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JP4062050B2 - データ通信装置 - Google Patents

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JP4062050B2
JP4062050B2 JP2002307020A JP2002307020A JP4062050B2 JP 4062050 B2 JP4062050 B2 JP 4062050B2 JP 2002307020 A JP2002307020 A JP 2002307020A JP 2002307020 A JP2002307020 A JP 2002307020A JP 4062050 B2 JP4062050 B2 JP 4062050B2
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  • Cable Transmission Systems, Equalization Of Radio And Reduction Of Echo (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エコーキャンセラ技術を用いて全二重データ通信を行う高速モデム等のデータ通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パケット交換網やISDNのデータ通信網に対し、利用者はコンピュータや端末などを接続し、データ通信網を介して複数の相手と通信を行うことが可能である。電話、電信、パケット交換(データ用)、回線交換(データ用)の4種類に分けられる。交換機を通すデータ接続では、モデム等のデータ通信装置が一対の電話線路等の『加入回線』を介して一般加入電話網(PSTN)の電話局に結合する。
このようなデータ通信における端末インタフェースには、モデム・インタフェースと呼ばれるアナログ・データ伝送用のVシリーズ・インタフェースがある(ITU−T勧告(国際電気通信連合−電気通信標準化部門))。
【0003】
図10は、従来におけるデータ通信装置(モデム)の構成例を示す図である。
送信信号は、送信回路変調器11、ディジタル・アナログ変換器12を経由してハイブリッド回路(2線4線変換回路)13で4線2線変換された後に加入回線21に送出される。また、受信信号は、加入回線21からハイブリッド回路13に入力し、2線4線変換された後、アナログ・ディジタル変換器14、エコーキャンセル部15、受信回路復調器16を経由して受信機に送られる。エコーキャンセル部15は、適応フィルタ17と加算回路18から構成される。
【0004】
2線式の一般公衆回線で全二重通信を行う場合には、図10に示すように、送信信号がハイブリッド回路13で受信パスに回り込み(破線矢印)、エコーとして受信信号に混入される(近端エコー)。なお、加入者回線21の先の交換局が収容している加入者回線で生じるエコー(遠端エコー)もある。これらのエコーは、受信器にとってはノイズであり、受信性能に大きな影響を与える。
低ビットレートでのデータ通信装置では、送信・受信の信号帯域を分離することでエコー信号の影響を受けない全二重通信が可能であるが、高ビットレートの高速モデムは広帯域を使用するので、帯域を分離することができない。そのため、図11に示すように、適応フィルタ17を用いたエコーキャンセル技術を使用して、全二重通信を実現している。ITU−V.34やV.90がその場合に相当する。
【0005】
図11および図12は、従来のデータ通信システムの回線接続の概念図である。図11では、両モデム10,40がアナログモデムの場合であり、図12では、片側のモデム60はディジタル回線に接続されたディジタルモデムの場合である。
図11では、V.34などのアナログモデム規格で接続され、近端エコーと遠端エコーの両方が存在する。すなわち、V.34モデム10から加入者回線21を経由して交換局20A、一般加入電話網(PSTN)30、交換局20Bから加入者回線21を経由して相手側の遠端モデム(V.34)40に接続されている。
一方、図12の場合には、V.90での接続となり、近端エコーのみが存在する。すなわち、V.90モデム50から加入者回線(アナログ)21を経由して交換局20A、一般加入電話網(PSTN)30から更にディジタル回線31を経由して相手側のセントラル・サイトのモデム(ディジタル)60と接続されている。ディジタル回線31との接続では、エコーは生じないので、加入者回線21との間のエコー、すなわち近端エコーのみが存在することになる。
【0006】
一般に知られるように、エコーキャンセラ技術は、送信信号(参照信号)と回り込んだエコー信号から適応的に擬似エコー信号を学習し、学習したエコーパス応答特性を用いて、受信信号から受信信号に含まれたエコー成分のみを除去する。
通常、エコーキャンセラの適応処理機能は、主にトランスバーサル・フィルタと、そのフィルタ係数を逐次更新する係数修正部からなり、トランスバーサル・フィルタのフィルタ係数の推定手法、すなわち係数更新手法としては、一般に、安定性と収束性の点で優れ演算的にも比較的単純な学習同定法が用いられる。
【0007】
また、ITU−V.34やV.90のようなエコーキャンセル技術を用いた通信プロトコルでは、その接続トレーニングシーケンスの中に、エコーキャンセルの学習区間が規定されている。その区間では、半二重通信を行い、エコーキャンセラの適応処理であるフィルタ係数の学習を行うよう勧告化されている。学習後は、送信信号のエコーが除去できるので、全二重通信が可能となる。
しかしながら、エコーキャンセラでエコーを除去しきれなかった場合、『残留エコー成分』として、そのまま受信信号に残り、それはノイズとして受信性能を落とすことになる(ここでは、いずれの回線雑音も残余エコーより小さいものと想定している)。
近年は、一般公衆回線の性能が上り、減衰やノイズ等が減少する一方、通信速度の高速化により、この僅かなエラーが性能面でのボトルネックとなる。特に、V.90のような高速モデムはエコーキャンセラの処理性能が受信性能に大きく影響する。
【0008】
エコーキャンセラの性能が劣化する原因としては、以下のものが挙げられる。
1)適応フィルタの演算精度によるエコー抑圧量の限界値
2)ノイズによる適応限界
3)接続シーケンスにおける短時間での学習限界
4)フィルタTAP長制限による周波数分解能の制限
5)ハイブリッド回路でのインピーダンスミスマッチでエコー量増大・エコースペクトルの有色性
6)バンド端での演算精度の問題
上記の課題に対しては、従来より様々な手法が提案されている。
【0009】
例えば、特開2002−232329号公報に記載の技術では、上記4)の課題に対して、低域周波数帯用のエコーキャンセルを提案し、通常のエコーキャンセラに低域用エコーキャンセラを併用することで、性能改善を実現している。
すなわち、通常のFIRフィルタ(Finite Inpulse Response)に加えて、LPF(Low Pass Filter)とFIRの各フィルタを併用する。LPFをIIRを用いて構成することで、大きいパルスから順次小さなパルスに配列されたスペクトラムのフィルタを形成し、これをFIRにより波形整形し、ゲインや位相を合わせて加算することで、伝達関数をよりよく近似させることができる。
【0010】
また、上記5)に関しては、通常、回線インピーダンスを600Ωで設計すべきところを、実際の回線インピーダンスに合わせて設計することで、インピーダンスミスマッチを少なくし、エコー量を押さえる手法が一般的に行われる。
また、上記6)に関しては、例えば特開平8−237176号公報の技術でその改善手法が考えられている。これは、送信側と受信側の双方にプリエンファシスフィルタを設け、特にモデムの受信器部分はエコーキャンセルを行う前に、受信信号上にプリエンファシスフィルタで受信信号を処理する。
これによれば、回線の周波数特性により、一般的に高域が減衰するため、高域側のバンド端で十分な演算精度が得られない。そのために、送信側と同じ高域通過フィルタ(HPF)を受信部に設けて、バンド端でのエコー成分除去性能を改善している。
【0011】
しかしながら、上記公報による手法は、遠端エコーに関する解決策であって、近端エコーに関しては言及していない。実際、上記5)で述べたように、ハイブリッド回路でのインピーダンスミスマッチにより、近端エコーの増大・エコースペクトルの有色性という問題が発生し、近端エコーキャンセラでもバンド端での演算精度が問題となる。
バンド端での演算精度の問題は、エコーが減衰する場合にのみ発生するのではなく、信号帯域中のエコーレベルとバンド端でのエコーレベルの差が大きい時にも生じ、エコーキャンセルが有効にエコーを除去しない結果となる。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−232329号公報
【特許文献2】
特開平8−237176号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のエコーキャンセルの技術では、有効にエコーを除去することができなかった。
図13は、従来における送信信号の周波数特性を示す図であり、図14はそのエコー信号の周波数特性図であり、図15はエコーキャンセル学習終了時の残留エコー信号の周波数特性図である。
図13の送信信号に対して、図14のエコー信号がハイブリッド回路を介して回り込むことにより受信信号に混入する。適応的なフィルタを用いて受信信号の中からエコー成分のみを除去する処理が行われるが、エコーキャンセル学習が終了した時点での残留エコー信号の周波数特性は図15に示すようになる。
このように、バンド端での残留エコー成分は、V.90での使用受信帯域にノイズとして存在してしまうため、受信性能の妨げとなる。
【0014】
例えば、V.34モデムでの送信信号と受信信号が同一の信号帯域を使用する場合には、両方に同じ帯域制限フィルタを設けることで、ある程度性能の改善を行うことができる。しかし、V.90モデムのように送信信号の信号帯域と受信信号の信号帯域とが異なる場合には、その手法を使用することができない。特に、V.90モデムは受信信号に0〜4kHzまでのほぼ全帯域を使用するので、受信部にエコーキャンセルのための帯域制限(送信信号帯域で制限)フィルタを設けることができない。
また、V.90での使用帯域幅が4kHz付近まであることから、性能向上の目的で16kHzサンプリングで処理し、処理帯域幅を広くする場合があるが、その場合には、さらに送信側との使用帯域幅の違いにより、バンド端でのエコーキャンセル性能の劣化が顕著に現れるため、これが受信性能の妨げとなる。
【0015】
近端エコー量を押さえるために、送信レベルを低くすることで対応することも考えられるが、その場合、送信側の送信データレートを犠牲にすることになる。また、バンド端での演算精度を補うために学習時間を長くすることも考えられるが、データモデムの接続シーケンス中のエコーキャンセル学習時間は短時間であり、その時間の中で学習を終了しなくてはならないため、解決策にはならない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、このような従来の課題を解決し、送信信号の回り込みエコー信号を除去するエコーキャンセルにおいて、エコー信号のバンド端での残留エコー量を押えることで、エコーキャンセル性能を改善し、高速モデムの受信性能を向上させることが可能なデータ通信装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のデータ通信装置は、送信信号を参照信号とし、該参照信号と受信経路に回り込んだエコー信号から疑似エコー信号を適応的に推定し、該疑似エコー信号を位相反転して受信信号に加えて、エコーを除去する適応フィルタを有する全二重データ通信装置において、前記適応フィルタに入力する参照信号に対して、信号帯域のバンド端付近を昇圧するような周波数特性を有するFIR型のバンドエッジ・ブースト・フィルタと、該参照信号に対して処理するFIR型のバンドエッジ・ブースト・フィルタと同じタップ数を持ち、送信信号帯域のバンド端にカットオフ周波数を設定した帯域通過フィルタ特性を有し、かつ送信信号をアナログ信号に変換するディジタルアナログ変換手段の前段に設けられたFIR型帯域通過フィルタとを備えたことを特徴としている(請求項1に対応)。
これにより、処理に抑圧し切れないバンド端での残留エコーをさらに押さえる効果がある。
【0018】
また、前記バンドエッジ・ブースト・フィルタのバンド端昇圧周波数帯域を、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に合わせるため、該帯域に対応する該バンドエッジ・ブースト・フィルタのフィルタ係数を保持し、使用する信号帯域毎に、FIR型バンドエッジ・ブースト・フィルタの係数を切り替える手段を備えたことを特徴としている(請求項2に対応)。
これにより、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に、バンドエッジ・ブースト・フィルタのバンド端昇圧周波数帯域を合わせることができ、適切にバンド端でのエコー成分を除去することができる。
【0019】
また、前記送信信号に施す帯域通過フィルタの係数を、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に、バンド端周波数特性に合わせるため、該帯域に対応する該帯域通過フィルタのフィルタ係数を保持し、使用する信号帯域毎に、FIR型帯域通過フィルタの係数を切り替える手段を備えたことを特徴としている(請求項3に対応)。
これにより、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に、BPF(Bamd Pass Filter)の係数を切り替えることができ、適切にバンド端でのエコー成分を除去することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面により説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1を示すデータ通信装置のブロック構成図(請求項1に対応)である。
図1では、通常のエコーキャンセラの構成に対して、参照信号にバンドエッジ・ブースト・フィルタ19を設けることにより、バンドエッジ・ブースト処理を行う。すなわち、通常構成の送信信号と受信したエコー信号を利用して擬似エコー信号を適応的に推定する適応型フィルタ17に加え、適応フィルタ17の参照信号入力にバンドエッジ・ブースト・フィルタ19を設ける。
送信信号には何も処理を加えないため、送信データ通信に何も影響を与えることはない。すなわち、送信側信号にも、また受信側信号にも、フィルタ処理が挿入されないので、送信データレート・受信データレートに影響を与えずに、バンド端でのエコーキャンセラの演算精度を上げることができ、バンド端での残留エコー成分を押さえることができるので、受信性能が改善される。
【0021】
図4は、前述の図13の送信信号(参照信号)にバンドエッジ・ブースト・フィルタ処理を行った出力信号の周波数特性を示す図である。図6はバンドエッジ・ブースト・フィルタ19の周波数特性を示す図である。
バンドエッジ・ブースト・フィルタ19の周波数特性は、図13に示す送信信号の周波数特性から図6に示すようにバンド端の周波数帯を昇圧するような特性を有している。このときのバンドエッジ・ブースト・フィルタ処理後の参照信号の周波数特性は、図4に示すような特性となり、バンド端で昇圧されていることがわかる。
バンドエッジ・ブースト・フィルタ処理後の参照信号と、前述の図14に示す近端エコー信号から、エコーキャンセルの学習により、図8に示すような残留エコー特性となる。
【0022】
次に、実施形態1の変形例を説明する(請求項2に対応)。
図1に示すデータ通信装置において、適応フィルタ17の参照信号側に挿入するフィルタ19を、FIRフィルタ型のフィルタで構成する。
FIRフィルタは、帰還がなく、出力が入力側に戻されることのないフィルタ、つまり非再帰型フィルタであって、入力側に遅延回路があるものと、出力側に遅延回路があるものとに分けられる。また、このフィルタのインパルス応答は、継続時間が有限であることから、有限インパルス応答型フィルタと呼ばれる。
バンドエッジ・ブースト・フィルタ19をFIRフィルタで構成することにより、直線位相フィルタを使用するので、エコーキャンセラの性能を劣化さないようにすることができる。
【0023】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2を示すデータ通信装置のブロック構成図(請求項3、4に対応)である。
本実施形態2は、図1の構成に加えて、送信信号回路にBPFまたはデイレイ回路20を設けたものである。すなわち、図1のデータ通信装置において、適応フィルタの参照信号側に挿入したFIR型フィルタの1/2タップと同じ遅延時間を送信側に生じさせるものである。これにより、参照側と同じ遅延が生じることとなるため、適応フィルタ17で学習されるエコーパスのインパルス応答に遅延を生じさせないで、適応フィルタ17のタップ長を有効に使用することができる。
【0024】
図2に示すデータ通信装置(モデム)は、送信変調器(Tx)11、D/A変換器(DAC)12、ハイブリッド回路13、A/D変換器(ADC)14、エコーキャンセル部15および受信復調器(Rx)16を備え、さらにバンドエッジ・ブースト・フィルタ19および帯域制限フィルタ(BPF)または遅延項(Delay)20を備えている。
モデムが、ITU−T(国際電気通信連合−電気通信標準化部門)標準V.34、V.90等を備える高速モデムを想定し、実施例としてV.90の場合を考える。また、本実施形態においては、遠端エコーキャンセラも近端エコーキャンセラも、全く同様な扱いが可能であるため、ここでは両方の説明を省略し、V.90を想定した近端エコーのみの場合を考える。
【0025】
次に、実施形態2の別の実施例(請求項4に対応)を説明する。請求項4の発明は、図1の構成(請求項2に対応)に対して、図2に示すように、適応フィルタ17の参照信号に挿入したFIRフィルタ19と同じタップ数のFIR型帯域制限フィルタ20を送信側に挿入する。
これは、上記請求項3の発明における遅延項の代わりに用いるもので、請求項2の発明では抑圧し切れないバンド端での残留エコーをさらに押さえる効果がある。
しかし、帯域制限フィルタ20を送信側に挿入することで、送信データレートに影響を与える可能性がある。従って、帯域制限フィルタ20の特性設計には送信レートに影響を与えないように、送信帯域をできるだけ確保し、バンド端で帯域を制限するようなフィルタ特性を設計する必要がある。
【0026】
(実施形態2の他の実施例)
次に、実施形態2のさらに別の実施例(請求項5に対応)を説明する。
請求項5の発明は、請求項2の発明(図2)において、送信データのシンボルレートに応じてFIR型バンドエッジ・ブースト・フィルタ19の係数を切り替えるものである。
V.34、V.90の接続シーケンスは、Phase1〜Phase4で構成された手順で接続を行う。このとき、エコーキャンセルの学習を行うフェーズの前に、互いに送信シンボルレートを決定するためのフェーズが存在する。この勧告手順に従うと、エコーキャンセルの学習が開始される時点で、送信シンボルレートが決定されているため、決定された送信シンボルレートに応じた信号帯域のバンド端をブーストする係数に切り替えを行う。例えば、シンボルレートに応じた信号帯域毎に部分フィルタを複数備えて、これらの1つを選択切り替えるようにしてもよい。
これにより、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に、バンドエッジ・ブーストフィルタ19のバンド端昇圧周波数帯を合わせることができ、適切にバンド端でのエコー成分を除去することが可能になる。
図3は、異なる2つの送信シンボルレートの場合の信号周波数を示す図である。これから明らなように、2つの信号は、それぞれ帯域が異なっていることがわかる。
【0027】
(実施形態2の他の実施例)
次に、実施形態2のさらに別の実施例(請求項6に対応)を説明する。
請求項6の発明は、請求項4と請求項5の発明において、送信データのシンボルレートに応じて送信信号に挿入されるFIR型帯域制限フィルタ20の係数を切り替えるものである。例えば、シンボルレートに応じた信号帯域毎に部分的な帯域制限フィルタを複数備えて、これらの1つを選択切り替えるようにしてもよい。
前述のように、エコーキャンセルの学習開始前に予め送信シンボルレートは決定され、送信信号帯域が決定されるので、BPF20の係数をその帯域用の係数に切り替えることで、適切にバンド端でのエコー成分を除去することが可能になる。
【0028】
(従来との比較)
従来の技術では、図10に示すように、バンドエッジ・ブースト・フィルタ、帯域制限フィルタ(BPF)または遅延項(Delay)は存在しない。従って、送信変調器11から送信された信号は、D/A変換回路12を通してアナログ信号化され、ハイブリッド回路13にて4線2線変換した後、一般公衆回線21に送出される。そして、送信信号は、電話局のハイブリッド回路にて2線4線変換された後、A/D変換され、相手モデムへ送られていく。この2つのハイブリッド回路において、送信パスから受信パスへの信号の回り込みが発生し、エコーとしてA/D変換回路14に入ることになる。受信信号は、エコーキャンセル部15により加算器18経由で処理され、受信信号から擬似エコー信号を差し引くことによりエコー信号も除去する。
しかしながら、実際には、様々な原因によりエコーを除去できなくなり、残留エコーはノイズとして受信性能に悪影響を与えている。
【0029】
一般的なエコーキャンセル部15では、適応的にエコーパスの伝達関数を推定するため、FIRを用いたエコーキャンセラを構成する。フィルタ係数は、半二重のトレーニング時におけるざん差信号をエラー信号とし、LMS(LeastMean Square)法などを利用してざん差が小さくなるように更新する。
モデムは、勧告で示された接続シーケンスに従って相手モデムとの接続を確立する。接続の初期シーケンスで相手モデムとの情報交換や、回線の特性を把握し、それぞれの送信シンボルレートを決定する。その後、半二重のエコーキャンセルトレーニングシーケンスでエコーパスの伝達関数を推定する。
実際の信号でエコーキャンセル処理を行った場合の特性は、以下のようになる。すなわち、図13が送信信号の周波数特性で、図14が近端エコーの周波数特性で、図15が従来の方法によるエコーキャンセル学習後の残留エコーの特性を示している。図15に示すように、従来の方法では、バンド端で十分なエコーキャンセル処理が行われていないことが明らかである。
【0030】
そこで、本発明においては、図1に示すように、通常のエコーキャンセラの構成に対し、参照信号にバンドエッジ・ブースト処理を行う。この場合、参照信号には何も処理を加えないため、送信データ通信に何等影響を与えることはない。
この時、図2に示すように、送信信号に遅延項を設けた方が良い。遅延だけでは、送信データ通信に何も影響を与えることはない。遅延を設ける理由は、バンドエッジ・ブースト・フィルタ処理によりエコーキャンセルで推定した伝達関数(インパルス応答)に遅延が生じてしまうためであり、推定する伝達関数のタップ長が有限長であるため、タップ長を長くできない場合に、その遅延時間により伝達関数のテール部分が切れてしまうことになる。それにより、エコーキャンセルの学習に悪影響を与える。それを補正するためには、バンドエッジ・ブースト・フィルタ19の1/2タップ長の遅延項を送信信号に設ければよい。
【0031】
図4に示すようなバンドエッジ・ブースト処理後の参照信号と、図14に示す近端エコー信号から、エコーキャンセルの学習により図8に示すような残留エコー特性が得られる。図15で示した従来方法での残留エコー特性は、図8に示すようにバンド端でのエコーキャンセルが有効に働き、改善されていることがよくわかる。
これは、参照信号のバンド端を昇圧したことで、バンド端周波数付近の演算精度が上がったためである。
しかし、未だ、若干、バンド端での残留エコー成分が確認される。
【0032】
次に、図2に示すように、送信信号に帯域制限フィルタ処理を施す。送信信号にフィルタ処理を施すと、送信データ通信に影響を与えるため、使用するBPF20は十分な送信信号帯域を確保し、バンド端より外の領域で帯域をカットするようなフィルタ特性にする。そして、送信データ通信に影響のないことを確認する必要がある。
図5は、送信信号特性が図13のような場合のBPF特性を示す図である。
このとき、帯域制限フィルタ20のタップ数をバンドエッジ・ブースト・フィルタ19のタップ数と同じにすることで、送信信号の遅延項は不要になる。
【0033】
図9は、送信信号に上記のBPF処理を行った場合のエコーキャンセラ学習後の残留エコー特性を示す図である。
送信信号に上記BPF20を挿入した場合のエコーキャンセラ学習後の残留エコー特性は、図9に示す結果となるため、さらにエコーキャンセル性能が改善されていることがわかる。
これは、回り込んだ送信信号エコーのバンド端での微小信号がエコーキャンセル学習での演算誤差の原因となるためで、BPF20により送信信号からバンド端の微小信号成分を抑圧することで、エコーキャンセルの性能を改善することが可能となるためである。
【0034】
上述のバンドエッジ・ブースト・フィルタ19とBPF20のフィルタ特性は、送信信号の信号帯域(バンド端)に合わせる必要がある。
この送信信号帯域は、送信シンボルレートにより異なるため、送信シンボルレートに応じて変更することとなる。
V.34やV.90の方式では、初期接続シーケンス中に回線状況などから送信シンボルレートを決定する。従って、エコーキャンセラの学習開始時には、送信シンボルレートが決定されているため、そのシンボルレートに対応したフィルタ係数を予め保持しておけば、係数の選択で対応可能となる。
【0035】
図5および図7は、異なった信号帯域用の送信BPFの特性を示す図である。
図6よび図16は、異なった信号帯域用のバンドエッジ・ブースト・フィルタ特性を示す図である。
このように、バンドエッジ・ブースト・フィルタ19とBPF20の特性は、送信信号の信号帯域(バンド端)に合わせることにより、少しずつ異なった特性のものを使用する必要がある。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、送信信号の回り込みエコー信号を除去するエコーキャンセルにおいて、エコー信号のバンド端での残留エコー量を押さえることにより、エコーキャンセル性能を改善し、高速モデムの受信性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1を示すデータ通信装置のブロック構成図である。
【図2】 本発明の実施形態2を示すデータ通信装置のブロック構成図である。
【図3】 本発明における異なる2つの送信シンボルレートの信号周波数特性図である。
【図4】 本発明における送信信号にバンドエッジ・ブースト・フィルタ処理を行った出力信号の周波数特性図である。
【図5】 本発明における信号帯域用の送信BPFの周波数特性図である。
【図6】 図4とは異なる信号帯域用のバンドエッジ・ブースト・フィルタの周波数特性図である。
【図7】 図5とは異なる信号帯域用の送信BPFの周波数特性図である。
【図8】 本発明におけるエコーキャンセルの学習による残留エコーの周波数特性図である。
【図9】 本発明におけるBPF処理を行った場合のエコーキャンセラ学習後の残留エコーの周波数特性図である。
【図10】 従来におけるデータ通信装置(モデム)の一例を示すブロック構成図である。
【図11】 従来における両モデムがアナログモデムの場合の回線接続概念図である。
【図12】 従来における片側はディジタルモデムの場合の回線接続概念図である。
【図13】 従来における送信信号の周波数特性図である。
【図14】 従来における送信信号によるエコー信号の周波数特性図である。
【図15】 従来におけるエコーキャンセル学習終了後の残留エコー信号の周波数特性図である。
【図16】 従来におけるバンドエッジ・ブースト・フィルタの周波数特性図である。

Claims (3)

  1. 送信信号を参照信号とし、該参照信号と受信経路に回り込んだエコー信号から疑似エコー信号を適応的に推定し、該疑似エコー信号を位相反転して受信信号に加えて、エコーを除去する適応フィルタを有する全二重データ通信装置において、
    前記適応フィルタに入力する参照信号に対して、信号帯域のバンド端付近を昇圧するような周波数特性を有するFIR型のバンドエッジ・ブースト・フィルタと、
    該参照信号に対して処理するFIR型のバンドエッジ・ブースト・フィルタと同じタップ数を持ち、送信信号帯域のバンド端にカットオフ周波数を設定した帯域通過フィルタ特性を有し、かつ送信信号をアナログ信号に変換するディジタルアナログ変換手段の前段に設けられたFIR型帯域通過フィルタと
    を備えたことを特徴とするデータ通信装置。
  2. 請求項1記載のデータ通信装置において、
    前記バンドエッジ・ブースト・フィルタのバンド端昇圧周波数帯域を、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に合わせるため、該帯域に対応する該バンドエッジ・ブースト・フィルタのフィルタ係数を保持し、使用する信号帯域毎に、FIR型バンドエッジ・ブースト・フィルタの係数を切り替える手段を備えたことを特徴とするデータ通信装置。
  3. 請求項1または2記載のデータ通信装置において、
    前記送信信号に施す帯域通過フィルタの係数を、送信データのシンボルレートに応じた使用信号帯域毎に、バンド端周波数特性に合わせるため、該帯域に対応する該帯域通過フィルタのフィルタ係数を保持し、使用する信号帯域毎に、FIR型帯域通過フィルタの係数を切り替える手段を備えたことを特徴とするデータ通信装置。
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