JP3759995B2 - コンクリ−ト構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋼繊維補強コンクリートを改善し、構造物の曲げ強度と靭性を飛躍的に向上するとともに、帯鉄筋を廃し、その配筋作業の煩雑を解消して、施工の迅速化と工費の低減を図れ、しかも緻密かつ平滑なコンクリート面を得られるコンクリート構造物およびその施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート構造物を構築する場合、主鉄筋を組み立て、これに剪断力を補強する目的で帯鉄筋を所定ピッチに配置し、この外側に型枠を組み立て後、型枠内にコンクリートを打設していた。
この場合、帯鉄筋の量と配置については、一般に曲げ耐力よりも剪断耐力が大きくなるように施工され、したがってコンクリート構造物は、曲げ破壊先行型の破壊形態となり、引張り力を補強する主鉄筋の引張り靭性によって、降伏荷重に達した後も耐荷力を保持するようにされている。
【0003】
しかし、この従来のコンクリート構造物の施工法は、帯鉄筋とその配筋を要し、帯鉄筋の製作と鉄線またはクリップ等による緊結を要して、作業が煩雑かつ手間が掛かり、しかもこうして構築したコンクリート構造物も、その立地条件や帯鉄筋の量および施工の如何によっては、帯鉄筋が剪断して構造物が剪断破壊する惧れがあり、この点は先の阪神淡路大地震において例証されている。
【0004】
そこで、コンクリート構造物の剪断力を強化する手段として、帯鉄筋を増量するとともに、主鉄筋との交差部を全て溶接する方法が考えられる。
しかし、この場合は帯鉄筋の配筋作業が著しく煩雑で手間が掛かり、工費の高騰と工期の長期化を招くとともに、コンクリート打設時にコンクリートの移動が帯鉄筋に遮られて流動性が低下し、ジャンカを生じ易い、という問題が予想される。
【0005】
ところで、従来、道路や滑走路、トンネル等において、コンクリートの引張強度や曲げ強度、ひび割れ強度、靭性または耐衝撃性の改善を図るために、例えば炭素鋼やステンレス鋼等の短い鋼繊維を均等に分散配置した鋼繊維補強コンクリートが使用されている。
【0006】
しかし、この従来の鋼繊維補強コンクリートは、主にひび割れの改善を目的とし、その強度は専ら鋼繊維の強度に依存して低く、これを曲げと剪断力の双方を受ける耐震構造物の柱や梁、壁に直ちに採用することはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、鋼繊維補強コンクリ−トを改善し、構造物の曲げ強度と靭性率を飛躍的に向上するとともに、帯鉄筋を廃し、その配筋作業の煩雑を解消して、施工の迅速化と工費の低減を図れ、しかも緻密かつ平滑なコンクリ−ト面を得られるコンクリ−ト構造物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、コンクリ−トの内部に、複数の主鉄筋を無拘束、かつ複数列に配置するとともに、鋼繊維を分散配置したコンクリ−ト構造物において、前記コンクリ−トの全域に亘って、アスペクト比約50の鋼繊維を全打設コンクリ−ト容積の約1.0パ−セントに分散配置して、帯鉄筋を廃し、鋼繊維を小形軽量化し、その均一な分散とコンクリ−ト構造物の軽量化を図るとともに、緻密かつ平滑なコンクリ−ト面を得られ、しかも鋼繊維の混入率を高めて構造物の曲げ強度と靭性率を向上し、曲げと剪断力の双方を受ける実用的な耐震構造物を提供するようにしている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をコンクリート構造物であるビルやマンション等の建造物の柱に適用した図示の実施の形態について説明すると、図1乃至図6において1はコンクリート製の基台で、その上部に複数の主鉄筋2が所定位置に無拘束状態、つまり該鉄筋2を従来の帯鉄筋で拘束することなく立設されている。
この場合、主鉄筋2の材質、寸法、配置、数量等は柱に作用する最大荷重および安全率を考慮し、その建築設計基準に基いて決定されている。
なお、図2のように主鉄筋2に帯鉄筋3を粗ピッチに配置し、これを適宜拘束してもよい。
【0010】
基台1上には主鉄筋2の外側に型枠4が組み立てられ、該枠4の内側に鋼繊維5を所定量混入したコンクリート6が打設されている。
鋼繊維5は、直径は0.6mmの炭素鋼またはステンレス鋼を30mm(アスペクト比50)の長さに切断し、その表面を鋸歯状または波状に形成して構成され、その混入率は全打設コンクリート容積の約1.0%に設定されている。
【0011】
コンクリート6の硬化後の状況は図4のようで、鋼繊維5がコンクリート構造物である柱7の断面の全域に亙って、均一かつランダムな方向に配置されている
【0012】
このように構成した柱7はビルやマンション等建造物の建造時に構築され、これは先ず造成した土地にコンクリートを打設して基台1を作成し、同時に基台1に複数の主鉄筋2を所定間隔に配置して組み立てる。
柱以外の梁や壁を構築する場合は、それらの長さ方向に主鉄筋2を所定間隔に配置して組み立てる。
【0013】
この場合、必要に応じて少量の帯鉄筋3を使用して、主鉄筋2の所定位置を拘束してもよく、そのようにすることで主鉄筋2の動揺と、占有スペースの広がりを防止し得るとともに、柱7に作用する剪断力を帯鉄筋3に負担させ、その剪断強度を強化することができる。
このように本発明は、従来多用されていた帯鉄筋3を廃し、帯鉄筋3の製作とその煩雑な配筋作業から解消され、施工の迅速化と工費の低減を図れる。
【0014】
こうして主鉄筋2の組み立て後、それらの外側位置に型枠4を組み立て、該型枠4の内側にコンクリート6を打設する。
コンクリート6には所定量の鋼繊維5が混入され、その混入率は全打設コンクリート容積の約1.0%に設定され、これがコンクリート6と一緒に投入されて、型枠4内を移動し填充する。
【0015】
この場合、型枠4内には複数の主鉄筋2だけが配置されているから、主鉄筋2に多数の帯鉄筋3を取付けたものに比べて、コンクリート6の回り込みや流動性が良く、型枠4内を緻密かつ確実に填充する。
したがって、ジャンカの発生が防止され、またコンクリート面が平滑に形成されて、それらの補修の手間をなくせる。
【0016】
コンクリート6の硬化後、型枠4を取外し、適宜その表面を仕上げれば、柱7の一連の構築作業が終了する。
こうして構築した柱7の横断面は図4のようで、鋼繊維5が柱7の全域に亙って均一に分散配置され、かつその方向はランダムに配置されている。
【0017】
こうして構築した柱7について、その剪断耐力を調べるため、出願人はこれと同様な供試体を作成して実験した。
この剪断耐力実験は、上記供試体を垂直に保持し、その上端部に一定の軸圧縮応力を作用し、その上部に水平荷重、つまり剪断荷重を交番して作用させ、該荷重は主鉄筋2の降伏荷重、180kN以上に設定され、これを漸次降伏荷重の整数倍に増加して、柱7の変位と水平荷重との関係を求め、一方、水平荷重が降伏荷重の80%以下になるか、または前記圧縮荷重を保持できなくなった時点で、実験を終了することとした。
【0018】
そこで、この実験において、先ず前記降伏荷重相当の水平荷重を上記供試体に負荷させると、供試体表面の数カ所に約0.1mm程度のひび割れが軸方向と略直角方向に発生し、これらは供試体の上下位置に斜状に分散していて、これらが水平荷重の増加に伴って剪断方向、つまり供試体の軸方向と略45°に次第に成長し、その割れ幅を広げるとともに、供試体の内部に徐々に進行する。
【0019】
この場合、上記ひび割れが連通しても、主鉄筋2と鋼繊維5とが健全に介在している間は、これらが前記荷重を保持し、この後主鉄筋2が自身の曲げ耐力に抗し破断したところで、供試体がその軸方向と直角方向の切断面に沿って曲げ破壊する。
このときの水平荷重は約200kNであった。
したがって、この場合の破壊形態は曲げ破壊先行型となり、この破壊に至るまでに主鉄筋2と鋼繊維5とが剪断エネルギーを吸収して持ち堪え、破壊の速度を抑制する。
【0020】
図5は上記実験結果を示すもので、主鉄筋2の降伏後、荷重があまり増加しないにも拘らず変位が増加し、したがってエネルギーの吸収能力が大きく、その靭性および靭性率(荷重ー変位曲線と横軸とで囲まれる面積の大きさ)が大きいことを示唆している。
実験結果では、主鉄筋2の降伏変位の10倍で降伏水平荷重の80%を下回り、靭性率は10程度まで期待できることが判明した。
【0021】
次に主鉄筋2を配置しない供試体を作成し、該供試体について同様な実験を行なったところ、その靭性率は零で、破壊時の水平荷重は約100kNであった。したがって、鋼繊維5のみを配置したコンクリート構造物は、これに主鉄筋2を配置した構造物に比べて、靭性は期待できず略脆性部材に相当し、また曲げ強度は後者の約1/6であった。
これは、鋼繊維5とコンクリート6との結合が連続性と方向性とを欠き、結果的にモザイク状の結合体を形成していることによるものと考えられる。
【0022】
更に、同様な実験をプレーンコンクリートで行なったところ、図6の結果を得た。
この実験では、主鉄筋2が降伏変位に達した後、早い段階で剪断力によるものと推定される斜めひび割れが供試体に発生し、これが成長して水平荷重が急速に失われていった。
【0023】
このように鋼繊維5に主鉄筋2を配置した本発明の構造物は、鋼繊維5のみを配置したコンクリート構造物に比べて、靭性率が飛躍的に向上し、またその破壊形態は曲げ破壊先行型であるから、耐震強度が大幅に向上し、剪断荷重を受ける建造物の柱、壁、床、橋脚等に好適である。
【0024】
したがって、上記柱7を構築後に例えば大地震が発生し、柱7が水平方向に剪断力を受けた場合、主鉄筋2と鋼繊維5とが剪断力と曲げに対抗し、柱7のひび割れを防止するとともに、ひび割れの分散を促して、柱7の変形と破壊を抑制する。
【0025】
また、鋼繊維5の混入によって柱7の靭性が向上し、地震による衝撃ないし剪断荷重を吸収して、柱7の変形と破壊速度を抑制する。
そして、地震の衝撃および振幅が次第に増加すると、ひび割れが分散して発生し始め、これが成長して開口幅が増加し、遂に主鉄筋2が降伏して曲げ破壊するこの場合、ひび割れが成長して柱7が曲げ破壊するまでの間、鋼繊維5と主鉄筋2が地震の衝撃、振動に堪え、主鉄筋2が降伏し破断したところで、柱7が曲げ破壊する。
しかも、ひび割れ面では鋼繊維5によって引張応力を伝達されるため、コンクリート6自体の剪断耐力が向上し、曲げ破壊先行型の破壊形態を促して、耐震強度を増進する。
【0026】
このように本発明は、剪断力を受けるコンクリート構造物において、従来より多用されている帯鉄筋を廃したから、該鉄筋の材料費の節減と工費の低減を図れ、帯鉄筋の製作とその配筋作業の煩雑と手間を解消して、これを迅速に施工でき、工期の短縮化と工費の低減を図れるとともに、コンクリートを緻密かつ確実に打設できる。
【0027】
また、本発明は、帯鉄筋の代わりに鋼繊維5をコンクリート6に分散配置し、該繊維5と主鉄筋2とによって、構造物に作用する剪断力と曲げに抗するようにしたから、構造物の靭性率と曲げ強度が飛躍的に向上し、十分な耐震強度を有するコンクリート構造物を得られる。
しかも、鋼繊維5と主鉄筋2とを配置することによって、従来の鋼繊維補強コンクリートの強度、特に靭性率が飛躍的に向上し、実用的な耐震コンクリート構造物を提供できる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明は、コンクリ−トの全域に亘って、アスペクト比約50の鋼繊維を全打設コンクリ−ト容積の約1.0パ−セントに分散配置したから、帯鉄筋を廃し、鋼繊維を小形軽量化し、その均一な分散とコンクリ−ト構造物の軽量化を図り、緻密かつ平滑なコンクリ−ト面を得られるとともに、鋼繊維の混入率を高めて構造物の曲げ強度と靭性率を向上し、曲げと剪断力の双方を受ける実用的な耐震構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による施工法を順に示す斜視図である。
【図2】本発明による施工法の別の実施形態を示す斜視図で、主鉄筋を少数の帯鉄筋で拘束した状態を示している。
【図3】本発明による構築された構造物の状況を示す斜視図である。
【図4】図3のAーA線に沿う断面図である。
【図5】本発明を適用した柱の剪断耐力実験において、荷重と変位との関係を示す実験図である。
【図6】プレーンコンクリートの剪断耐力実験において、荷重と変位との関係を示す実験図である。
【符号の説明】
2 主鉄筋
5 鋼繊維
6 コンクリート
7 コンクリート構造物(柱)
Claims (1)
- コンクリ−トの内部に、複数の主鉄筋を無拘束、かつ複数列に配置するとともに、鋼繊維を分散配置したコンクリ−ト構造物において、前記コンクリ−トの全域に亘って、アスペクト比約50の鋼繊維を全打設コンクリ−ト容積の約1.0パ−セントに分散配置したことを特徴とするコンクリ−ト構造物。
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