JP3909021B2 - 電動ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキキャリパに設けた制動部材と電動モータとをねじ機構を介して接続し、電動モータの駆動力で制動部材を軸線方向に移動させて被制動部材に押し付けることでブレーキ力を発生させる電動ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に従来のブレーキ装置は、ブレーキキャリパに設けたブレーキピストンをマスタシリンダや油圧ポンプで発生した油圧で駆動し、このブレーキピストンでブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けてブレーキ力を発生させるようになっている。
【0003】
ブレーキピストンを油圧で駆動する代わりに、電動モータが発生する回転力を減速機およびねじ機構で推力に変換してブレーキピストンを駆動するものが、下記特許文献により公知である。このブレーキ装置によれば、電動モータの回転方向を変化させてブレーキピストンを前進、停止および後退させることで、ブレーキ力を増加、保持および減少させることができる。
【0004】
【特許文献】
特開平11−321599号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献に記載されたものは、電動モータの回転力を減速機で減速してねじ機構に伝達し、ねじ機構でピストンを駆動してブレーキ力を発生させるようになっているが、ブレーキ力を増加させるべく減速機の減速比を増加させると電動モータを駆動してからブレーキ力が立ち上がるまでの応答性が低下してしまう問題がある。またブレーキ力を短い時間間隔で増減させるアンチロックブレーキ制御を行う場合には、電動モータを慣性に抗して正転→停止→逆転→停止→正転…させる必要があり、そのために応答性が更に低下する問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、電動ブレーキ装置のブレーキ力を変化させる際の応答性を高めることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ブレーキキャリパに設けた制動部材と電動モータとをねじ機構を介して接続し、電動モータの駆動力で制動部材を軸線方向に移動させて被制動部材に押し付けることでブレーキ力を発生させる電動ブレーキ装置において、前記ねじ機構は雌ねじを有する第1ねじ部材と、それに噛み合う雄ねじを有する第2ねじ部材とを備え、第1、第2ねじ部材の一方のねじ部材をブレーキキャリパに対して回転可能かつ軸線方向移動不能に支持し、一方のねじ部材と他方のねじ部材とを相対回転させることで、他方のねじ部材を制動部材と共に軸線方向に移動させるものであり、前記第1ねじ部材はブレーキ力を発生する方向に回転するとともに前記第2ねじ部材はブレーキ力を解除する方向に回転し、第1、第2ねじ部材の相対回転の方向および大きさを変化させることでブレーキ力の増加、保持および減少を制御することを特徴とする電動ブレーキ装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、第1ねじ部材の雌ねじと第2ねじ部材の雄ねじとを相互に噛み合わせ、一方のねじ部材をブレーキキャリパに対して回転可能かつ軸線方向移動不能に支持し、両ねじ部材を相対回転させて他方のねじ部材を制動部材と共に軸線方向に移動させることで、制動部材を被制動部材に押し付けてブレーキ力を発生させるので、両ねじ部材の回転を停止したり逆転したりすることなく、その相対回転の方向および大きさを変化させるだけで制動部材を被制動部材に対して応答性良く接近、停止および離反させてブレーキ力の増加、保持および減少を制御することができる。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを設定する相対回転量設定手段を備えたことを特徴とする電動ブレーキ装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、相対回転量設定手段により第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを設定することで、第1ねじ部材に対する第2ねじ部材の移動方向および移動速度を変化させ、制動部材の移動方向、移動速度および移動荷重を任意に制御することができる。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、相対回転量設定手段は、第1ねじ部材を駆動する第1電動モータと、第2ねじ部材を駆動する第2電動モータとを含むことを特徴とする電動ブレーキ装置が提案される。
【0012】
上記構成によれば、相対回転量設定手段が第1ねじ部材を駆動する第1電動モータと、第2ねじ部材を駆動する第2電動モータとを含むので、第1、第2電動モータの回転数を変化させることで第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを任意に制御することができる。
【0013】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、相対回転量設定手段は、単一の電動モータと、その電動モータの駆動力を第1、第2ねじ部材にそれぞれ伝達する第1、第2動力伝達経路と、第1、第2動力伝達経路の少なくとも一方に設けられた無段変速機とを含むことを特徴とする電動ブレーキ装置が提案される。
【0014】
上記構成によれば、相対回転量設定手段が単一の電動モータと、その電動モータの駆動力を第1、第2ねじ部材にそれぞれ伝達する第1、第2動力伝達経路と、第1、第2動力伝達経路の少なくとも一方に設けられた無段変速機とを含むので、電動モータの数を最小個数の1個に抑えながら、無段変速機の変速比を変化させることで第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを任意に制御することができる。
【0015】
尚、実施例のブレーキディスク14は本発明の被制動部材に対応し、実施例のブレーキパッド19は本発明の制動部材に対応し、実施例の第1ねじ部材21は本発明の一方のねじ部材に対応し、実施例の第2ねじ部材28は本発明の他方のねじ部材に対応し、実施例の第1電動モータ36および第2電動モータ37は本発明の電動モータに対応する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 図1および図2は本発明の第1実施例を示すもので、図1は電動ブレーキ装置の縦断面図、図2は図1の2部拡大図である。
【0017】
電動ブレーキ装置のブレーキキャリパ11は、車輪を回転自在に支持するナックル(図示せず)に支持される本体部12と、本体部12からブレーキディスク14を跨いで反対側に延びる腕部13とを備える。ブレーキキャリパ11の腕部13の内面にバックプレート15を介して固定されたブレーキパッド16と、ブレーキピストン17にバックプレート18を介して固定されたブレーキパッド19とがブレーキディスク14の両面に当接可能に対向しており、ブレーキピストン17の周縁部がブーツ20でブレーキキャリパ11の本体部12の内面に接続される。
【0018】
ブレーキキャリパ11の本体部12に、軸線L方向に延びる大径の凹部12aと小径の貫通孔12bとが同軸に形成されており、貫通孔12bを筒状の第1ねじ部材21の軸部21aが貫通する。第1ねじ部材21の軸部21aに連なるフランジ21bがブレーキキャリパ11の凹部12aに収納されており、このフランジ21bの一側面がボールベアリング22およびリテーナ23を介して本体部12の段部12cに支持され、他側面がボールベアリング24、リテーナ25およびスプリングワッシャ26を介して、凹部12aの開口端に装着されたサークリップ27に支持される。
【0019】
軸線L上に配置された第1ねじ部材21の内部に軸状の第2ねじ部材28が同軸に嵌合し、第1ねじ部材21の内周面に形成された雌ねじ21cに第2ねじ部材28の外周面に形成された雄ねじ28aが噛み合い、かつ第1ねじ部材21の内周面および第2ねじ部材28の外周面間にブッシュ29が配置される。第2ねじ部材28の先端に形成された半球状の頭部28bがブレーキピストン17の外面に形成された皿状の凹部17aに相対回転可能に当接し、第2ねじ部材28の先端近傍に形成された環状溝28cに、ブレーキピストン17の外面に外周を固定された円環状のピストン戻しスプリング30の折り返した内周面が相対回転可能に係合する。
【0020】
ブレーキキャリパ11の本体部12にシール部材31を介して第1ギヤハウジング32を固定し、かつ第1ギヤハウジング32にシール部材33を介して第2ギヤハウジング34を固定することで、第1、第2ギヤハウジング32,34の内部にギヤ室35が形成される。第1ギヤハウジング32の外部に第1電動モータ36および第2電動モータ37が固定されており、第2ギヤハウジング34にボールベアリング38で支持された第1電動モータ36の出力軸39に第1ギヤ40が設けられ、第2ギヤハウジング34にボールベアリング41で支持された第2電動モータ37の出力軸42に第5ギヤ43が設けられる。
【0021】
第1、第2ギヤハウジング32,34にボールベアリング44,45を介して支持された中間軸46に第2ギヤ47および第3ギヤ48が設けられており、第2ギヤ47は前記第1ギヤ40に噛み合い、第3ギヤ48は第1ねじ部材21に設けた第4ギヤ49に噛み合っている。第1、第2ギヤハウジング32,34にボールベアリング50,51を介して支持された中間軸52に第6ギヤ53および第7ギヤ54が設けられており、第6ギヤ53は前記第5ギヤ43に噛み合い、第7ギヤ54は第2ねじ部材28に設けた第8ギヤ55に噛み合っている。第7ギヤ54は軸線L方向に長く形成されており、第8ギヤ55は第7ギヤ54に対して軸線L方向に移動可能である。
【0022】
尚、第2ギヤハウジング34にボールベアリング56を介して支持されたガイド軸57を、第2ねじ部材28の軸端に開口するガイド孔28dに摺動自在に嵌合させることで、第2ねじ部材28の振れを防止しながら、その軸線L方向の移動を許容することができる。ガイド軸57は第2ギヤハウジング34に固定することもできる。
【0023】
また第1ねじ部材21および第2ねじ部材28はねじ機構58を構成し、第1電動モータ36、第2電動モータ37および第1ギヤ〜第8ギヤ40,47,48,49,43,53,54,55は相対回転量設定手段59を構成する。
【0024】
次に、上記構成を備えた第1実施例の作用を説明する。
【0025】
第1電動モータ36を駆動すると、その出力軸39の回転は第1ギヤ〜第4ギヤ40,47,48,49で減速されて第1ねじ部材21を回転させる。これと同時に第2電動モータ37を駆動すると、その出力軸42の回転は第5ギヤ〜第8ギヤ43,53,54,55で減速されて第2ねじ部材28を回転させる。このとき、ねじ機構58を構成する第1、第2ねじ部材21,28が同速度で同方向に回転するように第1、第2電動モータ36,37を制御すると、相互に噛み合う第1ねじ部材21の雌ねじ21cと第2ねじ部材28の雄ねじ28aとの間に相対回転が発生しないため、第2ねじ部材28は第1ねじ部材21に対して軸線L方向に移動することはない。その結果、第2ねじ部材28はブレーキピストン17を押しも引きもせず、ブレーキパッド16,19とブレーキディスク14との間の面圧が解除されたままで電動ブレーキ装置は非制動状態になる。
【0026】
この状態から第1電動モータ36の回転数を増加させ、第2電動モータ37の回転数を減少させると、第1ねじ部材21の回転数>第2ねじ部材28の回転数となり、第1ねじ部材21に対して第2ねじ部材28が図中左方向に相対移動してブレーキピストン17を押圧する。その結果、両ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14の両面を挟み付け、その摺動面に発生する摩擦力で車輪が制動される。電動ブレーキ装置が発生するブレーキ力は、第1ねじ部材21に対する第2ねじ部材28の図中左方向への相対移動量が増加するに応じて増加する。
【0027】
所定のブレーキ力が得られたときに、第1、第2電動モータ36,37の回転数を元に戻して第1、第2ねじ部材21,28の回転数を一致させると、ブレーキピストン17がその位置に停止してブレーキ力が保持される。また第1電動モータ36の回転数を減少させ、第2電動モータ37の回転数を増加させると、第1ねじ部材21の回転数<第2ねじ部材28の回転数となり、第1ねじ部材21に対して第2ねじ部材28が図中右方向に相対移動する。その結果、ピストン戻しスプリング30を介してブレーキピストン17が第2ねじ部材28に追従するように図中右方向に移動することで、両ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14の両面から離反してブレーキ力が減少する。
【0028】
第2ねじ部材28が軸線L方向に進退するとき、それと一体の第8ギヤ55も進退するが、第8ギヤ55に噛み合う第7ギヤ54は軸線L方向に長く形成されているので、第2ねじ部材28の進退が阻害されることはない。同様の理由で、両ブレーキパッド16,19の摩耗に伴う第2ねじ部材28の前進にも対応することができる。また回転する第2ねじ部材28の半球状の頭部28bと、回転しないブレーキピストン17の皿状の凹部17aとは点接触するため、接触部の摩擦抵抗を最小限に抑えることができる。
【0029】
以上のように、ブレーキ力の増加(ブレーキピストン17の前進)、ブレーキ力の保持(ブレーキピストン17の停止)およびブレーキ力の減少(ブレーキピストン17の後退)を切り換える際に、第1、第2電動モータ36,37を停止あるいは逆転させる必要がなく、それらの回転数を増減するだけで良いため、ブレーキ力を応答性良く制御することができる。
【0030】
また第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を小さくすれば、第1、第2電動モータ36,37から第1、第2ねじ部材21,28への動力伝達経路の減速比を大きくしたのと同じ効果が得られ、ブレーキピストン17を大きな荷重で前進させて大きなブレーキ力を発生させることができる。逆に、第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を大きくすれば、第1、第2電動モータ36,37から第1、第2ねじ部材21,28への動力伝達経路の減速比を小さくしたのと同じ効果が得られ、ブレーキピストン17を速い速度で進退させて応答性を更に高めることができる。
【0031】
従って、制動初期のブレーキパッド16,19がブレーキディスク14に当接する前には、第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を大きくして第2ねじ部材28を素早く前進させ、ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14に当接した後には、第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を小さくして第2ねじ部材28を大きな荷重で前進させることで、高い応答性および大きなブレーキ力を両立させることができる。
【0032】
図3〜図5は本発明の第2実施例を示すもので、図3は電動ブレーキ装置の縦断面図、図4は図3の4部拡大図、図5は図4の5−5線断面図である。尚、第2実施例において、第1実施例の構成要素に対応する構成要素に、第1実施例の符号と同じ符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0033】
第1実施例は第1、第2電動モータ36,37を備えているが、第2実施例は単一の電動モータ61のみを備えている。電動モータ61の駆動力は2分割され、その一方は第1動力伝達経路62を介して第1ねじ部材21に伝達され、もう一方は第2動力伝達経路63を介して第2ねじ部材28に伝達される。
【0034】
第1動力伝達経路62は無段変速機64と、第1ギヤハウジング32にボールベアリング65で支持した第2中間軸66に設けられた第3ギヤ67と、第1ねじ部材21に設けられた第4ギヤ68とで構成される。無段変速機64は、第2ギヤハウジング34にボールベアリング69で支持した電動モータ61の出力軸70に設けられたドライブディスク71と、出力軸70と直交する第1中間軸72により回転自在に支持されたドリブンディスク73と、ドライブディスク71の円弧面およびドリブンディスク73の円弧面に同時に当接する変速ローラ74とを備える。そしてドリブンディスク73の背面に一体に形成された第1ギヤ75が、第2中間軸66に設けられた第2ギヤ76に噛み合っている。
【0035】
変速ローラ74は枠状のローラハウジング77に支軸78およびボールベアリング79,79を介して回転自在に支持されており、ローラハウジング77は出力軸70および第1中間軸72の成す平面に直交する支軸80,80を介して第2ギヤハウジング34に回転自在に支持される。ローラハウジング77に固定したアーム部材81の先端に形成された長孔81aに、ソレノイド82の出力ロッド83に設けられたピン84が係合する。
【0036】
第2動力伝達経路63は電動モータ61の出力軸70に設けられた第5ギヤ85と、第2ギヤハウジング34にボールベアリング86を介して支持した第3中間軸87に設けられた第6ギヤ88と、第2ねじ部材28に設けられた第7ギヤ89とで構成される。第2ギヤハウジング34にボールベアリング90を介して支持されたガイド軸91を、第2ねじ部材28の軸端に開口するガイド孔28dに摺動自在に嵌合させることで、第2ねじ部材28の振れを防止しながら、その軸線L方向の移動を許容することができる。
【0037】
尚、電動モータ61、無段変速機64および第1ギヤ〜第7ギヤ75,76,67,68,85,88,89は相対回転量設定手段59を構成する。
【0038】
次に、上記構成を備えた第2実施例の作用を説明する。
【0039】
電動モータ61を一定速度で一定方向に回転駆動すると、その出力軸70の回転は第1動力伝達経路62および第2動力伝達経路63にそれぞれ伝達される。第1動力伝達経路62では、出力軸70の回転がドライブディスク71、変速ローラ74、ドリブンディスク73、第1ギヤ75、第2ギヤ76、第3ギヤ67および第4ギヤ68を介して第1ねじ部材21に伝達され、第2動力伝達経路63では出力軸70の回転が第5ギヤ85、第6ギヤ88および第7ギヤ89を介して第2ねじ部材28に伝達される。
【0040】
無段変速機64の変速比が所定の変速比(ニュートラル)であれば、第1、第2ねじ部材21,28は同速度で同方向に回転し、相互に噛み合う第1ねじ部材21の雌ねじ21cと第2ねじ部材28の雄ねじ28aとの間に相対回転が発生しないため、第2ねじ部材28は第1ねじ部材21に対して軸線L方向に移動することはない。その結果、第2ねじ部材28はブレーキピストン17を押しも引きもせず、ブレーキパッド16,19とブレーキディスク14との間の面圧が解除されて電動ブレーキ装置は非制動状態になる。
【0041】
この状態から無段変速機64のソレノイド82の出力ロッド83を伸長すると、図4において変速ローラ74が支軸80回りに矢印a方向に回転し、ドライブディスク71と変速ローラ74との接触部の有効半径が増加し、ドリブンディスク73と変速ローラ74との接触部の有効半径が減少することで、無段変速機64の変速比が減少して第1ねじ部材21の回転数が増加する。一方、第2ねじ部材28の回転数は変化しないため、第1ねじ部材21の回転数>第2ねじ部材28の回転数となり、第1ねじ部材21に対して第2ねじ部材28が図中左方向に相対移動してブレーキピストン17を押圧する。その結果、両ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14の両面を挟み付け、その摺動面に発生する摩擦力で車輪が制動される。電動ブレーキ装置が発生するブレーキ力は、第1ねじ部材21に対する第2ねじ部材28の図中左方向への相対移動量が増加するに応じて増加する。
【0042】
所定のブレーキ力が得られたときに、ソレノイド82で変速ローラ74をニュートラル位置に戻すと、ブレーキピストン17がその位置に停止してブレーキ力が保持される。また無段変速機64のソレノイド82の出力ロッド83を収縮すると、図4において変速ローラ74が支軸80回りに矢印b方向に回転し、ドライブディスク71と変速ローラ74との接触部の有効半径が減少し、ドリブンディスク73と変速ローラ74との接触部の有効半径が増加することで、無段変速機64の変速比が増加して第1ねじ部材21の回転数が減少する。一方、第2ねじ部材28の回転数は変化しないため、第1ねじ部材21の回転数<第2ねじ部材28の回転数となり、第1ねじ部材21に対して第2ねじ部材28が図中右方向に相対移動する。その結果、ピストン戻しスプリング30を介してブレーキピストン17が第2ねじ部材28に追従するように図中右方向に移動することで、両ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14の両面から離反してブレーキ力が減少する。 以上のように、ブレーキ力の増加(ブレーキピストン17の前進)、ブレーキ力の保持(ブレーキピストン17の停止)およびブレーキ力の減少(ブレーキピストン17の後退)を切り換える際に、電動モータ61を停止あるいは逆転させる必要がなく、第1動力伝達経路62に配置した無段変速機64の変速比を変更するだけで良いため、ブレーキ力を応答性良く制御することができる。
【0043】
また変速ローラ74を小角度揺動させて回転数差を小さくすれば、第1、第2ねじ部材21,28の相対回転数を小さくしてブレーキピストン17を大きな荷重でゆっくりと前進させ、大きなブレーキ力を発生させることができる。逆に、変速ローラ74を大角度揺動させて第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を大きくすれば、第1、第2ねじ部材21,28の相対回転数を大きくしてブレーキピストン17を小さな荷重で素早く進退させ、応答性を高めることができる。
【0044】
従って、制動初期のブレーキパッド16,19がブレーキディスク14に当接する前には、第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を大きくして第2ねじ部材28を素早く前進させ、ブレーキパッド16,19がブレーキディスク14に当接した後には、第1、第2ねじ部材21,28の回転数差を小さくして第2ねじ部材28を大きな荷重で前進させることで、高い応答性および大きなブレーキ力を両立させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0046】
例えば、実施例では第1ねじ部材21を軸線L方向に移動不能に設け、第2ねじ部材28を軸線L方向に移動可能に設けているが、その関係を逆にして第1ねじ部材21でブレーキピストン17を駆動しても良い。
【0047】
また実施例では無段変速機64を第1動力伝達経路62に設けているが、それを第2動力伝達経路63に設けてたり、第1、第2動力伝達経路62,63の両方に設けたりすることができる。
【0048】
また無段変速機64は実施例のものに限定されず、任意の構造のものを採用することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、第1ねじ部材の雌ねじと第2ねじ部材の雄ねじとを相互に噛み合わせ、一方のねじ部材をブレーキキャリパに対して回転可能かつ軸線方向移動不能に支持し、両ねじ部材を相対回転させて他方のねじ部材を制動部材と共に軸線方向に移動させることで、制動部材を被制動部材に押し付けてブレーキ力を発生させるので、両ねじ部材の回転を停止したり逆転したりすることなく、その相対回転の方向および大きさを変化させるだけで制動部材を被制動部材に対して応答性良く接近、停止および離反させてブレーキ力の増加、保持および減少を制御することができる。
【0050】
また請求項2に記載された発明によれば、相対回転量設定手段により第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを設定することで、第1ねじ部材に対する第2ねじ部材の移動方向および移動速度を変化させ、制動部材の移動方向、移動速度および移動荷重を任意に制御することができる。
【0051】
また請求項3に記載された発明によれば、相対回転量設定手段が第1ねじ部材を駆動する第1電動モータと、第2ねじ部材を駆動する第2電動モータとを含むので、第1、第2電動モータの回転数を変化させることで第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを任意に制御することができる。
【0052】
また請求項4に記載された発明によれば、相対回転量設定手段が単一の電動モータと、その電動モータの駆動力を第1、第2ねじ部材にそれぞれ伝達する第1、第2動力伝達経路と、第1、第2動力伝達経路の少なくとも一方に設けられた無段変速機とを含むので、電動モータの数を最小個数の1個に抑えながら、無段変速機の変速比を変化させることで第1、第2ねじ部材の相対回転の大きさを任意に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の電動ブレーキ装置の縦断面図
【図2】 図1の2部拡大図
【図3】 第2実施例の電動ブレーキ装置の縦断面図
【図4】 図3の4部拡大図
【図5】 図4の5−5線断面図
【符号の説明】
11 ブレーキキャリパ
14 ブレーキディスク(被制動部材)
19 ブレーキパッド(制動部材)
21 第1ねじ部材(一方のねじ部材)
21c 雌ねじ
28 第2ねじ部材(他方のねじ部材)
28a 雄ねじ
36 第1電動モータ(電動モータ)
37 第2電動モータ(電動モータ)
58 ねじ機構
59 相対回転量設定手段
61 電動モータ
62 第1動力伝達経路
63 第2動力伝達経路
L 軸線
Claims (4)
- ブレーキキャリパ(11)に設けた制動部材(19)と電動モータ(36,37,61)とをねじ機構(58)を介して接続し、電動モータ(36,37,61)の駆動力で制動部材(19)を軸線(L)方向に移動させて被制動部材(14)に押し付けることでブレーキ力を発生させる電動ブレーキ装置において、
前記ねじ機構(58)は雌ねじ(21c)を有する第1ねじ部材(21)と、それに噛み合う雄ねじ(28a)を有する第2ねじ部材(28)とを備え、第1、第2ねじ部材(21,28)の一方のねじ部材(21)をブレーキキャリパ(11)に対して回転可能かつ軸線(L)方向移動不能に支持し、一方のねじ部材(21)と他方のねじ部材(28)とを相対回転させることで、他方のねじ部材(28)を制動部材(19)と共に軸線(L)方向に移動させるものであり、前記第1ねじ部材(21)はブレーキ力を発生する方向に回転するとともに前記第2ねじ部材(28)はブレーキ力を解除する方向に回転し、第1、第2ねじ部材(21,28)の相対回転の方向および大きさを変化させることでブレーキ力の増加、保持および減少を制御することを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 第1、第2ねじ部材(21,28)の相対回転の大きさを設定する相対回転量設定手段(59)を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
- 相対回転量設定手段(59)は、第1ねじ部材(21)を駆動する第1電動モータ(36)と、第2ねじ部材(28)を駆動する第2電動モータ(37)とを含むことを特徴とする、請求項2に記載の電動ブレーキ装置。
- 相対回転量設定手段(59)は、単一の電動モータ(61)と、その電動モータ(61)の駆動力を第1、第2ねじ部材(21,28)にそれぞれ伝達する第1、第2動力伝達経路(62,63)と、第1、第2動力伝達経路(62,63)の少なくとも一方に設けられた無段変速機(64)とを含むことを特徴とする、請求項2に記載の電動ブレーキ装置。
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