JP4041931B2 - ロッドのシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車高調整用の油圧シリンダや衝撃吸収用の油圧緩衝器などのシリンダ装置のロッドをシールするためのシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、車高調整用の油圧シリンダは、図8に示すように、油液が封入されたシリンダ1内に摺動可能にピストン(図示略)を嵌装し、このピストンに一端部が連結されたピストンロッド2の他端部を前記シリンダ1の開口端部に装着したロッドガイド3を摺動可能に挿通させてシリンダ1外まで延ばしている。シリンダ1は、ここでは有底の外筒4内に納められており、前記ロッドガイド3は、この外筒4とシリンダ1との間の環状室5を閉じる蓋体としても共用され、外筒4の開口端部に螺合させたロックリング6によりその位置が固定されている。ピストンロッド2内には油通路(図示略)が設けられており、シリンダ内には、前記油通路を通じて外部の給排油手段(図示略)から油液が給排され、これに応じてピストンロッド2の伸長長さが変化し、車高が調整されるようになっている。
【0003】
このような油圧シリンダにおいて、ピストンロッド2のシールは、一般に、ロッドガイド3の内周に設けた環状溝7内に配置した二重シール8と、ロックリング6内に配置したオイルシール9とにより二段階でなされるようになっている。二重シール8は、ピストンロッド2に摺接するロッドシール10とこのロッドシール10をピストンロッド2側へ弾発付勢(バックアップ)するOリング11とからなっている。この場合、ロッドシール10は、摺動特性を重視して摺動性能に優れた材料、例えばフッ素樹脂から形成されており、これとピストンロッド2との間からは、シリンダ内室12の油圧の上昇に応じて、わずかの油漏れが生じるようになっている。一方、オイルシール9はシール性の良好なゴムから形成されており、前記ロッドシール10とピストンロッド2との間から漏れ出た油液(漏れ油)は、このオイルシール9により外部への漏出が防止される。一方、この外部への漏出が防止された油液は、二重シール8とオイルシール9との間に形成した油溜室13に一旦溜った後、ロッドガイド3に設けた油通路14を通じて前記環状室(ドレン室)5へ逃がされるようになる。
【0004】
しかし、上記した従来一般の油圧シリンダでは、シリンダ内室12(高圧側)の油圧がある値以上に上昇すると、図9に示すように油溜室13内(低圧側)との差圧ΔPにより、Oリング11が上方に押し上げられて、ロッドガイド3の上側(低圧側)のシール受面3aに強く押圧され、Oリング11が圧縮変形して、ロッドシール10をピストンロッド2に強い力で押付ける。この結果、ロッドシール10とピストンロッド2との間の摩擦抵抗が増大し、ピストンロッド2の円滑な伸縮動が阻害されて乗り心地の悪化を招き、その上、ロッドシール10の摩耗が増大して、油漏れが激しくなるという問題があった。
なお、油圧緩衝器においても、上記したロッドシール10とOリング11とからなる二重シール8を採用することが多くなっており、このものでも同様の問題が発生している。ただし、油圧緩衝器の場合は、シリンダ1の周りの環状室5はリザーバとして提供される。
【0005】
上記問題を解決するため、特開平10−54436号公報には、図10に示すように、ロッドシール10の、ピストン延長方向の前側となる前端部分の外周に環状の切欠15を設け、ロッドガイド3を本体16と蓋体17とからなる分割構成として、その蓋体17から延設した環状突起18を前記切欠15内に位置させるようにしている。このようなシール構造とすることにより、Oリング11に大きな油圧がかかって、ロッドシール10に大きな付勢力が加わるような場合は、ロッドガイド3に設けた突起18がその付勢力を分担し、ロッドシール10がピストンロッド2に強く押し付けられることはなくなる。
【0006】
ところで、ロッドシール10とピストンロッド2との接触面における接触面圧分布は、理想的には図11の右側グラフに示すように、シリンダ内室12(図8)側すなわち高圧側の接触限界点Aの付近で面圧が最大となり、油溜室13(図8)側すなわち低圧側の接触限界点Bの付近で面圧が最小となるカーブを描くことが望ましい。換言すれば、高圧側の接触圧力勾配θ1 が低圧側の接触圧力勾配θ2 よりも大きい(θ1 >θ2 )ことが望ましく、このような接触面圧分布となる場合には油漏れは生じない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記Oリング11とロッドシール10との間に環状突起18を介在させた新たなシール構造によれば、ロッドシール10の前端がロッドガイド3の低圧側シール受面3aに強く押付けられる結果、図12に点線にて示すように、ロードシール10にその前端側を半径内方へ寄せる方向のモーメントが働き、ロッドシール10がその前端側を縮径させた状態に変形する。このため、同図の右側のグラフに点線にて示すように、高圧側の接触限界点A′付近の面圧が低下する一方で、低圧側接触限界点B′付近の面圧が上昇し、その接触面圧分布が上記した理想のカーブ(実線で示す)から大きくずれるようになり(θ1 <θ2 )、シール性能が低下して油漏れ量が多くなる。
そして、上記したロッドシール10の変形は、図13に示すように、ロッドシール10が摩耗した場合(摩耗部分を斜線で示す)により顕著となり、同図の右側のグラフに点線にて示すように、高圧側の接触限界点A′付近の面圧が著しく低下する一方で、低圧側接触限界点B′付近の面圧が著しく上昇し、多量の油漏れが発生するようになる。
【0008】
また、フッ素樹脂で形成されているロッドシール10の線膨張係数α1 がα1 =100 ×10-6(K-1) となっているのに対し、通常鋼材で形成されているロッドガイド3の線膨張係数α2 はα2 =12×10-6(K-1) となっている。そして、この線膨張係数の差(α1 −α2 )により、使用中の摩擦熱などにより温度が上昇すると、図14に示すように、ロッドシール10の段差面10aと突起18の先端面18aとの間に隙間Sが生じ、この場合は、ロッドシール10の変形がより一層顕著となって、油漏れがより一層激しくなる。しかも、このように隙間Sが生じると、図15に示すようにこの隙間S内にOリング11が食込み、その後のロッドシール10の傾斜によって前記食込み部分が破損してOリング11の寿命が低下することにもなる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、ロッドシールとロッドとの間に適切な接触面圧が得られるようにすると共に、その接触面圧の最大値が常に高圧側の接触限界点付近に現れるようにし、もってロッドの円滑な作動と安定したシール性能とを保証することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ロッドを摺動可能に案内するロッドガイドの内周に形成された環状溝内に、前記ロッドに摺接するロッドシールと該ロッドシールを前記ロッド側へ弾発付勢するOリングとからなる二重シールを配置したシール装置において、前記ロッドシールの、ロッド延長方向の前側となる前端部分の外周に環状の切欠を形成すると共に、該切欠内にロッドガイドから延設した環状突起を位置させ、かつ前記ロッドシールの前端と前記ロッドガイドのシール受面との間に隙間が形成されるように、前記切欠の軸方向深さと前記環状突起の長さとを設定したことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、ロッドガイドに設けた突起が、Oリングからロッドシールにかかる付勢力を分担するので、ロッドシールの全体がロッドに強く押し付けられることはなくなる。しかも、ロッドシールの前端とロッドガイドの低圧側シール受面との間に隙間が形成されるので、ロッドシールには、その後端側を半径内方へ寄せる方向のモーメントが働き、常に低圧側接触限界点付近で面圧が最小となり、かつ高圧側接触限界点付近で面圧が最大となる理想的な接触面圧分布が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および2は、本発明の第1の実施の形態を示したものである。なお、以下に述べる各実施の形態は、前記車高調整用の油圧シリンダに適用したもので、本シール装置を含む油圧シリンダの基本構造は、前出図8および10に示したものと同じであるので、こゝでは同一部分には同一符号を付し、それらの説明を省略することとする。
【0014】
本第1の実施の形態において、シリンダ1内のピストンから延ばされたピストンロッド(ロッド)2を摺動案内するロッドガイド3は、前出図10に関連して説明したように本体16と蓋体17とからなっている。本体16は、その外周が段付き形状をなしており、その小径部分をシール部材20を介してシリンダ1に嵌合させ、かつその大径部分をシール部材21を介して外筒4に嵌合させることによりシリンダ内室12およびドレン室5の開口端を液密に塞いでいる。一方、蓋体17は、外筒4に螺合させた前記ロックリング6により本体16に対して押圧固定されており、この組付状態において、本体16と蓋体17との間には、前記二重シール8を収納するための環状溝7(図1)が形成されている。したがって、ロッドガイド3の低圧側シール受面3aは、本実施の形態では前記蓋体17に設定されることになる。なお、本体16の内周にはブッシュ23が嵌合されており、ピストンロッド2は、直接的にはこのブッシュ23により摺動案内されるようになっている。また、オイルシール9側の油溜室13に溜った油液をドレン室5に戻すための油通路14にはオリフィス24が設けられており、このオリフィス24により油溜室13内には所定の油圧が保持されるようになっている。
【0015】
二重シール8を構成するロッドシール10は、前記したように、その低圧側となる前端部分の外周に環状の切欠15を有しており、この切欠15内には、前記したようにロッドガイド3を構成する蓋体17から延設した環状突起18が配置されている。しかして、本第1の実施の形態においては、ロッドシール10の前端と蓋体17に設定された低圧側シール受面3aとの間に、温度が上昇しても常に隙間が形成されるように、切欠15の軸方向深さL1 と環状突起18の長さL2 とを初期設定している。
【0016】
具体的には、ロッドシール10の線膨張係数をα1 、蓋体17の線膨張係数をα2 、最大温度差をΔTとした場合、下記式の条件
(L2 −L1 )+(L2 ・α2 −L1 ・α1 )ΔT > 0
ただし、α1 >α2
を満足するように初期隙間δを設定するようにし、これにより、温度が最大限に上昇した後でも、蓋体17(ロッドガイド3)とロッドシール10との間には、わずかの隙間δ′が確保されるようなる。
【0017】
上記第1の実施の形態においては、図示を略す給排油手段によりシリンダ1内に油液が供給され、シリンダ内室12の圧力が高まると、ロッドシール10とピストンロッド2との間のわずかの隙から油漏れが発生する。そして、油圧シリンダにかかる負荷の影響でシリンダ内室12の圧力が一時的に高圧になると、シリンダ内室12と油溜室13との差圧ΔPが一時的に増大し、ロッドシール10とピストンロッド2との間から多量の油が漏出しようとする。しかし、本第1の実施の形態においては、ロッドシール10の前端と蓋体17(ロッドガイド3)の低圧側シール受面3aとの間には、常に隙間(δ〜δ′)が形成されているので、ロッドシール10には、その後端側を半径内方へ寄せる方向のモーメントが働き、図3に示すように、ロッドシール10がその後端側を縮径させた状態に変形する。このため、同図の右側のグラフに点線にて示すように、高圧側の接触限界点A′付近の面圧が上昇する一方で、低圧側接触限界点B′付近の面圧が低下し、その接触面圧分布が、前記した理想のカーブ(実線で示す)に近似してシール性能が向上し、前記した多量の油漏れは未然に防止されるようになる。なお、本第1の実施の形態では、ロッドシール10の線膨張係数α1 が蓋体17の線膨張係数α2 よりも大きい(α1 >α2 )場合を前提にしているが、両者の関係が逆の場合(α1 ≦α2 )は、前記初期設定の隙間δが温度上昇に応じて拡大するので、前記した油漏れの心配は全くない。
【0018】
また、上記した差圧ΔPにより、Oリング11が蓋体17のシール受面3aに強く押圧されて圧縮変形し、ロッドシール10をピストンロッド2に強い力で押付けようとするが、ロッドガイド3に設けた突起18がその付勢力を分担するので、ロッドシール10がピストンロッド2に強く押し付けられることはなくなり、ピストンロッド2の円滑な伸縮動が保証される。本第1の実施の形態においては特に、オイルシール9の下側の油溜室13とドレン室5とを連通する油通路14はオリフィス24により絞られているので、前記油溜室13に蓄えられた油液の圧力が可及的上昇し、この結果、シリンダ内室12と油溜室13との差圧ΔPはそれほど大きくならない。このため、Oリング11からロッドシール10に加えられる付勢力がさらに抑制され、ピストンロッド2の円滑な伸縮動がより確実に保証される。なお、上記第1の実施の形態では、常時、蓋体17(ロッドガイド3)とロッドシール10との間に隙間δが設けられる例を示したが、シリンダ内室12の圧力が上昇した場合、隙間δがなくなるものあっても、常時隙間δがあるものと比べれば劣るが、効果を得ることができる。
【0019】
図4は、本発明の第2の実施の形態を示したものである。本第2の実施の形態の特徴とするところは、蓋体17に設けた環状突起18の先端内周縁に所定のアールR1 の湾曲面30を設けると共に、ロッドシール10の高圧側接触限界部にも所定のアールR2 の湾曲面31を設けた点にある。このように湾曲面30,31を設けることにより、ロッドシール10には、その後端側を縮径させた状態により変形し易くなり、高圧側の接触減退点A付近の面圧がより高まって、そのシール性能はより一層向上するようになる。
【0020】
図5は、本発明の第3の実施の形態を示したものである。本第3の実施の形態の特徴とするところは、ロッドシール10に形成した環状切欠15の径方向の深さを浅く、または蓋体17に設けた環状突起18の肉厚を厚くすることにより、突起18の内面にロッドシール10を密接させるようにした点にある。このように、突起18の内面にロッドシール10を密接させることにより、ロッドシール10に生じるモーメントは可及的に低減され、ロッドシール10の高圧側接触限界点Aに応力が過度に集中することがなくなって、その付近に生じ易い局部的な摩耗が抑制され、ロッドシール10の耐久性が向上する。
【0021】
図6および7は、本発明の第4の実施の形態を示したものである。本第4の実施の形態の特徴とするところは、ロッドシール10の前端の肉部を円弧状の中高形状として、その円弧面32を前記蓋体17(ロッドガイド3)の低圧側シール受面3aに線接触させるようにした点にある。このようにロッドシール10の前端形状を設定することにより、ロッドシール10と蓋体17との線膨張係数の差によりロッドシール10の前端が低圧側シール受面3aに押圧されても、図7に示すようにロッドシール10の前端部の圧縮変形量はわずかとなり、その前端側を半径内方へ寄せる方向にモーメントが働いても、その量はわずかとなり、上記各実施の形態と同様に理想的な接触面圧分布が得られてシール性は向上する。なお、前記ロッドシール10の前端の円弧面32は、凸形状に代えることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ロッドシールとロッドとの間に適切な接触面圧が得られると共に、その接触面圧の最大値が常に高圧側の接触限界点付近に現れるようになり、ロッドの円滑な作動と安定したシール性能とが保証されて、装置に対する信頼性が著しく向上する。
また、シール性能の確保は、ロッドシールとロッドガイドに設けた環状突起との寸法関係の変更、またはロッドシール自体の形状変更だけで対処しているので、コストアップなしに量産への適用が可能となり、その利用価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である、ロッドのシール装置の構造を示す断面図である。
【図2】本第1の実施の形態としてのシール装置を適用した車高調整用油圧シリンダの要部を示す断面図である。
【図3】本シール装置によるシール性能の向上理由を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す模式図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す模式図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す模式図である。
【図7】本第4の実施の形態におけるロッドシールの変形状態を示す模式図である。
【図8】従来のシール装置の一般的構造とこれを適用した車高調整用油圧シリンダの要部構造を示す断面図である。
【図9】従来のシール装置を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明のシール装置と実質的に同じ新型のシール装置の構造を示す断面図である。
【図11】新型のシール装置における理想的な接触面圧分布を示す模式図である。
【図12】新型のシール装置における不具合状態の一例を説明する模式図である。
【図13】新型のシール装置における不具合状態の他の例を説明する模式図である。
【図14】新型のシール装置における不具合状態の、さらに他の例を説明する模式図である。
【図15】新型のシール装置における不具合状態の、さらに他の例を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ロッド
3 ロッドガイド(ロッド)
3a 低圧側シール受面
4 外筒
5 ドレン室(環状室)
8 二重シール
7 環状室
9 オイルシール
10 ロッドシール
11 Oリング
13 油溜室
14 油通路
15 切欠
16 本体
17 蓋体
18 環状突起
32 円弧面
Claims (1)
- 油液が封入されたシリンダ内に一端部が挿入され、他端部が前記シリンダの開口端部に装着したロッドガイドを摺動可能に挿通してシリンダ外へ延ばされたロッドと、前記ロッドガイドとの間をシールするシール装置であって、前記ロッドガイドの内周に形成した環状溝内に、前記ロッドに摺接するロッドシールと該ロッドシールを前記ロッド側へ弾発付勢するOリングとからなる二重シールを配置したものにおいて、前記ロッドシールの、ロッド延長方向の前側となる前端部分の外周に環状の切欠を形成すると共に、該切欠内にロッドガイドから延設した環状突起を位置させ、かつ前記ロッドシールの前端と前記ロッドガイドの低圧側シール受面との間に隙間が形成されるように、前記切欠の軸方向深さと前記環状突起の長さとを設定したことを特徴とするロッドのシール装置。
Priority Applications (1)
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Applications Claiming Priority (1)
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| JP10354398A JP4041931B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | ロッドのシール装置 |
Publications (2)
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