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JP3824719B2 - ワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法 - Google Patents

ワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤ電極の断線時にその復帰を行なうワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、略垂直方向に張架されたワイヤ電極を更新送りしつつこれと被加工物との間に放電現象を発生させて、あたかも糸ノコのように被加工物の所望の場所に所望の輪郭形状で加工を施すようにした装置として、特開昭57−66825号公報に開示されたようなワイヤ放電加工装置が知られている。この種のワイヤ放電加工装置は、非常に加工精度が高く、精密機械加工に適している。
ところで、放電加工に用いるワイヤ電極は、線径が0.3〜0.01mmと非常に細く、ある程度の強度を有してはいるが、放電状態や加工くずの状態等に起因して、放電加工中に時々、断線が生じることは避けられない。
【0003】
この場合、断線した場所で自動的にワイヤ電極を加工溝に挿通して結線し、この断線した場所から再度加工を継続できればよい。しかし、通常は、ワイヤ電極を失敗なく自動で挿通できる程度、十分に広い加工溝幅を有していないので、ワイヤ電極が断線した場所で失敗なくワイヤ電極を自動的に挿通して結線するということは難しいことである。あるいは、ワイヤ電極が断線した場所がテーパ形状であるなどワイヤ電極を自動的に挿通して結線することが現在の技術では極めて困難な場合もある。
【0004】
そこで、従来一般的には、NCプログラムを利用して、ワイヤガイドを自動的に加工の開始位置であるスタートホールまで相対移動させ、そこでワイヤ電極の結線を行ない、結線後に加工済の加工軌跡を辿ってワイヤ電極を復帰させるようにしている。この場合、上述したような一連のいわゆる”断線復帰”が自動的に行なえるので便利である。しかし、その一方で、断線した場所が加工軌跡上のどの位置にあっても、またワイヤ電極の断線の状態がどのような場合であっても、ワイヤガイドを一旦、スタートホールに戻すために、断線復帰の作業に融通性がない。したがって、例えば、ワイヤ電極が断線した位置が加工がかなり進行している位置に到達している場合は、断線復帰に相当な時間がかかってしまうことがある。また、ワイヤ電極の自動的な挿通と結線の作業が必ずしも一度で成功するとは限らず、確実とは言えない。
【0005】
一方、オペレータによりリモートコントロール操作によってスタートホールに限らずワイヤ電極を挿通し結線する作業が行ない易い任意の位置にワイヤガイドを相対移動させてからワイヤ電極を挿通させて結線し、ワイヤ電極を断線した中断位置に復帰させるようにすることができる。この場合、断線復帰の作業の全てが自動で行えないから、作業者において手間であることもある。しかしながら、ワイヤ電極を加工済の加工軌跡上の適当な場所で挿通できるため断線した中断位置まで復帰させる経路を短かくでき、断線復帰の時間を短かくすることができる。また当然のことながら、ワイヤ電極を挿通し結線する作業も確実に行なえ安全である。
以上のように、何れの方式であっても一長一短があり、これら長所と短所とを考慮して、何れの方式で行なうかを選択的あるいは混用して断線復帰を行なっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、オペレータにより任意の位置にワイヤガイドを移動させてから、ワイヤ電極を結線し断線復帰を行なう方式を用いた場合には、ワイヤ電極を挿通させるのに適当な任意の位置にワイヤガイドを移動させているから、挿通したワイヤ電極の位置とワイヤガイドの位置とがずれているのが普通である。このため、加工済の加工軌跡が単純な形状でない場合は、ワイヤ電極を結線後、加工済の加工軌跡を目視しながら、あるいは表示画面中の現在位置表示と軌跡表示を参照しながら、リモートコントロールにより加工済の加工軌跡に沿ってワイヤ電極を中断位置まで復帰させることは特に難しい。そして、僅かな曖昧操作でもワイヤ電極を引っかけるなどして結局断線復帰の作業に手間取る事態がしばしば生じる。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、任意の位置にワイヤガイドを相対移動させてワイヤ電極を結線した後、前記ワイヤ電極を中断位置に復帰させて放電加工を継続する際にワイヤ電極の断線復帰をより容易にかつ確実に行なえるワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために、ワイヤ電極が断線した時に、任意の位置にワイヤガイドを相対移動させて前記ワイヤ電極を結線した後、前記ワイヤ電極を中断位置に復帰させて放電加工を継続させるようにした断線復帰装置であって、加工軌跡を表示する表示手段と、前記加工軌跡における前記ワイヤガイドが戻るべき部分を入力する入力手段と、前記戻るべき部分に基づいて前記加工軌跡上の前記ワイヤガイドが戻るべき位置を決定する位置決定手段と、前記ワイヤガイドの現在位置から前記戻るべき位置を経由して前記中断位置に至る復帰経路を求める復帰経路演算手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
ワイヤ電極の断線が発生した時には、リモートコントロール装置等を用いたマニュアル操作でワイヤガイドを結線が可能な箇所まで戻るように移動し、そこでワイヤ電極を加工溝に挿通してこの再結線を行なう。この場合、目視上、ワイヤガイドが加工軌跡線上に位置するように移動したとしても、加工軌跡とワイヤガイドの実際の位置は、一般的にはずれが生じている。そして、表示手段に表示されている加工軌跡を見つつ、入力手段を用いてワイヤガイドが戻るべき部分を指定する。この入力手段は、例えば表示手段に一体的に設けたタッチパネルセンサとして構成され、該当する軌跡部分を戻るべき部分として指で押圧乃至接触すればよい。このようにして、大雑把にワイヤガイドが戻るべき部分が決まると、これに基づいて位置決定手段は、上記戻るべき部分を通過している加工軌跡上のワイヤガイドが戻るべき正確な位置を決定する。この戻るべき位置は、上記した戻るべき部分が一定の大きさの面として指定される大雑把なものに対して、座標としてポイントで求められる。
【0009】
次に、復帰経路演算手段は、上記ワイヤガイドの現在位置から上記戻るべき位置を経由して、中断位置に至る復帰経路を求める。そして、復帰経路に従って、まず、ワイヤガイドを復帰位置まで自動で相対移動させ、更に、この復帰経路(加工溝)に沿ってワイヤ電極が移動するようにワイヤガイドは自動で動作し、中断位置に達した所で放電加工を再開する。
上記位置決定手段は、上記戻るべき部分の属するNCプログラムブロックを決定するブロック決定部と、決定された上記ブロックにより表される軌跡線分であってワイヤガイドの現在位置に最も近い位置をワイヤガイドが戻るべき位置として決定する座標演算部とにより構成されている。これにより、ワイヤ電極の断線復帰動作を円滑に行なうことが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法の一実施例を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の断線復帰装置を組み込んだワイヤ放電加工装置を示す概略構成図、図2は図1に示す装置の主要部を示すブロック構成図である。
図1に示すようにこのワイヤ放電加工装置2は、基台4に設置したX・Yテーブル6を有しており、この上にワークスタンド8を介して被加工物Wを固定している。
【0011】
このX・Yテーブル6は、図面水平方向へ移動するXテーブル6Aと図面垂直方向へ移動するYテーブル6Bとよりなり、それぞれはサーボモータ10A、10Bに接続されたボールネジ12により任意の位置に移動される。
また、ワークスタンド8の近傍には、被加工物Wを上下に挟むような位置に上下一対の上ワイヤガイド14Aと下ワイヤガイド14Bが設けられ、これらの各ガイドはアーム16A、16Bを介してそれぞれ駆動モータ18A、18Bに連結されて、水平面内に移動可能としている。ここでは、上下のワイヤガイド14A、14Bを共に移動可能にしているが、上ワイヤガイド14Aのみを移動可能にするようにしてもよい。また、これらの上下のワイヤガイド14A、14Bは、X、Yテーブル6と同様にリモートコントロール装置を用いてマニュアルで移動可能になされている。
上記上下のワイヤガイド14A、14B間には、ワイヤボビン20に巻回されたワイヤ電極22が引き出されて上下方向に挿通されており、このワイヤ電極22は多数のプーリ24を介して一定の張力をもって張設されて、下方向へ走行させるようになっている。
【0012】
また、このワイヤ電極22には、これに給電を行なうコマ部材26が接触されており、電源ユニット(電源、NCなどを含む)28側から給電を行なうようになっている。この電源ユニット28側には、加工プログラムや各種のパラメータ及び断線復帰後の再スタート信号等の入力を行なう入力手段30が接続される。また、このユニット28には、入力されたNCプログラムより表される加工軌跡、現在の加工位置等を表示する表示手段として例えばLCD(液晶表示装置)32が接続されている。そして、このユニット28により解析されたNCプログラムに従って、モータ制御部34は各モータに対して駆動信号を出力することになる。
そして、このユニット28側に本発明の断線復帰装置36が設けられる。
【0013】
図2はこの断線復帰装置36を組み込んだ放電加工装置の本体の主要部を示している。図2において、ユニット28側から説明する。図中、38は例えばマイクロコンピュータ等よりなるNC制御部であり、これには、入力手段30より入力されたNCプログラム等を解析して装置全体の動作を制御する演算制御部40、処理に必要な情報を記憶する例えばRAM等よりなる記憶部42、解析結果によりモータの動きを必要とする場合には、モータ制御部34に対して移動指令信号を出力する移動指令部44が含まれる。
【0014】
上記演算制御部40では、読み込んだNCプログラムを解析すると、NCプログラムの各ブロック毎に番号を付与する。例えばNCプログラムは、オペレータが加工すべき軌跡に沿って予め組むものであり、直線加工の指示とその長さ、曲線加工の指示とその曲率、また、曲線加工時の回り方向、例えば時計方向か、反時計方向かの指示などを組み入れた多数のNCプログラムブロックの集まりとして表され、解析時に、このブロックに対して自動的に番号が割り付けられる。従って、1つのプログラムブロックは1つの直線或いは曲線の加工軌跡線分として表される。図3はNCプログラムのブロックに対する番号割り付けの一例を示しており、図示例のような加工軌跡をNCプログラムで書くと、解析時に、例えば(1)〜(10)に示すように加工順に従ってブロック毎に番号が付される。このようなブロック番号と対応するプログラムブロックは、例えば記憶部42にテーブル化されて記憶される。
【0015】
さて、図2に戻って、46は画像処理部であり、この画像処理部46は、上記演算制御部40で解析されたNCプログラムの加工軌跡をLCD32の画面サイズにスケーリングするスケーリング部48、スケーリング結果を画面の座標に変換する座標変換部50、上記加工軌跡のドットデータを作成するドットデータ作成部52、このドットデータと、ブロック番号と、画面の座標をデータテーブル化して記憶する、例えばRAMよりなる一時記憶部54、LCD画面上にポインタを表示するポインタ出力部56等が含まれる。この画像処理部54により、LCD32の加工軌跡、加工位置等の必要な表示を行なうようになっている。
【0016】
次に、断線復帰装置36側の説明を行なう。この断線復帰装置36は、ユニット28上の表示手段32と、加工軌跡上であってワイヤガイドが戻るべき部分を指定する入力手段58と、この入力に基づいて加工軌跡上のワイヤガイドが戻るべき位置(以下、アプローチ位置と称す)を決定する位置決定手段60と、ワイヤガイドの現在位置から上記戻るべき位置を経由して復帰経路を求める復帰経路演算手段62とにより主に構成される。
また、上記位置決定手段60は、ワイヤガイドが戻るべき部分の属するNCプログラムブロック(以下、アプローチブロックと称す)を決定するブロック決定部64と、このアプローチブロックにより表される加工軌跡の線分上において、ワイヤガイドの現在の位置からどの点が最も近いポイントかを決定してそれをアプローチ位置とする座標演算部66とにより主に構成される。
【0017】
上記入力手段58は、LCD32の画面上に設けられたタッチパネルセンサとして構成されており、指によりここで押圧指示された画面位置は、画面位置検出部68によって検出され、その部分をポインタ出力部56によってポインタ表示できるようになっている。この場合、既に表示されているポインタがあれば、その既表示のものは消去される。
ブロック決定部64は、指で触れた部分の座標と上記一時記憶部54に記憶されている軌跡ドットデータの座標とが一致したものがあれば、その一致座標の属する軌跡を表わすプログラムブロック番号を特定し、これをアプローチブロックとする。このブロック番号は、一時記憶部54に記憶しておく。
【0018】
座標演算部66は、上記アプローチブロックによリ表わされる加工軌跡線分の上の、どのポイントがワイヤガイドの現在の位置に最も近いポイントであるかを決定し、これをアプローチ位置(座標)とする。この場合、ワイヤガイドの位置は、マニュアルで動かした場合でも常時、認識されている。アプローチ位置の決定に際しては、後述するように、ガイド位置からその軌跡線分に対して垂線を引いてその交点を求めればよく、また、垂線が引けない場合には、その軌跡線分の内の、開始点か、終了点の内、ガイド位置に近い方の点を求めればよい。
復帰経路演算手段62は、上記アプローチ位置と記憶されている断線(中断)位置の座標とに基づいて、アプローチ位置から中断位置までの間に介在するすべてのプログラムブロックを記憶部42から読み込み、ワイヤガイドがたどるべき復帰経路を求める。この復帰経路を演算制御部40にて解析させることにより、ワイヤ電極再結線後、まず、ワイヤガイドは放電加工用の電圧を極間に印加させない状態でアプローチ位置まで移動して、ワイヤ電極が加工溝を通って上下方向に直線状となるようにし、その後、無放電でワイヤ電極が加工溝をたどって移動するようにワイヤガイドを相対移動させる。そして、中断位置にワイヤ電極が達したならば、ここで放電加工用の電圧を極間に印加して放電加工を再開するように制御することになる。
【0019】
次に、以上のように構成された装置に基づいて行なわれる本発明方法について説明する。
まず、所望の加工軌跡となるように予め組んだNCプログラムを入力手段30から読み込むと、これを演算制御部40は解析し、各プログラムブロックに番号を付すことになる。図3中の実線は加工軌跡の一例を示し、加工順に従って、直線状線分や円弧状の線分など、ブロック毎に番号が自動的に付される。図示例においては、(1)〜(10)までのブロック番号が付されているが、実際には、加工形状に従って、もっと多くの番号が付される。そして、実際の加工時には、このブロック番号順に従って加工軌跡をたどるようにワイヤガイド14A、14Bと被加工物Wの相対移動が制御される。
【0020】
解析結果のブロック番号は、プログラムブロックと共に記憶部42に記憶され、一方、プログラムを解析することによって得られる移動指令は移動指令部44へ入力され、そして、モータ制御部34から各モータへ駆動信号が供給される。これにより、プログラムブロックによって表わされる加工軌跡を描くように、上記ワイヤガイドや被加工物Wの相対移動が制御される。
これにより、図1において、ワイヤ電極22は所定の張力が印加されつつ、更新走行され、これと被加工物Wとの間に放電を生ぜしめて相対移動制御下で加工が行なわれていくことになる。
【0021】
図2に戻って、また、上記演算制御部40での解析データは、画像処理部46のスケーリング部48に与えられ、ここでデータをLCD画面サイズにスケーリングする。このスケーリングデータは座標変換部50にて画面データに変更され、このデータに基づいてドットデータ作成部52が加工軌跡のドットデータを作成する。この軌跡のドットデータは、ブロック番号及び画面の座標と共にテーブル化されて一時記憶部54に記憶される。また、上記座標変換部50で得られた座標データに基づいて加工軌跡がLCD32上に表示される。このようにして、LCD画面上に表示された加工軌跡が図4(A)に示されており、図4(B)はこの時の被加工物Wの状態を示す。
図4(A)において加工軌跡70は全体が表示されており、現在の加工位置が*印で示されている。尚、LCD画面の左上には、現在の加工位置が座標で表示されており、左下にはNCプログラムが表示されている。そして、上記*印で示される加工位置に該当するNCプログラムブロックは色別表示され判別容易になっている。また、通常の加工時においては、加工位置とワイヤガイドの実際の位置は、平面的に見た場合には、ある程度ずれている場合もあるが、略一致している。
【0022】
また、LCD表示面上には被加工物の輪郭は表示されないが、図4(A)及びこれ以降の表示面には理解を容易にするために被加工物の輪郭72を破線で示している。
この時、図4(B)に示す被加工物Wには加工に従って加工軌跡74が実際に形成されており、スタート地点にはスタート時にワイヤ電極を挿通するスタートホール75が形成されている。
また、現在の加工位置は、逐次取得されて記憶され、また、ワイヤガイドの位置座標も常時、認識されて記憶される。
さて、このように放電加工を継続している内に、図4(A)に示す*印の地点でワイヤ電極が断線して加工が中断したものとする。
すると、オペレータはリモートコントローラを用いたマニュアル操作で上下ワイヤガイド14A、14Bを結線が行ない易い位置、近傍まで戻すように移動させ、そこで、断線したワイヤ電極22を加工溝(加工済の加工軌跡)内に挿通して再結線する。この時、中断位置(座標)は記憶される。この場合、ワイヤガイドを戻した時に、これが加工溝上に一致するようにコントロールすることは難しい。加工溝とワイヤガイドは上下方向には一直線にはならず、ずれが発生するのが一般的であるからである。
【0023】
図5(A)はワイヤガイド14Aを加工溝が少し広くなっている部分の近傍まで戻した時の状態を示し、平面内においてワイヤガイド14Aは加工軌跡70から僅かにずれている。また、図5(B)は、この時のワイヤ電極22の結線状態を示しており、加工軌跡70を挿通させて上下のワイヤガイド14A、14Bに支持されたワイヤ電極22はくの字状に折れ曲がっている。もし、この状態でワイヤ電極22に対して無理な動作を与えれば、再度断線が生じてしまう。
そこで、オペレータはLCD22の表示画像を見ながら、加工軌跡上の、ワイヤガイドが戻るべき部分を指定する。この戻るべき部分は、一般的には、そのワイヤガイドの現在位置が加工済の加工軌跡に対して近い部分であり、オペレータがその部分をおおよその感覚で指定することになる。また、この部分は、当然のこととしてワイヤ電極22が挿通されている部分ではあるが、完全に一致するものでなくてもよい。
この戻るべき部分の指定は、LCD32に併設したタッチパネルセンサ58に指で押圧することにより指定することができる。図6に示すLCD表示面上において破線で示す丸印は、オペレータにより、押圧された戻るべき部分76を示している。すると、この押圧された部分は、画面位置検出部68を介して検出され、ポインタ出力部56はオペレータに確認させるために押圧部分をポインタ78により表示する(図6参照)。
【0024】
一方、再スタート信号を待ってブロック決定部64は、上記押圧された戻るべき部分76の座標を基にして、これが上記一時記憶部54に記憶されている加工軌跡のどの部分に一致するものか、或いは属するものかを判断し、一致するものがあれば、それが属するブロック番号を特定し、記憶しておく。
このブロック番号が特定されたならば、そのブロック番号のプログラムブロック(アプローチブロック)により表わされる加工軌跡線分を、オペレータに認識させるために色変えしたり、或いはその線分を太くしたりする。図7はLCD表示面であり、戻るべき部分76が属するプログラムブロックにより表わされる加工軌跡線分80を太く表示した状態を示している。尚、この部分は、図3を参照すると明らかなようにプログラムブロック(2)に対応している。
【0025】
次に、座標演算部66は、このブロック番号とNC制御部38の記憶部42に記憶されているプログラムブロック、及び現在のワイヤガイドの位置とに基づいてワイヤガイドが戻るべき位置、すなわちアプローチ位置(座標)を求める。この算出部は、上記アプローチブロックにより表わされる加工軌跡線分の内、ワイヤガイドの現在位置に最も近い点をアプローチ位置として決定する。図8はアプローチ位置を求める手順を示しており、図8(A)はアプローチブロックの加工軌跡線分80に対して、ワイヤガイド14Aの現在位置(平面投影において)から垂線が引ける場合を示し、この場合には垂線と加工軌跡線分80との交点がアプローチ位置82として決定される。図8(B)は加工軌跡線分80に対して垂線が引けない場合であり、この時には、この線分の内の開始点と終点の内のいずれか、ワイヤガイド14Aに近い方の点がアプローチ位置(指定ブロックの終点)82として決定される。
このようにアプローチ位置82が決定されると、復帰経路演算手段62は、上記アプローチ位置82から前記中断位置が属するプログラムブロックまでの間に存在するプログラムブロックのデータを記憶部42から読み込み、復帰軌跡のデータを作成する。本実施例では、図3に示すブロック番号と中断位置とを参照すれば、ブロック番号(2)、(3)、(4)、(5)のブロックが読み込まれることになる。これにより、このアプローチ位置82から中断位置までワイヤ電極22をどのような軌跡で相対移動させればよいかが判る。
【0026】
さて、このように中断位置までの復帰軌跡が算出されたならば、このデータを演算制御部40に渡し、ワイヤ電極22がその軌跡に沿って移動するようにワイヤガイドを相対移動させる。
まず、図9(A)に示すようにワイヤガイド14Aを上記アプローチ位置82まで直線的に相対移動させて、図9(B)に示すようにワイヤガイド14A、14Bを加工軌跡70の真上と真下に位置させ、ワイヤ電極22を上下方向に直線上にする(図5(B)参照)。この操作中は、当然のこととして極間に電圧を供給しない。次に、上記算出した復帰軌跡に沿ってワイヤ電極22を中断位置まで、放電が生じるような電圧を極間に供給せず、いわゆる無放電の条件下で相対移動し、そして、中断位置に達したならば、放電加工が再開され継続される。このようにして、断線復帰操作が完了することになる。
このように、オペレータは、断線により放電加工が中断したならば、マニュアル操作でワイヤガイドを結線が行ない易い位置まで移動してワイヤ電極の再結線を行ない、タッチパネルセンサで戻るべき部分を指定した後に再スタート信号を入力するだけで、迅速に断線復帰操作を行なうことができる。
従って、従来のようにワイヤ断線の復帰操作をすべて手動で行なっていた場合と異なり、復帰操作を容易にかつ確実に行なうことが可能となる。
また、加工軌跡の形状に左右されず、これが複雑な場合でも、容易且つ迅速に断線復帰操作を行なうことができる。
【0027】
以上の一連の流れを図10及び図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、NCプログラムを読み込んで解析した後に、放電加工が開始されると(S1)、ワイヤ電極22の断線による中断が生じたか否かが常時判断される(S2)。中断が発生すると、その中断位置の座標が記憶部42に記憶される(S3)。
オペレータは、ワイヤ電極の中断が発生すると、マニュアル操作でワイヤガイドを結線がし易い場所に移動し、そこで、加工溝にワイヤ電極を挿通して再結線する(S4)。この時のワイヤガイドの現在位置は記憶されており(S5)、オペレータは次に、LCD32上の加工軌跡の戻るべき部分にタッチパネルセンサ58上から指で触れる(S6)。するとこの触れた部分は画面位置検出部68により検出され、ブロック決定部64は、指の触れたドットデータ群を通過する加工軌跡の属するNCプログラムのブロック番号を、一時記憶部54の記憶内容を参照しつつ特定する(S7)。
【0028】
そして、特定したブロック番号を一時記憶部54へ記憶すると同時に、そのブロック番号に対応するプログラムブロックにより表わされる軌跡の描画線の1ブロック分の表示態様を変え、オペレータに認識させる(S8)。次に、座標演算部66は、ワイヤガイドの現在位置から上記特定されたプログラムブロックにより表わされる加工軌跡に対して垂線が引けるか否か判断し(S9)、引ける場合には、その垂線と加工軌跡との交点をアプローチ座標とする(S10)。また、垂線が引けない場合には、特定されたアプローチブロックにより表わされる加工軌跡の開始点または終点の内、ワイヤガイドに近い方をアプローチ座標とする(S11)。
そして、このようにアプローチ座標が決まったならば、オペレータの再スタート信号を待って(S12)、復帰経路演算手段62はアプローチ座標から中断位置の属するプログラムブロックまでの復帰経路を算出する(S13)。
このように復帰経路が求まったならば、まず、無放電でアプローチ座標まで直線でワイヤガイドを移動し(S14)、次に、無放電でアプローチ座標から復帰軌跡に沿ってワイヤガイドを移動する(S15)。そして、ワイヤ電極が中断位置に達したならばワイヤ電極と被加工物との極間に放電加工のための電圧を供給して加工を再開する(S16)。
【0029】
上記したS12の再スタート信号は、オペレータが入力手段30から入力するが、S6におけるタッチセンサパネルへの接触後ならば、いつ入力してもよい。
このように、ワイヤ電極切断時の復帰動作を、加工軌跡の形状に関係なく、迅速且つ確実に行なうことができる。
上記したフローの動作は、基本的動作のみを示したものであるから、本発明の目的、処理の順序やその他の処理を組み合わせるなどの変形が可能でありこれに限定されるものではない。
また、表示手段としてLCD32を用いたが、これに代えてCRTディスプレイを用いてもよいし、また、タッチパネルセンサ58に代えて、表示軌跡上に対応させてブロック番号を表示させ、この対応番号をテンキー入力手段より入力するなどして復帰部分入力手段58の機能を果たすようにするなど、種々の変形が可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のワイヤ放電加工装置の断線復帰装置及びワイヤ放電加工における断線復帰方法によれば、少なくとも次のように優れた作用効果を発揮することができる。
ワイヤ電極の断線した位置がどこであってもワイヤガイドを結線の行ない易い場所へ移動して再結線し、中断位置に復帰させることができ、断線復帰が迅速に行なえる。加工軌跡上の戻るべき部分を指定するだけで、加工軌跡上の復帰位置及び復帰軌跡を自動的に算出し、それに沿ってワイヤガイドは自動的に移動されるので、復帰操作が容易且つ確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の断線復帰装置を組み込んだワイヤ放電加工装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す装置の主要部を示すブロック構成図である。
【図3】NCプログラムの各ブロックに割り付けられた番号の一例を示す図である。
【図4】加工中断が生じる時までの表示手段上における表示態様とそれに対応する被加工物の状態を示す図である。
【図5】ワイヤガイドを所望の位置にマニュアルで移動した時の被加工物の平面図と、ワイヤ電極を再結線した時の状態を示す断面図である。
【図6】タッチパネルセンサ上に所望の部分を押圧した時の状態を示す平面図である。
【図7】押圧した部分に属するプログラムブロックの加工軌跡の表示態様を変化させた状態を示す図である。
【図8】ワイヤガイドに最も近い加工軌跡線分上のアプローチ位置を決定する方法を説明するための図である。
【図9】ワイヤガイドをアプローチ位置に移動させた時の状態を示す平面図と断面図である。
【図10】本発明方法のフローチャートを示す図である。
【図11】本発明方法のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
2…ワイヤ放電加工装置
14A…上ワイヤガイド
14B…下ワイヤガイド
22…ワイヤ電極
28…電源ユニット
30…入力手段
32…LCD(表示手段)
34…モータ制御部
36…断線復帰装置
38…NC制御部
40…演算制御部
46…画像処理部
58…タッチパネルセンサ(入力手段)
60…位置決定手段
62…復帰経路演算手段
64…ブロック決定部
66…座標演算部
70…加工軌跡
76…戻るべき部分
82…アプローチ位置(復帰位置)
W…被加工物

Claims (6)

  1. ワイヤ電極が断線した時に、任意の位置にワイヤガイドを相対移動させて前記ワイヤ電極を結線した後、前記ワイヤ電極を中断位置に復帰させて放電加工を継続させるようにした断線復帰装置であって、加工軌跡を表示する表示手段と、前記加工軌跡における前記ワイヤガイドが戻るべき部分を入力する入力手段と、前記戻るべき部分に基づいて前記加工軌跡上の前記ワイヤガイドが戻るべき位置を決定する位置決定手段と、前記ワイヤガイドの現在位置から前記戻るべき位置を経由して前記中断位置に至る復帰経路を求める復帰経路演算手段とを備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置の断線復帰装置。
  2. 前記位置決定手段が、前記戻るべき部分の属するNCプログラムブロックを決定するブロック決定部と、該ブロック決定部により決定された前記NCプログラムブロックにより表される加工軌跡上の前記ワイヤガイドの現在位置に最も近い位置に基づいて前記戻るべき位置を算出する座標演算部とを含んでなることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工装置の断線復帰装置。
  3. 前記入力手段は、前記表示手段に併せて設けられたタッチパネルセンサであることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤ放電加工装置の断線復帰装置。
  4. ワイヤ電極が断線した時に、任意の位置にワイヤガイドを相対移動させて前記ワイヤ電極を結線した後、前記ワイヤ電極を中断位置に復帰させて放電加工を継続するようにしたワイヤ放電加工における断線復帰方法であって、指定された前記ワイヤガイドが戻るべき部分と、前記ワイヤガイドの現在位置とに基づいて加工軌跡の前記ワイヤガイドが戻るべき位置を求めて前記ワイヤガイドが戻るべき位置に前記ワイヤガイドを相対移動させ、前記中断位置に復帰させた後に放電加工を継続するようにしたことを特徴とするワイヤ放電加工における断線復帰方法。
  5. 前記戻るべき部分に属するNCプログラムブロックを特定し、前記特定されたNCプログラムブロックで表される加工軌跡上の位置を算出して、前記ワイヤガイドが戻るべき位置を求めることを特徴とする請求項4記載のワイヤ放電加工における断線復帰方法。
  6. 前記特定されたNCプログラムブロックにより表される加工軌跡上であって前記ワイヤガイドの現在位置から最も近い位置を前記ワイヤガイドが戻るべき位置として前記戻るべき位置を求めることを特徴とする請求項5記載のワイヤ放電加工における断線復帰方法。
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