本発明は、光情報記録媒体のスタンパの製造方法に関するものである。
一般に、光ディスク等の光情報記録媒体は、所定の凹凸パターンを備えたスタンパを用いて、射出成形等の成形加工により製造される。以下、図7(A)〜(E)を参照しつつ、従来の光情報記録媒体のスタンパの製造方法の一例を説明する。
従来のスタンパの製造工程においては、まず、図7(A)に示すように、基板101上にレジスト102が薄膜状に形成されてなる記録原盤103に、レーザ光または電子線等の記録光104による露光で、案内溝および情報ピット等の所望のパターンを潜像105として形成する。
続いて、図7(B)に示すように、露光後の記録原盤103に現像処理を施すことにより、潜像105として記録された所望のパターンが凸部または凹部として形成された凹凸パターンを有する原盤106を製作する。なお、DVDおよびその次世代の光情報記録媒体の原盤の製造には、紫外線レーザによる露光、およびアルカリ溶液による現像が広く用いられている。
次に、図7(C)に示すように、原盤106上に、スパッタ法または無電解メッキ法により、導電膜107を形成する。続いて、図7(D)に示すように、導電膜107を電極として利用したメッキにより、金属層108を形成する。この後、図7(E)に示すように、金属層108のみ、または、導電膜107を伴った金属層108を原盤106から剥離し、該金属層108に裏面研磨や打ち抜きなどの整形加工を施す。これにより、導電膜107を伴っていないスタンパ109aまたは導電膜107を伴ったスタンパ109bが完成する。あるいは、原盤106から剥離した金属層108に、さらにメッキまたは2P法等を1回以上施し、それにより、金属層108上の凹凸パターンが転写されたスタンパを得る場合もある。
光情報記録媒体のディスク基板は、このようにして製作されたスタンパ109aまたは109bを用いて射出成形等により製造される。ここでは、ポジ型のフォトレジスト(潜像が現像により除去されるフォトレジスト)を用いた場合について説明を行っているが、ネガ型のフォトレジストを用いた場合も、原盤上の凹凸が逆となる点を除けば、上述したようにスタンパが製造される。別法として、原盤106から剥離した金属層108に、さらにメッキまたは2P法等を1回以上施し、それにより、金属層108上の凹凸パターンが転写されたスタンパを得、これを光情報記録媒体の製造に使用する場合もある。
図7を参照して説明した従来の光情報記録媒体のスタンパの製造においては、レジスト102として、有機材料から成るフォトレジストを用いるのが一般的である。しかし、レジスト102としてフォトレジストを用いた場合、露光部と非露光部との境界部では、露光量がステップ状ではなく連続的に変化するので、フォトレジストもステップ状ではなく傾斜して除去される。このことは、フォトレジストを用いて微細な凹凸パターンを形成することを困難にしていた。そこで、レジスト102を、相変化材料等の感熱性の無機材料で形成することが提案されている。具体的には、熱により感熱材料を昇温して相変化させ、相変化した部分と相変化していない部分とでエッチングレートの異なるエッチングを実施することにより、凹凸パターンを有する原盤を製造することが提案されている。感熱性の相変化材料で形成したレジストにおいては、相変化は露光により一定温度以上に昇温した部分で生じるから、相変化した部分と相変化していない部分との間の境界はより明瞭となる。そのため、感熱材料を使用したレジストを使用すると、同一波長の記録光に対して、フォトレジストを用いる場合よりも微細なパターンを形成することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−97738号公報(段落[0021]、図1)
前述のように、感熱材料をレジストして使用することによって、微細な凹凸パターンを有するスタンパを製造することが可能となる。しかしながら、感熱材料をレジストとする原盤を用いて、従来の方法によりスタンパを製造すると、次のような不都合が生じることが分かった。従来、光情報記録媒体のスタンパの製造に広く用いられてきたフォトレジストは、ノボラック樹脂およびPMMA等の有機材料から成り、かかるフォトレジストは、一般にメッキにより金属層を形成する間も比較的高い安定性を有する。これに対し、相変化材料等の感熱材料は一般に無機材料である。無機材料は、メッキにより金属層を形成する際に、導電膜またはメッキにより形成された金属層と反応する傾向にあり、また、電気的に分解される傾向にある。無機材料と他の物質との反応は、原盤に形成された凹凸パターンの欠損等の原因となり、金属層に所望の凹凸パターンが付与されないという結果を招く。このように、無機材料をレジストとする原盤を用いると、特に通電を伴う金属層の形成(即ち、メッキ)を良好に実施できないという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、レジストとして相変化材料等の無機材料を用いた場合でも、メッキ等により金属層を形成する際に、無機材料が導電膜および金属層と反応すること、ならびに電気的に分解されることを防止し、それにより、金属層がメッキにより良好に形成されることを可能にする、光情報記録媒体のスタンパの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、光情報記録媒体のスタンパ(単に「スタンパ」と呼ぶことがある)を製造する第1の方法として、(i)無機材料から成るレジストが基板上に形成されている記録原盤に、露光および現像を行うことにより、凹凸パターンを有する原盤を製造すること、(ii)原盤の凹凸パターンの上に有機層を形成すること、(iii)有機層の上に導電膜を形成すること、(iv)導電膜の上に金属層を形成すること、ならびに(v)金属層のみ、または、金属層および導電膜を前記原盤から剥離することを含む方法を提供する。
このスタンパの製造方法は、レジストと導電膜との間に有機層を形成することを特徴とする。ここで、「有機層」とは、有機材料を主成分として含む層をいう。この有機層は、レジストと導電膜とを物理的に隔離する役割をし、それにより、レジストと導電膜との間での化学反応が生じることを抑制する。さらに、有機材料は一般的に導電率の低いものであるから、有機層は、レジストと導電膜とを電気的に隔離する(絶縁する)役割もし、それにより、電気的に促進されるレジストの分解反応およびレジストと導電膜との反応を抑制する。
本発明は、第2の製造方法として、上記第1の製造方法であって、前記記録原盤の製造に使用する前記無機材料が露光による温度変化によって状態変化する感熱材料であることを特徴とする方法を提供する。ここで、感熱材料は、露光による温度変化(具体的には昇温)によって状態変化する材料である。ここで、「状態変化」とは、感熱材料の化学的および/または物理的性質が変化することをいう。「状態変化した部分」は、例えば、相変化した部分または熱架橋した部分等となる。また、本明細書において、「露光」とは、光の照射だけでなく、電子線照射等も含む意味で使用される。
本発明は、第3の製造方法として、上記第1または第2の製造方法であって、前記金属層をメッキにより形成することを特徴とする方法を提供する。本発明の製造方法は、従来のスタンパ製造方法において、特にメッキの際に生じる問題を解決することを目的としたものである。したがって、本発明の製造方法は、金属層がメッキにより形成される場合に特に好ましく適用される。
本発明は、第4の製造方法として、上記第1〜第3のいずれか1つの製造方法であって、前記有機層をスピンコート法により形成することを特徴とする方法を提供する。スピンコート法を採用することにより、有機材料を含む層を効率的に形成することが可能となる。有機層をスピンコート法により形成する場合、有機層は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂またはスチレン系樹脂等を含んで成るのが好ましい。あるいは、有機層は、フェノール樹脂またはアクリル樹脂等を主成分とするフォトレジストで構成してもよい。これらの樹脂またはフォトレジスト材料を用いて有機層をスピンコート法により形成する場合、有機層の厚さは、5nm以上60nm以下とするのが好ましく、15nm以上40nm以下とするのがより好ましい。有機層の厚さが5nm未満であると、レジストと導電膜との間を物理的および電気的に隔離しにくい。有機層の厚さが60nmを越えると、有機層が原盤全体にわたって均一に形成されず、最終的に得られるスタンパ表面の凹凸パターンが不均一になる場合がある。
本発明は、第5の製造方法として、上記第1〜第3のいずれか1つの製造方法であって、有機層を真空プロセスにより形成することを特徴とする方法を提供する。真空プロセスとしては、例えば、真空蒸着法、またはスパッタ法等を用いることができる。真空プロセスは、有機層の形成に起因する凹凸パターンの平坦化の度合をより小さくし得るために好ましく用いられる。真空プロセスとして真空蒸着法を採用する場合、有機層は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素またはポリウレタン等を含んで成るのが好ましい。これらの樹脂のいずれかを用いて有機層を真空蒸着法により形成する場合、有機層の厚さは、5nm以上60nm以下とするのが好ましく、15nm以上60nm以下とするのがより好ましい。有機層の厚さが小さすぎる、または大きすぎることにより生じる問題は先に有機層をスピンコート法で形成することに関連して説明したとおりである。
上記第5の製造方法においては、真空蒸着法として蒸着重合法を用いてもよい。この場合、有機層は、例えば、ポリイミド、ポリ尿素またはポリウレタン等を含んで成るのが好ましい。蒸着重合法は、有機層の形成に起因する凹凸パターンの平坦化の度合をさらにより小さくし得るために好ましく用いられる。これらの樹脂のいずれかを含む有機層を蒸着重合法により形成する場合、有機層の厚さは、3nm以上100nm以下とするのが好ましく、10nm以上100nm以下とするのがより好ましい。有機層の厚さが小さすぎる、または大きすぎることにより生じる問題は先に有機層をスピンコート法で形成することに関連して説明したとおりである。
本発明は、第6の製造方法として、上記第1〜第5のいずれか1つの方法であって、レジストを構成する無機材料が、ゲルマニウム、テルル、アンチモン、セレン、モリブデン等の元素、およびこれらの元素を2以上含む混合物、ならびにこれらの元素の化合物およびこれらの化合物を2以上含む混合物から成る群より選択される少なくとも1つの材料を主成分として含むことを特徴とする製造方法を提供する。ここで、化合物とは、具体的には、これらの元素の酸化物、窒化物、および硫化物等であり、好ましくは酸化物である。これらの材料を昇温させると、状態変化(例えば相変化)が生じるため、これらの材料を含む無機材料は感熱材料として好ましく使用される。レジストは、金、白金、銅、銀、パラジウムおよびケイ素等から選択される少なくとも1つの無機材料をさらに含んでいてもよい。
本発明は、第7の製造方法として、上記第1〜第6のいずれか1つの方法であって、スタンパに形成される凹凸パターンの高さを、12nm以上85nm以下とすることを特徴とする方法を提供する。ここで、凹凸パターンの高さは、凹部の底を通る主表面に平行な面と、凸部の頂を通る主表面に平行な面との間の距離をいう。異なる深さの凹部が複数存在する場合には、それらを平均した深さを、凹凸パターンの高さを決定するための基準となる凹部の深さ(即ち、底)とする。同様に、異なる高さの凸部が複数存在する場合には、それらを平均した高さを、凹凸パターンの高さを決定するための基準となる凸部の高さ(即ち、頂)とする。複数の凹部の深さの平均は、例えば、スタンパを半径方向に切断した断面において各凹部の深さを測定することにより求めることができ、あるいは、任意の範囲(例えば1cm四方)内に位置する各凹部の深さを測定することにより求めてよい。複数の凸部の高さの平均も同様にして求められる。凹凸パターンの高さは、より具体的には、ポジ型のレジストを使用して製造したスタンパにおいては、スタンパに形成される凸部の高さに相当し、ネガ型のレジストを使用して製造したスタンパにおいては、スタンパに形成される凹部の深さに相当する。本発明の製造方法によれば、有機層を形成する前の原盤に形成される凹凸パターンの高さおよび有機層の形成方法および厚さを適切に組み合わせることにより、最終的に得られるスタンパにおいて、凹凸パターンの高さをこの範囲内で制御することが可能である。したがって、本発明の製造方法によれば、光情報記録媒体の基板に所望の形状(高さを含む)の凹凸パターンを形成することを可能にする、スタンパを得ることができる。
本発明は、第8の製造方法として、上記第1〜第7のいずれか1つの方法であって、導電膜を、無電解メッキにより形成することを特徴とする方法を提供する。無電解メッキは、導電性の小さい有機層の表面に導電膜を形成する方法として好ましく用いられる。また、無電解メッキにより形成された導電膜は、スパッタ法および真空蒸着法で形成した導電膜と比較して、より小さい付着強度で有機層に付着する。したがって、無電解メッキを用いると、導電膜とともに金属層を剥離して得たスタンパにおいて、導電膜に有機層の残渣が残りにくいという利点がある。
本発明のスタンパ製造方法によれば、レジストとして無機材料を用いても、有機層がレジストを保護して、メッキ中に、無機材料が導電膜および金属層と反応したり、電気的に分解されたりするのが防止され、それにより良好なメッキが実現される。したがって、本発明の製造方法は、例えば、微細な凹凸パターンを形成するのに適した感熱材料をレジストとして使用した原盤から、当該凹凸パターンを破壊することなくメッキによりスタンパを製作することを可能にする。
発明を実施するための形態
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下の説明において、光情報記録媒体の原盤およびスタンパを、それぞれ単に「原盤」および「スタンパ」と呼ぶことがある。また、レジスト中に、露光による温度変化によって状態変化した部分を潜像として所定のように形成することを、「記録」と呼ぶことがある。
(実施の形態1)
実施の形態1として、原盤の表面に有機層をスピンコート法で形成することを含む、スタンパの製造方法を図1〜図3を参照して説明する。まず、図1(A)〜(F)を参照しつつ、本発明の実施の形態1のスタンパの製造方法の概要を説明する。
まず、図1(A)に示すように、基板1上にレジスト2が薄膜状に形成された記録原盤3を、レーザ光または電子線等の記録光4を用いて露光し、案内溝および情報ピット等の所望のパターンを潜像5として形成する(露光工程)。ここで、レジスト2は、露光による昇温によって相変化する無機材料を含んで成る。続いて、図1(B)に示すように、露光後の記録原盤3に現像処理を施すことにより、潜像5として記録された所望のパターンが凸部または凹部として形成された、微細な凹凸パターンを有する原盤6を製作する(現像工程)。現像工程は、具体的には、相変化した部分と相変化していない部分とでエッチングレートの異なる条件にて実施されるエッチングである。
次に、図1(C)に示すように、原盤6の凹凸パターンが形成された面の上に有機層7を形成する(有機層形成工程)。続いて、図1(D)に示すように、有機層7の上に、無電解メッキ法により導電膜8を形成する(導電膜形成工程)。導電膜8はスパッタ法により形成してもよい。
次いで、図1(E)に示すように、導電膜8の上に、金属層9を形成する(金属層形成工程)。金属層9は、例えば、該導電膜8を電極として利用してメッキを行うことにより形成する。この後、図1(F)に示すように、金属層9のみ、または、金属層9および導電膜8を一体として原盤6から剥離し、さらに、金属層9に裏面研磨および打ち抜き等の整形加工を施す(剥離工程)。これにより、原盤6の凹凸パターンが転写された(即ち、原盤6の凹凸パターンと相補的である凹凸パターンを有する)、導電膜8を伴っていないスタンパ10a、または導電膜8を伴ったスタンパ10bが完成する。
以下、本発明の実施の形態1にかかるスタンパの製造方法をより具体的に説明する。記録原盤3の基板1としては、例えば、ガラスもしくはシリコン、または樹脂等からなる基板が用いられる。基板1の厚さは特に制限されず、例えば、0.4〜10.0mmの範囲内から選択される。
基板1上に形成されたレジスト2は、前述のように、露光による昇温によって状態変化する無機材料を含んで成ることが好ましい。状態変化は、例えば相変化である。レジスト2の無機材料としては、例えば、Ge、Te、Sb、Se、Mo、Sn、もしくはこれらの元素の混合物、またはこれらの元素の化合物もしくはこれらの化合物の混合物を主成分として含む材料が用いられる。レジスト2を構成する元素の混合物は、例えば、Sb−Te、およびGe−Sb−Teである。レジスト2を構成する化合物は、酸化物、窒化物、および硫化物等であり、酸化物であることが好ましい。酸化物は、例えば、MOx(ここで、MはGe、Te、Sb、Se、MoおよびSnから選択される1または複数の元素であり、0.3<X<1.7)で示される酸化物である。上述した特定の1もしくは複数の元素または1もしくは複数の元素の化合物を含む無機材料は、さらに、Au、Pt、Cu、AgおよびPd等の貴金属から選択される一または複数の金属、ならびに/またはSiを含んでいてもよい。ここで、無機材料から成るレジスト2は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、またはスピンコート法等により形成される。記録原盤3は、レジスト2が無機材料を含んで成る限りにおいて、上記以外の構成要素、例えば界面層および反射層等を含んでいてもよい。
次に、図2を参照しつつ、記録原盤3の露光方法、すなわち記録原盤3にパターンを記録する方法を説明する。図2に示すように、記録原盤3は、回転台11に載せられて回転台11とともに回転させられる。光源12から発せられた記録光4は、レンズ14により記録原盤3の表面に集光される。なお、必要であれば、記録光4は、光源12内で変調および/または偏向されていてもよい。記録中、記録ヘッド15と回転台11とは、矢印Aで示すように、互いに相対的に平行移動する。これにより、記録原盤3上に状態変化した部分がスパイラル状に順次形成されるように記録が行われ、所望のパターンが潜像5として形成される。記録光4としては、レーザ光または電子線束等を用いることができる。
所望のパターンが潜像5として形成された記録原盤3においては、露光による昇温によって状態変化した部分(例えば、相変化を起こした部分)と、それ以外の状態変化していない部分は互いに異なるエッチングレートを有する。そこで、現像工程(図1(B)参照)では、このエッチングレート差を利用して、エッチングにより記録原盤3を現像する。エッチングの例としては、反応性イオンエッチング等のドライエッチングや、酸またはアルカリ等によるウエットエッチング等が挙げられる。尤も、エッチングは、状態変化した部分と状態変化していない部分とでエッチングレートが異なる条件でエッチングを実施できる限りにおいて、どのような手法を用いて実施してもよい。このような現像処理により、原盤6が製作される。
実施の形態1において、有機層形成工程(図1(C)参照)では、スピンコート法が採用される。スピンコート法は、塗膜を構成する有機材料(例えば樹脂)を、適当な溶媒に溶解または分散させて塗布液を調製し、この塗布液を、回転している対象物(本発明では原盤)上に滴下することにより塗布した後、溶媒を蒸発させて、塗膜を得る塗布方法である。この方法によれば、薄い有機層を効率的に形成することができる。例えば、ノボラック樹脂のようなフェノール樹脂、PMMAのようなアクリル樹脂ならびにポリスチレンおよびスチレン共重合体のようなスチレン系樹脂等が、スピンコート法により原盤6上に塗布するのに適している。また、フェノール樹脂またはアクリル樹脂等を主成分とするフォトレジストを溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて、スピンコート法により有機層を形成してもよい。スピンコート用の塗布液を調製するための溶媒としては、例えばケトン、エステル、または炭化水素等の有機溶媒を用いることができる。
塗布液中の溶媒は、必要に応じてオーブン等を用いて、蒸発させ、それにより、導電膜8とレジスト2との間に位置することとなる有機層7を形成する。塗布液を塗布する前に、原盤6の表面に、例えばシランカップリング剤などのカップリング剤を、例えば蒸着またはスピンコート等により付着させておくと、塗布液を均質に塗布できるので好ましい。
スピンコートの最適な操作条件は、塗布する塗布液の粘度、塗布液中の樹脂の濃度ないしは希釈度によって異なるため、それらに応じて適宜選択される。スピンコートの操作条件は、所望の厚さの有機層を実質的に均一に形成することができる限りにおいて特に限定されない。
スピンコート法で形成される有機層を構成する材料は、後で説明する好ましい有機層7の厚さを実現できるものであれば、上記に示した樹脂に限定されるわけではなく、他の材料を用いてもよい。ただし、有機層7がレジスト2と導電膜8とを絶縁する必要がある場合には、有機層7は絶縁材料から成ることを要する。(ほとんどの有機材料は絶縁材料である)。
特に、市販されているフォトレジストにおいて基材として使われているノボラック樹脂またはPMMA等を用いると、後で説明する有機層7の厚さを実現するのが容易である。フォトレジストを用いる場合は、塗布液を調製するための溶媒として、例えばレジスト用シンナーを用いることができる。フォトレジストはまた、導電膜を伴うスタンパ10bに有機層7の残渣が残った場合に、残渣の除去が容易であることからも、有機層7の材料として好ましく用いられる。スタンパ10bに残った場合に除去することを要する場合があるので、有機層7は、金属層を侵さない溶媒に可溶である材料から成ることが好ましい。フォトレジストは、本来、何らかの方法で除去され得るように調製されているので、スタンパ10b上に残渣として残っても、該残渣を通常のフォトレジスト用の除去処理手法を用いて容易に除去することができる。このように、本発明の実施の形態1にかかる製造方法において、フォトレジストは有機層を構成するのに適している。
有機層7の厚さは、次の2つの条件を満たすように選択する必要がある。
(第1の条件)金属層9をメッキする際に、レジスト2の分解、ならびにレジスト2と導電膜8および金属層9との間の化学反応を抑制する。
(第2の条件)有機層7を形成した後、原盤6の表面に所望の高さないしは形状の凹凸パターンが形成される。
即ち、有機層7の厚さが小さい場合には、層中に多数空隙が存在し、レジスト2と導電膜との間が十分に隔離されず、両者が一部において連絡し、相互作用する。かかる不都合を避けるため、有機層を十分に厚く形成する必要がある。他方、有機層7を形成すると、原盤6の表面に形成されていた凹凸パターンの凹部において有機層7がより厚く形成される傾向にあるため、有機層7の表面に形成される凹凸パターンがより平坦化される、即ち、凹凸パターンの高さがより小さくなる。凹凸パターンの平坦化の度合は、有機層7が厚くなるほど、より大きくなる。したがって、有機層7の厚さは、原盤6の凹凸パターンの平坦化の度合いが小さくなる範囲内で選択する必要がある。そこで、以下のように実験を実施して、スピンコート法により有機層7を形成するときに、これらの条件が満たされる厚さの範囲を決定した。
まず、第1の条件を満たす厚さの範囲を決定した手順を説明する。ここでは、表1に示すように、2種類の有機層7と2種類のレジスト2を組み合わせて、4種類の組み合わせを用いた。ここで、レジスト2としては、金属層9をメッキする際の安定性の低いTe酸化物からなる2種類のレジストA(TeO1.5)およびレジストB(TeO1.0)を用いた。有機層7の材料としては、ノボラック樹脂とPMMAを用いた。有機層7は、ノボラック樹脂またはPMMAをフォトレジスト用のシンナーに溶解させて調製した塗布液を用いてスピンコート法により形成した。各組み合わせについて、有機層7の厚さが異なる6種類の積層体(計24種類)を製作し、各積層体に導電膜8(Ni、50nm)および金属層9を形成し、導電膜8と金属層9とを一体的に剥離して導電膜8を有するスタンパを製作し、メッキ良品率を測定した。金属層9はメッキにより形成し、Niから成る厚さ300μmの層とした。また、メッキ良品率は、各積層体について10回ずつメッキにより金属層を形成し、スタンパの剥離面(即ち、導電膜8の露出表面)に差し渡し(輪郭の2点を結ぶ線分のうち最も長い線分)が100μm以上の欠陥が生じたものを不良品として、10個のスタンパ中の良品の数で表した。良品の数が多いほど、有機層7によりレジスト2のメッキ耐性がより向上しているといえる。結果を表1に示す。
表1から明らかなとおり、いずれの組み合わせにおいても、有機層7の厚さが5nm以上であれば、有機層7の存在によりレジスト2のメッキ耐性が確実に向上し、15nm以上であればレジスト2のメッキ耐性は特に高くなる。
次に、第2の条件を満たす厚さの範囲を決定した手順を説明する。幅130nm、最短ピット長が100nm程度のピットの列をトラックピッチを320nmとしてスパイラル状にレジスト2に形成することにより、凹凸パターンが形成された原盤6を作製した。表2に示すように、ここでは凹凸パターンの高さがそれぞれ35nmおよび90nmである2種類の原盤6を用意した。各原盤6を用いて有機層7の厚さが異なる6種類の積層体(計12種類)を製作し、各積層体の有機層7の表面に形成された凹凸パターンの高さを測定した。その結果を表2に示す。ここでは、有機層7を、ノボラック樹脂を、フォトレジスト用のシンナーに溶解させて調製した塗布液を用いてスピンコート法により形成した。また、凹凸パターンの高さは、前述のように、凹部の底を通る原盤の主表面に平行な面と、凸部の頂を通る原盤の主表面に平行な面との間の距離である。図3に、凹凸パターンの高さを模式的に示す。図3において、h1は有機層7の凹凸パターンの高さを示し、h2は原盤6の凹凸パターンの高さを示している。
表2から明らかなとおり、有機層7の厚さが大きいほど、凹凸パターンの高さは小さくなり、凹凸パターンの平坦化の度合が大きくなること、および有機層7の厚さが80nm以下であると、原盤6上の凹凸パターンが有機層7の表面に反映されることがわかった。ただし、有機層7の厚さが80nmの場合、有機層7の表面において凹凸パターンの均一性が若干悪い場合があった。したがって、有機層7の厚さは60nm以下であるのがより好ましい。また、より均一性の高い凹凸パターンを得るには、有機層7の厚さは、有機層7の凹凸パターンの高さが有機層の厚さに依存せず比較的一定である範囲、即ち、10nm以上40nm以下の範囲とするのが好ましい。
以上の測定結果によれば、スピンコート法を用いて有機層を形成する場合、有機層7の厚さは、5nm以上60nm以下であるのが好ましく、15nm以上40nm以下であるのがより好ましい。また、表2に示す結果によれば、有機層7の表面の凹凸パターンの高さは、原盤6に形成する凹凸パターンの高さを適宜選択することによって、少なくとも、12nm以上25nm以下の範囲、または、36nm以上53nm以下の範囲で制御可能である。
続いて、有機層7を形成した後の工程について説明する。導電膜形成工程(図1(D)参照)では、有機層7が形成された原盤6上に、無電解メッキ法により、例えばNiまたはAu等から成る導電膜8を形成する。別法として、スパッタ法や真空蒸着法等により、導電膜8を形成してもよい。導電膜8の形成に無電解メッキを用いると、スパッタ法や真空蒸着法を用いる場合に比べて、レジスト2と導電膜8との密着性が低くなる。したがって、後述のように導電膜を伴うスタンパ10bを形成する場合に、導電膜を無電解メッキ法で形成することによって、スタンパ10b上に有機層の残渣が残るのを抑制することができる。導電膜8の厚さは、例えば、10〜100nmの範囲内から選択される。この導電膜8は、金属層形成工程で、メッキにより金属層9を形成する際の電極として利用する。
金属層形成工程(図1(E)参照)では、例えば、Ni電鋳メッキなどのメッキを行い、原盤6上に金属層9を形成する。金属層9の厚さは、例えば、200〜500μmの範囲内から選択される。
剥離工程(図1(F)参照)では、金属層9のみ、または、金属層9を導電膜8ととともに原盤6から剥離し、その後、裏面(剥離面とは反対側の面)の研磨および打ち抜き等の整形加工を行う。これにより、スタンパ10aまたは10bが完成する。前述のように、金属層9を導電膜8ととともに原盤6から剥離する場合は、剥離により露出した導電膜8の表面上に有機層7の残渣が残ることがある。このような残渣が問題となる場合は、導電膜8および金属層9を侵すことのない溶媒で有機層7の残渣を溶かして除去してよく、あるいは、プラズマエッチング等で有機材料を選択的に除去してよい。例えば、有機層7をノボラック樹脂またはアクリル樹脂等で形成する場合は、2−ヘプタノン等の有機溶媒または強アルカリ水溶液等によって残渣を除去することができる。他の有機材料もまた、導電膜8および金属層9を侵すことのない溶媒によって除去することができる。そのような溶媒は、例えば、ケトンおよびエステル等の有機溶媒ならびに強アルカリ水溶液である。
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、従来、メッキによる金属層の形成を困難または不可能にしていた、無機材料をレジストとして用いることが可能となる。それにより、例えば、無機材料が一定温度以上で変化する性質を利用して原盤を製作することが可能となる。実施の形態1では、スピンコート法により有機層を形成した。スピンコート法は、後記の実施の形態2または実施の形態3で採用する、真空蒸着法と比較して、有機材料の選択幅が広い点で有利であり、また、凹凸パターンの高さが比較的低いスタンパの製造を可能にする。
(実施の形態2)
実施の形態2として、原盤の表面に有機層を真空蒸着法で形成することを含む、スタンパの製造方法を説明する。実施の形態2の製造方法は、有機層の形成方法を除いては、実施の形態1の製造方法と同様である。したがって、以下の説明では、説明の重複を避けるため、適宜図1(A)〜(F)を参照しつつ、主として実施の形態1と異なる点を説明する。
実施の形態2においては、露光工程および現像工程は実施の形態1におけるそれらと同様であり、したがって実施の形態1で製作される原盤6と同じ原盤が製作される。
有機層形成工程(図1(C)参照)では、原盤6上に、真空蒸着法により、有機層7が形成される。真空蒸着法を用いる場合は、スピンコート法を用いる場合に比べて、原盤6上の凹凸パターンを、より忠実に有機層7の表面に形成することができる。換言すれば、真空蒸着法を採用することによって、凹凸パターンの平坦化の度合をより小さくできる。真空蒸着法により有機層7を形成するのに適した有機材料は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、またはポリウレタンである。前述のように、ノボラック樹脂およびPMMA等は、スタンパ上に残渣として残った場合に、フォトレジスト用の除去処理手法を用いて非常に容易に除去することができるので、好ましく用いられる。
真空蒸着法の成膜条件は、後で説明する好ましい有機層7の厚さを原盤6の表面内で実質的に均一に実現できる限りにおいて、特に限定されない。有機材料の破壊を避けるため、有機材料の蒸発方法として、電子線照射法よりも抵抗加熱法を用いることが好ましい。
真空蒸着法で形成される有機層を構成する材料も、後で説明する好ましい有機層7の厚さを実現できるものであれば、上記に示した樹脂に限定されるわけではなく、他の材料を用いてもよい。ただし、有機層7がレジスト2と導電膜8とを絶縁する必要がある場合には、有機層7は絶縁材料から成ることを要する(ほとんどの有機材料はこの条件を満たす)。
真空蒸着法で有機層7を形成する場合も、有機層7の厚さは、実施の形態1で説明した第1の条件および第2の条件を満たすことが必要である。そこで、真空蒸着法で有機層を形成するときに、これらの条件が満たされる厚さの範囲を決定した。
まず、第1の条件を満たす厚さの範囲を決定した手順を説明する。表3に示すように、レジスト2の種類が互いに異なる2つの原盤を用意した。各原盤について、有機層7の厚さが異なる6種類の積層体(計12種類)を製作し、各積層体に導電膜8および金属層9を形成し、導電膜8と金属層9とを一体的に剥離して導電膜8を有するスタンパを製作し、各スタンパのメッキ良品率を測定した。ここで、レジスト2として、実施の形態1で使用したレジストと同じレジストAおよびBを使用した。有機層7の材料としてはPMMAを用い、これを原盤6表面に蒸着させた。導電膜8および金属層9の形成方法、ならびにメッキ良品率の測定方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。結果を表3に示す。表3から明らかなとおり、いずれのレジストのメッキ耐性も、有機層7の厚さが5nm以上であれば確実に向上し、15nm以上であればメッキ耐性は特に高くなる。
次に第2の条件を満たす厚さの範囲を決定した。ここでは、実施の形態1と同様にして、凹凸パターンの高さがそれぞれ35nmおよび90nmである2種類の原盤6を用意し、各原盤6を用いて有機層7の厚さの異なる6種類の積層体(計12種類)を製作し、各積層体の有機層7の凹凸パターンの高さを測定した。その結果を表4に示す。ここでは、有機層7の材料として、PMMAを用いた。
表4から明らかなとおり、有機層7の厚さが大きいほど、凹凸パターンの高さは小さくなり、凹凸パターンの平坦化の度合が大きくなること、有機層7の厚さが80nm以下であると、原盤6上の凹凸パターンが有機層7の表面に反映されること、および凹凸パターンの平坦化の度合が実施の形態1と比較して小さいことがわかった。ただし、有機層7の厚さが80nmの場合、有機層の表面において凹凸パターンの均一性が若干悪い場合があった。したがって、有機層7の厚さは60nm以下であるのが好ましい。有機層7の表面の凹凸パターンの高さは、有機層7の厚さが60nm以下であると、有機層の厚さに大きく依存せず、特に問題のないレベルであった。
以上の測定結果によれば、真空蒸着法を用いて有機層を形成する場合、有機層7の厚さは、5nm以上60nm以下であるのが好ましく、15nm以上60nm以下であるのがより好ましい。また、表4に示す結果によれば、有機層7の表面の凹凸パターンの高さは、原盤6に形成する凹凸パターンの高さを適宜選択することによって、少なくとも、22nm以上35nm以下の範囲、または、58nm以上82nm以下の範囲で制御可能である。
有機層を形成した後の導電膜形成工程、金属層形成工程および剥離工程は、実施の形態1と同様にして実施され、これらの各工程を経て、スタンパ10aまたは10bが完成する。
以上説明したように、本発明の実施の形態2によれば、従来、メッキによる金属層の形成を困難または不可能にしていた、無機材料をレジストとして用いることが可能となる。それにより、例えば、無機材料が一定温度以上で変化する性質を利用して原盤を製作することが可能となる。また、有機層を真空蒸着法で形成することによって、スピンコート法を採用する前記の実施の形態1の製造方法で得られるスタンパに比べて、凹凸パターンの高さがより高いスタンパの製造が可能となる。
(実施の形態3)
実施の形態3として、原盤の表面に有機層を蒸着重合法で形成することを含む、スタンパの製造方法を説明する。実施の形態3の製造方法は、有機層の形成方法を除いては、実施の形態1および2の製造方法と同様である。したがって、以下の説明では、説明の重複を避けるため、適宜図1(A)〜(F)を参照しつつ、主として実施の形態1および2と異なる点を説明する。
実施の形態3においては、露光工程および現像工程は実施の形態1および2におけるそれらと同様である。したがって実施の形態1および2で製作される原盤6と同じ原盤が製作される。
有機層形成工程(図1(C)参照)では、原盤6上に、蒸着重合法により、有機層7が形成される。ここで、蒸着重合法とは、真空蒸着法の一種であって、一種または複数種のモノマを対象物上に蒸着させると同時に、重合させる方法をいう。複数種のモノマを共蒸着させると、共重合体の層が形成される。蒸着重合法は、通常の真空蒸着法では困難であった良質のポリマ薄膜を形成することを可能にする。したがって、蒸着重合法を用いて有機層7を形成すると、実施の形態2で採用した通常の真空蒸着法と比較して、原盤6上の凹凸パターンをより忠実に有機層7の表面に形成することができる。また、蒸着重合法で形成した有機層は、スピンコート法および通常の真空蒸着法で形成した有機層に比べて、緻密となるので、蒸着重合法により有機層7の薄膜化が可能となる。蒸着重合法を採用する場合に用いられる有機材料は、例えば、ポリ尿素、ポリイミド、またはポリウレタン等を、重合により生成するモノマである。
蒸着重合法の成膜条件は、後で説明する好ましい有機層7の厚さを原盤6の表面内で実質的に均一に実現することができる限りにおいて、特に限定されない。蒸着重合させる材料も、後で説明する有機層7の厚さを実現できるものであれば、上記に示した材料に限定されるわけではなく、適当なモノマを選択して他の重合体を得るようにしてもよい。ただし、有機層7がレジスト2と導電膜8とを絶縁する必要がある場合は、有機層は絶縁材料から成ることを要する(ほとんどの有機材料はこの条件を満たす)。前記のポリ尿素、ポリイミド、またはポリウレタンを含む薄膜を蒸着重合により形成する技術は、広く研究されて実用化されているので、実施の形態3の製造方法においても、これらの重合体を含む層が好適に形成される。特に、ポリ尿素は、成膜レートが比較的遅いので薄膜形成が容易であること、ならびに常温での重合反応が可能であるのでレジスト2への攻撃性が低いことから、ポリ尿素の層を蒸着重合により形成することは実施の形態3の製造方法において特に適している。
蒸着重合法で有機層を形成する場合も、有機層7の厚さは、実施の形態1で説明した、第1の条件および第2の条件を満たすことが必要である。そこで、蒸着重合法で有機層を形成するときに、これらの条件が満たされる厚さの範囲を測定した。
まず、第1の条件を満たす厚さの範囲を決定する手順を説明する。表5に示すように、レジスト2の種類が互いに異なる2つの原盤を用意した。各原盤について、有機層7の厚さが異なる6種類の積層体(計12種類)を製作し、各積層体に導電膜8および金属層9を形成し、導電膜8と金属層9とを一体的に剥離して導電膜8を有するスタンパを製作し、各スタンパのメッキ良品率を測定した。ここで、レジスト2として、実施の形態1で使用したレジストと同じレジストAおよびBを使用した。また、有機層7としてポリ尿素から成る層が形成されるように、ヘキサメチレンジイソシアネートとテトラメチレンジアミンとを共蒸着させるとともに、原盤6表面にて重合させた。導電膜8および金属層9の形成方法、ならびにメッキ良品率の測定方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。結果を表5に示す。表5から明らかなとおり、いずれのレジストのメッキ耐性も、有機層7の厚さが3nm以上であれば確実に向上し、10nm以上であればメッキ耐性は特に高くなる。
次に第2の条件を満たす厚さの範囲を決定した。ここでは、実施の形態1と同様にして、凹凸パターンの高さがそれぞれ35nmおよび90nmである2種類の原盤6を用意し、各原盤6を用いて有機層7の厚さの異なる7種類の積層体(計14種類)を製作し、各積層体の有機層7の凹凸パターンの高さを測定した。その結果を表6に示す。ここでは、先の第1の条件を満たす厚さの範囲を決定したときと同様に、ポリ尿素から成る有機層7が形成されるように、蒸着重合法により形成した。
表6から明らかなとおり、有機層7の厚さが大きいほど、凹凸パターンの高さは小さくなり、凹凸パターンの平坦化の度合は大きくなるものの、その度合は実施の形態1および2の場合と比較して非常に小さいことがわかった。具体的には、有機層の厚さが100nm以下であれば、原盤6上の凹凸パターンが有機層7の表面に反映され、均一性についても問題のないレベルが得られることがわかった。また、有機層表面の凹凸パターンの高さは、有機層7の厚さが100nm以下であると、有機層の厚さに大きく依存せず、特に問題のないレベルであった。さらに、目視レベルの観察から、蒸着重合法で形成した有機層7においては、凹凸パターンの高さだけでなく、凹凸の形状についても、原盤6の凹凸パターンがより忠実に反映されることが認められた。
以上の測定結果によれば、蒸着重合法を用いて有機層を形成する場合、有機層7の厚さは、3nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上100nm以下であるのがより好ましい。また、表6に示す結果によれば、有機層7の表面の凹凸パターンの高さは、原盤6に形成する凹凸パターンの高さを適宜選択することによって、少なくとも、27nm以上34nm以下の範囲、または、65nm以上85nm以下の範囲で制御可能である。
有機層を形成した後の導電膜形成工程、金属層形成工程および剥離工程は、実施の形態1と同様にして実施され、これらの各工程を経て、スタンパ10aまたは10bが完成する。一般に蒸着重合により形成される有機薄膜は溶媒等に溶けにくいので、導電膜を伴うスタンパ10bにおいて、有機層7の残渣が問題となる場合は、プラズマエッチングにより除去してよく、あるいは真空下等での熱処理等による解重合を実施してから溶媒処理等を行う方法で除去してよい。また、前述のとおり、導電膜8を無電解メッキ法で形成することによっても、有機層7の残渣を無くす又は少なくすることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3によれば、従来、メッキによる金属層の形成を困難または不可能にしていた、無機材料をレジストとして用いることが可能となる。それにより、例えば、無機材料が一定温度以上で変化する性質を利用して原盤を製作することが可能となる。また、有機層を蒸着重合法で形成することによって、前記の実施の形態1および2に比べて、凹凸パターンの高さがより高いスタンパの製造が可能となる。
本発明の製造方法は、図1(A)に示した構成以外の記録原盤を利用して実施してよい。例えば、図4(A)に示すように、レジスト2と基板1との間に、レジスト2を構成する材料とは異なる材料から成る記録補助層22が形成された構成を有する記録原盤20を使用してよい。記録補助層22は、レジストが露光による温度変化によって状態変化する無機材料から成る場合に、レジストに形成される潜像の厚さ方向の断面形状(この方向の断面形状を単に「断面形状」とも呼ぶ)を制御する役割をする。潜像の断面形状は、記録補助層を構成する材料の熱伝導率および記録補助層の厚さを選択することによって、制御される。具体的な断面制御の方法を図面を参照して説明する。
図4(B)〜(D)は、記録補助層22の厚さを一定として、熱伝導率が異なる材料を用いて記録補助層22を形成した場合の、レジスト2が昇温により状態変化した部分、即ち潜像5の断面形状を模式的に示している。記録補助層22を構成する材料の熱伝導率は、図4(B)>図4(C)>図4(D)の順で高い。図4(B)〜(D)より、記録補助層22を構成する材料の熱伝導率によって、潜像5の断面形状が変化することがわかる。記録補助層がレジストと基板との間に位置する記録原盤において、記録補助層を構成する材料の熱伝導率だけを変化させると、熱伝導率が小さいほど、レジストの基板側表面から放出される熱量がより小さくなる。即ち、記録補助層の熱伝導率が小さいほど、レジストの表面からより深い部分が昇温することが可能となるので、図4(D)に示すように、状態変化した部分5と状態変化していない部分との境界がより急な傾きを有することとなる。
図4(E)および(F)は、熱伝導率が基板1を構成する材料よりも小さい材料で記録補助層22を形成したときに、記録補助層22の厚さを変化させることによって、レジスト2の潜像5の断面形状がどのように変わるかを模式的に示している。図4(E)に示す記録原盤は、記録補助層22の厚さがより大きいために、レジスト2から基板1側に熱が放出されることをより抑制し、状態変化した部分と状態変化していない部分との間の境界の傾きがより大きくなる。図4(G)および(H)は、熱伝導率が基板1を構成する材料よりも大きい材料で記録補助層22を形成したときに、記録補助層22の厚さを変化させることによって、潜像5がどのように変化するかを模式的に示す。記録補助層22の熱伝導率を基板1の熱伝導率よりも大きくすることによって、記録補助層を設けない場合と比較して、状態変化した部分と状態変化していない部分との境界の傾きがより緩やかになる。また、記録補助層22の厚さが大きい程、状態変化した部分と状態変化していない部分との間の境界の傾きがより小さくなる。なお、図4(B)〜(H)は、記録補助層の熱伝導率および厚さが、レジストの潜像の断面形状にどのように影響するかという傾向を表す模式図であることに留意されたい。実際に得られる断面形状は基板を構成する材料の熱伝導率の具体的な数値、この数値と記録補助層を構成する材料の熱伝導率の具体的な数値との差、記録補助層の実際の厚さ等によって決定される。
あるいは、本発明の製造方法においては、図5(A)に示すように、レジストの表面に記録補助層24が形成された構成を有する記録原盤30を使用してよい。この構成の記録原盤を用いることによっても、潜像の断面形状を制御することが可能である。この構成の記録原盤を用いる場合、記録補助層24は、潜像形成後に除去される。また、図5(A)において、26は外部媒質(即ち、露光の際の雰囲気)を指し、これは一般には空気である。
図5(B)〜(D)は、記録補助層24の厚さを一定として、熱伝導率が異なる材料を用いて記録補助層を形成した場合の、レジスト2の潜像5の断面形状を模式的に示している。記録補助層24を構成する材料の熱伝導率は、図5(B)>図5(C)>図5(D)の順で高い。図5(B)〜(D)より、記録補助層24を構成する材料の熱伝導率によって、潜像5の断面形状が変化することがわかる。記録補助層がレジストの上に位置する記録原盤において、記録補助層を構成する材料の熱伝導率だけを変化させると、熱伝導率が小さいほど、レジストの表面付近に熱が溜まりやすくなる。即ち、記録補助層の熱伝導率が小さいほど、レジストの表面から深い部分で昇温しにくくなるので、図5(D)に示すように、状態変化した部分と状態変化していない部分との境界がより緩やかな傾きを有することとなる。
図5(E)および(F)は、記録補助層24を熱伝導率が外部媒質26の熱伝導率よりも小さい材料で形成したときに、記録補助層24の厚さを変化させることによって、レジスト2の潜像5の断面形状がどのように変わるかを模式的に示している。図5(E)に示す記録原盤は、記録補助層24の厚さがより大きいために、レジスト2の表面から熱が放出されることをより抑制し、状態変化した部分と状態変化していない部分との間の境界の傾きがより小さくなる。
図5(G)および(H)は、熱伝導率が外部媒質26よりも大きい材料で記録補助層24を形成したときに、記録補助層24の厚さを変化させることによって、潜像5の断面形状がどのように変化するかを模式的に示す。記録補助層24の熱伝導率を外部媒質26の熱伝導率よりも大きくすることによって、記録補助層を設けない場合と比較して、状態変化した部分と状態変化していない部分との境界の傾きがより大きくなる。また、記録補助層24の厚さが大きいほど、状態変化した部分と状態変化していない部分との間の境界の傾きはより大きくなる。
一般にレジスト2が曝されている外部媒質26は固体や液体に比べて非常に熱伝導率の低い空気である。その場合、記録補助層24の熱伝導率を外部媒質よりも小さくすることは一般に困難であるから、潜像の断面形状の制御は、図5(G)および(H)に示すように実現される。ただし、LIL(液浸レンズ法)による原盤記録等のように外部媒質26として液体を用いる場合には、潜像5の断面形状の制御は、図5(E)〜(H)のいずれに示すようにも実現可能である。このように、記録補助層をレジストの上に設ける場合にも、記録補助層24の厚さを変化させることによっても、記録時の昇温により状態変化した部分5の分布を変化させ得ることが分かる。なお、なお、図5(B)〜(H)は、記録補助層の熱伝導率および厚さが、レジストの潜像の断面形状にどのように影響するかという傾向を表す模式図であることに留意されたい。実際に得られる断面形状は外部媒質を構成する材料の熱伝導率の具体的な数値、この数値と記録補助層を構成する材料の熱伝導率の具体的な数値との差、記録補助層の実際の厚さ等によって決定される。
あるいは、本発明の製造方法においては、図6に示すように、レジスト2の両側に記録補助層22および24が形成された構成を有する記録原盤40を使用してよい。この構成の記録原盤を用いることによっても、潜像の断面形状を制御することが可能である。この構成の記録原盤を用いる場合にも、記録補助層24は、潜像形成後に除去される。
図4〜図6に示す構成の記録原盤において、記録補助層22および24は、例えば、ZnSe等のセレン化物、Si−O、Ge−O、Al−O、Zn−O、Y−O、La−O、Ti−O、Zr−O、Hf−O、Nb−O、Ta−O、Cr−O、Mo−O、W−O、Sn−O、In−O、Sb−O、およびBi−O等の酸化物、Si−N、Ge−N、Al−N、Zn−N、Ti−N、Zr−N、Hf−N、Nb−N、Ta−N、Cr−N、Mo−N、W−N、Sn−N、およびIn−N等の窒化物、Si−O−N、Ge−O−N、Al−O−N、Ti−O−N、Zr−O−N、Hf−O−N、Nb−O−N、Ta−O−N、Cr−O−N、Mo−O−N、W−O−N、Sn−O−N、およびIn−O−N等の窒酸化物、Ge−C、Cr−C、Si−C、Al−C、Ti−C、Zr−C、およびTa−C等の炭化物、Si−F、Al−F、Mg−F、Ca−F、およびLaF等の弗化物、ならびにZnSおよびSiO2で構成される群から選択される一または複数の材料、またはそれらの混合材料を、スパッタ法や蒸着法を用いて成膜することによって、形成してよい。あるいは、記録補助層は、有機材料で形成してよく、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはそれらの混合物から成る層であってよい。樹脂材料から成る記録補助層は、例えば、スピンコート法により成膜する方法で形成される。また、図5および図6に示す構成において、レジストの上に形成する記録補助層は、液体であってもよい。具体的には、露光を記録補助層となる液体を配置した(例えば塗布した)状態、または当該液体に記録原盤を浸漬した状態にて実施することによっても、潜像の断面形状を制御することができる。
また、図4〜図6に示す構成の記録原盤において、記録補助層22および24は、レジストの露光に使用する光の波長での光吸収率を増大させる役割をするものであってよい。具体的には、基板、記録補助層、およびレジストの間の光学的な効果(例えば、反射および干渉効果)を考慮して、記録補助層を構成する材料の光学定数および記録補助層の厚さを選択することによって、レジストの光吸収率を向上させることができる。
以上において、本発明の好ましい形態を説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、これらの形態を適宜変更してよいことが理解されるべきである。
本発明のスタンパ製造方法は、無機材料から成るレジストを有する原盤を用いて、メッキにより金属層を形成することを可能にするものである。無機材料から成るレジストは、例えば露光による昇温によって相変化する性質を有するので、微細な凹凸パターンを原盤に形成するのに適している。したがって、当該方法により製造されたスタンパは、微細な凹凸パターンを有することが必要とされる、例えば青色レーザ光のような短波長の光を用いて信号を記録および/または再生する光情報記録媒体の製造に適している。
(A)〜(F)は、光情報記録媒体のスタンパないしはその材料の立面断面図であり、本発明にかかる光情報記録媒体のスタンパ製造方法を示している。
記録原盤を記録光で露光する露光装置の模式的な立面図である。
凹凸パターン上に有機層が形成されている原盤の立面断面図である。
(A)は、本発明のスタンパ製造方法で用いられる記録原盤の一例の断面図であり、(B)〜(H)は、それぞれ露光後の記録原盤の断面図である。
(A)は、本発明のスタンパ製造方法で用いられる記録原盤の別の例の断面図であり、(B)〜(H)はそれぞれ露光後の記録原盤の断面図である。
本発明のスタンパ製造方法で用いられる記録原盤のさらに別の例の断面図である。
(A)〜(E)は、光情報記録媒体のスタンパないしはその材料の立面断面図であり、従来の光情報記録媒体のスタンパの製造方法を示している。
符号の説明
1 基板、2 レジスト、3 記録原盤、4 記録光、5 潜像、6 原盤、7 有機層、8 導電膜、9 金属層、10a スタンパ、10b スタンパ、11 回転台、12 光源、14 レンズ、15 記録ヘッド、20 記録原盤、22 記録補助層、24 記録補助層、26 外部媒質、30 記録原盤、40 記録原盤、101 基板、102 レジスト、103 記録原盤、104 記録光、105 潜像、106 原盤、107 導電膜、108 金属層、109a スタンパ、109b スタンパ。