JP4110515B2 - 薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、化合物半導体による薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、一般的なカルコパイライト系化合物半導体による薄膜太陽電池の基本構造を示している。それは、SLG(ソーダライムガラス)基板1上に裏面電極(プラス電極)となるMo電極2が形成され、そのMo電極2上に光吸収層5が形成され、その光吸収層5上にZnS,CdSなどからなるバッファ層6を介して、マイナス電極となるZnO:Alなどからなる透明電極7が形成されている。
【0003】
その化合物半導体による薄膜太陽電池における光吸収層4としては、現在18%を超す高いエネルギー変換効率が得られるものとして、Cu,(In,Ga),SeをベースとしたIb−IIIb−VIb2族系のCu(In+Ga)Se2によるCIGS薄膜が用いられている。
【0004】
従来、CIGS薄膜による光吸収層を作製する方法として、金属プリカーサ(前駆体)薄膜を用いて、H2Seガス等のSeソースを用いた熱化学反応でSe化合物を生成するセレン化法がある。
【0005】
米国特許第4798660号明細書には、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面電極→純Cu単独層→純In単独層の順に積層する構造で形成した金属薄膜層をSe雰囲気、望ましくはH2Seガス中でセレン化することで均一な組成のCIS単相からなる光吸収層を形成することが開示されている。
【0006】
特開平10−135495号明細書には、金属プリカーサとして、Cu−Gaの合金ターゲットを用いてスパッタ成膜された金属薄膜と、Inターゲットを用いてスパッタ成膜された金属薄膜との積層構造によるものが示されている。
【0007】
それは、図2に示すように、SLG(ソーダライムガラス)基板1に成膜されているMo電極2上にCIGS薄膜による光吸収層5を形成するに際して、先にCu−Gaの合金ターゲットT2を用いた第1のスパッタ工程SPT−1によってCu−Ga合金層31を成膜し、次いで、InターゲットT1を用いた第2のスパッタ工程SPT−2によってIn層32を成膜して、Cu−Ga合金層31、In層32による積層プリカーサ3を形成するようにしている。そして、熱処理工程HEATにおいて、その積層プリカーサ3をSe雰囲気中で熱処理することにより、CIGS薄膜による光吸収層5を作製するようにしている。
【0008】
しかし、Cu−Ga合金層31とIn層32との積層構造によるプリカーサ3を形成するのでは、成膜時やそのストック時に、その積層の界面で固層拡散(固体間の拡散)による合金化反応が進行して、Cu−In−Gaの3元合金が形成されてしまう。また、後で行われるSe化工程においても合金化反応は進行する。この積層プリカーサ3の積層の界面における合金化反応の進行をサンプル間で一様に管理することは難しく(温度や時間等の合金化反応に関与するパラメータの管理が必要となる)、得られる光吸収層5の品質がばらついてしまう。そして、In層32が凝集し、面内での組成不均一が生じやすいものになってしまう。
【0009】
そのため、Ga濃度をMo電極2との界面から表面に向かって低くなるようにGa濃度勾配をもたせるようにすることが提案されている。
【0010】
しかし、このような従来の光吸収層の形成方法によるのでは、GaがMo電極2とCu−In−Ga層との界面に偏析するために、Mo電極2とCIGS薄膜による光吸収層5との密着不良の問題をきたして、電池特性の劣化の要因となっている。
【0011】
また、従来、基板となるソーダライムガラス中のNa元素がCuInSe2膜に拡散して粒が成長することが示され、そのNa元素が拡散したCuInSe2膜を用いた太陽電池のエネルギー変換効率が高くなることが報告されている(第12回ヨーロッパ光起電力太陽エネルギー会議 M.Bodegard等による「THE INFRUENCE OF SODIUM ON THE GRAIN STRUCTURE OF CuInSe2 FILMS FOR PHOTOVOLTAIC APPLICATIONS」)。
【0012】
さらに、Na成分を含むガラス上に堆積したCIGS膜の抵抗値が小さいことと、基板上にNa2O2膜を堆積した後にCIGS膜を形成した太陽電池では、エネルギー変換効率がNa2O2膜を堆積していない太陽電池の約2%向上し、さらに通常Cu/In比に大きく依存するエネルギー変換効率がCu/In比にかかわらず一定になることが報告されている{第1回光起電力エネルギー変換世界会議 M.Ruckh等による「INFRUENCE OF SUBSTRATES ON THE ELECTRICAL PROPERTIES OF Cu(In,Gs)Se2 THINFILMS」}。
【0013】
以上の報告からわかるように、CuInSe2膜の成長の促進とキャリア濃度の増加および太陽電池のエネルギー変換効率の向上にはNa元素の拡散あるいは添加が有効である。
【0014】
Naのドーピング方法として、Mo電極(裏面電極)上に蒸着法またはスパッタリング法によってNa元素を含有するアルカリ層を形成したのちに、積層プリカーサを形成してセレン化する方法が特開平8−222750号明細書に示されている。この製法の課題は、NaまたはNa化合物によるアルカリ層が吸湿性を有しているために、成膜したのち大気にふれると変質して、その結果剥離してしまうことである。
【0015】
そのため、光吸収層を構成する他の元素と同時にNaをドーピングする蒸着法によるCuInSe2膜の製法が米国特許第542204号に開示されている。また、Mo電極上にスパッタリング法によりCu−In−O:Na2O2を堆積する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、その作業工程が煩雑になっている。
【0016】
また、その特開平8−222750号明細書には、SLG基板から光吸収層へのアルカリ金属の拡散を阻止するために、SLG基板と光吸収層との間にバリア層を設けるか、またはアルカリ金属を含有しない基板を用いることが開示されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、化合物半導体による薄膜太陽電池における裏面電極上にCu−Ga合金層およびIn層からなる積層プリカーサ膜を形成して、Se雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製するに際して、エネルギー変換効率を向上させるために光吸収層にNaを拡散させるべく、裏面電極上に蒸着法またはスパッタリング法によってNaの層を形成するのでは、成膜されるNa層が変質して剥離しやすいものになってしまうことである。
【0018】
また、積層プリカーサのセレン化時にNaをドーピングしたり、裏面電極上にスパッタリング法によりCu−In−O:Na2O2を堆積したうえで、その上に積層プリカーサ膜を形成してセレン化したりするのでは、その作業工程が煩雑になってしまうという問題がある。
【0019】
また、SLG基板と光吸収層との間にSLG基板から光吸収層へのアルカリ金属の拡散を阻止するためのバリア層を設けるか、またはアルカリ金属を含有しない基板を用いて、裏面電極上に設けられたアルカリ層から光吸収層へアルカリ金属(Na元素)を拡散させるのでは効率が悪く、コスト高になってしまうという問題がある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルカリ成分を含む基板上に裏面電極を形成して、その裏面電極上にプリカーサ膜を形成して、Se雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製し、その光吸収層上にバッファ層を介して透明電極を形成するようにした薄膜太陽電池の製造方法にあって、その熱処理時に効率良く効果的に光吸収層にアルカリ元素を拡散させることができるようにするべく、裏面電極とプリカーサ膜との間に設けられたアルカリ層と基板とからそれぞれアルカリ元素を光吸収層に拡散させるようにしている。
【0021】
その際、特に本発明では、基板と裏面電極との間に拡散制御層を形成して、基板のアルカリ元素が光吸収層に拡散するのを制御するようにしている。
【0022】
そして、本発明では、化合物半導体による薄膜太陽電池における裏面電極上にプリカーサ膜を形成して、Se雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製するに際して、エネルギー変換効率を向上させるために光吸収層にIa族元素のアルカリ成分を拡散させる層を、変質や剥離の問題を生ずることなく、簡単な工程で得ることができるようにするべく、アルカリ金属を含む水溶液に裏面電極を浸漬したのち乾燥させて裏面電極上にアルカリ層を形成するようにしている。
【0023】
また、本発明は、アルカリ成分を含む基板上に、裏面電極、CIGS系の光吸収層、バッファ層および透明電極が順次積層された構造の薄膜太陽電池にあって、アルカル元素が添加された光吸収層を設けるとともに、基板と裏面電極との間に基板のアルカリ元素が光吸収層に拡散するのを制御する拡散制御層を設けるようにしている。
【0024】
【実施例】
本発明による薄膜太陽電池は、図3に示すように、SLG基板1上に、Mo電極2、CIGS系の光吸収層5′、バッファ層6および透明電極7が順次積層された構造のものにあって、特に光吸収層5′としてNa元素が添加されたものを用いるとともに、SLG基板1とMo電極2との間にSLG基板1に含まれるNa元素が光吸収層5′に拡散するのを制御する拡散制御層8を設けるようにしている。
【0025】
その拡散制御層は、SiO2,Al2O3,TiN,Si3N4,ZrO2またはTiO2からなっている。
【0026】
そして、本発明では、このような構造による薄膜太陽電池を以下のように製造するようにしている。
【0027】
その製造方法としては、図4に示すように、まず、SLG基板1上に、拡散制御層8をCVD法によって形成したうえで(ステップS1)、その拡散制御層8上にMo電極2をスパッタリングによって形成する(ステップS2)。
【0028】
次いで、そのMo電極2上にNa2Sからなるアルカリ層9を浸漬法によって成膜する(ステップS3)。
【0029】
そのアルカリ層9の成膜としては、例えば、Na2S・9H2O(硫化ナトリウム9水和物)を重量濃度0.1〜5%で純水に溶かした水溶液にMo電極2の成膜基板を浸して、スピンドライ乾燥させたのち、膜中残留水分の調整のために、大気中、150℃で60分間のベーク処理を行う。
【0030】
そして、図5に示すように、アルカリ層9上に、先にIn単体ターゲット1を用いた第1のスパッタ工程SPT−1によってIn層41を成膜したうえで、その上に、Cu−Gaの合金ターゲットT2を用いた第2のスパッタ工程SPT−2によってCu−Ga合金層42を成膜して、In層41およびCu−Ga合金層42からなる積層プリカーサ4を形成する。次いで、熱処理工程HEATにおいて、その積層プリカーサ4をSe雰囲気中で熱処理して、CIGS薄膜による光吸収層5′を作製する。
【0031】
この熱処理時に、SLG基板1から拡散制御層8によって最適に制御された量のNa元素がMo電極2を通して光吸収層5′に拡散するとともに、アルカリ層9から所定量のNa元素が光吸収層5′に拡散する。
【0032】
その際、アルカリ層9は、予め所定量のNa元素を供給できる膜質(Na元素の含有密度)および膜厚をもって成膜されており、所定量のNa元素が光吸収層5′に拡散して消滅する。
【0033】
また、SLG基板1から光吸収層5′に拡散するNa元素にあっても、それが過剰に供給されることなく適量となるように、拡散制御層8の膜質および膜厚が設定されている。
【0034】
具体的には、単位面積1cm2当り10E+10〜10E+16の範囲の原子数密度をもって、光吸収層5′にMa元素が拡散されるようにする。
【0035】
また、拡散制御層8としては、その膜厚が100Å〜1500Åの範囲になるように設定される。
【0036】
このように本発明によれば、積層プリカーサ4をSe雰囲気中で熱処理するに際して、SLG基板1およびアルカリ層9から最適に制御された量のNa元素がそれぞれ効果的に効率良く光吸収層5′に拡散して、エネルギー変換効率の良いCIGS薄膜による光吸収層5′を作製することができるようになる。
【0037】
そして、本発明によれば、そのアルカリ層9を簡単な工程で容易に得ることができる。また、ウェット処理でMo電極2上にアルカリ層9の皮膜を形成するようにしているので、初期から水分を含んでいるために、成膜後に吸湿による変質や剥離の問題が生ずることがない。また、水和物を使用することにより、膜中の水分を保持でき、ベーク処理によって膜中の水分を調整でき、濡れ性にも優れている。
【0038】
また、Na2S・9H2Oの水溶液を使用すれば、その濃度をMo電極2の表面酸化膜をエッチングできる11〜13pHの範囲程度に調整することにより、Mo電極2の表面酸化膜を有効に除去することができるようになるとともに、S成分を含有しているためにMo電極2と光吸収層5′との密着性が向上する。
【0039】
浸漬法によってアルカリ層9を成膜する利点としては、以下のとおりである。
【0040】
(1)スパッタリングや真空蒸着のような大がかりな装置を必要とせず、比較的簡単な装置で実現が可能である。また、真空装置を用いる場合にはスパッタターゲットや真空蒸着ソース等の品質管理が難しいが、Na2S等の材料は吸湿性が高いので、浸漬法ではその材料の湿度などの管理が容易である。
【0041】
(2)光を閉じ込めるためのテクスチャー構造とした基板や電極表面であっても、その表面によく適合したアルカリ層9を形成させることが可能である。また、Na2S・9H2Oの水溶液の浸漬を行う箇所としては、Mo電極2の表面以外に、積層プリカーサ4の表面、セレン化後における光吸収層5′の表面、光吸収層5′上に形成されるバッファ層6の表面が考えられるが、積層プリカーサ4の表面や光吸収層5′の表面のようなラフネスの極端に大きな表面であっても分子レベルで良好なカバレッジを確保できるようになる。
【0042】
Mo電極2の表面に対して浸漬を行う場合には、アルカリ金属の水溶液を用いることでMo電極2の表面酸化膜のエッチング効果およびパーティクル除去効果が得られる。それにより、Mo電極2のレーザスクライプ後の表面洗浄工程を省くことが可能になる。また、Mo電極2の表面洗浄をより効果的に行わせるために、アンモニアやNaOHなどを溶液に加えることでpHを容易に調整できる。
【0043】
水溶液の浸漬によるため、アルカリ層9への酸素や水素の残留があり、その酸素が光吸収層5′に取り込まれることで半導体特性が改善される。
【0044】
浸漬法によってMo電極2上にアルカリ層9を成膜したときのNa元素の析出量の知見結果は、以下のとおりである。
【0045】
1Y16−51 Na2S 0.2%および1Y16−52 Na2S 0.8%のそれぞれ希釈を行った2つの試料を用いて、ICP−MS分析法により、成膜部分に超純水6mlを滴下し、約5分間移液具により走査しながらNaを回収した。その結果、前者の試料では単位面積当り2.8E+15(atoms/cm2)の原子数が得られ、後者の試料では単位面積当り8,7E+15(atoms/cm2)の原子数が得られた。定量限界は、2E+10程度である。
【0046】
図6は、Na2S水溶液の濃度を変えて光吸収層5′を作製したときのエネルギー変換効率η〔%〕S=0.16の測定結果を示す特性図である。複数の試料を用いたときの測定範囲をw1,w2,w3,…によってあらわしている。
【0047】
この測定結果によれば、Na2S水溶液の濃度は、エネルギー変換効率ηの点からして、0.01〜1.0(5)の範囲が適正である。その場合、Na2S水溶液の濃度が薄いとエネルギー変換効率ηが悪くなり、濃いとMo電極2とSLG基板1との間でエッチングによる剥離が生じてしまう。
【0048】
図7は、Na2S水溶液(濃度0.27%)の液温を変えて光吸収層5′を作製したときのエネルギー変換効率η〔%〕S=0.16の測定結果を示す特性図である。
【0049】
この測定結果によれば、Na2S水溶液の液温は、エネルギー変換効率ηの点からして、常温10℃〜70℃の範囲が適正である(望ましくは15℃〜40℃の範囲)。その場合、Na2S水溶液の液温が低いとエネルギー変換効率ηが悪くなり、80℃以上だとMo電極2とSLG基板1との間でエッチングによる剥離が生じてしまう。
【0050】
図8は、アルカリ層9をベーク処理(処理時間60分)するときのベーク温度を変えて光吸収層5′を作製したときのエネルギー変換効率η〔%〕S=0.16の測定結果を示す特性図である。
【0051】
この測定結果によれば、ベーク温度は、エネルギー変換効率ηの点からして、100℃〜400℃の範囲が適正である(望ましくは100℃〜250℃の範囲)。その場合、ベーク温度が低いとエネルギー変換効率ηが悪くなり、高いとアルカリ層9の含水率が減少して剥離しやすくなってしまう。
【0052】
図9は、アルカリ層9を温度150℃でベーク処理するときのベーク時間を変えて光吸収層5′を作製したときのエネルギー変換効率η〔%〕S=0.16の測定結果を示す特性図である。
【0053】
この測定結果によれば、ベーク時間は、エネルギー変換効率ηおよび作業性の点からして、10〜60分の範囲が適正である。
【0054】
本発明は、浸漬法によってアルカリ層9を形成するのに用いるIa族元素を含む水溶液として、Na2S・9H2O水和物を用いる以外に、その他のアルカリ金属またはその硫化物、水酸化物、塩化物等の水溶液を用いることが可能である。
【0055】
具体的には、以下の水溶液が用いられる。
Na化合物:Na2SeO3・5H2O、Na2TeO3・5H2O、Na2SO3・7H2O、Na2B4O7・10H2O、AlNa(SO4)2・12H2O、NaCl
K化合物:K2TeO3・3H2O、K2A12O4・3H2O、AlK(SO4)2・12H2O、KOH、KF
Li
【0056】
また、本発明では、Mo電極2上にIn層41を設けたうえで、その上にCu−Ga合金層42を設けて積層プリカーサ4を形成するようにしているので、Mo電極2との界面における元素の固層拡散による合金化を抑制することができる。そして、その積層プリカーサ4をSe雰囲気中で熱処理してセレン化する際に、Mo電極2側にIn成分を充分に拡散させることができるとともに、拡散速度の遅いGaがMo電極2との界面に偏析して結晶性の悪いCu−Ga−Se層が形成されることがないようにして、均一な結晶による高品質なP型半導体のCu(In+Ga)Se2によるCIGSの光吸収層5′を作製することができる。
【0057】
したがって、Mo電極2と光吸収層5′との間に、結晶性が悪くて構造的に脆く、かつ導電性を有する異層(Cu−Ga−Se層)が介在するようなことがなくなり、Mo電極2との密着性が高くて構造的に強固な、しかも電池特性の良好な太陽電池を得ることができるようになる。
【0058】
また、本発明では、図10に示すように、Mo電極2上にNa2Sからなるアルカリ層9を成膜したうえで、ここでは、そのアルカル層9上に、Cu−Ga合金層42をIn層41、43によって挟んだ構造の積層プリカーサ4′をスパッタリングによって形成するようにしている。
【0059】
このように、本発明によれば、Mo電極2上にIn層41を設けたうえで、その上にCu−Ga合金層42を設けるようにしているので、Mo電極2との界面における元素の固層拡散による合金化を抑制することができる。そして、積層プリカーサ4をSe雰囲気中で熱処理してセレン化する際に、Mo電極2側にIn成分を充分に拡散させることができるとともに、拡散速度の遅いGaがMo電極2との界面に偏析して結晶性の悪いCu−Ga−Se層が形成されることがなくなる。また、表面がIn層43によって被覆されているので、セレン化によって作製される光吸収層5′の表面にCu2Seが生成されることがなくなる。
【0060】
したがって、Mo電極2と光吸収層5′との間に、結晶性が悪くて構造的に脆く、かつ導電性を有する異層(Cu−Ga−Se)が介在するようなことがなく、また光吸収層5′の表面に導電性を有する異層(Cu2Se)が生成されることのない、均一な結晶による高品質なP型半導体のCu(In+Ga)Se2によるCIGSの光吸収層5′を作製することができ、Mo電極2との密着性が高くて構造的に強固な、しかもリークのない電池特性の良好な太陽電池を得ることができるようになる。
【0061】
また、本発明は、図11に示すように、Mo電極2上に、Cu−Ga合金層をIn層によって挟んだ構造を多段に複数設けて、積層プリカーサ4″を形成するようにしている。
【0062】
ここでは、Mo電極2上に、In層41、Cu−Ga合金層42、In層43、Cu−Ga合金層44、In層45、Cu−Ga合金層46およびIn層47を順次積層することによって、Cu−Ga合金層をIn層によって挟んだ構造を3段に設けるようにしている。
【0063】
このように、Mo電極2側にIn層41が、表面にIn層47が配され、その間にCu−Ga合金層42、In層43、Cu−Ga合金層44、In層45およびCu−Ga合金層46が均等に配分されているので、より均一な結晶による高品質なP型半導体のCu(In+Ga)Se2によるCIGSの光吸収層5′を作製することができるようになる。
【0064】
図12は、光吸収層5′の他の作製方法を示している。
【0065】
ここでは、化合物半導体による薄膜太陽電池における光吸収層5′を形成するに際して、Ib族系金属元素とIIIb族系金属元素とを同時に供給して単層による合金のプリカーサ膜を形成して、その形成されたプリカーサ膜をSe雰囲気中で熱処理してセレン化するようにしている。
【0066】
具体的には、SLG基板1に成膜されたMo電極2上にCIGS薄膜による光吸収層5′を形成するに際して、InターゲットT1およびCu−Ga合金ターゲットT2を設けた対向ターゲット式のスパッタリングによって、アルカリ層9上に各ターゲット材料の各スパッタ粒子が混り合った状態でCu−Ga−In合金からなる単層のプリカーサ膜10を形成するスパッタ工程FT−SPTと、そのプリカーサ膜10をSe雰囲気中で熱処理して、CIGS薄膜による光吸収層5を形成する熱処理工程HEATとをとるようにしている。
【0067】
図13は、対向ターゲット式のスパッタリングによって、InターゲットT1およびCu−Ga合金ターゲットT2における各スパッタ粒子が混り合った状態でCu−Ga−In合金のプリカーサ膜10が形成されるときのスパッタ粒子の状態を示している。
【0068】
一対に設けられたInターゲットT1および2Cu−Ga合金ターゲットT2のスパッタリングを同時に行わせると、一方のターゲットからスパッタされた粒子が他方のターゲット表面に到達する。これにより各ターゲット表面では双方のターゲット材料による金属元素Cu,Ga,Inが混り合った状態になり、その状態でさらにスパッタリングが行われて、双方のターゲット材料が混り合ったスパッタ粒子が基材におけるアルカリ層9上に付着堆積してCu−Ga−In合金のプリカーサ膜10が形成される。
【0069】
その際、各ターゲットT1,T2からスパッタされたIn粒子およびCu−Ga粒子の一部は他方のターゲット表面に到達することなく、直接基材に向けて飛び出すが、スパッタ粒子の飛び出し角度の確率からして、混合されていないCu−Ga粒子およびIn粒子の付着はきわめて少なく、混合されたスパッタ粒子による基材への付着が支配的となる。
【0070】
この方法によれば、In層とCu−Ga層とが積層されたプリカーサとしてではなく、最初から各ターゲットT1,T2からスパッタされたIn粒子およびCu−Ga粒子が混り合った単層のプリカーサ膜10を形成させるようにしているので、積層プリカーサの場合に比へて、Cu,Ga,Inの金属元素が薄膜中に均一に配され、金属元素間での固層拡散による合金化促進を抑制できるようになる。また、後で行われる熱処理工程において、プリカーサ膜10のセレン化を均等に行わせることができるようになる。
【0071】
結果として、化合物半導体による薄膜太陽電池の性能劣下の要因となる異相(本来作成しようとしている結晶構造とは異なる結晶相)の抑制にも効果がある。また、金属プリカーサ3の成膜された層はアモルファス疑似構造であることも高品質なCIGS薄膜による光吸収層5′を得ることができる要因となる。
【0072】
また、成膜されるプリカーサ膜10が3元合金の堆積構造なので、電池としてのショートが生じにくいものとなる。
【0073】
また、各ターゲットT1,T2の同時スパッタによって、プリカーサ膜10の成膜を高速で行わせることができるようになる。
【0074】
そして、このようにCu,Ga,Inの金属元素が薄膜中に均一に配された単層のプリカーサ膜10をSe雰囲気中で熱処理することによってセレン化することで、高品質なCu(In+Ga)Se2のCIGS薄膜による光吸収層(p型半導体)5′を形成できるようになる。
【0075】
プリカーサ膜10をセレン化することによって形成された光吸収層5′の光電変換効率が15%以上であることが確認されている。
【0076】
図14は、H2Seガス(濃度5%のArガス希釈)を用いた熱処理によって、熱化学反応(気相Se化)を生じさせてプリカーサ膜10(積層プリカーサ4)からCIGS薄膜による光吸収層5′を形成する際の炉内温度の特性の一例を示している。
【0077】
ここでは、加熱を開始してから炉内温度が100℃に達したら炉安定化のために10分間予熱するようにしている。そして、安定したランプアップ可能な時間として30分かけて、炉内温度をSLG基板1の反りが発生しないように、かつ高熱処理で高品質結晶にすることができる500〜520℃にまで上げる。その際、炉内温度が230〜250℃になった時点t1からH2Seガスの熱分解によるSeの供給が開始される。そして、高熱処理によって高品質結晶とするために炉内温度を500〜520℃に保った状態で、40分間熱処理するようにしている。
【0078】
その際、加熱を開始してから炉内温度が100℃に達した時点から、低温でH2Seガスをチャージして、炉内一定圧力に保った状態で熱処理する。そして、熱処理が終了したt2時点で、不要なSeの析出を防ぐため、炉内を100Pa程度の低圧でArガスに置換するようにしている。
【0079】
なお、対向ターゲット式のスパッタリングによってプリカーサ膜10を成膜するに際して、一対のターゲット材料として、Cu−Ga合金とInの組み合せに限らず、その他Cu−Ga合金またはCu−Al合金とIn−Cu合金の組合せ、CuとInまたはAlの組合せ、CuとIn−Cu合金の組合せが可能である。基本的には、Ib族金属−IIIb族金属の合金、Ib族金属、IIIb族金属のうちの2種類を組み合せて用いるようにすればよい。
【0080】
【効果】
以上、本発明は、アルカリ成分を含む基板上に裏面電極を形成し、その裏面電極上にプリカーサ膜を形成して、そのプリカーサ膜をSe雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製し、その光吸収層上にバッファ層を介して透明電極を形成するようにした薄膜太陽電池を製造するに際して、裏面電極とプリカーサ膜との間に設けられたアルカリ層と基板とからそれぞれアルカリ元素を光吸収層に拡散させるようにしたもので、熱処理時に効率良く期判的に光吸収層にアルカリ元素を拡散させることができるようになる。
【0081】
その際、本発明によれば、基板と裏面電極との間に拡散制御層を形成するようにしているので、基板のアルカリ元素が過剰に供給されることなく、光吸収層にアルカリ元素を適正に拡散させることができるようになる。
【0082】
そして、本発明によれば、化合物半導体による薄膜太陽電池における裏面電極上にプリカーサ膜を形成して、そのプリカーサ膜をSe雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製するに際して、Ia族元素を含む化合物による水和物を溶解させた水溶液に裏面電極を浸漬したのち乾燥させて裏面電極上にアルカリ層を形成するようにしているので、エネルギー変換効率を向上させるために光吸収層にIa族元素のアルカリ成分を拡散させる層を、変質や剥離の問題を生ずることなく、簡単な工程で得ることができるようになる。
【0083】
また、本発明は、アルカリ成分を含む基板上に、裏面電極、CIGS系の光吸収層、バッファ層および透明電極が順次積層された構造の薄膜太陽電池にあって、アルカリ元素が添加された光吸収層を設けるとともに、基板と裏面電極との間に基板のアルカリ元素が光吸収層に拡散するのを制御する拡散制御層を設けるようにしたもので、アルカリ元素が適正に拡散された光吸収層をもって、エネルギー変換効率を有効に向上させることができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な化合物半導体による薄膜太陽電池の基本的な構造を示す正断面図である。
【図2】従来の裏面電極上に光吸収層を作製するプロセスを示す図である。
【図3】本発明による薄膜太陽電池の構造の一例を示す正断面図である。
【図4】本発明によってSLG基板上に拡散制御層、裏面電極およびアルカリ層を順次成膜するプロセスを示す図である。
【図5】本発明によってアルカリ層上に積層プリカーサを形成して光吸収層を作製するプロセスを示す図である。
【図6】Na2S水溶液の濃度を変えて光吸収層を作製したときのエネルギー変換効率の測定結果を示す特性図である。
【図7】Na2S水溶液の液温を変えて光吸収層を作製したときのエネルギー変換効率の測定結果を示す特性図である。
【図8】アルカリ層をベーク処理するときの温度を変えて光吸収層を作製したときのエネルギー変換効率の測定結果を示す特性図である。
【図9】アルカリ層をベーク処理するときの時間を変えて光吸収層を作製したときのエネルギー変換効率の測定結果を示す特性図である。
【図10】アルカリ層上にCu−Ga合金層をIn層で挟んだ構造の積層プリカーサを示す正断面図である。
【図11】アルカリ層上にCu−Ga合金層をIn層で挟んだ構造を多段に設けたときの積層プリカーサの構造を示す正断面図である。
【図12】本発明によってアルカリ層上に単層によるプリカーサ膜を形成して光吸収層を作製するプロセスを示す図である。
【図13】対向ターゲット式のスパッタリングによって単層によるプリカーサ膜が形成されるときのスパッタ粒子の状態を示す図である。
【図14】本発明によりプリカーサ膜をSe雰囲気中で熱処理してCIGS薄膜を形成する際の加熱特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 SLG基板
2 Mo電極
4 積層プリカーサ
5′ 光吸収層
6 バッファ層
7 透明電極
8 拡散制御層
9 アルカリ層
Claims (5)
- アルカリ成分を含む基板上に裏面電極を形成し、その裏面電極上にプリカーサ膜を形成して、Se雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製し、その光吸収層上にバッファ層を介して透明電極を形成するようにした薄膜太陽電池の製造方法にあって、Ia族元素を含む化合物による水和物を溶解させた水溶液に裏面電極を浸漬したのち乾燥させて裏面電極上にアルカリ層を形成し、そのアルカリ層上にプリカーサ膜を形成して、そのプリカーサ膜をSe雰囲気中で熱処理することによってCIGS系の光吸収層を作製するに際して基板およびアルカリ層からそれぞれアルカリ元素を光吸収層に拡散させるようにしたことを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
- Ia族元素がNaであり、アルカリ層がNa2SまたはNa2Seであることを特徴とする請求項1の記載による薄膜太陽電池の製造方法。
- 基板と裏面電極との間に、SiO2,Al2O3,TiN,Si3N4,ZrO2またはTiO2によって形成された拡散制御層を形成して、基板のアルカリ元素が光吸収層に拡散するのを制御するようにしたことを特徴とする請求項1の記載による薄膜太陽電池の製造方法。
- 拡散制御層の膜厚が100Å〜1500Åの範囲になるようにしたことを特徴とする請求項3の記載による薄膜太陽電池の製造方法。
- 光吸収層に拡散させるIa族元素の濃度が単位面積1cm 2 当り10E+10〜10E+16の原子数の範囲になるようにしたことを特徴とする請求項1の記載による薄膜太陽電池の製造方法。
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