JP3781063B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、深絞り加工によって得られる鍋、薬罐及びコンデンサケース等に使用されるアルミニウム又はアルミニウム合金板を製造するアルミニウム又はアルミニウム合金板及びその製造方法に関し、特にコイル間の耳率差及び同一コイルの板幅方向における耳率のバラツキが小さいアルミニウム又はアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。なお、本願明細書においては、純アルミニウム及びアルミニウム合金を総称してアルミニウムという。
【0002】
【従来の技術】
従来より、多品種のアルミニウム板が種々の用途に使用されている。例えば、純アルミニウム板は、強度は低いものの、耐食性、絞り加工性及び溶接性が優れているため、家庭用品、日用品及び電気器具用のアルミニウム板として使用されている。
【0003】
これらのアルミニウム板は、通常、以下の方法により製造される。先ず、アルミニウム地金を溶解し、必要に応じてMg、Mn及び/又はFe等を添加して成分調整した後、鋳造して、例えば、厚さが500mm、幅が1000mm、長さが5000mm程度のアルミニウム鋳塊を得る。このアルミニウム鋳塊に、組織の均質化等を目的として、約600℃の温度で加熱して均質化処理を施す。なお、この均質化処理の前後及び途中において、必要に応じて面削を施し、鋳塊表面に形成された酸化皮膜層を除去する。
【0004】
上述の均質化処理終了後、鋳塊に熱間圧延を施す。この熱間圧延では、先ず、約600℃の温度で熱間粗圧延し、この温度において板切れが生じない厚さまで板厚を薄くする。板厚を更に薄くすると共に、板厚偏差及び表面粗度を低減させるため、例えば400℃の温度で、得られた板に熱間仕上圧延を施す。この熱間仕上圧延によって、板厚は更に薄くなり、5mm程度となる。以下、熱間仕上圧延により得られたアルミニウム板を熱間仕上圧延板という。なお、これらの温度及び加工板厚は、設備能力並びに上述の各温度における被加工材の加工性及び強度を考慮して、設定される。
【0005】
この熱間仕上圧延板に、必要に応じて冷間圧延を施し所定の板厚として、最終製品のアルミニウム板を得る。なお、この冷間圧延の前後又はその途中において、必要に応じて焼鈍処理を施して、アルミニウム板の強度、硬度及び特性等を調整する。以下、この冷間圧延されたアルミニウム板及び冷間圧延に加え焼鈍処理されたアルミニウム板を、総称して最終製品板という。更に、最終製品板を成形加工する必要がある場合は、例えば、各種容器及び自動車用外板では、絞り加工等の成形加工を最終製品板に施して、所定の形状としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
純アルミニウム板を深絞り加工して鍋等を製造する場合は、深絞り加工時にアルミニウム板に耳が発生するため、この耳の発生を抑制すると共に、耳率を制御することが課題となっている。これらのうち、純アルミニウム板の耳率を制御するために、主に製造条件と耳率との関係について、種々の研究が実施されている。アルミニウム板の板幅方向に沿ってブランクを採取し、このブランクを深絞り成形した場合に、研究段階においては、各ブランクの耳率のばらつきは殆ど生じない。以下、板幅方向に沿ってブランクを採取し、このブランクを深絞り成形した場合に、各ブランクに生じる耳の耳率を板幅方向における耳率という。しかし、工場等において上述の工程により最終製品板を実際に製造した場合は、板幅方向における耳率の相違が大きくなるという問題点がある。
【0007】
図5は、最終製品板を示す模式図である。最終製品板の圧延方向を矢印20にて示し、この圧延方向に垂直でロール軸(図示せず)に平行な方向(板幅方向)を矢印30にて示す。この最終製品板の端部からアルミニウム片10aを採取し、このアルミニウム片10aからブランクを採取して深絞り加工した後、耳率(第1耳率)を測定する。また、熱間仕上圧延板10の中央部からアルミニウム片10bを採取し、このアルミニウム片10bからブランクを採取して深絞り加工した後、耳率(第2耳率)を測定すると、第1耳率は第2耳率と異なる。即ち、同一の最終製品板であっても、その部位によって、深絞り加工時の耳率が異なり、耳率に差が生じる。この耳率の差は、製造条件が僅かに変化した場合であっても、大きく変化してしまい、板材の品質安定性を損なうという問題点がある。
【0008】
純アルミニウム板の製造方法は、例えば、特開昭63−224804号公報及び特開昭64−83308号公報に開示されている。これらに記載された方法では、均熱化処理温度、熱間粗圧延終了温度及び熱間仕上圧延終了温度を、独自の式に従って制御して、長手方向及び幅方向の組織を均一なものにすることを目的としている。これらの製造方法によれば、熱間仕上圧延板の組織は略均一な再結晶組織となると共に、冷間圧延時の板厚変動を抑制することが可能となる。但し、これらの製造方法は組織(再結晶組織)に対する制御方法であり、熱間圧延、冷間圧延及び熱処理等を施して最終製品板を得、この最終製品板に絞り加工及びしごき加工等を施した場合に、生じた耳の耳率を制御することができないという問題点がある。特に、各コイル間の耳率のばらつき及び同一コイルの板幅方向における耳率のばらつきを制御することは、殆ど検討されていない。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、熱間仕上圧延板の板幅方向及び板厚方向における耳率の差を小さくすることにより、最終製品における耳率が略一定なアルミニウム又はアルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金板は、アルミニウム又はアルミニウム合金鋳塊の均質化処理後、熱間粗圧延及び熱間仕上圧延を実施し、更に1又は複数回の冷間圧延及び1又は複数回の焼鈍処理を実施して製造されたアルミニウム又はアルミニウム合金板であって、前記熱間仕上圧延は加工率が82乃至90%、熱間仕上圧延の開始温度が350℃以下、熱間仕上圧延の終了温度が220乃至260℃であり、熱間仕上圧延物の絞り成形時の特性のうち、板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.5%以内、板厚方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であり、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延後の焼鈍物の絞り成形時の特性のうち、板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であることを特徴とする。
【0011】
上述のアルミニウム又はアルミニウム合金板は、更に1又は複数回の冷間圧延及び1又は複数回の焼鈍処理により製造されたアルミニウム又はアルミニウム合金板であって、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延物又は焼鈍物の絞り成形時の特性が板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であってもよい。
【0012】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金板の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金鋳塊を均質化処理した後、熱間粗圧延し、次いで熱間仕上圧延し、更に1又は複数回の冷間圧延を施すと共に1又は複数回の焼鈍処理を施してアルミニウム又はアルミニウム合金板を製造するアルミニウム又はアルミニウム合金板の製造方法において、前記熱間仕上圧延は加工率が82乃至90%、熱間仕上圧延の開始温度が350℃以下、熱間仕上圧延の終了温度が220乃至260℃であり、熱間仕上圧延物を絞り成形した際に板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.5%以内、板厚方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であると共に、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延後の焼鈍物を絞り成形した際に板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であるアルミニウム又はアルミニウム合金板を得ることを特徴とする。
【0013】
この場合に、前記熱間仕上圧延後のアルミニウム又はアルミニウム合金板に、更に1又は複数回の冷間圧延を施すと共に1又は複数回の焼鈍処理を施し、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延物又は焼鈍物を絞り成形した際に板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であるアルミニウム又はアルミニウム合金板を得てもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は、各アルミニウム又はアルミニウム合金コイル(板)間で耳率が異なる原因及び同一コイルであっても板幅方向に沿って耳率が異なる原因について鋭意研究した結果、熱間仕上圧延における加工率、開始温度及び終了温度を制御して、熱間仕上圧延板の板幅方向における耳率の差及び板厚方向における耳率の差を小さくすることにより、最終製品板の板幅方向における耳率が略一定となることを見出した。なお、板厚方向における耳率の差とは、熱間仕上圧延板の板厚方向に沿ってブランクを採取し、このブランクを深絞り成形した場合に、各ブランクに生じる耳の耳率をいう。
【0015】
熱間圧延では、加工温度が高いため、素材が極めて容易に変形する。このため、熱間仕上圧延において、素材の中心と表面とでは実質的な圧下率が極めて異なる。即ち、加工を受けやすい素材の表面は強加工され、一方、加工を受けにくい素材の中心は弱加工となる。熱間仕上圧延では、素材の厚さが比較的厚いため、このような加工の相異が顕著となる。従って、熱間仕上圧延板の板幅方向における耳率の差に加え、板厚方向における耳率の差を抑制することが重要であり、この抑制により、最終製品板の板幅方向における耳率の差を小さくすることができる。一方、最終製品板は冷間圧延を経て得られたものであり、厚さが極めて薄いことに加え、加工温度が低いため、素材強度が高く、板厚方向における組織は一定である。このため、最終製品板においては、板幅方向における耳率の差が重要であり、板厚方向における耳率の差を考慮する必要はない。
【0016】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金板の製造方法においては、アルミニウム鋳塊を均質化処理した後、熱間粗圧延し、更に熱間仕上圧延を施してアルミニウム板を製造する。また、必要に応じて、得られたアルミニウム板に更に冷間圧延及び焼鈍処理を施す。以下、本発明における数値限定の理由について説明する。
【0017】
熱間仕上圧延して熱間仕上圧延板を得た場合に、熱間仕上圧延はこの板の板幅方向及び板厚方向における耳率の差に大きな影響を与える。また、必要に応じて焼鈍処理しつつ、この熱間仕上圧延板を冷間圧延及び/又は焼鈍処理して最終製品板を得た場合に、前述の熱間仕上圧延は最終製品板の板幅方向における耳率の差に大きな影響を与える。最終製品板の板幅方向における耳率の差を小さくするためには、熱間仕上圧延の開始温度及び終了温度は可及的に低いことが好ましい。そこで、本発明においては熱間仕上圧延の開始温度及び終了温度を下記のように設定する。
【0018】
熱間仕上圧延の開始温度:350℃以下
開始温度が350℃を超える場合は、熱間仕上圧延中における回復の程度が部位により異なる。このため、得られた熱間仕上圧延板に冷間圧延及び焼鈍処理等を施して、最終製品板(アルミニウムコイル)を得た場合に、各アルミニウムコイル間で回復の程度が異なってしまうと共に、アルミニウムコイルの板幅方向おける回復の程度が異なってしまう。従って、アルミニウムコイルの耳率が部位毎に異なり、アルミニウムコイル間で耳率に差が生じる原因となると共に、アルミニウムコイルの板幅方向における耳率に差が生じる原因となる。従って、熱間仕上圧延の開始温度は350℃以下とする。
【0019】
熱間仕上圧延の終了温度:220乃至260℃
熱間仕上圧延の終了温度が260℃を超える場合は、熱間仕上圧延終了時に、熱間仕上圧延板の回復及び再結晶が部分的に生じるため、熱間仕上圧延板の板幅方向及び板厚方向のいずれについても各部位の耳率が異なり、熱間仕上圧延板の板幅方向における耳率に差が生じると共に、板厚方向における耳率に差が生じる。このような耳率の差は、最終製品板の耳率に悪影響を及ぼす。一方、熱間仕上圧延の終了温度が220℃未満では、潤滑油の蒸発が妨げられてアルミニウム板表面に腐食が発生する。従って、熱間仕上圧延の終了温度は220乃至260℃とする。
【0020】
熱間仕上圧延の加工率:80乃至90%
熱間仕上圧延の加工率が80%未満では、熱間仕上圧延中に回復する加工歪みが大きいため、結果として蓄積される加工歪みが小さくなり、熱間仕上圧延工程の上工程、即ち、熱間粗圧延で形成された組織を一旦破壊してその後再生するということができない。このため、熱間仕上圧延板の板厚方向及び板幅方向のいずれについても耳率に差が生じる。一方、熱間仕上圧延終了時の加工率が90%を超える場合は、板表面にロールマークが転写されやすく、表面品質が低下する。従って、熱間仕上圧延の加工率は80乃至90%とする。
【0021】
上述の条件で熱間仕上圧延することにより、板幅方向における耳率の最大値と最小値と差が1.5%以内、板厚方向における耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内のアルミニウム板(熱間仕上圧延板)を得ることができる。
【0022】
次に、上述の熱間仕上圧延板に冷間圧延及び焼鈍処理を施す場合に、焼鈍処理における熱処理条件について説明する。冷間圧延及び焼鈍処理を熱間仕上圧延板に施す場合に、粗焼鈍、中間焼鈍及び最終焼鈍等の熱処理条件を適切なものとすることにより、最終製品板の板幅方向における各部位の耳率の差を小さくし、耳率の大きさに板の方向性が生じることをより一層抑制することができる。
【0023】
焼鈍温度:好ましくは、300乃至400℃
焼鈍温度が300℃未満の場合は、O材化処理に時間がかかることに加え、温度が低いため、十分な再結晶組織を得ることができない。一方、焼鈍温度が400℃を超える場合は、2次再結晶組織が形成され、結晶粒が粗大化して成形性が劣化すると共に、板表面の肌荒れ等の問題が発生する。よって、焼鈍温度は300乃至400℃であることが好ましい。
【0024】
焼鈍処理における加熱速度:好ましくは、40℃/時以上
焼鈍処理における加熱速度が40℃/時未満の場合は、アルミニウム板にFe等が固溶している場合に、再結晶進行中にFe等が析出する。このため、板厚及び板幅方向のいずれについても焼鈍板の集合組織形成が変化し、最終製品板の板幅方向における耳率に差が生じる原因となる。よって、焼鈍処理における加熱速度は40℃/時以上であることが好ましい。
【0025】
上述の条件で焼鈍処理することにより、板幅方向における耳率の最大値と最小値と差が1.0%以内のアルミニウム板(最終製品板)を得ることができる。
【0026】
本発明におけるアルミニウム板の化学組成は、特に限定されるものではないが、微量の不純物元素のみを含有する純アルミニウム系のアルミニウム板について、耳率の差を小さくする効果がある。
【0027】
また、均質化処理温度は特に限定されるものではないものの、工業生産上の品質を安定化させるために、均質化処理温度は450乃至620℃であることが好ましい。また均質化処理は、必要に応じて1又は2回実施することが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、その比較例と比較して説明する。
【0029】
第1実施例
下記表1に化学成分を有するアルミニウム合金材を通常の方法にて溶解して鋳造(DC法)し、厚さが500mm、幅が1000mm、長さが5000mmのスラブを得た。得られたスラブを下記表2に示す条件で熱間仕上圧延した。各熱間仕上圧延板(実施例1〜2及び比較例1〜4)について、板幅及び板厚方向の夫々について耳率を測定し、耳率に差が生じているかどうかを調査した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
耳率の測定は以下のように実施した。図1乃至3は、耳率の測定を工程順に示す模式図である。図1乃至3において、図5と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。まず、図1に示すように、熱間仕上圧延板10を板幅方向(矢印30)に5等分して、幅が100mm、長さが100mmの平板1等5枚の平板を得た。次に、図2に示すように、切断面が各板厚方向(矢印40)に垂直となるように平板1を切断して、平板1の表面部から形成されている表面試験板1a及び平板の中央部から形成されている中央試験板1bを得た。各試験板の厚さは1乃至2mm、幅は100mm、長さは100mmである。次に、図3に示すように、表面試験板1aからブランク1cを採取すると共に、中央試験板1bからブランク1dを採取した。他の平板に対しても同様にしてブランクを採取すると、例えば、矢印30にて示す板幅方向に5個、矢印40にて示す板厚方向に2個、即ち合計10個のブランクが熱間仕上圧延板10から得られる。各ブランクに対して、深絞り成形を実施し、耳率を測定した。成形時のカッピング条件(カップ状に成形する場合の条件)は、ポンチ直径が40mm、ブランク直径が66.7mm、クリアランスは20%である。また、成形時の潤滑油として、エマルジョン系潤滑油を使用した。下記表3に得られた結果を示す。
【0033】
表3中の板幅方向の耳率のうち、表面の平均値とは、表面試験板から採取したブランク(板幅方向のブランク)の耳率の平均値である。また、表面の差とは、各表面試験板から採取したブランクの耳率のうち、最大値と最小値との間の差をとったものである。同様に、中央の平均値とは、各中央試験板から採取したブランク(板幅方向のブランク)の耳率の平均値である。また、中央の差とは、各中央試験板からブランクを採取し、この各ブランクの耳率のうち、最大値と最小値との間の差をとったものである。
【0034】
また、板厚方向の耳率のうち、平均値とは、前述の表面の平均値と中央の平均値との間の平均値である。また、差とは、ブランク1cの耳率とブランク1dの耳率との差等板幅方向における同一部位の耳率の差を算出し、これらのうちで最大値を示したものである。
【0035】
【表3】
【0036】
上記表3に示すように、実施例1、2においては、表面試験板の耳率の差に比して中央試験板の耳率の差が大きくなる傾向があるものの、板幅方向の耳率の差が1.5%以内となった。また、板厚方向の耳率の差は1.0%以内となった。
【0037】
比較例1〜6においては、実施例1、2と同様に、表面試験板の耳率の差に比して中央試験板の耳率の差が大きくなる傾向がある。比較例1においては、熱間仕上圧延の終了温度が210℃と本発明にて規定した温度より低いため、板厚方向及び板幅方向の耳率の差はいずれも小さくなっているものの、板表面に腐食が発生した。比較例2においては、熱間仕上圧延の開始温度及び終了温度が、夫々、400℃及び280℃と本発明にて規定した温度より高いため、中央試験板における板幅方向の耳率の差が1.6%と大きくなると共に、板厚方向の耳率の差が1.7%と大きくなった。比較例3では、熱間仕上圧延の終了温度が280℃と本発明にて規定した温度より高いため、板厚方向の耳率の差が1.5%と大きくなった。比較例4では、熱間仕上圧延の開始温度が400℃と本発明にて規定した温度より高いため、板厚方向の耳率の差が1.7と大きくなった。比較例5においては、熱間仕上圧延終了時の加工率が68%と本発明にて規定した範囲より小さいため、中央試験板における板幅方向の耳率の差が2.1%と大きくなった。特に、板厚方向の耳率の差は3.5%と極めて大きくなった。比較例6においては、熱間仕上圧延終了時の加工率が95%と本発明にて規定した範囲より大きいため、耳率の差は小さくなったものの、板表面にロールマークが発生した。
【0038】
上述のように、熱間仕上圧延の加工率を80乃至90%、熱間仕上圧延の開始温度を350℃以下、熱間仕上圧延の終了温度を220乃至260℃と設定することにより、板幅方向の耳率の差が1.5%以内、板厚方向の耳率の差が1.0%以内のアルミニウム板を得ることができる。
【0039】
第2実施例
上述の実施例1と同一組成の熱間圧延仕上板に、下記表4に示す条件で更に冷間圧延及び焼鈍処理を施して最終製品板を作成した。図4は、最終製品板に示す模式図である。図4において図5と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。図1に示す熱間仕上圧延板10を冷間圧延して図4に示す最終製品板60を得る、この最終製品板60を冷間圧延方向(矢印20)に垂直となるように5等分して試験板1e、2e、3e、4e及び5eを得た。各試験板の幅及び長さは、いずれも100mmである。各試験板1e、2e、3e、4e及び5eからブランク1f、2f、3f、4f及び5fを採取した。ポンチ、クリアランス及びワックスを第1実施例と同一にして、板幅方向の耳率及び結晶粒径を測定した。板幅方向の耳率のうち、平均値とはブランク1f、2f、3f、4f及び5fの耳率の平均値であり、差とはブランク1f、2f、3f、4f及び5fの耳率のうち、最大のものと最小のものとの差をとったものである。結果を下記表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
上記表4に示すように、実施例3〜5においては、いずれの焼鈍処理においてもその焼鈍温度が300乃至400℃の範囲内であると共に、昇温速度が40℃/時以上であるため、結晶粒界が細かくなり、板幅方向の耳率の差が1.0%以内となった。
【0042】
実施例6においては、最終焼鈍の焼鈍温度が480℃と高いことに加え、昇温速度が20℃/時と低速であるため、板幅方向の耳率の差が1.5%であった。実施例7においては、最終焼鈍における焼鈍温度が200℃と低いため、一部が未再結晶のまま残存し、板幅方向の耳率の差が1.9%と高くなった。実施例8においては、粗焼鈍の焼鈍温度が480℃と高いことに加え、最終焼鈍の昇温速度が20℃/時と低いため、板幅方向の耳率の差は1.3%であった。実施例9においては、中間焼鈍の焼鈍温度が450℃と高いため、板幅方向の耳率の差が1.6%と高くなった。
【0043】
以上のように、本実施例におけるアルミニウム板に、更に冷間圧延及び焼鈍処理を施す場合は、焼鈍温度を300乃至400℃、焼鈍処理における昇温速度を40℃/時以上とすることが好ましい。このような条件で冷間圧延及び焼鈍処理を施すことにより、得られた最終製品板の板幅方向における耳率の差が1.0%以内となる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱間仕上圧延の加工率、開始温度及び終了温度が適切であるので、絞り成形した場合に板厚方向及び板幅方向の耳率の差が小さいアルミニウム又はアルミニウム合金板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耳率の測定を工程順に示す模式図である。
【図2】耳率の測定を工程順に示す模式図である。
【図3】耳率の測定を工程順に示す模式図である。
【図4】最終製品板をに示す模式図である。
【図5】圧延によって得られたアルミニウム板を示す模式図である。
【符号の説明】
1a;表面試験板
1b;中央試験板
1c,1d,1e,2e,3e,4e,5e,1f,2f,3f,4f,5f;ブランク
10;熱間仕上圧延板
10a,10b;アルミニウム片
60;最終製品板
Claims (2)
- アルミニウム又はアルミニウム合金鋳塊の均質化処理後、熱間粗圧延及び熱間仕上圧延を実施し、更に1又は複数回の冷間圧延及び1又は複数回の焼鈍処理を実施して製造されたアルミニウム又はアルミニウム合金板であって、前記熱間仕上圧延は加工率が82乃至90%、熱間仕上圧延の開始温度が350℃以下、熱間仕上圧延の終了温度が220乃至260℃であり、熱間仕上圧延物の絞り成形時の特性のうち、板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.5%以内、板厚方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であり、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延後の焼鈍物の絞り成形時の特性のうち、板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金板。
- アルミニウム又はアルミニウム合金鋳塊を均質化処理した後、熱間粗圧延し、次いで熱間仕上圧延し、更に1又は複数回の冷間圧延を施すと共に1又は複数回の焼鈍処理を施してアルミニウム又はアルミニウム合金板を製造するアルミニウム又はアルミニウム合金板の製造方法において、前記熱間仕上圧延は加工率が82乃至90%、熱間仕上圧延の開始温度が350℃以下、熱間仕上圧延の終了温度が220乃至260℃であり、熱間仕上圧延物を絞り成形した際に板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.5%以内、板厚方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であると共に、前記焼鈍処理は昇温速度が40℃/時以上、焼鈍温度が300乃至400℃であり、冷間圧延後の焼鈍物を絞り成形した際に板幅方向の耳率の最大値と最小値との差が1.0%以内であるアルミニウム又はアルミニウム合金板を得ることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金板の製造方法。
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| JP05656296A JP3781063B2 (ja) | 1996-03-13 | 1996-03-13 | アルミニウム又はアルミニウム合金板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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| JPH09248604A JPH09248604A (ja) | 1997-09-22 |
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Family Applications (1)
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Country Status (1)
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|---|---|
| JP (1) | JP3781063B2 (ja) |
-
1996
- 1996-03-13 JP JP05656296A patent/JP3781063B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH09248604A (ja) | 1997-09-22 |
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