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JP4048579B2 - 冷媒流路を含む熱消散体とその製造方法 - Google Patents

冷媒流路を含む熱消散体とその製造方法 Download PDF

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JP4048579B2
JP4048579B2 JP23220097A JP23220097A JP4048579B2 JP 4048579 B2 JP4048579 B2 JP 4048579B2 JP 23220097 A JP23220097 A JP 23220097A JP 23220097 A JP23220097 A JP 23220097A JP 4048579 B2 JP4048579 B2 JP 4048579B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷媒流路を含む熱消散体に関し、特に、多量の熱を生じる半導体装置の冷却基板や高エネルギ光の透過窓として好ましく用いられ得る熱消散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信に使用される半導体レーザは、長距離伝送などの要求の高まりに応じて、その出力の増大が急速に進んでいる。それに伴って、半導体素子自体の発熱量も急増している。また、携帯用情報システム機器の性能向上や小型化は、これらの機器内に内蔵されている半導体素子における単位表面積あたりの発熱量の急速な増大を招いている。
【0003】
現在、このような半導体素子用の放熱基板として主に用いられているアルミナなどの材料では、上記のような高性能の半導体素子を実装する場合に、放熱特性が十分ではないことが問題になってきている。すなわち、従来技術による放熱基板材料においては、放熱基板自体の固有の熱抵抗が大きすぎて、半導体素子の発熱を十分に周囲に放散させることができなくなっている。この問題を解決するためには、アルミナなどの従来の材料に代えて、より高熱伝導性の材料を用いることが有効であり、現存する物質中で最も熱伝導率の高いダイヤモンドも半導体レーザダイオードなどの放熱基板として使われ始めている。
【0004】
他方、シンクロトロン放射光などの大規模放射光実験装置に使用される窓材料に代表される各種光学窓材においては、その透過光強度や使用される環境に関する要求が益々厳しくなる傾向にある。したがって、窓材料の機械的強度や放射線に対する耐久性などをはじめとする各種物性に関する要求が今後益々厳しくなることが予想される。
【0005】
各種光学窓材として用いられる材料としては、たとえばBe,Si,ZnSe,NaClなどが挙げられるが、これらの窓材料の熱伝導率は一般に非常に小さい。したがって、これらの窓材に大きなエネルギの光を照射すれば、窓材自体の被照射面の温度が上昇して、溶解、変質、破損などの問題が生じるので、これらの窓材を使用し得る光エネルギレベルが限られている。
【0006】
他方、ダイヤモンドは、真空紫外線から可視光線や赤外線まで非常に広い範囲の光を透過することができ、優れた光学窓材料である。しかし、これを窓材として使用する場合、一般に冷却は窓の周囲からしか行なうことができない。したがって、窓のサイズが大きくなるにつれて、ダイヤモンドの窓材の場合でも、冷却が不十分になることが予想される。
【0007】
ところで、放熱基板が輸送する熱は、最終的には外界の空気や水になど伝達されて排出されなければならない。同様に、窓材についても、最終的には外界の空気や水に熱を排出する必要がある。放熱基板と窓材のいずれについても、それらにかかる熱負荷が大きくなるに従って高熱伝導性材料を使用しなければならなくなることはもちろんであるが、伝導された熱を効率よく基板や窓から取去ってやる必要がある。そのために、放熱基板の裏面にフィンや冷媒用配管を取付けるなどして、放熱面積や放熱効率の増大を図る工夫がなされている。しかし、基板の裏面に冷却配管を取付ければ、その取付部に付加的な熱抵抗が入ることが避けられず、フィンでは冷却効率が十分ではない。また、窓材の場合には、裏面に冷却配管を取付けることは、光透過性と両立させる上で問題がある。
【0008】
特開平4−273466によれば、複数のダイヤモンド基板を積層した3次元集積回路基板において、基板の側縁部で厚さ方向に貫通する孔を設けて冷媒を流す構造が提案されている。しかしながら、この構造では、基板の中央付近(実際には最も温度が上昇すると予想される部分)が冷媒の通過孔から最も離れており、熱消散効率が悪い。
【0009】
特開平8−227953と特開平8−227956においては、基板面に平行に冷媒を通過させるための流路を含む冷却基板とその製造方法が開示されている。この冷却基板の製造においては、10W/cm・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性物質の薄板(たとえばダイヤモンド薄板)の一主面に、レーザ光線による加工、選択気相成長または選択エッチングによって、冷媒用溝が形成される。その高熱伝導性物質薄板は冷媒用溝の形成された面が基材に接着され、これによって冷却基板が得られる。なお、冷媒用溝の形成された高熱伝導性物質薄板が接着される基材として、もう1つの高熱伝導性物質薄板を用いることもできる。しかし、このような冷却基板中には接着剤が介在し、それは冷却基板の熱伝導性や光透過性を低下させる。また、その接合工程において、接着剤が冷媒用溝内に流入するおそれがあり、製品歩留りが低くなる。さらに、冷媒用溝を選択気相成長や選択エッチングによって形成する場合には、マスクの形成や除去に手間がかかる。
【0010】
特開平8−293573および特開平8−325097では、内部に冷媒を通過させるための通路組織を有する超小型冷却装置および電子部品用複合体とそれらの製造方法が提案されている。通路組織は、線状の凹所を有する基板とこれらの凹所を外界に対して覆う被覆層により形成される。被覆層は電気絶縁性でかつ高熱伝導性であり、具体的には気相合成ダイヤモンド層が提案されている。しかし、これらの先行技術においては、凹所中にも被覆層が入り込んで、その凹所が埋まってしまうことがあるという問題がある。また、冷媒の流路の内壁の大部分が熱伝導率の低い基板であり、熱抵抗が大きいものである。さらに、基板の光透過性については何ら言及されていない。
【0011】
J.Electrochem. Soc.,vol.138, 1991, pp.1706-1709 では、冷媒を流通させるためのマイクロチャンネルを有するダイヤモンドヒートシンクが開示されている。このダイヤモンドヒートシンクにおいては、Si基板上に形成された溝状のマイクロチャンネルの内壁上にSiO2 を形成して、その上のダイヤモンド成長を抑制することによってマイクロチャンネルが埋まらないようにしている。ダイヤモンド合成を80時間程度続けることによって、ダイヤモンド層でマイクロチャンネルにほぼ蓋をすることができると述べられている。しかし、溝状マイクロチャンネルの開口部で横断方向に成長したダイヤモンド層が完全には接合して一体化しないことも多く、工業的には冷媒の漏れなどにより製品歩留りが低下する。また、この場合にも冷媒用流路として基板側に溝を形成しているので、特開平8−293573と同様に熱抵抗が大きいという問題を有している。さらに、基板の光透過性については何ら考慮されていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の放熱基板や高エネルギ光用窓においては、それらの放熱特性に限界があった。また、冷媒用流路を含む放熱基板においては、流路の取付部の熱抵抗や製造プロセスの問題などがあって、放熱特性の向上にもやはり限界がある。さらに、冷媒用流路を含む放熱基板を窓材に適用する場合、従来の技術では、高い放熱特性を実現しつつ広い波長範囲の光を広い面積で透過させ得る窓材を得ることも困難である。
【0013】
これらの先行技術の課題に鑑み、本発明は、優れた冷却特性を有する熱消散体とその製造方法を提供することを目的としている。本発明はまた、優れた光透過性をも有する熱消散体とその製造方法を提供することをも目的としている。
【0014】
本発明の1つの態様による冷媒流路を含む熱消散体は、高熱伝導性基板と蓋と高熱伝導性カバー層とを含み、基板の一主面には冷媒を流通させるための冷媒用溝が形成されており、蓋は冷媒用溝上に配置されてその冷媒用溝を封じており、カバー層は蓋および基板の一主面を覆っており、基板、蓋およびカバー層のいずれもがダイヤモンドで形成されていて、それらのいずれの相互界面にも実質的にダイヤモンド以外の物質が存在していないことを特徴としている。
【0015】
本発明のもう1つの態様による熱消散体の製造方法は、ダイヤモンドからなる高熱伝導性基板を用意する工程と、その基板の一主面に冷媒を流通させるための冷媒用溝を形成する工程と、冷媒用溝上にダイヤモンドからなる蓋を配置してその冷媒用溝を封じる工程と、基板の上記一主面と蓋を覆うようにダイヤモンドからなる高熱伝導性カバー層を形成する工程とを含んでいることを特徴としている。
【0016】
このような本発明によれば、冷媒用溝は蓋によって封じられているので、カバー層が冷媒用溝を埋めるおそれがない。また、基板、蓋およびカバー層の相互の界面に接着剤が介在していないので、熱抵抗の小さな優れた熱消散体が得られる。さらに、基板、蓋およびカバー層のいずれもが透光性材料で形成することができ、冷媒用溝が占める領域を一定割合以下に限定することによって、優れた熱消散性と透光性を兼ね備えた高エネルギ光用窓を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1、図2および図3において、本発明のいくつかの実施の形態による冷媒流路を含む熱消散体が模式的な断面図で示されている。なお、本願の各図において、同一の参照符号は同一部分または類似部分を表わしている。
【0018】
図1においては、熱消散体10は高熱伝導性基板11を含んでいる。基板11の上面には冷媒を流出させるための冷媒用溝15が形成されている。冷媒用溝15は、蓋12によって封じられている。そして、高熱伝導性カバー層13は、蓋12と基板11の上面を覆っている。
【0019】
図2の熱消散体10においても、高熱伝導性基板11の上面には冷媒用溝15が形成されている。しかし、図2の熱消散体10においては、冷媒用溝15の上部に、さらに蓋12を位置決めして受入れるための蓋用溝14が形成されている。
【0020】
図3の熱消散体10は、図2の場合と同様に蓋用溝14を有している。しかし、図3の熱消散体においては、蓋用溝14が蓋12の厚さに等しい深さを有している。したがって、蓋用溝14内に受入れられた蓋12の上面は基板11の上面と同一平面を形成している。
【0021】
図1、図2および図3に示されているような高熱伝導性基板11は、本発明の目的からして、できるだけ高い熱伝導率を有することが好ましく、10W/cm・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。このような基板材料として、具体的には天然ダイヤモンドや高圧合成ダイヤモンドなどが挙げられるが、特に気相合成ダイヤモンドは大面積でかつ低コストに高熱伝導性の基板を形成し得るので好ましい。基板11は薄すぎれば機械的強度が低くなるので好ましくないが、逆に厚すぎても基板のコストが上がり、また厚さ方向の熱伝導距離も大きくなるので好ましくない。さらに、基板11が厚すぎれば、熱消散体10を窓として利用する場合に、光透過率が低下する問題も生じる。したがって、基板11の厚さは、0.03mm以上で5mm以下であることが好ましく、0.07mm以上で2mm以下であることがより好ましい。また、高熱伝導性基板11は、半導電性または導電性であってもよいが、絶縁性であることが好ましい。その抵抗率は、1×108 Ωcm以上であることが好ましく、1×109 Ωcm以上であることがより好ましい。
【0022】
高熱伝導性カバー層13は、基板11の上面および蓋12の全体を覆うように設けられる。高熱伝導性カバー層13は、高い熱伝導率を有すべきことはもちろんであるが、高熱伝導性基板11に設けられた冷媒用溝15中に流される冷媒が漏れないようにシールすることも必要であり、基板11に対して良好な密着性で形成されることが必要である。そのためには、気相合成法によって得られるダイヤモンド層が最も適している。カバー層13は、薄すぎれば冷媒用溝15を完全にシールすることが難しくなり、逆に厚すぎればコストが高くなる。したがって、カバー層13の厚さは、0.02mm以上で0.4mm以下であることが好ましく、0.05mm以上で0.35mm以下であることがより好ましい。
【0023】
蓋12は冷媒用溝15の上部開口を封じるように配置され、その上に形成される高熱伝導性カバー層13によって冷媒用溝15が埋まらないようにするために必要とされる。蓋12は、その上に高熱伝導性カバー層13を密着性よく形成し得る材料であることが好ましく、かつ高い熱伝導性を有することが好ましい。そのためには、気相合成法によって得られるダイヤモンド板が最も適している。蓋12は、薄すぎれば機械的に弱くなる。逆に蓋12が厚すぎれば、蓋用溝14が形成されていない場合に、基板11の上面と蓋12を覆うカバー層13の上面の凹凸が激しくなる。また、蓋12が厚すぎれば、蓋用溝14を設ける場合にも、図3に示されているような最も好ましい形態である蓋12の厚さに等しい深さを有する蓋用溝14を形成することが難しくなる。したがって、蓋12の厚さは、0.02mm以上で0.5mm以下であることが好ましい。蓋12の幅は、封じられるべき冷媒用溝15の幅より大きくなければならない。しかし、蓋12の幅が大きすぎてもカバー層13による冷媒用溝15のシールがうまく行なわれないので、蓋12の幅は冷媒用溝15の幅より5mmを超えて大きくないことが好ましい。
【0024】
冷媒用溝15は、熱消散体10の主面に平行に冷却用媒体を流通させるために設けられる。冷媒用溝15は深いほど熱交換率が上がるが、深すぎれば基板11の機械的強度を低下させるので好ましくない。したがって、冷媒用溝15の深さは20μm以上であることが好ましくさらに50μm以上であることがより好ましいが、高熱伝導性基板11の厚さの90%以下であることが好ましくさらに80%以下であることがより好ましい。冷媒用溝15の幅も、熱交換率の観点からは広いほど好ましいが、広すぎれば基板11の機械的強度や窓としての光透過特性に悪影響を及ぼす。したがって、冷媒用溝15の幅は20μm以上で10mm以下であることが好ましく、40μm以上で2mm以下であることがより好ましい。また、冷媒用溝15の幅aとそれらの間隔b(図1参照)の比は、0.02≦(a/b)≦50の範囲内にあることが好ましく、0.04≦(a/b)≦25の範囲内であることがより好ましい。冷媒用溝15は、長方形の断面形状で形成することができる。その場合、冷媒用溝の幅aと深さc(図1参照)の比は、0.05≦(a/c)≦100の範囲内にあることが好ましく、0.1≦(a/c)≦50の範囲内にあることがより好ましい。
【0025】
ただし、冷媒用溝15の最適な幅、間隔、深さ等については、熱消散体10にかけられる熱負荷や機械的負荷に依存して選択される。また、冷媒用溝15の断面形状は必ずしも長方形である必要はなく、望まれるならば、半円形、半楕円形、またはその他の任意の形状で形成されてもよいことはいうまでもない。さらに、冷媒用溝15の幅a、間隔bおよび深さcの値は一定である必要はなく、上述の範囲内で変化させられてもよい。冷媒用溝15が基板11の上面を占める割合は、2〜90%の範囲内にあることが好ましく、10〜80%の範囲内にあることがより好ましい。冷媒用溝15の側面が基板の上面に対する法線とのなす角(テーパ角)は30°以下であることが好ましい。
【0026】
基板11上に設けられる冷媒用溝15の分布密度は、熱消散体10にかかる熱負荷の分布に応じて適宜に調節することができる。たとえば、熱消散体10上に搭載される電子装置において最も発熱する部分または最も低温であるべき部分が最も効率的に冷却されるように冷媒用溝15を形成することが好ましい。
【0027】
冷媒用溝15の内壁は良好な濡れ性を有することが好ましく、その内壁上に1nm以上で1μm以下の厚さの非ダイヤモンド炭素層(たとえば、グラファイトや非結晶質カーボンからなる層)が形成されてもよい。そのような非ダイヤモンド炭素層は、不活性ガス雰囲気のような非酸化性雰囲気中でダイヤモンド基板11を1000〜1500℃の範囲内の温度において30分から10時間(たとえば1時間)の間加熱することによって形成することができる。この場合に、冷媒用溝15の内壁以外の基板11の表面にも非ダイヤモンド炭素層が形成されるが、これらは研磨などによって除去することができる。なお、非ダイヤモンド炭素成分の有無は、たとえばラマン分光法によって評価することができる。
【0028】
上述のように、冷媒用溝15の内壁は冷媒に対して良好な濡れ性を有することが好ましく、冷媒の濡れにおける接触角は通常は65°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。気相合成ダイヤモンドの表面には多くの場合に水素原子が存在しているので、このままでは水などの冷媒を弾く傾向にある。このような場合、水素原子に代えて酸素原子を含む親水基(たとえばOH基)を付与することによって、ダイヤモンド表面の親水性を高めることができる。そのためには、たとえば大気中のような酸化雰囲気中で、500〜800℃の範囲内の温度で10分から10時間の範囲内の時間においてアニールするか、または酸素もしくは酸素を含む気体のプラズマで処理すればよい。
【0029】
蓋12は、図1に示されているように、冷媒用溝15の上部開口を封じるように配置される。なお、蓋12の上面と側面との間の角部は緩やかに面取りしておくことが好ましい。これは、高熱伝導性カバー層13を形成するときに蓋12の角部においてそのカバー層13の品質が低下しやすく、その角部の面取りがカバー層13の質の低下を低減させる効果を生じるからである。
【0030】
冷媒用溝15を封じるように蓋12を配置するとき、図2に示されているように冷媒用溝15の上部に重ねて蓋用溝14が設けられていることが好ましい。このような蓋用溝14によって、蓋12の位置決めが容易になるとともに、配置された蓋12が安定化され、熱消散体10の製品歩留りが飛躍的に向上する。また、蓋用溝14が蓋12の厚さと等しい深さを有することがさらに好ましい。そのような蓋用溝14を設けることによって、配置された蓋12の上面と基板11の上面が同一平面を形成し、それらを覆う高熱伝導性カバー層13の上面の凹凸を低減することが可能となり、カバー層13の表面研磨工程が容易になる。
【0031】
高熱伝導性基板11、蓋12および高熱伝導性カバー層13は、すべてが気相合成ダイヤモンドで形成されることが好ましい。そうすれば、実質的に不純物を含まないで高熱伝導性を有しかつ非常に高い光透過率をも有する熱消散体10を得ることができる。このような熱消散体は、高熱抵抗層を含んでいなくて非常に優れた放熱冷却特性を有する冷却基板として用いることができ、また、広い面積において広い波長範囲の光に関して良好な透過性を有しかつ優れた熱消散特性を有する光学窓材として用いることができる。
【0032】
次に、図1、図2および図3に示されているような熱消散体の製造方法について説明する。まず、所望の形状の高熱伝導性基板11が用意され、その上面に冷媒用溝15が形成される。冷媒用溝15の上部において、望まれる場合には蓋用溝14も形成される。次に、蓋12を用意し、冷媒用溝15を封じるように蓋12を配置する。その配置された蓋12および高熱伝導性基板11の上面を覆うように、高熱伝導性カバー層13が形成され、これによって熱消散体10が完成する。
【0033】
所望の形状の高熱伝導性基板11が気相合成ダイヤモンドで形成される場合、まずダイヤモンドを合成するための基材が用意される。そのような基材として、たとえばSi,SiC,Mo,Si3 4 などを用いることができる。このような基材上に、公知の気相合成法によってダイヤモンド板が成長させられる。気相合成法としては、燃焼炎法、熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法などを利用することができる。これらのうちで、マイクロ波プラズマCVD法は、高純度の気相合成ダイヤモンドを容易に得ることができるので、特に好ましい。その後に、酸による溶解や研削などの適当な方法で基材を除去することによって、気相合成ダイヤモンド板を得ることができる。
【0034】
こうして得られた気相合成ダイヤモンド板の(必要に応じて研磨などで平坦化された)片面に、冷媒用溝15が、公知のレーザ加工(特開平8−227953段落44と45参照)、選択エッチング(特開平8−227953段落46参照)または気相選択成長(特開平8−227956段落27と28参照)などを用いて形成される。
【0035】
蓋12は、高熱伝導性基板11と同様に公知の気相合成法によって適当な基材の上にダイヤモンド板を合成し、その基材を除去して(必要に応じて表面の平坦化処理および切断加工を経て)得ることができる。以上のようにして得られた高熱伝導性基板11の冷媒用溝15上に蓋12が配置される。このとき、冷媒用溝15の上部に重ねて蓋用溝14が形成されていれば、蓋12が迅速かつ確実に位置決め配置され得る。
【0036】
その後、配置された蓋12と高熱伝導性基板11の上面を覆うように、高熱伝導性カバー層13として、公知の気相合成法によってダイヤモンド層が成長させられる。このように高熱伝導性カバー層13を気相成長させることによって、容易に蓋12の固定と冷媒用溝15のシールを確実に行なうことができる。このとき、蓋12が存在しているので、高熱伝導性カバー層13によって冷媒用溝15が埋められてしまうことがない。また、蓋取付のためにろう材を使用する場合のように、ろう材によって冷媒用溝15が埋められてしまうこともない。
【0037】
このようにして得られる熱消散体10は、実質的にすべての部分がダイヤモンドのみで形成されていてろう材などの不純物を含まないので、優れた熱消散性のみならず優れた光学特性をも有し、放熱基板や冷却基板さらには高エネルギ光用窓として好ましく用いられ得る。
【0038】
[実施例]
以下において、本発明による熱消散体のいくつかの実施例についてさらに具体的に説明する。
【0039】
(実施例1)
各々が20×20×2mmの大きさを有し、かつ傷つけ処理された2枚の多結晶Si基材上に、マイクロ波プラズマCVD法によってダイヤモンド薄板が成長させられた。成長条件として、1.5%のメタンと水素とを含む原料ガス、85Torrの圧力、および930℃の成長温度が用いられた。ダイヤモンド薄板の成長の後にその成長面が研磨され、Si基材を酸で溶解することによって2枚のダイヤモンド自立薄板AとB(Aの大きさ20×20×0.5mm;Bの大きさ20×20×0.2mm)が得られた。これらのダイヤモンド自立薄板の熱伝導率を測定したところ、18W/cm・Kであった。
【0040】
ダイヤモンド自立薄板Aからなる基板11の上面において、KrFエキシマレーザを線集光または点集光し、図4(a)に示されているような冷媒用溝15が形成された。この冷媒用溝15は約125μmの深さと約800μmの幅を有し、溝と溝との間隔は約900μmであった。他方、ダイヤモンド自立薄板Bはレーザ光によって切断され、図4(b)に示されているように、蓋12として冷媒用溝15上に配置された。
【0041】
次に図4(c)に示されているように、蓋12と基板11の上面を覆うように、熱フィラメントCVD法によってダイヤモンド層13aが成長させられた。この成長条件として、1%のメタンと水素とを含む原料ガス、2200℃のフィラメント温度、6mmのフィラメント・基材間距離、80Torrの圧力、および880℃の成長温度が用いられた。
【0042】
その後、ダイヤモンド層13aの成長表面を機械研磨し、図4(d)に示されているような20×20×1mmの大きさの熱消散体10が得られた。この熱消散体10の冷媒用溝に、25℃の冷却用の水が供給された。その水圧は3kgf/cm2 まで高められたが、冷媒用溝15において水漏れや詰まりは認められなかった。
【0043】
(実施例2)
実施例1の場合と同様の2枚の多結晶Si基材を用意し、その上に熱フィラメントCVD法によってダイヤモンド薄板が成長させられた。この成長条件として、1%のメタンと水素とを含む原料ガス、90Torrの圧力、2100℃のフィラメント温度、8mmのフィラメント・基材間距離が用いられた。成長させられたダイヤモンド薄板の表面を研磨し、Si基材を酸で溶解することによって2枚のダイヤモンド自立薄板CとD(Cの大きさ20×20×0.6mm;Dの大きさ20×20×0.3mm)が得られた。これらのダイヤモンド自立薄板の熱伝導率を測定したところ、14W/cm・Kであった。
【0044】
このようにして得られたダイヤモンド自立薄板からなる基板11の上面に、実施例1の場合と同様にレーザ光線を点集光または線集光して、図5(a)に示されているような冷媒用溝15と蓋用溝14が形成された。この場合、冷媒用溝15は約700μmの幅と約250μmの深さを有し、蓋用溝14は約1700μmの幅と約150μmの深さを有していた。他方、ダイヤモンド自立薄板Dはレーザ光で蓋12として切断され、図5(b)に示されているように、蓋用溝14内に位置決め配置された。このとき、蓋用溝14が設けられているので、蓋12の位置決め配置は実施例1の場合と比べてはるかに容易かつ確実に行なうことができた。
【0045】
その後、図5(c)に示されているように、蓋12および基板11の上面を覆うように、熱フィラメントCVD法によってダイヤモンド層13aが成長させられた。この成長条件は、ダイヤモンド自立薄板CとDの場合と同様であった。そして、ダイヤモンド層13aの成長表面が機械研磨され、図5(d)に示されているように20×20×0.9mmの大きさの熱消散体が得られた。この熱消散体の冷媒用溝15内に25℃の冷却用水を供給し、水圧が3kgf/cm2 まで上げられたが、水漏れや詰まりは認められなかった。
【0046】
(実施例3)
実施例1の場合と同様に、マイクロ波プラズマCVD法によって2枚のダイヤモンド自立薄板EとF(Eの大きさ20×20×0.6mm;Fの大きさ20×20×0.2mm)が得られた。このダイヤモンド自立薄板Eからなる基板11の上面において、実施例2の場合と同様にレーザ光線を点集光または線集光することによって、図6(a)に示されているような冷媒用溝15および蓋用溝14が形成された。この冷媒用溝15は約800μmの幅と約200μmの深さを有し、蓋用溝14は約2000μmの幅と約200μmの深さを有していた。他方、ダイヤモンド自立薄板Fはレーザ光で蓋12として切断され、図6(b)に示されているように蓋用溝14内に位置決め配置された。この場合には、蓋用溝14が設けられているので、蓋12の位置決め配置は実施例1の場合に比べて容易かつ確実に行なうことができた。
【0047】
その後、図6(c)に示されているように、蓋12と基板11の上面を覆うように、マイクロ波プラズマCVD法によってダイヤモンド層13aが成長させられた。この成長条件は、実施例1のダイヤモンド薄板AとBを合成したときと同様の条件であった。こうして形成された図6(c)のダイヤモンド層13aの成長表面を機械研磨し、図6(d)に示されているような20×20×0.8mmの大きさの熱消散体10が得られた。このとき、蓋12の上面と基板11の上面が同一平面を形成しているので、ダイヤモンド層13aの上面の凹凸が比較的小さく、研磨は短時間で終了した。このような図6(d)の熱消散体10における冷媒用溝15に25℃の冷却用水を供給し、その水圧が3kgf/cm2 まで高められたが、水漏れや詰まりは認められなかった。
【0048】
(実施例4)
実施例1の場合と同様の条件で、20×20×0.25mmの気相合成ダイヤモンド自立薄板Gが得られた。このダイヤモンド自立薄板Gからなる基板の上面にAlのマスクパターンが形成され、アルゴンと酸素の混合ガスを用いてプラズマエッチングされた。このときのエッチング条件においては、酸素の比率が20%であり、全圧力は0.05Torrであり、そして200WのRF出力によって3時間処理された。エッチング処理後にAlマスクパターンが酸によって除去され、図7(a)に示されているように、500μmの幅と50μmの深さを有する冷媒用溝15が形成されたダイヤモンド基板11が得られた。
【0049】
その後、実施例1の場合と同様に冷媒用溝15上に蓋12が配置された。しかし、この実施例においては、図7(b)に示されているように、蓋12の上面の周縁部は緩やかに面取り加工されていた。そして、図7(c)に示されているように、他の実施例の場合と同様に蓋12と基板11の上面を覆うように気相合成ダイヤモンド層13aが形成された。そして、このダイヤモンド層13aの成長表面を機械研磨することによって、図7(d)に示されているように、20×20×0.7mmの大きさの熱消散体10が得られた。この熱消散体10の冷媒用溝15に25℃の冷却用水を供給し、水圧が3kgf/cm2 まで高められたが水漏れや詰まりは認められかなった。
【0050】
以上のような実施例1〜4で得られた熱消散体10をLDチップの冷却基板として実装試験を行なったところ、いずれの実施例の熱消散体10についても十分な冷却特性が得られた。また、それらの熱消散体10を光学用窓として光透過率の測定を行なったところ、冷媒用溝15の存在する部分では冷媒の水による光吸収が認められたが、それ以外の領域ではダイヤモンドによる優れた透過率が得られた。なお、実施例4による熱消散体を光学窓として評価した場合、蓋12の角部に起因する低品質領域の発生の少ないことが認められた。
【0051】
(比較例1)
実施例1の場合と同様に、基板11として気相合成ダイヤモンド自立薄板H(20×20×0.5mm)を得て、この基板の上面にKrFエキシマレーザを線集光または点集光して、図4(a)に示されているのと同様の冷媒用溝15が形成された。しかし、蓋12を用いることなく実施例1と同様の条件でダイヤモンドカバー層を積層したところ、そのダイヤモンドカバー層が冷媒用溝15の内部を埋めてしまったために、この比較例1の熱消散体に冷却水を流そうとしたが、その冷却水を全く流入させることができなかった。
【0052】
(比較例2)
実施例1の場合と同様に、2枚の気相合成ダイヤモンド自立薄板IとJ(Iの大きさ20×20×0.5mm;Jの大きさ20×20×0.3mm)を得て、このダイヤモンド薄板Iからなる基板11の上面にKrFエキシマレーザを線集光または点集光して、図4(a)に示されているのと同様の冷媒用溝15が形成された。この冷媒用溝15は、約125μmの深さと約800μmの幅を有し、それらの溝の間隔は約4mmであった。
【0053】
他方、ダイヤモンド自立薄板Jはレーザ光で3mm幅の蓋12に切断され、図4(b)に示されているように冷媒用溝15上に配置された。このとき、冷媒用溝15の近傍における基板11の上面および蓋12の下面には、Ti,PtおよびAuが順次蒸着されてメタライズされ、このうちのAuを溶融させることによって蓋12が基板11に接着させられた。なお、このメタライズ層の厚さは0.2μmであった。
【0054】
その後、実施例1の場合と同様にダイヤモンドカバー層13が形成されたこの比較例2の熱消散体10において、冷媒用溝15に冷却用の水を供給してその水圧を3kgf/cm2 まで高めても水漏れや詰まりは認められなかったが、蓋12が占める3mmの幅の領域は全く光を透過しなかった。また、この比較例2の熱消散体を用いたLDチップの搭載試験では、実施例1〜4の熱消散体に比べて冷却特性の若干の劣化が認められた。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明よれば、優れた熱消散特性を有する熱消散体を得ることができる。また、その熱消散体は実質的に全体をダイヤモンドだけで形成すること可能であり、優れた冷却基板として用いられ得るのみならず、高エネルギ光用の優れた窓材として用いることもできる。さらに、本発明による熱消散体は冷媒用溝における漏れや詰まりを生じることなく、かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施の形態による熱消散体を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態による熱消散体を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態による熱消散体を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例による熱消散体の製造過程を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例による熱消散体の製造過程を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例による熱消散体の製造過程を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例による熱消散体の製造過程を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
10 熱消散体
11 高熱伝導性基板
12 蓋
13 高熱伝導性カバー層
14 蓋用溝
15 冷媒用溝

Claims (14)

  1. 高熱伝導性基板と蓋と高熱伝導性カバー層とを含み、
    前記基板の一主面には冷媒を流通させるための冷媒用溝が形成されており、
    前記蓋は前記冷媒用溝上に配置されてその冷媒用溝を封じており、
    前記カバー層は前記蓋および前記基板の前記一主面を覆っており、
    前記基板、前記蓋および前記カバー層のいずれもがダイヤモンドで形成されていて、それらのいずれの相互界面にも実質的にダイヤモンド以外の物質が存在していないことを特徴とする熱消散体。
  2. 前記冷媒用溝の深さは50μm以上であり、かつ前記基板の厚さの90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱消散体。
  3. 前記冷媒用溝の幅が20μm以上であり、かつ10mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱消散体。
  4. 前記冷媒用溝の幅aとそれらの冷媒用溝の間隔bとの比が0.02≦(a/b)≦50の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の熱消散体。
  5. 前記冷媒用溝の内壁は表面処理されておりその内壁に対する冷媒の濡れにおける接触角が65°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の熱消散体。
  6. 前記蓋の幅は前記冷媒用溝の幅より大きく、かつその冷媒用溝の幅より5mmを超えて大きくはないことを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の熱消散体。
  7. 前記蓋の上面と側面との間の角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の熱消散体。
  8. 前記冷媒用溝の上部に前記蓋を受入れるための蓋用溝が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかの項に記載の熱消散体。
  9. 前記冷媒用溝の上部に前記蓋を受入れるための蓋用溝が形成されており、前記蓋用溝は前記蓋の厚さに等しい深さを有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の熱消散体。
  10. ダイヤモンドからなる高熱伝導性基板を用意する工程と、
    前記基板の一主面に冷媒を流通させるための冷媒用溝を形成する工程と、
    前記冷媒用溝上にダイヤモンドからなる蓋を配置してその冷媒用溝を封じる工程と、
    前記蓋および前記基板の前記一主面上にダイヤモンドからなる高熱伝導性カバー層を形成する工程とを含むことを特徴とする熱消散体の製造方法。
  11. 前記高熱伝導性基板はダイヤモンド板を気相合成することによって用意されることを特徴とする請求項10に記載の熱消散体の製造方法。
  12. 前記蓋はダイヤモンド板を気相合成することによって用意されることを特徴とする請求項10または11に記載の熱消散体の製造方法。
  13. 前記高熱伝導性カバー層の形成は気相合成によってダイヤモンド層を形成することによって行なわれることを特徴とする請求項10から12のいずれかの項に記載の熱消散体の製造方法。
  14. 前記冷媒用溝はエキシマレーザを用いて形成されることを特徴とする請求項10から13のいずれかの項に記載の熱消散体の製造方法。
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