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JP3812869B2 - 円筒研削方法及び装置 - Google Patents

円筒研削方法及び装置 Download PDF

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JP3812869B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を進退送り自在とし、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにした前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、回転軸線と同心に円筒外周面を研削する円筒研削加工においては、ワークがその回転軸線の周りに回転され、この回転軸線を横切る方向に回転砥石を進退させて研削加工が行われる。
研削加工の間、ワークは研削抵抗により、砥石から逃げる方向に撓みを生じ、これによりワークの円筒研削面は楕円となる。この楕円の程度は、ワークに対する砥石の切り込み速度の大小により左右され、通常、切り込み速度を速くし研削能率を向上するに連れて、楕円の程度は大きくなる。
ワークが楕円形状に研削されるのを防止するため、砥石の押し込み方向と反対方向からワークを押し付けるレスト装置が高能率研削においては通常使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レスト装置の使用は、研削盤の製造コスト及び維持コストを増加させ、レストシューと加工面との摩擦による面精度の低下を生じ、さらには、研削盤のワークテーブル上の構成を複雑にし、研削屑や脱落砥粒がテーブル上に堆積する問題を生じる。
さらに、レスト装置の押し込み量の設定等は微細な調整を必要とし、レストシューの摩耗が真円度の悪化を徐々にもたらすなど、レスト装置を用いた場合でも、円筒加工面に高い真円度を得ることは、必ずしも容易でない等の間題もある。さらに、円筒研削においては、砥石の切り込み速度を順次低下させる複数の研削工程により加工しているが、加工能率を向上する観点から、切り込み速度が遅い最終切り込み工程(例えば、仕上研削工程)における取代を可及的に小さくすると、この工程に先行する切り込み速度の速い工程(例えば、粗研削工程)における真円度の悪さを最終切り込み工程では除去できず、このため時間のかかる最終切り込み工程での取代を大きく設定するように研削条件を決めなければならず、結果として加工能率を向上できないとの間題も生じている。
【0004】
そこで、本発明の目的は、レスト装置の有無に拘らず、高精度な真円度に円筒研削面を加工することのできる円筒研削方法及び装置を提供することである。
本発明の他の目的は、レスト装置を使用しない場合やレスト装置の使用が困難な場合においても、高精度な真円度に円筒研削面を加工することのできる円筒研削方法及び装置を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、最終仕上工程に先行する工程の終了時点で高精度の真円度が確保されているようにし、これに連続する最終仕上工程における取代を小さくでき、これにより加工時問を短縮することのできる円筒研削方法及び装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の円筒研削方法は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を切り込み前進して前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削方法において、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにし、未加工のワークを粗研削工程について試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により粗研削真円補正データを作成し、仕上研削工程の試し研削は、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムに従って試し仕上研削を行ない、真円度誤差を測定し、この誤差により仕上研削真円補正データを作成し、正規の研削においては、粗研削工程及び仕上研削工程をそれぞれの真円補正データに従って研削加工することを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明の円筒研削装置は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を進退送り自在とし、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにした前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削装置において、正規のプログラムにより全研削工程を通して試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した全研削真円補正データと、正規のプログラムにより試し粗研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した粗研削真円補正データと、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムにより試し仕上研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した仕上研削真円補正データとを登録する手段と、正規の研削において、未加工のワークの研削条件によるモードを判別する手段と、前記モード判別手段のモードにより、前記正規のプログラム、全研削真円補正データ、粗研削真円補正データ、仕上研削真円補正データの各組み合わせを選択して研削加工を実行する手段とを有することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の円筒研削方法は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を切り込み前進して前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削方法において、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにし、未加工のワークを粗研削工程について試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により粗研削真円補正データを作成し、仕上研削工程の試し研削は、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムに従って試し仕上研削を行ない、真円度誤差を測定し、この誤差により仕上研削真円補正データを作成し、正規の研削においては、粗研削工程及び仕上研削工程をそれぞれの真円補正データに従って研削加工するものであるので、効率的で、かつ、特に高精度の真円度が得られる。
【0016】
更に、本発明の円筒研削装置は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を進退送り自在とし、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにした前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削装置において、正規のプログラムにより全研削工程を試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した全研削真円補正データと、正規のプログラムにより試し粗研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した粗研削真円補正データと、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムにより試し仕上研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した仕上研削真円補正データとを登録する手段と、正規の研削において、未加工のワークの研削条件によるモードを判別する手段と、前記モード判別手段のモードにより、前記正規のプログラム、全研削真円補正データ、粗研削真円補正データ、仕上研削真円補正データの各組み合わせを選択して研削加工を実行する手段とを有するものであるので、未加工の研削加工箇所の研削条件により、モードを設定し、そのモードに応じて、正規のプログラム、全研削真円補正データ、粗研削真円補正データ、仕上研削真円補正データの組み合わせを選択して研削加工ができるので、効率的かつ高真円度の加工が可能となる。
本発明による円筒研削方法及び装置は、全体形状が円筒状のワークのみではなく、加工すべき一部の形状が円筒のワークをも対象とするものである。
【0017】
【実施例】
本発明の実施例の円筒研削方法及び円筒研削装置を図1〜図9について説明する。
図1は本発明の実施例の円筒研削方法を実施するための円筒研削装置の全体を示したものである。円筒研削装置はその平面図を図1に示すように、ベッド1の横長手方向に設けられたガイド3、3上にテーブル2が横方向(Z軸方向)に摺動自在に載置されている。テーブル2上にはその両端に主軸台7及び心押台8が対向する位置に設けられ、主軸台7にはワーク回転駆動用の主軸駆動モータ9が設けられ、チャック等により円筒状ワークWの軸端を把持して回転駆動できるように構成され、一方心押台8はそのセンター等によりワークWの軸芯を支持するように構成されている。したがって、その主軸台7の主軸軸線と同軸に円筒状ワークWが把持されるので、円筒状ワークWはその軸線回り(C軸)に制御回転されるようになっている。ここに示された円筒状ワークWは、複数の要加工箇所がワークの軸線方向に分離・配列されているものである。
【0018】
ベッド1上にはZ軸送りねじ4が横方向(Z軸方向)に配置され、その左端に設けられたテーブル駆動モータ5によりテーブル2を横方向(Z軸方向)に摺動させることができる。このテーブル2のZ軸方向の移動により、円筒状ワークWの要加工箇所の位置を砥石15に対して整列するように割り出すことができる。
【0019】
前記テーブル2の摺動方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向)に、X軸ガイド11、11上を摺動できるように回転砥石15を有する砥石台10が載置されており、X軸送りねじ12、砥石台駆動モータ13により、砥石15を円筒状ワークWの軸線と直交する方向(X軸方向)に移動できるように構成されている。砥石台10には、当然回転砥石15を回転させるための駆動モータ(図示せず)が備えられている。前記砥石台駆動モータ13、テーブル駆動モータ5、主軸駆動モータ9は、いずれも、プログラムに基づいて制御回転できるようにエンコーダ14,6を備えたサーボモータで構成される。
【0020】
本実施例の円筒研削装置は、数値制御装置(CNC)20を備えており、数値制御装置20は、入力装置21を介して、加工動作プログラム、試し研削プログラムが蓄積されており、さらに、試し研削プログラムにより作成される、全研削真円補正データ30、粗研削真円補正データ40及び、2つの仕上研削真円補正データ50、60が登録され、CPU22、インターフェース23を介し、主軸駆動モータ(C軸)制御回路16、砥石台駆動モータ(X軸)制御回路18、テーブル駆動モータ(Z軸)制御回路17が接続され、主軸駆動モータ9、砥石台駆動モータ14、テーブル駆動モータ5を夫々制御駆動するようになっている。したがって、数値制御装置20により、テーブル駆動モータ5を駆動して円筒状ワークWの加工箇所が砥石15の位置と整列するようにテーブル2を割り出し、主軸駆動モータ9により円筒状ワークWを回転させ、その回転位相に応じた形状位置に、砥石15を接触させるように砥石台駆動モータ14を制御駆動することにより円筒状ワークWの円筒部分の研削加工を行うものである。
さらに、ベッド1上の砥石15と対向する位置には、インプロセス定寸装置90が設けられており、砥石15によるワークWの加工中には、前進して、その2つのフィーラ91、91´が加工面に接触し(図9)、真円補正を行うための真円度誤差の測定を行うように構成され、その測定結果は、インターフェース23´を介してCPU22に入力される。
【0021】
数値制御装置20に蓄積されている研削サイクルを実行するための加工動作プログラムは後述の図7に示されているフローチャートに基づくものであり、試し研削プログラムは各真円補正データを作成するためのプログラムであり、全研削真円補正データ30、粗研削真円補正データ40及び2つの仕上研削真円補正データ50、60は前記試し研削プログラム(図3〜図6参照)により作成された真円補正データである。
【0022】
図2は、本実施例の円筒研削方法を実現するために工程管理者又はオペレータが加工準備及び実行プロセスを実行するための作業プロセスを示している。
まず、ステップ24では研削条件の設定が行われる。これは図8に示されるように、円筒状ワークWの仕上径Dfに対して取代eがある場合、砥石は早送りによりワークWに近付けられ、ワークWに接触する手前の点(a)で粗研削送りに切り替えられ、仕上研削代を残した点(b)で仕上研削(精研削)送りに切り替えられ、仕上径Dfに達したところで、砥石が早送り後退で原位置に戻されるという研削サイクルが設定され、更に、夫々の切り込み量、速度等が設定される。
【0023】
次に、ステップ25において、全研削真円補正データを作成する。これは図3に示されるフローチャートにより、未加工ワークを試し削りして行われるが、まず、ステップ32において、正規のプログラム(通常の円筒研削)により未加工ワークに前記粗研削、仕上研削の研削サイクルによる全研削が実行される。全研削が終了した段階で加工箇所の真円度測定を行い(図9)、真円度誤差抽出が行われる(ステップ33)。ステップ34において、抽出された誤差に基づいて全研削真円補正データを作成する。
【0024】
この全研削真円補正データを作成する工程は図9に示されている。すなわち、全研削が終了した段階で、ワークWの外周に接触している定寸装置90の2つのフィーラ91、91´により、図略のエンコーダの出力であるワークWの回転軸(C軸)の角度C0,C1,C2,C3・・・・Cnに応じた真円度誤差を求め補正値α0、α1、α2、α3・・・・αnとしている。この定寸装置は、インプロセス定寸装置として示され、加工中にのみ前進し、ワークの加工外周面に上下1対のフィーラ91、91´を接触させており、仕上寸法に達したことを検知する機能、及び、研削送り速度の切り替え点の検出機能も兼ねている。本発明の実施のためには、特にはインプロセス定寸装置は必要なく、オフラインで真円度誤差を測定しても良い。
他の粗研削真円補正データ40、2つの仕上研削真円補正データ50、60を作成する場合にも同様の作業が行われる。
【0025】
次に、図2のステップ26において、粗研削真円補正データ40を作成する。これは図4に示されるフローチャートにより、未加工ワークを試し研削して行われるが、まず、ステップ42において、正規のプログラム(通常の円筒研削)により未加工ワークの粗研削が実行される。粗研削が終了した段階でワークの真円度測定を行い、真円度誤差抽出が行われる(ステップ43)。ステップ44において、抽出された誤差に基づいて粗研削真円補正データ40を作成する。
【0026】
続いてステップ27において、仕上研削真円補正データ50、60の作成が行われる。これは図5又は図6に示されたフローチャートにしたがって2種類の仕上研削真円補正データ50、60が作成される。図5においては、図4のフローチャートにおいて粗研削真円補正データ40を作成するために試し研削されたワークは使用せず、別の未加工のワークを試し研削して仕上研削真円補正データ50の作成が行われる。すなわち、ステップ52において、図4のフローチャートにしたがって作成された粗研削真円補正データ40を使用して、未加工ワークの粗研削を行い、その後正規のプログラム(通常の円筒研削)によりワークの仕上研削が実行(ステップ53)される。仕上研削終了後、真円度測定を行い、真円度誤差抽出を行い(ステップ54)、その抽出誤差に基づいて仕上研削真円補正データ50を作成する(ステップ55)。
【0027】
図6のフローチャートは、図5のフローチャートにより作成された仕上研削真円補正データ50に代わって用いられる別の仕上研削真円補正データ60を作成するためのものであり、作成過程が相違している。ステップ62において、粗研削は行わず、正規のプログラム(通常の円筒研削)により、未加工ワークの仕上研削を行い、仕上研削終了後、真円度測定して、真円度誤差抽出を行い(ステップ63)、その抽出誤差に基づいて仕上研削真円補正データ60を作成する(ステップ64)。
以上作成された全研削真円補正データ30、粗研削真円補正データ40、2つの仕上研削真円補正データ50、60は、図2のステップ28において数値制御装置(CNC)のメモリに登録しておく。
【0028】
前記図5の仕上研削真円補正データ50の作成では、粗研削真円補正データ40を使用して、未加工ワークの粗研削を行った後正規のプログラム(通常の円筒研削)により仕上研削を実施しているのに対して、図6の作成では、粗研削は行わず、未加工ワークに直接仕上研削のみが実行されるものであり、ワークの取代が小さく、粗研削工程が実施されない場合に用いられる仕上研削真円補正データを作成するものである。
なお、円筒状ワークWには、円筒加工する箇所が軸方向に離れて配列されているが、各加工箇所により、ワークの撓み状態が異なるので、各加工箇所毎に真円補正データを準備することが、高精度の真円度が要求される場合には必要となる。
【0029】
全研削真円補正データ30、粗研削真円補正データ40、2つの仕上研削真円補正データ50、60等が、数値制御装置(CNC)のメモリに登録(ステップ28)された段階で、図2のステップ29において、正規の研削加工を実行する。
ワークの正規の円筒研削加工は図7のフローチャートにより実行される。本円筒研削方法においては、そのワークの研削条件(ワークの材質、研削箇所、研削代の量、仕上げ公差等)により4つの補正モードにより実行される。概ね、補正モード1は、研削代が比較的多く、研削加工における真円度低下の少ない場合に、補正モード2は研削代が比較的多く、真円度低下が比較的に大きい場合に、補正モード3は粗研削代が小さい場合に、補正モード4は仕上研削条件が緩やかの場合や、仕上研削における真円度低下の少ない場合に適用される。
まず、加工開始の条件が整っているかを判定し(ステップ72)、OKでない場合にはアラームを出し(ステップ73)、OKの場合には加工されるワークの研削条件により予め選択された補正モードを読み込み(ステップ74)、ワークの加工箇所の位置にテーブルを割り出し(ステップ75)、砥石と加工箇所とを整列させる。
【0030】
次にステップ76で砥石台の早送り前進工程に移り、読み込まれた補正モードを識別して(ステップ77)補正モード1、2、3、4の選別をする。
補正モード1の場合には、早送り前進から粗研削送りに切り替わった段階で、数値制御装置(CNC)のメモリに登録しておいた前記図3のフローチャートに基づいて作成された全研削真円補正データ30を用いて砥石台を制御して(砥石台の通常のX軸切込送りに、ワークの回転角ごとに真円補正データを加味してC軸ーX軸制御を行う)粗研削を行う。粗研削が終わると仕上研削送りに切り替わるが、その場合にも前記と同様に全研削真円補正データ30を用いて砥石台を切り込み送りに真円補正データを重合して制御して仕上研削が行われる(ステップ79)。仕上研削工程が終了すると短時間の零切込研削(スパークアウト)工程(ステップ80)を経て、砥石台を早送り後退させ(ステップ81)、砥石台は原位置に戻り、ワークの1箇所の研削作業を終了する。
【0031】
次にそのワークにおいて未加工の加工箇所があるか否かを判定し(ステップ82)、ある場合にはステップ75に戻り、テーブル2を次に加工する加工箇所が砥石と整列する位置に割り出し、前記と同じ研削加工を実施し、全ての加工箇所の円筒研削加工が終了すれば、その円筒状ワークの研削作業が終了する。
【0032】
補正モード2の場合には、早送り前進から粗研削送りに切り替わった段階で、ステップ84において数値制御装置のメモリに登録しておいた前記図4のフローチャートに基づいて作成された粗研削真円補正データ40を用いて砥石台を制御して粗研削を行う。粗研削が終わると仕上研削送り(精研削送り)に切り替わるが、その場合には前記図5のフローチャートに基づいて作成された仕上研削真円補正データ50を用いて行われる(ステップ85)。仕上研削工程が終了すると短時間の零切込研削(スパークアウト)工程(ステップ80)を経て、砥石台を早送り後退させ(ステップ81)、砥石台は原位置に戻り、ワークの1箇所の研削作業を終了する。
【0033】
補正モード3の場合には、早送り前進から粗研削送りに切り替わった段階で、ステップ86において真円補正データを用いず、通常のプログラムにより砥石台を制御して粗研削を行う。粗研削が終わると仕上研削送り(精研削送り)に切り替わるが、その場合には前記図6のフローチャートに基づいて作成された仕上研削補正補正データ60を用いて行われる(ステップ87)。仕上研削が終了すると短時間の零切込研削(スパークアウト)工程(ステップ80)を経て、砥石台を早送り後退させ(ステップ81)、砥石台は原位置に戻り、ワークの1箇所の研削作業を終了する。
【0034】
補正モード4の場合には、早送り前進から粗研削送りに切り替わった段階で、ステップ88において数値制御装置のメモリに登録しておいた前記図4のフローチャートに基づいて作成された粗研削真円補正データ40を用いて砥石台を制御して粗研削を行う。粗研削が終わると仕上研削送り(精研削送り)に切り替わるが、その場合には真円補正データを用いず、通常のプログラムにより砥石台を制御して仕上研削を行なう(ステップ89)。仕上研削が終了すると短時間の零切込研削(スパークアウト)工程(ステップ80)を経て、砥石台を早送り後退させ(ステップ81)、砥石台は原位置に戻り、ワークの1箇所の研削作業を終了する。
以後の作業は補正モード1の場合と同じである。
【0035】
以上の研削サイクルにおいて、早送り前進工程から、粗研削送り工程に切り替わる点、粗研削送り工程から仕上研削送り工程に切り替わる点、更には仕上研削送り工程が終了して早送り後退工程に切り替わる点(図8におけるa、b、c点)は、真円度を測定するために設けられているインプロセス定寸装置90の測定結果により判別されるが、予め設定されたプログラムにより遂行しても良い。
【0036】
上述した図3〜図6の各試し研削及び図7の正規の研削における真円補正データを用いない正規のプログラム(通常の円筒研削)による各研削ステップ32、42、53、62、86、89は、具体的には、例えば下記の2通りの方法で実施される。
第1の方法は、このような各ステップにおいて、対応する真円補正データを使用せずに、図8に示す通常の研削サイクルの加工条件のみに依存して研削動作を制御するようにCPU22の制御プログラムを設計することにより実施される。この場合、ワークWを回転するサーボモータ9は、砥石台10を切り込み送りするサーボモータ13と非同期で所定回転速度又はそのステップに対応して定めた回転速度で回転される。
第2の方法は、図9に示す真円補正データ30、40、50、60と同様に、通常研削用のダミー補正データ(図略)をメモリに登録し、このダミー補正データの各ワーク回転角C0,C1,C2,C3・・・・Cnに対する補正値α0、α1、α2、α3・・・・αnを全て零の値として設定しておき、真円補正データ30、40、50、60の何れも使用しない場合は、前記ダミー補正データを使用するようにCPU22の制御プログラムを設計することにより達成される。この場合、CPU22は、ワークWの回転位相Cに対する零の補正値を図8の研削サイクルに従う砥石台10の切り込み送りに重合するようにサーボモータ9とサーボモータ13を同期制御するが、重合される補正値がゼロであるため、実質的に図8の研削サイクルのみに従う制御が実行される。
また、上記実施例におけるワークWの主軸チャックに対する取り付けは、試し研削と正規の研削とも同一の角度位相関係となるように行われることは言うまでもない。
【0037】
(その他の実施例)
前記の実施例においては、研削工程が、粗研削及び、仕上研削の2工程で行っているが、粗研削を1次、2次に分ける等、3工程以上として、真円度をさらに向上させることもできる。すなわち、この場合、各工程の終了時点で、真円度誤差が小さくなるように、各工程における真円補正データを作成し、その真円補正データにしたがってC軸−X軸制御することになる。
また、本円筒研削方法は、研削加工中にレスト装置を用いない、レストレス研削に最適であるので、その例について説明したが、レスト装置を用いた研削装置に適用しても良いことは当然である。
更に、真円度測定のために、本実施例においては、図9に示されたインプロセス定寸装置を用いたが、オフラインで測定しても良い。
なお、本実施例においては、円筒の外周面を真円に研削する円筒研削について説明したが、円筒の内面を真円に加工する内面円筒研削にも適用することができる。
また、本発明は、剛性が回転位相に応じて大きな異方性を持つクランクシャフトのジャーナル部の研削にも特に有効である。本発明をC軸−X軸制御形のクランクピン研削盤で実施する場合では、クランクシャフトのピン部及びジャーナル部を連続して高能率、かつ高精度に加工できる効果が奏せられる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の円筒研削方法は、1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を切り込み前進して前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削方法において、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにし、未加工のワークを粗研削工程について試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により粗研削真円補正データを作成し、仕上研削工程の試し研削は、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムに従って試し仕上研削を行って仕上研削真円補正データを作成し、正規の研削においては、粗研削工程及び仕上研削工程をそれぞれの真円補正データに従って研削加工するので、効率的で、かつ、特に高精度の真円度が得られる。
【0043】
更に、本発明の円筒研削装置によれば、未加工の研削加工箇所の研削条件により、補正モードを設定し、その補正モードに応じて、数値制御装置に登録されている正規のプログラム、全研削真円補正データ、粗研削真円補正データ、2種類の仕上研削真円補正データの組み合わせを選択して正規の研削加工ができるので、ワークの条件に応じて効率的、かつ高真円度の円筒研削加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円筒研削方法を適用する円筒研削装置の平面図。
【図2】本発明の円筒研削方法の加工準備、実行プロセスを示すフローチャート。
【図3】本発明の円筒研削方法の全研削真円補正データの作成過程を示すフローチャート。
【図4】本発明の円筒研削方法の粗研削真円補正データの作成過程を示すフローチャート。
【図5】本発明の円筒研削方法の仕上研削真円補正データの作成過程を示すフローチャート。
【図6】本発明の円筒研削方法の他の仕上研削真円補正データの作成過程を示すフローチャート。
【図7】本発明の円筒研削方法の正規の研削加工工程を示すフローチャート。
【図8】本発明の円筒研削方法の研削送り工程を示す概念図。
【図9】本発明の円筒研削方法に使用される真円補正データの説明図。
【符号の説明】
1: ベッド
2: テーブル
5: テーブル駆動モータ
9: 主軸駆動モータ
10: 砥石台
13: 砥石台駆動モータ
16: 主軸駆動モータ制御回路
17: テーブル駆動モータ制御回路
18: 砥石台駆動モータ制御回路
20: 数値制御装置(CNC)
30: 全研削真円補正データ
40: 粗研削真円補正データ
30: 仕上研削真円補正データ
30: 他の仕上研削真円補正データ
W: ワーク

Claims (2)

  1. 1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を切り込み前進して前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削方法において、
    ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにし、
    未加工のワークを粗研削工程について試し研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により粗研削真円補正データを作成し、仕上研削工程の試し研削は、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムに従って試し仕上研削を行ない、真円度誤差を測定し、この誤差により仕上研削真円補正データを作成し、
    正規の研削においては、粗研削工程及び仕上研削工程をそれぞれの真円補正データに従って研削加工することを特徴とする円筒研削方法。
  2. 1つの回転軸線上でワークを回転させた状態でこの軸線を横切る方向に回転砥石を進退送り自在とし、ワークの回転と砥石の進退送りとを同期して制御できるようにした前記ワークを所定直径の真円に研削する円筒研削装置において、
    正規のプログラムにより全研削工程を通して試し研削し、真円度誤差を測定しこの誤差により作成した全研削真円補正データと、
    正規のプログラムにより試し粗研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した粗研削真円補正データと、粗研削工程を前記粗研削真円補正データに従って研削することにより実質的に真円度誤差を排除した後に、正規のプログラムにより試し仕上研削し、真円度誤差を測定し、この誤差により作成した仕上研削真円補正データとを登録する手段と、
    正規の研削において、未加工のワークの研削条件によるモードを判別する手段と、
    前記モード判別手段のモードにより、前記正規のプログラム、全研削真円補正データ、粗研削真円補正データ、仕上研削真円補正データの各組み合わせを選択して研削加工を実行する手段とを有することを特徴とする円筒研削装置。
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