JP3541961B2 - 容積型圧縮機の弁装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、容積型圧縮機の弁装置に係り、詳しくは圧力変動並びに振動騒音の低減を図った弁装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
主として冷凍用に供されている容積型圧縮機は、機内の低圧域及び高圧域と圧縮室とが通孔によって連通されており、往復式圧縮機においてはその双方の通孔を開閉する吸入弁及び吐出弁が設けられ、回転式圧縮機においても圧縮室と高圧域とを連通する通孔には同様な吐出弁が配設されている。なお、かかる弁体には通常差圧によって同通孔を開閉する単体若しくは複合体形式のリード弁が多用されている。
【0003】
図9は広く車両空調用に供されている往復式圧縮機のリヤ部分を例示するもので、複数の圧縮室(ボア)1aを並設したシリンダブロック1の外端は弁板2を挟んでハウジング3により封塞され、弁板2にはハウジング3内に形成された吸入室(低圧域)4及び吐出室(高圧域)5と圧縮室1aとをれぞれ連通する通孔、つまり吸入孔4a及び吐出孔5aが貫設されている。そして同弁板2の一方の弁座面とシリンダブロック1との間には、各吸入孔4aに対応する複数のリード弁6aを備えた吸入弁体6が介装され、また、吐出室5内に露出した弁板2の他方の弁座面上には、各吐出孔5aと対応する複数のリード弁7aを備えた吐出弁体7が装着されており、これらリード弁6a及び7aの開弁(撓曲)限界は、圧縮室1aの口端に設けられた切欠き8及び吐出弁体7と共締めされたリテーナ9によってそれぞれ規制されている。
【0004】
このように各リード弁6a、7aは、吸入孔4a及び吐出孔5aが開口される各弁座面に着座して圧縮室1aとの相対的な差圧により開閉されるが、同弁座面はリード弁6a、7aとの密合性の確保やこれを挟着するシリンダブロック1及びハウジング3との封止性を配慮する必要から、一般に表面粗さが2〜3μmRZ程度という極めて平滑な状態に仕上げられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
圧縮機内を流動する冷媒ガス中には微細な潤滑油粒が混在されており、上記弁座面やリード弁6a、7aは共に潤滑油粒が被着する環境におかれている。そして上述のごとき極めて平滑度の高い弁座面に着座した閉弁状態のリード弁6a、7aは、いずれも吸入孔4a、吐出孔5aの開口全周域を平面的な接触によって封塞しているため、その開弁時においてもかかる封塞域に介在する潤滑油の主として表面張力により、同弁座面にかなり強く密着せしめられている。
【0006】
したがって、リード弁6a、7aは圧縮室1a内の圧力が所定の開弁圧力に加算された上記潤滑油の表面張力に打勝つまで開弁に抵抗し、開弁と同時に冷媒ガスの急激な吸入又は吐出が一挙に開始される。その結果、単なる吸入圧損や過圧縮のみにとどまらず、その瞬発的な圧力波と開弁規制面に激突するリード弁6a、7aの衝撃振動波とが複合されて騒音を誘起し、特に車両空調用に供される圧縮機では、かかる騒音が運転環境を阻害する重大な要因として、かねてより指摘されているのが実情である。
【0007】
本発明は、吸入圧損や過圧縮に加えて複合騒音をも効果的に低減し、しかもリード弁の良好な封塞性を確保することを解決すべき技術課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題解決のため、機内の低圧域及び高圧域と圧縮室とをそれぞれ連通する通孔を有し、少なくとも弁座面に開口する該通孔を差圧によって開閉するリード弁を備えた容積型圧縮機において、上記弁座面上の通孔を跨いだ開弁軸方向の両側に、上記リード弁が伸直した常態では該リード弁と弁座面との接触を妨げ、かつ該リード弁の弾性撓曲によって該通孔を閉鎖させる干渉段差部を設けるとともに、該弁座面及び該リード弁のいずれか一方に、該通孔の周辺を囲包し、かつ該リード弁の弾性撓曲に追従して撓屈する封止体を被装した新規な構成を採用している。
【0009】
本発明の好適な形態として、上記封止体は上記リード弁に被覆された円形状皮膜であり、より好ましい封止体はアクリロニトリルーブタジェンゴム皮膜である。なお、上記リード弁は開弁軸方向の基端側及び先端側のみが上記干渉段差部の上面に載置されている。また、上記干渉段差部は、弁座面を直接凹刻するか又は弁座面に樹脂皮膜を被覆することによって形成される。
【0010】
【作用】
本発明の弁装置においては、弁座面上の通孔を跨いだ開弁軸方向の両側に、上記リード弁が伸直した常態では該リード弁と弁座面との接触を妨げ、かつ該リード弁の弾性撓曲によって通孔を閉鎖させる干渉段差部が設けられているため、無負荷時のリード弁は開弁軸方向の基端側及び先端側が干渉段差部の上面に載置されて伸直した常態を保持しており、リード弁と弁座面との接触は妨げられ、かつ該通孔の閉鎖が妨げられている。
【0011】
しかし、ひとたび圧縮室との相対的な差圧がリード弁を閉じる向きに作用すると、該リード弁は直ちに撓曲して通孔の全開口周縁と衝接することにより該通孔を閉鎖し、同時に封止体も該リード弁の撓曲に追従撓屈して通孔の周辺を密に封止する。なお、このようなリード弁の撓曲に伴って行われる通孔の閉鎖は、開口周辺の封塞域におけるリード弁の実質的な接触面積を大幅に縮小させるので、潤滑油の表面張力に基づく開弁抵抗は格段と低減される。その後圧縮室との相対的な差圧が反転してリード弁の開弁圧力に達すると、ほとんど無害な程度に低減された表面張力の影響に加えて、上記撓曲姿勢からの復元反力が効果的にリード弁の開弁を助勢するため、瞬発的な冷媒ガスの圧力波や開弁規制面との衝突振動波は巧みに減衰される。しかも通孔の周辺を囲包する上記封止体の介入は、作用差圧が小さくなってリード弁の閉塞性能がもっとも減衰する時期においても良好な密封性を確保し、冷媒ガスの異常な流動を防止する。
【0012】
【実施例】
以下、図に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。
図1〜図3は、図9に例示した往復式圧縮機の弁板2部分と、該弁板2の一方の弁座面2a上に装着された吐出弁体7を示しており、該吐出弁体7を構成する複数のリード弁7aは、弁座面2aに開口された通孔(吐出孔)5aを、圧縮室1aと高圧域(吐出室)5との相対的な差圧に応じて周期的に開閉するものである。
【0013】
さて、本実施例の上記弁座面2aには例えばフッ素系の樹脂皮膜10が被覆されており、0.1〜0.2mm程度の膜厚を有する該樹脂皮膜10は、各通孔5aの周辺を包括する環状の領域Pのみが欠落された形態で構成されている。すなわち、各通孔5aを跨いだ開弁軸X−X方向の両側には、該樹脂皮膜10の膜厚によって弁座面2aとリード弁7aとの平面的な接触を妨げるとともに、該リード弁7aの弾性撓曲によって通孔5aを閉鎖させる干渉段差部P1 、P2 が形成されている。なお、通孔5aの開口縁から各干渉段差部P1 、P2 までの距離及びリード弁7aの先端から干渉段差部P1 までの距離は、リード弁7aの板厚や撓み特性に基づいて適宜選択される。
【0014】
そしてリード弁7aには、弁座面2a、つまり欠落領域Pの域内において該通孔5aの周辺を囲包し、かつ、該リード弁7aの弾性撓曲に追従して撓屈する封止体20、本例では図4に示す環状の封止体20aが被装されている。該封止体20aはアクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)若しくは水素化ニトリルーブタジエンゴム(HNBR)の被覆皮膜であり、その膜厚は樹脂皮膜10のそれとほぼ同等に設定されている。
【0015】
本実施例は上述のように構成されており、図4に示す無負荷時のリード弁7aは先端側及び基端側の双方が干渉段差部P1 、P2 を形成する樹脂皮膜10上に載置されて伸直した常態に保持されており、上記弁座面2aとの間に形成される微小空隙によって通孔5aの閉鎖は妨げられている。
そして圧縮機の運転時、圧縮室1aと高圧域5との相対的な差圧がリード弁7aを閉じる向きに作用すると、図5に示すように該リード弁7aは干渉段差部P1 、P2 を支点として通孔5aの求心方向に撓曲し、その開口全周縁と衝接することにより該通孔5aを閉鎖し、同時に封止体20aも該リード弁7aの撓曲に追従撓屈して、通孔5aの周辺を密に封止する。このようにリード弁7aの撓曲に伴って行なわれる通孔5aの閉鎖は、開口周辺の弁座面2aと封止体20aとの間に幾分かの平面的な密合を生じるものの、従来に比べてリード弁7aの接触面積は大幅に縮小されるので、潤滑油の表面張力に基づいた開弁抵抗は格段と低減される。その後圧縮室1aと高圧域5との相対的な差圧が反転してリード弁7aの開弁圧力に達すると、実質的に無害な程度に低減された表面張力の影響に加えて、上記撓曲姿勢からの復元反力が効果的にリード弁7aの開弁を助勢するため、瞬発的な冷媒ガスの圧力波や開弁規制面との激突振動波は巧みに減衰される。
【0016】
なお、リード弁7aの撓み特性に基づく通孔5a周縁の閉塞性能は、開弁軸XーX方向を頂点として弱小化傾向にあるため、とくにリード弁7aに作用する差圧の反転期近傍における閉塞性能に不安が残る嫌いがあるが、本実施例における封止体20aは、かかる状態においても弁座面2aとの密合により通孔5a周辺の封止を確保するので、冷媒ガスの異常な流動は防止される。
【0017】
図4に鎖線で示す封止体20bは、上記環状の封止体20aの中空部を充填して円形状に形成したものであって、本例ではリード弁7aが差圧によって撓曲した際、閉鎖される通孔5aの開口に直接封止体20bが介入することとなるので、リード弁7aの金属接触に伴って生じる衝撃音も有効に和らげることができる(図6)。
【0018】
図7は、上記環状の封止体20aを弁座面2a側に被装した実施例であり、さらに同図に鎖線で示す封止体20cは、上記封止体20aの環幅を拡張してその内径を通孔5aと一致させたものであるが、いずれの実施形態においても生産性の面での差こそあれ、主たる作用効果についてはなんら変るところはない。
図8は、上記弁板2の他方の弁座面2b上に装着された吸入弁体6を示しており、該吸入弁体6を構成する複数のリード弁6aも、弁座面2bに開口された通孔(吸入孔)4aを、圧縮室1aと低圧域(吸入室)4との相対的な差圧に応じて周期的に開閉するものである。
【0019】
そして該弁座面2bにも同様に樹脂皮膜10が被覆されるが、この場合は弁板2に貫設されている他の冷媒通路との交錯を避けるため、樹脂皮膜10の欠落を各通孔4aごとに設けた長孔状の領域P′(図は1か所のみ示し他は省略)として、やはり通孔4aを跨いだ開弁軸X−X方向の両側に干渉段差部P1 、P2 が形成されている。したがって、吸入弁体6においてもリード弁6aの弾性撓曲による通孔4aの閉鎖と、これに追従撓屈して通孔4aの周辺を密封する封止体20との複合機能により、先の吐出弁体7と同様きわめて円滑に動作する。
【0020】
なお、上述の実施例において、各通孔5aを包括する環状の領域Pを、各通孔4aごとに設けた長孔状の領域P′と同様に形成して実施することもでき、また、上記樹脂皮膜10に代え、機械加工、プレス加工、放電加工などにより上記弁座面2a、2bを直接凹刻し、弁板2自体に同様な干渉段差部P1 、P2 を形成して実施することも可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明は、特許請求の範囲に記載の構成を有するものであるから、次に掲記する優れた効果を奏する。
(1)吸入圧損及び過圧縮が低減されるので、性能とくに省動力化に貢献できる。
(2)開弁時の制振性により冷媒ガスの圧力脈動及び弁振動が良好に減衰されるため、振動騒音障害が著しく改善されてマフラ機能の装備も消去することができる。
(3)リード弁の撓曲に追従して撓屈する封止体が通孔の周辺を密に封止し、リード弁の閉塞性能に求められる安定性を確実に保障するので、冷媒ガスの異常な流動は良好に防止される。
(4)とくに閉鎖される通孔の開口に封止体が直接介入するように形成したものでは、リード弁の金属接触に伴って生じる衝撃音をも有効に和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るリード弁と干渉段差部との関係を示す断面図。
【図2】同リード弁と干渉段差部との関係を示す側面図。
【図3】本発明の実施例に係る弁板の吐出弁体側を示す側面図。
【図4】本発明の実施例に係る封止体の撓屈前の状態を示す拡大断面図。
【図5】同封止体の撓屈後の状態を示す拡大断面図。
【図6】形状の異なる同封止体の撓屈後の状態を示す拡大断面図。
【図7】被装面の異なる同封止体の撓屈前の状態を示す拡大断面図。
【図8】本発明の実施例に係る弁板の吸入弁体側を示す側面図。
【図9】従来の往復式圧縮機のリヤ部分を示す断面図。
【符号の説明】
1aは圧縮室、2は弁板、2a、2bは弁座面、4は低圧域(吸入室)、5は高圧域(吐出室)、4aは通孔(吸入孔)、5aは通孔(吐出孔)、6a、7aはリード弁、P1 、P2 は干渉段差部、20は封止体
Claims (4)
- 機内の低圧域及び高圧域と圧縮室とをそれぞれ連通する通孔を有し、少なくとも弁座面に開口する該通孔を差圧によって開閉するリード弁を備えた容積型圧縮機において、
上記弁座面上の通孔を跨いだ開弁軸方向の両側に、上記リード弁が伸直した常態では該リード弁と弁座面との接触を妨げ、かつ該リード弁の弾性撓曲によって該通孔を閉鎖させる干渉段差部を設けるとともに、該弁座面及び該リード弁のいずれか一方に、該通孔の周辺を囲包し、かつ該リード弁の弾性撓曲に追従して撓屈する封止体を被装したことを特徴とする容積型圧縮機の弁装置。 - 上記封止体は上記リード弁に被覆された円形状皮膜である請求項1記載の弁装置。
- 上記封止体はアクリロニトリル−ブタジエンゴム皮膜からなる請求項1又は2記載の弁装置。
- 上記リード弁は開弁軸方向の基端側及び先端側のみが上記干渉段差部の上面に載置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の弁装置。
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