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JP3767271B2 - 抵抗溶接機の制御装置および抵抗溶接機の制御方法 - Google Patents

抵抗溶接機の制御装置および抵抗溶接機の制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、抵抗溶接機の制御装置および制御方法に係り、詳しくは、溶接電力の時間変化率に基づいて散り発生の兆候を検出し、散りが発生する前に溶接電力を減少させることで、散りの発生を抑制するようにした抵抗溶接機の制御装置および制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抵抗溶接では、散りの発生が品質および安全面で問題になっていた。このため、散りの発生を抑制し溶接品質の向上を図るための技術が以下に示すように種々提案されている。
【0003】
特開昭54−58655号公報(特公昭57−37430号公報)には、通電時間中の溶接打点における部材の肉厚変化を検出し、その変化量が基準値以上になったことにより散り発生を検出するものとし、散り発生したときには溶接電流を所定量減少させ、散り発生しないときは溶接電流を所定量増加させることで、溶接電流を散り発生限界電流値に沿って制御するようにした抵抗点溶接制御方法が記載されている。
【0004】
特開平6−344155号公報には、電極間電圧と基準値とを比較して散りの発生を予測し、その予測結果にしたがって対策を講ずることにより、散り発生の抑制および溶接ナゲット径の均一な溶接を行なえるようにしたスポット溶接機用制御装置が記載されている。溶接通電中の所定の期間のみ電流量を低減することで散りの発生を抑制できる。この所定の期間で散りが発生しやすいことが実験的に確認されている。この所定の期間は被溶接材間の電流路の面積が急に拡大しようとしている期間である。この期間の溶接電流を低減することで、溶接電流路の面積が穏やかに拡大されることにより散り発生が抑制される。電極間電圧が基準値を越えているか否かで散り発生の有無を予測するようにしたため、散り発生を効果的に抑制できる。
【0005】
特開平9−216070号公報には、溶接電流と電極間電圧を用いて推算したエネルギー分布から、散り発生危険率と散り発生予測時間を推算し、散り発生予測時間が設定した溶接時間経過の直後になるように溶接電流を変更制御することで、散りを発生させることなく入熱を高めて、最大の強度を持つナゲットを得るようにした抵抗溶接機の制御装置が記載されている。
【0006】
特開平10−94883号公報には、溶接電流とチップ間電圧を検出し、熱伝導計算により溶接部のシミュレーシヨンを行ない、ナゲットの生成状態を推定することにより、良好な溶接を行なうようにした抵抗溶接機の溶接条件制御方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭54−58655号公報に記載されたものは、散りの発生を検出した際に溶接電流を制御するものである。このため、散りが発生した際に溶接電流を低減させたり溶接電流の供給を停止させることはできるが、散りの発生を未然に防止することはできない。
【0008】
特開平6−344155号公報に記載されたスポット溶接機用制御装置は、散り発生限界電流よりやや小さい電流で溶接した時に生じた電極間電圧を予め実験により求めた得た基準電極間電圧と実際に検出された電極間電圧とを比較し、実際に検出された電極間電圧が基準電極間電圧を越えたか否かで散り発生の有無を予測するものである。基準電極間電圧は散り発生限界電流よりやや小さい電流で溶接した時に生じた電極間電圧を予め実験により求めて得たものであるため、実際に検出された電極間電圧が基準電極間電圧を極わずかに越えているだけで散り発生には至らないような場合でも散り発生有りと予測されることがある。
【0009】
特開平9−216070号公報に記載された抵抗溶接機の制御装置は、エネルギー分布を推算するために多数の演算処理が必要である。このため、制御装置の構成が複雑となる。特開平10−94883号公報に記載された抵抗溶接機の溶接条件制御方法は、熱伝導シミュレータを用いる構成であるため、制御装置等の構成が複雑となる。
【0010】
【発明の目的】
この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、比較的簡易な構成で散りの発生を精度良く予測し、この予測結果に基づいて溶接部の発熱量を制御することで良好な溶接を行なえるようにした抵抗溶接機の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1に係る抵抗溶接機の制御装置は、溶接電流を検出する 電流検出部と、溶接電極間電圧を検出する電圧検出部と、前記溶接電流と前記溶接電極間電圧とに基づいて溶接電力を算出するとともに溶接電力の時間変化率を算出する溶接電力変化率算出手段と、ナゲット成長期間において前記溶接電力の時間変化率が予め設定した前記溶接電力の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる溶接電力制御手段とを備えている。そして、前記溶接電力制御手段は、前記溶接電力の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する。
【0012】
請求項1に係る抵抗溶接機の制御装置は、ナゲット成長期間における溶接電力の時間変化率を監視し、溶接電力の時間変化率が予め設定した許容増加率以下になるよう溶接電力を制御する。溶接電力の時間変化率を監視することで、溶接電力の変化の兆候を速やかに検出することができる。これにより、ナゲット成長期間における溶接電力が過大になって散りが発生する前に溶接電力を低減させることができ、散りの発生を未然に防止できる。また、ナゲット成長期間における溶接電力が過小になって溶接品質が低下するのを未然に防止できる。
【0013】
請求項2に係る抵抗溶接機の制御装置は、溶接電極間電圧を検出する電圧検出部と、前記溶接電極間電圧の時間変化率を算出する電極間電圧変化率算出手段と、ナゲット成長期間において前記溶接電極間電圧の時間変化率が予め設定した前記溶接電極間電圧の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる溶接電力制御手段とを備えている。そして、前記溶接電力制御手段は、前記溶接電極間電圧の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する。
【0014】
請求項2に係る抵抗溶接機の制御装置は、ナゲット成長期間における溶接電極間電圧の時間変化率を監視し、溶接電極間電圧の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる。よって、散りの発生を未然に防止できる。
【0015】
請求項3に係る抵抗溶接機の制御方法は、溶接電流及び溶接電極間電圧を検出し、検出した前記溶接電流と前記溶接電極間電圧とに基づいて溶接電力を算出するとともに溶接電力の時間変化率を算出し、ナゲット成長期間において前記溶接電力の時間変化率が予め設定した前記溶接電力の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる。そして、前記溶接電力の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する。
【0016】
請求項3に係る抵抗溶接機の制御方法は、ナゲット成長期間における溶接電力の時間変化率を監視し、溶接電力の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる。よって、散りの発生を未然に防止できる。
【0017】
請求項4に係る抵抗溶接機の制御方法は、溶接電極間電圧を検出し、検出した前記溶接電極間電圧の時間変化率を算出し、ナゲット成長期間において前記溶接電極間電圧の時間変化率が予め設定した前記溶接電極間電圧の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる。そして、前記溶接電極間電圧の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する。
【0018】
請求項4に係る抵抗溶接機の制御方法は、ナゲット成長期間における溶接電極電圧の時間変化率を監視し、溶接電極電圧の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる。よって、散りの発生を未然に防止できる。
0019
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
0020
図1はこの発明に係る抵抗溶接機の制御装置のブロック構成図である。この発明に係る抵抗溶接機の制御装置1は、3相交流電源2と、3相全波整流部3と、インバータ部4と、降圧トランス5と、整流部6と、一対の溶接電極7a,7bと、電圧検出部8と、電流検出部9と、制御部10とからなる。制御部10は、溶接電力変化率算出手段11と、標準範囲記憶手段12と、溶接電力制御手段13と、インバータ駆動回路14とを備える。符号30は被溶接物、符号31はナゲット(溶解部)である。
0021
3相全波整流部3は、3相交流電源2から供給される3相交流を全波整流して直流電源を生成する。生成された直流電源はインバータ部4へ供給される。インバータ部4は、直流電源を高周波交流へ変換して降圧トランス5の一次巻線を駆動する。このインバータ部4は、H型ブリッジ接続された4個の電力用半導体スイッチング素子(例えばIGBT等)を備える。インバータ部4は、制御部10内のインバータ駆動回路14から供給される複数の駆動信号10aに基づいて各電力用半導体スイッチング素子が所定の順序でスイッチングされることで、高周波交流を発生する。制御部10内の溶接電力制御手段13は、インバータ駆動回路14へ供給するPWM信号13aのデューティを可変することでインバータ4の出力電力を制御し、これによって降圧トランス5,整流部6,溶接電力7a,7bを介して被溶接部30に供給する溶接電力を制御する。降圧トランス5の2次巻線には、低電圧化された高周波交流が誘起される。この低電圧化された高周波交流は整流部6で直流に変換される。整流部6は、2個の整流用ダイオード6a,6bを備える。整流部6で生成された脈流は、各溶接電極7a,7bを介して被溶接部30に供給される。
0022
電圧検出部8は、一対の溶接電極7a,7b間の電圧を検出し、検出した電圧に対応した電気信号(電圧検出信号)8aを出力する。この電圧検出信号8aは制御部10内の溶接電力変化率算出手段11へ供給される。
0023
電流検出部9は、溶接電流を検出し、検出した溶接電流に対応した電気信号(電流検出信号)9aを出力する。この電流検出信号9aは制御部10内の溶接電力変化率算出手段11へ供給される。
0024
溶接電力変化率算出手段11は、電圧検出信号8aと電流検出信号9aとに基づいて溶接電力の瞬時値11aを予め設定した時間間隔で算出するとともに、溶接電力の瞬時値の時間変化率11bを算出する。算出された溶接電力の瞬時値11aならびに溶接電力の瞬時値の時間変化率11bは、溶接電力制御手段13へ供給される。
0025
標準範囲記憶手段12には、溶接電力が最大値となった以降のナゲット成長期間における溶接電力の時間変化率の標準範囲が格納されている。この溶接電力の時間変化率の標準範囲は、ナゲット成長期間の時間経過毎に上限値と下限値とを予め設定したものである。
0026
溶接電力制御手段13は、指令値に基づいてPWM信号13aを生成してインバータ駆動回路14へ供給することで溶接電力の供給を開始させるとともに、溶接電力の瞬時値11aに基づいて各PWM変調周期毎の溶接電力積分値または各PWM変調周期毎の溶接電力の瞬時値11aの最大値を求める。
0027
溶接電力制御手段13は、各PWM変調周期毎の溶接電力積分値または各PWM変調周期毎の溶接電力の瞬時値11aの最大値の変化を監視し、各PWM変調周期毎の溶接電力積分値または各PWM変調周期毎の溶接電力の瞬時値11aの最大値が最大値(極大点)に達したことに基づいて図2に示す温度上昇期間が終了して下降期間(ナゲット成長期間)に入ったことを認識する。下降期間(ナゲット成長期間)とは、溶接の自律作用による加熱抑制期間のことである。
0028
溶接電力制御手段13は、下降期間(ナゲット成長期間)に入ると、先のPWM変調周期での溶接電力積分値または溶接電力の瞬時値11aの最大値と、今回のPWM変調周期での溶接電力積分値または溶接電力の瞬時値11aの最大値との変化率を算出する。そして、算出した各PWM変調周期毎の溶接電力の時間変化率と標準範囲とを比較し、PWM変調周期毎の溶接電力の時間変化率が標準範囲の上限値を越えている場合にはPWM信号13aのデューティを小さくすることで溶接電力を減少させ、また、PWM変調周期毎の溶接電力の時間変化率が標準範囲の下限値を越えている場合にはPWM信号13aのデューティを大きくすることで溶接電力を増加させる。これにより、各PWM変調周期毎の溶接電力の時間変化率が予め設定した標準範囲になるよう制御される。
0029
さらに、溶接電力制御手段13は、溶接電力の瞬時値の時間変化率11bが予め設定した散り発生兆候検出値を越えている場合には、現在出力しているPWM信号13aの出力を直ちに停止するとともに、次のPWM変調周期から数周期の期間に亘ってPWM信号13aのデューティを極めて小さな値に変更する。散り発生の兆候を検出して供給電力を低減させることで、散りの発生を未然に防止することができる。
0030
図2は溶接時の電極間電圧の変化特性、溶接電力変化率、消費電力の変化特性を示すグラフである。図2において、時刻0〜時刻t0までは予備通電期間である。この予備通電期間では、被溶接物が加熱され、接触抵抗が消滅して電極間電圧が降下する。この予備通電期間の長さは統計的に求めることができる。時刻t0〜時刻tpは温度上昇期間である。この温度上昇期間では、被溶接物が加熱され温度が上昇する。溶接電力の極大点に基づいてピーク時刻tpを求めることができる。時刻tp〜時刻teは下降期間である。ピーク時刻tp以降、溶接の自律作用によって電極間電圧が下降する。この下降期間は、ナゲットの成長する期間である。時刻teは通電終了時刻である。この通電終了時刻te以降は終了処理として通電電流を漸次減少させる。図2(b)においてハッチングで示した領域が、溶接電力変化率の標準範囲である。
0031
図3は散り発生の兆候を検出して溶接電力を低減する動作を示す説明図である。図3(a)は溶接電力の変化特性、図3(b)は溶接電力変化率(溶接電力微分値)を、図3(c)はスイッチングパルス(供給電力)を示している。散りは下降期間(ナゲット成長期間)において発生することが知られている。図3(a)に示すように、散り発生時には溶接電力が増大する。この溶接電力の増大は溶接電力変化率の変化として検出される。すなわち、図3(b)に示すように、散り発生に至る前段階で溶接電力変化率が急激に変化する。この溶接電力変化率の急激な変化を散り発生の兆候としてとらえ、図3(c)に示すように供給電力を抑制する。これにより、散りの発生を未然に防止することができる。
0032
図4は交流式抵抗溶接機で溶接電力の供給を制御した際の溶接時の電力波形の一例を示す溶接電力波形図である。図4において、横軸は時間を、縦軸は溶接電力を示している。ここでは、下降期間(ナゲット成長期間)中の2箇所の点(a),(b)で散りが発生した例を示している。図5および図6は図4に示した溶接電力波形の時間軸を拡大した溶接電力波形図である。図7および図8は散り発生時点の前後の電力波形を示す電力波形図である。
0033
図1に示した溶接電力変化率算出手段11は、電極間電圧8aをD/A変換するためのD/A変換器と、溶接電流9aをD/A変換するためのD/A変換器とを備えている。溶接電力変化率算出手段11は、PWM変調周期の例えば1/100以上の短い周期で、上記2つのD/A変換器を用いて電極間電圧8aと溶接電流9aとを同一のタイミングでサンプリングして、それぞれのD/A変換データを得ることを順次繰り返す。そして、電極間電圧データと溶接電流データとに基づいて電極間電圧と溶接電流とを乗算することで溶接電力の瞬時値11aを算出して、算出した溶接電力の瞬時値11aを溶接電力制御手段13へ順次供給する。溶接電力変化率算出手段11は、先のサンプリングに基づいて算出した溶接電力の瞬時値と今回のサンプリングに基づいて算出した溶接電力の瞬時値との変化率を算出し、算出した瞬時変化率11bを溶接電力制御手段13へ順次供給する。
0034
溶接電力制御手段13は、PWM変調周期の例えば1/100以上の短い周期で順次供給される溶接電力の瞬時値11aをPWM変調周期の1周期に亘って積算することで、各PWM変調周期毎の溶接電力を求める。
0035
図2(c)に示したように、温度上昇期間においては溶接電力は増加を続け、溶接電力が最大値(極大値)を越えた時点から下降期間(ナゲット成長期間)となる。溶接電力制御手段13は、各PWM変調周期毎の溶接電力が増加を続けていることに基づいて温度上昇期間にあることを認識する。溶接電力制御手段13は、先のPWM変調周期の溶接電力に対して今回のPWM変調周期の溶接電力が等しいか減少したことに基づいて下降期間(ナゲット成長期間)に入ったことを認識する。
0036
溶接電力制御手段13は、下降期間(ナゲット成長期間)に入ったことを認識すると、先のPWM変調周期の溶接電力と今回のPWM変調周期の溶接電力との変化率を算出することを各PWM変調周期毎に繰り返す。溶接電力制御手段13は、算出した溶接電力の変化率と標準範囲として設定された変化率とを比較する。溶接電力制御手段13は、算出した溶接電力の変化率が標準範囲の上限値を越えている場合には、次のPWM変調周期において生成するPWM信号13aのデューティを予め設定した所定値分だけ低減する。これにより、次のPWM変調周期の溶接電力が低減される。溶接電力制御手段13は、算出した溶接電力の変化率が標準範囲の下限値を越えている場合には、次のPWM変調周期において生成するPWM信号13aのデューティを予め設定した所定値分だけ大きくする。これにより、次のPWM変調周期の溶接電力が増加される。
0037
溶接電力制御手段13は、各PWM変調周期毎の溶接電力を求めずに、各PWM変調周期における溶接電力の瞬時値の最大値を求め、その最大値の変化に基づいて下降期間(ナゲット成長期間)に入ったことを認識するようにしてもよい。溶接電力制御手段13は、各PWM変調周期における溶接電力の瞬時値の最大値の変化率を算出し、算出した変化率を標準範囲とを比較することで、溶接電力の制御を行なうようにしてもよい。
0038
溶接電力制御手段13は、下降期間(ナゲット成長期間)に入ったことを認識すると、先のサンプリングによって算出された溶接電力の瞬時値と今回のサンプリングによって算出された溶接電力の瞬時値との変化率(瞬時変化率)が、予め設定した増加率(許容増加率)を越えている場合には、それを散り発生の兆候としてとらえ、現在出力しているPWM信号13aの出力を直ちに停止させる。溶接電力制御手段13は、PWM信号13aの出力を強制停止させたPWM変調周期の次のPWM変調周期から数周期の期間に亘ってPWM信号13aのデューティを極めて小さな値に変更する。散り発生の兆候を検出した以降の所定期間に亘って供給電力を低減させることで、散りの発生を防止する。
0039
図7および図8に示すように、散りが発生する際には、その兆候として溶接電力の急激な増加が発生する。したがって、溶接電力の急激な増加を監視することで、図7に示す兆候(A)や図8に示す兆候(B)を検出することができ、兆候(A),兆候(B)を検出した時点で溶接電力の供給を直ちに停止することで、兆候(A),兆候(B)の約1〜2ミリ秒後に生ずる散りの発生を未然に防止することができる。
0040
図9は図1に示した抵抗溶接機の制御装置1の動作を示すフローチャートである。ステップS1で、被溶接物の材質,板厚等に対応して溶接条件の設定がなされた後に、ステップS2で通電が開始される。ステップS3では、通電開始時点からの経過時間tが予備通電時間(予備通電終了時刻)t0に達した否かの判断がされる。
0041
予備通電期間が終了すると温度上昇期間となる。この温度上昇期間では、ステップS4で各PWM変調周期毎の溶接電力が演算され、ステップS5で溶接電力が増加しているか否かが判断される。溶接電力が増加している場合はステップS6で通電終了時刻teに達したか否かのチェックがなされる。通電終了時刻teに達しても溶接電力の増加が継続している場合には、ステップS7でナゲット生成不良と判断され、ステップS8で通電の停止ならびに異状が発生している旨を表示する等の異状処理がなされる。
0042
ステップS5で温度上昇期間が終了したことが検出されると、ステップS9以降のナゲット成長期間における処理が開始される。ステップS9では溶接電力の瞬時変化率が許容増加率を越えているか否かの判断がなされる。溶接電力の瞬時変化率が許容増加率を越えている場合は、ステップS10で散り発生防止処理がなされる。この散り発生防止処理では、現在出力しているPWM信号13aの出力を直ちに停止するとともに、次のPWM変調周期から数周期に亘ってPWM信号13aのデューティを極めて小さな値とすることで、溶接電力の瞬時変化率が許容増加率を越えた時点から所定の時間に亘って溶接電力の供給量を大幅に低減させる。これによって、散りの発生を未然に防止する。
0043
溶接電力の瞬時変化率が許容増加率を越えていない場合は、ステップS11で溶接電力の積算を行なう。そして、ステップS12でPWM変調の1周期が終了したことを検出すると、ステップS13で先のPWM変調周期における溶接電力と今回のPWM変調周期における溶接電力との変化率が標準範囲の上限値を越えているか否かが判断され、ステップS14で先のPWM変調周期における溶接電力と今回のPWM変調周期における溶接電力との変化率が標準範囲の下限値を越えているか否かが判断される。
0044
溶接電力との変化率が標準範囲の上限値を越えている場合は、ステップS15で供給電力減少処理がなされる。この供給電力減少処理では、次のPWM変調周期におけるPWM信号13aのデューティを前回のデューティよりも予め設定した所定量だけ小さな値に設定する。これにより、次のPWM変調周期で供給される溶接電力が低減される。
0045
溶接電力との変化率が標準範囲の下限値を越えている場合は、ステップS16で供給電力増加処理がなされる。この供給電力増加処理では、次のPWM変調周期におけるPWM信号13aのデューティを前回のデューティよりも予め設定した所定量だけ大きな値に設定する。これにより、次のPWM変調周期で供給される溶接電力が増加される。
0046
ステップS17で通電終了時刻teに達したか否かのチェックがなされ、通電終了時刻teに達するまでステップS9以降の処理を繰り返す。通電終了時刻teに達すると、ステップS18で溶接電力を漸次減少させながら溶接電力の供給を停止させる正常終了処理がなされ、一連の溶接制御が終了される。
0047
図10はこの発明に係る他の抵抗溶接機の制御装置のブロック構成図である。図10に示す抵抗溶接機の制御装置50は、制御部60の構成が図1に示したものと異なる。図10に示す制御部60は、電極間電圧に係る信号8aと溶接電流に係る信号9aとに基づいて各PWM変調周期毎の溶接電力積算値61aを算出して出力する溶接電力積算手段61と、PWM変調周期の例えば1/100程度のPWM変調周期よりも充分に短い周期で電極間電圧の瞬時変化率を算出して、算出した電極間電圧の瞬時変化率62aを出力する電極間電圧変化率算出手段62と、溶接電力制御手段63と、インバータ駆動回路14とを備える。
0048
溶接電力制御手段63は、各PWM変調周期毎の溶接電力積算値61aの変化を監視することでナゲット成長期間に入ったことを認識すると、電極間電圧の瞬時変化率62aを監視し、電極間電圧の瞬時変化率62aが予め設定した許容増加率を越えている場合には、PWM信号13aの出力を直ちに停止して溶接電力の供給を停止させるとともに、次のPWM変調周期から数周期に亘ってPWM信号13aのデューティを極めて小さな値に設定することで、電極間電圧の瞬時変化率62aが予め設定した許容増加率を越えた時点から所定の時間が経過するまで溶接電力の供給量を大幅に低減させる。
0049
図11は散り発生時の電極間電圧の変化を示す波形図である。図11に示すように、散りが発生する直前に電極間電圧が急激に増加する。この電極間電圧の急増を散り発生の兆候としてとらえ、電極間電圧が急増した時点で溶接電力の供給を直ちに停止することで、散りの発生を未然に防止することができる。
0050
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る抵抗溶接機の制御装置は、ナゲット成長期間における溶接電力の時間変化率を監視し、溶接電力の時間変化率が予め設定した許容増加率以下になるよう溶接電力を制御する構成としたので、ナゲット成長期間における溶接電力が過大になって散りが発生する前に溶接電力を低減させることができ、散りの発生を未然に防止できる。また、ナゲット成長期間における溶接電力が過小になって溶接品質が低下するのを未然に防止できる。
0051
請求項2に係る抵抗溶接機の制御装置は、ナゲット成長期間における溶接電極電圧の時間変化率を監視し、溶接電極電圧の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる構成としたので、散りの発生を未然に防止できる。
0052
請求項3に係る抵抗溶接機の制御方法は、ナゲット成長期間における溶接電力の時間変化率を監視し、溶接電力の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる構成としたので、散りの発生を未然に防止できる。
0053
請求項4に係る抵抗溶接機の制御方法は、ナゲット成長期間における溶接電極電圧の時間変化率を監視し、溶接電極電圧の時間変化率が予め設定した許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させるので、散りの発生を未然に防止できる
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る抵抗溶接機の制御装置のブロック構成図である。
【図2】 溶接時の電極間電圧の変化特性、溶接電力変化率、消費電力の変化特性を示すグラフである。
【図3】 散り発生の兆候を検出して溶接電力を低減する動作を示す説明図である。
【図4】 交流式抵抗溶接機で溶接電力の供給を制御した際の溶接時の電力波形の一例を示す溶接電力波形図である。
【図5】 図4に示した溶接電力波形の時間軸を拡大した溶接電力波形図である。
【図6】 図4に示した溶接電力波形の時間軸を拡大した溶接電力波形図である。
【図7】 散り発生時点の前後の電力波形を示す電力波形図である。
【図8】 散り発生時点の前後の電力波形を示す電力波形図である。
【図9】 図1に示した抵抗溶接機の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】 この発明に係る他の抵抗溶接機の制御装置のブロック構成図である。
【図11】 散り発生時の電極間電圧の変化を示す波形図である。
【符号の説明】
1,50 抵抗溶接機の制御装置
4 インバータ部
5 降圧トランス
6 整流部
7a,7b 溶接電極
8 電圧検出部
9 電流検出部
10,60 制御部
11 溶接電力変化率算出手段
12 標準範囲記憶手段
13,63 溶接電力制御手段
14 インバータ駆動回路
30 被溶接物
31 ナゲット(溶解部)
61 溶接電力積算手段
62 電極間電圧変化率算出手段

Claims (4)

  1. 溶接電流を検出する電流検出部と、溶接電極間電圧を検出する電圧検出部と、前記溶接電流と前記溶接電極間電圧とに基づいて溶接電力を算出するとともに溶接電力の時間変化率を算出する溶接電力変化率算出手段と、ナゲット成長期間において前記溶接電力の時間変化率が予め設定した前記溶接電力の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる溶接電力制御手段と、を備えた抵抗溶接機の制御装置において、
    前記溶接電力制御手段は、前記溶接電力の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する、ことを特徴とする抵抗溶接機の制御装置。
  2. 溶接電極間電圧を検出する電圧検出部と、前記溶接電極間電圧の時間変化率を算出する電極間電圧変化率算出手段と、ナゲット成長期間において前記溶接電極間電圧の時間変化率が予め設定した前記溶接電極間電圧の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる溶接電力制御手段と、を備えた抵抗溶接機の制御装置において、
    前記溶接電力制御手段は、前記溶接電極間電圧の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減する、ことを特徴とする抵抗溶接機の制御装置。
  3. 溶接電流及び溶接電極間電圧を検出し、検出した前記溶接電流と前記溶接電極間電圧とに基づいて溶接電力を算出するとともに溶接電力の時間変化率を算出し、ナゲット成長期間において前記溶接電力の時間変化率が予め設定した前記溶接電力の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる、抵抗溶接機の制御方法において、
    前記溶接電力の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減することを特徴とする抵抗溶接機の制御方法。
  4. 溶接電極間電圧を検出し、検出した前記溶接電極間電圧の時間変化率を算出し、ナゲット成長期間において前記溶接電極間電圧の時間変化率が予め設定した前記溶接電極間電圧の許容増加率を越えた場合にそれを散り発生の兆候と判断して溶接電力を減少させる、抵抗溶接機の制御方法において、
    記溶接電極間電圧の時間変化率が前記許容増加率を越えた場合に、前記溶接電力の供給を直ちに停止するとともに、その後の前記溶接電力の供給量を所定期間に亘って低減することを特徴とする抵抗溶接機の制御方法。
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