JP4080095B2 - 肉厚多孔質炭素材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気孔性状や材質性状の均一性に優れ、特に肉厚形状の多孔質炭素材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軽量で耐熱性、耐蝕性、導電性などに優れる多孔質炭素材は、燃料電池や二次電池用の電極材、触媒担体、電気化学的水処理用電極材、フィルター、断熱材などの広い用途分野で各種工業用部材として有用されている。
【0003】
多孔質炭素材の製造技術としては、炭素繊維をパルプとともに抄紙して得られるシートに熱硬化性樹脂液を含浸して積層成形し、焼成炭化する方法(例えば特開昭50−25808 号公報、同61−236664号公報など)が知られている。この方法は炭素繊維が補強骨格を形成するので材質強度の増大が図られるうえ、熱硬化性樹脂がガラス状カーボン組織に転化するため電気や熱に対する伝導性も向上する利点がある。
【0004】
しかしながら、この方法は高価な炭素繊維を原料とする関係で製造コストが増大する欠点があり、また嵩密度、気孔径、気孔率などの制御性に難点がある。そこで、炭素繊維に代えて炭素繊維製造用の有機繊維を用い、これにパルプ、炭素質粉末などを配合して抄紙したシートに有機高分子物質あるいは炭素質粉末を懸濁した有機高分子物質を含浸したのち焼成処理する方法(特開昭61−236664号公報、同61−236665号公報)が提案されている。しかし、炭素繊維製造用有機繊維を原料とする方法では、組織内に局部的に閉塞された空隙部分が形成され易く、均質で制御された気孔構造を得るには困難性がある。
【0005】
これらの難点を解消するために本出願人は、α−セルロースを主成分とする熱揮散性物質を抄紙してシート化する工程と、シートに残炭率40重量%以上の熱硬化性樹脂溶液を含浸する工程と、含浸処理後のシートを50〜150 ℃の温度で半硬化する工程と、半硬化シートを積層して全面を均一加熱しながらシート厚さが70〜20%になるように圧縮する工程と、圧縮シートを非酸化性雰囲気下で800 ℃以上の温度により焼成炭化する工程とからなることを特徴とするポーラスカーボン材の製造方法(特開平3−183672号公報)を開発した。
【0006】
この製造方法によれば、良好な気孔性状と強度特性を備えたポーラスカーボン材を製造することができる。しかしながら、半硬化シートを積層して加熱しながら圧縮する工程において、積層シートによる圧力緩和が生じて加圧力が積層体内部にまで均一に伝達することが困難であり、積層体の表層部と内部では加圧力の相違により組織性状、特に気孔性状に差が生じ易い難点がある。また、加熱時にも熱エネルギーが均等に伝達され難いために積層体の表層部と内部とでは熱硬化性樹脂の硬化速度が異なることとなり、成形体の組織性状、気孔性状に差が生じることとなる。この現象は積層体が厚くなるほど著しくなり、したがって、均質な性状、特に気孔性状の均一性の高い肉厚のポーラスカーボン材を製造することが困難となる問題点がある。
【0007】
そこで、本出願人は上記特開平3−183672号公報の技術を基に気孔性状が良好な肉厚形状のポーラスカーボン材の製造技術として、α−セルロースを主成分とする有機質物60〜90重量部と水溶性抄紙バインダー10〜40重量部を水に分散させて抄紙するシート成形工程、成形シートを残炭率40%以上の熱硬化性樹脂溶液に浸漬処理したのち半硬化し、該半硬化シートの所要枚数を加熱圧縮下に積層成形する一次成形工程、複数枚の一次成形体を前記工程と同一の半硬化シートを接合面に介在させて熱圧縮下に積層成形する二次成形工程、得られた二次成形体を非酸化性雰囲気下で 800℃以上の温度により焼成炭化する炭素化工程とからなる肉厚ポーラスカーボン材の製造方法(特開平5−51280 号公報)を開発提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この特開平5−51280号公報の方法によれば優れた気孔性状と組織強度を備え、50mmを超える肉厚形状のポーラスカーボン材を製造することができる。しかしながら、肉厚成形体である二次成形体は、半硬化シートを積層した一次成形体間に同一の半硬化シートを挟み、複数枚の一次成形体を積層成形することにより作製されるので手間がかかり、また半硬化シートによる一次成形体間の接合が充分でないという難点がある。
【0009】
本発明者らは、上記の特開平5−51280号公報の技術を基にさらに研究を進めた結果、積層体を加圧成形する際の加圧力は、主に積層体表面層の熱硬化性樹脂含浸シートにより圧力緩和されて積層体の表面層と内部とにおける組織性状の相違がもたらされること、更に、積層体を加熱する際の熱エネルギーは、表面層の熱硬化性樹脂含浸シートを急速に加熱することとなり、表層部の熱硬化性樹脂は一度軟化流動化して熱硬化性樹脂含浸シートの空隙を詰めたり、熱硬化性樹脂含浸シートの空隙を小さくしてから硬化すること、を確認した。
【0010】
本発明はこれらの知見に基づいて開発されたものであって、その目的は気孔性状や材質性状の均一性に優れ、肉厚形状、例えば10mmを超える肉厚形状の多孔質炭素材の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による肉厚多孔質炭素材の製造方法は、α―セルロースを主成分とする有機質物質と抄紙バインダーとを水に分散させ、水分散液を抄紙して得られた抄紙シートに熱硬化性樹脂溶液を含浸して半硬化し、半硬化した熱硬化性樹脂含浸シートを所定枚数積層し、積層体を熱圧成形した後、焼成炭化する多孔質炭素材の製造方法において、積層体の上下両面に少なくとも1枚の前記抄紙シートを積層した状態で熱圧成形し、熱圧成形後の積層体の上下両面に積層した各々の抄紙シートの厚みが0.5mm以上に設定することを構成上の特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
α−セルロースを主成分とする有機質物質はシートのフィラー成分となる原料であって、好ましくはα−セルロース分を90%以上含む木材パルプやレーヨンパルプなどのパルプ類が用いられ、パルプ性状としては抄紙成形性から太さ3〜10デニール、長さ3〜10mm程度の繊維形態のものが好ましい。抄紙バインダーは抄紙時に有機質物質のつなぎ材として機能するものであり、例えばアカマツ、エゾマツ、トドマツ、カラマツ、モミ、ツガなどの針葉樹系パルプ類が用いられる。
【0013】
これらのα−セルロースを主成分とする有機質物質及び抄紙バインダーは抄紙性を考慮して適宜な量比に設定して水中に均一に分散させ、水分散液は長網式や丸網式などの抄紙機により抄紙してシート化する。形成されたシートは充分に乾燥したのち熱硬化性樹脂溶液が含浸される。含浸する熱硬化性樹脂は高残炭率、例えば残炭率が40重量%以上のフェノール系、フラン系、ポリイミド系などの樹脂が単独または複数混合して用いられ、これらの熱硬化性樹脂はアセトン、エーテル、エタノールなどの低粘度で浸透性が高く、熱揮散性の有機溶媒に溶解し、熱硬化性樹脂溶液を調製してシートに含浸する。シートへの含浸は、シートを熱硬化性樹脂溶液に浸漬したり、シートに熱硬化性樹脂溶液を塗布するなどの方法で行うことができ、含浸した熱硬化性樹脂は焼成炭化時にガラス状カーボンに転化して多孔質炭素材の骨格を補強して強度向上に機能する。なお、熱硬化性樹脂溶液の樹脂濃度は、含浸性などを考慮して適宜設定する。
【0014】
熱硬化性樹脂溶液を含浸したシートは50〜150℃の温度に加熱して樹脂成分を半硬化する。この加熱処理時に有機溶媒の揮発性物質や半硬化時に生成した水分などが揮散除去されるとともに熱硬化性樹脂がシートに強固に付着保持される。半硬化した熱硬化性樹脂含浸シートは所定枚数を積層し、加熱しながら加圧して樹脂成分を硬化することにより積層体を一体化して成形する。この熱圧成形時の加熱温度は樹脂により異なるが、概ね80〜250℃の温度で加熱硬化し、また圧力は気孔径や気孔率などの気孔性状との関係で適宜な圧縮比となるように設定する。
【0015】
この熱圧成形時に、肉厚の多孔質炭素材を製造するために半硬化した熱硬化性樹脂含浸シートの積層枚数を多くして積層体の厚みを厚くすると、加熱エネルギー及び圧力の伝達が均等に伝わり難く、積層体の表面部と内部では温度および圧縮比が異なることになり、積層体の表面部は内部に比べて高温、高圧縮比の状態で熱圧成形されることとなる。その結果、得られた多孔質炭素材の組織性状は不均質化し易く、例えば表面部では内部に比べて組織性状が緻密化して、気孔径や気孔率が小さく、嵩密度が大きくなる傾向が生じる。
【0016】
そこで、本発明は組織性状が不均質化し易い積層体の表面部に抄紙シートを介在させた状態で熱圧成形するものである。すなわち、積層体の上下両面に夫々少なくとも1枚の抄紙シートを積層した状態で熱圧成形することにより、温度及び圧力が不均等化し易い積層体の表面部を熱硬化性樹脂を含浸し半硬化したシート以外の樹脂含浸されていない抄紙シートで置換、代替させるのである。この積層する抄紙シートの材質は、熱圧成形時の温度、圧力に耐えるものであれば使用することができるが、熱硬化性樹脂が含浸される前の抄紙シート、すなわちα−セルロースを主成分とする有機質物質と抄紙バインダーとを抄紙したシートを用いることが作業上簡便であり、好ましい。
【0017】
熱硬化性樹脂含浸シート積層体の上下両面に積層する抄紙シートの枚数は、積層する抄紙シート1枚当たりの厚さ、熱硬化性樹脂含浸シート積層体の厚さ、熱硬化性樹脂含浸シート積層体の熱圧成形時の圧縮比、多孔質炭素材の厚さなどにより異なるが、熱圧成形後の積層体の上下両面に積層した各々の抄紙シートの厚みが0.5mm以上となるように設定する。0.5mm未満より薄い場合には、多孔質炭素材の気孔性状や材質性状の均一性を保つことが困難となり易いからである。
【0018】
所定の温度、圧力条件で熱圧成形したのち、積層体の上下両面に積層した抄紙シートは積層体の上下両面に積層した各1枚を残し、次いで熱圧成形体は常法により窒素、アルゴン、水素、アンモニアあるいは真空下などの非酸化性雰囲気に保持された加熱炉中で800〜3000℃の温度に加熱して焼成炭化され、肉厚多孔質炭素材が製造される。なお、熱圧成形体に積層した抄紙シートは必要に応じて熱圧成形体の上下両面を機械加工などの除去手段を用いて抄紙シートを除去してもよい。また焼成炭化後に機械加工を行って仕上げ除去することもできる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0020】
実施例1
太さ10デニール、長さ10mmのレーヨンパルプ〔大和紡績(株)製〕80重量部と晒し針葉樹パルプ(NBKP)20重量部を水 500重量部に加え、攪拌混合して均一な水分散液を作成し、長網式抄紙機を用いて抄紙、乾燥して厚さ0.35mm、坪量70g/m2、気孔径 150μm の抄紙シートを得た。この抄紙シートを残炭率45%のフェノール樹脂をメタノールに溶解したフェノール樹脂溶液(樹脂濃度30wt%)中に浸漬して樹脂溶液をシート組織内に充分に含浸し、次いで大気中80℃の温度で含浸樹脂を半硬化した。
【0021】
この半硬化した熱硬化性樹脂含浸シートを 300mm角に裁断し、90枚を積層した積層体の上下両面に、裁断した上記の抄紙シート、すなわちフェノール樹脂溶液を含浸する前の抄紙シートを各6 枚づつ積層し、鉄板に挟持して 150℃に加熱したプレス盤に乗せて圧力 2kg/cm2で圧縮比(圧縮厚さ比)が70%となる熱圧条件下に4 時間保持して樹脂成分を硬化し熱圧成形体を得た。熱圧成形後の抄紙シート6 枚の厚さは1.5mm あった。次いで、上下両面に積層した抄紙シート各1 枚を残したのち、窒素雰囲気に保持した電気炉により2000℃の温度で焼成炭化して、厚さ14mmの多孔質炭素材を製造した。
【0022】
実施例2
熱硬化性樹脂含浸シート積層体の上下両面に積層した抄紙シートを各12枚として、圧縮比(圧縮厚さ比)が70%となる熱圧条件下に4 時間保持して樹脂成分を硬化し熱圧成形体を得た。熱圧成形後の抄紙シート12枚の厚さは3.0mm あった。次いで、実施例1と同一の方法および条件により厚さ14mmの多孔質炭素材を製造した。
【0023】
比較例1
実施例1において、積層体の上下両面に抄紙シートを積層しないほかは、全て実施例1と同一の方法および条件により多孔質炭素材を製造した。
【0024】
実施例3
実施例1のレーヨンパルプの太さを 5デニール、長さを 5mmに変えて抄紙し、厚さ0.34mm、坪量70g/m2、気孔径 100μm のシートを得た。この抄紙シートをフェノール樹脂溶液(樹脂濃度20wt%)中に浸漬して実施例1と同一の方法、条件によって多孔質炭素材を製造した。
【0025】
実施例4
熱硬化性樹脂含浸シート積層体の上下両面に積層した抄紙シートを各12枚として、圧縮比(圧縮厚さ比)が70%となる熱圧条件下に4 時間保持して樹脂成分を硬化し熱圧成形体を得た。熱圧成形後の抄紙シート12枚の厚さは3.0mm あった。次いで、実施例3と同一の方法および条件により厚さ14mmの多孔質炭素材を製造した。
【0026】
比較例2
実施例3において、積層体の上下両面に抄紙シートを積層しないほかは、全て実施例3と同一の方法および条件により多孔質炭素材を製造した。
【0027】
このようにして製造した多孔質炭素材について厚さ方向の表面から 2mmまでの表層部と厚さ方向の中心部 2mmの中央部を夫々機械加工により切り出し、表層部および中央部の平均気孔径、気孔率、嵩密度を測定し、また多孔質炭素材の曲げ強度を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の結果から、実施例の肉厚多孔質炭素材は表層部と中央部における気孔径や気孔率の相違が少なく、また嵩密度の差も僅かであり、均一な気孔性状および材質性状を備えていることが判る。これに対して、比較例の肉厚多孔質炭素材は気孔径、気孔率、嵩密度の表層部と中央部における差が大きく、気孔性状および材質性状の均一性が実施例に比べて劣ることが明らかである。なお、実施例1、2と比較例1、実施例3、4と比較例2との対比から、曲げ強度は実質的に同等レベルにあることが認められる。
【0030】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば表面部から内部まで気孔性状および材質性状の均一性が高く、均質な組織性状を備えた肉厚形状、例えば10mmを越える肉厚多孔質炭素材を製造することができる。したがって、電池用電極や電解用電極などに有用な多孔質炭素材の製造方法として極めて有用である。
Claims (1)
- α―セルロースを主成分とする有機質物質と抄紙バインダーとを水に分散させ、水分散液を抄紙して得られた抄紙シートに熱硬化性樹脂溶液を含浸して半硬化し、半硬化した熱硬化性樹脂含浸シートを所定枚数積層し、積層体を熱圧成形した後、焼成炭化する多孔質炭素材の製造方法において、積層体の上下両面に少なくとも1枚の前記抄紙シートを積層した状態で熱圧成形し、熱圧成形後の積層体の上下両面に積層した各々の抄紙シートの厚みが0.5mm以上に設定することを特徴とする肉厚多孔質炭素材の製造方法。
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