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JP4036561B2 - 高硬度酸性法面の樹林化方法 - Google Patents

高硬度酸性法面の樹林化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【従来の技術】
酸性硫酸塩土壌は、地中に還元状態で存在していた硫化鉄鉱物が地表に出現し、これが空気にさらされ、急激に酸性化する土壌である。その代表的なものが、硫化物であるパイライト(黄鉄鉱、FeS2 )であり、その起源は火山活動によるものと堆積作用によるものに大別される。これらが酸化されると多くの場合、地下から酸性(主に硫酸による酸性)の滲出水が発生し、土壌のpHが4.5以下になり、植物が極めて生育困難な環境となる。このことは近年の大規模開発による切土、盛土で問題となっており、植物の生育環境の改善のため、多くの場合生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等の石灰質資材等が使用されている。
【0002】
このような土壌が出現した場合、平坦地であればアルカリ資材を散布し、耕転する方法が採られているが、傾斜地である切り土や盛り土法面の場合には、土壌改良材の混合は極めて困難である。
【0003】
そこで、酸性土壌が切り土や盛り土法面である場合の対処工法として、特開平8−253935号公報、特開平8−253937号公報、特開平10−56877号公報等には、ソイルセメントやモルタル等を吹き付け、これに植生基盤材を厚層に吹き付ける工法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、斯かる従来の吹き付け工法では、遮断面の設置によりある程度の中和効果は期待できるが、▲1▼本来期待される法面から植生基盤層への毛管作用による水分移動が絶たれ、しかも▲2▼植物根の伸長可能な領域が狭い、等の理由から以下の問題が生じる。
【0005】
即ち、上記の理由により斯かる従来工法では、植物の水分に対する緩衝領域が狭く夏場の渇水時には過乾燥による生育阻害が生じる恐れがある。
【0006】
また、高硬度の酸性法面において、樹木等根域の広い植物を植栽する場合には、植生基盤内では生育は困難であり、例え遮断層を根が貫通しても酸性法面では充分な伸長ができないことが考えられ、また、根が法面の地山に侵入できない場合、植生層を法面に固定できず、脱離、崩落を生じる恐れがある。
【0007】
従って、本発明の目的は、高硬度且つ酸性の法面に対して、▲1▼植生樹木が健全な根を伸長できる植生基盤を確保し、▲2▼更に、酸性水の浸入による影響を防ぐとともに、樹木により恒久的な緑化を可能にする高硬度酸性法面の樹林化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1記載の発明)は、山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上であり且つ土壌が酸性を示す高硬度酸性の法面に、客土保持用の壁体を立設し、該壁体の山側における該法面上にアルカリ資材を敷設して酸遮断層を形成し、該壁体と該酸遮断層との間に客土を充填して該客土に樹木の苗木を植え付ける、高硬度酸性法面の樹林化方法であって、上記壁体の立設においては、上記法面に防錆処理した棒状の鉄筋を立設し、複数本の粗朶、間伐材、丸太、竹材等の自然素材を、該鉄筋を利用して鉛直方向に積み上げて上記壁体を立設し、上記酸遮断層の形成に用いる上記アルカリ資材は、石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻類及びコンクリート廃材よりなる群から選択される少なくとも一種であり、該アルカリ資材の粒径が1〜20mmである、高硬度酸性法面の樹林化方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
ここで、山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上とは、40mmの縮みに対して8.0kgfの圧縮力を有するコイルばねを装着した山中式硬度計で測定した土壌硬度の指標値が、24mm以上であることを意味する。但し、本発明においては、測定地点による誤差を考慮し、法面上の20〜30の地点にて土壌硬度を測定し、測定地点の内の半数以上の地点において指標値が24mm以上である場合には、本発明の緑化対象としての法面とする。
【0010】
また、土壌が酸性を示すとは、強制酸化させた土壌のpHが4.0以下であり、電気伝導度(EC)が0.25dSm-1以上であることを意味する。ここで、強制酸化させた土壌のpHとは、採取した土壌を2mm以下の篩で調整した試料3gに対し、過酸化水素水を30ml加え、24時間室温で放置した後、pHメータにより測定したpHをいう。また、電気伝導度(EC)は、強制酸化させた土壌のpHの測定におけるのと同様にして得た試料3gに対し、蒸留水30mlを加え、得られた試料液を一時間振盪した後に、ECメータを用いて測定した該試料液の電気伝導度をいう。本発明は、特に土壌中の全硫黄含有量が1mg/g以上である高硬度酸性硫酸塩土壌の法面の緑化に適している。尚、本発明は、上記した意味において土壌が酸性を示す強酸性の法面の緑化に特に適するが、酸性の程度がより低い法面に適用することもできる。
【0011】
また、本発明は、以下の構成を有する高硬度酸性法面の樹林化方法を提供することにより、上記の目的を達成したものである。即ち、請求項2記載の発明は、上記アルカリ資材を上記法面上に厚さ10〜50mmに敷設する請求項記載の高硬度酸性法面の樹林化方法を提供するものである。請求項記載の発明は、上記壁体の山側の壁面及び上記酸遮断層上に、多孔性シートを設ける請求項1又は2に記載の高硬度酸性法面の樹林化方法を提供するものである。請求項記載の発明は、上記客土として、粒径0.65〜5.0mmのアルカリ資材を混合した土壌を用いる請求項1〜の何れかに記載の高硬度酸性法面の樹林化方法を提供するものである。
また、本発明(請求項5記載の発明)は、山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上であり且つ土壌が酸性を示す高硬度酸性の法面に、客土保持用の壁体を立設し、該壁体の山側における該法面上にアルカリ資材を敷設して酸遮断層を形成し、該壁体と該酸遮断層との間に客土を充填して該客土に樹木の苗木を植え付けてなる高硬度酸性法面の樹林化用構造であって、上記壁体は、上記法面に防錆処理した棒状の鉄筋を立設し、複数本の粗朶、間伐材、丸太、竹材等の自然素材を該鉄筋を利用して鉛直方向に積み上げて立設したものであり、上記アルカリ資材は、石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻類及びコンクリート廃材よりなる群から選択される少なくとも一種であり、該アルカリ資材の粒径が1〜20mmである、高硬度酸性法面の樹林化用構造を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高硬度酸性法面の樹林化方法の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここで、図1は、本実施形態の樹林化方法において、切土法面上に客土した土壌中に苗木を植え付けた状態を模式的に示す断面図である。
【0013】
本実施形態の高硬度酸性法面の樹林化方法は、上述したような高硬度且つ酸性の切土法面1を、樹木により緑化する方法であって、切土法面1に客土保持用の壁体2を立設し、該壁体2の山側における該切土法面1上にアルカリ資材31を敷設して酸遮断層3を形成し、該壁体2と該酸遮断層3との間に客土5を充填して該客土5に樹木の苗木6を植え付ける。尚、本発明の高硬度酸性法面の樹林化方法は、盛土法面の緑化にも適用できるが、傾斜度が30度以下の切土法面の緑化において特に優れた効果を発揮する。
【0014】
本実施形態の高硬度酸性法面の樹林化方法においては、先ず、図1に示すように、切土法面1に対して客土保持用の壁体2を立設する。
上記壁体2は、上記切土法面1に防錆処理を施した棒状の鉄筋21を立設し、自然素材としての粗朶22の複数を鉄筋21を利用して鉛直方向に積み上げて形成する。
上記の防錆処理としては、Ni,Zn,Al等を用いた金属被覆、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を用いた有機被覆等が考えられるが、本緑化方法における防錆処理は、耐酸性及び耐食性の観点から有機樹脂、特にエポキシ樹脂による樹脂被覆が好ましい。
【0015】
防錆処理した上記鉄筋21は、図2に示すように、所定の間隔、好ましくは1〜1.5m間隔で複数立設し、粗朶22は、これらの防錆処理した鉄筋21に交互に編むようにして固定する。
各粗朶22は、複数の防錆処理した鉄筋21間に跨るように、且つそれぞれが略水平となるように配設する。より具体的には、各粗朶22それぞれは、防錆処理した鉄筋21の山側と谷側とを鉄筋21の一本又は複数本毎に蛇行するように配する。このように、粗朶22を鉄筋21間に編むように組むことによって壁体2を形成する。
【0016】
防錆処理した鉄筋21を用いるのは、鉄筋の棒は、酸性硫酸塩土壌の酸性化に伴い硫酸水と接触し、錆びて腐蝕する危険性があるからである。
鉄筋21を打ち込む際、切土法面1に差し込み埋没させる土中部分の長さは、壁体2の高さと同じかそれ以上であることが好ましい。また、鉄筋21の太さは、打ち込む長さや、法面の傾斜度、硬さ、客土の重さ等によって適宜に決定することができるが、直径が2〜3cmであることが好ましい。
【0017】
粗朶2に使用する樹種として好ましいのは、クヌギ、コナラ、リョウブ、ヤナギ、サクラ等であり、これらは、一種を単独で用いても複数種類を組み合わせて用いても良い。また、粗朶に使用する枝条は、その直径が1〜3cm、その長さが2〜4mであることが好ましい。
【0018】
壁体2を、このように防錆処理した鉄筋21及び粗朶22により形成すれば、該壁体2により法面に保持される客土5に充分な排水性が確保されるため、該客土5に好適な水分状態を維持できる。また、自然素材である粗朶22を利用しているため、土壌に有害物質が溶け込む心配がなく、壁体2、延いては法面を、景観的にも自然環境に調和したものとすることができる。また、粗朶22等の自然素材を用いた壁体2は、設置後には樹木の生長し根が法面に侵入し固定化するのに伴い、徐々に腐蝕し土壌化し、自然に還るという利点がある。また、粗朶22等には、自然のリサイクル素材を用いることができるので、間伐材等の有効利用を図ることもできる。尚、壁体を形成する自然素材としては、粗朶の他に、間伐材や丸太、竹材等の天然の長尺材を用いることができる。
【0019】
次に、上述のようにして、切土法面1に立設した壁体2の山側における該切土法面1上に、アルカリ資材31を敷設し、該切土法面1上に酸遮断層3を形成する。
本実施形態においては、上記アルカリ資材31として、アルカリ資材の粒径が1〜20mm、好ましくは1〜13mmであるアルカリ資材31を用いる。粒径が1〜20mmのアルカリ資材を用いると、酸性矯正効果を、緩慢、持続的なものとすることができると共に、毛管作用による水分移動が断ち切られ、法面からの酸性水の侵入を防ぐことができる。同様の観点から、アルカリ資材31は、法面1上に厚さ10〜50mm、特に30〜50mmに敷設することが好ましい。
【0020】
アルカリ資材31としては、石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻類及びコンクリート廃材よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましく用いられる。
アルカリ資材31として石灰岩砕石を用いる場合、通常畑地等で施用される炭酸苦土石灰(肥料公定規格により1.70mmの網篩いを全通し、0.6mm以下の網篩いを85%以上通過するもの)に比べ粒径が大きいもの、好ましくは粒径が1〜20mmのものを用いる。粒径1〜20mmの石灰岩砕石は、極めて肥効が緩やかであり、安定的に且つ持続的に酸性土壌を中和し、酸性法面からの酸性水の移行を断ち切る効果に優れている。尚、鉱滓スラグ、貝殻類又はコンクリート廃材についても同様の観点から粒径1〜20mmのものが好ましい。
【0021】
また、アルカリ資材31として、鉱滓スラグを用いる場合、大量に発生する鉱滓スラグの有効活用を図ることができ、また、植栽した苗木を、酸性土壌から保護しつつ良好に生育させることができる。
【0022】
わが国の粗鉱生産量は年間約1億ともいわれ、その副産物として大量の鉱滓スラグが発生する。鉱滓スラグは、ケイ酸質肥料(ケイカル)や石灰質肥料(副産石灰)の原料として農業利用されているものの、その量は全体の産出量のごく一部にとどまっており、発生する鉱滓スラグの大部分は、廃棄処分されているのが現状である。従って、鉱滓スラグ、特に普通肥料の規格に適合しない転炉さいスラグ、電炉さいスラグを有効活用できる利点は大きい。
また、鉱滓スラグは、ケイ酸分がやや少なく、アルカリ分が多いので、土壌の酸性中和に持続的な効果が期待できる。また、ケイ酸石灰は土壌中において有機物分解で生じる二酸化炭素と反応して、緩やかな速度でケイ酸と重炭酸カルシウムに分離する。このため、炭酸カルシウムなの速効性の石灰質資材に比べると酸性矯正効果は緩慢、持続的である。また、鉱滓スラグは、酸との反応が緩慢であるため、過剰使用しても障害となりにくい特徴があり、粒径が粗くなるに従い、その傾向は強くなる。
【0023】
アルカリ資材31として、貝殻石灰を用いる場合、最終処分場の不足から有効利用が望まれている貝殻石灰の有効利用を図ることができ、また、酸性矯正効果の緩効性及び持続性の観点で優れているため、植え付けた植木を、酸性土壌から保護しつつ良好に生育させることができる。
【0024】
肥料として流通・利用されている貝殻類は、年間20万トン(75%が広島県)の産出量を持つカキ殻と主に千葉県で産出される貝化石であり、可溶性石灰を30〜50%を含むものである。貝殻類は、主成分である炭酸カルシウムの他に有機物を多く含み、また、他のアルカリ資材に比べ酸性土壌で不足しがちなB、Mo等の微量要素を含む点で好ましい。
【0025】
上記のコンクリート廃材は、主にコンクリート構造物から排出されるセメント系廃棄物であり、最終処分場の不足から有効利用が望まれているものである。コンクリート廃材は、酸性矯正効果の緩効性及び持続性の観点で優れており、コンクリート廃材の中でも軽量気泡コンクリートは、植え付けた植木を、酸性土壌から保護しつつ良好に生育させる効果に優れていることから好ましい。
【0026】
軽量気泡コンクリートは通常、可溶性ケイ酸20%以上及びアルカリ分25%以上含む。本資材の施用は、酸性土壌にアルカリ分を施用し中和効果を示すとともに、さらに軽量気泡であるため、透水性を高め植木の生育にとって好適な土壌環境を作り出し、また、ケイ酸分を多く含むため微生物の活性を促す働きがあるので好ましい。
【0027】
次いで、上記壁体2の山側の壁面及び上記酸遮断層3上を、多孔性シート4にて被覆する。多孔性シート4の敷設により、法面表面に散布されたアルカリ資材の粒子間の空隙に客土が充填されることが防止され、これにより法面からの硫酸水が毛管力により浸透されないことや、生育初期に植物根が硫酸水および酸性土壌表面に接触することが防止される。
【0028】
多孔性シート4は、壁体2の山側の壁面及び該壁体2の山側に形成した上記酸遮断層3を被覆するのに充分な寸法のものを用いる。多孔性シート4の孔の大きさ等は、充填する土壌の粒径等により適宜に決定することができるが、多孔性シート4上に充填される客土を通過させずに、該客土内で伸長する根が貫入できるものが好ましい。具体的には、不織布、有孔プラスティックマルチ等、または有機質系ではヤシを編んだヤシマット等が好ましい。
【0029】
多孔性シート4により、壁体2の山側の壁面及び該酸遮断層3を被覆した後、壁体2の山側の壁面と該酸遮断層3との間に客土5を充填する。
本実施形態においては、客土5として黒土等の土壌に、粒径が0.65〜5mmであるアルカリ資材、有機質系資材、保水性無機質資材よりなる群から選択される少なくとも一種を使用する。上記土壌としては、腐植が多く、pHの上昇に対して緩衝力があり、塩基置換容量が30me/100g(乾土)以上であり、また、根域が制限されるため有効水分保持量の高いものが望ましい。このため、土壌としては黒ボク土(腐植土)が最も好ましい。また、腐植含量の少ない赤土、鹿沼土等を使用する場合は、有機質資材を混合し調整する必要がある。上記有機質資材としては、パーク堆肥、ビートモス、浄水ケーキ等を用いることができ、上記保水性無機質資材としてはゼオライト、パーライト、バーミキュライト等が使用できる。
【0030】
尚、石灰は作物の生育に必須元素の一つであって、その他に酸性物質の中和、活性アルミナの不活性化、塩基飽和度の増大、土壌の団粒形成等の役割を持つ。しかし、肥料公定規格である石灰質肥料では粒径が細かすぎ、肥効が速効的であり過剰中和となったり、本工法の用途としては毛管作用を断ち切る効果がない可能性が考えられる。このため、本工法では肥料公定規格でない粒径が0.65mm以上の石灰を使用することが好ましい。
土壌に混合させるアルカリ資材としては、粒径が0.65〜5mmである石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻石灰、軽量気泡コンクリート等を用いることができる。これらのアルカリ資材が好ましい理由は以下の通りである。▲1▼炭酸カルシウムなどの速効性の石灰質資材に比べると酸性矯正効果は緩効的、持続的であり、▲2▼特に有機質系資材と併用することにより二酸化炭素の発生が増え反応は促進されること、▲3▼反応が緩慢であるため、過剰に使用しても障害を生じ難いこと、▲4▼安価であること、▲5▼廃棄処分の問題から有効利用が特に望まれていることなどからである。尚、アルカリ資材31の使用量は、炭酸カルシウムで通常施用される所要量の2倍〜3倍量とすることが好ましい。
【0031】
また、客土5にはリン酸肥料等を含有させる。肥料を含有させるのは、低pH条件では多量に溶出したアルミニウムがリン酸と結合し、植物がリン酸欠乏を起こすためである。斯かる観点から、肥料として過燐酸石灰や重焼隣等のように土壌を酸性化するものではなく、中性〜アルカリ性でありク溶性であるバットグアノ、熔隣等が好ましく、中でもアルカリ分を多く含む熔燐を多く含有させた土壌を客土することが好ましい。
【0032】
そして、壁体2の山側の壁面及び該酸遮断層3に客土5を充填するには、吹き付け機又は圧送機にて客土5を吹き付けるか敷き込む方法、あるいは土壌を充填した袋をクレーンで吊り客土する方法等が用いられる。
次いで、客土5した土壌の上面に植え穴を設け、該植え穴に樹木の苗木6を植え付ける。植え付ける樹木の苗木6の本数は、法面1の傾斜度や客土の量等に応じて適宜に決定すれば良い。
植栽する苗木6としては、法面の樹林化に通常用いられている各種の樹木の苗木を特に制限なく用いることができるが、通常、その土地の周辺の植生に適合した植物を選択して用いる。
【0033】
本実施形態の高硬度酸性法面の樹林化方法によれば、植物の生育が困難な高硬度酸性法面に、このようにして植え付けた苗木を良好に生育させることができ、このような法面を樹木により効率的に緑化することができる。
即ち、毛管現象を生じさせない酸遮断層3を設けてあるので、苗木に対する酸害を防止できる一方、壁体と酸遮断層との間に充分量の土壌が保持されるので、植え付けた苗木が良好に生育するための根の伸長空間や水分を充分に確保することができる。
また、酸遮断層3を粒径の大きいアルカリ資材により形成してあるため、酸性法面を徐々に改質することができ、植え付けた苗木の根が該法面中に伸長することも期待できる。これにより、法面上の客土延いては法面をより一層安定化させることができる。
また、壁体2を、鉄筋21及び粗朶22等により形成してあり、該粗朶22内にも根が伸入し得るため、樹木の生育により該壁体2の安定性も向上する。
【0034】
尚、切土法面1には、図3に示すように、切土法面1の山側と谷側とを結ぶ方向に所定の間隔を開けて複数の客土保持用の壁体2,2・を立設させ、各壁体2の山側の壁面と該各壁面2の山側に形成した酸遮断層3との間に、それぞれ上記実施形態と同様にして客土5を施して苗木6を植栽することが好ましい。このようにすれば、各壁体2の谷側に客土された土壌により該壁体2が安定化される等により、法面上の土壌や樹木等を、より安定化できる。この場合、充分量の土壌の確保、充填した土壌の流出防止、壁体の崩壊防止等の観点から、一対の壁体2,2間に充填される土壌5を、図3に示すように、その表面が重力方向に直交する水平面に対して傾斜するように充填し、谷側の壁体2に接する客土の深さ(法面1からの高さ)を30cm以上とし、山側の壁体2に接する部分における深さ(法面1からの高さ)を10cm以上確保することが好ましい。
【0035】
以上、本発明の高硬度酸性法面の樹林化方法の実施形態について説明したが、本発明は、斯かる実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、酸遮断層3を形成した後、壁体2を立設しても良い。
【0036】
【実施例】
次に、試験例、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何等制限されるものではない。
【0037】
〔試験例1、防錆処理の検討〕
酸性法面において客土を保持する鉄筋について、耐酸性及び耐食性を付与できる有効な被覆処理について検討した。
【0038】
〔試験方法〕
表1に示す被覆処理を施した鉄筋を、それぞれ水溶液濃度10%の希硫酸に浸し、反応の程度を目視観察して耐酸性を評価した。また、実際に酸性土壌に埋設し、半年後の腐食の程度を目視観察して耐食性を評価した。耐酸性及び耐食性の評価は、以下の基準にて行った。
耐酸性については、硫酸との反応が全く認められない場合を○、殆ど認められない場合を△、認められた場合を×とした。耐食性については、腐食が殆ど認められない場合を○、腐食が認められるが、その程度が小さい場合を△、腐食の程度が大きい場合を×とした。
【0039】
【表1】
Figure 0004036561
【0040】
表1に示す結果より、Zn,Al等の被覆による金属被覆は耐酸性及び耐食性ともに弱く、酸性土壌で使用する被覆処理として好ましくない。一方、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等による有機被覆はすべての処理区で耐食性が認められたが、エポキシ樹脂が最も強いと思われる。また、耐酸性についてもどの処理もある程度認められたが、アクリル樹脂は若干の酸に対する反応性が認められた。以上から、鉄筋に施す防錆処理は、樹脂被覆、特にエポキシ樹脂被覆が好ましいことが分かる。
【0041】
〔試験例2、酸遮断層を形成するアルカリ資材の粒径の検討〕
酸性法面表面に敷設するアルカリ資材の粒径を検討するため、異なる粒径のアルカリ資材を用い、毛管作用がなくなる最小の粒径について検討した。
【0042】
〔試験方法〕
飽水させた布性のマットをトレイの底面に広げた後、0.65mm以下、1mm以下、1〜2mm、2〜4mm、0.5〜5mmと5種類の異なる粒径の石灰岩砕石(アルカリ資材)をマット上に厚さ1cmほどに敷き詰め、24時間放置した。24時間後、石灰岩砕石の表面の湿り具合を目視観察し、その結果を表2に示した。尚、アルカリ資材を、石灰岩砕石に代えて鉱滓スラグ、貝殻類、コンクリート廃材として同様に試験したところ何れについても石灰岩砕石におけるのと同様の結果を得た。
【0043】
【表2】
Figure 0004036561
【0044】
表2に示されるように、粒径が1mm以下では毛管作用が生じており、1mm以上では毛管作用が生じていない。このことから、酸性土壌表面に敷設するアルカリ資材の粒径は1mm以上であることが好ましいことがわかる。
【0045】
〔試験例3、客土に混合するアルカリ資材の粒径の検討〕
客土内に混合するアルカリ資材の好適な粒径について検討した。pH(H2 O)が3.24である硫酸塩酸性土壌100g(乾土当たり)に、表3に示す量のアルカリ資材(石灰石)を加え、更に蒸留水を500mlずつ加え、1時間浸透した後静置し、24時間後ガラス電極法によりpHを測定した。
【0046】
【表3】
Figure 0004036561
【0047】
表3に結果を示した。アルカリ資材の粒径が0.6mm以下の場合、施用量0.4g/100gでpHの上昇がみられたものの、施用量0.6g/100g以上ではpHが8.0以上となり、過剰中和となった。一方、粒径が5〜10mmではpH上昇が鈍いものの、0.65〜5mmでは添加量が1.2g/100gでもpHが7.2と過剰中和とならず安定した値を示した。以上から、中和効果の長期の安定性が求められる本緑化方法では、過剰に施用しても過剰中和とならないと考えられる、粒径0.65〜5mmのアルカリ資材を用いるのが好ましい。
【0048】
〔実施例1〕
強酸性土壌法面の改良効果を評価するため、酸性硫酸塩土壌が露出している切土法面について施工試験を行った。現場は30度の切土法面であり、山中式土壌硬度計により土壌硬度を測定したところ、測定地点30ヵ所のうち20ヵ所以上において指標値が28mm以上であった。また、該法面の土壌はpH(H2 O)が2.0〜3.0、強制酸化させた土壌のpH(H2 2 )が1.2〜1.8、ECが0.8dSm-1以上、易分解性S含有量が1mg/g以上を示す強度の酸性硫酸塩土壌であった。
斯かる切土法面に対して重力方向に粗朶を支持させる棒状の樹脂被覆鉄筋を打ち込み、粗朶を柵状に組んで客土保持用の壁体を立設した後、該壁体の山側における該法面の表面に粒径5〜10の石灰岩砕石を厚さが30mmに敷設して酸遮断層を形成した。
この酸遮断層を多孔性のシートにて被覆した後、客土を投入した。客土には黒ボク土を用い、粒径1〜3mmの貝殻を2kg/m3 混合した。そして、該客土に対して、マツ、クヌギ及びヤシャブシの三種類の樹木の苗木を植え付けた。
【0049】
〔比較例2〕
<厚層吹き付け工法> 実施例1におけるのと同様の切土法面に対して、壁体及び酸遮断層を形成することなく、バーク堆肥を混合した客土資材を厚さ5cmに吹き付けた。そして、実施例1と同様に三種類の樹木の苗木を植え付けた。
【0050】
〔比較例3〕
<中和吹き付け工法> 実施例1におけるのと同様の切土法面に、粒径が0.65mm以下の炭酸苦土石灰を1平方メートル当たり2kgの割合で吹き付け、その上に客土を厚さ5cmに厚層吹き付けした。そして、該客土に対して実施例1と同様に三種類の樹木の苗木を植え付けた。
【0051】
〔評価〕
実施例1及び比較例1,2について、調査を施工後約1年間行った。調査内容は植生基盤の化学性(pH、EC)及び植栽した樹木の生育調査とした。
調査の結果、実施例1おいては1年後においても総ての樹種が正常に生育していた。一方、比較例はすべて、植栽樹木に何らかの障害が生じた。特に比較例2は、施工約2〜3ヶ月後から、硫酸水を含む酸性水の湧水が多い所では植生基盤のpHの低下と植生の衰退がみられた。また、比較例においては、施工後一ヶ月以内に、植生基盤のpH低下に伴い植生の衰退、枯死がみられた。比較例1及び2では中和処理により植生基盤のpH低下は抑えられたものの、夏場には植生基盤が激しく乾燥し、植栽した植物の約半分が枯死した。
以上の結果から、本発明の方法によれば、植生基盤内の持続的な中和矯正が可能となり、更に植物根の伸張域を充分に確保できるため、乾燥による植物根の水分ストレスを回避できることが明らかとなった。
【0052】
〔実施例2〕
酸性硫酸塩土壌が露出している切土法面について施工試験を行った。現場は岩盤であり傾斜が30度近くある。岩盤を採取し1:10の割合で水抽出した後pHを分析したところ、pH2〜3を示した。また、山中式硬度計にて、該切土法面の20箇所の地点にて土壌硬度を測定したところ、測定点の内の半数以上の点(15点)において指標値が24mm以上であった。また、該切土法面は、強制酸化させた土壌のpH(H2 2 )が4以下、ECが0.25dSm-1以上、全硫黄含有量が1mg/g以上であった。
斯かる切土法面に対して重力方向に粗朶を支持させる棒状の樹脂被覆鉄筋を打ち込み、粗朶を柵状に組んで客土保持用の壁体を立設した後、該壁体の山側における該法面の表面に表4に示したアルカリ資材を散布し、アルカリ資材(酸遮断層)を多孔性のシートにて被覆した後、客土を投入した。そして、該客土に対して、マツ、ヒノキ、クヌギ及びカエデの四種類の樹木の苗木を植え付けた。尚、酸遮断層を形成させるためのアルカリ資材は、単独で散布した。また、客土は、粒径が0.65〜5.0mmのアルカリ資材(石灰岩砕石)を混合した土壌を用いた。
【0053】
〔実施例3〜5〕
酸遮断層を形成させるアルカリ資材を、表4に示すアルカリ資材とした他は、実施例2と同様にして樹木の苗木を植え付けた。尚、実施例2〜5における酸遮断層を形成させるアルカリ資材は、粒径が1〜20mmのものを用い、厚さ30mmに敷設した。
【0054】
〔比較例3〕
アルカリ資材を敷設しない他は、実施例2と同様にして樹木の苗木を植え付けた。
【0055】
〔評価〕
実施例2〜5及び比較例3について、苗木の植え付け後、半年の経過した時点において、客土した土壌のpH及びECを測定した。その結果を表4に示した。尚、植栽した四種類の樹木の苗木は、実施例2〜5については良好に生育していたが、比較例3については、生育が衰退しているとともに、葉縁が褐変し酸性障害がみられた。
【0056】
【表4】
Figure 0004036561
【0057】
また、表4に示す結果から、粒状苦土炭カルの中和効果が最も大きく、軽量気泡コンクリート及び鉱滓スラグはこれに劣るものの中和効果は植物が育成可能な領域にまで達しており、これらが酸性硫酸塩土壌に対する中和矯正剤として優れていることが分かる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の高硬度酸性法面の樹林化方法によれば、根の伸長阻害や透水性不良を起こし易く、樹木による緑化が従来困難であった、山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上であり、表面土壌が酸性を示す高硬度且つ酸性の切土法面を、樹木により効率的に緑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の高硬度酸性法面の樹林化方法の好ましい実施形態において、切土法面上に客土した土壌中に苗木を植え付けた状態を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1における壁体2の一部を示す斜視図である。
【図3】図3は、切土法面の山側と谷側とを結ぶ方向に所定の間隔を開けて複数の客土保持用の壁体を立設させ、各壁体の山側の壁面と該各壁面の山側に形成した酸遮断層との間に、それぞれ図1におけるのと同様にして客土を施し、それぞれに樹木の苗木を植え付けた後、数年を経過した後の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 高硬度酸性の切土法面
2 客土保持用の壁体
3 酸遮断層(アルカリ資材層)
4 多孔性シート
5 客土
6 樹木の苗木
7 樹木

Claims (5)

  1. 山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上であり且つ土壌が酸性を示す高硬度酸性の法面に、客土保持用の壁体を立設し、該壁体の山側における該法面上にアルカリ資材を敷設して酸遮断層を形成し、該壁体と該酸遮断層との間に客土を充填して該客土に樹木の苗木を植え付ける、高硬度酸性法面の樹林化方法であって、
    上記壁体の立設においては、上記法面に防錆処理した棒状の鉄筋を立設し、複数本の粗朶、間伐材、丸太、竹材等の自然素材を、該鉄筋を利用して鉛直方向に積み上げて上記壁体を立設し、
    上記酸遮断層の形成に用いる上記アルカリ資材は、石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻類及びコンクリート廃材よりなる群から選択される少なくとも一種であり、該アルカリ資材の粒径が1〜20mmである、高硬度酸性法面の樹林化方法。
  2. 上記アルカリ資材を上記法面上に厚さ10〜50mmに敷設する請求項記載の高硬度酸性法面の樹林化方法。
  3. 上記壁体の山側の壁面及び上記酸遮断層上に、多孔性シートを設ける請求項1又は2に記載の高硬度酸性法面の樹林化方法。
  4. 上記客土として、粒径0.65〜5.0mmのアルカリ資材を混合した土壌を用いる請求項1〜の何れかに記載の高硬度酸性法面の樹林化方法。
  5. 山中式硬度計にて測定した指標硬度が24mm以上であり且つ土壌が酸性を示す高硬度酸性の法面に、客土保持用の壁体を立設し、該壁体の山側における該法面上にアルカリ資材を敷設して酸遮断層を形成し、該壁体と該酸遮断層との間に客土を充填して該客土に樹木の苗木を植え付けてなる、高硬度酸性法面の樹林化用構造であって、
    上記壁体は、上記法面に防錆処理した棒状の鉄筋を立設し、複数本の粗朶、間伐材、丸太、竹材等の自然素材を、該鉄筋を利用して鉛直方向に積み上げて立設したものであり、
    上記酸遮断層の形成に用いた上記アルカリ資材は、石灰岩砕石、鉱滓スラグ、貝殻類及びコンクリート廃材よりなる群から選択される少なくとも一種であり、該アルカリ資材の粒径が1〜20mmである、高硬度酸性法面の樹林化用構造
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