用上十分な効果が得られる。よって、互いのドメイン領域の光学的異方性のなす角度(例えばドメインDM・DM’のなす角度)が、90度±20度の範囲内(つまり、70度以上、110度以下の範囲内)であることが好ましく、90度±20度未満の範囲内(つまり、70度を超えて110度未満の範囲内)であることがより好ましく、90度±10度の範囲内(つまり、80度以上、100度以下の範囲内)であることがより一層好ましく、最も望ましい角度が90度ということになる。
さらに、本実施の形態では、各画素71における各ドメインDM・DM’の割合は、光学的異方性の向きが異なる2つのドメインDM・DM’の割合(面積和の割合)が1:9〜1:1(好適には、約1:1)であることが好ましい。上記比率が1:9〜1:1の範囲内である場合、目視上、色付きの改善(補償)効果が大きい。
極角±60度の範囲内での色変化(同じ画像を異なる角度から見たときの色変化(色度座標距離√{△x2+△y2}で示される色度座標変化の範囲)を、測定したところ、ドメイン分割を行わない場合に比べて、ドメイン分割した場合(上記のように光学的異方性の向きが90度異なる2つのドメインDM・DM’の割合が1:1の場合)には、色変化(色度座標距離)はおよそ半分程度に収めることができた。また、色変化は、上記2つのドメインの割合が1:9から1:1になるに従い、小さくなり1:1が最も小さくなり、好ましい。
また、上記した各説明においては、主に、各画素71内に、光学的異方性の方向が同じドメインが2種類設けられている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光学的異方性の方向が同じドメインが2種類以上設けられていてもよい。すなわち、上記したように、各ドメインにおける電界印加時における上記光学的異方性の方向と、上記偏光板7・8の吸収軸7a・8aとがなす角度は、約45度(45度±10度の範囲内)であることが好ましく、各ドメインにおける電界印加時または電界無印加時における上記光学的異方性の方向は、互いに約90度(90度±20度の範囲内)の角度をなすことが好ましいが、例えば図19〜図21に示したように、上記した各角度は、それぞれ独立して、45度あるいは90度からずれていても構わない。つまり、上記記載からも判るように、各画素71における媒質Aの光学的異方性の方向は、2方向のみに限定されるものではなく、前記したように、各画素に、電界印加時における上記媒質の光学的異方性の方向が異なる少なくとも2つのドメインDM・DM’が存在していればよい。
以上のように、各画素71に、電界印加時における上記媒質Aの光学的異方性の方向が異なる少なくとも2つのドメインDM・DM’が存在し、各ドメインDM・DM’の電界印加時における光学的異方性の方向と、上記偏光板7・8の吸収軸7a・8aとがなす角度が、前記したように、それぞれ45度±10度の範囲内、好適には45度±10度未満の範囲内であり、かつ、各ドメインDM・DM’の電界印加時または電界無印加時における光学的異方性の方向が、前記したように、互いに90度±20度の範囲内、好適には90度±20度未満の範囲内の角度をなすことで、斜め視角の色付き現象を互いに補償しあうことができ、透過率を損なうことなく、視野角特性を大きく向上させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、上記基板1・2と、当該基板1・2に狭持された媒質層3とを備えた表示素子に、基板1に、当該基板1に略平行な電界を上記媒質層3に印加するとともに、上記媒質層3の媒質Aを光学変調させる電極4・5を備え、他方の基板2の表面に配向膜6を形成し、水平配向処理が施されることで、駆動電圧が低減された表示素子を実現できる。また、上記電極4・5による電界印加方向が、少なくとも2方向になるように、電極4・5が設けられていることで、視角特性が向上した表示素子を実現できる。また、本発明にかかる表示装置60は、以上のように、本発明にかかる上記表示素子70を備えていることで、視角特性が向上した表示素子を実現できる。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態について図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態では、主に、前記実施の形態1との相違点について説明するものとし、前記実施の形態1で用いた構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の表示素子では、上記実施の形態1と同様に、電極24・25を形成した基板1には配向膜が形成されていない。このため、本実施の形態の表示素子では、電極24・25が、配向膜を介して媒質層3の媒質Aに電圧を印加することがない。したがって、本実施の形態の表示素子では、媒質Aに印加される電圧が、配向膜に印加される電圧の分だけ減少することがなく、駆動電圧を有意に低減することができる。
また、上記実施の形態1では、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板に設けられた電界印加手段として、鋸歯形状を有する櫛形電極を備えた場合を例に挙げて説明したが、本実施の形態では、上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板に設けられた電界印加手段として、電界印加方向とラビング方向とが一致する櫛形電極を備えた場合を例に挙げて説明する。なお、図7は、本実施の形態の表示素子における電極構造と偏光板吸収軸との関係を説明する図である。
本実施の形態の表示素子の構成は、例えば図7に示すように、電極構造、及び、偏光板吸収軸と配向膜と電界印加方向との関係を除けば、基本的には上記実施の形態1に記載の表示素子と同様である。
図7に示すように、電極24は、櫛根部分24bと櫛歯部分24aとからなる。櫛歯部分24aは、櫛根部分24bの長手方向に対して垂直方向に伸長している。また、同図に示すように、本実施の形態の表示素子における電極24と電極25とは、それぞれの櫛歯部分24aと櫛歯部分25aとが噛み合うように対向配置されている。すなわち、電極24と電極25とは、櫛歯部分24aが、櫛歯部分5aと平行になるように、対向配置されている。それゆえ、電極24・25に電圧を印加すると、櫛歯部分24a・25aの長手方向に対して垂直方向の電界が生成する。すなわち、本実施の形態の表示素子において、生成される電界は、鋸歯部分24aと鋸歯部分25aとの間の電界(図7の電界印加方向245a)の1方向のみである。
また、本実施の形態の表示素子における配向膜26は、図7に示すように、そのラビング方向が偏光板27・28の吸収軸27a及び28aと45度の角度をなすように設けられている。そして、そのラビング処理(図7のラビング方向26a)として、配向処理方向が基板面内方向の水平ラビング処理(水平配向処理)が施されている。
また、図7に示すように、偏光板27・28は、互いの偏光板吸収軸方向が直交するように配置されているとともに、各偏光板27・28における偏光板吸収軸27a・28aは、電極24・25の電界印加方向245aに対して45度の角度をなしている。
本実施の形態の表示素子において、配向膜26を基板表面に配向処理を施すことで、媒質層は、配向膜26の水平配向方向に配向秩序度が上昇する。このため、相転移直上の温度で、上記関係式(3)におけるカー定数Bkが増大する(すなわち、カー効果が増大する)。そして、カー定数Bkが増大することにより、表示素子に印加する駆動電圧を低減することが可能になり実用に供することができるようになる。
カー定数Bkの増大(カー効果の増大)は、本実施の形態の表示素子において、電極24・25による電界印加方向245aと配向膜26のラビング方向26aとが0度〜45度の角度をなす場合にみられ、略同じ(電極24・25による電界印加方向245aと配向膜6のラビング方向26aとがなす角度が0度)になる場合に、最大限の効果が得られる。
また、本実施の形態の表示素子においても、上述のように、偏光板の吸収軸が、電極24・25による電界印加方向245aに対して、45度±10度未満、より好適には45度±5度未満、最も好適には45度の角度をなすことで、透過率を最大化することが可能になる。
本実施の形態では、図7に示すように、偏光板27・28は、互いの偏光板吸収軸方向が直交するとともに、各偏光板27・28における偏光板吸収軸と電極24・25(櫛歯部分24a・25a)の電極伸長方向とが45度の角度をなすように形成されている。
よって、上記表示素子において、上記電極24・25に電界印加方向は、配向膜26のラビング方向と一致している(0度の角度をなす)。
以上のように、本実施の形態によれば、上記基板と、当該基板に狭持された媒質層とを備えた表示素子に、上記基板の何れか一方の基板に、当該基板に略平行な電界を上記媒質層に印加するとともに、上記媒質層の媒質Aを光学変調させる電極24・25を備え、他方の基板の表面に配向膜26を形成し、水平配向処理が施されることで、駆動電圧が低減された表示素子を実現できる。また、上記電極24・25による電界印加方向が、上記配向膜26のラビング方向に対し、0度から45度の角度をなすように設けられていることで、カー定数が増大し、さらに駆動電圧を低減できる表示素子を実現できる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。