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JP4061003B2 - 高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材 - Google Patents

高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用部品、建設機械用部品等の機械構造用部品の製造に用いる高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材に関するもので、特に球状化焼鈍後に延性に優れ、かつ、冷間鍛造後に高周波による表面焼入れ性が優れている冷間鍛造用棒線材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用部品、建設機械用部品等の機械構造用部品を製造する構造用鋼材としては、機械構造用炭素鋼材や機械構造用低合金鋼材が用いられている。
これらの鋼材から自動車の各種歯車類、エンジン部品、駆動系部品のような機械構造部品を製造するには、熱間鍛造が施されているが、冷間鍛造へ切り替える傾向が強くなっている。これは、冷間鍛造は、製品の表面肌、寸法精度が良く、熱間鍛造に比べて製造コストが低く、歩留まりも良好であるためである。
【0003】
冷間鍛造工程では、通常、熱間圧延材に球状化焼鈍(SA)を施して冷間加工性を確保した後に、冷間鍛造が施されている。ところが、冷間鍛造では鋼材に加工硬化が生じ、延性が低下して割れ発生や金型寿命の低下を招くことが問題である。特に加工度が大きい冷鍛では、冷鍛時の割れ、つまり鋼材の延性の不足が熱鍛工程から冷鍛工程への切り替えの主たる阻害要因になっていることが多い。
【0004】
一方、球状化焼鈍(SA)は、鋼材を高温加熱して長時間保持する必要があるため、加熱炉等の熱処理設備が必要なばかりでなく、加熱のためのエネルギーを消費するので、製造コストの中で大きなウエイトを占めている。このため、生産性の向上や省エネルギー等の観点から、種々の技術が提案されている。
【0005】
例えば、特開昭57−63638号公報においては、球状化焼鈍時間を短縮するために、熱間圧延後600℃まで4℃/sec以上の速度で冷却して急冷組織とし、スケール付着させた状態で不活性ガス中にて球状化焼鈍し、冷鍛性の優れた線材とする方法や、特開昭60−152627号公報では、迅速球状化を可能にするために、仕上圧延条件を制限し、圧延後に急冷して、微細に分散した初析フェライトに微細パーライト、ベイナイト又はマルテンサイトを混在させた組織とする方法や、特開昭61−264158号公報では、鋼組成の改良、即ち、P:0.005%以下と低P化し、Mn/S≧1.7且つAl/N≧4.0の低炭素鋼とすることにより球状化焼鈍後の鋼の硬さを低下させる方法や、特開昭60−114517号公報では、冷間加工前の軟化焼鈍処理を省略するために、制御圧延を行う方法等が提案されている。
【0006】
これらの従来技術は、いずれも冷間鍛造前の球状化焼鈍の改良、或は省略をする技術であり、加工度が大きい部品において、熱鍛工程から冷鍛工程への切り替えの主たる阻害要因になっている鋼材の延性の不足について、これを改善しようとする技術ではない。
【0007】
また、各種歯車類、エンジン部品、駆動系部品のような機械構造部品は、冷間鍛造後に、耐摩耗性の確保や疲労強度改善のため高周波により表面焼入れを行う必要がある。ところが、一般に鋼材に高周波焼入れ性を確保しようとすると、素材硬さが硬くなるのが通常であり、鋼材の冷間鍛造性と高周波焼入れ性とは相反する性質である。
【0008】
このため、冷間鍛造性と高周波焼入れ性とを兼備した鋼材やその製造方法が種々提案されている。
【0009】
例えば、特公平5−26850号公報では、高炭素鋼を用いて、仕上圧延を650〜750℃で終了し、その後0.2〜1.5℃/secの速さで冷却し、フェライト分率を増加させ、パーライトラメラー間隔を大きくすることにより軟質化して冷間鍛造用高炭素棒線材としている。
【0010】
また、特開平11−217649号公報では、高炭素鋼を仕上温度800〜1000℃で熱間圧延し、800〜500℃の温度範囲を1℃/sec以下で徐冷して冷間加工性と高強度特性を兼備した高周波焼入れ用鋼材とすることが提案されている。
【0011】
これらの提案された技術でも、鋼材に冷間鍛造性と高周波焼入れ性とを兼備させることができるが、いまだ満足できるものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記現状に鑑み、熱間圧延棒線材を球状化焼鈍した後、冷間鍛造により機械構造部品を製造する際に、従来問題となっていた冷間鍛造時に発生する鋼材の割れを防止することができるようにした球状化焼鈍後の延性に優れ、かつ高周波焼入れ性に優れた冷間鍛造用棒線材を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、冷間鍛造用棒線材の冷間加工性について究明した結果、特定の鋼成分を有する棒線材の表面層のみを硬くし、中心部は軟らかい組織とすることにより、球状化焼鈍後の延性に優れ、かつ、高周波焼入れ性に優れた冷間鍛造用棒線材とし得ることを知見して、本発明を完成した。
【0014】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0015】
(1) 質量%として、
C:0.45〜0.6%、
Si:0.01〜0.2%、
Mn:0.2〜0.7%、
Al:0.015〜0.1%、
B:0.0005〜0.007%
を含有し、
Cr:0.15%以下、
P:0.035%以下、
S:0.015%以下、
N:0.01%以下、
O:0.003%以下
に制限し、
残部Fe及び不可避不純物からなる成分の鋼であって、JIS G0558で規定する全脱炭深さ:DM−Tが0.20mm以下であり、さらに表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライトの組織面積率が10%以下で、残部が実質的にマルテンサイト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上からなり、さらに深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域でマルテンサイトとベイナイトの組織面積率の合計が10%以下であり、この領域での平均硬さが表層(表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域)の硬さに比べてHV40以上軟らかいことを特徴とする球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
【0016】
(2) 質量%でさらに、
Ti:0.1%以下
を含有することを特徴とする上記(1)に記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
【0017】
(3) 質量%でさらに、
Mo:0.4%以下
を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
【0018】
(4) 質量%でさらに、
Nb:0.005〜0.1%、
V:0.03〜0.3%
の1種又は2種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の内のいずれか1つに記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
【0019】
(5) 表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のオーステナイト結晶粒度が8番以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)の内のいずれか1つに記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
【0020】
(6) 上記(1)〜(5)の内のいずれか1つに記載の冷間鍛造用棒線材の球状化焼鈍材であって、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のJIS G3539で規定する球状化組織の程度がNo.2以内であり、さらに深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域の球状化組織の程度がNo.3以内であることを特徴とする高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用鋼材。
【0021】
(7) 表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライト結晶粒度が8番以上であることを特徴とする上記(6)に記載の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用鋼材。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明が狙いとする冷間鍛造性に優れ、かつ高周波焼入れ性に優れた冷間鍛造用棒線材の組織、硬さ、延性及び焼入れ性等の機械的性質を達成するのに必要な鋼成分を限定した理由について述べる。
【0024】
C:Cは、機械構造用部品としての強度を増加及び高周波焼入れ性を確保するために必要な元素であるが、0.45%未満では最終製品の強度が不足し、高周波焼入れ性も確保できない。また、0.6%を超えるとむしろ硬くなって冷間加工性の劣化を招くので、C含有量を0.45〜0.6%とした。
【0025】
Si:Siは、脱酸元素として、及び固溶体硬化による最終製品の強度を増加させ、かつ、焼入れ性を与え、焼戻し軟化抵抗を向上させることを目的として添加するが、0.01%未満ではこれらの効果は不充分であり、一方、0.2%を超えるとこれらの効果は飽和し、むしろ硬さの上昇を招き冷間加工性が劣化するので、Si含有量を0.01〜0.2%とした。しかし、Siの上限は0.1%以下とすることが好ましい。
【0026】
Mn:Mnは、高周波焼入れ性の確保に有効な元素であるが、0.2%未満ではこの効果が不充分であり、一方、0.7%を超えるとこの効果は飽和し、むしろ硬さの上昇を招き冷間加工性を劣化させるので、Mn含有量を0.2〜0.7%とした。
【0027】
Al:Alは、脱酸剤として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定し、固溶Bを確保するのに有用である。しかし、Al量が多すぎると、Al23が過度に生成することとなり、内部欠陥が増大すると共に、冷間加工性を劣化することとなる。したがって、本発明ではAlは0.015〜0.1%とした。なお、固溶Nを固定する作用を有するTi無添加の場合には、Alは0.04〜0.1%とすることが好ましい。
【0028】
B:Bは、熱間圧延後の冷却過程でα/γ界面にボロン鉄炭化合物であるFe23(CB)6として析出し、フェライトの成長を促進させて、圧延ままで軟質化し冷間加工性向上に寄与する。また、固溶Bは粒界に偏析し、高周波焼入れ性を向上させると共に、高周波焼入れ材の粒界強度を向上させ、機械部品としての疲労強度と衝撃強度を向上させる効果をもたらす。このため、B含有量を0.0005〜0.007%とした。この範囲外となると上記の効果が得られない。
【0029】
Cr:Crは、鋼中に不純物として含有されることがあるが、セメンタイトを安定化させ高周波焼入れ性を劣化させる元素であるので、Crの許容量を0.15%以下(0%を含む)とした。
【0030】
P:Pは、鋼中に不可避的に含有される成分であるが、Pは鋼中で粒界偏析や中心偏析を起こし、延性劣化の原因となるので、0.035%以下(0%を含む)、好ましくは0.02%以下に抑制することが望ましい。
【0031】
S:Sは、鋼中に不可避的に含有される元素であって、冷間加工性にとっては延性を劣化させる有害な元素であるから、0.015%以下(0%を含む)、好ましくは0.01%未満に抑制する必要がある。
【0032】
N:Nは、鋼中に不可避的に含有される成分であって、Bと反応してBNを形成し、Bの効果を低減させる有害な元素であり、また鋼中のTiと結合してTiNを生成し、硬さを増加させると共に、冷鍛割れの原因となるから、0.01%以下(0%を含む)、好ましくは0.007%以下とする必要がある。
【0033】
O:Oは、鋼中に不可避的に含有される成分であって、Alと反応してAl23を生成し冷間加工性を劣化するので、0.003%以下(0%を含む)、好ましくは0.002%以下に抑制することが望ましい。
【0034】
以上が本発明が対象とする鋼の基本成分であるが、本発明ではさらに以下の元素を含有させることができる。
【0035】
Ti:Tiは、これを添加することにより、TiによりNをTiN、Ti(CN)として固定し、Nを無害化することができ、固溶Nの固定によるBNの析出を防止し、固溶Bを確保することができる。また、Tiは脱酸作用を有する元素である。このため、必要に応じてTi:0.1%以下含有させることとした。Ti:0.1%超となるとTiCの析出硬化が顕著となり、冷間加工性を劣化させるので好ましくない。
【0036】
Mo:Moは、鋼に強度、焼入れ性を与えると共に、高周波焼入れ後の粒界強度を向上させて強度特性を増加させるのに有効な元素であるが、0.4%を超えて添加すると硬さの上昇を招き冷間加工性が劣化する。以上の理由から、その含有量を0.4%以下とした。
【0037】
Nb及び/又はV:Nb、Vは、鋼中のC、Nと結合し、NbN、Nb(CN)、或はVN、V(CN)を形成し、結晶粒の微細化に有効な元素であるので、Nb、Vの1種又は2種を含有させることとした。しかしながら、Nb含有量が0.005%未満、V含有量が0.03%未満では、その効果が不充分であり、一方、Nb含有量が0.1%超、V含有量が0.3%超となると、その効果は飽和し、むしろ冷間加工性を劣化させるので、これらの含有量をNb:0.005〜0.1%、V:0.03〜0.3%とした。
【0038】
次に、本発明の棒線材の組織について説明する。
本発明者は、鋼材の成分を調整して高周波焼入れ性を付与した冷間鍛造用棒線材の延性向上法について研究したところ、球状化焼鈍材の延性を向上させるためには、球状化焼鈍組織が均一で微細であることがポイントであること、そのためには、熱間圧延後の組織のフェライト分率を特定量以下に押さえ、残りを微細なマルテンサイト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上の混合組織とすることが有効であることを明らかにした。そのため、熱間仕上圧延後に鋼材を急冷し、その後、球状化焼鈍すると棒線材の延性が向上する。しかしながら、棒線材の全断面を急冷して、硬い組織とすると、焼き割れの懸念が生じると共に、球状化焼鈍後も硬さが低下せず、冷間変形抵抗が増加し、冷鍛金型寿命を劣化させる。この問題を解決するためには、熱間仕上圧延後に棒線材の表面層を急冷し、その後鋼材の顕熱によって復熱させることにより、表面層に生成したマルテンサイトを焼き戻して、球状化焼鈍前に事前に硬さを軟らかくしておき、さらに内部は冷却速度が遅いために軟らかい組織とすることが有効であり、これにより、球状化焼鈍後の延性に優れ、冷間変形抵抗も低い冷間鍛造用棒線材となることを知見した。
【0039】
図1は、本発明の54mmφ冷間鍛造用棒鋼の表面からの距離(mm)と硬さ(HV)との関係を示す図である。
【0040】
図1に示すように、表面の平均硬さはHV247で中心の平均硬さはHV168であり、中心に向かって硬さが低下している。
【0041】
また、組織については、図2の(a)表面層、(b)中心の顕微鏡写真(×400)に示すように、表面層は焼戻しマルテンサイト、中心はフェライトとパーライトがそれぞれ主体である組織となっている。
【0042】
図1の棒鋼を740℃で4時間保持した後に、約6℃/時間の冷却速度で徐冷する球状化焼鈍を施した後の組織については、図3の(a)表面、(b)中心の顕微鏡写真(×400)に示すように、表面で球状化の程度が良好で均一な組織になっている。
【0043】
この球状化焼鈍した棒鋼を用いて冷間鍛造により直径15mmの歯車を製造したところ、中間焼鈍することなしに製品とすることができた。
【0044】
さらに、冷間鍛造で製造した歯車の高周波焼入れ性について調査した。
【0045】
図5は、高周波焼入れ後の歯車の硬さ分布を示す図である。
【0046】
図4に示すように、表面層の硬さはHV約700、中心部の硬さはHV約200となっていて、表面層が高周波焼入れにより硬化して耐摩耗性に優れ、中心部は延性に優れた歯車となっていた。
【0047】
そこで、本発明では、高周波焼入れ性を確保しつつ、冷間鍛造を行っても割れが生じない条件となる表面層の組織及び表面層と中心部の硬度との関係について、実験・研究を進めた。
【0048】
その結果、表面層が焼戻しマルテンサイト組織(実質的にマルテンサイト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上からなる相中にフェライトが存在する組織)となっているものであっても、高周波焼入れ性を良好ならしめるためには、JIS G0558で規定する全脱炭深さがDM−Tで0.20mm以下であることが必要であり、全脱炭深さがDM−Tで0.20mm超となると、表面層の高周波焼入れ性が劣化する。全脱炭深さをDM−Tで0.20mm以下とするためには、熱間圧延時に加熱雰囲気を制御すると共に、仕上圧延後、表面を急冷することが有効であることを見いだした。また、冷鍛性を良好ならしめるためには、表面から棒線材の直径×0.15の深さまでの領域のフェライトの組織面積率が10%以下、加工度の大きい鍛造の場合では好ましくは5%以下としなければ冷間鍛造時の割れ発生を防止できないこと、さらに、冷間鍛造時の延性を確保して割れ発生を防止するには、深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域でマルテンサイトとベイナイトの組織面積率の合計が10%以下、加工度の大きい鍛造の場合では好ましくは5%以下とすること、さらに、冷間鍛造時の延性を確保して割れ発生を防止し、かつ変形抵抗の増加を防止するには、圧延後の棒線材の段階で表層組織を焼戻しマルテンサイト組織分率がより高い微細均一な組織とすること、そのためには圧延後の棒線材の段階で表層と内部に硬さの差をつけることが必要であり、深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域の平均硬さ(HV)が、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域の平均硬さ(HV)に比べてHV40以上、加工度の大きい鍛造の場合では好ましくはHV60以上軟らかくすることが必要条件であることを見出した。
【0049】
そして、上記に述べた棒線材に球状化焼鈍(SA)を施すと、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のJIS G3539で規定する球状化組織の程度がNo.2以内であり、さらに深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域の球状化組織の程度がNo.3以内である延性に優れた冷間鍛造用棒線材が得られる。この球状化焼鈍した棒線材は、真歪みが1を超える加工度の大きい据え込み試験を行っても、冷間鍛造割れが発生しないことを確認した。なお、球状化焼鈍としては、従来公知の球状化焼鈍方法を適用することができる。
【0050】
また、延性の向上に寄与する表面層の結晶粒度については、球状化焼鈍前では、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のオーステナイト結晶粒度(JIS G0551)を8番以上とすれば良いが、より高い特性を要求される場合には9番以上、さらに高い特性を要求される場合には10番以上とするのが好ましい。そして、球状化焼鈍後においては、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライト結晶粒度(JIS G3545)を8番以上とすれば良いが、より高い特性を要求される場合には9番以上、さらに高い特性を要求される場合には10番以上とするのが好ましい。
【0051】
上記に規定する結晶粒度以下となると十分な延性が得られない。
【0052】
次に、本発明の冷間鍛造用棒線材の製造方法について説明する。
【0053】
図5は、本発明に係る圧延ラインを例示する図である。
【0054】
図5に示すように、請求項1〜4に規定する成分の鋼を加熱炉1でJIS G0558で規定する全脱炭深さ:DM−Tが0.20mm以下となるように加熱雰囲気を制御して加熱し、熱間圧延機2により最終仕上圧延出側の棒線材表面温度を700〜1000℃とする低温仕上圧延を行う。出側温度は温度計3により測定する。次いで、仕上圧延された棒線材4をクーリングトラフ5で表面に注水することにより急冷して(例えば平均冷却速度30℃/sec以上とすることが好ましい)表面温度を600℃以下、好ましくは500℃以下、さらに好ましくは400℃以下にし、表面をマルテンサイト主体の組織とする。クーリングトラフ通過後棒線材中心部の顕熱により表面温度が200〜700℃となるように復熱させ(温度計6で測定)、表面を焼戻しマルテンサイト主体の組織とする。本発明では、この急冷−復熱の工程を少なくとも1回以上施すものであり、これにより延性を著しく良くすることができる。
【0055】
鋼材表面温度を700〜1000℃とするのは、低温圧延により結晶粒を微細化でき、急冷後の組織を微細化できるからである。即ち、表面層のオーステナイト結晶粒度は、1000℃以下では8番、950℃以下では9番、860℃以下では10番となる。しかし、700℃未満となると表面層をフェライトの少ない組織とすることが困難なので、700℃以上とする必要がある。
【0056】
なお、製造する対象物は本発明と異なるが、このような直接表面焼入方法(DSQ)及び装置は、特開昭62−13523号公報や特開平1−25918号公報に開示されているように公知のものである。
【0057】
図6は、棒線材の表面層と中心部の組織を説明するためのCCT曲線を示す図である。
【0058】
図6に示すように、低温仕上圧延された棒線材を急冷し、その後復熱させると、表面層7は冷却速度が速いので焼戻しマルテンサイト主体の組織となるが、中心部8は表面層に比べて冷却速度が遅いためフェライトとパーライトの組織となる。
【0059】
急冷により表面温度を600℃以下にし、その後顕熱により表面温度を200〜700℃に復熱させるのは、表面層を硬さを低減した焼戻しマルテンサイト主体の組織にするためである。
【0060】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0061】
表1に示す鋼材を表2に示す圧延条件で、棒鋼・線材に圧延した。圧延材のサイズは、直径40mm〜54mmである。その後、球状化焼鈍を行った後、高周波焼入れ・焼戻し処理を行った。圧延後の棒線材の状態、球状化焼鈍を行った後の段階、及び焼入れ・焼戻し処理を行った後の段階において、組織・材質を調査した。結果を表3に示す。本願請求項記載の「表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域」について、表3では単に「表層」(例:表層硬さ)と記載した。また、本願請求項記載の「深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域」について、表3では単に「内部」(例:内部硬さ)と記載した。変形抵抗は、直径は圧延材のサイズで、高さが直径の1.5倍の円柱状の試験片を据え込み試験を行うことにより計測した。また、限界圧縮率は、上記の円柱状試験片の表面に深さ0.8mm、先端曲率半径0.15mmに切欠きをつけた試験片を用いて据え込み試験を行うことにより求めた。また、表層部相当位置から、引張試験片を切り出し、引張試験を行い、表層部の引張強度と延性の指標である絞りを求めた。高周波焼入れは周波数30kHzの条件で行った。焼戻しは170℃×1時間の条件である。
【0062】
【表1】
Figure 0004061003
【0063】
【表2】
Figure 0004061003
【0064】
【表3】
Figure 0004061003
【0065】
表3から明らかなように、本発明例は同一炭素量の比較例に比較して、鋼材の延性の指標である限界圧縮率と絞りが顕著に優れており、変形抵抗に特に問題はなく、また棒線材の全脱炭も少なく高周波焼入れ後の硬さも比較例に比べて十分な硬さが得られている。
【0066】
【発明の効果】
本発明の冷間鍛造用棒線材は、球状化焼鈍後の冷間鍛造において、従来問題となっていた冷間鍛造時に発生する鋼材の割れを防止することを可能にした球状化焼鈍後の延性に優れた冷間鍛造用棒線材であり、かつ高周波焼入れ性にも優れている。このため高周波焼入れ部品の製造に際して、加工度が大きい鍛造部品についても冷間鍛造工程で製造できるので、生産性の大幅な向上及び省エネルギーが達成できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の54mmφ冷間鍛造用棒鋼の表面からの距離(mm)と硬さ(HV)との関係を示す図である。
【図2】棒鋼の(a)は表面、(b)は中心の顕微鏡写真(×400)である。
【図3】図1の棒鋼を球状化焼鈍した後の棒鋼の(a)は表面、(b)は中心の顕微鏡写真(×400)である。
【図4】高周波焼入れ後の歯車の硬さ分布を示す図である。
【図5】本発明に係る圧延ラインを例示する図である。
【図6】棒線材の表面層と中心部の組織を説明するための(a)はCCT曲線を示す図、(b)は冷却−復熱後の棒線材の断面の組織を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 熱間圧延機
3 温度計
4 棒線材
5 クーリングトラフ
6 温度計
7 表面層
8 中心部

Claims (7)

  1. 質量%として、
    C:0.45〜0.6%、
    Si:0.01〜0.2%、
    Mn:0.2〜0.7%、
    Al:0.015〜0.1%、
    B:0.0005〜0.007%
    を含有し、
    Cr:0.15%以下、
    P:0.035%以下、
    S:0.015%以下、
    N:0.01%以下、
    O:0.003%以下
    に制限し、
    残部Fe及び不可避不純物からなる成分の鋼であって、JIS G0558で規定する全脱炭深さ:DM−Tが0.20mm以下であり、さらに表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライトの組織面積率が10%以下で、残部が実質的にマルテンサイト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上からなり、さらに深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域でマルテンサイトとベイナイトの組織面積率の合計が10%以下であり、この領域での平均硬さが表層(表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域)の硬さに比べてHV40以上軟らかいことを特徴とする球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
  2. 質量%でさらに、
    Ti:0.1%以下
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
  3. 質量%でさらに、
    Mo:0.4%以下
    を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
  4. 質量%でさらに、
    Nb:0.005〜0.1%、
    V:0.03〜0.3%
    の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜3の内のいずれか1つに記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
  5. 表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のオーステナイト結晶粒度が8番以上であることを特徴とする請求項1〜4の内のいずれか1つに記載の球状化焼鈍後の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用棒線材。
  6. 請求項1〜5の内のいずれか1つに記載の冷間鍛造用棒線材の球状化焼鈍材であって、表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のJIS G3539で規定する球状化組織の程度がNo.2以内であり、さらに深さが棒線材半径×0.5から中心までの領域の球状化組織の程度がNo.3以内であることを特徴とする高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用鋼材。
  7. 表面から棒線材半径×0.15の深さまでの領域のフェライト結晶粒度が8番以上であることを特徴とする請求項6に記載の高周波焼入れ性と冷鍛性に優れた冷間鍛造用鋼材。
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